説明

トルクセンサ

【課題】感度及び計測精度を向上させつつも、できる限り短い構造のトルクセンサを提供すること。
【解決手段】第1及び第2の固定フランジ1,2で構成され、これら第1及び第2の固定フランジ1,2が、径方向内側に位置するトルク伝達部材3に固設され、固定フランジのうち1つが測定用フランジ2として形成されているとともに、該測定用フランジ2が、その径方向外方に形成された外側リング10と径方向内方に位置するトルク伝達部材3との間の領域に複数の凹部5,5’を備え、該凹部5,5’の基面15又は外面19にせん断力センサ20が貼着されている、トルクセンサにおいて、凹部5,5’を、径方向に延在する少なくとも3つの補強ウェブ6によって分離された測定用ポケット部で形成し、測定用フランジ2に、径方向外方の外側リング10へ向いたその径方向内側の領域において、同軸に延在する閉じた平面部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載したトルクセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機械においては、その動作中にトルクを検出する必要が頻繁にある。そのため、回転するシャフトによってトルクが計測され、このとき、トルクセンサがシャフトと同期して回転し、このトルクセンサによって、シャフトにより伝達されるトルクが継続的に検出されるようになっている。このとき、トルク計測ゲージを備え、かつ、回転するシャフト間に固定配置されたトルクセンサがよく用いられている。
【0003】
また、このトルクセンサは、多くの場合、シャフトにおける互いに対向するフランジに締結されたリング状の固定フランジを備えている。そして、トルクセンサは、比較的短いシャフト部分に固定されるか、又はフランジ間に固定され、軸方向にはわずかな空間しか有していない。このような固定形態においては、高い計測精度を保障するために、不都合な応力あるいは不都合な力をできる限りひずみ計測体あるいは変形体に伝達しないようにする必要がある。
【0004】
非常に短いディスク状の構造のトルクセンサが特許文献1に開示されており、この一体形成されたトルクセンサは、外側リングと、該外側リングについて同心状に配置されつつ半径方向に延在する4つの計測用ウェブで互いに結合された内側ハブとで構成されている。ここで、計測用ウェブは軸方向に対向するポケット状の凹部を備えており、この凹部により薄肉の端面がポケットの基面に形成される。そして、この基面には、フォイル状のひずみゲージの形態で複数のせん断力センサが貼着されている。これらせん断力センサは、ポケットの基面におけるひずみ計測体上で、伝達されるトルクを検出するものとなっている。伝達されるトルクの入力及び出力のために、内側ハブ及び外側リングには特に8つの孔が形成されており、この孔にはシャフト端部が螺着されるようになっている。また、内側ハブにおける固定孔が比較的密に計測用ウェブに配置されているため、締結状態のバラツキや加工誤差により不都合な応力や他の余計な力が計測用ウェブに作用する可能性があり、これにより計測結果に誤差が生じる場合がある。
【0005】
締結領域をひずみ計測体から比較的離して配置する構造のトルクセンサが特許文献2に開示されている。このトルクセンサは、一体に形成されているとともに、軸方向に対向配置された2つの固定フランジを備えている。ここで、これら固定フランジは、その径方向内側の領域において、短い軸方向のトルク伝達部材によって互いに結合されている。このトルク伝達部材は内側で閉鎖された円筒状の外面部と径方向外方に延在する軸方向の複数のウェブとで構成されており、これらウェブ間には、回転軸と同軸に計測用ポケット部が形成されている。そして、この計測用ポケット部により薄いダイヤフラム状のひずみ領域が変形体として形成され、この変形体上には、伝達トルクに比例した正確な計測信号を発出するひずみゲージが貼着されている。両固定フランジが同一の径を有しているとともに固定孔が外側リング面に形成されているため、不都合な曲げ応力や他の余計な力が、ひずみゲージを備えつつ対称に形成されたひずみ計測体にほとんど作用しないようになっている。しかしながら、パイプ状の計測体が両固定フランジ間において長手方向に配置されているため、多くの適用に対応するために長い構造となってしまうとともに、短いシャフト部分を交換できないものとなっている。
【0006】
特許文献3には長手方向に非常に短いトルクセンサが開示されており、このトルクセンサも、同一の径を有する回転対称な2つの固定フランジを備えている。これら固定フランジは、平行かつ軸方向に対向配置されているとともに、ディスク状に形成されている。また、これら固定フランジは、径方向内側において、リング状の力伝達部材を介して互いに溶接されている。そのため、両固定フランジは、わずかな間隙を空けて軸方向に互いに離間している。ここで、両固定フランジのうち1つが回転軸と同軸に延在するひずみ計測体を備えており、このひずみ計測体におけるリング状の外面には、せん断力センサとしての複数のひずみゲージが貼着されている。このひずみ計測体は軸方向に対向しつつ同軸に延在する2つのリング状溝で形成されており、これらリング状溝は、計測用フランジとして形成された固定フランジにより形成されている。また、これら2つのリング状溝の間に配置されたひずみ計測体は、径方向において、リング状の外側固定部と内側の力伝達部材の間に配置されている。また、径方向に減少する接線方向の力に応じて、リング状のひずみ計測体は、径方向内側から外側へその厚さを均等に減少させて形成されている。総トルクがリング状の計測体を介して伝達される必要があるため、この計測体の軸方向厚さは比較的大きく設定される。これにより、計測感度が低下することになる。また、同時に、均等なリング状の計測体により不都合な曲げ応力や他の余計な力が伝達され、計測精度も損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第4208522号明細書
【特許文献2】欧州特許第1074826号明細書
【特許文献3】独国特許第4430503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、感度及び計測精度を向上させつつも、できる限り短い構造のトルクセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、請求項1記載の発明により達成される。なお、他の好ましい実施形態については、各従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明によれば、同軸かつ閉じるように円周状に形成された計測用ポケット部と補強ウェブによって、ひずみ計測センサの高いねじり剛性を達成することができる。また、ポケット部の基面の壁面厚さがひずみ計測体又は変形体としてダイヤフラム状に形成されているため、高い感度が保障された、比較的薄肉の弾性ひずみ領域を得ることが可能である。さらに、複数の計測用ポケット部間に配置された補強ウェブにより、大きな曲げ剛性及び軸方向の剛性を得ることが可能である。そのため、変形領域からポケット部の基面への不都合な力や他の余計な力の伝達を防ぐことができ、高い計測精度を達成することも可能である。
【0011】
さらに、本発明によれば、全面が閉じ、かつ、補強ウェブを備えた固定フランジにより、薄いディスク状の形状であっても、大きなねじり剛性をもって大きなトルクを伝達することが可能である。また、ディスク状の本体部を構成する材料を削減することで、より小さな質量慣性モーメントを有し、かつ、高い計測回転数を達成可能なトルクセンサを得ることができる。
【0012】
本発明の一実施形態においては、固定フランジ、トルク伝達部材及び補強ウェブを備えたトルクセンサ並びに計測用ポケット部を、従来のフライス加工によって一体形成された本体部として形成している。そのため、締結又は溶接された部材に対するトルクセンサのヒステリシス性を向上させることが可能である。これにより、摩擦特性あるいは着座特性が生じないため、高い計測精度の継続が保証されることになる。
【0013】
また、本発明の他の実施形態においては、計測用ポケット部が軸方向に対向配置されている。これによれば、このように対称な配置によって計測用ポケット部の基面における不都合な曲げ応力や余計な力が低減されるため、計測精度の向上が図られることになる。特に、対向配置された計測用ポケット部にせん断力センサが貼着されていれば、これにより軸方向の曲げ応力を相殺させることが可能である。
【0014】
また、本発明の一実施形態においては、計測用ポケット部を対向配置させつつこれらを互いに接線方向にずらして配置している。これにより、不都合な曲げ応力や余計な力を生じさせることなく十分対称なひずみ変化が得られる。そして、せん断力センサの貼着面は、ポケット部外面としての基面の背面側に位置している。これにより、特に外方へ向いた片面のポケット部外面において、貼着面が凹部内に位置しないという利点が得られる。そのため、手によるひずみゲージの貼着の正確性を向上させることが可能である。
【0015】
また、本発明の他の実施形態においては、補強ウェブが回転軸に対して径方向に広がっており、計測用ポケット部もこれに合わせて軸方向へ向けて狭まるよう形成されている。これにより、トルクを生じさせる接線力が回転軸に対する間隔に合わせて均一化されるため、一定のトルクが発生している状態で、計測体全面において一定のせん断ひずみが生じている。せん断力センサの径方向の配置により、薄肉の感度の高いひずみ計測体においても高い計測精度を得ることが可能である。
【0016】
また、計測値に誤差を生じさせる、不都合で余計な力を避けるために、本発明の他の実施形態においては、計測用フランジにおける外方に位置する端面における、この計測用フランジの外側リングと円状に同軸配置された計測用ポケット部との間に軸方向のリング状溝が形成されている。締結ボルトにおける異なる締付トルクや、場合によっては更に固定孔の囲う誤差により不都合な曲げ応力や余計な力が生じることがあるが、これらの不都合な曲げ応力や余計な力の計測体の面への作用がリング状溝によって妨げられるため、高い計測精度を達成することが可能である。
【0017】
また、径方向において外側リングと回転軸の間に、計測用フランジの径方向内部空間に位置する軸方向凹部を備えた本発明の他の実施形態によれば、上記内部空間の片面に配置されたひずみゲージとそのワイヤを含むすべてのセンサ電子部品を、密に締結又は溶接されたカバー内に収容することが可能であるという利点が得られる。
【0018】
さらに、本発明の他の実施形態においては、計測用フランジの外周部における燕尾状溝に埋設されたアンテナ部が設けられており、その接続ケーブルは、外側リングからシールされた前記内部空間へ案内されている。これにより、燕尾状溝により50000rpmまでの計測回転数に適するとともに、密閉されたトルクセンサを得ることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、感度及び計測精度を向上させつつも、できる限り短い構造のトルクセンサを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】軸方向片面に計測用ポケット部を備えたトルクセンサの断面図である。
【図2】軸方向両面に計測用ポケット部を備えたトルクセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1には一体型のトルクセンサが断面で示されており、このトルクセンサは、軸方向に互いに回転対称かつ対向して配置された2つの固定フランジ1,2で構成されている。これら固定フランジ1,2は、リング状のトルク伝達部材3により互いに固結されており、計測用フランジとして形成された固定フランジ2における径方向外側へ向いたディスク面上には、回転軸4に対して均等な間隔だけ隔てて、特に8つの計測用ポケット部5が設けられている。この計測用ポケット部5の基面15(底面)上にはせん断力センサとしてのひずみゲージ20が貼着されており、計測用ポケット部5は、径方向へ延在する8つの補強ウェブ6によって互いに分離されている。
【0023】
図示のトルクセンサは、定格回転数である約25000rpmまでの回転数を有する2つのシャフト部材又は機械構成部材の間で、トルクを1kNmの定格トルクまで計測するよう設定されている。なお、このようなトルクセンサは、100Nmから10kNmまでの定格トルクに対して適用することが可能である。また、トルク入力及びトルク出力のためのシャフト部材又は機械構成部材は、これに配置された固定孔8,9を介して両固定フランジ1,2に螺着されている。これら固定孔8,9は、第1固定フランジ1には固定孔9、第2固定フランジ2には固定孔8として形成されているため、軸方向における一方側から締結を行うことが可能である。
【0024】
また、両固定フランジ1,2はその径方向外方の範囲において軸方向厚さが厚く形成されているため、外側リング10が形成されているとともに、ここに固定孔8,9が形成されている。なお、この外側リング10の外径は約130〜150mmであり、固定孔8,9は、回転軸4に対して対称に分配配置されている。
【0025】
しかして、両固定フランジ1,2の間において、トルク伝達部材3まで延在しつつ径方向外方へ開口し、約2〜10mmの幅を有する溝13が本体部2に形成(フライス加工)されている。したがって、これら固定フランジ1,2は、平行に離間しつつ軸方向に対向しており、溝13内における溝側面部14を形成している。
【0026】
また、計測用フランジである第2固定フランジ2はその軸方向外側において段状の構造を有しており、この段状の構造により、凹部11が形成されている。固定フランジ2は、外側リング10に対する径方向内方において、外側リング10に比して厚さの小さなディスク状部材17を備えており、このディスク状部材17によって、トルクが外側リング10から径方向内方に位置するトルク伝達部材3へ伝達されることになる。なお、このディスク状部材17の厚さは5〜10mmで十分であり、このことは、両固定フランジ1,2においても同様である。
