説明

トリミング用の刃

【課題】刃先で、筒状物体を切断するトリミング用の刃であって、再研磨作業を行なっても刃先の曲率が変化しない刃を提供する。
【解決手段】刃下面の延長部位に位置する刃傾斜面の刃先の曲率と、刃下面に平行に、任意に研摩又は切断した面の延長部位に位置する刃傾斜面の新たな刃先の曲率が、等しいことを特徴とするトリミング用の刃。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミング用の刃に関し、さらに詳しくは刃先の損傷により刃先を研摩又は切断した新たな刃で、エアゾール容器を切断した場合において、トリミング不良が生じないトリミング用の刃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、エアゾール容器の製造工程において、図5に示すようなトリミング用の刃50が、トリミング装置(以下「トリマー」という)52に、ボルト等で取付けられている。刃50は、設定されたターンテーブル55の回転半径に合わせて、刃50が適切な曲率で固定されている。そして、エアゾール容器51は、全周が刃50に接触しその先端部がトリミングされる。エアゾール容器51は、ターンテーブル55の外周に沿って、等間隔ごとに設けられたマンドレル54に挿入されて保持されている。すなわち、エアゾール容器51は、円弧軌跡を移動するマンドレル54の外周に固定されている。そして、ターンテーブル55が回転することにより、マンドレル54に保持されたエアゾール容器51は、トリマー52のトリミング用の刃50に近づき、マンドレル54によってエアゾール容器51も同時に回転しながら、最初はトリミング用の刃50の左端の刃先56で切断が開始され、次に中央部の刃先56、最後に右端の刃先56で、エアゾール容器51の先端部のトリミングが終了する。
【特許文献1】特開昭62−134127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の刃50の刃下面X0の延長部位の刃56は、図5に示すように、使用中に破損する場合がある。この場合に、刃下面X0に平行に研摩又は切断して、任意の新たな面X1をだすことにより、新たな刃先57を形成することができるが、この再研摩作業を行うと、図6に示すように、当初の刃先56の曲率r0より、新たな刃先57の曲率r1が、大きくなるという問題があった。そして、新たな刃先57の曲率r1が、当初の刃先56の曲率r0より大きくなると、刃50の新たな刃先57の切り始め57aと、切り終わり57bが、エアゾール容器51に当接しなくなるため、エアゾール容器51が完全に切断されなくなり、トリミング不良が生じる欠点があった。そこで、再研摩作業を専門メーカに依頼し、専門メーカにおいて、特殊な方法により再研摩作業を行い、かつ当初の刃の曲率と同じ曲率r0を出すための作業を行っていたが、この作業は、手数と多大なコストを必要とした。
【0004】
新たな刃57の曲率r1が、当初の刃56の曲率r0より大きくなる原因は、図7に示すように、従来のトリミング用の刃50は、刃下面X0の延長部位に位置する当初の刃先56の曲率をr0、刃下面X0に平行に、任意に研摩又は切断した新たな面X1の延長部位に位置する新たな刃先57の曲率をr1、さらに、刃下面X0に平行に、任意に研摩又は切断した新たな面X2の延長部位に位置する新たな刃先59の曲率をr2とすると、その曲率は、各々r0<r1<r2となり、上方に向かうにしたがい、曲率が大きくなるように、刃傾斜面58が形成されているためである。すなわち、図7に示す各々任意に切断した単位面である、Z1(mnop)、Z2(qrst)、Z3(uxyw)及び線mn、線面qr、線uxが、すべて中心Oに集束するように、刃傾斜面58が形成されているためである。
この発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、トリミング用の刃に関し、刃先が損傷した場合、刃50を研摩又は切断して新たな刃を形成し、エアゾール容器を切断しても、トリミング不良が生じない、トリミング用の刃を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、刃先で、筒状物体を切断するトリミング用の刃であって、刃下面の延長部位に位置する刃傾斜面の刃先の曲率と、刃下面に平行に、任意に研摩又は切断した面の延長部位に位置する刃傾斜面の新たな刃先の曲率が、等しいことを特徴とするトリミング用の刃である。このように、曲率の等しい刃傾斜面を研摩、切断した場合、新たな刃先を形成した場合であっても、刃先の曲率が変化しないので、エアゾール容器を切断しても、トリミング不良が生じない。したがって、社内の汎用の平面研削盤により再研摩作業を、容易かつ迅速に行うことができるので、容易に研摩、切断することができ、外部の専門家に依頼する手数が省け、時間及びコストを削減することができる。
【0006】
請求項2記載の発明の解決手段は、容器の製造工程において、容器を保持すると共に容器を公転及び回転させて、容器の開口部にトリミング加工を施したことを特徴とする容器の製造方法である。容器製造工程のインラインにおけるトリマーに、容易に適用できるので、容器製造装置の修理費用を削減することができる。
【0007】
請求項3記載の発明の解決手段は、容器が、エアゾール容器、金属ボトル容器、樹脂ボトル容器又はチューブ容器のいずれかから選ばれる1つであることを特徴とする容器の製造方法である。容器製造工程において、容器の円筒部を容易に切断することができる。
【0008】
請求項4記載の発明の解決手段は、パイプの製造工程において、パイプを保持すると共にパイプを公転及び回転させて、パイプを切断することを特徴とするパイプの製造方法である。パイプ類の製造工程において、パイプ類の先端部を容易に切断することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトリミング用の刃は、刃先の損傷により研摩又は切断しても、刃先の曲率が変化しないので、刃先を損傷した場合でも、社内の汎用の平面研削盤により再研摩作業を行うことができるので、容易かつ迅速に新たな刃先を形成することができる。そして、刃先の曲率が変化しないので、新たな刃でエアゾール容器を切断しても、トリミング不良が生じない効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
図1(a)(b)(c)は、本発明の実施例を示す図面である。この発明は、刃1の刃下面2の面A0の延長部位に位置する刃傾斜面3の刃先4の曲率と、刃下面2の面A0に平行に、任意に研摩又は切断した新たな面A1の延長部位に位置する刃傾斜面3の新たな刃先7の曲率が等しい。したがって、刃下面2の面A0に平行に、研摩又は切断した新たな面A1における、新たな刃先7の曲率、さらに新たな面A2における刃先8の曲率は、常に当初の刃先4の曲率と等しく構成されている。
【0012】
本発明に係る刃1の特徴は、図1(a)において、任意の切断単位面B1(abcd)、B2(efgh)、B3(ijkl)及び線ab、線ef、線ijは、すべて平行になるように刃傾斜面3が構成され、かつ中心Oからの距離は、すべてR0になるように構成されている。同様に、図1(b)において、任意の切断単位面C1、C2、C3も同様に、すべて平行になるように構成されている。さらに、図1(c)において、任意の切断単位面D1、D2、D3も、すべて平行になるように刃傾斜面3が構成されている。このように構成した結果、刃下面2における面A0における刃先4の曲率、任意に研摩又は切断した新たな面A1における刃先7の曲率、新たな面A2における刃先8の曲率は、すべて等しくR0となる。
【0013】
したがって、図2に示すように、ターンテーブル10の外周に沿って、等間隔ごとに設けられたマンドレル11に保持されたエアゾール容器12は、ターンテーブル10が回転することにより、トリマー13のトリミング用の刃1に近づく。そして、図3に示すように、刃1に接触して、エアゾール容器12の先端部12aは、刃1の刃先4によって、切断される。そして、刃1が破損した場合、例えば図1(b)のA1まで、研摩して新たな面A1を出した場合、図4に示すように、新たな刃先7の曲率は、当初の刃先4と同じ曲率R0であるので、図4(a)(b)(c)に示す、エアゾール容器12は、新たな刃先7の切り始め7aと、中央部7bと、切り終わり7cが、エアゾール容器12に確実に当接する。したがって、エアゾール容器12は確実に切断される。よって、エアゾール容器12のトリミング不良を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明に係るトリミング用の刃は、エアゾール容器、金属ボトル容器、樹脂ボトル容器又はチューブ容器の製造工程において、容器の先端部、底部又は任意の胴部を確実に切断できる。さらに、容器以外の金属パイプ、樹脂パイプ等を切断する場合においても、パイプの一端を保持する装置、回転する装置と組合せることにより、筒状物体を同様の方法で切断することができ、筒状物体を有する製品であれば、広く本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るトリミング用の刃の実施例を示す斜視図(a)(b)(c)。
【図2】本発明に係るトリミング用の刃を用いて、エアゾール容器を切断している 状態を示す正面図。
【図3】本発明に係るトリミング用の刃を用いて、エアゾール容器を切断している 状態を示す側面図。
【図4】本発明に係る実施例で、エアゾール容器を切断している状態を示す正面図 (a)(b)(c)。
【図5】従来のトリミング用の刃を示す側面図。
【図6】従来のトリミング用の刃で、エアゾール容器を切断している状態を示す正面 図。
【図7】従来のトリミング用の刃を示す斜視図。
【符号の説明】
【0016】
1 刃
2 刃下面
3 刃傾斜面
4 刃先
7 8 新たな刃先
12 エアゾール容器
A0 面
A1 A2 新たな面
R0 曲率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃先で、筒状物体を切断するトリミング用の刃であって、刃下面の延長部位に位置する刃傾斜面の刃先の曲率と、刃下面に平行に、任意に研摩又は切断した面の延長部位に位置する刃傾斜面の新たな刃先の曲率が、等しいことを特徴とするトリミング用の刃。
【請求項2】
請求項1記載のトリミング用の刃を用いて、容器の製造工程において、容器の一端を保持すると共に容器を公転及び回転させて、容器の開口部にトリミング加工を施したことを特徴とする容器の製造方法。
【請求項3】
前記容器が、エアゾール容器、金属ボトル容器、樹脂ボトル容器又はチューブ容器の
いずれかから選ばれる1つであることを特徴とする請求項2記載の容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のトリミング用の刃を用いて、パイプの製造工程において、パイプを保持すると共にパイプを公転及び回転させて、パイプを切断することを特徴とするパイプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−80357(P2008−80357A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262225(P2006−262225)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)