説明

トルクコンバータカバーのためのパイロットボス及びパイロットボスを形成する方法

【課題】製造が簡単で、二次的な仕上げ作業を必要とすることなく組立て公差要求を維持する、パイロットが係合させられる低コストのトルクコンバータを提供する。
【解決手段】トルクコンバータカバー60の外面68から延びておりかつカバーの回転軸線70に対して対称的な概して円筒状の突出部66が設けられており、突出部66と係合させられる概して円筒状の凹部74を有する概して円筒状のボディ72を含むパイロットボス62が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、合衆国第35法典第119条(e)に基づいて、引用したことにより本明細書に記載されたものとする2006年12月21日に出願された米国特許仮出願第60/876216号明細書の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、広くはトルクコンバータ、特にトルクコンバータカバー、さらに特にトルクコンバータカバーのためのパイロットボス及びパイロットボスを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ハイドロリックトルクコンバータ、すなわちコンバータの入力軸と出力軸との間のトルク/速度比を変更するために用いられる装置は、エンジンパワーパルスを滑らかにする一方で、エンジンから駆動機構、例えば駆動軸又はオートマチックトランスミッションへエネルギを伝達するためのハイドロリック手段を提供することによって自動車産業及び船舶推進産業に変革をもたらした。エンジンとトランスミッションとの間に配置されたトルクコンバータは、3つの主要な構成部材、すなわち、コンバータのカバー、ひいてはエンジンのクランクシャフトに直接に結合された、時にはポンプと呼ばれるインペラと;構造上はインペラと同様であるが、トランスミッションの入力軸に結合されているタービンと;タービンから出てくる作動流体の流れを方向転換し、これによってポンプに付加的な回転力を提供する、インペラとタービンとの間に配置されたステータ;とを有している。
【0004】
図1は、エンジンクランクシャフト12とトランスミッション14との間に配置された従来のトルクコンバータ10の断面図である。図2に示されているように、トルクコンバータは通常、2つのカバー片、すなわち前側カバー16と後側カバー18とによって包囲されている。エンジンクランクシャフト12には、フレックスプレート20がボルト22によって固定されている。前側カバー16は、エンジンクランクシャフト12に面していて、このエンジンクランクシャフトにボルト24によって固定されているのに対し、インペラ26を有する後側カバー18は、トランスミッション14の近くにあり、溶接28によって前側カバー16に固定されている。図1に示されているように、ボルト24に加えて、前側カバー16はしばしば、トルクコンバータ10をエンジンクランクシャフト12に対して整合させかつ保持するのを助けるパイロットボス30を有している。
【0005】
パイロットボスを設ける様々な方法が技術上知られている。例えば、2002年11月5日にヤマナカ他に発行された米国特許第6474062号明細書には、プラスチック加工作業、例えばスタンピング及び圧延によってトルクコンバータカバーを形成することによってパイロットボスを製造する方法が記載されている。さらに、ヤマナカ他は、パイロットボスをトルクコンバータに設ける択一的な方法、すなわち、フランジ付きのパイロットを、前側カバーに設けられた貫通孔内に溶接することを開示している。他の方法は、パイロットを前側カバーの前面に溶接することを含む。例えば、図1に示されているように、パイロットボス30は溶接32によって前側カバー16に固定されている。場合によっては、パイロットボスが溶接又はスタンピングによって形成される場合、製造プロセスにおけるばらつきを修正するために二次的な旋削作業が必要である。言い換えれば、完全に組み立てられたトルクコンバータカバーは、所要の公差を満たすように修正されなければならない。
【0006】
すなわち、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定するための低コストの手段、及びそのための方法が従来必要とされている。また、公差を維持し、パイロットボスを備えたカバーが形成された後に二次的な仕上げ作業を必要としない、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する単純化された方法が従来必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6474062号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の概略的な目的は、パイロットが係合させられるトルクコンバータを提供することである。
