トリポード型等速ジョイント
【課題】トルク伝達時におけるトリポード部材の接触面圧を低減可能なトリポード型等速ジョイントを提供する。
【解決手段】トリポード型等速ジョイント1は、中心軸C1からの距離が根元側から先端側に向かって短くなる湾曲形状のトルク伝達面31cを有する3つのトリポード軸部31が放射状に形成されたトリポード部材3と、トリポード軸部31に揺動可能に嵌合され、トルク伝達面31cに接触する接触面42bがトリポード軸部31の根元側から先端側に向かって内径が小さくなるように形成された環状のローラ部材4と、トリポード部材3及びローラ部材4を収容すると共にローラ部材4を回転軸O1方向に案内する案内溝20a,20bが形成された筒部20を有するアウターレース2とを備える。
【解決手段】トリポード型等速ジョイント1は、中心軸C1からの距離が根元側から先端側に向かって短くなる湾曲形状のトルク伝達面31cを有する3つのトリポード軸部31が放射状に形成されたトリポード部材3と、トリポード軸部31に揺動可能に嵌合され、トルク伝達面31cに接触する接触面42bがトリポード軸部31の根元側から先端側に向かって内径が小さくなるように形成された環状のローラ部材4と、トリポード部材3及びローラ部材4を収容すると共にローラ部材4を回転軸O1方向に案内する案内溝20a,20bが形成された筒部20を有するアウターレース2とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリポード型等速ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリポード部材のトリポード軸部に、インナーローラ及びアウターローラからなるローラ部材を嵌合したトリポード型等速ジョイントとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このトリポード型等速ジョイントでは、トリポード軸部のトルク伝達部を球状に形成することにより、トリポード軸部に対してローラ部材が揺動可能かつ軸方向に摺動可能となっている。トリポード軸部に対してローラ部材が揺動かつ摺動することで、入力軸及び出力軸の回転軸がなす角(ジョイント角)が大きくなった場合でも、アウターレースの案内溝の延伸方向とアウターローラの転動方向とが一致する。これにより、アウターローラがインナーローラに対して滑らかに回転するので、トルク伝達時の振動が抑制されている。
【0003】
また、本発明者は、特許文献1に記載のトリポード型等速ジョイントをさらに改良したものとして、特許文献2に記載のものを提案している。このトリポード型等速ジョイントでは、トリポード軸部の軸直交断面形状を、トルク伝達領域の根元側がほぼ円形で、先端側に行くに従って小さく且つ楕円形状になるよう、連続的に変化する形状としている。このような形状を採用することにより、トリポード型等速ジョイントの強度を高くし、あるいは小型化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−117108号公報
【特許文献2】特開2007−327617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12(A)は、上記特許文献2に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の回転軸に対する径方向断面図である。このトリポード型等速ジョイントは、アウターレース110、アウターローラ121及びインナーローラ122を有するローラ部材120、ボス部131及びトリポード軸部132を有するトリポード部材130を備えている。トリポード軸部132のインナーローラ122と接触するトルク伝達面132aは、トリポード軸部132の中心軸Cからの距離が根元側(図面下側)で最も長く、トリポード軸部131の先端側(図面上側)に行くに従って短くなっている(d10>d11)。インナーローラ122の内周面は、内径が軸方向に均一な円筒状に形成されている。
【0006】
上記の構成を備えたトリポード型等速ジョイントでトルクを伝達する際、ジョイント角が小さい場合(例えば6°以下の場合)には、トリポード軸部132の根元側にあたるインナーローラ122の内周面の端部にて、インナーローラ122とトリポード軸部132との接触が発生する。図12(B)に、図12(A)のトリポード軸部132の中心軸Cから反時計側の回転方向(図面左方)を見た場合の、トルク伝達時におけるインナーローラ122のトリポード軸部132との接触領域123の一例を示す。この図に示すように、接触領域123は、インナーローラ122の中心軸方向に長い楕円の、トリポード軸部132の根元側にあたる約半分が欠けた形状であり、その楕円中心部にて最も面圧が高くなる。
【0007】
この引用文献2に係るトリポード型等速ジョイントでは、例えば引用文献1に記載のもののようにトリポード軸部を球状に形成した場合に比べ、トルク伝達面132aの縦断面における曲率が小さいので、面圧を低減する一定の効果はある。しかし、上記のように接触領域123が理想的な楕円状とはならず、その一部が欠けてしまうため、この欠けが生じないとした場合に比べると、トルク伝達時の面圧が高くなってしまう。このため、その面圧に耐えられる大きさで各構成部材を設計しなければならないという点で、なお改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明は、トルク伝達時におけるトリポード軸部とインナーローラとの接触領域の面圧をより一層低減し、ひいては小型化を図ることが可能なトリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、以下のようにトリポード型等速ジョイントを構成する。すなわち、トリポード軸部は、その中心軸からの距離が根元側から先端側に向かって短くなる湾曲形状を有するトルク伝達面を有し、ローラ部材はトリポード軸部の根元側から先端側に向かって内径が小さくなる接触面で前記トルク伝達面に接触する。これにより、ローラ部材の内面が円筒状に形成された場合に比べ、トリポード軸部とローラ部材とがより広い面積で接触する。
【0010】
ローラ部材は、トリポード軸部との接触面をトリポード軸部の先端側に向かって縮径する円錐状に形成するとよく、その円錐角は0.5度以上とするとよい。これにより、本発明の効果をより確実に奏することができる。
【0011】
トリポード軸部は、その中心軸を含む縦断面におけるトルク伝達面の形状を、根元側から先端側に向かって曲率が大きくなる曲線で形成するとよい。これにより、トリポード軸部とローラ部材が揺動しやすくなる。
【0012】
トリポード軸部の縦断面におけるトルク伝達面の曲率半径は、トルク伝達面の根元側端部とトリポード軸部の中心軸との距離よりも大きくするとよい。これにより、トリポード軸部を球状に形成した場合に比べてより広い面積でトリポード軸部とインナーローラが接触する。
【0013】
トリポード軸部は、その中心軸に直交する横断面において、トルク伝達方向の幅よりも回転軸方向の幅を小さくするとよい。これにより、トリポード軸部の縦断面における外周面の曲率半径をトルク伝達面の根元側端部とトリポード軸部の中心軸との距離よりも大きくしても、ジョイント角に応じてトリポード軸部とローラ部材が揺動できる。
【0014】
