説明

トルクコンバータのためのトーラス形状

本発明は、トーラス形状がせん断されている、すなわち、トーラス形状を通る仮想の軸方向断面が、内側のガイドホイール通流口直径を起点として、有効半径の増加と共に次第に軸方向で一方向にずらされているトルクコンバータを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の、自動車のためのトルクコンバータ、すなわち、自動車のためのトルクコンバータであって、ケーシングと、該ケーシング内に配置されるポンプ、タービン、ガイドホイール、ロックアップクラッチおよび場合により少なくとも1つのトーショナルバイブレーションダンパとが設けられており、前記ポンプ、タービンおよびガイドホイールが相俟って1つのトーラスを形成している形式のものに関する。ここではトーラス形状をさらに改善したい。
【0002】
トルクコンバータは、1905年から公知である(DE221422号およびDE238804号)。発明者であるFoettinger氏は、組立て後に液密に互いに結合される2つのシェル半部の間にポンプおよびタービンを格納した。発明の有利な形態では、ガイドホイールも配置されている。ポンプ、タービンおよびガイドホイール内には、実質的に半径方向で延在するベーンが配置されている。ケーシングを液体、有利にはオイルで満たすことにより、ポンプからタービンへの力/モーメントの伝達が行われる。自動車におけるトルクコンバータへの入力は、コンバータのケーシングが相対回動不能に内燃機関のクランク軸に結合されていることにより行われる。出力はタービンを介して、後続の伝動装置の伝動装置入力軸が直接的または間接的に相対回動不能にタービンのボスに結合されていることにより行われる。
【0003】
ケーシング、ひいてはポンプの回転により、オイルは遠心力効果によって外側に向かって駆動される。このとき、ポンプ内のオイルの流動は弓形に行われる。ポンプの半径方向外側の領域で、オイル流は軸方向に向きを変え、タービンに流入する。オイルが遂行しなければならない出力により、オイル流は減速する。これにより、タービン内の流動横断面は流動方向でますます拡大しなければならない。オイルは再びポンプの流入領域に向かって変向されなければならないので、タービン外壁はポンプの流入領域に向かって曲げられている。タービンから来るオイル流が再びポンプの流入開口に到達する前に、オイルはガイドホイールも通流する。ガイドホイール内で、オイル流は、ポンプのベーンの流過ができるだけ最適であるようにさらなる方向転換を被る。オイル回路はこうして改めて開始され得る。回路が維持される限り、かつタービンがポンプより低い回転数で回転する限り、モーメントが伝達され得る。しかし、タービン回転数がポンプ回転数に接近すればするほど、効率は悪化する。
【0004】
ポンプ、タービンおよびガイドホイールの説明した形状は、相俟ってトルクコンバータのトーラスを形成する。相応の流動は「トーラス流動(Torus−Stroemung)」である。この概念は、回転するオイルリングが軸線ずれを伴い、同時にトルクコンバータの回転軸線を中心に回転するので、数学に由来する。
【0005】
トルクコンバータの発明以来、トルクコンバータに属するその他の重要なコンポーネントが発明されている。例えばロックアップクラッチは重要な改良と言える。それというのも、ロックアップクラッチは効率が悪いときに接続され得るからである。これにより、力伝達経路は、回転するケーシングから直接的または間接的に伝動装置入力軸に至る。別の公知の改良は、クランク軸の回転不均等性が伝動装置入力軸に伝わらないように、トーショナルバイブレーションダンパ、略してダンパが力伝達経路内に組み込まれる点にある。
【0006】
ここ百年の間、トルクコンバータの効率を改善するために、トーラスの多数の形状が発明された。しかし、近年は、自動車の分野のために、主として出力要求および伝動装置内での組付け可能性にのみ適合された標準形状が形成されている。
【0007】
それゆえ本発明の課題は、トーラスがその効率面でさらに改善される可能性を追求することである。この課題を解決するために本発明の構成では、トーラス形状がせん断されている、すなわち、トーラス形状を通る仮想の軸方向断面が、内側のガイドホイール通流口直径を起点として、有効半径の増加と共に次第に軸方向で一方向にずらされているようにした。本発明の有利な形態では、せん断が線形である、すなわち、制御変数である有効半径にわたって、軸方向のずれと有効半径差との商が一定である。本発明の別の有利な形態では、トーラス形状がタービンに向かってせん断されている。本発明のさらに別の有利な形態では、トーラス形状がポンプに向かってせん断されている。本発明のさらに別の有利な形態では、ガイドホイールの流出開口における流出高さが、流入開口における流入高さより大きい。本発明のさらに別の有利な形態では、ガイドホイールの流出開口における内側の環状の制限面の直径が、ガイドホイールの流入開口における内側の環状の制限面の直径より小さい。本発明のさらに別の有利な形態では、ガイドホイールの流出開口における外側の環状の制限面の直径が、ガイドホイールの流入開口における外側の環状の制限面の直径より大きい。本発明のさらに別の有利な形態では、外側の環状の制限面が、ガイドホイールベーンの外側直径上に被せはめ可能な別個のリングとして形成されている。本発明のさらに別の有利な形態では、前記別個のリングが、段部、ノッチまたはかしめによりガイドホイールベーンに固定されている。本発明のさらに別の有利な形態では、ポンプの流出開口の総和が、円錐形の形態をなしており、該円錐形は、ポンプの外側の縁部が、内側の直径よりもさらにタービンに向かって延在するように構成されており、かつタービンの流入開口が、実質的にポンプの流出開口に対して平行であり、ポンプからタービンへの移行領域に、ケーシングが直径の飛躍を有しない。本発明のさらに別の有利な形態では、内側のガイドホイール通流口直径が、ポンプ外側直径の0.5〜0.7倍である。本発明のさらに別の有利な形態では、少なくとも内側のタービン流出直径または内側のポンプ流入直径が、内側のガイドホイール通流口直径より小さい。本発明のさらに別の有利な形態では、内側のタービン流出直径および内側のポンプ流入直径が、内側のガイドホイール通流口直径より小さい。
【0008】
本発明の第1の形態では、トーラス形状が背景技術から、せん断を被るように変更される。このせん断は、材料強度学でせん断について説明するように、トーラスの形状付与の場合、何らかのせん断応力が重要なのではなく、変形だけが重要であるにすぎないと理解すべきである。これについては、以下の図面に基づく説明を参照されたい。
【0009】
本発明の別の形態では、当業者にとって驚くべきことであるが、ガイドホイールの通流開口の寸法を維持したとき、タービンの流出開口の、トルクコンバータの回転軸線の方向での延長が、効率の改善に至ることが判った。ポンプの流入開口がトルクコンバータの回転軸線の方向で延長されても、この改善が生じる。両手段は組み合わされてもよい。特別なプログラム(CFD=Computational Fluid Dynamic)を用いたシミュレーションは、両手段合わせて、2〜3%の効率改善を示した。
【0010】
背景技術では、トーラスの半径方向外側の領域で、実質的にトルクコンバータの回転軸線に対して平行に、ポンプからオイルが流出する。このことは、再びタービンの軸方向の流動が行われ得るためにも重要である。タービンのベーンが配置されているシェルが、トルクコンバータのケーシングとの接触が生じないようにケーシングに対して間隔を置いていなければならないので、かつポンプ内の外側の流動面がケーシング自体により形成されるので、環状の段が、ポンプからタービンへの移行部でハウジングに型打加工されなければならない。これにより、ポンプの外側の直径は、タービンの外側の直径のレベルにある。しかし、これにより、ポンプ外側直径は、隣接するコンバータ直径よりも常に若干小さくなっている。しかし、トルクコンバータの効率および出力に関する公式に、ポンプの直径は5乗されて代入されるので、ポンプ直径は「失われない」ことが望ましい。ここでは、本発明の別の形態により、段のないケーシング、ひいてはトーラスの形状が提案される。ケーシングの形状については、以下に図面に基づいて説明する。
【0011】
本発明の別の形態では、ガイドホイールがディフューザとして形成されている。このことは、ガイドホイールのベーン間の横断面が流入開口から流出開口に向かって拡大することを意味する。これにより、オイルはガイドホイール内で減速される。この拡大は、隣接する中間室(隣のベーンにより形成される中間室)がより小さくならざるを得ないため、周方向で行われることはできないので、半径方向で行われる。CFDシミュレーションは、ポンプ内の静圧の減少がトルクコンバータのより大きな出力に至ることを示した。ポンプ内の静圧の減少を達成するために、ポンプ内のオイル流は、流入開口から流出開口へ加速されなければならない。これにより、ポンプの流入開口は、ポンプの流出開口より大きい。背景技術では、両開口は同じである。オイル流を既にポンプ内への流入前にその流動横断面で準備するために、ガイドホイールはディフューザとして形成されている。
【0012】
本発明の最後の形態では、トーラスが、トーラス流動がほぼ円形であるように構成されている。このことは、内側のガイドホイール直径、つまりガイドホイールボスの直径が、ポンプ外側直径の0.5〜0.7倍であることにより達成される。
【0013】
本発明について図面を参照しながら詳説する。図中、
図1は、トーラスの背景技術を示し、
図2は、タービンもしくはポンプの、図1に比較して回転軸線に向かって延長された流出開口および流入開口を備えるトーラスを示し、
図3は、トーラスの背景技術を示し、
図4は、図3に比較して拡大されたポンプ直径を備えるトーラスを示し、
図5は、トーラスの背景技術を示し、
図6は、図5に比較してタービン側に「せん断された」トーラスを示し、
図7は、図5に比較してポンプ側に「せん断された」トーラスを示し、
図8は、トーラスの背景技術を示し、
図9は、図8に比較してディフューザガイドホイールを備えるトーラスを示し、
図10は、トーラスの背景技術を示し、
図11は、ほぼ円形の横断面を備えるトーラスを示す。
【0014】
以下の説明で言及されない符号については、符号の説明を参照すべきことを前もって指摘しておく。同じ符号は同じ要素を指している。
【0015】
図1および図2は、関連付けて参照されなければならない。それというのも、図1(背景技術)を本発明の形態と直接的に比較することによってのみ、相違を明らかにし得るからである。図示したトーラスの横断面は、主としてポンプ1と、タービン2と、ガイドホイールもしくはステータ3とからなる。ポンプ1の外側輪郭はケーシング4により形成される。トーラスは、内燃機関のクランク軸の回転軸線と同一の回転軸線5を中心に回転する。同時に断面図から、ポンプ1、タービン2およびガイドホイール3内に配置されるベーンの輪郭も認識される。ベーンは空間内で湾曲しているが、このことは二次元的な描写からは認識不能である。
【0016】
タービン2のベーンは、タービンのシェル内に配置されている。シェルは同時に、タービンベーンの外側輪郭をなしている。ポンプ1およびタービン2の弓なりの内側輪郭は、背景技術ではやはりシェル、いわゆる「インナリング」により覆われる。これにより、トーラスオイル流がアウタシェル、インナシェルおよびベーンの間で案内される。タービン2、ガイドホイール3およびポンプ1の内側の直径12,13,14はすべて同じレベルにある。
【0017】
図2、つまり本発明による形態では、タービン流出開口8およびポンプ流入開口11の半径方向内側の端部が、直径12から遥かに内側に置かれている。しかし、ガイドホイール3の流入開口9および流出開口10の寸法は不変である。タービン2およびポンプ1の内側の直径12′,13′は、ガイドホイール3の内側の直径より小さいけれども、CFDシミュレーションによれば、それにもかかわらず効率の改善が認められた。
【0018】
図3および図4に示すトーラスの別の形態では、ポンプ1の外側直径21は、より大きな直径21′に拡大されている。図3は比較のために背景技術を示す。図3では、移行領域20に段差が、コンバータのケーシング4内に存在し、かつタービン2の外側直径が、ポンプ1の外側直径に等しい。拡大されたポンプ外側直径21′は、ポンプ1からタービン2内へのオイルの流出が12時の位置から略11時の位置に移動されたために可能となる。ポンプ直径は正の5乗で効率および出力の公式に代入されるので、より大きなポンプ直径21′は、明らかな出力および効力の改善をなす。DE221422号の図6もしくはUS1199360号の図8および専門書『Fahrzeuggetriebe(LechnerおよびNaunheimer著、1994年)』の第265頁には、確かに、ポンプ流出開口6とタービン流入開口7との間の仕切り線が11時の位置にあるトーラスが既に示されているが、そこに示されているのはすべてオーバルのケーシングである。これにより、ポンプ1から流出するオイルは強制的にタービン内に流入しなければならない。一部、背景技術では、どのようにケーシングが形成されているか未定のままとされている。しかし、いずれにしても、拡大されたポンプ外側直径21′がそこに用いられるとは開示されていない。
【0019】
