説明

トリマコンデンサ及びトリマコンデンサの製造方法

【課題】 トリマコンデンサの製造・組み立て時に、ステータを樹脂製ケースの内部に配設させる際、取り出し電極を下面にしなければならないが、間違えて取り出し電極を上面にして配設してしまう問題が発生することがある。
【解決手段】 ステータ電極を有する略半円形状の誘電体ユニットと、誘電体ユニット上に配置され、且つロータ電極を有する金属ロータからなるトリマコンデンサにおいて、誘電体ユニットが切り欠き部を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電容量を微調整可能なトリマコンデンサ並びにトリマコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリマコンデンサは、ステ−タ電極が形成されたステータと、下面側に略半円状の凸状部(ロータ電極部)を有するロータによって構成され、ロータをステ−タ電極上の誘電体層上に配設した状態で、略半円状の凸状部(ロータ電極部)をステ−タ電極上に当接し、ガタツキなくスムーズに回転させるものである。
【0003】
一般的にトリマコンデンサの製造時には、ステータの外部電極(取り出し電極)を下面にしてステータを樹脂製ケースの内部に配設させていた。その後、略半円状の凸状部(ロータ電極部)を下面にしながら、ステータ上にロータを当接させる工程を行う。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平1−290213
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示されるようにトリマコンデンサの部品の一つであるステータ(誘電体ユニット)1Aは誘電体セラミックスを焼成することによって得た積層体を母材としている。このステータ(誘電体ユニット)1Aは内部に内部電極4が形成されている。つまり、特許文献1に記載されているように内部電極4は誘電体3に埋設されている。そして、所定のパターンでAg−Pd等の導電性ペーストがステータの表面に塗布され、焼き付けることで取り出し電極5が構成される。スルーホール用の略円形の孔2はステータ(誘電体ユニット)1Aに形成されていて、取り出し電極5に導電性ペーストをスクリーン印刷或いは塗布する際に孔2にも同時に塗りこむことにより、取り出し電極5とスルーホールが導通することになる。
【0006】
これらトリマコンデンサの製造・組み立て時に、ステータを樹脂製ケースの内部に配設させる際、取り出し電極を下面にしなければならないが、間違えて取り出し電極を上面にして配設してしまう問題が時々発生する。この理由としては、ステータ(誘電体ユニット)1Aがセラミックスであることに一因がある。セラミックスに導電性ペーストを塗布することになるので、色彩としては白色或いは灰色のステータ(誘電体ユニット)1Aに銀色の導電性ペーストが塗布されている。製造・組み立て工程としては、塗布後に、トリマコンデンサの組み立て前に検査担当が目視で銀色の導電性ペーストが塗布されているか確認し、銀色の電極が形成された面を下面に配列して組み立てラインに移行する。組み立てラインは機械化された自動組立工程であり、プログラムミス等が無い限り、ステータ(誘電体ユニット)の面を間違える可能性は極めて低い。
【0007】
以上の様に検査工程の改善が必要であるが、取り出し電極の色とステータ(誘電体ユニット)の色の違いは判別しにくい。更に照明による照度も関係するため、白色或いは灰色と銀色の正確な判別は目視では間違える可能性が否定できない。色差測定及び色彩測定の出来る分光測色計にて測定する方法もあるが、検査時間がかかるので検査も含めた製造時間が延びてしまう問題がある。
【0008】
本発明は、このような考察に基づいてなされたものであり、トリマコンデンサの製造時に、ステータ(誘電体ユニット)を樹脂製ケースの内部に配設させる際、間違えて取り出し電極を上面にして配設してしまう問題を起こさず、且つ検査も含めた製造時間を短縮することが可能となるトリマコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、ステータ電極を有する略半円形状の誘電体ユニットと、前記誘電体ユニット上に配置され、且つロータ電極を有する金属ロータからなるトリマコンデンサにおいて、前記誘電体ユニットが切り欠き部を有することを特徴とする。
【0010】
好適には、誘電体ユニットに切り欠き部を形成する工程と、前記誘電体ユニットに電極をスクリーン印刷し、焼き付ける工程と、樹脂製ケースに前記誘電体ユニットを配設する工程と、金属ロータを前記誘電体ユニット上に配設する工程と、スプリング端子を前記樹脂製ケースに形成された溝部に沿って配設する工程と、前記樹脂製ケースの一端部を加熱して前記スプリング端子を前記樹脂製ケースにカシメ止めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステータ(誘電体ユニット)に切り欠き部を形成することで、取り出し電極がある面が目視および色差測定及び色彩測定の出来る分光測色計で判別することなく、切り欠き部も含めた外郭形状を基準とすることにより、導電性ペーストを塗布した取り出し電極面を間違えることが無くなる。
【0012】
また同様に、取り出し電極のある面を目視する検査が簡便になることで製造時間が短縮されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のトリマコンデンサの実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図2はトリマコンデンサの部品の一つであるステータ(誘電体ユニット)1Bの透視図である。本発明のステータ(誘電体ユニット)1Bの内部には内部電極4が形成されている。内部電極4の上層は誘電体からなる層である有効誘電体14であり、有効誘電体14の上面に、略半円状の凸状部(ロータ電極部)が当接することになる。又、ステータ(誘電体ユニット)1Bにはセラミックス層15が形成されるが、セラミックス層15は絶縁体でも誘電体でも特に問題は無い。ステータ(誘電体ユニット)1Bを構成する有効誘電体14が形成される面の対向面には、所定のパターンでAg−Pd等の導電性ペーストがステータの表面に塗布され、焼き付けることで取り出し電極5が構成される。取り出し電極5は内部電極4とステータ(誘電体ユニット)1B内部で接続される。出来ればステータ(誘電体ユニット)1Bは取り出し電極5をスクリーン印刷或いは塗布して焼付ける前に、切断箇所20(斜め点線で示されている箇所)を切断して、切り欠き部6(破線で囲んで図示した箇所)を形成することが望ましい。そして切り欠き部6形成と同時に、スルーホール用の略円形の孔2をステータ(誘電体ユニット)1Bの略中央部に形成させる。その後に、所定のパターンでAg−Pd等の導電性ペーストがステータの表面にスクリーン印刷或いは塗布され、焼き付けることで取り出し電極5が構成し、その際に同時に孔2にも塗りこませることが好適である。
【0015】
ステータ(誘電体ユニット)1Bの切り欠き部6は、図2では斜めにカットした切り欠き部になっているが、この形態に限られるものではない。例えば切り欠き部の箇所に丸孔を空けたり、溝部を形成したりして、ステータ(誘電体ユニット)1Bの取り出し電極が形成された面と形成されていない面の外郭形状に明確な相違があれば非常に好適である。但し、作業工程が省略できるのが最善であるので図2の様に斜めに1回カットすることで切り欠き部が形成されるのは最も好適な方法の一つである。
【0016】
又、図4は本発明に係るトリマコンデンサの平面図、図5は本発明に係るトリマコンデンサの断面図、図3は本発明に係るトリマコンデンサの組み立て図である。本発明の一例であるトリマコンデンサの構成を説明する。
【0017】
トリマコンデンサはリン青銅製であるスプリング端子7、真鍮金属ロータ8、ステータ(誘電体ユニット)1B、合成樹脂製である樹脂製ケース11、リン青銅製であるケース端子13、樹脂製ケース11の溝状部12で構成される。そしてトリマコンデンサは、ケース端子13が埋設された所定形状の樹脂製ケース11の内部に、取り出し電極5を下面とするステータ(誘電体ユニット)1Bを配設し、シリコーンオイル9を滴下し、その次に金属ロータ8をステータ(誘電体ユニット)1Bの上に配設する。そして、その上にスプリング端子7を溝状部12に沿って配設し、スプリング端子7の金属ロータ8の周りを囲んでいる端部以外の他端部及び樹脂製ケース11の所定部分(樹脂製ケース11のカシメ用の一段部)を加熱押圧して樹脂製ケース11をカシメ止めしている。このカシメ止めの際、スプリング端子7の金属ロータ8の周りを囲んでいる端部以外の他端部は加熱押圧されることで、樹脂製ケース11の略C型形状の周壁部分に沿って屈曲されカシメ止めされることになる。
【0018】
又、本発明のトリマコンデンサはスプリング端子7及びケース端子13が半田付けされる。
【0019】
尚、トリマコンデンサはロータをステ−タ上に配設した状態で、略半円状の凸状部(ロータ電極部)をガタツキなくスムーズに回転させることができれば良いので、金属ロータ8は必要な部分が導電性のもので構成されていれば良い。本発明のトリマコンデンサは図4の金属ロータ8の上面側にドライバ等の調整具を差し込むことの出来る溝が形成されている。この溝にドライバ等を差込んで金属ロータ8を回動することでトリマコンデンサの静電容量をスムーズに微調整することが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明はトリマコンデンサのステータ(誘電体ユニット)の取り出し電極を見分けるのに好適であり、トリマコンデンサの製造時間の短縮及び製造不良の解消に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来例のステータ(誘電体ユニット)の透視図である。
【図2】本発明に係るステータ(誘電体ユニット)の透視図である。
【図3】本発明に係る本発明に係るトリマコンデンサの組立図である。
【図4】本発明に係る本発明に係るトリマコンデンサの平面図である。
【図5】本発明に係る本発明に係るトリマコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1A、1B:ステータ(誘電体ユニット)
2:孔
3:誘電体
4:内部電極
5:取り出し電極
6:切り欠き部
7:スプリング端子
8:金属ロータ
9:シリコーンオイル
11:樹脂製ケース
12:溝状部
13:ケース端子
14:有効誘電体
15:セラミックス層
20:切断箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ電極を有する略半円形状の誘電体ユニットと、前記誘電体ユニット上に配置され、且つロータ電極を有する金属ロータからなるトリマコンデンサにおいて、前記誘電体ユニットが切り欠き部を有することを特徴とするトリマコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体ユニットに切り欠き部を形成する工程と、前記誘電体ユニットに電極をスクリーン印刷し、焼き付ける工程と、樹脂製ケースに前記誘電体ユニットを配設する工程と、金属ロータを前記誘電体ユニット上に配設する工程と、スプリング端子を前記樹脂製ケースに形成された溝部に沿って配設する工程と、前記樹脂製ケースの一端部を加熱して前記スプリング端子を前記樹脂製ケースにカシメ止めすることを特徴とする請求項1記載のトリマコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−85139(P2008−85139A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264599(P2006−264599)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(506254488)サンシン電機インターナショナル株式会社 (3)