【0008】
本発明の別の概略的な目的は、パイロットが係合させられるトルクコンバータを形成する方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、製造が簡単で、二次的な仕上げ作業を必要とすることなく組立て公差要求を維持する、パイロットが係合させられる低コストのトルクコンバータを提供することである
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、広くは、トルクコンバータカバーの外面から延びていてかつカバーのための回転軸線に対して対称的な突出部と、突出部と係合される凹部を有するボディを含むパイロットボスとを有するトルクコンバータカバーを含む。様々な実施形態において、突出部は、円筒、正方形平行六面体、切頭体、円錐又は放物面であることができる。
【0011】
別の実施形態において、トルクコンバータカバーは、トルクコンバータカバーの外面から延びていてかつカバーのための回転軸線に対して対称的な概して円筒状の突出部と、突出部と係合される概して円筒状の凹部を有する概して円筒状のボディを含むパイロットボスとを有する。幾つかの実施形態において、パイロットボスは圧縮力によって突出部と係合させられるのに対し、別の実施形態においては、凹部はさらに少なくとも1つの周方向アンダカットを有している。幾つかの実施形態において、凹部は開口を有しており、少なくとも1つの周方向アンダカットは開口と連続しているのに対し、別の実施形態において、凹部は末端部を有しており、少なくとも1つの周方向アンダカットは末端部と連続しており、さらに別の実施形態において、凹部は開口と末端部とを有しており、少なくとも1つの周方向アンダカットが、開口と末端部との間に位置している。
【0012】
さらに別の実施形態において、突出部は第1の直径を有しており、凹部は第2の直径を有しており、第1の直径が第2の直径よりも大きいのに対し、さらに別の実施形態においては、突出部が第1の直径を有しており、凹部が第2の直径を有しており、第1の直径が第2の直径よりも小さい。別の実施形態において、突出部は高さを有しており、凹部は深さを有しており、高さが深さよりも大きいのに対し、さらに別の実施形態においては、突出部が高さを有しており、凹部が深さを有しており、高さが深さよりも小さい。
【0013】
本発明は、広くは、カバーの第1の回転軸線に対して対称的に配置された第1の貫通孔を有するトルクコンバータカバーと、外壁、及びパイロットの第2の回転軸線に対して対称的に配置された第2の貫通孔を有する末端部を有するパイロットと、パイロットをカバーに固定するために配置された第1及び第2の貫通孔内に配置されるファスナとを含む。幾つかの実施形態において、パイロットは概して円筒状であるのに対し、別の実施形態においてはパイロットは概して円錐台形である。さらに別の実施形態において、ファスナはリベットであるのに対し、さらに別の実施形態において、ファスナはボルトである。
【0014】
本発明は広くは、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する方法であって、トルクコンバータカバーが、カバーの回転軸線に対して対称的な、カバーの外面からの突出部と、凹部を有するボディを有するパイロットボスとを有しており、前記方法が、a)凹部を突出部と整合させるステップと、b)パイロットボスに圧縮力を加えるステップと、c)パイロットボスの凹部内で突出部を変形させるステップとを有する方法をも含む。幾つかの態様において、凹部はさらに少なくとも1つの周方向のアンダカットを有する。
【0015】
本発明はさらに、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する方法であって、トルクコンバータカバーが、カバーのための回転軸線に対して対称的な、カバーの外面からの突出部と、凹部を有するボディを有するパイロットボスとを有しており、前記方法が、a)凹部を突出部と係合させるステップを有する方法を含む。
【0016】
本発明のこれらの目的及び利点並びにその他の目的及び利点は、本発明の好適な実施形態の以下の説明と、添付の図面及び請求項とから容易に認められるであろう。
【0017】