図5〜図7は、本発明の別の形態を示す。ただし、図5は背景技術を示す。ケーシングはここでは確かに、これまでの図面に比べればより写実的に描写されているが、半径方向外側の領域における図示の軸方向の結合技術は、大量生産にとって典型的とは言えない。図示の結合技術は、コンバータの組付け部品をより迅速かつ容易に交換可能とするために試験分野で使用されるものである。大量生産の場合、左右のケーシングシェルは周囲で互いに溶接される。これらの図面には、構成要素たるコンバータロックアップクラッチおよびトーショナルバイブレーションダンパも省略されている。
【0020】
本発明により、図6および図7において、トーラスはそれぞれ「せん断(geschert)」されている。図6ではタービンに向かってせん断されている。図7ではトーラスはポンプに向かってせん断されている。誤解のないように言えば、図6および図7の例は、傾倒(gekippt)されたトーラスを示すものではない。もしトーラスがそれぞれせん断される代わりに傾倒されると、例えば、タービン流出開口8とガイドホイール流入開口9との間の図5(背景技術)の最深点は、図6で見て、一点鎖線で示す鉛直線と中間線Cとの交点より深くに位置する。図7では、鉛直線が内側のガイドホイール流出直径14の中央に配置されている。このことは、同じ大きさの間隔a,bにより明示される。トーラスを通る無限数の仮想の軸方向の断面を想定し、これらの断面を有効半径15の増加に伴って徐々に軸方向でポンプ方向にずらしていくと、せん断されたトーラスが得られる。ポンプ外側直径21の高さで、値Sはせん断の総量を示す。
【0021】
せん断は、図6では組付け部品、例えばトーショナルバイブレーションダンパのために半径方向内側の領域により多くのスペースを提供すると同時に、背景技術に比べてコンバータの全長を短くするという利点を有する。最大で提供される軸方向の構成スペースは、設計者にとってますます課題となっている。図7に示すせん断では、半径方向外側の領域にスペースが形成されている。この構成スペースは、できるだけ大きな有効直径上で大きなばね行程を実施しなければならないダンパのために特に必要とされる。
【0022】
背景技術(DE10081340T1号の図14およびUS4129000号の図1)からは、本発明に一見類似したトーラス形状が公知であるが、そこには、タービン流入開口7に対するポンプ流出開口6の平行性が開示されていないか、または平行性があっても、この移行箇所が半径方向で形成されており、このためにせん断されていない。
【0023】
ポンプ流出開口6およびタービン流入開口7が平行でないと、効率は失われる。しかし、本発明によるこの形態の決定的な利点は、軸方向の変形加工プロセスによりトーラス形状を製作し得る点にある。特に有利なのは、背景技術にしたがってアルミニウムダイカストにより製作されるガイドホイール3である。それというのも、そこで使用される軸方向の離型により、高価なスライダ工具が不要となるからである。
【0024】
図8および図9は、本発明の別の形態を示す。ただし、図8は背景技術を示す。本発明のこの形態では、ガイドホイール3にディフューザ効果が予定されている。すなわち、オイルの通流時、オイルは減速される。このことは、ガイドホイール流出開口10がガイドホイール流入開口9より大きく構成されていることによって達成される。ベーン間の横断面の拡大は周方向で行われてはならない。それというのも、そうすると、隣接するベーン間の横断面が減じられてしまうからである。それゆえ、横断面拡大は半径方向で行われる。そのため、流入高さ17は流出高さ16より小さい。この形態は、ダイカストによるガイドホイール3の製作時に、ガイドホイール3が軸方向で離型され得るという利点を有する。拡大は、外側の環状の制限面19だけが半径方向外側に開くように行われるか、または内側の環状の制限面18だけが半径方向内側に開くように行われるか、または両方の環状の面がポンプに向かって拡がるように行われることができる。既に上述したように、ガイドホイール3の、ディフューザとしての構成は、流体運動学的な利点も有する。ディフューザの別の形態では、外側のリング、内面に外側の環状の制限面19が設けられている外側のリングが、別個のリングとして構成されてもよい。このリングは、プレスによりガイドホイールベーンの外側直径にプレスばめされてもよい。別の形態では、このリングは段部、ノッチまたはかしめによりガイドホイールベーンに確保されてもよい。
【0025】
背景技術から、例えばUS2737827号には、やはりディフューザガイドホイールを備えるコンバータが公知である。しかし、そこに記載されるコンバータは、3より多くのトーラス区分を備えるコンバータである。これに対して、特許請求される本発明では、最大で3つのトーラス区分、すなわちポンプ、タービンおよびガイドホイールのみが存在する。さらに背景技術では、ガイドホイールを軸方向の離型により製作し得ない。それというのも、流入端部の半径方向外側の領域における湾曲のためにアンダカットが生じるからである。この場合、コアは右向きに引き抜かれない。