ローラ部材のトリポード軸部の根元側にあたる端部には、ローラ部材の中心軸に対してトリポード軸部との接触面よりも大きな傾斜角を有して根元に向かって広がる傾斜面を形成するとよい。これにより、ローラ部材とトリポード軸部との不要な干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トリポード型等速ジョイントのトルク伝達時における接触部の面圧を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの全体を説明するために示す一部断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの全体を説明するために示す一部断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の外観図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード軸部の横断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのローラ部材の断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの組み付け状態を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の製造方法を示す説明図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの効果を説明する説明図である。
【図11】図11は、本発明のトリポード型等速ジョイントのインナーローラの変形例を示す図である。
【図12】図12は、従来のトリポード型等速ジョイントの説明図である。図12(A)はトリポード型等速ジョイントの断面図であり、図12(B)はインナーローラの一部を切断して示すトリポード軸部との接触領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態の一例につき、全体構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は、アウターレース2の回転軸O1とトリポード部材3の回転軸O2が一致した状態におけるトリポード型等速ジョイント1を回転軸O1及び回転軸O2の方向から見た状態を示す。図1では、説明のため、3個のローラ部材4のうちの1つをローラ部材4の中心軸に沿った断面で切断して示している。図2はトリポード型等速ジョイント1の一部を回転軸O1に沿った断面で切断した状態を示す。
【0018】
〔トリポード型等速ジョイントの全体構成〕
図1及び図2に示すトリポード型等速ジョイント1は、例えば車両のディファレンシャル装置の車輪側に配置され、駆動源のトルクを正回転方向及び逆回転方向に伝達する第1の駆動力伝達部材及び第2の駆動力伝達部材を揺動可能かつ軸方向摺動可能に連結するために用いられる。このトリポード型等速ジョイント1は、第1の駆動力伝達部材(図略)と一体回転するように連結されたアウターレース2と、第2の駆動力伝達部材(図略)と一体回転するように連結されたトリポード部材3と、アウターレース2及びトリポード部材3の間に介在する3つのローラ部材4とから大略構成されている。ローラ部材4はトリポード軸部31に揺動可能に嵌合される。また、ローラ部材4はトリポード軸部31(トルク伝達面31c)に沿って相対的に摺動可能である。
【0019】
(アウターレース2の構成)
図2に示すように、アウターレース2は全体として有底筒状を呈し、内側に空間が形成された中空状の筒部20と、筒部20の一端を閉塞する底部21と、底部21の筒部20とは反対側に立設された軸部22とからなる。軸部22には、第1の駆動力伝達部材がスプライン嵌合等の周知の手段により一体回転するように連結される。
【0020】
筒部20の内周面には、アウターレース2の回転軸O1に平行な方向に延びて対を成す案内面としての案内溝20a,20bが3対形成されている。案内溝20aと案内溝20bはローラ部材4を挟んで対向している。ローラ部材4と案内溝20a又は案内溝20bとは、トルク伝達時に2点でアンギュラコンタクトしてトルクを伝達する。案内溝20aと案内溝20bは、ローラ部材4を回転軸O1に沿った方向に案内する。
【0021】
(トリポード部材3の構成)
トリポード部材3は、シャフト状の第2の駆動力伝達部材(図略)が内面にスプライン嵌合される円環状のボス部30と、ボス部30の外周側に等間隔で放射状に形成された3つのトリポード軸部31とからなる。ボス部30に設けられた貫通穴の内面には、第2の駆動力伝達部材と係合するスプライン部30aが形成されている。トリポード部材3は、アウターレース2の筒部20の内側に配置され、各トリポード軸部31には、それぞれローラ部材4が揺動かつ摺動可能に嵌合される。
【0022】
<トリポード軸部31の形状>
図3は、トリポード軸部31を、その中心軸C1を含みトリポード部材3の回転軸O2に直交する断面で切断した縦断図である。トリポード軸部31は、根元側(ボス部30側)に形成された直線部31aと、直線部31aに連続して先端側に形成された曲線部31bを有している。トリポード軸部31はその中心軸C1に対して対称に形成されており、トリポード軸部31の図面右側にも同様に、直線部31aと曲線部31bが形成されている。
【0023】
直線部31aは、中心軸C1に対して平行に形成された部分である。また、曲線部31bは、中心軸C1から外周面までの距離dが根元側から先端側に向かって漸次短くなる湾曲形状に形成された部分である。中心軸C1方向の幅に対する距離dの変化量は、トリポード軸部31の先端側ほど大きくなっている。すなわち、曲線部31bの曲率は、根元側では小さく、先端側に近づくに従って大きくなり、先端面31d付近で最も大きくなる。このように、トリポード軸部31の曲線部31bは、外側に膨らむ湾曲形状であり、より具体的にはインボリュート曲線で形成されている。
【0024】
トリポード軸部31は、ローラ部材4を構成するインナーローラ42の内周面に当接してトルクを伝達するトルク伝達面31cを有している。ここで、トルク伝達面31cは、トリポード型等速ジョイント1が車両等に組み込まれた実使用状態において、インナーローラ42の内周面との接触が発生し得る領域である。トルク伝達面31cは、曲線部31bの一部からなる。トルク伝達面31cは、トリポード軸部31のトルク伝達方向の両端部を中心に、中心軸C1の周方向に広がりをもつ領域である。
【0025】
また、中心軸C1に沿った断面におけるトルク伝達面31cの曲率半径は、その全領域において、トルク伝達面31cの根元側端部の中心軸C1からの距離(d1)よりも大きい。さらには、このトルク伝達面31cの曲率半径は、その全領域において、直線部31aの中心軸C1からの距離(d0)よりも大きい。すなわち、例えば特許文献1に係るトリポード型等速ジョイントのように、トリポード軸部のトルク伝達部を球状に形成した場合よりも、トルク伝達面31cの縦断面における曲率半径が大きく形成されている。これにより、トルク伝達時の面圧が低減される。
【0026】
図4は、トリポード部材3をトリポード軸部31の中心軸C1の方向から見た外観を実線で示し、インナーローラ42の内周面を破線で示す図である。この図に示すように、トリポード軸部31は、トリポード部材3の回転軸O2方向の幅が、回転軸O2及び中心軸C1に直交する図4のqの方向(以下「トルク伝達方向」という。)の幅よりも小さく形成されている。これにより、トリポード軸部31とローラ部材4との間には、回転軸O2方向においてトルク伝達方向よりも大きな隙間が形成される。これにより、図2に二点鎖線で示すように、ローラ部材4がトリポード部材3に嵌合された状態で相対的に揺動することが可能である。
【0027】
図5は、トリポード軸部31のトルク伝達面31cを含む領域を中心軸C1に直交する面で切断した横断面(図3のA−A断面)における外郭線を示す図である。トリポード軸部31の横断面の外郭線は、4つのインボリュート曲線I1〜I4と、その間を接続する2本の線分S1,S2で形成される。インボリュート曲線I1〜I4は、始点R1から終点R2に向かうに従ってその曲率が次第に大きくなる。始点R1はトルク伝達方向(図面左右方向)の端部に位置しているので、トリポード軸部31の横断面におけるトルク伝達面31cは、トルク伝達方向の端部で最も曲率が小さくなり、この端部から離間するに従って徐々に曲率が大きくなる。トリポード部材3の回転軸O2方向(図面の上下方向)の両端部は、インボリュート曲線I1とI2を接続するトルク伝達方向に平行な線分S1、及びインボリュート曲線I3とI4を接続するトルク伝達方向に平行な線分S2で形成される。
【0028】
図6は、トリポード部材3のトリポード軸部31の一つを斜め方向から見た斜視図である。トリポード軸部31は根元側から先端側に向かって全体が細くなるように形成されており、中心軸C1に平行なあらゆる断面において根元側から先端部に向かって太くなる部分がない。
【0029】
(ローラ部材4の構成)
図7は、ローラ部材4をその中心線C2に沿った面で切断した断面を示す図である。ローラ部材4はアウターレース2の案内溝20a,20bに外周面が対向するアウターローラ41と、アウターローラ41の内側に同軸配置されたインナーローラ42と、アウターローラ41とインナーローラ42の間に配置された複数の転動体43とを備えている。インナーローラ42とアウターローラ41は環状であり、ローラ部材4もまた環状である。転動体43としては針状ころが採用されている。
【0030】
アウターローラ41の軸方向一側には、内方に突出した鍔部41aが形成されている。鍔部41aの内径はインナーローラ42の外径よりも小さく形成され、インナーローラ42及び転動体43の軸方向移動が規制されている。一方、アウターローラ41の軸方向他側にはスナップリング44が嵌め込まれ、このスナップリング44によってインナーローラ42及び転動体43の軸方向移動が規制されている。この構成により、アウターローラ41とインナーローラ42は同軸上で相対回転可能である。
【0031】
インナーローラ42の内周面には、アウターレース2に組み込まれた際にアウターレース2の外周側に位置する外側端面421から反対側の内側端面422に向かって、第1テーパ部42a、第2テーパ部42b、第3テーパ部42cの3つのテーパ部が連続して形成されている。
【0032】
これらテーパ部のうち、トリポード軸部31のトルク伝達面31cに接触してトルクを伝達するのは第2テーパ部42bである。本実施の形態では、第2テーパ部42bが本発明の接触面に相当する。第1テーパ部42a及び第3テーパ部42cは、インナーローラ42とトリポード部材3との不要な干渉を避けるために形成されたものであり、トルク伝達には直接寄与しない。第2テーパ部42bは図7に示す断面において直線状であり、その曲率はゼロである。なお、トリポード軸部31に嵌合された状態では、外側端面421がトリポード軸部31の先端側にあたり、内側端面422がトリポード軸部31の根元側にあたる。
【0033】
第1テーパ部42aは、外側端面421側の開口部に向かって拡径する円錐状に形成されている。その円錐面が中心軸C2となす角(円錐角)は5°に設定されている。
【0034】
第2テーパ部42bは、内側端面422の側(トリポード軸部31の根元側)から外側端面421の側(トリポード軸部31の先端側)に向かってその内径が小さくなる円錐状に形成されている。その円錐面の円錐角はトルク伝達面31cの曲率に対応した角度に設定される。より具体的には、第2テーパ部42bの円錐角は、図3に示したトリポード軸部31の断面図において、トルク伝達面31cの先端側端部における接線TL1が中心軸C1となす角よりも小さく、トルク伝達面31cの根元側端部における接線TL2が中心軸C1となす角よりも大きい。
【0035】
トリポード軸部31及びインナーローラ42は、第2テーパ部42bの円錐角が0.5°以上になるように形成することが望ましい。0.5°未満では後述する本発明の効果を十分に奏することができないからである。また、この円錐角は5°以下に設定することが望ましい。5°を超えると、トリポード型等速ジョイント1の組み付け時に、トリポード軸部31にローラ部材4が圧入された状態になりやすく、組み付けに支障が生じ得るからである。円錐角のより望ましい範囲は、0.7°以上3°以下である。この範囲であれば、本発明の効果をより確実に奏することができるとともに、組み付けに支障が生じることを抑制できる。本実施形態では、円錐角が1°に設定されている。なお、図7等の各図面では、説明のため、第2テーパ部42bの円錐角を誇張して表現している。
【0036】
第3テーパ部42cは、内側端面422側の開口部に向かって拡径する円錐状に形成されている。その円錐面の円錐角は第2テーパ部42bの円錐角よりも大きい角度(例えば20°)に設定されている。
【0037】
(トリポード型等速ジョイント1の組み付け状態)
図8は、ジョイント角がゼロの状態におけるトリポード型等速ジョイント1をトリポード部材3の回転軸O2の方向から見た図である。トリポード軸部31のトルク伝達方向両側におけるトルク伝達面31cの直線部31aと曲線部31bとの境界を結ぶ直線L1と回転軸O2との距離rは、アウターローラ41の外周面のうち案内溝20a及び案内溝20bと接触してトルクを伝達する領域の軸方向中心部を結ぶ直線L2と回転軸O2との距離PCRよりも短い。これにより、ジョイント角をとった場合にもローラ部材4とトリポード部材3が滑らかに揺動可能である。距離rは、距離PCRの0.8から0.95倍であることが望ましい。本実施の形態では、この倍率が0.9(r=0.9×PCR)に設定されている。
【0038】
(トリポード部材3の製造方法)
ここで、トリポード部材3の製造方法について説明する。トリポード部材3を形成する工程は、鍛造工程と研削工程からなる。鍛造工程は、素材を鍛造し、ボス部30の外側に3つのトリポード軸部31が立設された形状に加工する工程である。この工程で用いる鍛造金型にはトリポード軸部31の形状に対応した凹部が形成されている。素材が圧力を加えられてこの凹部の形状に合わせて塑性流動することで、トリポード軸部31が大略成型される。
【0039】
研削工程は、トリポード軸部31の外周面を研削し、高精度に加工する工程である。以下にこの研削工程を詳細に説明する。
【0040】
図9は、研削工程におけるトリポード部材3及び砥石50を示す図である。研削工程で用いる砥石50の外周面は、トリポード軸部31の縦断面の仕上がり形状に対応する形状を有している。この砥石50をその駆動軸51を中心に回転させながらトリポード軸部31の外周面に押し当て、トリポード軸部31の周りを周回させることにより、外周面の研削加工がなされる。
【0041】
このように研削加工されたトリポード軸部31は、トリポード軸部31の中心軸C1に平行で、かつ研削された箇所における法線を含む断面の外周面が、いずれの箇所においても図3に示したものと同様の曲線を描くこととなる。
【0042】
(トリポード型等速ジョイント1の動作)
次に、トリポード型等速ジョイント1の動作について説明する。ジョイント角がゼロの状態では、図1及び図2に実線で示したように、ローラ部材4がトリポード軸部31の根元側に位置し、トリポード軸部31のトルク伝達方向の一側のトルク伝達面31cとインナーローラ42の第2テーパ部42bとが接触してトルクを伝達する。この状態では、アウターレース2が回転しても、トリポード軸部31とローラ部材4とが摺動することがない。
【0043】
アウターレース2の回転軸O1とトリポード部材3の回転軸O2とが傾き、ジョイント角をとった場合には、例えば図2に二点鎖線で示すように、トリポード軸部31がローラ部材4の内側端面422側に相対的に摺動しながら揺動する。この際、アウターレース2の回転軸O1の方向から見た状態においても、ローラ部材4に対してトリポード軸部31が揺動し、ローラ部材4の中心軸C2とトリポード軸部31の中心軸C1とが僅かに傾斜する。この傾斜に伴って、ローラ部材4の第2テーパ部42bにトリポード軸部31のトルク伝達面31が接触する位置が、トリポード軸部31の先端側に移動する。
【0044】
トリポード軸部31の先端側では、トルク伝達面31cの曲率が大きくなるので、ジョイント角がゼロの場合よりは接触領域の面積が狭く、面圧が高くなるが、前述のようにトルク伝達面31cの曲率半径は直線部31aの中心軸C1からの距離よりも大きいので、例えば特許文献1に記載のようにトリポード軸部を球状に形成した場合よりも面圧が抑えられている。
【0045】
[本実施の形態の作用効果]
本実施の形態の作用及び効果を以下に説明する。
【0046】
(1)トリポード軸部31の先端側に向かって細くなる曲線部31bを有するトルク伝達面31cと、同じくトリポード軸部31の先端側に向かって内径が小さくなるインナーローラ42の第2テーパ部42bが接触してトルクを伝達するので、インナーローラ42の内周面が円筒状である場合に比べ、トリポード軸部31とインナーローラ42とがより広い面積で接触する。図10は、この効果を説明するために示す、トリポード軸部31の中心軸C1側からインナーローラ42の内周面を見た場合の、第2テーパ部42bとトルク伝達面31cとの接触領域423を表した図である。この図に示すように、第2テーパ部42bが中心軸C2に対して傾斜しているため、インナーローラの内周面が円筒状である場合よりも接触領域がトリポード軸部31の先端側(図の上側)に移動する。このため、図12(B)に示したように接触領域が欠けることがなく、楕円状の接触領域で両部材が接触する。このため、トルク伝達時の面圧を下げることができ、ひいては高強度化、高耐久化、又は小型化を実現することができる。
【0047】
(2)インナーローラ42の第2テーパ部42bはトリポード軸部31の根元側に向かって広がり、第2テーパ部42bの内側端面422側には第2テーパ部42bの円錐角よりも大きな円錐角を有する第3テーパ部42cが形成されている。すなわち、インナーローラ42の内周面の内径がトリポード軸部31の根元側に向かって拡大しているので、トリポード軸部31のトルク伝達方向両側のうち、トルクを伝達しないトルク非伝達側にてトリポード軸部31とインナーローラ42との接触が発生することを抑制できる。つまり、トリポード軸部31が根元側に向かって太くなる形状を採用することにより、トリポード部材3のローラ部材4に対する揺動に伴って、トルク非伝達側におけるトリポード軸部31の根元付近でローラ部材4との接触が発生しやすくなり、この接触の発生により揺動時の抵抗が増すおそれがあるが、本実施の形態によればトルク非伝達側での接触を回避でき、または接触するとしてもその接触部の面圧を下げることができるので、トリポード部材3とローラ部材4との揺動がより滑らかになる。
【0048】
(3)トリポード軸部31は、根元側で最も太く、先端部に向かって細くなる形状であるので、鍛造が容易であり、鍛造金型の寿命も長くなる。つまり、例えば特許文献1に記載されたトリポード型等速ジョイントのように、トリポード軸部を球状とした場合には、鍛造用金型の中で外側に膨らむように素材を流動させる必要があり、そのために大きな荷重が必要となるが、本実施の形態に係るトリポード部材3の加工では、比較的小さな荷重で鍛造を行うことができる。また、トリポード軸部31の表面形状は、その中心軸C1に沿った縦断面において一様であるので、砥石によって容易に研削加工が行える。
【0049】
[他の実施の形態]
以上、本発明のトリポード型等速ジョイントを実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0050】
(1)インナーローラ42の内周面でトリポード軸部31と接触し、トルクを伝達する領域は、断面が直線状の円錐面ではなく、断面が曲線を描いて径方向外側に膨らんだ曲面でもよい。このようにインナーローラ42を形成した一例を図11に示す。この図に示すように、トリポード軸部31のトルク伝達面31cと接触する接触面は、内側端面422側から外側端面421側に向かって内径が小さくなる曲面状縮径部42b1で構成される。この曲面状縮径部42b1の曲率は、トルク伝達面31cの曲率よりも大きく形成されている。このようにインナーローラ42を形成することで、より広い面積でトルクを伝達することができ、面圧を下げることができる。
【0051】
(2)インナーローラ42の第1テーパ部42aは無くともよい。この場合には、第2テーパ部42b又は曲面状縮径部42b1が外側端面421側まで到達することになる。
【0052】
(3)トリポード軸部31に直線部31aを設けず、曲線部31bで全体を構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・トリポード型等速ジョイント、2・・・アウターレース、3・・・トリポード部材、4・・・ローラ部材、20・・・筒部、20a,20b・・・案内溝、21・・・底部、22・・・軸部、30・・・ボス部、30a・・・スプライン部、31・・・トリポード軸部、31a・・・直線部、31b・・・曲線部、31c・・・トルク伝達面、41・・・アウターローラ、41a・・・鍔部、42・・・インナーローラ、42a・・・第1テーパ部、42b・・・第2テーパ部、42b1・・・曲面状縮径部、42c・・・第3テーパ部、43・・・転動体、44・・・スナップリング、50・・・砥石、51・・・駆動軸、110・・・アウターレース、120・・・ローラ部材、121・・・アウターローラ、122・・・インナーローラ、123・・・接触領域、130・・・トリポード部材、131・・・ボス部、131・・・トリポード軸部、132・・・トリポード軸部、132a・・・トルク伝達面、421・・・外側端面、422・・・内側端面、423・・・接触領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリポード型等速ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリポード部材のトリポード軸部に、インナーローラ及びアウターローラからなるローラ部材を嵌合したトリポード型等速ジョイントとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このトリポード型等速ジョイントでは、トリポード軸部のトルク伝達部を球状に形成することにより、トリポード軸部に対してローラ部材が揺動可能かつ軸方向に摺動可能となっている。トリポード軸部に対してローラ部材が揺動かつ摺動することで、入力軸及び出力軸の回転軸がなす角(ジョイント角)が大きくなった場合でも、アウターレースの案内溝の延伸方向とアウターローラの転動方向とが一致する。これにより、アウターローラがインナーローラに対して滑らかに回転するので、トルク伝達時の振動が抑制されている。
【0003】
また、本発明者は、特許文献1に記載のトリポード型等速ジョイントをさらに改良したものとして、特許文献2に記載のものを提案している。このトリポード型等速ジョイントでは、トリポード軸部の軸直交断面形状を、トルク伝達領域の根元側がほぼ円形で、先端側に行くに従って小さく且つ楕円形状になるよう、連続的に変化する形状としている。このような形状を採用することにより、トリポード型等速ジョイントの強度を高くし、あるいは小型化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−117108号公報
【特許文献2】特開2007−327617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12(A)は、上記特許文献2に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の回転軸に対する径方向断面図である。このトリポード型等速ジョイントは、アウターレース110、アウターローラ121及びインナーローラ122を有するローラ部材120、ボス部131及びトリポード軸部132を有するトリポード部材130を備えている。トリポード軸部132のインナーローラ122と接触するトルク伝達面132aは、トリポード軸部132の中心軸Cからの距離が根元側(図面下側)で最も長く、トリポード軸部131の先端側(図面上側)に行くに従って短くなっている(d10>d11)。インナーローラ122の内周面は、内径が軸方向に均一な円筒状に形成されている。
【0006】
上記の構成を備えたトリポード型等速ジョイントでトルクを伝達する際、ジョイント角が小さい場合(例えば6°以下の場合)には、トリポード軸部132の根元側にあたるインナーローラ122の内周面の端部にて、インナーローラ122とトリポード軸部132との接触が発生する。図12(B)に、図12(A)のトリポード軸部132の中心軸Cから反時計側の回転方向(図面左方)を見た場合の、トルク伝達時におけるインナーローラ122のトリポード軸部132との接触領域123の一例を示す。この図に示すように、接触領域123は、インナーローラ122の中心軸方向に長い楕円の、トリポード軸部132の根元側にあたる約半分が欠けた形状であり、その楕円中心部にて最も面圧が高くなる。
【0007】
この引用文献2に係るトリポード型等速ジョイントでは、例えば引用文献1に記載のもののようにトリポード軸部を球状に形成した場合に比べ、トルク伝達面132aの縦断面における曲率が小さいので、面圧を低減する一定の効果はある。しかし、上記のように接触領域123が理想的な楕円状とはならず、その一部が欠けてしまうため、この欠けが生じないとした場合に比べると、トルク伝達時の面圧が高くなってしまう。このため、その面圧に耐えられる大きさで各構成部材を設計しなければならないという点で、なお改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明は、トルク伝達時におけるトリポード軸部とインナーローラとの接触領域の面圧をより一層低減し、ひいては小型化を図ることが可能なトリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、以下のようにトリポード型等速ジョイントを構成する。すなわち、トリポード軸部は、その中心軸からの距離が根元側から先端側に向かって短くなる湾曲形状を有するトルク伝達面を有し、ローラ部材はトリポード軸部の根元側から先端側に向かって内径が小さくなる接触面で前記トルク伝達面に接触する。これにより、ローラ部材の内面が円筒状に形成された場合に比べ、トリポード軸部とローラ部材とがより広い面積で接触する。
【0010】
ローラ部材は、トリポード軸部との接触面をトリポード軸部の先端側に向かって縮径する円錐状に形成するとよく、その円錐角は0.5度以上とするとよい。これにより、本発明の効果をより確実に奏することができる。
【0011】
トリポード軸部は、その中心軸を含む縦断面におけるトルク伝達面の形状を、根元側から先端側に向かって曲率が大きくなる曲線で形成するとよい。これにより、トリポード軸部とローラ部材が揺動しやすくなる。
【0012】
トリポード軸部の縦断面におけるトルク伝達面の曲率半径は、トルク伝達面の根元側端部とトリポード軸部の中心軸との距離よりも大きくするとよい。これにより、トリポード軸部を球状に形成した場合に比べてより広い面積でトリポード軸部とインナーローラが接触する。
【0013】
トリポード軸部は、その中心軸に直交する横断面において、トルク伝達方向の幅よりも回転軸方向の幅を小さくするとよい。これにより、トリポード軸部の縦断面における外周面の曲率半径をトルク伝達面の根元側端部とトリポード軸部の中心軸との距離よりも大きくしても、ジョイント角に応じてトリポード軸部とローラ部材が揺動できる。
【0014】
ローラ部材のトリポード軸部の根元側にあたる端部には、ローラ部材の中心軸に対してトリポード軸部との接触面よりも大きな傾斜角を有して根元に向かって広がる傾斜面を形成するとよい。これにより、ローラ部材とトリポード軸部との不要な干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トリポード型等速ジョイントのトルク伝達時における接触部の面圧を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの全体を説明するために示す一部断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの全体を説明するために示す一部断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の外観図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード軸部の横断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのローラ部材の断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの組み付け状態を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントのトリポード部材の製造方法を示す説明図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係るトリポード型等速ジョイントの効果を説明する説明図である。
【図11】図11は、本発明のトリポード型等速ジョイントのインナーローラの変形例を示す図である。
【図12】図12は、従来のトリポード型等速ジョイントの説明図である。図12(A)はトリポード型等速ジョイントの断面図であり、図12(B)はインナーローラの一部を切断して示すトリポード軸部との接触領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態の一例につき、全体構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は、アウターレース2の回転軸O1とトリポード部材3の回転軸O2が一致した状態におけるトリポード型等速ジョイント1を回転軸O1及び回転軸O2の方向から見た状態を示す。図1では、説明のため、3個のローラ部材4のうちの1つをローラ部材4の中心軸に沿った断面で切断して示している。図2はトリポード型等速ジョイント1の一部を回転軸O1に沿った断面で切断した状態を示す。
【0018】
〔トリポード型等速ジョイントの全体構成〕
図1及び図2に示すトリポード型等速ジョイント1は、例えば車両のディファレンシャル装置の車輪側に配置され、駆動源のトルクを正回転方向及び逆回転方向に伝達する第1の駆動力伝達部材及び第2の駆動力伝達部材を揺動可能かつ軸方向摺動可能に連結するために用いられる。このトリポード型等速ジョイント1は、第1の駆動力伝達部材(図略)と一体回転するように連結されたアウターレース2と、第2の駆動力伝達部材(図略)と一体回転するように連結されたトリポード部材3と、アウターレース2及びトリポード部材3の間に介在する3つのローラ部材4とから大略構成されている。ローラ部材4はトリポード軸部31に揺動可能に嵌合される。また、ローラ部材4はトリポード軸部31(トルク伝達面31c)に沿って相対的に摺動可能である。
【0019】
(アウターレース2の構成)
図2に示すように、アウターレース2は全体として有底筒状を呈し、内側に空間が形成された中空状の筒部20と、筒部20の一端を閉塞する底部21と、底部21の筒部20とは反対側に立設された軸部22とからなる。軸部22には、第1の駆動力伝達部材がスプライン嵌合等の周知の手段により一体回転するように連結される。
【0020】
筒部20の内周面には、アウターレース2の回転軸O1に平行な方向に延びて対を成す案内面としての案内溝20a,20bが3対形成されている。案内溝20aと案内溝20bはローラ部材4を挟んで対向している。ローラ部材4と案内溝20a又は案内溝20bとは、トルク伝達時に2点でアンギュラコンタクトしてトルクを伝達する。案内溝20aと案内溝20bは、ローラ部材4を回転軸O1に沿った方向に案内する。
【0021】
(トリポード部材3の構成)
トリポード部材3は、シャフト状の第2の駆動力伝達部材(図略)が内面にスプライン嵌合される円環状のボス部30と、ボス部30の外周側に等間隔で放射状に形成された3つのトリポード軸部31とからなる。ボス部30に設けられた貫通穴の内面には、第2の駆動力伝達部材と係合するスプライン部30aが形成されている。トリポード部材3は、アウターレース2の筒部20の内側に配置され、各トリポード軸部31には、それぞれローラ部材4が揺動かつ摺動可能に嵌合される。
【0022】
<トリポード軸部31の形状>
図3は、トリポード軸部31を、その中心軸C1を含みトリポード部材3の回転軸O2に直交する断面で切断した縦断図である。トリポード軸部31は、根元側(ボス部30側)に形成された直線部31aと、直線部31aに連続して先端側に形成された曲線部31bを有している。トリポード軸部31はその中心軸C1に対して対称に形成されており、トリポード軸部31の図面右側にも同様に、直線部31aと曲線部31bが形成されている。
【0023】
直線部31aは、中心軸C1に対して平行に形成された部分である。また、曲線部31bは、中心軸C1から外周面までの距離dが根元側から先端側に向かって漸次短くなる湾曲形状に形成された部分である。中心軸C1方向の幅に対する距離dの変化量は、トリポード軸部31の先端側ほど大きくなっている。すなわち、曲線部31bの曲率は、根元側では小さく、先端側に近づくに従って大きくなり、先端面31d付近で最も大きくなる。このように、トリポード軸部31の曲線部31bは、外側に膨らむ湾曲形状であり、より具体的にはインボリュート曲線で形成されている。
【0024】
トリポード軸部31は、ローラ部材4を構成するインナーローラ42の内周面に当接してトルクを伝達するトルク伝達面31cを有している。ここで、トルク伝達面31cは、トリポード型等速ジョイント1が車両等に組み込まれた実使用状態において、インナーローラ42の内周面との接触が発生し得る領域である。トルク伝達面31cは、曲線部31bの一部からなる。トルク伝達面31cは、トリポード軸部31のトルク伝達方向の両端部を中心に、中心軸C1の周方向に広がりをもつ領域である。
【0025】
また、中心軸C1に沿った断面におけるトルク伝達面31cの曲率半径は、その全領域において、トルク伝達面31cの根元側端部の中心軸C1からの距離(d1)よりも大きい。さらには、このトルク伝達面31cの曲率半径は、その全領域において、直線部31aの中心軸C1からの距離(d0)よりも大きい。すなわち、例えば特許文献1に係るトリポード型等速ジョイントのように、トリポード軸部のトルク伝達部を球状に形成した場合よりも、トルク伝達面31cの縦断面における曲率半径が大きく形成されている。これにより、トルク伝達時の面圧が低減される。
【0026】
図4は、トリポード部材3をトリポード軸部31の中心軸C1の方向から見た外観を実線で示し、インナーローラ42の内周面を破線で示す図である。この図に示すように、トリポード軸部31は、トリポード部材3の回転軸O2方向の幅が、回転軸O2及び中心軸C1に直交する図4のqの方向(以下「トルク伝達方向」という。)の幅よりも小さく形成されている。これにより、トリポード軸部31とローラ部材4との間には、回転軸O2方向においてトルク伝達方向よりも大きな隙間が形成される。これにより、図2に二点鎖線で示すように、ローラ部材4がトリポード部材3に嵌合された状態で相対的に揺動することが可能である。
【0027】
図5は、トリポード軸部31のトルク伝達面31cを含む領域を中心軸C1に直交する面で切断した横断面(図3のA−A断面)における外郭線を示す図である。トリポード軸部31の横断面の外郭線は、4つのインボリュート曲線I1〜I4と、その間を接続する2本の線分S1,S2で形成される。インボリュート曲線I1〜I4は、始点R1から終点R2に向かうに従ってその曲率が次第に大きくなる。始点R1はトルク伝達方向(図面左右方向)の端部に位置しているので、トリポード軸部31の横断面におけるトルク伝達面31cは、トルク伝達方向の端部で最も曲率が小さくなり、この端部から離間するに従って徐々に曲率が大きくなる。トリポード部材3の回転軸O2方向(図面の上下方向)の両端部は、インボリュート曲線I1とI2を接続するトルク伝達方向に平行な線分S1、及びインボリュート曲線I3とI4を接続するトルク伝達方向に平行な線分S2で形成される。
【0028】
図6は、トリポード部材3のトリポード軸部31の一つを斜め方向から見た斜視図である。トリポード軸部31は根元側から先端側に向かって全体が細くなるように形成されており、中心軸C1に平行なあらゆる断面において根元側から先端部に向かって太くなる部分がない。
【0029】
(ローラ部材4の構成)
図7は、ローラ部材4をその中心線C2に沿った面で切断した断面を示す図である。ローラ部材4はアウターレース2の案内溝20a,20bに外周面が対向するアウターローラ41と、アウターローラ41の内側に同軸配置されたインナーローラ42と、アウターローラ41とインナーローラ42の間に配置された複数の転動体43とを備えている。インナーローラ42とアウターローラ41は環状であり、ローラ部材4もまた環状である。転動体43としては針状ころが採用されている。
【0030】
アウターローラ41の軸方向一側には、内方に突出した鍔部41aが形成されている。鍔部41aの内径はインナーローラ42の外径よりも小さく形成され、インナーローラ42及び転動体43の軸方向移動が規制されている。一方、アウターローラ41の軸方向他側にはスナップリング44が嵌め込まれ、このスナップリング44によってインナーローラ42及び転動体43の軸方向移動が規制されている。この構成により、アウターローラ41とインナーローラ42は同軸上で相対回転可能である。
【0031】
インナーローラ42の内周面には、アウターレース2に組み込まれた際にアウターレース2の外周側に位置する外側端面421から反対側の内側端面422に向かって、第1テーパ部42a、第2テーパ部42b、第3テーパ部42cの3つのテーパ部が連続して形成されている。
【0032】
これらテーパ部のうち、トリポード軸部31のトルク伝達面31cに接触してトルクを伝達するのは第2テーパ部42bである。本実施の形態では、第2テーパ部42bが本発明の接触面に相当する。第1テーパ部42a及び第3テーパ部42cは、インナーローラ42とトリポード部材3との不要な干渉を避けるために形成されたものであり、トルク伝達には直接寄与しない。第2テーパ部42bは図7に示す断面において直線状であり、その曲率はゼロである。なお、トリポード軸部31に嵌合された状態では、外側端面421がトリポード軸部31の先端側にあたり、内側端面422がトリポード軸部31の根元側にあたる。
【0033】
第1テーパ部42aは、外側端面421側の開口部に向かって拡径する円錐状に形成されている。その円錐面が中心軸C2となす角(円錐角)は5°に設定されている。
【0034】
第2テーパ部42bは、内側端面422の側(トリポード軸部31の根元側)から外側端面421の側(トリポード軸部31の先端側)に向かってその内径が小さくなる円錐状に形成されている。その円錐面の円錐角はトルク伝達面31cの曲率に対応した角度に設定される。より具体的には、第2テーパ部42bの円錐角は、図3に示したトリポード軸部31の断面図において、トルク伝達面31cの先端側端部における接線TL1が中心軸C1となす角よりも小さく、トルク伝達面31cの根元側端部における接線TL2が中心軸C1となす角よりも大きい。
【0035】
トリポード軸部31及びインナーローラ42は、第2テーパ部42bの円錐角が0.5°以上になるように形成することが望ましい。0.5°未満では後述する本発明の効果を十分に奏することができないからである。また、この円錐角は5°以下に設定することが望ましい。5°を超えると、トリポード型等速ジョイント1の組み付け時に、トリポード軸部31にローラ部材4が圧入された状態になりやすく、組み付けに支障が生じ得るからである。円錐角のより望ましい範囲は、0.7°以上3°以下である。この範囲であれば、本発明の効果をより確実に奏することができるとともに、組み付けに支障が生じることを抑制できる。本実施形態では、円錐角が1°に設定されている。なお、図7等の各図面では、説明のため、第2テーパ部42bの円錐角を誇張して表現している。
【0036】
第3テーパ部42cは、内側端面422側の開口部に向かって拡径する円錐状に形成されている。その円錐面の円錐角は第2テーパ部42bの円錐角よりも大きい角度(例えば20°)に設定されている。
【0037】
(トリポード型等速ジョイント1の組み付け状態)
図8は、ジョイント角がゼロの状態におけるトリポード型等速ジョイント1をトリポード部材3の回転軸O2の方向から見た図である。トリポード軸部31のトルク伝達方向両側におけるトルク伝達面31cの直線部31aと曲線部31bとの境界を結ぶ直線L1と回転軸O2との距離rは、アウターローラ41の外周面のうち案内溝20a及び案内溝20bと接触してトルクを伝達する領域の軸方向中心部を結ぶ直線L2と回転軸O2との距離PCRよりも短い。これにより、ジョイント角をとった場合にもローラ部材4とトリポード部材3が滑らかに揺動可能である。距離rは、距離PCRの0.8から0.95倍であることが望ましい。本実施の形態では、この倍率が0.9(r=0.9×PCR)に設定されている。
【0038】
(トリポード部材3の製造方法)
ここで、トリポード部材3の製造方法について説明する。トリポード部材3を形成する工程は、鍛造工程と研削工程からなる。鍛造工程は、素材を鍛造し、ボス部30の外側に3つのトリポード軸部31が立設された形状に加工する工程である。この工程で用いる鍛造金型にはトリポード軸部31の形状に対応した凹部が形成されている。素材が圧力を加えられてこの凹部の形状に合わせて塑性流動することで、トリポード軸部31が大略成型される。
【0039】
研削工程は、トリポード軸部31の外周面を研削し、高精度に加工する工程である。以下にこの研削工程を詳細に説明する。
【0040】
図9は、研削工程におけるトリポード部材3及び砥石50を示す図である。研削工程で用いる砥石50の外周面は、トリポード軸部31の縦断面の仕上がり形状に対応する形状を有している。この砥石50をその駆動軸51を中心に回転させながらトリポード軸部31の外周面に押し当て、トリポード軸部31の周りを周回させることにより、外周面の研削加工がなされる。
【0041】
このように研削加工されたトリポード軸部31は、トリポード軸部31の中心軸C1に平行で、かつ研削された箇所における法線を含む断面の外周面が、いずれの箇所においても図3に示したものと同様の曲線を描くこととなる。
【0042】
(トリポード型等速ジョイント1の動作)
次に、トリポード型等速ジョイント1の動作について説明する。ジョイント角がゼロの状態では、図1及び図2に実線で示したように、ローラ部材4がトリポード軸部31の根元側に位置し、トリポード軸部31のトルク伝達方向の一側のトルク伝達面31cとインナーローラ42の第2テーパ部42bとが接触してトルクを伝達する。この状態では、アウターレース2が回転しても、トリポード軸部31とローラ部材4とが摺動することがない。
【0043】
アウターレース2の回転軸O1とトリポード部材3の回転軸O2とが傾き、ジョイント角をとった場合には、例えば図2に二点鎖線で示すように、トリポード軸部31がローラ部材4の内側端面422側に相対的に摺動しながら揺動する。この際、アウターレース2の回転軸O1の方向から見た状態においても、ローラ部材4に対してトリポード軸部31が揺動し、ローラ部材4の中心軸C2とトリポード軸部31の中心軸C1とが僅かに傾斜する。この傾斜に伴って、ローラ部材4の第2テーパ部42bにトリポード軸部31のトルク伝達面31が接触する位置が、トリポード軸部31の先端側に移動する。
【0044】
トリポード軸部31の先端側では、トルク伝達面31cの曲率が大きくなるので、ジョイント角がゼロの場合よりは接触領域の面積が狭く、面圧が高くなるが、前述のようにトルク伝達面31cの曲率半径は直線部31aの中心軸C1からの距離よりも大きいので、例えば特許文献1に記載のようにトリポード軸部を球状に形成した場合よりも面圧が抑えられている。
【0045】
[本実施の形態の作用効果]
本実施の形態の作用及び効果を以下に説明する。
【0046】
(1)トリポード軸部31の先端側に向かって細くなる曲線部31bを有するトルク伝達面31cと、同じくトリポード軸部31の先端側に向かって内径が小さくなるインナーローラ42の第2テーパ部42bが接触してトルクを伝達するので、インナーローラ42の内周面が円筒状である場合に比べ、トリポード軸部31とインナーローラ42とがより広い面積で接触する。図10は、この効果を説明するために示す、トリポード軸部31の中心軸C1側からインナーローラ42の内周面を見た場合の、第2テーパ部42bとトルク伝達面31cとの接触領域423を表した図である。この図に示すように、第2テーパ部42bが中心軸C2に対して傾斜しているため、インナーローラの内周面が円筒状である場合よりも接触領域がトリポード軸部31の先端側(図の上側)に移動する。このため、図12(B)に示したように接触領域が欠けることがなく、楕円状の接触領域で両部材が接触する。このため、トルク伝達時の面圧を下げることができ、ひいては高強度化、高耐久化、又は小型化を実現することができる。
【0047】
(2)インナーローラ42の第2テーパ部42bはトリポード軸部31の根元側に向かって広がり、第2テーパ部42bの内側端面422側には第2テーパ部42bの円錐角よりも大きな円錐角を有する第3テーパ部42cが形成されている。すなわち、インナーローラ42の内周面の内径がトリポード軸部31の根元側に向かって拡大しているので、トリポード軸部31のトルク伝達方向両側のうち、トルクを伝達しないトルク非伝達側にてトリポード軸部31とインナーローラ42との接触が発生することを抑制できる。つまり、トリポード軸部31が根元側に向かって太くなる形状を採用することにより、トリポード部材3のローラ部材4に対する揺動に伴って、トルク非伝達側におけるトリポード軸部31の根元付近でローラ部材4との接触が発生しやすくなり、この接触の発生により揺動時の抵抗が増すおそれがあるが、本実施の形態によればトルク非伝達側での接触を回避でき、または接触するとしてもその接触部の面圧を下げることができるので、トリポード部材3とローラ部材4との揺動がより滑らかになる。
【0048】
(3)トリポード軸部31は、根元側で最も太く、先端部に向かって細くなる形状であるので、鍛造が容易であり、鍛造金型の寿命も長くなる。つまり、例えば特許文献1に記載されたトリポード型等速ジョイントのように、トリポード軸部を球状とした場合には、鍛造用金型の中で外側に膨らむように素材を流動させる必要があり、そのために大きな荷重が必要となるが、本実施の形態に係るトリポード部材3の加工では、比較的小さな荷重で鍛造を行うことができる。また、トリポード軸部31の表面形状は、その中心軸C1に沿った縦断面において一様であるので、砥石によって容易に研削加工が行える。
【0049】
[他の実施の形態]
以上、本発明のトリポード型等速ジョイントを実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0050】
(1)インナーローラ42の内周面でトリポード軸部31と接触し、トルクを伝達する領域は、断面が直線状の円錐面ではなく、断面が曲線を描いて径方向外側に膨らんだ曲面でもよい。このようにインナーローラ42を形成した一例を図11に示す。この図に示すように、トリポード軸部31のトルク伝達面31cと接触する接触面は、内側端面422側から外側端面421側に向かって内径が小さくなる曲面状縮径部42b1で構成される。この曲面状縮径部42b1の曲率は、トルク伝達面31cの曲率よりも大きく形成されている。このようにインナーローラ42を形成することで、より広い面積でトルクを伝達することができ、面圧を下げることができる。
【0051】
(2)インナーローラ42の第1テーパ部42aは無くともよい。この場合には、第2テーパ部42b又は曲面状縮径部42b1が外側端面421側まで到達することになる。
【0052】
(3)トリポード軸部31に直線部31aを設けず、曲線部31bで全体を構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・トリポード型等速ジョイント、2・・・アウターレース、3・・・トリポード部材、4・・・ローラ部材、20・・・筒部、20a,20b・・・案内溝、21・・・底部、22・・・軸部、30・・・ボス部、30a・・・スプライン部、31・・・トリポード軸部、31a・・・直線部、31b・・・曲線部、31c・・・トルク伝達面、41・・・アウターローラ、41a・・・鍔部、42・・・インナーローラ、42a・・・第1テーパ部、42b・・・第2テーパ部、42b1・・・曲面状縮径部、42c・・・第3テーパ部、43・・・転動体、44・・・スナップリング、50・・・砥石、51・・・駆動軸、110・・・アウターレース、120・・・ローラ部材、121・・・アウターローラ、122・・・インナーローラ、123・・・接触領域、130・・・トリポード部材、131・・・ボス部、131・・・トリポード軸部、132・・・トリポード軸部、132a・・・トルク伝達面、421・・・外側端面、422・・・内側端面、423・・・接触領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸からの距離が根元側から先端側に向かって短くなる湾曲形状のトルク伝達面を有するトリポード軸部が放射状に形成されたトリポード部材と、
前記トリポード軸部に揺動可能に嵌合され、前記トルク伝達面に接触する接触面が前記トリポード軸部の根元側から先端側に向かって内径が小さくなるように形成された環状のローラ部材と、
その軸方向に前記ローラ部材を案内する案内面が形成されたアウターレースとを備えたトリポード型等速ジョイント。
【請求項2】
前記接触面は円錐状に形成されている請求項1に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項3】
前記接触面の円錐角が0.5度以上である請求項2に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項4】
前記トリポード軸部は、その中心軸を含む縦断面における前記トルク伝達面の曲率が根元側から先端側に向かって大きくなる曲線からなる請求項1乃至3の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項5】
前記トリポード軸部は、その中心軸を含む縦断面における前記トルク伝達面の曲率半径が、前記トルク伝達面の根元側端部と前記トリポード軸部の中心軸との距離よりも大きい請求項1乃至4の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項6】
前記トリポード軸部は、その中心軸に直交する横断面では、トルク伝達方向の幅よりも前記トリポード部材の回転軸方向の幅が小さく形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項7】
前記ローラ部材の前記トリポード軸部の根元側端部には、前記接触面よりも前記ローラ部材の中心軸に対して大きな傾斜角で前記根元側端部に向かって広がる傾斜面が形成されている請求項1乃至6の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項1】
中心軸からの距離が根元側から先端側に向かって短くなる湾曲形状のトルク伝達面を有するトリポード軸部が放射状に形成されたトリポード部材と、
前記トリポード軸部に揺動可能に嵌合され、前記トルク伝達面に接触する接触面が前記トリポード軸部の根元側から先端側に向かって内径が小さくなるように形成された環状のローラ部材と、
その軸方向に前記ローラ部材を案内する案内面が形成されたアウターレースとを備えたトリポード型等速ジョイント。
【請求項2】
前記接触面は円錐状に形成されている請求項1に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項3】
前記接触面の円錐角が0.5度以上である請求項2に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項4】
前記トリポード軸部は、その中心軸を含む縦断面における前記トルク伝達面の曲率が根元側から先端側に向かって大きくなる曲線からなる請求項1乃至3の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項5】
前記トリポード軸部は、その中心軸を含む縦断面における前記トルク伝達面の曲率半径が、前記トルク伝達面の根元側端部と前記トリポード軸部の中心軸との距離よりも大きい請求項1乃至4の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項6】
前記トリポード軸部は、その中心軸に直交する横断面では、トルク伝達方向の幅よりも前記トリポード部材の回転軸方向の幅が小さく形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【請求項7】
前記ローラ部材の前記トリポード軸部の根元側端部には、前記接触面よりも前記ローラ部材の中心軸に対して大きな傾斜角で前記根元側端部に向かって広がる傾斜面が形成されている請求項1乃至6の何れか1項に記載のトリポード型等速ジョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−1974(P2011−1974A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143507(P2009−143507)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
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