説明

トリクロロメタンスルホニルクロライドの製造方法

【課題】入手が容易で安価な原料を使用し、安全に製造することのできる、工業的に有利な方法を提供すること。
【解決手段】メタンスルホニルクロライドを塩素ガスと反応させることによりトリクロロメタンスルホニルクロライドを製造する方法である。特に、溶媒中で紫外線照射下において塩素ガスを吹き込みながら行うことにより、目的とするをトリクロロメタンスルホニルクロライドを収率よく製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリクロロメタンスルホニルクロライドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリクロロメタンスルホニルクロライドは、アクリルニトリルなどの重合開始剤として知られている。また、帯電防止剤として有用な(CFSONLiの製造原料としても使用されている。
塩化トリクロロメチルスルホニルの製造法としては、CClS(O)OHに塩素を反応させて製造する方法(非特許文献1)、CClSClをHなどの酸化剤により酸化して製造する方法(非特許文献2)などが知られている。
しかしながら、メタンスルホニルクロライドを塩素ガスと反応させることにより製造する方法については行われていなかった。
【0003】
【非特許文献1】Hauxue Xuebao,44(1)、45−50,1986
【非特許文献2】Liebigs Annalen der Chemie,(3)545−63,1982
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記方法よりも、入手が容易で安価な原料を使用し、安全に製造することのできる、工業的に有利な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、メタンスルホニルクロライドを塩素と反応させることにより効率よくトリクロロメタンスルホニルクロライドを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、メタンスルホニルクロライドを塩素ガスと反応させることによりトリクロロメタンスルホニルクロライドを製造する方法である。
また、本発明は溶媒中で紫外線照射下において塩素ガスを吹き込みながら行うことを特徴とする上記方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製法により、入手が容易で安価な原料を使用することができ、安全に製造することができ、かつ収率よくトリクロロメタンスルホニルクロライドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のトリクロロメタンスルホニルクロライドの製造法につき、以下に説明する。
本発明の製造法は、通常、溶媒中、紫外線照射下に塩素を吹き込みながら以下の反応行う。
CHSOCl → CClSOCl
【0009】
原料であるメタンスルホニルクロライドは不安定な液体であるが、安価に入手可能な原料である。
塩素化には、通常使用される塩素化剤も可能であるが、塩素含有ガスであることが好ましい。塩素含有ガスとしては、塩素ガス単独、あるいは窒素または空気などで希釈・混合されたガスなどが使用でき、装置などの条件に応じて選択できる。塩素の使用量は、通常、メタンスルホニルクロライドに対して3倍モルから大過剰、好ましくは5〜10倍モルを使用する。
塩素の吹き込み時間は、塩素ガスの濃度、温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜100時間程度である。
【0010】
また、反応温度は特に限定されるものではなく、反応速度を高める観点及び反応の制御を容易にする観点から、40℃〜150℃、好ましくは60〜100℃である。
また、本発明における塩素化反応は、通常、光照射下で行われるが、紫外線照射下で行うことが好ましい。
【0011】
紫外線 の照射に使用する光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ等の公知のものが挙げられる。通常、紫外線 の照射波長は、200〜450nm程度であることが好ましい。
紫外線の照射線量は、十分に塩素化を進行させるとともに、過剰に照射することによって生成物が切断されるのを防ぐことを考慮して決める。
【0012】
溶媒は、トリクロロメタンスルホニルクロライドの製造に対して影響を与えないものであれば特に制限はないが、クロロホルムを除いた四塩化炭素などの塩素系、ジクロロベンゼン等のハロゲン置換芳香族系が好ましい。無溶媒でもよい。したがって、溶媒は、生産性、操作性等の理由から、メタンスルホニルクロライドに対して通常0〜10倍量程度を使用する。
【0013】
反応終了後の処理方法としては、窒素などで過剰の塩素を追い出し、反応溶液を減圧濃縮又は冷却して結晶化後、ろ過、洗浄し、必要に応じて再結晶、クロマトグラフィー精製等の手段により単離することができる。
【0014】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
実施例1
四塩化炭素300mlに、メタンスルホニルクロライド20.0g(0.17mol)を加えた。UVランプ(400W)を照射し、内温を76度にした。そこへ塩素を50ml/minで20時間吹き込んだ後、窒素で過剰の塩素を追い出した。この溶液を減圧濃縮してトリクロロメタンスルホニルクロライドの粗結晶を36.5g(純度:97.2%)を得た。収率93.3%。融点135℃。
【0016】
実施例2
メタンスルホニルクロライド300ml(443.1g)に、UVランプ(400W)を照射し、内温を78度にした。そこへ塩素を50ml/minで36時間吹き込んだ。この時点でメタンスルホニルクロライド:トリクロロメタンスルホニルクロライドの比率が1:1程度になる(GC分析)。窒素で過剰の塩素を追い出した後、この溶液を10℃まで冷却すると結晶が析出してスラリーになる。このスラリーを5℃に冷却して濾過し、少量のN−ヘキサンで洗浄して粗トリクロロメタンスルホニルクロライド207.0g(純度98.3%)を得た。融点138℃。尚、濾液中には100.9gのトリクロロメタンスルホニルクロライドが溶解していた(GC分析)。
尚、上記実施例において定量に用いたGCの分析条件は以下の通りである。
GC分析条件/カラム:パックドカラム3.2φ×2m 、充填剤:Silicon DC−550(20%)、キャリア:He、温度 160℃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンスルホニルクロライドを塩素と反応させることを特徴とするトリクロロメタンスルホニルクロライドの製造方法。
【請求項2】
溶媒中、紫外線照射下において塩素ガスを吹き込みながら行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2008−127354(P2008−127354A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316031(P2006−316031)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【出願人】(390024419)森田化学工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】