説明

トリガー式液体噴出器

【課題】 噴出器本体の前面上部から前方突出させた中心軸4付き射出筒5へ、ノズル孔付きキャップ本体11a と該キャップ本体外周面へ嵌着させた外周壁11bとからなる正面視ほぼ正三角形状のノズルキャップ11を嵌合させ、該キャップ下面から垂下させた操作板21でトリガー24前面を覆って、該状態で上記中心軸4と該中心軸外面へ嵌合させたノズルキャップの筒内面が有する第1、第2液体噴出路7,18 が遮断状態を保ち、上記操作板を正方向へ回動させたとき、上記両液体噴出路が連通するよう設けたトリガー式液体噴出器において、上記操作板を介して行うノズルキャップの過剰回動を確実に防止でき、又不用意にその過剰回動が生じないようにした。
【解決手段】 上記トリガー式液体噴出器において、上記両液体噴出路7,18 が連通したとき互いに係合して上記過剰回動を阻止する第1、第2係合面29、30を、トリガー上部の前面に付設した突部32の側面と、ノズルキャップの外面一部を切欠いて形成した外周壁11b およびキャップ本体11a 外周部の切欠き面とに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式液体噴出器は、噴出器本体の前面上部から前部に中心軸を有する射出筒を前方突出させ、該射出筒の前方突出部分外面へノズル孔付きのノズルキャップを嵌合させ、射出筒前部から前後方向への揺動が可能に垂設したトリガーを付勢に抗して後方へ引寄せ操作することで、容器体内液体をシリンダ内へ吸込み、かつ該シリンダ内液体を射出管を介して上記ノズル孔から噴出できるよう設けているが、上記ノズルキャップを射出筒に対して正逆両方向へ回動可能とし、その回動範囲の両端で射出筒側とノズル筒側とにそれぞれ付設した係合部が接して回動が停止し、その一方の回動停止位置で射出筒とノズルキャップとに設けた第1、第2液体噴出通路が遮断され、又他方回動停止位置で上記両通路が連通するよう設けている(特許文献1)。
【0003】
上記構成とすることで、両液体噴出通路遮断位置へノズルキャップを回動させておけば、トリガー操作しても液体噴出しないが、該遮断位置で誤ってトリガー操作すると射出筒内の噴出用液体が高圧化し、そのためトリガー操作をしなくてもノズルキャップを液体噴出通路連通位置へ回すだけで射出筒内液体がノズル孔から噴出することがあった。
【0004】
そのため上記遮断位置でのトリガー操作を不能とするためにノズルキャップからトリガー前面を覆う操作板を垂下させて、該操作板がトリガー前面を覆う状態で液体噴出通路が遮断し、又ノズルキャップの回動はその操作板を介して行うようにしたトリガー式液体噴出器も知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】実公昭60−27482号公報
【特許文献2】特開2004−89806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにノズルキャップから操作板を垂下させた場合は該操作板でノズルキャップを回動させることから該操作板がレバーの機能を果すこととなってトルクが大となり、よってノズルキャップが過剰に回動して液体噴出通路連通方向への回動を停止させるために設けた係合子を乗越えるおそれがあった。
【0007】
本発明はそのような欠点を除くため、上記係合部に代えて、又その係合部と共に、液体噴出通路開通方向へのノズルキャップの回動を阻止させる係合手段を設けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の手段として噴出器本体の前面上部から前方突出させた中心軸4付き射出筒5へ、ノズル孔付きキャップ本体11a と該キャップ本体外周面へ嵌着させた外周壁11b とからなる、正面視ほぼ正三角形状のノズルキャップ11を嵌合させ、該ノズルキャップの一角部19a から垂下してトリガー24前面を覆う操作板21を介して行うノズルキャップの正逆両方向回動で、ノズルキャップの他角部19b 又は上記一角部19a が下方に位置し、かつ射出筒の中心軸4とノズルキャップとが有する第1、第2液体噴出路7,18 が連通し、又断絶するトリガー式液体噴出器において、
上記両液体噴出路が連通したとき、互いに係合して過剰回動を阻止する第1係合面29と第2係合面30とを、トリガー上部の前面に付設した突部32の側面と、ノズルキャップの外面一部を切欠いて形成したキャップ本体11a 外周部の切欠き面とに形成した。
【0009】
第2の手段として、上記第1の手段を有し、かつ上記第2係合面30を、ノズルキャップの外面一部を切欠いて形成した上記外周壁11bの端部、およびキャップ本体11aの外周部の切欠き面とによって形成した。
【0010】