本発明の性質及び態様がここで、添付の図面を参照した発明の以下の詳細な説明により完全に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、異なる図面における同じ参照符号は、発明の同じ又は機能的に類似の構造エレメントを表していることが認識されるべきである。本発明は、現時点で好適な態様であると考えられるものに関して説明されるが、請求項に記載の発明は開示された態様に限定されないと理解されるべきである。
【0019】
さらに、発明は、記載された特定の方法、材料及び変更に限定されず、もちろん変更することができる。ここで使用されている用語は、特定の態様だけを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0020】
特に定義されない限りは、ここで使用されている全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者にとって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。「パイロット」という文言は「パイロットボス」等の文言と同義であり、このような文言は、明細書及び請求の範囲において出現するように交換可能に使用されることができる。ここに説明されたものと同じ又は均等のあらゆる方法、装置又は材料が発明の実施又は試験において使用されることができるが、好適な方法、装置及び材料がここでは説明されている。
【0021】
図2Aは、本願において用いられた空間的な用語を示している、円筒座標系40の斜視図である。本発明は、少なくとも部分的に円筒座標系に関連して説明される。系40は長手方向軸線41を有しており、この長手方向軸線は、以下の方向及び空間の用語のための基準として使用される。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、軸線41、半径42(軸線41に対して直交する)及び円周43のそれぞれに対して平行な方向に関する。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という形容詞は、個々の平面に対して平行な方向をもいう。様々な平面の配置を明らかにするために、物体44,45及び46が用いられている。物体44の面47は軸方向平面を形成している。すなわち、軸線41はこの面に沿った線を形成している。物体45の面48は半径方向平面を形成している。すなわち、軸線42はこの面に沿った線を形成している。物体46の面49は周方向平面を形成している。すなわち、円周43はこの面に沿った線を形成している。別の例として、軸方向の移動又は配置は軸線41に対して平行であり、半径方向の移動又は配置は半径42に対して平行であり、周方向の移動又は配置は円周43に対して平行である。回転は軸線41に関する。
【0022】
"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という副詞は、軸線41、半径42又は円周43のそれぞれに対して平行な方向に関する。"軸方向"、"半径方向"及び"周方向"という副詞は、個々の平面に対して平行な方向にも関する。
【0023】
図2Bは、本願において用いられた空間的な用語を示している、図2Aの円筒座標系40における物体50の斜視図である。円筒状物体50は、円筒座標系における円筒状物体を表しており、本願発明をどのようにも限定しようとするものではない。物体50は、軸方向の面51と、半径方向の面52と、周方向の面53とを有している。面51は軸方向平面の一部であり、面52は半径方向平面の一部であり、面53は周方向平面の一部である。
【0024】
図3は、パイロット62が取り外された本発明のトルクコンバータ前側カバー60の部分的な断面図であるのに対し、図4は、パイロット62がカバー64と係合させられている本発明のトルクコンバータ前側カバー60の部分的な断面図である。以下の説明は図3及び図4に示された実施形態を考慮して最もよく理解される。トルクコンバータ前側カバー60は、前側カバー64の外面68から延びた、前側カバー64のための回転軸線70に対して対称的な突出部66と、突出部66と係合される凹部74を有するボディ部分72を有するパイロットボス62とを有している。図3及び図4に示された実施形態においては、パイロットボス62と、突出部66と、凹部74とは概して円筒状であるが、当業者は、その他の形状、例えば、正方形平行六面体、切頭体、円錐及び放物面も可能であり、このような形状が請求の範囲に記載された発明の精神及び範囲に含まれることを認識するであろう。
【0025】
幾つかの実施形態、例えば図3及び図4に示された実施形態において、パイロットボス62は、圧縮力によって突出部66と係合させられるように配置されている。これらの実施形態において、パイロットボス62は、末端部76及び開放端部78を有しており、凹部74は、開放端部78の近傍に配置されている。凹部74は、底壁80及び側壁82を有しており、これらの位置が深さ84及び直径86を規定している。同様に、突出部66は、上面88及び側壁90を有しており、これらの位置が高さ92及び直径94を規定している。すなわち、矢印96の方向に圧縮力を加えることにより、パイロットボス62は突出部66と係合させられる。
【0026】
様々な実施形態において、突出部66の直径94は凹部74の直径86よりも小さい。このような実施形態において、上述の圧縮力を提供することにより、高さ92が深さ84よりも大きい場合には底壁80と上面88とが互いに接触するまで、又は高さ92が深さ84よりも小さい場合には開放端部78と外面68とが互いに接触するまで、凹部74が突出部66に嵌合させられる。底壁80と上面88とが互いに接触する実施形態において、十分な圧縮力が提供されると、突出部66の直径94が拡張させられ、これによって、パイロットボス62を突出部66と係合させる。底壁78と上面68とが互いに接触する実施形態において、十分な圧縮力が提供されると、側壁82の拡張が凹部74の直径86を減少させ、これによって、パイロットボス62を突出部66と係合させる。
【0027】
別の実施形態において、突出部66の直径94は凹部74の直径86よりも大きい。このような実施形態において、上述の圧縮力提供により、高さ92が深さ84よりも大きい場合には底壁80と上面88とが互いに接触するまで、高さ92が深さ84よりも小さい場合には開放端部78と外面68とが互いに接触するまで凹部74が突出部66に嵌合させられるか、又は底壁80と上面88とが互いに接触せずかつ開放端部78と外面68とが接触しない場合にはパイロットボス62を突出部66と係合させるために側壁82及び90の摩擦係合で十分である。底壁80と上面88とが互いに接触する実施形態において、十分な圧縮力が提供されると、突出部66の直径94が拡張させられ、これによって、パイロットボス62を突出部66と係合させる。底壁78と上面68とが互いに接触する実施形態において、十分な圧縮力が提供されると、側壁82の拡張が凹部74の直径86を減少させ、これによって、パイロットボス62を突出部66と係合させる。与えられた使用のために側壁82及び90の摩擦係合が十分である実施形態において、パイロット62を突出部66と係合させるのはこの摩擦係合だけである。
【0028】
図5は、パイロットボス100が取り外された本発明のトルクコンバータ前側カバー98の別の実施形態の部分的な断面図である。上述の実施形態のように、トルクコンバータ前側カバー98は、外面68を有するカバー64と、外面68から延びた、前側カバー98のための回転軸線70に対して対称的な突出部66とを有している。同様に、上述のように、突出部66は上面88と側壁90とを有しており、これらの位置が高さ92及び直径94を規定しており、この実施形態においては、概して円筒状を形成している。パイロットボス100は、末端部102と、凹部108を有する開放端部106を有するボディ部分104とを有している。凹部108は、底壁110及び側壁112を有しており、これらの位置が深さ114及び直径116を規定している。側壁112はさらにアンダカット118を有している。この実施形態においては、矢印120の方向に圧縮力を加えることにより、パイロットボス100は突出部66と係合させられる。上述の複数の実施形態と同様に、パイロットボス100の凹部108が突出部66及び/又は外面68に対して圧縮されると、突出部66の側壁90及び/又は側壁112は拡張し、パイロットボス100を突出部66と係合させる。しかしながら、この実施形態において、アンダカット118は、矢印120の方向での十分な圧縮力を加える間、突出部66が拡張するための付加的な容積を提供している。すなわち、単に側壁90及び112の間の接触を有するのに対して、この実施形態において、パイロットボス100は、アンダカット118内への突出部66の拡張により部分的に突出部66に係合させられる。
【0029】
図6は、複数の周方向のアンダカットを有する凹部124を有する本発明のトルクコンバータパイロットボス122の実施形態の断面図である。パイロットボス122はさらに開放端部126を有するのに対し、凹部124は末端部128を有している。この実施形態において、凹部124は、末端部128と連続した第1のアンダカット130と、開放端部126と連続した第2のアンダカット132と、第1のアンダカット130と第2のアンダカット132との間、すなわち末端部128と開放端部126との間に配置された第3のアンダカット134とを有している。図6に示された実施形態は、第1、第2及び第3のアンダカット130,132,134を有するパイロットボス122を示しているが、当業者は、アンダカットのあらゆる組合せ、例えば、第1、第1/第2、第1/第3、第2、第2/第3、及び第3、が可能であり、このような変更が、請求の範囲に記載の発明の精神及び範囲に含まれることを認識するであろう。さらに、4つ以上の周方向アンダカットを有すること又はパイロットボスとカバーとの間の係合を高めるために配置された表面特徴、例えばねじ山付ボア、を有することは、請求の範囲に記載の発明の範囲に含まれる。
【0030】
図7は、パイロットボス142が取り外された本発明のトルクコンバータ前側カバー140のさらに別の実施形態の部分的な断面分解図である。この実施形態において、トルクコンバータ前側カバー140は、内面146と、外面148と、カバー144の第1の回転軸線に対して対称的に配置された第1の貫通孔150とを有している。トルクコンバータ前側カバー140はさらに、外壁154と、パイロットボス142の第2の回転軸線160に対して対称的に配置された第2の貫通孔158を有する末端部156と、第1の貫通孔150と第2の貫通孔158との内部に配置されかつパイロットボス142をカバー144に固定するために配置されたファスナ162とを有するパイロット142を含む。図7に示された実施形態は、パイロットボス142を概して円筒状として示しているが、当業者は、その他のパイロットボス形状、例えば円錐台又は放物面も可能であり、このような変更は、請求の範囲に記載の発明の精神及び範囲に含まれることを認識するであろう。さらに、パイロットボス142はリベット162を介してカバー144に固定されるものとして示されているが、その他の固定手段、例えばボルトも可能であり、このような変更は、請求の範囲に記載の発明の精神及び範囲に含まれる。
【0031】
当業者は、作動中、トルクコンバータが、加圧流体を封入し、したがって、このような流体がシールされたコンバータエンクロージャから逃げ出すことを阻止するためにシールされなければならないことを認める。したがって、図7に示された実施形態において、トルクコンバータ前側カバー140はさらに、第1の貫通孔150及び第2の貫通孔158を通って流体が逃げ出すのを防止するために配置された少なくとも1つのシール手段を有している。カバー144の内面146は第1の半径方向溝164を有しており、この半径方向溝に第1のOリング166が配置されている。同様に、カバー144の外面148は、第2のOリング170が配置される第2の半径方向溝168を有しているのに対し、パイロットボス142の内面172は、第3のOリング176が配置される第3の半径方向溝174を有している。したがって、リベット162を装着すると、リベット162のシール面178が第3のOリング176を圧縮し、末端部156の外面180が第2のOリング170を圧縮し、リベット162の末端部182がリベットヘッド(図示せず)に形成されこれによりシールワッシャ186の内面184を第1のOリング166に対して圧縮するので、トルクコンバータ前側カバー140はシールされる。すなわち、トルクコンバータ前側カバー140が前記配列にしたがって組み立てられると、シールされたトルクコンバータにおける加圧流体が、第1の貫通孔150及び第2の貫通孔158を通って逃げ出すことが阻止される。図7に示された実施形態は、3つのOリング、すなわちOリング166,170及び176の組合せを示しているが、当業者は、その他の構成、例えばRTVシーラントの使用又はパイロットをカバーにろう付けすることも可能であり、このような構成は、請求の範囲に記載の発明の精神及び範囲に含まれることを認めるであろう。
【0032】
図面及び上の説明を考慮すると、当業者は、本発明が広くは、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する方法であって、トルクコンバータカバーが、カバーの回転軸線に対して対称的な、カバーの外面からの突出部と、凹部を有するボディを有するパイロットボスとを有しており、前記方法が、a)凹部を突出部と整合させるステップと、b)パイロットボスに圧縮力を加えるステップと、c)パイロットボスの凹部内で突出部を変形させるステップとを有する方法をも含むことを認めるであろう。上述の実施形態と同様に、凹部はさらに少なくとも1つの周方向アンダカットを有している。