【0026】
図10および図11は、本発明の最後の形態を示す。ただし、図10は直接的な比較のために背景技術を示す。ポンプ1、タービン2およびガイドホイール3内の、ハッチングを施した狭小な面は、ここではベーンが書き込まれており、切断面により部分的に切断されているために生じる。水平線は構成サイズのより良好な比較のために役立つ。図11では、ガイドホイール3がある程度トーラス内にシフトされていることが一目瞭然である。図10の元々はオーバルのトーラスから、図11ではほぼ円形のトーラスとなる。内側のガイドホイール直径14は、半径方向でガイドホイール直径14′へシフトされる。同様に外側のガイドホイール直径22は、半径方向外側に、外側のガイドホイール直径22′へシフトされる。内側のガイドホイール通流口直径14は、有利にはポンプ外側直径21の0.5〜0.7倍である。
【0027】
コンバータの出力データは、典型的には「スピードレシオ(Speed Ratio)」との関係で示される「MP2000(Nm)」のグラフで表される。ここで、「MP2000」は、2000rpm時のポンプの受容モーメント(Nm)である。「スピードレシオ」は、タービン回転数のポンプ回転数に対する比(回転数比)である。タービン回転数は、コンバータロックアップクラッチがなければ、常にポンプ回転数より小さいので、この値は、コンバータロックアップクラッチが開放されているとき、やはり常に1より小さい。上述のグラフで、図10および図11に示す本発明の場合、小さな回転数比(<0.5)に関して、ポンプモーメントが背景技術の値を下回る。このことは特に、内燃機関がその下側の回転数領域でまず一度負荷から解放されているべきであるとき、つまり大規模に駆動出力により負荷されるべきでないときに有利である。このことは特にディーゼルエンジンにとって有意義である。
【0028】
上側の回転数比(>0.5)では、本発明はしかし異なる挙動を示す。ここでは、ポンプモーメントは背景技術のポンプモーメントを上回る。このことはやはり、回転数比が1(または可能なクラッチポイントである0.8)に近づくとき、常に効率が悪化するが、本発明によりそれにもかかわらずこの回転数領域でタービン出力が向上され得るので有利である。タービン出力は最終的には、伝動装置に伝達される出力である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トーラスの背景技術を示す図である。
【図2】タービンもしくはポンプの、図1に比較して回転軸線に向かって延長された流出開口および流入開口を備えるトーラスを示す図である。
【図3】トーラスの背景技術を示す図である。
【図4】図3に比較して拡大されたポンプ直径を備えるトーラスを示す図である。
【図5】トーラスの背景技術を示す図である。
【図6】図5に比較してタービン側に「せん断された」トーラスを示す図である。
【図7】図5に比較してポンプ側に「せん断された」トーラスを示す図である。
【図8】トーラスの背景技術を示す図である。
【図9】図8に比較してディフューザガイドホイールを備えるトーラスを示す図である。
【図10】トーラスの背景技術を示す図である。
【図11】ほぼ円形の横断面を備えるトーラスを示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ポンプ
2 タービン
3 ガイドホイール
4 ケーシング
5 回転軸線
6 ポンプ流出開口
7 タービン流入開口
8 タービン流出開口
9 ガイドホイール流入開口
10 ガイドホイール流出開口
11 ポンプ流入開口
12 内側のタービン流出直径
12′ 小さくされた内側のタービン流出直径
13 内側のポンプ流入直径
13′ 小さくされた内側のポンプ流入直径
14 内側のガイドホイール通流口直径
15 有効半径
16 ガイドホイールの流出側における流出高さ
17 ガイドホイールの流入側における流入高さ
18 内側の環状の制限面
19 外側の環状の制限面
20 移行領域
21 ポンプ外側直径
21′ 大きくされたポンプ外側直径
22 外側のガイドホイール通流口直径
22′ 外側のガイドホイール通流口直径
W トーラスの軸方向の幅
S せん断
C 中間線/センターライン
a 間隔
b 間隔
【図1−2】