【0027】
また、第1固定フランジ1の中心部には軸方向に延在するめくら穴12が回転軸4に対して対称に第2固定フランジ2内まで到達するよう形成されており、このめくら穴12を形成することによって、本体部22の慣性質量が低減される。計測用フランジである第2固定フランジ2においては、軸方向に延在する円筒状の凹部11が外側リング10の径方向内側において回転軸に対して対称に形成されており、この凹部11は、90〜110mmの直径及び5〜15mmの深さを有している。この凹部11内には回転軸4に対して対称であり、かつ、5〜15mmの深さを有する複数の計測用ポケット部5が形成(フライス加工)されており、この計測用ポケット部5は、溝側面部14に対して0.2〜1mmの均等な厚さを有するとともに、軸方向外方において基面15を形成している。
【0028】
基面15上にはせん断力センサとしての複数のひずみゲージ20が貼着されており、少なくとも4つ又は8つのひずみゲージ20が回転軸4に対して対称に分配配置されている。また、計測用ポケット部5は、その径方向内側壁面部24に約35mmの径の湾曲部を備えているとともに、その径方向外側壁面部25には回転軸4に対して約45mmの径の湾曲部を備えている。ここで、この計測用ポケット部5は、その全長において約40°の角度で延在しており、回転軸4回りにリング状溝部26を形成している。
【0029】
また、各計測用ポケット部5の間には補強ウェブ6が形成されており、この補強ウェブ6は、その径方向内側に位置する端部において特に約5mmの高さ及び約5mmの幅を有しているとともに、外側リング10へ向けて径方向に約3mmまで徐々に狭まるよう形成されている。計測用ポケット部のこのような形状により、トルクセンサにトルクが負荷されるときに、基面15上において回転軸4に対する間隔に依存しない均等なひずみ領域が生じることになる。このとき、補強ウェブ6によって回転方向及び軸方向の補強がなされるため、計測用ポケット部5内の比較的小さなひずみ領域においても高い感度を達成することが可能である。
【0030】
ところで、トルクセンサの他の実施形態においては、このトルクセンサは、少なくとも3個、4個、8個、16個又は32個までの計測用ポケット部5を備えている。そして、この計測用ポケット部5における基面15には、少なくとも4つのせん断力センサが90°又は45°の角度で回転軸4に対して対称に貼着されている。このとき、特に補強ウェブ5の寸法及びひずみ計測本体部又は変形本体部としての基面15の厚さは、伝達すべき定格トルクに依存したものとなっている。また、固定フランジ1,2の直径及び厚さは、所定の定格トルクに応じて設定され、例えば100Nmの定格トルクにあっては約120mmの直径となり、例えば10kNmの定格トルクにあっては直径が約260mmで外側リング10の厚さが約15〜30mmとなる。したがって、定格トルクが100Nm〜10kNmにおいてはトルクセンサの軸方向長さが約35〜65mmとなり、トルクセンサが非常にコンパクトであるため、これをほぼすべての用途に対して応用することが可能である。
【0031】
また、不図示の実施形態において、複数の計測用ポケット部5を軸方向に互いに対向するように配置することも可能であり、これら計測用ポケット部5は、それぞれその基面15によって分離されている。これにより、計測用ポケット部5の開口部が一方では溝側面部14へ向き、他方では凹部11へ向くことになる。このとき、凹部11へ向いた基面15上にひずみゲージ20を貼着するのが好ましく、こうすることで、密なシールを達成することができる。なお、溝側面部14へ向いた基面上にひずみゲージ20を貼着してもよく、こうすることで、不都合な曲げ応力を相殺することが可能である。
【0032】
ところで、ひずみゲージ20の評価及び給電のために凹部11には不図示の計測用電子部品が更に設けられており、この計測用電子部品によりひずみゲージ(せん断力センサ)20が特にホイートストンブリッジ回路に接続されるようになっている。そして、計測信号は、増幅され、伝達のためにデジタル変換される。さらに、凹部11に配置された計測用電子回路を、力の分岐のない(Kraftnebenschlussfrei)不図示のカバーで密に締結又は溶接することで、該カバーで密閉するのが好ましい。こうすることで、高感度の計測要素を湿気やほこりから保護して収容することができる。
【0033】
しかして、計測信号を伝達するために、固定フランジ2の外側リング10にはアンテナ16が埋設されている。ここで、遠心力による脱落を防止するために、遠隔計測システムのアンテナコイルが、外方へ向かって狭まる形状の燕尾状溝7内に埋設されている。これにより、遠隔計測システムのアンテナコイルが遠心力によって脱落することなく、少なくとも25000〜50000rpmの定格回転数においても上記トルクセンサを使用することが可能である。
【0034】
固定フランジ1を介したトルクの入力時には、このトルクは、外側リング10及び径方向内側のディスク状部材17を介して、トルク伝達部材3へ伝達され、更にこのトルク伝達部材3から固定フランジ2へ入力される。そして、トルクは、補強ウェブ6及びひずみ計測本体部である基面15を介して、ディスク状部材17の内方に位置する入力領域から固定フランジ2における外側リング10へ伝達される。このとき、計測用ポケット部5におけるタイヤフラム状の基面15への接線方向の伝達力により、接線方向のひずみが生じる。このひずみは、伝達されるトルクに比例するものであり、ひずみゲージ20によって検出される。
【0035】
また、ホイートストンブリッジ回路により、検出された計測信号に基づき、伝達されるトルクが形成される。そして、これに基づき、計測用電子部品により変換された計測信号が生成され、この計測信号は、外側リング10内に存在するアンテナ(コイル)16を介して無線で解析装置に伝達される。なお、この解析装置においては、計測値を表示したり、例えば他の制御工程に用いるために更に処理をしたりすることができるようになっている。
【0036】
図2にはトルクセンサの好ましい実施形態が示されており、この実施形態は、計測用ポケット部5を互いに軸方向及び接線方向にずらして配置した点で図1に示す実施形態と相違している。トルクセンサは、ここでも、互いに対向して設けられつつリング状のトルク伝達部材3によって軸方向に互いに結合された2つの固定フランジ1,2を有する本体部22で構成されている。また、シャフトエッジを有する固定フランジ1,2の不均等な締結や他の軸方向に作用する曲げ応力が生じる場合に、これらの不都合な事態がプレッシャリリーフ溝18によって計測用ポケット部5における基面上の弾性変形体から除去されるため、計測用フランジとしての固定フランジ2はここでも軸方向外方から軸方向内方へ向いた円筒状の凹部11を備えており、この凹部11は、軸方向に形成されたプレッシャリリーフ溝18によって外側リング10との接続が絶たれている。
【0037】
また、回転軸4と同軸に延在する計測用ポケット部5あるいはその一部がプレッシャリリーフ溝18の径方向内側に配置されており、この計測用ポケット部5は、ここでも、補強ウェブ6によって互いに分離されている。ただし、図2に示す実施形態においては、計測用ポケット部5が軸方向及び接線方向に互いに交互にずらされている。ここでは、8つの計測用ポケット部5が軸方向外方へ配向されているとともに、8つの計測用ポケット部5’が溝13方向へ開口するように軸方向へ配置されている。また、計測用ポケット部5,5’は、回転軸4に対して約18°〜20°の所定の間隔をもった、リング状溝部26としての溝状の円形部を含んで構成されている。さらに、各補強ウェブ6は、これらの間に約2°〜5°のリング状の円形部を含んで構成されている。ただし、各補強ウェブ5の円形部は、計測用ポケット部5,5’とは逆になっており、径方向内側が径方向外側よりも幅広に形成されている。
【0038】
互いに軸方向にずらして配置された計測用ポケット部5,5’によれば、これら計測用ポケット部5,5’間で、接線方向において比較的幅広の面部が形成される。この面部は、基本的に基面15と軸方向に対向する計測用ポケット部の外面19であり、この外面19は、その両側でダイヤフラム状の弾性変形体に作用するものとなっている。したがって、せん断力センサとして形成されたひずみゲージ20は、少なくとも前記外面19上の凹部11内に貼着されることになる。これにより、ひずみゲージ20の手での貼着が容易かつ正確になされるという利点が得られる。
【0039】
また、ひずみゲージ20を前記外面19上において溝13へ向けて互いに軸方向に対向させて設けることも考えられるが、この場合、ひずみゲージ20を、外部の影響に対して密閉することができない可能性がある。また、溝13の方向へ向いた計測用ポケット部5,5’のフライス加工は、第1固定フランジ1に更に設けられた貫通孔21を通して行われる。ここで、この貫通孔21は回転軸4に対して所定の径方向間隔をもちつつ対称に配置されており、この貫通孔21の直径は、少なくとも計測用ポケット部5’の接線方向延長部に対応するものとなっている。
【0040】
接線方向及び軸方向に互いにずらして配置された計測用ポケット部5,5’は計測本体部における面から離間しているため、このような計測用ポケット部5,5’により、ひずみゲージ20の取付が容易になるだけにとどまらず、不都合な締付力や曲げ応力をより良好に回避することが可能である。なお、その他の点については、図1に示す実施形態と同様に形成されている。また、両本体部22は短い円形の金属棒状部材で形成されており、この金属棒状部材は、好ましくはステンレス鋼合金で構成されている。また、このステンレス鋼合金は、特に弾性変形性を有する一方、わずかなヒステリシス性を有している。なお、本体部22をアルミニウム、チタンなどの他の金属で構成してもよい。また、せん断力センサを、表面波長共振器、磁気抵抗式センサ、磁気弾性式センサなどの弾性変形体におけるひずみを検出する適当なセンサとすることも考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1,2 固定フランジ
3 トルク伝達部材
4 回転軸
5,5’ 計測用ポケット部
6 補強ウェブ
7 燕尾状溝
8,9 固定孔(貫通孔、ネジ孔)
10 外側リング
11 凹部
12 めくら穴
13 溝
14 溝側面部
15 基面
16 アンテナ(コイル)
17 ディスク状部材
18 プレッシャリリーフ溝
19 計測用ポケット部の外面
20 ひずみゲージ
21 貫通穴
22 本体部
24 径方向内側壁面部
25 径方向外側壁面部
26 リング状溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に互いに平行に配置されたディスク状の第1及び第2の固定フランジ(1,2)で構成され、これら第1及び第2の固定フランジ(1,2)が、径方向内側に位置するトルク伝達部材(3)に固設され、前記固定フランジのうち1つ(2)が測定用フランジとして形成されているとともに、該測定用フランジ(2)が、その径方向外方に形成された外側リング(10)と径方向内方に位置する前記トルク伝達部材(3)との間の同軸に延在する領域に複数の凹部(5,5’)を備え、該凹部(5,5’)の基面(15)又は外面(19)にせん断力センサ(20)が貼着されている、トルクセンサにおいて、
前記凹部を、径方向に延在する少なくとも3つの補強ウェブ(6)によって分離された少なくとも3つの測定用ポケット部(5,5’)で形成し、前記測定用フランジ(2)に、径方向外方の外側リング(10)へ向いたその径方向内側の領域において、同軸に延在する閉じた平面部を設けたことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
金属製で一体形成された円状の本体部(22)で構成し、該本体部(22)の軸方向長さのほぼ中央部において、外方へ開口するよう周設された溝(13)を該本体部(22)に設け、該溝(13)における1つの軸方向側に前記第1の固定フランジ(1)を形成するとともに、前記溝(13)における他の軸方向側に前記測定用フランジ(2)を形成し、前記本体部(22)を鋼合金、アルミニウム又はチタンで構成したことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記第1及び第2の固定フランジ(1,2)を回転軸(4)に対して回転対称に形成するとともに、これら第1及び第2の固定フランジ(1,2)の径方向外方の領域(固定面)にそれぞれ前記外側リング(10)を設け、該外側リング(10)に少なくとも3つの軸方向に対象に分配配置された固定孔(8,9)を設け、該固定孔(8,9)の前記回転軸(4)に対する径方向の間隔を同一に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記溝(13)を前記回転軸(4)に対して径方向に対称に延在する溝として形成し、該溝の深さが、少なくとも前記外側リング(10)並びに前記測定用ポケット部(5,5’)及び前記補強ウェブ(6)の径方向領域を含むとともに、少なくともリング状あるいはディスク状の前記トルク伝達部材(3)まで到達するよう構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記計測用フランジ(2)を平坦なディスクとして形成するとともに、該ディスクに、前記外側リング(10)に対して内側に位置しつつ径方向内側に位置するディスク状部材(17)と、前記回転軸(4)に対して同一の間隔をもって配置された少なくとも3個、4個、8個、16個又は32個の軸方向の前記計測用ポケット部(5,5’)を設け、該計測用ポケット部(5,5’)を径方向に延在する前記補強ウェブ(6)によって分離したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記計測用ポケット部(5,5’)を、リング状溝部(26)として前記補強ウェブ(6)間に少なくとも18°〜110°を占めるよう形成し、前記補強ウェブ(6)における角度に応じたリング状面領域の厚さを少なくとも1.25°〜15°としたことを特徴とする請求項5記載のトルクセンサ。
