説明

トリガースイッチ回路および電動器具

【課題】部品点数を増やすこと無く、無駄な電力消費を抑制する。
【解決手段】電動器具のトリガーに連動するトリガースイッチ回路11は、メインスイッチSW1、摺動スイッチSW4、発光制御部32、および回転制御部31を備える。トリガーが初期位置の場合、メインスイッチSW1はオフであり、摺動スイッチSW4は何れの固定接点とも接続していない。トリガーが第1の位置に到達すると、摺動スイッチSW4は固定接点A1に接続し、発光制御部32はメインスイッチSW1を介さずに給電されて、LEDが発光する。トリガーが第2の位置に到達すると、メインスイッチSW1はオンとなり、トリガースイッチ回路11内に給電される。トリガーが第3の位置に到達すると、摺動スイッチSW4は固定接点A1から固定接点A2に接続が切り替わり、回転制御部31が動作してモータMが駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動ドリル等の電動器具に搭載されているトリガースイッチ回路および電動器具に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガースイッチ回路は、電動器具に搭載されたトリガースイッチ装置に設けられる回路であり、該トリガースイッチ装置におけるトリガーに連動して、主に、電動器具の動力源であるモータの動作をオン・オフし制御するものである。近時では、ユーザの利便性を向上させるため、上記トリガーに連動して、照明用の発光素子の発光をオン・オフするトリガースイッチ装置も考えられており、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
図4は、上記トリガースイッチ装置を含む従来の電動器具の回路図である。図4に示すように、従来の電動器具100では、電源E、モータM、および発光ダイオードLEDと、トリガースイッチ回路110とが電気的に接続されている。トリガースイッチ回路110は、モータ用スイッチSW101、短絡用スイッチSW102、ブレーキ用スイッチSW105、摺動回路基板111、およびスイッチング素子FETを備える構成である。
【0004】
摺動回路基板111の端子V+と端子V−との間には、電源Eが接続されており、モータM、モータ用スイッチSW101、スイッチング素子FETが直列に接続されている。モータMの両端には還流用ダイオードD1およびブレーキ用スイッチSW105が並列に接続されている。また、モータMおよびモータ用スイッチSW101の間は、短絡用スイッチSW102を介して電源Eに接続されている。
【0005】
摺動回路基板111内では、電源Eに接続される端子V+に補助スイッチSW104の一端が接続され、その他端には、制御スイッチSW103が接続され、抵抗R3を介して端子Gに接続され、スイッチング素子FETのゲートに接続されている。
【0006】
図5は、制御スイッチSW103および補助スイッチSW104の構造を示す断面図である。図示のように、制御スイッチSW103は、第1および第2接触子120a・bと制御接触子121との間に跨ぐようにして動くスイッチ摺動子122の動き具合によりオン・オフするスイッチである。制御スイッチSW103は、まず、抵抗R2を介した接点Aに接続して、スイッチング素子FETをオンにする。そして、モータMが高速回転状態になると、制御スイッチSW103は、抵抗を介さない接点Bに接続して、電源電圧をスイッチング素子FETのゲートに供給する。
【0007】
一方、補助スイッチSW104は、図5に示すように、補助接触子123と制御接触子121との間に跨ぐようにして動くスイッチ摺動子122の動き具合によりオン・オフするスイッチであり、電源Eからの電力を摺動回路基板111に供給するように制御する。また、ブレーキ用スイッチSW105は、モータM間を短絡してブレーキがかかった状態にするためのスイッチである。
【0008】
上記の構成からなるスイッチの動作について説明する。まず、図5の(a)に示すように、スイッチ摺動子122は、制御接触子121を跨いだ状態で位置しているため、図4に示す回路のように、制御スイッチSW103および補助スイッチSW104はオフの状態を維持する。このとき、トリガー(図示せず)は引かれていないためブレーキ用スイッチSW105はオンの状態であり、モータMはブレーキがかかった状態となっている。
【0009】
