説明

トルクゲージ

【課題】 握り部の直径を大きくすることなく、トルクの測定範囲を拡大できるようにする。
【解決手段】 筒状の握り部1の軸心位置に主軸2を設ける。この主軸2に渦巻きバネ3を外装して握り部1に収納する。この渦巻きバネ3の内端3aを、主軸2に固定する。また渦巻きバネ3の外端3bを、握り部1に固定する。先端に、被測定物を掴むためのチャック11を設ける。上記の渦巻きバネ3を、主軸2の長手方向に沿って握り部1内に複数設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクゲージに関し、更に詳しくは電子機器等の摘みや軸が動き始めるときのトルクを測定するためのトルクゲージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のトルクゲージとしては、例えば筒状の握り部の軸心位置に主軸が設けられ、この主軸に渦巻きバネが外装されて握り部に収納され、この渦巻きバネの内端が主軸に固定されると共に、外端が握り部に固定され、先端に被測定物を掴むためのチャックが設けられているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところでこの種のトルクゲージは、渦巻きバネの性能(バネ定数)によってトルクの測定範囲が決定される。従って大きなトルクを測定可能にするためには、通常、バネ定数の大きな渦巻きバネを使用する必要がある。しかしこの場合は、通常、渦巻きバネの直径が大きくなるため、握り部が太くなるのを避けられない。従って、トルクの測定範囲を大きくすると、それに伴い握り部の直径が増大して回転操作がし難くなることから、従来、トルクの測定範囲を大きくするには限界があった。
【特許文献1】特開2000−258267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、握り部の直径を大きくすることなく、トルクの測定範囲を拡大できるよう形成したトルクゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、筒状の握り部1の軸心位置に主軸2が設けられ、この主軸2に渦巻きバネ3が外装されて握り部1に収納され、この渦巻きバネ3の内端3aが主軸2に固定されると共に、外端3bが握り部1に固定され、先端に被測定物を掴むためのチャック11が設けられているトルクゲージであって、上記の渦巻きバネ3が、主軸2の長手方向に沿って握り部1内に複数設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
本発明の場合、渦巻きバネ3の配設間隔は任意であるが、握り部1に的確に力がかかるよう、通常、渦巻きバネ3は近接して配置されているのが好ましい。また本発明は、一方の渦巻きバネ3を右巻き状態、他方の渦巻きバネ3を左巻き状態のように、渦巻きバネ3が巻回方向を異ならせて主軸2に固定されるのでも良い。また本発明の場合、渦巻きバネ3は、夫々バネ定数が同じ状態に形成される方が、トルクの測定範囲値を、容易に算出でき、組立ても容易になること等から好ましいが、これに限定されるものではない。
【0007】
而して本発明のトルクゲージは、渦巻きバネ3が2個であるのが好ましい(請求項2)。
なぜならこれによると、握り部1の長さを抑えることができ、使い勝手が良くなるからである。
【0008】
また請求項2記載のトルクゲージは、渦巻きバネ3の外端3bの固定位置が、一方側の渦巻きバネ3と他方側の渦巻きバネ3で180度違えられているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、主軸2を中心にして、握り部1のバランスが良くなるからである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトルクゲージは、このように筒状の握り部の軸心位置に主軸を設け、この主軸に渦巻きバネを外装して握り部に収納させ、この渦巻きバネの内端を主軸に固定すると共に、外端を握り部に固定し、先端に被測定物を掴むためのチャックを設けているトルクゲージであって、上記の渦巻きバネを、主軸の長手方向に沿って握り部内に複数設けているものである。
従って本発明によると、握り部の径を大きくしたり、大型化することなく、即ち握り部の回転操作に支障を来たすことなく、トルクの測定範囲を拡大できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1等において、1は筒状の握り部であり、2はこの握り部1の軸心位置に設けられている主軸である。この主軸2は、スリット2aが長手方向に延びて形成されることにより、先端から略真ん中の位置まで、2つ割り状に形成されている。またこの主軸2の周面には、スリット2aと略同じ長さにわたってネジ2bが切られ、雄ネジ状に形成されている。
【0011】
3は、主軸2に外装されて握り部1に収納されている渦巻きバネである。この渦巻きバネ3は、主軸2の長手方向に沿って所定の間隔をあけ、2個設けられている。またこの渦巻きバネ3の内端3aは、主軸2のスリット2aに差し込まれて主軸2に固定されている。4は渦巻きバネ3の内端3aの個所を押えるバネ押さえであり、5は固定用のナットである。この実施形態では、一方側の渦巻きバネ3と他方側の渦巻きバネ3の配置間隔が、主軸2に螺合させたナット部材6で調節されている。