第3の手段として、上記第1または第2の手段を有し、かつ 上記ノズルキャップ11を後面開口の多重筒として、第1液体噴出路7付き中心軸4外面へ嵌合させた第2液体噴出路18付き最内筒17の外面と、該最内筒外面へ遊嵌させた射出筒5内面とに、上記第1、第2液体噴出路7、18が連通したときに係合する第1、第2係合突部27,28 を付設した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のようにすることで、トリガー式液体噴出器使用者が第1、第2係合面29、30の係合による、液体噴出通路連通方向への、つまり正方向へのノズルキャップ回動完了に気付き易く、よってそのノズルキャップの過剰回動を防ぐことが出来る。
【0012】
又それ等第1、第2係合面29,30 はトリガーおよびノズルキャップ外周部へ形成するから大きくしてもノズルキャップ内等に設ける場合と異って他物の邪魔となることがない。
【0013】
又ノズルキャップを正面視ほぼ正三角形状としてその一角部19a から操作板21を垂下させ、該操作板を介して行うノズルキャップの正逆両方向回動で一角部19a が下方に位置するとき両液体噴出路7,18 が遮断され、他角部19b が下方へ位置したとき両液体噴出路が連通するよう設けたから、それ等のいずれの場合も一辺部20a ないし他辺部20b がノズルキャップ上面で水平となることとなり、外見上液体噴出通路連通位置と遮断位置とを見分け易く、よって操作板21を介して行うノズルキャップの過剰な回動を未然に防止できる。
【0014】
請求項2記載のようにすることで、勢いよくノズルキャップを回動させた場合でも、より良好に過剰回動を防ぐことができる。
【0015】
請求項3のようにすることで、正方向へのノズルキャップの過剰回動阻止手段を二重に行うことができると共に、第1、第2係合突部27、28はノズルキャップの最内筒外面と射出筒5の内面とに付設するから、ノズルキャップに設ける第1係合突部27移動路としての空間をノズルキャップ内に位置させることが出来、よって該空間内へ埃等が入ってノズルキャップ回動の妨げとなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面について説明する。まず公知の部分について説明すると、1はトリガー式液体噴出器で該噴出器の上部内に、横設した射出管2前端へ仕切板3付きの射出部材2a を嵌着させ、該仕切板中心から中心軸4を、かつ該中心軸を囲んで射出筒5をそれぞれ前方突出し、その中心軸と射出筒との間の仕切板部分には透孔6を穿設して上記射出管内と射出筒内とを連通させている。中心軸4の前部外面へは第1液体噴出路7としての溝を母線方向へ穿設し、又中心軸前面へはスピン溝8を設けている。
【0017】
11はノズルキャップで、図示例にあっては該キャップをノズルキャップ本体11aと該ノズルキャップ本体外周面へ嵌着させた外周壁11bとで形成しており、そのキャップ本体は中心にノズル孔12を有する前壁板13外周から前方へ前筒14を、かつ後方へ後筒15を、それぞれ突出させており、前筒前端からは上記後筒15を囲んで折返し筒16を後方突出させている。又上記ノズル孔を囲んで前壁板中央部後面からは内筒17を後方突出させて中心軸4外面へ回動可能に嵌合させ、該内筒の後半内面へは第2液体噴出路18としての溝を穿設している。又内筒17と上記後筒15との間からは短く設けた中間筒を後方突出させ、該中間筒を既述射出筒5の前部内面へ嵌合させている。
【0018】
上記ノズルキャップ本体11a と外周壁11b とは、図2が示すように正面からみて、角先端部を面取りし、かつ各辺部を多少弯曲させたほぼ正三角形状としており、外周壁11b の一角部19aを下方に、又該一角部と向い合う一辺部20aをほぼ水平とした状態で、上記一角部19aから操作板21を垂下させている。尚該操作板の正方向回動側の側面からは図7が示すように係止板22をトリガー側面外方を通って後方突出させ、その後端面をシリンダ23の前端面へ係合している。
【0019】
24は上部を、二又状に分岐させたトリガーでそれ等両上端部を射出管前部の両側へ枢着させており、そのトリガー上部から後方突出させた棒25後端を噴出器本体が有するシリンダ23内から前方付勢させて前方突出させたプランジャ26前面の凹部内へ係合させることで、トリガーは前方付勢されている。尚該トリガー24は、図8が示すようにトリガー本体外面へ長く設けたカバー24aを嵌着させてレバー機能を高めることもあり、このようにトリガーは二体で形成してもよい。
【0020】
上記操作板21が図1、図2のように垂下して、トリガー24前面を覆う状態で既述第1、第2液体噴出通路7,18 は遮断され、それ等両通路が連通する図3の位置まで操作板21を正方向(図示例では反時計回り)へ回したとき、上記一角部19a と他角部間の他辺部20bがほぼ水平となり、かつ該他辺部と向い合う他角部19b がノズルキャップの下方に位置する。
【0021】
本発明にあっては、図5が示すように上記両通路連通状態で係合する第1係合面29と第2係合面30とを、トリガー24の上部前面に付設した突部32の側面と、ノズルキャップ11の外面一部を切欠いて形成した外周壁11b およびキャップ本体11a 外周部の切欠き面とに設けた。該キャップ本体11a 外周部の切欠き面は、図示例においては突部33を後方突出させ、該突部側面と外周壁切欠き面とを共に直線状に切欠いて形成した。第2係合面30はノズルキャップ11回動時に該ノズルキャップ後部に形成された弧状路31を通ることとなり、該弧状路は、図5が示すように角部においては該角部を切欠きし、又辺部においては両側を切欠き孔として辺部外方に形成している。
【0022】
又図3が示すように既述射出筒5内面と該射出筒内面へ遊嵌させた内筒17の外面とには、上記両通路連通状態で互いに係合する第1、第2係合突部27,28 を付設した。尚これ等両係合突部は必ずしも必要ではない。
【0023】
本発明は上記構成とするもので、上記実施形態にあっては図1、図2が示す操作板21垂下状態から図3のように他角部19b が下方へ、又他辺部20b が上方へ水平に位置する状態まで回動させたとき、第1、第2液体噴出路7,18 が連通し、このとき第1係合突部27と第2係合突部28とが係合し、又該係合と同時に図5が示すように第1係合面29と第2係合面30とが係合してノズルキャップ11の過剰回動を防止する。よって該状態からトリガー操作で液体噴出をさせることが出来る。
【0024】
液体噴出後に操作板21を復帰させれば該操作板から後方突出する係止板22が図7のようにトリガー側面へ接して復帰方向への過剰回動を停止させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明トリガー式液体噴出器要部の縦断面図である。
【図2】図1Y−Y’線を矢示方向へみた断面図である。
【図3】図2の状態から第1、第2液体噴出通路連通状態までノズルキャップを回動させて示す断面図である。
【図4】図3の第1、第2液体噴出通路連通状態形態で示す、トリガー式液体噴出器要部の縦断面図である。
【図5】図4Z−Z’線を矢示方向へみた断面図である。
【図6】図4のトリガー式液体噴出器を分解状態で示す斜視図である。
【図7】図1トリガー式液体噴出器の側面図である。
【図8】図4のトリガー外面へ、トリガーの1部としてのカバーを嵌着させた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
4 中心軸 5 射出筒
7 第1液体噴出路
11 ノズルキャップ 11a ノズルキャップ本体
11b 外周壁 18 第2液体噴出路
19a 一角部 19b 他角部
20a 一辺部 20b 他辺部
21 操作板 22 係止板
24 トリガー 27 第1係合突部
28 第2係合突部 29 第1係合面
30 第2係合面 31 弧状路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴出器本体の前面上部から前方突出させた中心軸4付き射出筒5へ、ノズル孔付きキャップ本体11a と該キャップ本体外周面へ嵌着させた外周壁11b とからなる、正面視ほぼ正三角形状のノズルキャップ11を嵌合させ、該ノズルキャップの一角部19a から垂下してトリガー24前面を覆う操作板21を介して行うノズルキャップの正逆両方向回動で、ノズルキャップの他角部19b 又は上記一角部19a が下方に位置し、かつ射出筒の中心軸4とノズルキャップとが有する第1、第2液体噴出路7,18 が連通し、又断絶するトリガー式液体噴出器において、
上記両液体噴出路が連通したとき、互いに係合して過剰回動を阻止する第1係合面29と第2係合面30とを、トリガー上部の前面に付設した突部32の側面と、ノズルキャップの外面一部を切欠いて形成したキャップ本体11a 外周部の切欠き面とに形成した
ことを特徴とするトリガー式液体噴出容器。
【請求項2】
上記第2係合面30を、ノズルキャップの外面一部を切欠いて形成した上記外周壁11bの端部、およびキャップ本体11aの外周部の切欠き面とによって形成した
ことを特徴とする、請求項1記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
上記ノズルキャップ11を後面開口の多重筒として、第1液体噴出路7付き中心軸4外面へ嵌合させた第2液体噴出路18付き最内筒17の外面と、該最内筒外面へ遊嵌させた射出筒5内面とに、上記第1、第2液体噴出路7、18が連通したときに係合する第1、第2係合突部27,28 を付設した
ことを特徴とする、請求項1または2記載のトリガー式液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−297219(P2006−297219A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119602(P2005−119602)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】