この状態でトリガーが引かれると、ブレーキ用スイッチSW105がオフになり、図5の(b)に示すように、連動してスイッチ摺動子122が動き、第1接触子120aよりも長く設定されている補助接触子123と制御接触子121とが電気的に接続されることにより、補助スイッチSW104がオンになる。補助スイッチSW104がオンになると、図4に示す回路において、電源Eからの電力が発光ダイオードLEDに供給され、発光ダイオードLEDが発光する。このときスイッチ摺動子122は第1接触子120aと接触していないため、制御スイッチSW103はオフのままである。さらにトリガーが引かれると、モータ用スイッチSW101がオンになる。
【0010】
さらにトリガーが引かれると、図5の(c)に示すように、スイッチ摺動子122が連動して動き、制御接触子121と第1接触子120aとが電気的に接続されることにより、制御スイッチSW103が端子A側に接続してオンになる。制御スイッチSW103がオンなると、図4に示す回路において、電源Eからの電圧が、補助スイッチSW104、制御スイッチSW103、および抵抗R2を介して、スイッチング素子FETのゲートに印加され、スイッチング素子FETがオンになる。そして、さらにトリガーが引かれることにより、連動する回転制御摺動子(図示せず)が摺動してモータMの回転が制御される。
【0011】
さらにトリガーが引かれ、モータMが最大の回転速度に制御されると、図5の(d)に示すように、スイッチ摺動子122が連動して動き、制御接触子121と第2接触子120bとが電気的に接続して、制御スイッチSW103を短絡(図4で端子Bに接続)させる。これにより、スイッチング素子FETのゲートには電源電圧が供給され100%の導通状態になる。この状態で、さらにトリガーが引かれると、短絡用スイッチSW102がオンになりモータMが高速に回転制御される。
【0012】
従って、従来のトリガースイッチ回路110では、モータMの回転前に、発光ダイオードLEDが発光するので、電動器具100の利便性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−221908号公報(2006年08月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電動器具を利用する場合、モータを動作させる前に、まず周囲を照明し確認することがある。しかしながら、従来のトリガースイッチ回路110では、図4に示すように、補助スイッチSW104をオンにして発光ダイオードLEDを発光させると、制御部および作動アンプからなる集積回路ICにも電力が供給される。この集積回路ICは、モータMの回転速度を制御するためのものである。このため、モータMを動作させずに照明する場合でも、モータMに関係する回路に電力が供給され、無駄な電力消費が発生することになる。
【0015】
この問題点を回避するには、集積回路ICへの電力の供給をオン・オフするスイッチを新たに設ければよいが、部品点数が増加することになる。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を増やすこと無く、無駄な電力消費を抑制できるトリガースイッチ回路などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
電動器具のトリガーに連動するトリガースイッチ回路であって、上記課題を解決するために、上記トリガーに連動して、電源からの電力の供給をオン・オフする電源スイッチと、上記トリガーに連動して、接点が順次切り替わる切替スイッチと、上記電動器具に設けられた発光素子を発光させるための発光用回路と、上記電動器具に設けられたモータを駆動するためのモータ用回路とを備えており、上記切替スイッチは、上記電源からの電力を上記電源スイッチを介さずに上記発光用回路に供給する第1の接点と、上記モータ用回路を動作させる第2の接点とを備えており、上記トリガーが初期位置に存在する場合、上記電源スイッチはオフであり、上記切替スイッチは何れの接点とも接続しておらず、上記トリガーが初期位置から第1の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第1の接点に接続し、上記トリガーが第1の位置を越えて第2の位置に移動すると、上記電源スイッチはオンとなり、上記トリガーが第2の位置を越えて第3の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第1の接点から第2の接点に接続が切り替わるようになっていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によると、まず、トリガーが初期位置に存在する場合、電源スイッチはオフであり、切替スイッチは何れの接点とも接続していない。従って、トリガースイッチ回路は動作していない。
【0019】
次に、上記トリガーが初期位置から第1の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第1の接点に接続する。これにより、電源からの電力が上記電源スイッチを介さずに発光用回路に供給されるので、上記電源スイッチの状態に関係なく、上記発光用回路が動作して発光素子が発光する。一方、上記電源スイッチがオフであるので、上記モータ用回路など、上記発光用回路以外の回路には電力が供給されない。従って、モータを動作させずに照明する場合に、照明に関する回路以外の回路、例えばモータ用回路、には電力が供給されないので、従来のトリガースイッチ回路に比べて無駄な電力消費を抑制することができる。
【0020】
次に、上記トリガーが第1の位置を越えて第2の位置に移動すると、上記電源スイッチはオンとなる。これにより、上記トリガースイッチ回路内に電力が供給される。次に、上記トリガーが第2の位置を越えて第3の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第1の接点から第2の接点に接続が切り替わる。これにより、モータ用回路が動作して、モータが駆動される。このとき、上記発光用回路は、第1の接点による電力の供給が停止するが、上記電源スイッチによる電力の供給が実行されているので、上記発光素子は発光が維持される。
【0021】
このように、上記発光用回路への電力の供給のオン・オフ、上記モータ用回路への電力の供給のオン・オフ、および、モータ用回路の動作のオン・オフは、上記切替スイッチおよび上記電源スイッチという2つのスイッチにて実現される。従って、本発明のトリガースイッチ回路は、従来のトリガースイッチ回路に比べて、スイッチの数を増やすことがないので、部品点数を増やすこと無く、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0022】
ところで、上記トリガーが第1の位置を越えて第2の位置に移動すると、上記電源スイッチがオンとなって、上記モータ用回路に電力が供給される。このとき、上記モータ用回路によっては、動作の指示が無いと、上記モータを駆動するものがある。
【0023】
そこで、本発明に係るトリガースイッチ回路では、上記切替スイッチの第1の接点は、さらに、上記モータ用回路の動作を停止させるものであってもよい。この場合、上記トリガーが第1の位置を越えて第2の位置に移動しても、上記切替スイッチは、第1の接点との接続が維持されているので、上記モータ用回路は動作の停止が維持されて、上記モータの駆動を防止できる。
【0024】
本発明に係るトリガースイッチ回路では、上記モータ用回路は、さらに、上記モータに供給する平均電力を制御するものであり、上記トリガーが第3の位置を越えて移動するにつれて、上記切替スイッチの第2の接点は、上記モータに供給する平均電力が増加するように、上記モータ用回路を動作させるようになっていることが好ましい。この場合、上記トリガーの移動により、上記モータの回転駆動を制御することができる。なお、上記モータに供給する平均電力を変化させるには、上記モータを間欠的に駆動し、該駆動のデューティ比を変化させたり、上記モータに流す電流を変化させたりすればよい。
【0025】
本発明に係るトリガースイッチ回路では、上記切替スイッチは、上記モータに供給する平均電力が最大とするように、上記モータ用回路を動作させる第3の接点をさらに備えており、上記トリガーが第3の位置を越えて第4の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第2の接点から第3の接点に接続が切り替わるようになっていてもよい。この場合、モータを高速に回転させることができる。なお、上記モータに供給する平均電力を最大にするには、上記モータを連続的に駆動して、上記デューティ比を100%としたり、上記モータに流す電流を最大値としたりすればよい。
【0026】
本発明に係るトリガースイッチ回路では、上記発光用回路は、上記電源からの電力が供給される時に充電し、上記電源からの電力の供給が停止した時に上記発光素子に放電する残照用コンデンサを備えてもよい。この場合、上記トリガーが、第1の位置から初期位置に移動すると、上記電源からの電力が上記発光用回路に供給されなくなるが、上記残照用コンデンサが上記発光素子に放電するので、上記発光素子は暫時発光した後に消灯することになる。従って、上記トリガーを初期位置に戻した後も、上記発光素子が暫時発光する残照効果を奏するので、ユーザの利便性が向上する。
【0027】
なお、電源から供給される電力により動力を生成するモータを備える電動器具であって、発光素子と、上記モータの駆動および上記発光素子の発光を、トリガーに連動して制御するトリガースイッチ装置とを備えており、該トリガースイッチ装置は、上記トリガーに連動するトリガースイッチ回路であって、上記構成のトリガースイッチ回路を備える電動器具であれば、上述と同様の効果を奏することができる。
【0028】
また、上記電源は、上記電動器具に設けられた電池等の内部電源でもよいし、商用電源などの外部電源でもよい。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、発光用回路およびモータ用回路への電力の供給と、モータ用回路の動作とにおけるオン・オフは、2つのスイッチにて実現されると共に、モータを動作させずに照明する場合に、照明に関する回路以外の回路に電力が供給されないので、部品点数を増やすこと無く、無駄な電力消費を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態であるトリガースイッチ回路を含む電動器具の回路図である。
【図2】上記トリガースイッチ回路における摺動スイッチの構造を示す平面図および断面図である。
【図3】上記電動器具の各種部品がトリガーに連動してどのように動作するかを示すグラフである。
【図4】トリガースイッチ装置を含む従来の電動器具の回路図である。
【図5】上記トリガースイッチ装置における制御スイッチおよび補助スイッチの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態であるトリガースイッチ回路を含む電動器具の回路図である。電動器具としては、電動ドリルなどの電動工具、ドライヤーなどの家庭用電気器具、などが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、モータ、トリガースイッチ装置、および発光素子を備える任意の電動器具に適用することができる。なお、電動器具におけるトリガースイッチ装置の構造については、特許文献1などに詳述されているので、本願ではその説明を省略する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の電動器具10では、直流電源E、モータM、および発光ダイオード(発光素子)LEDと、トリガースイッチ回路11とが電気的に接続されている。直流電源Eは直流の電力の供給源であり、モータMは動力を生成する動力源であり、発光ダイオードLEDは光源である。発光ダイオードLEDは、照明用として電動器具10の表面に設けられる。
【0033】
なお、直流電源Eは、電動器具10に内蔵された電池であってもよいし、外部の商用交流電源を整流したものであってもよい。また、光源としては、発光ダイオードLEDの他、ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱灯など任意の光源を利用できる。
【0034】
トリガースイッチ回路11は、トリガーに連動して、モータMの動作をオン・オフし制御すると共に、発光ダイオードLEDの発光をオン・オフし制御するものである。トリガースイッチ回路11は、メインスイッチ(電源スイッチ)SW1、回転切替用スイッチSW2a・b、ブレーキ用スイッチSW3、スイッチング素子21、および還流用ダイオードD1と、回路基板に設けられた各種の回路からなる基板部22とを備える構成である。
【0035】
メインスイッチSW1は、電源Eから、モータMおよびトリガースイッチ回路11への電力供給をオン・オフするものである。回転切替用スイッチSW2a・bは、モータMに接続され、モータMの正回転および逆回転を切り替えるものである。ブレーキ用スイッチSW3は、回転切替用スイッチSW2a・bに接続され、モータMの短絡をオン・オフするものである。モータMを短絡することにより、モータMに逆起電力が発生し、これがブレーキとなってモータMが停止する。
【0036】
スイッチング素子21は、モータMと電源Eとの間に設けられ、基板部22からの指示に基づいて、モータMに供給する電力を高速にオン・オフするものである。これにより、モータMの回転速度が基板部22によって制御される。スイッチング素子21としては、FET(電界効果型トランジスタ)などが利用される。
【0037】
基板部22は、スイッチング素子21に指示してモータMの回転速度を制御する回転制御部(モータ用回路)31と、発光ダイオードLEDの発光を制御する発光制御部(発光用回路)32と、摺動スイッチ(切替スイッチ)SW4とを備える構成である。
【0038】
摺動スイッチSW4は、上記トリガーに連動して可動体が摺動することにより、可動体の可動接点が接触する固定接点が順次変化する(切り替わる)ものである。図2は、摺動スイッチSW4の構造を示す平面図および断面図である。図示のように、摺動スイッチSW4は、基板40上に固定接点A1〜A3・B1〜B3が設けられ、該固定接点上を可動体41が摺動するものである。可動体41は、初期位置では同図の(a)の状態となり、初期位置から摺動するにつれて、同図の(b)の状態となり、同図の(c)の状態となる。
【0039】
図2に示すように、一方の固定接点A1〜A3と、他方の固定接点B1〜B3とは、一直線上に離間して設けられている。また、可動体41の初期位置に近い方から順番に、固定接点A1・A2・A3が設けられ、固定接点B1・B2・B3が設けられている。また、図1に示すように、固定接点B2は、抵抗器として機能し、固定接点A1〜A3・B1・B3は、導体である。なお、図1の回路図から理解できるように、固定接点A1〜A3は、直ちに切り替わりかつ互いに接続しないように、互いに僅かに離間して設けることが望ましい。また、固定接点B1〜B3は、互いに接続されているので、連続して設けてもよい。
【0040】
図1の説明に戻ると、摺動スイッチSW4では、固定接点B1〜B3が直列に接続され、さらに、固定接点B1が電源Eに接続され、固定接点B3がメインスイッチSW1に接続されている。また、固定接点(第1の接点)A1は回転制御部31および発光制御部32に接続され、固定接点(第2の接点)A2および固定接点(第3の接点)A3は回転制御部31に接続されている。
【0041】
回転制御部31は、スイッチング素子51、制御回路52、差動アンプ53、および各種抵抗を備える構成である。
【0042】
スイッチング素子51は、NPN型トランジスタである。スイッチング素子51のコレクタは、抵抗を介して電源電圧端子Vccに接続すると共に、抵抗を介してスイッチング素子21のゲートに接続している。また、スイッチング素子51のエミッタは接地端子GNDに接続されている。
【0043】
従って、スイッチング素子51は、ベースがH(高)レベルになるとオンになり、これにより、スイッチング素子21は、ゲートがL(低)レベルになってオフになり、モータMへの電流が停止する。一方、スイッチング素子51は、ベースがLレベルになるとオフになり、これにより、スイッチング素子21は、ゲートがHレベルになってオンになり、モータMに電流が流れて回転力(トルク)が発生する。
【0044】
スイッチング素子51のベースは、抵抗および差動アンプ53を介して制御回路52に接続している。従って、制御回路52が出力し、差動アンプ53で増幅されたパルス信号に基づいて、スイッチング素子51が高速でオン・オフし、スイッチング素子21が高速でオフ・オンして、モータMの回転力の発生を高速でオフ・オンすることができる。
【0045】
制御回路52は、摺動スイッチSW4の固定接点A1に接続しており、固定接点A1の電位が高い場合に、上記パルス信号の出力を停止する。これにより、回転制御部31の動作が停止し、モータMの駆動も停止する。
【0046】
また、制御回路52は、摺動スイッチSW4の固定接点A2に接続しており、固定接点A2の電位に基づいて、上記パルス信号のデューティ比(1周期に対するパルス幅の比)を変化させている。従って、可動体41が摺動して、可動接点41aが固定接点A2に接続するとき、可動接点41bが固定接点B2に接続する位置に応じて、固定接点A2の電位が変化して、上記パルス信号のデューティ比が変化する。これにより、モータMに供給される平均電力を変化させて、モータMの回転速度を変化させることができる。さらに、制御回路52は、スイッチング素子21のドレン電圧をフィードバックしており、これにより、モータMの回転制御を安定化することができる。
【0047】
また、スイッチング素子51のベースは、摺動スイッチSW4の固定接点A3に接続している。従って、可動体41が摺動して固定接点A3・B3どうしが接続すると、スイッチング素子51のベースが常にLレベルとなる。従って、スイッチング素子51が常にオ
フとなり、スイッチング素子21が常にオン(デューティ比100%)となって、モータMには常に回転力が発生することになり、モータMが高速回転することになる。
【0048】
一方、発光制御部32は、スイッチング素子61・62、残照用コンデンサ63、および各種抵抗を備える構成である。
【0049】
スイッチング素子61は、PNP型トランジスタである。スイッチング素子61のエミッタは、発光ダイオードLEDを介して電源Eの正極端子に接続している。また、スイッチング素子61のコレクタは、メインスイッチSW1を介すること無しに、電源Eの負極端子に接続している。従って、スイッチング素子61は、ベースがLレベルになるとオンになり、これにより、発光ダイオードLEDは、電流が流れて発光する。一方、スイッチング素子61は、ベースがHレベルになるとオフになり、これにより、発光ダイオードLEDは、電流が停止して発光を停止する。
【0050】
スイッチング素子62は、NPN型トランジスタである。スイッチング素子62のコレクタは、スイッチング素子61のベースに接続すると共に、抵抗を介してスイッチング素子61のエミッタに接続している。また、スイッチング素子62のエミッタは、スイッチング素子61のコレクタに接続している。
【0051】
従って、スイッチング素子62は、ベースがHレベルになるとオンになり、これにより、スイッチング素子61は、ゲートがLレベルになってオンになり、発光ダイオードLEDが発光する。一方、スイッチング素子62は、ベースがLレベルになるとオフになり、これにより、スイッチング素子61は、ゲートがHレベルになってオフになり、発光ダイオードLEDは発光を停止する。
【0052】
残照用コンデンサ63は、一端がスイッチング素子62のベースに接続すると共に、他端がスイッチング素子62のエミッタに接続している。また、スイッチング素子62のベースと残照用コンデンサ63の一端とは、摺動スイッチSW4の固定接点A1に接続している。
【0053】
従って、摺動スイッチSW4の可動体41が摺動して、固定接点A1・B1どうしが接続すると、スイッチング素子62は、ベースがHレベルになってオンになり、これにより、スイッチング素子61がオンになって、発光ダイオードLEDが発光する。このとき、残照用コンデンサ63は充電することになる。
【0054】
一方、摺動スイッチSW4の可動体41が摺動して、固定接点A1・B1どうしが接続しなくなると、残照用コンデンサ63が放電することにより、スイッチング素子62は、しばらくオンを維持し、その後オフになる。これにより、発光ダイオードLEDは、しばらく発光し、その後発光を停止する。その結果、固定接点A1・B1間がオフになってもしばらく発光する残照効果を得ることができ、ユーザの利便性が向上する。
【0055】
本実施形態の発光制御部32は、スイッチング素子61のベースおよびコレクタ間にメインスイッチSW1が接続されている。従って、メインスイッチSW1がオンになると、スイッチング素子62の状態、固定接点A1・B1どうしの接続状態、および残照用コンデンサ63の状態に関係無く、スイッチング素子61はオンになり、発光ダイオードLEDが発光することになる。
【0056】
次に、上記構成の電動器具10の動作について説明する。図3は、電動器具10の各種部品がトリガーに連動してどのように動作するかを示すグラフである。同図のグラフには、摺動スイッチSW4の固定接点どうしの接続関係と、メインスイッチSW1のオン・オ
フと、制御回路52の動作と、発光ダイオードLEDの発光(点灯)状態と、モータMの回転力とが示されている。また、同図のグラフでは、横軸方向に進むにつれて、トリガーが引かれた(移動した)状態となっている。
【0057】
トリガーが引かれていない場合、トリガーは初期位置に存在し、摺動スイッチSW4の可動体41は、図2の(a)に示すように初期位置に存在する。このとき、可動体41は、何れの固定接点A1〜A3・B1〜B3にも接続していない。また、メインスイッチSW1はオフであり、ブレーキ用スイッチSW3がオンである。従って、制御回路52の動作はオフであり、発光ダイオードLEDは発光せず、モータMは停止している。
【0058】
そして、トリガーが引かれると、ブレーキ用スイッチSW3がオフとなり、モータMは回転可能となる。次に、トリガーがさらに引かれて第1の位置に到達すると、摺動スイッチSW4の可動体41は連動して摺動し、図2の(b)に示す位置に到達する。
【0059】
このとき、固定接点A1・B1どうしが接続するので、発光制御部32に電力が供給されて、発光ダイオードLEDが発光する。一方、メインスイッチSW1がオフであるので、発光制御部32以外の回路には電力が供給されない。従って、モータMを動作させずに照明する場合、モータMに関係する回路に電力が供給される従来のトリガースイッチ回路110に比べて、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0060】
次に、トリガーがさらに引かれて第2の位置に到達すると、摺動スイッチSW4の可動体41は、図2の(c)に示す位置(中間位置)に到達する。このとき、トリガーに連動してメインスイッチSW1がオンとなる。これにより、制御回路52および差動アンプ53に電力が供給される。しかしながら、図示のように、固定接点A1・B1どうしが接続しているので、制御回路52からのパルス信号の出力は停止され、モータMの停止が維持される。
【0061】
次に、トリガーがさらに引かれて第3の位置に到達すると、摺動スイッチSW4の可動体41が摺動して、固定接点A1・B1どうしの接続から、固定接点A2・B1どうしの接続に切り替わる。これにより、固定接点A2の電位が電源電圧Vccのレベルとなって、制御回路52がパルス信号の出力を開始し、モータMが回転を開始する。一方、発光制御部32は、固定接点A1からの電力の供給が停止するが、メインスイッチSW1による電力の供給が実行されているので、発光ダイオードLEDの発光が維持される。
【0062】
次に、トリガーがさらに引かれると、摺動スイッチSW4の可動体41は、固定接点A2・B1どうしの接続から、固定接点A2・B2どうしの接続に切り替わる。これにより、摺動スイッチSW4の可動体41の摺動に応じて、固定接点A2の電位が低下して、モータMの回転速度が増加する。
【0063】
次に、トリガーがさらに引かれると、摺動スイッチSW4の可動体41は、固定接点A2・B2どうしの接続から、固定接点A2・B3どうしの接続に切り替わる位置に摺動する。これにより、固定接点A2の電位の低下が停止して、モータMの回転力の増加が停止する。
【0064】
そして、トリガーがさらに引かれて第4の位置に到達すると、摺動スイッチSW4は、固定接点A2・B3どうしの接続から、固定接点A3・B3どうしの接続に切り替わる。これにより、制御回路52の動作に関係なく、スイッチング素子21が常にオンとなり、モータMの回転速度が最大となる。
【0065】
なお、上述の動作は可逆的であるので、トリガーを戻すと、上述の動作を逆戻りするよ
うな動作となる。但し、発光ダイオードLEDの発光は、トリガーを元に戻しても、残照用コンデンサ63によりしばらく発光し続ける。
【0066】
以上のように、本実施形態のトリガースイッチ回路11は、発光制御部32への電力の供給のオン・オフ、回転制御部31への電力の供給のオン・オフ、および、回転制御部31の動作のオン・オフを、メインスイッチSW1および摺動スイッチSW4という2つのスイッチにて実現している。従って、従来のトリガースイッチ回路110に比べて、スイッチの数を増やすことがないので、部品点数を増やすこと無く、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0067】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
例えば、図1に示す回路図は、一例に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、メインスイッチSW1を電源Eの正極側に設けることもできる。この場合、発光制御部32のスイッチング素子61・62は、PNP型、NPN型適宜変更すればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、制御回路52からのパルス信号のデューティ比を変化させることにより、モータMに供給する平均電力を変化させているが、モータMに流す電流を変化させてもよい。この場合、モータMに供給する平均電力を最大にするには、モータMに流す電流を最大にすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明に係るトリガースイッチ回路は、発光用回路およびモータ用回路への電力の供給と、モータ用回路の動作とにおけるオン・オフを2つのスイッチにて実現すると共に、モータを動作させずに照明する場合に、照明に関する回路以外の回路に電力を供給しないことにより、部品点数を増やすこと無く、無駄な電力消費を抑制できるので、モータ、発光素子、およびトリガースイッチ装置を有する任意の電動器具に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 電動器具
11 トリガースイッチ回路
21 スイッチング素子
22 基板部
31 回転制御部(モータ用回路)
32 発光制御部(発光用回路)
40 基板
41 可動体
41a・41b 可動接点
51 スイッチング素子
52 制御回路
53 差動アンプ
61・62 スイッチング素子
63 残照用コンデンサ
A1 固定接点(第1の接点)
A2 固定接点(第2の接点)
A3 固定接点(第3の接点)
LED 発光ダイオード(発光素子)
SW1 メインスイッチ(電源スイッチ)
SW4 摺動スイッチ(切替スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動器具のトリガーに連動するトリガースイッチ回路であって、
上記トリガーに連動して、電源からの電力の供給をオン・オフする電源スイッチと、
上記トリガーに連動して、接点が順次切り替わる切替スイッチと、
上記電動器具に設けられた発光素子を発光させるための発光用回路と、
上記電動器具に設けられたモータを駆動するためのモータ用回路とを備えており、
上記切替スイッチは、上記電源からの電力を上記電源スイッチを介さずに上記発光用回路に供給する第1の接点と、上記モータ用回路を動作させる第2の接点とを備えており、
上記トリガーが初期位置に存在する場合、上記電源スイッチはオフであり、上記切替スイッチは何れの接点とも接続しておらず、
上記トリガーが初期位置から第1の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第1の接点に接続し、
上記トリガーが第1の位置を越えて第2の位置に移動すると、上記電源スイッチはオンとなり、
上記トリガーが第2の位置を越えて第3の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第1の接点から第2の接点に接続が切り替わるようになっていることを特徴とするトリガースイッチ回路。
【請求項2】
上記切替スイッチの第1の接点は、さらに、上記モータ用回路の動作を停止させるものであることを特徴とする請求項1に記載のトリガースイッチ回路。
【請求項3】
上記モータ用回路は、さらに、上記モータに供給する平均電力を制御するものであり、
上記トリガーが第3の位置を越えて移動するにつれて、上記切替スイッチの第2の接点は、上記モータに供給する平均電力が増加するように、上記モータ用回路を動作させるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載のトリガースイッチ回路。
【請求項4】
上記切替スイッチは、上記モータに供給する平均電力が最大とするように、上記モータ用回路を動作させる第3の接点をさらに備えており、
上記トリガーが第3の位置を越えて第4の位置に移動すると、上記切替スイッチは、第2の接点から第3の接点に接続が切り替わるようになっていることを特徴とする請求項3に記載のトリガースイッチ回路。
【請求項5】
上記発光用回路は、上記電源からの電力が供給される時に充電し、上記電源からの電力の供給が停止した時に上記発光素子に放電する残照用コンデンサを備えることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載のトリガースイッチ回路。
【請求項6】
電源から供給される電力により動力を生成するモータを備える電動器具であって、
発光素子と、
上記モータの駆動および上記発光素子の発光を、トリガーに連動して制御するトリガースイッチ装置とを備えており、
該トリガースイッチ装置は、上記トリガーに連動するトリガースイッチ回路であって、請求項1から5までの何れか1項に記載のトリガースイッチ回路を備えることを特徴とする電動器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250294(P2012−250294A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122652(P2011−122652)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】