【請求項7】
前記計測用ポケット部(5,5’)における径方向壁面部(23)を、前記回転軸(4)に対して、鋭角をなして先細となるよう形成したことを特徴とする請求項6記載のトルクセンサ。
【請求項8】
前記補強ウェブ(6)を、前記計測用ポケット部(5,5’)の前記径方向壁面部(23)の形状変化により径方向外方へ先細となるよう形成するとともに、鋭角状に延在させ、台形状の表面を有するよう構成したことを特徴とする請求項7記載のトルクセンサ。
【請求項9】
前記計測用ポケット部(5,5’)における前記基面(15)を、一定の厚さを有する弾性変形体である閉じた平面として形成し、前記基面(15)又はこれに対して軸方向に対向する前記外面(19)にひずみゲージとして形成された前記せん断力センサ(20)を貼着したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項10】
前記計測用ポケット部(5)をその一側面において軸方向外方へ開口させ、前記外面(19)を前記溝(13)の方向へ配向させるとともに、前記溝(13)の側面部(14)によて平面を形成し、前記せん断力センサ(20)を前記計測用ポケット部(5)における前記基面(15)上に貼着したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項11】
前記計測用ポケット部(5,5’)を前記計測用フランジ(2)において軸方向に互いに対向するよう設け、該計測用ポケット部(5,5’)を、凹部(11)へ向けて軸方向外方へ、又は前記溝(13)の側面部(14)へ向けて軸方向内方へ、接線方向に交互に開口させ、前記せん断力センサ(20)を前記基面(15)又は前記外面(19)に貼着したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項12】
前記計測用ポケット部(5,5’)を、軸方向に対向するよう配置するとともに、前記計測用フランジ(2)の接線方向の外周部に配置し、該計測用ポケット部(5,5’)の基面(15)が互いに平行となるよう設定し、前記せん断力センサ(20)を、少なくとも、凹部(11)へ向けて軸方向外方へ向いた前記基面(15)上に配置したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項13】
少なくとも、前記測定用フランジ(2)に、前記外側リング(10)に対して軸方向に延在する円筒状の凹部(1)を設け、該凹部(11)の内部空間に計測用電子部品を固設し、該内部空間を力の分岐のないカバーによって密閉したことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項14】
径方向における前記外側リング(10)と前記計測用ポケット部(5,5’)の間に、前記回転軸(4)に対して同軸であり、かつ、不都合な力または不都合なトルクの影響を防止するための少なくとも1つのプレッシャリリーフ溝(18)を設けたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項15】
前記計測用フランジ(2)における外側フランジ(10)の外面部に燕尾状溝(7)を周設し、供給電力及び計測信号を伝達するための遠隔計測システムのアンテナコイル(16)を前記燕尾状溝(7)内に埋設したことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のトルクセンサ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521547(P2012−521547A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501186(P2012−501186)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001861
【国際公開番号】WO2010/108674
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(301051264)ホッティンゲル・バルドヴィン・メステクニーク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (7)