【0033】
さらに別の実施形態において、本発明は広くは、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する方法であって、トルクコンバータカバーが、カバーのための回転軸線に対して対称的な、カバーの外面からの突出部と、凹部を有するボディを有するパイロットボスとを有しており、前記方法が、凹部を突出部と係合させるステップを有する方法を含む。
【0034】
したがって、本発明の目的は効率的に達成されるが、発明に対する修正及び変更が当業者に容易に明らかであるべきであり、これらの修正は、請求項に記載された発明の精神及び範囲に含まれるものである。前記説明は、本発明の例を示しており、限定するものと考えられるべきでないことも理解される。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明のその他の実施形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】自動車のエンジンに固定されて示されている、従来のトルクコンバータの断面図である。
【図2A】本願において用いられた空間的な用語を示している、円筒座標系の斜視図である。
【図2B】本願において用いられた空間的な用語を示している、図2Aの円筒座標系における物体の斜視図である。
【図3】パイロットボスが取り外された本発明のトルクコンバータ前側カバーの部分的な断面図である。
【図4】パイロットボスがカバーと係合させられている本発明のトルクコンバータ前側カバーの部分的な断面図である。
【図5】パイロットボスが取り外された本発明のトルクコンバータ前側カバーの別の実施形態の部分的な断面図である。
【図6】複数の周方向のアンダカットを有する凹部を有する本発明のトルクコンバータパイロットボスの実施形態の断面図である。
【図7】パイロットボスが取り外された本発明のトルクコンバータ前側カバーのさらに別の実施形態の部分的な断面分解図である。
【符号の説明】
【0036】
60 前側カバー、 62 パイロット、 64 前側カバー、 66 突出部、 68 外面、 70 回転軸線、 72 ボディ部分、 74 凹部、 76,78 端部、 80 底壁、 82 側壁、 84 深さ、 86 直径、 88 上面、 90 側壁、 92 高さ、 94 直径、 98 前側カバー、 100 パイロットボス、 102 末端部、 108 凹部、 110 底壁、 112 側壁、 114 深さ、 116 直径、 118 アンダカット、 122 パイロットボス、 124 凹部、 126 開放端部、 128 末端部、 130 第1のアンダカット、 132 第2のアンダカット、 134 第3のアンダカット、 140 前側カバー、 142 パイロットボス、 146 内面、 148 外面、 150 第1の貫通孔、 154 外壁、 158 第2の貫通孔、 160 回転軸線、 162 ファスナ、 164 第1の半径方向溝、 166 第1のOリング、 168 第2の半径方向溝、 170 第2ノーリング、 172 内面、 174 第3の半径方向溝、 176 第3のOリング、 178 シール面、 180 外面、 182 末端部、 184 内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータカバーにおいて、
該トルクコンバータカバーの外面から延びておりかつ前記カバーの回転軸線に対して対称的な概して円筒状の突出部が設けられており、
該突出部と係合させられる概して円筒状の凹部を有する概して円筒状のボディを含むパイロットボスが設けられていることを特徴とする、トルクコンバータカバー。
【請求項2】
前記パイロットボスが圧縮力によって前記突出部と係合させられる、請求項1記載のトルクコンバータカバー。
【請求項3】
前記凹部がさらに少なくとも1つの周方向アンダカットを有する、請求項1記載のトルクコンバータカバー。
【請求項4】
前記凹部が開口を有しており、前記少なくとも1つの周方向アンダカットが前記開口と連続している、請求項3記載のトルクコンバータカバー。
【請求項5】
前記凹部が末端部を有しており、前記少なくとも1つの周方向アンダカットが前記末端部と連続している、請求項3記載のトルクコンバータカバー。
【請求項6】
前記凹部が開口と末端部とを有しており、前記少なくとも1つの周方向アンダカットが前記開口と前記末端部との間に配置されている、請求項3記載のトルクコンバータカバー。
【請求項7】
