説明

トリポード型等速自在継手のトラニオンおよびトリポード型等速自在継手

【課題】滑らかにこの作動角を取ることができ、しかも、脚軸の強度も安定しているトリポード型等速自在継手のトラニオン及びこのようなトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手を提供する。
【解決手段】トラニオン20は、ボス部22と、ボス部22の円周方向等分位置から半径方向に突出した三本の脚軸24とを有する。各脚軸24の外周面には複数の針状ころ40が転動する転動面26aが形成される。脚軸24の付根部に、針状ころ40の転動面26aよりも後退するように凹んだぬすみ部29を設ける。ぬすみ部29の表面を圧縮残留応力処理部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、航空機、船舶や各種産業機械などの動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手の一種であるトリポード型等速自在継手およびトリポード型等速自在継手のトラニオンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手の一つにトリポード型等速自在継手がある(例えば、特許文献1参照)。このトリポード型等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し、しかも、軸方向の相対変位をも許容することができる構造を備えている。
【0003】
図4および図5は特許文献1に開示されたトリポード型等速自在継手の構造を示す。なお、図4は継手の軸線に対する横断面を示し、図5は継手の軸線に対する縦断面を示す。
【0004】
同図に示すトリポード型等速自在継手は、外側継手部材である外輪110と内側継手部材であるトリポード部材(トラニオン)120と転動体であるローラ130とで主要部が構成されている。連結すべき駆動側と従動側の二軸の一方の軸(駆動軸)が外輪110の底部から一体的に延び、他方の軸(図示せず)がトリポード部材120と結合される。
【0005】
外輪110は一端が開口した有底筒状で、その内周に軸方向に延びる三本のトラック溝112が円周方向等間隔に形成されている。トリポード部材120は円筒状のボス部122から半径方向外方に突出した三本の脚軸124を有し、これら脚軸124が外輪110のトラック溝112に挿入され、そのトラック溝112と係合してトルク伝達を行う。脚軸124には針状ころ140を介してローラ130が回転自在に外嵌され、このローラ130がトラック溝112の互いに対向する一対のローラ案内面114に沿って転動することで連結二軸間の角度変位と軸方向変位を円滑にする。
【0006】
図6は図4の部分拡大図で、脚軸124、針状ころ140およびローラ130を示す。脚軸124の外周面は針状ころ140の内側転動面を構成し、ローラ130の内周面は針状ころ140の外側転動面を構成している。複数の針状ころ140は、脚軸124の外周面とローラ130の内周面との間に総ころ状態で配設されている。
【0007】
これら針状ころ140は、脚軸124の付け根部に外嵌されたインナワッシャ150と半径方向内方で接すると共に、脚軸124の先端部に外嵌されたアウタワッシャ160と半径方向外方で接している。このアウタワッシャ160は、脚軸124の先端部に形成された環状溝126にサークリップ等の止め輪170を嵌合させることにより抜け止めされ、この止め輪170により、針状ころ140の半径方向移動が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3615987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載のものは、インナワッシャ150とアウタワッシャ160とで針状ころ140の半径方向の移動が規制されている。このため、このような等速自在継手において、作動角を取ろうとした場合、針状ころ140が移動することができず、滑らかにこの作動角を取ることができなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、滑らかにこの作動角を取ることができ、しかも、脚軸の強度も安定しているトリポード型等速自在継手のトラニオン及びこのようなトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトリポード型等速自在継手のトラニオンは、ボス部と、ボス部の円周方向等分位置から半径方向に突出した三本の脚軸とを有し、各脚軸の外周面には複数の針状ころが転動する転動面が形成されたトリポード型等速自在継手のトラニオンであって、前記脚軸の付根部に、前記針状ころの転動面よりも後退するように凹んだぬすみ部を設けるとともに、このぬすみ部の表面を圧縮残留応力処理部としたものである。
【0012】
本発明のトリポード型等速自在継手のトラニオンによれば、前記脚軸の付根部に、前記針状ころの転動面よりも後退するように凹んだぬすみ部を設けているので、このぬすみ部によって、針状ころが半径方向に移動することができる。しかも、このぬすみ部の表面は圧縮残留応力処理部としている。外力を取り去った後で材料の中に残っている応力で圧縮状態にあるものを圧縮残留応力という。材料は一般に引張応力で破損することが多く,圧縮残留応力があると疲労強度が向上する。
【0013】
圧縮残留応力処理部は、熱処理後における焼入れ鋼切削にて構成されるものであっても、熱処理後におけるショットピーニングにて構成されるものであっても、熱処理後における焼入れ鋼切削及びショットピーニングにて構成されるものであってもよい。焼入鋼切削は、単に切削のことであり、切削は通常生材の状態で行うので、熱処理後(焼入れ後)の切削であることを明確にするために焼入鋼切削と称した。焼き入れ後に切削を行うため、素材の熱処理変形をこの切削過程で除去することができる。これに対して、研削加工は加工時に研削油剤を必要とすることから、研削油剤に含まれる鉱物油の消費、及び、研削油剤の供給電力消費は多大なものとなり、コスト高や環境への悪影響が懸念される。これに替わり、ドライ加工である焼入鋼切削を仕上げ加工とて実施すれば研削油剤が不要となり、環境への負担が軽減される。すなわち、研削加工では、粉状の研削屑が生じ、研削屑は研削油と共に研削スラッジとして排出される。研削スラッジは、研削屑を濾過したうえで一部が研削油に再利用される一方、濾過により得られた高濃度スラッジは廃棄処分される。このように、研削加工は、研削油に関する供給装置や濾過装置が必要となるので装置構成が複雑になる。また、廃棄されたスラッジが環境に悪影響を与えるおそれがある。また、加工作業において研削油の供給のための前準備が必要であり、作業に手間がかかって生産性が低いという問題がある。なお、切削工具として、このような切削が可能なバイトを使用する。焼入鋼切削の可能なバイトとして、例えばCBN(立方晶窒化硼素)に特殊セラミックス結合材を加えた焼結体工具等を使用することができる。
【0014】
ショットピーニングは、処理対象物の表面に小粒子を投射するという処理であり、表面に圧縮の残留応力を生成させることを目的として、その最表面を塑性変形させるような条件で行われる。
【0015】
前記脚軸の転動面の半径方向先端側に外側鍔部を設けたものとするのが好ましい。このように、外側鍔部を設ければ、脚軸に針状ころとローラとを組み付けたトラニオンユニットを構成し、このトラニオンユニットを等速自在継手の外側継手部材に装着した場合、外側鍔部によって半径方向先端方向のころの抜けが規制される。
【0016】
また、表面全体に浸炭熱処理が施されるものであっても、表面全体に高周波熱処理が施されるものであってもよい。ここで、浸炭熱処理とは、炭素を多く含むガス、液体、固体などの浸炭剤中で鋼を長時間加熱することにより、表面層から炭素を含浸させる処理(浸炭処理)を行い、この浸炭した鋼に対して、焼入れ焼もどしを行う方法である。また、高周波熱処理とは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。
【0017】
前記脚軸の転動面に焼入れ鋼切削が施されているものであっても、前記脚軸の転動面を研削加工したものであってもよい。
【0018】
本発明のトリポード型等速自在継手は、前記記載のトリポード型等速自在継手のトラニオンを用いたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のトリポード型等速自在継手のトラニオンは、針状ころが半径方向に移動することができ、安定した作動角をとることができ、滑らかな作動が可能となる。しかも脚軸が強度的に優れ、耐久性に優れる。
【0020】
また、ぬすみ部の圧縮残留応力処理部は、焼入鋼切削やショットピーニング等にて成形することができ、安定した圧縮残留応力処理加工を行うことができる。特に、焼入鋼切削では、ドライ加工である焼入鋼切削を仕上げ加工とで実施すれば研削油剤が不要となり、環境への負担が軽減される利点がある。
【0021】
脚軸の転動面の半径方向先端側に外側鍔部を設けたものであれば、外側鍔部によって半径方向先端方向のころの抜けが規制される。このため、この等速自在継手の作動中等においては、外側継手部材内でトラニオンユニットが分解することがなく、安定した作動を可能とする。
【0022】
表面全体に、浸炭熱処理や高周波熱処理を施すことによって、強度的に優れ、長期に渡って安定した機能を発揮する。また、脚軸の転動面に焼入鋼切削や研削加工を施すことによって、この転動面を針状ころがより滑らかに転動する。
【0023】
前記のトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手によれば、滑らかな作動が可能となるとともに、脚軸が強度的に優れ、トリポード型等速自在継手としての耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態のトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図2】前記図1におけるトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図3】前記トラニオンの要部正面図である。
【図4】従来のトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【図5】従来のトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図6】従来のトラニオンを用いたトリポード型等速自在継手の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0026】
図1および図2は本発明に係るトリポード型等速自在継手の実施形態を示す。この実施形態のトリポード型等速自在継手は、外側継手部材である外輪10と、内側継手部材であるトリポード部材(トラニオン)20と転動体であるローラ30とで主要部が構成されている。
【0027】
外輪10は、一端が開口した有底筒状でその底部中央から回転軸(例えば駆動軸)が一体的に延びている。外輪10の内周面には、軸方向に延びる三本のトラック溝12が円周方向等間隔に形成される。各トラック溝12は、その両側に互いに対向する一対のローラ案内面14を有する。ローラ案内面14は円弧状断面を有し、外輪10の軸線方向に直線状に延びる。なお、外輪10の外周面は、軽量化のため、トラック溝12間と対応する部位が減肉されて凹所18が軸方向に形成されている。
【0028】
トリポード部材(トラニオン)20は、円筒状をなすボス部22の外周面に、半径方向外方に突出した三本の脚軸24が円周方向等間隔(120°間隔)で一体形成されたものである。ボス部22の軸孔に図示しない回転軸(例えば従動軸)の軸端がスプライン嵌合により連結される。各脚軸24の先端は、半径方向外方へ延びてトラック溝12の底面付近まで延在し、その外周面は一般的に円筒面とされている。
【0029】
外輪10のトラック溝12のローラ案内面14と脚軸24の外周面との間に針状ころ40を介してローラ30が回転自在に配設される。ローラ30の外周面は縦断面円弧状とされ、ローラ案内面14とアンギュラ接触により二箇所で接触する場合と、サーキュラ接触により一箇所で接触する場合がある。一方、ローラ30の内周面は、円筒状に形成されている。
【0030】
このトリポード部材20の脚軸24に針状ころ40を介して回転自在に装着されたローラ30が、外輪10のトラック溝12に挿入されて係合し、そのトラック溝12の互いに対向する一対のローラ案内面14に沿って転動することにより、連結二軸(駆動軸と従動軸)間の角度変位と軸方向変位を許容しながらトルク伝達を行う。
【0031】
脚軸24の外周面は針状ころ40の内側転動面を構成し、ローラ30の内周面は針状ころ40の外側転動面を構成している。ローラ30の内周面と脚軸24の外周面との間に、複数の針状ころ40が単列総ころ状態で配設される。
【0032】
この実施形態におけるトリポード型等速自在継手では、脚軸24の外周面に、針状ころ40を収容して底面26aが針状ころ40の転動面となる凹溝部26を周方向に形成し、凹溝部26の半径方向基端側に、つまり、脚軸24の付根部に、針状ころ40の半径方向移動をスムーズに行うため、その凹溝部26の底面26aから後退するように凹んだぬすみ部(逃げ)29が形成されている。
【0033】
また、凹溝部26の半径方向先端には、脚軸周方向に沿った周方向溝を介して外側鍔部21が設けられている。この周方向溝31もぬすみ部(逃げ)31を形成する。
【0034】
ところで、脚軸24は、凹溝部26(図3における範囲A)とぬすみ部(逃げ)29、31(図3における範囲B、B)とが旋削加工にて形成され、その後、範囲Aおよび範囲Bに、浸炭焼入れ焼き戻しの浸炭熱処理を行った後、焼入鋼切削を行った。
【0035】
ここで、浸炭熱処理とは、炭素を多く含むガス、液体、固体などの浸炭剤中で鋼を長時間加熱することにより、表面層から炭素を含浸させる処理(浸炭処理)を行い、この浸炭した鋼に対して、焼入れ焼もどしを行う方法である。また、焼入鋼切削は、単に切削のことであり、切削は通常生材の状態で行うので、熱処理後(焼入れ後)の切削であることを明確にするために焼入鋼切削と称した。このように、焼入鋼切削を施すことによって、ぬすみ部29,31の表面に圧縮残留応力が付与され、圧縮残留応力処理部が形成される。外力を取り去った後で材料の中に残っている応力で圧縮状態にあるものを圧縮残留応力という。材料は一般に引張応力で破損することが多く,圧縮残留応力があると疲労強度が向上する。
【0036】
焼入鋼切削では、切削の際除去されるべき切り屑の一部が表面に押し込まれ、かつ表面上に伸長されることが発生する。また、せん断変形による機械的要因と組織がせん断変形する際に生じる切削熱等による熱的要因とが重畳されて残る。このため、焼入鋼切削を行うことによって、圧縮残留応力が発生する。
【0037】
本発明のトリポード型等速自在継手のトラニオンは、脚軸24の付根部に、針状ころ40の転動面26aよりも後退するように凹んだぬすみ部29を設けているので、このぬすみ部29によって、針状ころ40が半径方向に移動することができる。このため、安定した作動角をとることができ、滑らかな作動が可能となる。しかも、このぬすみ部29の表面は圧縮残留応力処理部としているので、脚軸24が強度的に優れ、耐久性に優れる。
【0038】
圧縮残留応力処理部としては、前記のように焼入鋼切削に依らずに、ショットピーニングによっても成形することができる。ショットピーニングは、処理対象物の表面に小粒子を投射するという処理であり、表面に圧縮の残留応力を生成させることを目的として、その最表面を塑性変形させるような条件で行われる。このため、このようなショットピーニングによっても圧縮残留応力処理部を成形することができる。
【0039】
このように、ぬすみ部29の圧縮残留応力処理部は、焼入鋼切削やショットピーニング等にて成形することができ、安定した圧縮残留応力処理加工を行うことができる。特に、焼入鋼切削では、ドライ加工である焼入鋼切削を仕上げ加工とで実施すれば研削油剤が不要となり、環境への負担が軽減される利点がある。
【0040】
脚軸24の転動面26aの半径方向先端側に外側鍔部21を設けたものであれば、外側鍔部21によって半径方向先端方向の針状ころ40の抜けが規制される。このため、この等速自在継手の作動中等においては、外輪10内でトラニオンユニット(トラニオン10と針状ころ40とローラ30とが組み付けられたユニット体)が分解することがなく、安定した作動を可能とする。
【0041】
また、前記熱処理として、浸炭熱処理以外に高周波熱処理であってもよい。ここで、高周波熱処理とは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。
【0042】
ところで、浸炭熱処理や高周波熱処理を行う場合、トラニオン20の表面全体に行うようにしてもよい。このように、表面全体に熱処理を行うことによって、強度的に優れ、長期に渡って安定した機能を発揮する。また、脚軸24の転動面26aに焼入鋼切削や研削加工を施すことによって、この転動面26aを針状ころ40がより滑らかに転動する。ここで、表面全体とは、ボス部22の外周面(外径面)、脚軸24の図3における範囲A,B、外側鍔部21の外周面(外径面)、脚軸24の先端面、及びボス部22の内径面である。
【0043】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、脚軸24に外側鍔部21を設けることによって、ころ40の外径方向への抜けを規制しているが、このような外側鍔部21を設けなくてもよい。この場合、外側鍔部21に代えて、ワッシャ部材を脚軸24の先端部に装着するようにすればよい。
【0044】
凹溝部26の底面26aからなるころ転動面(図3に示す範囲A)においては、前記実施形態では、焼入鋼切削を行っていたが、このような焼入鋼切削に代えて研削を行うようにしてもよい。このように、研削を行うことによって、ころがより滑らかに転動することができ、効率のよい回転伝達を行うことができる。しかしながら、図3における範囲A及び範囲B、Bとが同じ加工法である焼入鋼切削であるのがコスト面からは有利である。また、形成する硬化層としては、ボス部22の内径面や脚軸24の先端面等を省略することが可能である。
【実施例】
【0045】
本発明品と比較品とをそれぞれ2つのサンプルを作成し、それぞれについて、片振り捩り疲労試験にて強度を確認した。片振り捩り疲労試験は所定のトルクを繰り返し負荷する試験である。すなわち、トラニオンの強度を評価する上では、主として静捩り強度(試験)と片振り疲労強度(試験)とがあるが、通常、両試験において、軸が最初に破損するように設定されている。したがって、トリポード部材(トラニオン)あるいはローラは軸以上の強度を有するように設定されている。ここで、静捩り強度は、トリポード型等速自在継手にトルクを負荷する静捩り試験において、どこかの部位が捩り切れるトルクをもって評価する。片振り疲労強度は、トリポード型等速自在継手に片振りの所定トルクを負荷し、どこかの部位が捩り切れるまでの繰返し数をもって評価する。
【0046】
本発明品は、図3に示す範囲A及び範囲Bに対して、旋削加工を行った後、浸炭焼入れ・焼戻しの浸炭熱処理を行い、次に、焼入鋼切削を行ったものである。比較品は、図3に示す範囲Aに対して、旋削加工を行った後、浸炭焼入れ・焼戻しの浸炭熱処理を行い、次に、研削加工を行ったものであり、範囲Bに対しては、旋削加工を行った後、浸炭焼入れ・焼戻しの浸炭熱処理を行ったものである。
【0047】
この場合、本発明品における脚軸付根部のぬすみ部29の残留圧縮応力が500MPa〜600MPaであり、比較品における残留圧縮応力が100MPa〜200MPaであった。
【0048】
破損までの負荷回数は、比較品が26000回と35000回となったのに対して、本発明品が160000回と200000回となった。この結果により、脚軸付根部のぬすみ部29に残留圧縮応力処理部を設けたものが、このような残留圧縮応力処理部を設けないものよりも高強度であることが分かる(5倍の高強度化を達成できた)。
【符号の説明】
【0049】
21 外側鍔部
22 ボス部
24 脚軸
26a 底面(転動面)
29,31 ぬすみ部
30 ローラ
40 針状ころ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部と、ボス部の円周方向等分位置から半径方向に突出した三本の脚軸とを有し、各脚軸の外周面には複数の針状ころが転動する転動面が形成されたトリポード型等速自在継手のトラニオンであって、
前記脚軸の付根部に、前記針状ころの転動面よりも後退するように凹んだぬすみ部を設けるとともに、このぬすみ部の表面を圧縮残留応力処理部としたことを特徴とするトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項2】
圧縮残留応力処理部は、熱処理後における焼入れ鋼切削にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項3】
圧縮残留応力処理部は、熱処理後におけるショットピーニングにて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項4】
圧縮残留応力処理部は、熱処理後における焼入れ鋼切削及びショットピーニングにて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項5】
前記脚軸の転動面の半径方向先端側に外側鍔部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項6】
表面全体に浸炭熱処理が施されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項7】
表面全体に高周波熱処理が施されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項8】
前記脚軸の転動面に焼入れ鋼切削が施されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項9】
前記脚軸の転動面を研削加工したことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオン。
【請求項10】
前記請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手のトラニオンを用いたことを特徴とするトリポード型等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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