【0012】
7は、渦巻きバネ3の外端3bを固定するためのバネ受けである。このバネ受け7は、握り部1にピン8で固定されるリング状のプレート7aと、このプレート7aの板面の所定位置に握り部1の内周面から少し離されて起立状に固定されているピン部材7bと、このピン部材7bとプレート7aの同じ板面側の反対位置に、プレート7aの湾曲に沿ってプレート7aに重合状に固定されている弧状のバランス部材7cとで形成されている。
【0013】
上記のピン部材7bは、周面が先端から下部にわたってネジ7b1が切られ、雄ネジ状に形成されていると共に、長手方向に沿ってスリット7b2が入れられ、2つ割り状に形成されている。渦巻きバネ3の外端3bは、このスリット7b2に差し込まれ、バネ押さえ9を介して先端にナット10が螺合されることにより、2つ割り状の各片が締め付けられてピン部材7bに固定されている。またピン部材7bが設けられているプレート7aは、上記の通り、握り部1にピン8で固定されている。従って渦巻きバネ3の外端3bは、この実施形態ではバネ受け7を介して握り部1に固定されている。
【0014】
而してこの実施形態の場合、上記のピン部材7bは、一方側の渦巻きバネ3と、他方側の渦巻きバネ3で、夫々の外端3bの固定位置を180度違えられるよう、各バネ受け7が配置されている。具体的には、図示されるように、一方側の渦巻きバネ3と、他方側の渦巻きバネ3のバネ受け7の固定位置を、ピン部材7bの位置が180度反対側になるよう選定することにより実現されている。従ってこの実施形態では、ピン部材7bと共に、バランス部材7cも、各バネ受け7で180度位置が違えられ、これにより握り部1の重心の安定化が図られている。
【0015】
11(図1A参照)は、被測定物を掴むためのチャックである。このチャック11は、ホルダー12を回すことで開く、3個の爪を備え、先端に設けられている。なお13は主目盛、14は副目盛である。また図1Bに示されるように、主軸2の先端には、副目盛板15がネジ16で固定されている。また17は目盛の0点を示す基線、18は透明板である。
【0016】
次に本発明のトルクゲージの作用を説明する。
先ず使用者は、ホルダー12を回してチャック11の爪を開き、被測定物をできるだけ深く差し込んで、チャック11を締め付ける。次に使用者は、握り部1を回して被測定物の起動時のトルク値を、主目盛13、副目盛14を読み、測定する。本発明の場合、握り部1の回転方向は、左右何れの側でも良い。この実施形態では、一方側の渦巻きバネ3と他方側の渦巻きバネ3が、巻回方向を同じ向きにして主軸2に固定されている。従って使用者が、握り部1を例えば時計方向に回すと、渦巻きバネ3は両方とも締め込まれ、握り部1から手の力を抜くと、渦巻きバネ3の復元力で握り部1が反対方向に回転して復帰する。本発明は、1個の渦巻きバネ3を備えた場合に比べ、渦巻きバネ3の個数の増加に応じて、2倍、3倍と、トルクの測定範囲が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のトルクゲージの好適な一実施形態を示し、Aは側面図、Bは要部拡大断面図である。
【図2】同上トルクゲージの要部分解斜視図である。
【図3】握り部の一部を切欠した側面図である。
【図4】主軸の一部を切欠した側面図である。
【図5】一方側の渦巻きバネに対応するバネ受けを示し、Aは正面図、BはAのB−B線断面図である。
【図6】他方側の渦巻きバネに対応するバネ受けを示し、Aは正面図、BはAのB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 握り部
2 主軸
3 渦巻きバネ
3a 内端
3b 外端
4、9 バネ押さえ
5、10 ナット
6 ナット部材
7 バネ受け
8 ピン
11 チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の握り部の軸心位置に主軸が設けられ、この主軸に渦巻きバネが外装されて握り部に収納され、この渦巻きバネの内端が主軸に固定されると共に、外端が握り部に固定され、先端に被測定物を掴むためのチャックが設けられているトルクゲージであって、上記の渦巻きバネが、主軸の長手方向に沿って握り部内に複数設けられていることを特徴とするトルクゲージ。
【請求項2】
請求項1記載のトルクゲージであって、渦巻きバネが2個であることを特徴とするトルクゲージ。
【請求項3】
請求項2記載のトルクゲージであって、渦巻きバネの外端の固定位置が、一方側の渦巻きバネと他方側の渦巻きバネで180度違えられていることを特徴とするトルクゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−71468(P2006−71468A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255481(P2004−255481)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(599143885)株式会社中村製作所 (9)