前記突出部が第1の直径を有しており、前記凹部が第2の直径を有しており、前記第1の直径が前記第2の直径よりも大きい、請求項1記載のトルクコンバータカバー。
【請求項8】
前記突出部が第1の直径を有しており、前記凹部が第2の直径を有しており、前記第1の直径が前記第2の直径よりも小さい、請求項1記載のトルクコンバータカバー。
【請求項9】
前記突出部が高さを有しており、前記凹部が深さを有しており、前記高さが前記深さよりも大きい、請求項1記載のトルクコンバータカバー。
【請求項10】
前記突出部が高さを有しており、前記凹部が深さを有しており、前記高さが前記深さよりも小さい、請求項1記載のトルクコンバータカバー。
【請求項11】
トルクコンバータカバーにおいて、
該トルクコンバータカバーの外面から延びておりかつ前記カバーの回転軸線に対して対称的な概して円筒状の突出部が設けられており、
少なくとも1つの周方向アンダカットを有する概して円筒状の凹部を有する概して円筒状のボディを有するパイロットボスが設けられており、該パイロットボスが前記突出部と係合させられることを特徴とする、トルクコンバータカバー。
【請求項12】
トルクコンバータカバーにおいて、
該トルクコンバータカバーの外面から延びておりかつ前記カバーの回転軸線に対して対称的な突出部が設けられており、
前記突出部と係合させられる凹部を有するボディを有するパイロットボスが設けられていることを特徴とする、トルクコンバータカバー。
【請求項13】
前記突出部が円筒状である、請求項12記載のトルクコンバータカバー。
【請求項14】
前記突出部が正方形平行六面体である、請求項12記載のトルクコンバータカバー。
【請求項15】
前記突出部が切頭体である、請求項12記載のトルクコンバータカバー。
【請求項16】
前記突出部が円錐状である、請求項12記載のトルクコンバータカバー。
【請求項17】
前記突出部が放物面である、請求項12記載のトルクコンバータカバー。
【請求項18】
流体を含むトルクコンバータのためのトルクコンバータカバーにおいて、
前記カバーの第1の回転軸線に対して対称的に配置された第1の貫通孔が設けられており、
外壁と末端部とを含むパイロットが設けられており、前記末端部が、前記パイロットの第2の回転軸線に対して対称的に配置された第2の貫通孔を有しており、
前記パイロットを前記カバーに固定するために配置された前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔内に配置されたファスナが設けられていることを特徴とする、トルクコンバータカバー。
【請求項19】
前記パイロットが概して円筒状又は概して円錐台形である、請求項18記載のトルクコンバータカバー。
【請求項20】
前記ファスナがリベットである、請求項18記載のトルクコンバータカバー。
【請求項21】
前記ファスナがボルトである、請求項18記載のトルクコンバータカバー。
【請求項22】
前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を通って前記流体が逃げ出すのを阻止するために配置された少なくとも1つのシール手段が設けられている、請求項18記載のトルクコンバータカバー。
【請求項23】
パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する方法において、前記トルクコンバータカバーが、該カバーのための回転軸線に対して対称的な、前記カバーの外面からの突出部と、凹部を有するボディを有するパイロットボスとを有しており、前記方法が:
a)前記凹部を前記突出部と係合させる
ステップを含むことを特徴とする、パイロットボスをトルクコンバータカバーに固定する方法。
【請求項24】
前記凹部を前記突出部と係合させる前記ステップがさらに:
a)前記凹部を前記突出部と整合させるステップと;
b)前記パイロットボスに圧縮力を加えるステップと;
c)前記パイロットボスの前記凹部内で前記突出部を変形させるステップと;
を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記凹部がさらに少なくとも1つの周方向アンダカットを有する、請求項23記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−157452(P2008−157452A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326769(P2007−326769)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany