トルク伝達装置用トレランスリング
【課題】両軸部材の間に発生する偏心を防止することのできるトルク伝達装置用トレランスリングを提供する。
【解決手段】トルク伝達装置Tにおいて、二重軸状をなす両軸部材S1,S2の間にトレランスリング10が嵌合により配置される。トレランスリング10は、入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材S1,S2を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材S1,S2の間にスリップを発生することで両軸部材S1,S2の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能する。トレランスリング10は、周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体11に多数の凸部13が周方向に所定間隔を隔てて形成される。リング本体11の合口部寄りの一対の凸部13の剛性と、合口部12に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部13の剛性とが同等になるように構成する。
【解決手段】トルク伝達装置Tにおいて、二重軸状をなす両軸部材S1,S2の間にトレランスリング10が嵌合により配置される。トレランスリング10は、入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材S1,S2を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材S1,S2の間にスリップを発生することで両軸部材S1,S2の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能する。トレランスリング10は、周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体11に多数の凸部13が周方向に所定間隔を隔てて形成される。リング本体11の合口部寄りの一対の凸部13の剛性と、合口部12に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部13の剛性とが同等になるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク伝達装置用トレランスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例を説明する。図25はトルク伝達装置を示す断面図である。
図25に示すように、トルク伝達装置Tは、二重軸状をなす内軸部材S1及び外軸部材S2と、両軸部材S1,S2の間の環状空間に嵌合により配置されたトレランスリング10とを備えている。内軸部材S1は、所定の外径で形成された円筒状の外周面S1aを有している。また、外軸部材S2は、内軸部材S1の外周面S1aの外径よりも所定量大きい内径で形成された円筒状の内周面S2aを有している。また、トレランスリング10は、入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材S1,S2を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材S1,S2の間にスリップを発生することで両軸部材S1,S2の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能する。なお、トルクリミッタとして機能するトレランスリングは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
前記トルク伝達装置Tに用いられるトレランスリング10の一例について説明する。図26はトレランスリングを示す斜視図、図27は同じく軸方向の側面図、図28は同じく展開して示す平面図、図29は図28のXXIX−XXIX線矢視断面図、図30は図28のXXX−XXX線矢視断面図である。
図26及び図27に示すように、トレランスリング10は、周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体11に、径方向外方に突出する多数の凸部13が周方向に所定間隔を隔てて形成されている。多数の凸部13は、例えば、周方向に28個で、軸方向に2列で形成されている。なお、2列の多数の凸部13は、トレランスリング10の軸方向に線対称状に形成されているため、一方(図28において下側)の列について説明し、他方の列についての説明は省略する。また、トレランスリング10を板状に展開した形状のもの(いわゆる中間製品)を凸部付き板状物10A(図28〜図30参照)という。また、凸部付き板状物10Aを円筒状に曲げ成形することにより、トレランスリング10が形成されている。また、トレランスリング10は、例えば金属製であるが、樹脂製であってもよい。
【0004】
前記多数の凸部13は、同一形状で、周方向に規則的にかつ連続的に形成されている。また、凸部13は、断面山形状で、所定の軸方向の長さ13L(図28及び図30参照)、及び、所定の周方向の幅13W(図28及び図29参照)、径方向外方に突出する所定の高さ13H(図29及び図30参照)をもって、リング本体11になだらかに連続する寄棟屋根状(図26参照)に形成されている。また、凸部13は、長さ方向(図28において上下方向)及び幅方向(図28において左右方向)に関して線対称状に形成されている。また、前記リング本体11において、凸部13を除いた部分すなわち軸方向の中央部14及び両側縁部15並びに周方向の両端縁部16(図28参照)は、同一円筒面上に形成されている(図26参照)。なお、リング本体11の端縁部16は、合口部側の端縁部16(同一符号を付す)に相当する。また、対向する端縁部16の間が合口部12となっている(図26参照)。また、端縁部16において、合口部側の凸部13に隣接する周辺部を、端縁部分16aという。
【0005】
図25に示すように、前記トレランスリング10は、前記トルク伝達装置Tの両軸部材S1,S2の間に嵌合により配置される。この際、リング本体11は、内軸部材S1の外周面S1aに対して拡開変形を利用して密着される。このため、合口部12の開口幅は、自由状態(図27参照)における合口部12の開口幅に比べて所定量拡げられる。また、各凸部13の稜線部13aは、外軸部材S2の内周面S2aに対して弾性的に当接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−308119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記トレランスリング10において、リング本体11の合口部側の一対(図27において左右一対)の端縁部16の周辺部は片持ちばね状を呈する。したがって、合口部側の一対の凸部13に隣接する端縁部分16a(図26参照)の剛性が低く、変形しやすい。そのため、合口部寄りの一対の凸部(各端縁部16における1〜3個程度の凸部が相当する)13の剛性の低下を招くことになる。また、このようなトレランスリング10をトルク伝達装置T(図25参照)に用いた場合、合口部寄りの一対の凸部13が容易に潰れやすく、両軸部材S1,S2の間に偏心を来たすおそれがある。すなわち、図25において、内軸部材S1の軸心に対して外軸部材S2の軸心が相対的に下方へ偏心することによって、合口部12の付近(図25において上端部付近)では、両軸部材S1,S2の間の間隔が狭くなる一方、その合口部12に対して直径方向の反対側部分(図25において下端部付近)では、両軸部材S1,S2の間の間隔が拡がることになる。このように、両軸部材S1,S2の間に発生する偏心は、周方向のある部分ではスリップトルクの上昇を招き、他の部分ではスリップトルクの低下を招くことから、周方向における面圧が著しく不均一化したり、内軸部材S1及び/又は外軸部材S2の位置ずれを招いたりすることから好ましくない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、トルク伝達装置の両軸部材の間に発生する偏心を防止することのできるトルク伝達装置用トレランスリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とするトルク伝達装置用トレランスリングにより解決することができる。
すなわち、請求項1に記載されたトルク伝達装置用トレランスリングによると、二重軸状をなす内軸部材及び外軸部材の間に嵌合により配置されかつ入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材の間にスリップを発生することで両軸部材の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能するトルク伝達装置用トレランスリングであって、周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体に、径方向に突出する多数の凸部が周方向に所定間隔を隔てて形成され、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性と、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性とが同等になるように構成したことを特徴とする。このように構成すると、トレランスリングの合口部の直径方向に関する凸部の剛性のバランスがとれることにより、合口部寄りの一対の凸部の潰れを防止し、トルク伝達装置の両軸部材の間に発生する偏心を防止することができる。
【0010】
また、請求項2に記載されたトルク伝達装置用トレランスリングによると、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化したことを特徴とする。このように構成すると、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化することにより、その一対の凸部の剛性を向上することができる。なお、合口部寄りの一対の凸部の剛性は、それ自体の剛性の弱化及び/又は隣接する端縁部分の剛性の弱化によって向上することができる。
【0011】
また、請求項3に記載されたトルク伝達装置用トレランスリングによると、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を弱化したことを特徴とする。このように構成すると、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を、合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性の弱化によって相対的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図2】トレランスリングを示す斜視図である。
【図3】トレランスリングを展開して示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】実施の形態2にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図6】実施の形態3にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図7】実施の形態4にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図8】トレランスリングを展開して示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線矢視断面図である。
【図10】実施の形態5にかかるトレランスリングを展開して示す平面図である。
【図11】図10のXI−XI線矢視断面図である。
【図12】実施の形態6にかかるトレランスリングを展開して示す平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線矢視断面図である。
【図14】実施の形態7にかかるトレランスリングを展開して示す平面図である。
【図15】図14のXV−XV線矢視断面図である。
【図16】図14のXVI−XVI線矢視断面図である。
【図17】実施の形態8にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図18】トレランスリングの要部を示す側面図である。
【図19】実施の形態9にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図20】実施の形態10にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図21】実施の形態11にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図22】実施の形態12にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図23】実施の形態13にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図24】トレランスリングを示す下面図である。
【図25】従来例にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図26】トレランスリングを示す斜視図である。
【図27】トレランスリングを示す軸方向の側面図である。
【図28】トレランスリングを展開して示す平面図である。
【図29】図28のXXIX−XXIX線矢視断面図である。
【図30】図28のXXX−XXX線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。各実施の形態のトレランスリングは、前記従来例(図25〜図30参照)を基に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、説明の都合上、前記凸部13を基本形状とするため、その凸部13を「基本凸部13」という。
【0014】
[実施の形態1]
実施の形態1を説明する。図1はトルク伝達装置を示す断面図、図2はトレランスリングを示す斜視図、図3は同じくトレランスリングを展開して示す平面図、図4は図3のIV−IV線矢視断面図である。
図3及び図4に示すように、本実施の形態のトルク伝達装置用トレランスリング(単に、「トレランスリング」という)10は、リング本体11の合口部側寄りの一対(図1において左右一対)の端縁部16に、1個半の強化凸部131,132が合口部12を間に対称状に形成されている。1個分の強化凸部131は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)に比べて、狭い幅131W(図3及び図4参照)で形成されている。これにより、強化凸部131自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて強化されている。また、強化凸部131は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、強化凸部131は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)と同一の高さ13Hで形成されている。また、強化凸部131は、その凸部131に隣接する基本凸部13、及び、半個分の強化凸部132に対して連続的に形成されている(図3及び図4参照)。なお、半個分の強化凸部132は、端縁部分16aの剛性を強化するものであるから、端縁部分強化部132という。
【0015】
前記端縁部強化部132は、前記強化凸部131の幅方向(図3において左右方向)の半個分に相当する形状で形成されており、合口部側の一対の端縁部16における凸部(強化凸部131)に隣接する端縁部分16aにそれぞれ形成されている。端縁部強化部132の稜線部132a(図3参照)は、合口部側の端面に位置されている。端縁部強化部132の形成によって、リング本体11の合口部側の端縁部分(端縁部強化部132を含む)16aが軸方向(図3において上下方向)に凹凸化されることによってその剛性が強化されている。ひいては、前記一対の強化凸部131の剛性が強化されている。
【0016】
前記基本凸部13の個数は、前記従来例(図27参照)の28個から18個に削減されている。また、隣り合う基本凸部13の間には、リング本体11の軸方向の中央部14及び両側縁部15とともに同一円筒面上に位置する周方向の平坦状部17が形成されている(図2及び図3参照)。また、18個の各基本凸部13は、トルク伝達装置T(図1参照)の両軸部材S1,S2の間にトレランスリング10を嵌合により配置した状態(「装着状態」という)で、リング本体11の周方向に関して等間隔で、かつ、リング本体11の直径方向に相対する関係(直径方向に延びる直線13D上に位置する関係)をもって配置されている。また、各基本凸部13は、リング本体11の合口部12の中心を通る直径方向に延びる直線11Lを中心として線対称状(図1において左右対称状)に配置されている。
【0017】
前記リング本体11の合口部寄りの一対(図1において左右一対)の強化凸部131自体の剛性の弱化、及び、合口部側の端縁部分16aの剛性の弱化をもって、一対の強化凸部131の剛性と、リング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側半部(図1において下半部)に配置される基本凸部13の剛性とが、同等(同一もしくはほぼ同一を含む)になるように構成されている。
【0018】
前記したトレランスリング10によると、リング本体11の合口部寄りの一対の強化凸部131の剛性と、リング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部13の剛性とが同等になるように構成されている。したがって、トレランスリング10の合口部12の直径方向(図1において上下方向)に関する凸部(基本凸部13及び強化凸部131)の剛性のバランスがとれることにより、合口部寄りの一対の強化凸部131の潰れを防止し、トルク伝達装置の両軸部材S1,S2の間に発生する偏心を防止することができる。このため、両軸部材S1,S2との間に発生する偏心による周方向における面圧の不均一化を防止したり、内軸部材S1及び/又は外軸部材S2の位置ずれを防止したりすることができる。
【0019】
また、リング本体11の合口部寄りの一対の強化凸部131自体の剛性を強化するとともに、合口部12側の一対の強化凸部131に隣接する端縁部分16aを端縁部分強化部132により一対の強化凸部131の剛性を強化している。したがって、リング本体11の合口部寄りの一対の強化凸部131の剛性を、それ自体の剛性の弱化及び端縁部分16aの剛性の弱化によって向上することができる。なお、合口部寄りの一対の各強化凸部131の個数は、2個以上に増やすこともできる。また、端縁部分強化部132は、強化凸部131の半個分に相当する形状に限定されるものではなく、合口部側の端縁部分16aを軸方向に凹凸化する形状であればよい。
【0020】
また、トルク伝達装置Tに対するトレランスリング10の装着状態(図1参照)において、各基本凸部13は、リング本体11の周方向に関して等間隔でかつリング本体11の直径方向に相対する関係(直径方向に延びる直線13D上に位置する関係)をもって配置されている。このため、各基本凸部13の剛性のバランスを容易にとることができる。
【0021】
[実施の形態2]
実施の形態2を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1に変更を加えたものである。図5はトルク伝達装置を示す断面図である。
図5に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態1(図1参照)における強化凸部131及び端縁部分強化部132を省略し、リング本体11の合口部側寄りに各3個の強化凸部13A,13B,13Cを形成したものである。強化凸部13A,13B,13Cは、基本凸部13と同一形状で、合口部側から基本凸部13側に向かって順に形成されている。なお、リング本体11には、前記従来例(図25参照)と同様、軸方向の中央部14及び両側縁部15とともに同一円筒面上に位置する端縁部16(端縁部分16aを含む)が形成されている。
【0022】
前記強化凸部13A,13B,13Cは、基本凸部13側から合口部側に向かって相互間の間隔が徐変すなわち徐々に狭くなるように配置されている。具体的には、強化凸部13Aと13Bとの間隔をd1、強化凸部13Bと13Cとの間隔をd2、強化凸部13Cと基本凸部13との間隔をd3、基本凸部13同志の間隔をd4としたとき、
d1<d2<d3<d4
の関係を満たすように、間隔d1,d2,d3が設定されている。これにより、リング本体11の合口部寄りの一対(図5において左右一対)の強化凸部13A,13B,13Cの剛性が強化されている。
【0023】
なお、強化凸部13A,13B,13Cは、少なくとも隣り合う2個で構成することが可能である。また、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部、例えばリング本体11の合口部12の中心を通る直径方向に延びる直線11Lを間に各3個の基本凸部13の相互間の間隔を、直線11Lに向かって徐々に広くなるように配置することにより、リング本体11の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部の剛性を弱化することが可能である。この場合、リング本体11の合口部寄りの一対の凸部13の剛性を、合口部12に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部13の剛性の弱化によって相対的に向上することができる。
【0024】
[実施の形態3]
実施の形態3を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態に変更を加えたものである。図6はトルク伝達装置を示す断面図である。
図6に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態1(図1参照)における強化凸部131及び端縁部分強化部132を省略し、基本凸部13を2個増やして、合計20個としたものである。増やした基本凸部13は、前記実施の形態1における基本凸部13とともに周方向に同一の間隔で配置されている。また、リング本体11の合口部寄りの一対の基本凸部13の剛性が、例えばショットピーニング、熱処理等の表面処理によって強化されている。
【0025】
本実施の形態によると、合計20個の基本凸部13が周方向に同一の間隔で配置されていることにより、トレランスリング10の全周に亘って基本凸部13の剛性のバランスを容易にとることが可能である。なお、本実施の形態では、リング本体11の合口側の端縁部16において、端縁部分16aに合口側の基本凸部13の端縁部が重複するように形成されているが、前記従来例(図25参照)と同様、その基本凸部13と端縁部分16aとが隣接するように形成してもよい。また、リング本体11の合口部寄りの一対の基本凸部13の剛性は、表面処理に限らず、補強部材の追加、厚肉化等によっても強化することが可能である。
【0026】
[実施の形態4]
実施の形態4を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図7はトルク伝達装置を示す断面図、図8は同じく展開して示す平面図、図9は図8のIX−IX線矢視断面図である。
図7〜図9に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図27〜図29参照)におけるリング本体11の合口部側寄りの一対(図17において左右一対)の端縁部16に、前記実施の形態1(図1〜図4参照)と同様、強化凸部131及び端縁部分強化部132が合口部12を間に対称状に形成されている。また、基本凸部13の個数は、前記従来例(図27参照)の28個から25個に削減されている。また、25個の基本凸部13は、前記従来例(図28及び図29参照)と同様、周方向に規則的にかつ連続的に形成されている。
【0027】
[実施の形態5]
実施の形態5を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態4に変更を加えたものである。図10はトレランスリングを展開して示す平面図、図11は図10のXI−XI線矢視断面図である。
図10及び図11に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態4(図7〜図9参照)における端縁部分強化部132を省略したものである。これにともない、リング本体11の合口部側の端縁部16には、前記従来例(図28及び図29参照)と同様、軸方向の中央部14及び両側縁部15とともに同一円筒面上に位置する端縁部分16aが形成されている。
【0028】
[実施の形態6]
実施の形態6を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図12はトレランスリングを展開して示す平面図、図13は図12のXIII−XIII線矢視断面図である。
図12及び図13に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図25〜図30参照)における合口部側寄りの一対の基本凸部13を、強化凸部133に変更したものである。強化凸部133は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)に比べて、長い長さ133Lで形成されている。これにより、強化凸部133自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて強化されている。また、強化凸部133は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)と同一の幅13Wで形成されている。また、強化凸部133は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)と同一の高さ13Hで形成されている。
【0029】
[実施の形態7]
実施の形態7を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図14はトレランスリングを展開して示す平面図、図15は図14のXV−XV線矢視断面図、図16は図14のXVI−XVI線矢視断面図である。
図14〜図16に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図25〜図30参照)における合口部側寄りの一対の基本凸部13を、強化凸部134に変更したものである。強化凸部134は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)に比べて、高い高さ134H(図15及び図16参照)で形成されている。これにより、強化凸部134自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて強化されている。また、強化凸部134は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、強化凸部134は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)と同一の幅13Wで形成されている。
【0030】
[実施の形態8]
実施の形態8を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図17はトルク伝達装置を示す断面図、図18はトレランスリングの要部を示す側面図である。
図17及び図18に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図25〜図30参照)におけるリング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側半部(図17において下半部)に配置される基本凸部13において、合口部12に対して直径方向の反対側に位置する基本凸部13を弱化凸部135に変更したものである。弱化凸部135は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)に比べて、低い高さ135H(図18参照)で形成されている。これにより、弱化凸部135自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて弱化されている。したがって、本実施の形態の場合、リング本体11の合口部寄りの一対の凸部13の剛性を、弱化凸部135の剛性の弱化によって相対的に向上することができる。また、弱化凸部135は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、弱化凸部135は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)と同一の幅13Wで形成されている。
【0031】
また、前記合口部12に対して前記弱化凸部135が直径方向に相対する位置関係(直径方向に延びる直線11L上に位置する関係)をもって配置されるように、弱化凸部135と基本凸部13との合計の個数が27個に設定されている。また、26個の基本凸部13は、リング本体11の合口部12の中心を通る直径方向に延びる直線11Lを中心として線対称状(図17において左右対称状)に配置されている。
【0032】
[実施の形態9]
実施の形態9を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図19はトルク伝達装置を示す断面図である。
図17及び図18に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態8(図17〜図18参照)におけるリング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側に位置する弱化凸部135を基本凸部13に変更する一方、合口部12に対して直径方向の反対側半部(図19において下半部)に配置される基本凸部13において、例えば、合口部側から数えて9個目に位置する一対(図19において左右一対)の基本凸部13を弱化凸部135に変更したものである。弱化凸部135は、前記実施の形態8のものと同一形状で形成されている。なお、弱化凸部135は、合口部12に対して直径方向の反対側半部(図19において下半部)において直線11Lを中心として線対称状(図19において左右対称状)に配置されていればよく、合口部側から数えて7〜12個目に1個あるいは2個以上配置することもできる。
【0033】
[実施の形態10]
実施の形態10を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態8に変更を加えたものである。図20はトルク伝達装置を示す断面図である。
図20に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態8(図17参照)における弱化凸部135が省略されている。弱化凸部135の省略部分は、リング本体11の側縁部15及び端縁部16とともに同一円筒面上に位置する平坦状部136として形成されている。
【0034】
[実施の形態11]
実施の形態11を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態9に変更を加えたものである。図21はトルク伝達装置を示す断面図である。
図21に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態9(図19参照)における一対(図21において左右一対)の弱化凸部135が省略されている。弱化凸部135の省略部分は、前記実施の形態10(図20参照)と同様、リング本体11の側縁部15及び端縁部16とともに同一円筒面上に位置する平坦状部136として形成されている。
【0035】
[実施の形態12]
実施の形態12を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態8に変更を加えたものである。図22はトルク伝達装置を示す断面図である。
図22に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態8(図17参照)における弱化凸部135を変更したものである。本実施の形態における弱化凸部(符号、137を付す)は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)に比べて、広い幅137Wで形成されている。これにより、弱化凸部137自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて弱化されている。また、弱化凸部137は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、弱化凸部137は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)と同一の高さ13Hで形成されている。なお、基本凸部13の長さ13Lを短くすることによっても、弱化凸部137自体の剛性を弱化することが可能である。
【0036】
[実施の形態13]
実施の形態13を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態10に変更を加えたものである。図23はトルク伝達装置を示す断面図、図24はトレランスリングを示す下面図である。
図23及び図24に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態10(図20参照)における平坦状部136において、リング本体11の軸方向の両側端面から軸方向中央部に向かって直線状に延びる割溝138を形成したものである。これにより、割溝138に隣接する一対(図24において左右一対)の基本凸部13の剛性が、平坦状部136の剛性の弱化によって低下されている。なお、割溝138は本明細書でいう「開口部」に相当する。また、開口部は、割溝に代えて孔でもよい。また、本実施の形態では、前記基本凸部13が軸方向(図24において上下方向)に長い長さ13Laで形成されており、多数の基本凸部13が周方向に1列で形成されている。
【0037】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、トレランスリングは、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性と、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性とが同等(同一もしくはほぼ同一を含む)になるように構成されるものであればよく、合口部寄りの一対の凸部の剛性を向上する手段、及び/又は、合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を低下する手段は、適宜変更することができる。また、前記実施の形態に記載した技術的要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮する。また、トレランスリング10の凸部(基本凸部、補強凸部、弱化凸部)の形状は適宜変更することができる。また、トレランスリング10の凸部(基本凸部、補強凸部、弱化凸部)は、リング本体11の径方向外方に突出するものに限らず、リング本体11の径方向内方に突出するものでもよい。また、トレランスリングは、トルク伝達装置に使用することを主用途とするが、例えばドア等のヒンジ装置における内軸部材及び外軸部材の間のがたつきの防止いわゆるがた止めを目的として使用することもできる。また、トレランスリングは、内軸部材及び外軸部材の間に、周方向の両端縁部を径方向にラップさせた状態で配置して使用することも考えられる。この場合、周方向の両端縁部を、径方向に隙間を介してラップさせてもよいし、隙間なく当接した状態にラップさせてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、ここに記載された発明の実施の形態には特許請求の範囲に記載した技術的事項以外に次のような技術的事項を有する。
(1)請求項2に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化する手段(「凸部強化手段」という)は、凸部の幅を狭くする手段、凸部の長さを長くする手段、凸部の高さを高くする手段、合口部側の端縁部分を凹凸化する手段、隣り合う凸部の相互間の間隔を狭くする手段、表面処理する手段、補強部材を追加する手段、厚肉化する手段等のうちの少なくとも1つの手段であることを特徴とする。
(2)請求項3に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を弱化する手段(「凸部弱化手段」という)は、凸部の幅を広くする手段、凸部の長さを短くする手段、凸部の高さを低くする手段、凸部の形成を省略する手段、隣り合う凸部の間隔を拡げる手段、隣り合う凸部の間に割溝、孔等の開口部を形成する手段のうちの少なくとも1つの手段であることを特徴とする。
【符号の説明】
【0039】
10…トレランスリング
11…リング本体
12…合口部
13…凸部(基本凸部)
13A,13B,13C…強化凸部
14…中央部
15…側縁部
16…端縁部
16a…端縁部分
17…平坦状部
131…強化凸部
132…端縁部分強化部(強化凸部)
133…強化凸部
134…強化凸部
135…弱化凸部
136…平坦状部
137…弱化凸部
138…割溝
S1…内軸部材
S2…外軸部材
T…トルク伝達装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク伝達装置用トレランスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例を説明する。図25はトルク伝達装置を示す断面図である。
図25に示すように、トルク伝達装置Tは、二重軸状をなす内軸部材S1及び外軸部材S2と、両軸部材S1,S2の間の環状空間に嵌合により配置されたトレランスリング10とを備えている。内軸部材S1は、所定の外径で形成された円筒状の外周面S1aを有している。また、外軸部材S2は、内軸部材S1の外周面S1aの外径よりも所定量大きい内径で形成された円筒状の内周面S2aを有している。また、トレランスリング10は、入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材S1,S2を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材S1,S2の間にスリップを発生することで両軸部材S1,S2の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能する。なお、トルクリミッタとして機能するトレランスリングは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
前記トルク伝達装置Tに用いられるトレランスリング10の一例について説明する。図26はトレランスリングを示す斜視図、図27は同じく軸方向の側面図、図28は同じく展開して示す平面図、図29は図28のXXIX−XXIX線矢視断面図、図30は図28のXXX−XXX線矢視断面図である。
図26及び図27に示すように、トレランスリング10は、周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体11に、径方向外方に突出する多数の凸部13が周方向に所定間隔を隔てて形成されている。多数の凸部13は、例えば、周方向に28個で、軸方向に2列で形成されている。なお、2列の多数の凸部13は、トレランスリング10の軸方向に線対称状に形成されているため、一方(図28において下側)の列について説明し、他方の列についての説明は省略する。また、トレランスリング10を板状に展開した形状のもの(いわゆる中間製品)を凸部付き板状物10A(図28〜図30参照)という。また、凸部付き板状物10Aを円筒状に曲げ成形することにより、トレランスリング10が形成されている。また、トレランスリング10は、例えば金属製であるが、樹脂製であってもよい。
【0004】
前記多数の凸部13は、同一形状で、周方向に規則的にかつ連続的に形成されている。また、凸部13は、断面山形状で、所定の軸方向の長さ13L(図28及び図30参照)、及び、所定の周方向の幅13W(図28及び図29参照)、径方向外方に突出する所定の高さ13H(図29及び図30参照)をもって、リング本体11になだらかに連続する寄棟屋根状(図26参照)に形成されている。また、凸部13は、長さ方向(図28において上下方向)及び幅方向(図28において左右方向)に関して線対称状に形成されている。また、前記リング本体11において、凸部13を除いた部分すなわち軸方向の中央部14及び両側縁部15並びに周方向の両端縁部16(図28参照)は、同一円筒面上に形成されている(図26参照)。なお、リング本体11の端縁部16は、合口部側の端縁部16(同一符号を付す)に相当する。また、対向する端縁部16の間が合口部12となっている(図26参照)。また、端縁部16において、合口部側の凸部13に隣接する周辺部を、端縁部分16aという。
【0005】
図25に示すように、前記トレランスリング10は、前記トルク伝達装置Tの両軸部材S1,S2の間に嵌合により配置される。この際、リング本体11は、内軸部材S1の外周面S1aに対して拡開変形を利用して密着される。このため、合口部12の開口幅は、自由状態(図27参照)における合口部12の開口幅に比べて所定量拡げられる。また、各凸部13の稜線部13aは、外軸部材S2の内周面S2aに対して弾性的に当接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−308119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記トレランスリング10において、リング本体11の合口部側の一対(図27において左右一対)の端縁部16の周辺部は片持ちばね状を呈する。したがって、合口部側の一対の凸部13に隣接する端縁部分16a(図26参照)の剛性が低く、変形しやすい。そのため、合口部寄りの一対の凸部(各端縁部16における1〜3個程度の凸部が相当する)13の剛性の低下を招くことになる。また、このようなトレランスリング10をトルク伝達装置T(図25参照)に用いた場合、合口部寄りの一対の凸部13が容易に潰れやすく、両軸部材S1,S2の間に偏心を来たすおそれがある。すなわち、図25において、内軸部材S1の軸心に対して外軸部材S2の軸心が相対的に下方へ偏心することによって、合口部12の付近(図25において上端部付近)では、両軸部材S1,S2の間の間隔が狭くなる一方、その合口部12に対して直径方向の反対側部分(図25において下端部付近)では、両軸部材S1,S2の間の間隔が拡がることになる。このように、両軸部材S1,S2の間に発生する偏心は、周方向のある部分ではスリップトルクの上昇を招き、他の部分ではスリップトルクの低下を招くことから、周方向における面圧が著しく不均一化したり、内軸部材S1及び/又は外軸部材S2の位置ずれを招いたりすることから好ましくない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、トルク伝達装置の両軸部材の間に発生する偏心を防止することのできるトルク伝達装置用トレランスリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とするトルク伝達装置用トレランスリングにより解決することができる。
すなわち、請求項1に記載されたトルク伝達装置用トレランスリングによると、二重軸状をなす内軸部材及び外軸部材の間に嵌合により配置されかつ入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材の間にスリップを発生することで両軸部材の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能するトルク伝達装置用トレランスリングであって、周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体に、径方向に突出する多数の凸部が周方向に所定間隔を隔てて形成され、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性と、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性とが同等になるように構成したことを特徴とする。このように構成すると、トレランスリングの合口部の直径方向に関する凸部の剛性のバランスがとれることにより、合口部寄りの一対の凸部の潰れを防止し、トルク伝達装置の両軸部材の間に発生する偏心を防止することができる。
【0010】
また、請求項2に記載されたトルク伝達装置用トレランスリングによると、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化したことを特徴とする。このように構成すると、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化することにより、その一対の凸部の剛性を向上することができる。なお、合口部寄りの一対の凸部の剛性は、それ自体の剛性の弱化及び/又は隣接する端縁部分の剛性の弱化によって向上することができる。
【0011】
また、請求項3に記載されたトルク伝達装置用トレランスリングによると、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を弱化したことを特徴とする。このように構成すると、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を、合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性の弱化によって相対的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図2】トレランスリングを示す斜視図である。
【図3】トレランスリングを展開して示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】実施の形態2にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図6】実施の形態3にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図7】実施の形態4にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図8】トレランスリングを展開して示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線矢視断面図である。
【図10】実施の形態5にかかるトレランスリングを展開して示す平面図である。
【図11】図10のXI−XI線矢視断面図である。
【図12】実施の形態6にかかるトレランスリングを展開して示す平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線矢視断面図である。
【図14】実施の形態7にかかるトレランスリングを展開して示す平面図である。
【図15】図14のXV−XV線矢視断面図である。
【図16】図14のXVI−XVI線矢視断面図である。
【図17】実施の形態8にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図18】トレランスリングの要部を示す側面図である。
【図19】実施の形態9にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図20】実施の形態10にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図21】実施の形態11にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図22】実施の形態12にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図23】実施の形態13にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図24】トレランスリングを示す下面図である。
【図25】従来例にかかるトルク伝達装置を示す断面図である。
【図26】トレランスリングを示す斜視図である。
【図27】トレランスリングを示す軸方向の側面図である。
【図28】トレランスリングを展開して示す平面図である。
【図29】図28のXXIX−XXIX線矢視断面図である。
【図30】図28のXXX−XXX線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。各実施の形態のトレランスリングは、前記従来例(図25〜図30参照)を基に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、説明の都合上、前記凸部13を基本形状とするため、その凸部13を「基本凸部13」という。
【0014】
[実施の形態1]
実施の形態1を説明する。図1はトルク伝達装置を示す断面図、図2はトレランスリングを示す斜視図、図3は同じくトレランスリングを展開して示す平面図、図4は図3のIV−IV線矢視断面図である。
図3及び図4に示すように、本実施の形態のトルク伝達装置用トレランスリング(単に、「トレランスリング」という)10は、リング本体11の合口部側寄りの一対(図1において左右一対)の端縁部16に、1個半の強化凸部131,132が合口部12を間に対称状に形成されている。1個分の強化凸部131は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)に比べて、狭い幅131W(図3及び図4参照)で形成されている。これにより、強化凸部131自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて強化されている。また、強化凸部131は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、強化凸部131は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)と同一の高さ13Hで形成されている。また、強化凸部131は、その凸部131に隣接する基本凸部13、及び、半個分の強化凸部132に対して連続的に形成されている(図3及び図4参照)。なお、半個分の強化凸部132は、端縁部分16aの剛性を強化するものであるから、端縁部分強化部132という。
【0015】
前記端縁部強化部132は、前記強化凸部131の幅方向(図3において左右方向)の半個分に相当する形状で形成されており、合口部側の一対の端縁部16における凸部(強化凸部131)に隣接する端縁部分16aにそれぞれ形成されている。端縁部強化部132の稜線部132a(図3参照)は、合口部側の端面に位置されている。端縁部強化部132の形成によって、リング本体11の合口部側の端縁部分(端縁部強化部132を含む)16aが軸方向(図3において上下方向)に凹凸化されることによってその剛性が強化されている。ひいては、前記一対の強化凸部131の剛性が強化されている。
【0016】
前記基本凸部13の個数は、前記従来例(図27参照)の28個から18個に削減されている。また、隣り合う基本凸部13の間には、リング本体11の軸方向の中央部14及び両側縁部15とともに同一円筒面上に位置する周方向の平坦状部17が形成されている(図2及び図3参照)。また、18個の各基本凸部13は、トルク伝達装置T(図1参照)の両軸部材S1,S2の間にトレランスリング10を嵌合により配置した状態(「装着状態」という)で、リング本体11の周方向に関して等間隔で、かつ、リング本体11の直径方向に相対する関係(直径方向に延びる直線13D上に位置する関係)をもって配置されている。また、各基本凸部13は、リング本体11の合口部12の中心を通る直径方向に延びる直線11Lを中心として線対称状(図1において左右対称状)に配置されている。
【0017】
前記リング本体11の合口部寄りの一対(図1において左右一対)の強化凸部131自体の剛性の弱化、及び、合口部側の端縁部分16aの剛性の弱化をもって、一対の強化凸部131の剛性と、リング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側半部(図1において下半部)に配置される基本凸部13の剛性とが、同等(同一もしくはほぼ同一を含む)になるように構成されている。
【0018】
前記したトレランスリング10によると、リング本体11の合口部寄りの一対の強化凸部131の剛性と、リング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部13の剛性とが同等になるように構成されている。したがって、トレランスリング10の合口部12の直径方向(図1において上下方向)に関する凸部(基本凸部13及び強化凸部131)の剛性のバランスがとれることにより、合口部寄りの一対の強化凸部131の潰れを防止し、トルク伝達装置の両軸部材S1,S2の間に発生する偏心を防止することができる。このため、両軸部材S1,S2との間に発生する偏心による周方向における面圧の不均一化を防止したり、内軸部材S1及び/又は外軸部材S2の位置ずれを防止したりすることができる。
【0019】
また、リング本体11の合口部寄りの一対の強化凸部131自体の剛性を強化するとともに、合口部12側の一対の強化凸部131に隣接する端縁部分16aを端縁部分強化部132により一対の強化凸部131の剛性を強化している。したがって、リング本体11の合口部寄りの一対の強化凸部131の剛性を、それ自体の剛性の弱化及び端縁部分16aの剛性の弱化によって向上することができる。なお、合口部寄りの一対の各強化凸部131の個数は、2個以上に増やすこともできる。また、端縁部分強化部132は、強化凸部131の半個分に相当する形状に限定されるものではなく、合口部側の端縁部分16aを軸方向に凹凸化する形状であればよい。
【0020】
また、トルク伝達装置Tに対するトレランスリング10の装着状態(図1参照)において、各基本凸部13は、リング本体11の周方向に関して等間隔でかつリング本体11の直径方向に相対する関係(直径方向に延びる直線13D上に位置する関係)をもって配置されている。このため、各基本凸部13の剛性のバランスを容易にとることができる。
【0021】
[実施の形態2]
実施の形態2を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1に変更を加えたものである。図5はトルク伝達装置を示す断面図である。
図5に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態1(図1参照)における強化凸部131及び端縁部分強化部132を省略し、リング本体11の合口部側寄りに各3個の強化凸部13A,13B,13Cを形成したものである。強化凸部13A,13B,13Cは、基本凸部13と同一形状で、合口部側から基本凸部13側に向かって順に形成されている。なお、リング本体11には、前記従来例(図25参照)と同様、軸方向の中央部14及び両側縁部15とともに同一円筒面上に位置する端縁部16(端縁部分16aを含む)が形成されている。
【0022】
前記強化凸部13A,13B,13Cは、基本凸部13側から合口部側に向かって相互間の間隔が徐変すなわち徐々に狭くなるように配置されている。具体的には、強化凸部13Aと13Bとの間隔をd1、強化凸部13Bと13Cとの間隔をd2、強化凸部13Cと基本凸部13との間隔をd3、基本凸部13同志の間隔をd4としたとき、
d1<d2<d3<d4
の関係を満たすように、間隔d1,d2,d3が設定されている。これにより、リング本体11の合口部寄りの一対(図5において左右一対)の強化凸部13A,13B,13Cの剛性が強化されている。
【0023】
なお、強化凸部13A,13B,13Cは、少なくとも隣り合う2個で構成することが可能である。また、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部、例えばリング本体11の合口部12の中心を通る直径方向に延びる直線11Lを間に各3個の基本凸部13の相互間の間隔を、直線11Lに向かって徐々に広くなるように配置することにより、リング本体11の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部の剛性を弱化することが可能である。この場合、リング本体11の合口部寄りの一対の凸部13の剛性を、合口部12に対して直径方向の反対側半部に配置される基本凸部13の剛性の弱化によって相対的に向上することができる。
【0024】
[実施の形態3]
実施の形態3を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態に変更を加えたものである。図6はトルク伝達装置を示す断面図である。
図6に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態1(図1参照)における強化凸部131及び端縁部分強化部132を省略し、基本凸部13を2個増やして、合計20個としたものである。増やした基本凸部13は、前記実施の形態1における基本凸部13とともに周方向に同一の間隔で配置されている。また、リング本体11の合口部寄りの一対の基本凸部13の剛性が、例えばショットピーニング、熱処理等の表面処理によって強化されている。
【0025】
本実施の形態によると、合計20個の基本凸部13が周方向に同一の間隔で配置されていることにより、トレランスリング10の全周に亘って基本凸部13の剛性のバランスを容易にとることが可能である。なお、本実施の形態では、リング本体11の合口側の端縁部16において、端縁部分16aに合口側の基本凸部13の端縁部が重複するように形成されているが、前記従来例(図25参照)と同様、その基本凸部13と端縁部分16aとが隣接するように形成してもよい。また、リング本体11の合口部寄りの一対の基本凸部13の剛性は、表面処理に限らず、補強部材の追加、厚肉化等によっても強化することが可能である。
【0026】
[実施の形態4]
実施の形態4を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図7はトルク伝達装置を示す断面図、図8は同じく展開して示す平面図、図9は図8のIX−IX線矢視断面図である。
図7〜図9に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図27〜図29参照)におけるリング本体11の合口部側寄りの一対(図17において左右一対)の端縁部16に、前記実施の形態1(図1〜図4参照)と同様、強化凸部131及び端縁部分強化部132が合口部12を間に対称状に形成されている。また、基本凸部13の個数は、前記従来例(図27参照)の28個から25個に削減されている。また、25個の基本凸部13は、前記従来例(図28及び図29参照)と同様、周方向に規則的にかつ連続的に形成されている。
【0027】
[実施の形態5]
実施の形態5を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態4に変更を加えたものである。図10はトレランスリングを展開して示す平面図、図11は図10のXI−XI線矢視断面図である。
図10及び図11に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態4(図7〜図9参照)における端縁部分強化部132を省略したものである。これにともない、リング本体11の合口部側の端縁部16には、前記従来例(図28及び図29参照)と同様、軸方向の中央部14及び両側縁部15とともに同一円筒面上に位置する端縁部分16aが形成されている。
【0028】
[実施の形態6]
実施の形態6を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図12はトレランスリングを展開して示す平面図、図13は図12のXIII−XIII線矢視断面図である。
図12及び図13に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図25〜図30参照)における合口部側寄りの一対の基本凸部13を、強化凸部133に変更したものである。強化凸部133は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)に比べて、長い長さ133Lで形成されている。これにより、強化凸部133自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて強化されている。また、強化凸部133は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)と同一の幅13Wで形成されている。また、強化凸部133は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)と同一の高さ13Hで形成されている。
【0029】
[実施の形態7]
実施の形態7を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図14はトレランスリングを展開して示す平面図、図15は図14のXV−XV線矢視断面図、図16は図14のXVI−XVI線矢視断面図である。
図14〜図16に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図25〜図30参照)における合口部側寄りの一対の基本凸部13を、強化凸部134に変更したものである。強化凸部134は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)に比べて、高い高さ134H(図15及び図16参照)で形成されている。これにより、強化凸部134自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて強化されている。また、強化凸部134は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、強化凸部134は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)と同一の幅13Wで形成されている。
【0030】
[実施の形態8]
実施の形態8を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図17はトルク伝達装置を示す断面図、図18はトレランスリングの要部を示す側面図である。
図17及び図18に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記従来例(図25〜図30参照)におけるリング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側半部(図17において下半部)に配置される基本凸部13において、合口部12に対して直径方向の反対側に位置する基本凸部13を弱化凸部135に変更したものである。弱化凸部135は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)に比べて、低い高さ135H(図18参照)で形成されている。これにより、弱化凸部135自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて弱化されている。したがって、本実施の形態の場合、リング本体11の合口部寄りの一対の凸部13の剛性を、弱化凸部135の剛性の弱化によって相対的に向上することができる。また、弱化凸部135は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、弱化凸部135は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)と同一の幅13Wで形成されている。
【0031】
また、前記合口部12に対して前記弱化凸部135が直径方向に相対する位置関係(直径方向に延びる直線11L上に位置する関係)をもって配置されるように、弱化凸部135と基本凸部13との合計の個数が27個に設定されている。また、26個の基本凸部13は、リング本体11の合口部12の中心を通る直径方向に延びる直線11Lを中心として線対称状(図17において左右対称状)に配置されている。
【0032】
[実施の形態9]
実施の形態9を説明する。本実施の形態は、前記従来例に変更を加えたものである。図19はトルク伝達装置を示す断面図である。
図17及び図18に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態8(図17〜図18参照)におけるリング本体11の合口部12に対して直径方向の反対側に位置する弱化凸部135を基本凸部13に変更する一方、合口部12に対して直径方向の反対側半部(図19において下半部)に配置される基本凸部13において、例えば、合口部側から数えて9個目に位置する一対(図19において左右一対)の基本凸部13を弱化凸部135に変更したものである。弱化凸部135は、前記実施の形態8のものと同一形状で形成されている。なお、弱化凸部135は、合口部12に対して直径方向の反対側半部(図19において下半部)において直線11Lを中心として線対称状(図19において左右対称状)に配置されていればよく、合口部側から数えて7〜12個目に1個あるいは2個以上配置することもできる。
【0033】
[実施の形態10]
実施の形態10を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態8に変更を加えたものである。図20はトルク伝達装置を示す断面図である。
図20に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態8(図17参照)における弱化凸部135が省略されている。弱化凸部135の省略部分は、リング本体11の側縁部15及び端縁部16とともに同一円筒面上に位置する平坦状部136として形成されている。
【0034】
[実施の形態11]
実施の形態11を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態9に変更を加えたものである。図21はトルク伝達装置を示す断面図である。
図21に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態9(図19参照)における一対(図21において左右一対)の弱化凸部135が省略されている。弱化凸部135の省略部分は、前記実施の形態10(図20参照)と同様、リング本体11の側縁部15及び端縁部16とともに同一円筒面上に位置する平坦状部136として形成されている。
【0035】
[実施の形態12]
実施の形態12を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態8に変更を加えたものである。図22はトルク伝達装置を示す断面図である。
図22に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態8(図17参照)における弱化凸部135を変更したものである。本実施の形態における弱化凸部(符号、137を付す)は、基本凸部13の幅13W(図28及び図29参照)に比べて、広い幅137Wで形成されている。これにより、弱化凸部137自体の剛性が、基本凸部13の剛性に比べて弱化されている。また、弱化凸部137は、基本凸部13の長さ13L(図28及び図30参照)と同一の長さ13Lで形成されている。また、弱化凸部137は、基本凸部13の高さ13H(図29及び図30参照)と同一の高さ13Hで形成されている。なお、基本凸部13の長さ13Lを短くすることによっても、弱化凸部137自体の剛性を弱化することが可能である。
【0036】
[実施の形態13]
実施の形態13を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態10に変更を加えたものである。図23はトルク伝達装置を示す断面図、図24はトレランスリングを示す下面図である。
図23及び図24に示すように、本実施の形態のトレランスリング10は、前記実施の形態10(図20参照)における平坦状部136において、リング本体11の軸方向の両側端面から軸方向中央部に向かって直線状に延びる割溝138を形成したものである。これにより、割溝138に隣接する一対(図24において左右一対)の基本凸部13の剛性が、平坦状部136の剛性の弱化によって低下されている。なお、割溝138は本明細書でいう「開口部」に相当する。また、開口部は、割溝に代えて孔でもよい。また、本実施の形態では、前記基本凸部13が軸方向(図24において上下方向)に長い長さ13Laで形成されており、多数の基本凸部13が周方向に1列で形成されている。
【0037】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、トレランスリングは、リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性と、リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性とが同等(同一もしくはほぼ同一を含む)になるように構成されるものであればよく、合口部寄りの一対の凸部の剛性を向上する手段、及び/又は、合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を低下する手段は、適宜変更することができる。また、前記実施の形態に記載した技術的要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮する。また、トレランスリング10の凸部(基本凸部、補強凸部、弱化凸部)の形状は適宜変更することができる。また、トレランスリング10の凸部(基本凸部、補強凸部、弱化凸部)は、リング本体11の径方向外方に突出するものに限らず、リング本体11の径方向内方に突出するものでもよい。また、トレランスリングは、トルク伝達装置に使用することを主用途とするが、例えばドア等のヒンジ装置における内軸部材及び外軸部材の間のがたつきの防止いわゆるがた止めを目的として使用することもできる。また、トレランスリングは、内軸部材及び外軸部材の間に、周方向の両端縁部を径方向にラップさせた状態で配置して使用することも考えられる。この場合、周方向の両端縁部を、径方向に隙間を介してラップさせてもよいし、隙間なく当接した状態にラップさせてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、ここに記載された発明の実施の形態には特許請求の範囲に記載した技術的事項以外に次のような技術的事項を有する。
(1)請求項2に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化する手段(「凸部強化手段」という)は、凸部の幅を狭くする手段、凸部の長さを長くする手段、凸部の高さを高くする手段、合口部側の端縁部分を凹凸化する手段、隣り合う凸部の相互間の間隔を狭くする手段、表面処理する手段、補強部材を追加する手段、厚肉化する手段等のうちの少なくとも1つの手段であることを特徴とする。
(2)請求項3に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を弱化する手段(「凸部弱化手段」という)は、凸部の幅を広くする手段、凸部の長さを短くする手段、凸部の高さを低くする手段、凸部の形成を省略する手段、隣り合う凸部の間隔を拡げる手段、隣り合う凸部の間に割溝、孔等の開口部を形成する手段のうちの少なくとも1つの手段であることを特徴とする。
【符号の説明】
【0039】
10…トレランスリング
11…リング本体
12…合口部
13…凸部(基本凸部)
13A,13B,13C…強化凸部
14…中央部
15…側縁部
16…端縁部
16a…端縁部分
17…平坦状部
131…強化凸部
132…端縁部分強化部(強化凸部)
133…強化凸部
134…強化凸部
135…弱化凸部
136…平坦状部
137…弱化凸部
138…割溝
S1…内軸部材
S2…外軸部材
T…トルク伝達装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重軸状をなす内軸部材及び外軸部材の間に嵌合により配置されかつ入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材の間にスリップを発生することで両軸部材の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能するトルク伝達装置用トレランスリングであって、
周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体に、径方向に突出する多数の凸部が周方向に所定間隔を隔てて形成され、
前記リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性と、該リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性とが同等になるように構成した
ことを特徴とするトルク伝達装置用トレランスリング。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化したことを特徴とするトルク伝達装置用トレランスリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を弱化したことを特徴とするトルク伝達装置用トレランスリング。
【請求項1】
二重軸状をなす内軸部材及び外軸部材の間に嵌合により配置されかつ入力トルクが設定トルク値よりも小さいときは両軸部材を一体回転させ、また、入力トルクが設定トルク値よりも大きいときは両軸部材の間にスリップを発生することで両軸部材の相対回転を許容するトルクリミッタとして機能するトルク伝達装置用トレランスリングであって、
周方向の両端縁部の間に合口部が形成された円筒状をなしかつばね性を有するリング本体に、径方向に突出する多数の凸部が周方向に所定間隔を隔てて形成され、
前記リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性と、該リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性とが同等になるように構成した
ことを特徴とするトルク伝達装置用トレランスリング。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部寄りの一対の凸部の剛性を強化したことを特徴とするトルク伝達装置用トレランスリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトルク伝達装置用トレランスリングであって、
前記リング本体の合口部に対して直径方向の反対側半部に配置される凸部の剛性を弱化したことを特徴とするトルク伝達装置用トレランスリング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−52638(P2012−52638A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197573(P2010−197573)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000151597)株式会社東郷製作所 (78)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000151597)株式会社東郷製作所 (78)
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