【図3−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のためのトルクコンバータであって、ケーシング(4)と、該ケーシング(4)内に配置されるポンプ(1)、タービン(2)、ガイドホイール(3)、ロックアップクラッチおよび場合により少なくとも1つのトーショナルバイブレーションダンパとが設けられており、前記ポンプ(1)、タービン(2)およびガイドホイール(3)が相俟って1つのトーラスを形成している形式のものにおいて、トーラス形状がせん断されている、すなわち、トーラス形状を通る仮想の軸方向断面が、内側のガイドホイール通流口直径(14)を起点として、有効半径(15)の増加と共に次第に軸方向で一方向にずらされていることを特徴とする、自動車のためのトルクコンバータ。
【請求項2】
せん断が線形である、すなわち、制御変数である有効半径(15)にわたって、軸方向のずれと有効半径差との商が一定である、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
トーラス形状がタービン(2)に向かってせん断されている、請求項1または2記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
トーラス形状がポンプ(1)に向かってせん断されている、請求項1または2記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
ガイドホイール(3)の流出開口(10)における流出高さ(16)が、流入開口(9)における流入高さ(17)より大きい、請求項1から4までのいずれか1項記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
ガイドホイール(3)の流出開口(10)における内側の環状の制限面(18)の直径が、ガイドホイール(3)の流入開口(9)における内側の環状の制限面(18)の直径より小さい、請求項5記載のトルクコンバータ。
【請求項7】
ガイドホイール(3)の流出開口(10)における外側の環状の制限面(19)の直径が、ガイドホイール(3)の流入開口(9)における外側の環状の制限面(19)の直径より大きい、請求項5記載のトルクコンバータ。
【請求項8】
外側の環状の制限面(19)が、ガイドホイールベーンの外側直径上に被せはめ可能な別個のリングとして形成されている、請求項5から7までのいずれか1項記載のトルクコンバータ。
【請求項9】
前記別個のリングが、段部、ノッチまたはかしめによりガイドホイールベーンに固定されている、請求項8記載のトルクコンバータ。
【請求項10】
ポンプ(1)の流出開口(6)の総和が、円錐形の形態をなしており、該円錐形は、ポンプ(1)の外側の縁部が、内側の直径よりもさらにタービン(2)に向かって延在するように構成されており、かつタービン(2)の流入開口(7)が、実質的にポンプ(1)の流出開口(6)に対して平行であり、ポンプ(1)からタービン(2)への移行領域(20)に、ケーシング(4)が直径の飛躍を有しない、請求項1から9までのいずれか1項記載のトルクコンバータ。
【請求項11】
内側のガイドホイール通流口直径(14)が、ポンプ外側直径(21)の0.5〜0.7倍である、請求項1から10までのいずれか1項記載のトルクコンバータ。
【請求項12】
少なくとも内側のタービン流出直径(12)または内側のポンプ流入直径(13)が、内側のガイドホイール通流口直径(14)より小さい、請求項1から11までのいずれか1項記載のトルクコンバータ。
【請求項13】
内側のタービン流出直径(12)および内側のポンプ流入直径(13)が、内側のガイドホイール通流口直径(14)より小さい、請求項12記載のトルクコンバータ。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−11】
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【公表番号】特表2009−533614(P2009−533614A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504560(P2009−504560)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000552
【国際公開番号】WO2007/118449
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany