説明

トリアージ情報入力端末および傷病者管理システム

【課題】トリアージ情報をダイレクトに入力でき、かつトリアージタッグから読み取ったトリアージタッグの識別情報と共に迅速かつ容易に送信する。
【解決手段】トリアージタッグに表示される複数のトリアージ区分と一対一で対応する複数の区分入力スイッチ11〜14と、トリアージタッグに搭載されたICタグからこのICタグに予め記憶されたトリアージタッグに固有の識別情報Ddを読み取る読取部15と、区分入力スイッチ11〜14が操作された際に、読取部15に対して識別情報Ddを読み取らせると共に、読み取った識別情報Ddを操作された区分入力スイッチに対応するトリアージ区分を示すトリアージ情報と共に傷病者情報Dpとして送信部17に出力する制御部18と、入力した傷病者情報Dpを送信する送信部17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害・救急医療において傷病者に対して決定されたトリアージ区分を示すトリアージ情報を入力するためのトリアージ情報入力端末、およびトリアージ情報入力端末を使用した傷病者管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリアージとは、医療機能が制約されている条件下で、より多くの傷病者に対して最善の治療を施すため、傷病者の重症度に応じて治療の優先順位を決定することをいう。この場合、重症度は、超重症、重症、軽症および死亡の四段階に区分(以下、「トリアージ区分」ともいう)され、この順が治療の優先順位と一致する。このトリアージは、現在、傷病者が多数発生した現場において、治療を行う前段階として実施されている。具体的には、医師が、傷病者の状態を見てトリアージ区分を決定し、決定したトリアージ区分と共に、傷病者の性別や診断した日時などをトリアージタッグに記載することでトリアージを実施している。この場合、トリアージタッグには、一例として下記の特許文献1に記載されているように、重症度(トリアージ区分)に応じて色分けされると共に上記の4段階のいずれであるかを示す符号が付された4つの紙片が設けられている。この各紙片は、死亡を示す黒色の紙片(符号0が付された紙片)と、超重症を示す赤色の紙片(符号Iが付された紙片)と、重症を示す黄色の紙片(符号IIが付された紙片)と、軽症を示す緑色の紙片(符号III が付された紙片)とで構成され、各紙片はミシン目を介してこの順に連結されている。トリアージを実施した医師は、傷病者の状態に応じたトリアージ区分を決定し、該当するトリアージ区分をトリアージタッグに記載すると共に、トリアージタッグを見て一目で傷病者のトリアージ区分を判別できるように、トリアージ区分に対応する紙片がトリアージタッグの最も下(先端)に位置するように不要な紙片を切り取って傷病者に取り付ける。このようにして傷病者に対してトリアージタッグが取り付けられることにより、その後に行われる救護活動において、トリアージタッグに記載された情報から傷病者の重症度を確実に、しかも迅速に把握することができるため、混乱を最小限に抑えて、効率よく傷病者に対する治療が行えるようになる。
【0003】
また、傷病者に対する治療のさらなる効率化を図るべく、固有の識別情報(識別コード)が予め記憶されたICタグをトリアージタッグに搭載することによってトリアージタッグを電子タグ化し、傷病者に取り付けられたトリアージタッグから上記の固有の識別情報と共に傷病者のトリアージ区分を示すトリアージ情報をネットワークに接続された端末で読み取り、読み取った傷病者のこれら情報をネットワークに接続されたデータベースに入力して評価することで、治療の順番およびスケジュールや、さらなる医療スタッフの投入の必要性などを管理するトリアージタッグ管理システムが提案されている(下記、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−38587号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献1】特開2004−240797号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来のトリアージタッグ管理システムでは、端末(携帯端末)として携帯型パソコンを使用し、かつ専用のソフトウェアを作動させた状態において、電子ペンやキーボードなどを操作してトリアージ区分を示すトリアージ情報を入力する方法が一般的に採用されている。このため、トリアージ情報の端末への入力が煩雑である結果、トリアージ情報をネットワークに送信するのに手間や時間がかかるという問題点が存在している。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであり、トリアージ情報をダイレクトに入力でき、かつトリアージタッグから読み取ったトリアージタッグの識別情報と共に迅速かつ容易に送信し得るトリアージ情報入力端末、およびこのトリアージ情報入力端末を使用した傷病者管理システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載のトリアージ情報入力端末は、トリアージタッグに表示される複数のトリアージ区分と一対一で対応する複数の区分入力スイッチと、前記トリアージタッグに設けられている固有の識別情報を読み取る読取部と、前記区分入力スイッチが操作された際に、前記読取部に対して前記識別情報を読み取らせると共に、当該読み取った識別情報を当該操作された区分入力スイッチに対応する前記トリアージ区分を示すトリアージ情報と共に傷病者情報として送信部に出力する制御部と、入力した前記傷病者情報を送信する送信部とを備えている。
【0008】
請求項2記載のトリアージ情報入力端末は、請求項1記載のトリアージ情報入力端末において、前記各区分入力スイッチには、前記トリアージタッグにおける対応する前記トリアージ区分の色と同一の色が付されている。
【0009】
請求項3記載のトリアージ情報入力端末は、請求項1または2記載のトリアージ情報入力端末において、前記各区分入力スイッチは、前記トリアージタッグにおける前記各トリアージ区分と同じ配列順序で配設されている。
【0010】
請求項4記載のトリアージ情報入力端末は、請求項1から3のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末において、GPS受信部を備え、前記制御部は、前記区分入力スイッチが操作された際に、前記GPS受信部から位置情報を取得して、前記傷病者情報の一部として前記送信部に出力する。
【0011】
請求項5記載のトリアージ情報入力端末は、請求項1から4のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末において、時計部を備え、前記制御部は、前記区分入力スイッチが操作された際に、前記時計部から時刻情報を取得して、前記傷病者情報の一部として前記送信部に出力する。
【0012】
請求項6記載の傷病者管理システムは、請求項1から5のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末と、当該トリアージ情報入力端末から送信された前記傷病者情報を受信する受信装置と、前記傷病者情報を前記受信装置から入力して配信可能に保持する配信装置とを備えている。
【0013】
また、請求項7記載の傷病者管理システムは、請求項6記載の傷病者管理システムにおいて、前記傷病者情報を前記受信装置から入力して表示する表示装置を備えている。
【0014】
また、請求項8記載の傷病者管理システムは、請求項6または7記載の傷病者管理システムにおいて、前記トリアージ情報入力端末から送信された前記傷病者情報を中継して前記受信装置に伝送する中継装置を備え、当該中継装置は、GPS受信部を備えると共に、中継する前記傷病者情報に当該GPS受信部で取得した位置情報を付加して伝送する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のトリアージ情報入力端末によれば、トリアージタッグに表示されている複数のトリアージ区分に一対一で対応する区分入力スイッチが設けられているため、トリアージタッグに表示されているトリアージ区分に対応する1つの区分入力スイッチを操作するだけで、トリアージ区分を示すトリアージ情報をダイレクトに、かつ確実にトリアージ情報入力端末に入力することができる。また、このトリアージ情報入力端末によれば、複数の区分入力スイッチのいずれかが操作された際に、制御部が読取部に対してトリアージタッグの識別情報を読み取らせると共にこの識別情報をトリアージ情報と共に傷病者情報として送信部に出力し、送信部がこの傷病者情報を送信することにより、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて迅速かつ容易に傷病者情報を送信することができる。
【0016】
請求項2記載のトリアージ情報入力端末によれば、トリアージ情報入力端末の各区分入力スイッチには、トリアージタッグにおけるトリアージ区分の色と同一の色が付されているため、傷病者の重症度を示すトリアージタッグに表示されているトリアージ区分を正確にトリアージ情報入力端末に入力することができる。
【0017】
請求項3記載のトリアージ情報入力端末によれば、各区分入力スイッチは、トリアージタッグにおける各トリアージ区分と同じ配列順序で配設されているため、傷病者の重症度を示すトリアージタッグに表示されているトリアージ区分を一層正確に入力することができる。
【0018】
請求項4記載のトリアージ情報入力端末によれば、GPS受信部を備え、複数の区分入力スイッチのいずれかが操作された際に、制御部がGPS受信部から位置情報を取得して、傷病者情報の一部として送信部に出力することにより、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて短時間に位置情報を含む傷病者情報を送信することができる。
【0019】
請求項5記載のトリアージ情報入力端末によれば、時計部を備え、複数の区分入力スイッチのいずれかが操作された際に、制御部が時計部から時刻情報を取得して、傷病者情報の一部として前記送信部に出力することにより、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて短時間で時刻情報を含む傷病者情報を送信することができる。
【0020】
請求項6記載の傷病者管理システムによれば、請求項1から5のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末と、トリアージ情報入力端末から送信された傷病者情報を受信する受信装置と、傷病者情報を受信装置から入力して配信可能に保持する配信装置とを備えたことにより、配信装置に対してアクセスし得る装置であれば、場所や時間を問わず、傷病者情報を取得することができる。
【0021】
請求項7記載の傷病者管理システムによれば、傷病者情報を受信装置から入力して表示する表示装置を備えたことにより、配信装置に対してアクセスすることにより、場所や時間を問わず、傷病者情報を表示させて、確認することができる。
【0022】
請求項8記載の傷病者管理システムによれば、トリアージ情報入力端末から送信された傷病者情報を中継して受信装置に伝送する中継装置を備え、中継装置が、GPS受信部を備えると共に、中継する傷病者情報にこのGPS受信部で取得した位置情報を付加して伝送することにより、傷病者情報の中継に関わった中継装置によって傷病者情報に位置情報が順次付加されるため、トリアージ情報入力端末にGPS受信部を設けない構成においても、例えば、最初に付加された位置情報を傷病者の存在する位置として見なして、傷病者の存在する地域を大まかに特定することができる。また、この構成によれば、トリアージ情報入力端末にGPS受信部を設ける必要がなくなるため、トリアージ情報入力端末をよりコンパクトに構成することができる結果、携帯性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】傷病者管理システム1の構成図である。
【図2】トリアージ情報入力端末2のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、傷病者管理システム1およびトリアージ情報入力端末2の実施の形態について説明する。
【0025】
まず、トリアージ情報入力端末2を含む傷病者管理システム1の構成について、図1,2を参照して説明する。
【0026】
傷病者管理システム1は、図1に示すように、複数(同図では、1つのみを表示して、それ以外のものの記載を省略するが、1つであってもよい)のトリアージ情報入力端末(以下、単に「入力端末」ともいう)2、中継装置3および管理装置4を備え、傷病者5に取り付けられたトリアージタッグ6に表示されているトリアージ区分を示すトリアージ情報Dt、トリアージタッグ6に予め規定されている固有の識別情報Ddおよび位置情報Dgを含む傷病者情報Dpに基づいて、災害時における傷病者の地域毎の発生状況、および傷病者の重症度の分布状況などを管理可能に構成されている。なお、トリアージタッグ6には、背景技術で説明したように、各トリアージ区分(死亡、超重症、重症および軽症)を表示するための色分けされた4つの紙片6a(「死亡」:黒),紙片6b(「超重症」:赤),紙片6c(「重症」:黄),紙片6d(「軽症」:緑)がこの順に設けられている。また、本例のトリアージタッグ6には、トリアージタッグ6に固有の識別情報Ddが記憶されたICタグ6eが搭載されている。ICタグ6eは、いわゆるパッシブタグであって、入力端末2からの電波をエネルギー源として動作するRF(Radio Frequency)タグである。
【0027】
入力端末2は、図2に示すように、4つの区分入力スイッチ11,12,13,14、読取部15、GPS受信部16、送信部17、制御部18、電源部19および2つの発光ダイオードLD1,LD2を備え、携帯可能に構成されている。この場合、発光ダイオードLD1の発光色は緑色に規定され、発光ダイオードLD2の発光色が赤色に規定されている。区分入力スイッチ11,12,13,14は、トリアージタッグ6に表示されている複数のトリアージ区分(前述の複数(4つ)の区分)のすべてに一対一で対応して、同じ形状(長方形)に形成されると共に、これらと同じ順に一列に(同じ配列順序で)配設されている。具体的には、区分入力スイッチ11はトリアージタッグ6に設けられている紙片6a(「死亡」:黒)に対応し、区分入力スイッチ12は紙片6b(「超重症」:赤)に対応し、区分入力スイッチ13は紙片6c(「重症」:黄)に対応し、区分入力スイッチ14は紙片6d(「軽症」:緑)に対応して、図1に示すように、各紙片6a,6b,6c,6dの配列と同じ順(区分入力スイッチ11,12,13,14の順)で配列されている。
【0028】
読取部15は、本例では、ICタグ6eに対するタグリーダーとして構成されて、ICタグ6eに記憶されている識別情報Dd(トリアージタッグ6に設けられている固有の識別情報Ddの一例)を読み取り可能に構成されている。本例では、読取部15は、制御部18から制御信号S1を入力したときに作動して(ICタグ6eに対して電波を送信して)、識別情報Ddを読み取ると共に、読み取った識別情報Ddを制御部18に出力する。GPS(Global Positioning System)受信部16は、図1に示すように、GPS衛星7からの電波を受信して、図2に示すように、入力端末2の現在位置を示す位置情報Dgを算出する。また、GPS受信部16は、制御部18から制御信号S2を入力したときに、算出した最新の位置情報Dgを制御部18に出力する。
【0029】
送信部17は、図2に示すように、制御部18から入力した傷病者情報Dpを無線で中継装置3に送信する。制御部18は、CPUおよび内部メモリで構成されて、区分入力スイッチ11,12,13,14に対するスキャニングを行ってトリアージ情報Dtを検出するトリアージ情報検出処理、トリアージタッグ6からの識別情報Ddを読み出す識別情報読み取り処理、位置情報Dgを取得する位置情報取得処理、および傷病者情報Dpを送信する送信処理を実行する。また、制御部18は、発光ダイオードLD1(緑色)に対する点灯制御を実行する。電源部19は、電池19a、電源スイッチ19bおよび電圧チェック部19cを備えている。電源スイッチ19bは、一例として、図1に示すように、スライドスイッチで構成されて、オン状態のときに電池19aにおいて発生している電圧を入力端末2内の各構成要素に対して供給し、オフ状態のときにこの供給を停止する。電圧チェック部19cは、電池19aから各構成要素に対して供給されている電圧をチェックして、この電圧が不十分(各構成要素が正常に動作しないおそれのある電圧)であるときには発光ダイオードLD2(赤色)を点灯させる。
【0030】
中継装置3は、入力端末2から送信された傷病者情報Dpを中継して管理装置4に無線で伝送する。なお、中継装置3は、図1に示すように、複数存在していてもよく、本例では2つの中継装置3が存在している。中継装置3は、入力端末2および管理装置4(中継装置3が複数存在しているときには他の中継装置3とも)と、相互に無線ネットワークを構成し(いわゆる無線アドホックネットワークを構成し)、入力端末2の傷病者情報Dpを中継して管理装置4に伝送する。
【0031】
管理装置4は、図1に示すように、一例として、受信装置21、処理装置22および配信装置23を備えて構成されている。受信装置21は、中継装置3を経由して傷病者情報Dp(位置情報Dg、トリアージ情報Dt、識別情報Dd)を受信すると共に、処理装置22に出力する。処理装置22は、傷病者情報Dpを受信して内部記憶装置(不図示)に記憶する。また、処理装置22は、内部記憶装置に予め記憶されている地図情報と傷病者情報Dpとに基づいて、傷病者5の重症度の分布状況を地域毎に集計する。具体的には、処理装置22は、地図情報と傷病者情報Dpに含まれている位置情報Dgとに基づいて、トリアージタッグ6の識別情報Dd(言い換えれば、トリアージタッグ6が取り付けられた傷病者5)を地域別に区分する(地域毎の傷病者5の発生状況の集計)。また、処理装置22は、トリアージ情報Dtに基づいて傷病者5の重症度を地域毎に集計する(傷病者5の重症度の地域毎の分布状況の集計)。これにより、どの地域に傷病者5がどれくらい発生し、各地域にどのような重症度の傷病者5がどの程度存在しているかの分布状況が集計される。処理装置22は、このようにして集計した傷病者発生情報Diを配信装置23に記憶させる。配信装置23は、インターネットに接続されて、要求のあった表示装置31(例えば、災害対策本部や、災害の発生している地域の本庁や支所などに設置されているパソコンなど)に対してインターネットを介して傷病者発生情報Diを配信する。
【0032】
次に、入力端末2および傷病者管理システム1の動作について説明する。
【0033】
最初に、災害の発生した地域に中継装置3が設置される。この状態において、各地域で救援活動を行っている入力端末2の使用者は、傷病者5に取り付けられたトリアージタッグ6に表示されているトリアージ区分を確認して、入力端末2に設けられている区分入力スイッチ11〜14のうちの対応する区分入力スイッチを操作する。
【0034】
入力端末2では、制御部18が、トリアージ情報検出処理を繰り返し実行する。その際に、区分入力スイッチに対する操作を検出したとき(本例では、誤入力防止のため、区分入力スイッチに対する操作が一例として2秒以上継続したときに、制御部18は区分入力スイッチに対する操作があったと検出する)には、制御部18は、区分入力スイッチに対する操作を受け付けたことを使用者に表示するため、発光ダイオードLD1(緑色)を所定時間点灯させる。また、制御部18は、各区分入力スイッチ11〜14のうちから操作された区分入力スイッチを特定して、この区分入力スイッチに対応するトリアージ区分を示すトリアージ情報Dtを内部メモリに記憶する。また、制御部18は、区分入力スイッチに対する操作を検出したときには、識別情報読み取り処理、位置情報取得処理および送信処理を実行する。この識別情報読み取り処理では、制御部18は、制御信号S1を読取部15に対して出力することにより、入力端末2に最も近接する傷病者5に取り付けられたトリアージタッグ6に配設されているICタグ6eから識別情報Ddを読み出して、内部メモリに記憶する。また、位置情報取得処理では、制御部18は、制御信号S2をGPS受信部16に対して出力することにより、GPS受信部16で算出された位置情報Dgを入力して、内部メモリに記憶する。また、識別情報読み取り処理および位置情報取得処理に続いて実行される送信処理では、制御部18は、内部メモリに記憶されているトリアージ情報Dt、識別情報Ddおよび位置情報Dgを読み出して、これらを傷病者情報Dpとして送信部17に出力する。送信部17は、入力したこの傷病者情報Dpを無線で送信する。また、制御部18は、傷病者情報Dpを送信部17に出力した後、発光ダイオードLD1(緑色)を所定時間点灯(一例として点滅)させる。これにより、送信部17が送信動作を実行しているときに発光ダイオードLD1が点灯するため、使用者は傷病者情報Dpが送信されていることを認識することができる。なお、送信部17が送信動作状態にあることを示す状態信号を送信動作中に制御部18に対して出力する構成を採用したときには、制御部18がこの状態信号の入力を検出したときに発光ダイオードLD1を点灯させる構成とすることもできる。
【0035】
中継装置3は、このようにして複数の入力端末2から送信された傷病者情報Dpを中継して、管理装置4に伝送する。管理装置4では、受信装置21が傷病者情報Dpを受信して処理装置22に出力し、処理装置22が内部記憶装置に記憶する。また、処理装置22は、内部記憶装置に予め記憶されている地図情報と傷病者情報Dpとに基づいて、地域毎の傷病者5の発生状況、および地域毎の傷病者5の重症度の分布状況を集計して、傷病者発生情報Diとして配信装置23に、傷病者情報Dpと共に配信可能に記憶(保持)させる。
【0036】
このように、この入力端末2によれば、トリアージタッグ6に表示されている複数のトリアージ区分(具体的には、色分けされたトリアージ区分を示す各紙片6a〜6d)に一対一で対応する区分入力スイッチ11,12,13,14が設けられているため、トリアージタッグ6に表示されているトリアージ区分に対応する1つの区分入力スイッチを操作するだけで、トリアージ区分を示すトリアージ情報Dtをダイレクトに、かつ確実に入力端末2に入力することができる。また、この入力端末2によれば、区分入力スイッチ11〜14のいずれかが操作された際に、制御部18が読取部15に対してトリアージタッグ6の識別情報Ddを読み取らせると共にこの識別情報Ddをトリアージ情報Dtと共に傷病者情報Dpとして送信部17に出力し、送信部17がこの傷病者情報Dpを送信することにより、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて迅速かつ容易に傷病者情報Dpを送信することができる。
【0037】
また、この入力端末2によれば、入力端末2の各区分入力スイッチ11〜14には、トリアージタッグ6におけるトリアージ区分の色と同一の色が付されているため、傷病者5の重症度を示すトリアージタッグ6に表示されているトリアージ区分を正確に入力することができる。
【0038】
また、この入力端末2によれば、各区分入力スイッチ11〜14は、トリアージタッグ6における各トリアージ区分と同じ配列順序で配設されているため、傷病者5の重症度を示すトリアージタッグ6に表示されているトリアージ区分を一層正確に入力することができる。
【0039】
また、この入力端末2によれば、GPS受信部16を備え、区分入力スイッチ11〜14のいずれかが操作された際に、制御部18がGPS受信部16から位置情報Dgを取得して、傷病者情報Dpの一部として送信部17に出力することにより、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて短時間に位置情報Dgを含む傷病者情報Dpを送信することができる。
【0040】
また、この傷病者管理システム1によれば、以上のような入力端末2と、入力端末2から送信された傷病者情報Dpを受信する受信装置21と、傷病者情報Dpを受信装置21から入力して配信可能に保持する配信装置23とを備えたことにより、配信装置23に対してアクセスし得る装置であれば、場所や時間を問わず、傷病者情報Dpおよび傷病者発生情報Diを取得することができる。また、この装置が傷病者情報Dpおよび傷病者発生情報Diを表示し得る表示装置31を含むものであれば、配信装置23に対してアクセスすることにより、場所や時間を問わず、傷病者情報Dpおよび傷病者発生情報Diを表示させて、確認することができる。
【0041】
なお、図2において破線で示すように、時刻情報Dcを生成する時計部20を入力端末2に設けて、区分入力スイッチ11〜14のいずれかが操作された際に、制御部18が時計部20から時刻情報Dcを取得して、傷病者情報Dpの一部として送信部17に出力する構成を採用することもできる。なお、時計部20は、例えば、RTC(Real Time Clock)で構成することができる。この構成によれば、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて短時間で時刻情報Dcを含む傷病者情報Dpを送信することができる。また、GPS受信部16がGPS衛星7から受信する電波には、位置情報のみならず、時刻情報も含まれている。このため、時計部20を設ける構成に代えて、GPS受信部16が位置情報Dgと共に時刻情報を出力するように構成した場合、制御部18がGPS受信部16から時刻情報を取得して、傷病者情報Dpの一部として送信部17に出力する構成を採用することもできる。
【0042】
また、トリアージタッグ6に固有の識別情報Ddが記憶されているICタグ6eをトリアージタッグ6に搭載することによってトリアージタッグ6に識別情報Ddを設ける例について上記したが、ICタグ6eの搭載に代えて、トリアージタッグ6に固有の識別情報Ddを示す一次元や二次元のバーコードをトリアージタッグ6の表面に表示することにより、トリアージタッグ6に識別情報Ddを設ける構成を採用することもできる。この構成においては、読取部15は、バーコートリーダとして構成する。この構成においても、読取部15をトリアージタッグ6に向けた状態で区分入力スイッチ11〜14のいずれかが操作された際に、制御部18が読取部15に対してトリアージタッグ6の識別情報Ddを読み取らせると共にこの識別情報Ddをトリアージ情報Dtと共に傷病者情報Dpとして送信部17に出力し、送信部17がこの傷病者情報Dpを送信することにより、極めて迅速かつ容易に傷病者情報Dpを送信することができる。
【0043】
また、入力端末2にGPS受信部16を設けることにより、傷病者5の位置情報Dgを管理装置4の受信装置21に送信する構成を採用しているが、この構成に代えて、各中継装置3にGPS受信部(不図示)を設けて、中継する傷病者情報Dpに各中継装置3が位置情報を付加して伝送する構成を採用することもできる。この構成によれば、傷病者情報Dpの中継に関わった中継装置3によって傷病者情報Dpに位置情報が順次付加されるため、入力端末2にGPS受信部16を設けない構成においても、管理装置4では、最初に付加された位置情報(傷病者5に最も近い位置に配設された中継装置3が付加した位置情報)を傷病者5の存在する位置として見なして、傷病者5の存在する地域を大まかに特定することができる。また、この構成によれば、入力端末2にGPS受信部16を設ける必要がなくなるため、入力端末2をよりコンパクトに構成することができる結果、携帯性を高めることができる。また、管理装置4内に表示装置31を設置するなど、傷病者管理システム1に上記の表示装置31を含める構成を採用することもできる。また、中継装置3が事前に設置されている環境下では、各中継装置3の設置場所は既知である。このため、傷病者情報Dpの中継に関わった中継装置3が自己の識別情報(位置情報や自局情報)を傷病者情報Dpに順次付加する構成とすることで、入力端末2や中継装置3にGPS受信部16を設けない構成においても、管理装置4では、最初に付加された中継装置3の識別情報(傷病者5に最も近い位置に配設された中継装置3が付加した識別情報)を傷病者5の存在する位置として見なして、傷病者5の存在する地域を大まかに特定することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 傷病者管理システム
2 入力端末
3 中継装置
5 傷病者
6 トリアージタッグ
6e ICタグ
11,12,13,14 区分入力スイッチ
15 読取部
16 GPS受信部
17 送信部
18 制御部
20 時計部
21 受信装置
23 配信装置
31 表示装置
Dc 時刻情報
Dd 識別情報
Dg 位置情報
Dp 傷病者情報
Dt トリアージ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアージタッグに表示される複数のトリアージ区分と一対一で対応する複数の区分入力スイッチと、
前記トリアージタッグに設けられている固有の識別情報を読み取る読取部と、
前記区分入力スイッチが操作された際に、前記読取部に対して前記識別情報を読み取らせると共に、当該読み取った識別情報を当該操作された区分入力スイッチに対応する前記トリアージ区分を示すトリアージ情報と共に傷病者情報として送信部に出力する制御部と、
入力した前記傷病者情報を送信する送信部とを備えているトリアージ情報入力端末。
【請求項2】
前記各区分入力スイッチには、前記トリアージタッグにおける対応する前記トリアージ区分の色と同一の色が付されている請求項1記載のトリアージ情報入力端末。
【請求項3】
前記各区分入力スイッチは、前記トリアージタッグにおける前記各トリアージ区分と同じ配列順序で配設されている請求項1または2記載のトリアージ情報入力端末。
【請求項4】
GPS受信部を備え、
前記制御部は、前記区分入力スイッチが操作された際に、前記GPS受信部から位置情報を取得して、前記傷病者情報の一部として前記送信部に出力する請求項1から3のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末。
【請求項5】
時計部を備え、
前記制御部は、前記区分入力スイッチが操作された際に、前記時計部から時刻情報を取得して、前記傷病者情報の一部として前記送信部に出力する請求項1から4のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のトリアージ情報入力端末と、
当該トリアージ情報入力端末から送信された前記傷病者情報を受信する受信装置と、
前記傷病者情報を前記受信装置から入力して配信可能に保持する配信装置とを備えている傷病者管理システム。
【請求項7】
前記傷病者情報を前記受信装置から入力して表示する表示装置を備えている請求項6記載の傷病者管理システム。
【請求項8】
前記トリアージ情報入力端末から送信された前記傷病者情報を中継して前記受信装置に伝送する中継装置を備え、
当該中継装置は、GPS受信部を備えると共に、中継する前記傷病者情報に当該GPS受信部で取得した位置情報を付加して伝送する請求項6または7記載の傷病者管理システム。

【図1】
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【図2】
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