説明

トルク検出装置の取付構造

【課題】水、油等の浸入を確実に防止できるトルク検出装置の取付構造を提供する。
【解決手段】本トルク検出装置16の取付構造32は、筒状の金属製のハウジング22と、トルク検出装置16と、Oリング34とを有している。トルク検出装置16の支持体31が、ハウジング22の周壁36の挿入孔37の開口38の周囲に設けられた取付面39に取り付けられている。支持体31は、合成樹脂部材55と、アルミニウム合金製の金属部材56とにより形成されている。Oリング34は、取付面39および金属部材56の対向面65に接して、この間を封止している。対向面65は、金属部材56により形成されるので、高強度と高い耐油性とを有する。油が付着した状態で押圧された対向面65に接するOリング34の封止性は低下せずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トルク検出装置は、例えば、自動車の電動パワーステアリング装置のハウジングに取り付けられている。このハウジングの取付面と、これに対向するトルク検出装置の合成樹脂製の支持体との間に、封止部材が挟まれている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−300267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、封止部材の封止性が低下する場合がある。この場合、水、油等がハウジング内に浸入し、その結果、操舵トルクが正確に検出されない虞がある。
そこで、本発明の目的は、水、油等の浸入を確実に防止できるトルク検出装置の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明者は、封止部材の封止性の低下について鋭意研究を重ねた結果、複合的な原因を見出した。すなわち、封止部材が、トルク検出装置の合成樹脂製の支持体を押圧することにより、この支持体に応力が生じ、この状態で、油が支持体に付着することがある。この場合に、合成樹脂製の支持体の表面のシール部にへたり(塑性変形)が生じる。その結果、封止部材の封止性が低下する。
【0005】
本発明のトルク検出装置の取付構造(32,76)は、筒状の金属製のハウジング(22)と、このハウジングに取り付けられたトルク検出装置(16,74)とを備え、上記ハウジングは、周壁(36)と、この周壁に形成された挿入孔(37)と、この挿入孔の開口(38)の周囲に設けられた取付面(39)とを含み、上記トルク検出装置は、上記挿入孔内に少なくとも一部(52)が挿入される検出部(47,48,49,50,51)と、この検出部を支持する支持体(31,75)とを含み、この支持体は、絶縁性の合成樹脂部材(55,77)と、上記取付面に対向する対向面(65)を有する金属部材(56,78)とを含み、上記取付面および上記金属部材の上記対向面の間が、上記開口の周囲を取り囲む弾性を有する環状の封止部材(34)によって封止されており、この封止部材は、上記取付面および上記金属部材の上記対向面に接触していることを特徴とする。本発明によれば、対向面は、金属部材により形成されるので、高い強度と高い耐油性とを有する。その結果、金属部材の対向面が封止部材により押圧された状態で、対向面に油が付着するとしても、金属部材の対向面にへたりが生じる虞はない。従って、封止部材の封止性の低下を防止でき、ひいては水、油等の浸入を確実に防止できる。
【0006】
また、本発明において、上記ハウジングおよび支持体(31)の間に、上記封止部材を収容する収容溝(35)が形成され、上記合成樹脂部材(55)は、上記取付面に対向する対向面(64)を有し、上記合成樹脂部材の上記対向面および上記金属部材(55)の上記対向面は、上記収容溝内に互いの境界(66)を形成している場合がある。この場合、境界が収容溝内に配置されているので、水、油等が境界を通じて、合成樹脂部材と金属部材との間に浸入することを抑制できる。
【0007】
また、本発明において、上記ハウジングおよび上記金属部材(56,78)が、線膨張係数の等しい材料により形成されている場合がある。この場合、例えば、温度上昇時に、金属部材とハウジングとの熱膨張量の相違に起因して封止部材の封止性が低下することを防止できる。
具体的には、上記ハウジングおよび上記金属部材(56,78)が、アルミニウム合金により形成されて、ハウジングと金属部材との線膨張係数を、互いに等しくする場合がある。
【0008】
また、本発明において、上記金属部材(56,78)は、当該金属部材が上記合成樹脂部材(55,77)から所定の脱落方向(Y)に脱落することを防止するために合成樹脂部材と係合する起伏部(68)を含み、この起伏部は、上記所定の脱落方向とは交差する方向(Y1)に起伏している場合がある。この場合、支持体を取付面に組み付けるときに、金属部材と合成樹脂部材とを一体的に扱うことができる。その結果、支持体を取付面に容易に組み付けることができる。
【0009】
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態のトルク検出装置の取付構造を、自動車の電動パワーステアリング装置に適用した場合に則して説明する。なお、本実施形態のトルク検出装置の取付構造を、電動パワーステアリング装置以外の装置に適用してもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態のトルク検出装置の取付構造が適用された電動パワーステアリング装置の模式図である。電動パワーステアリング装置1は、ステアリングシャフト4と、操舵機構5と、軸継手としての中間軸ユニット6とを有している。ステアリングシャフト4は、操向輪2を操舵するために操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達する。操舵機構5は、ラックアンドピニオン機構からなり、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵する。中間軸ユニット6は、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間において回転を伝達する。
【0011】
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部にステアリングホイール3が連結されている。ステアリングシャフト4の他方の端部に中間軸ユニット6が連結されている。中間軸ユニット6は、中間軸10と、自在継手11,12とを有している。
【0012】
操舵機構5は、歯車としてのピニオン13と、自動車の左右方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラックバー14とを有している。ピニオン13のピニオン歯とラックバー14のラック歯とが、互いに噛み合っている。ピニオン13の回転が、ラックバー14の直線運動に変換される。ラックバー14はラックハウジングにより直線移動自在に支持されている。ラックバー14の各端部が、対応する操向輪2に連結されている。ピニオン13はピニオン軸15の端部に設けられている。ピニオン軸15はステアリングホイール3に連動するようにつながっている。ステアリングホイール3が操舵されると、操舵トルクが操舵機構5に伝達され、操向輪2が操舵される。
【0013】
電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルク検出装置16と、車両の車速を検出する車速センサ17と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)18と、操舵補助用の駆動装置としての電動モータ19と、減速機20とを有している。
【0014】
本実施形態では、トルク検出装置16、電動モータ19および減速機20は、操舵機構5に関連して設けられている。操舵機構5、トルク検出装置16、電動モータ19、および減速機20は、一体的なユニットとしての操舵補助ユニット21を構成している。
操舵補助ユニット21は、自動車の車室としての乗員室91の外側に、例えばエンジンルーム92に配置されている。また、操舵補助ユニット21は、ラックハウジングに連設されたハウジング22を有している。このハウジング22は、トルク検出装置16および電動モータ19を支持し、ピニオン軸15を回動自在に支持している。
【0015】
ピニオン軸15は、入力軸23と、出力軸24と、トーションバー25とを有している。入力軸23および出力軸24は、トーションバー25を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸23は、中間軸ユニット6およびステアリングシャフト4を介して、ステアリングホイール3に連なっている。出力軸24の端部に、ピニオン13が固定されているか、または一体に形成されている。
【0016】
入力軸23に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー25が弾性ねじり変形する。これに伴い入力軸23および出力軸24が相対回転する。操舵トルクが変化すると、入力軸23および出力軸24間の相対回転変位量が変化する。この相対回転変位量が生じたときに、これに対応する操舵トルクがトルク検出装置16により検出される。
ECU18は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、電動モータ19を制御する。電動モータ19の出力回転は、減速機20により減速される。減速機20は、駆動ギヤとしてのウォーム軸26と、従動ギヤとしてのウォームホイール27とを有している。ウォームホイール27は、出力軸24に固定されている。
【0017】
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルク検出装置16により検出される。電動モータ19が、トルク検出結果および車速検出結果等に応じた操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機20に伝わり、ピニオン13に伝達される。これとともに、ステアリングホイール3の動きが、ピニオン13に伝わる。その結果、操向輪2の操舵が補助される。
【0018】
図2は、図1のトルク検出装置16とその取付構造の断面図である。図3は、図1のトルク検出装置16とその取付構造の分解斜視図であり、部分的に切り欠いて図示している。トルク検出装置16は、ピニオン軸15に同行回転する可動部28と、ハウジング22に固定された固定側ユニット29とを有している。また、固定側ユニット29は、後述する検出部、例えば、第1および第2の集磁リング47,48を支持する支持体31を有している。
【0019】
本実施形態の電動パワーステアリング装置1は、トルク検出装置16を取り付けるためのトルク検出装置16の取付構造(以下、単に取付構造ともいう。)32を有している。これにより、トルク検出装置16の固定側ユニット29とハウジング22との間を気密的に封止することができる。
取付構造32は、ハウジング22と、トルク検出装置16の固定側ユニット29と、固定部材としての2個のボルト33と、環状の封止部材としてのOリング34とを有している。このOリング34は、収容溝35に収容されている。
【0020】
なお、封止部材としては、少なくともひとつがあればよく、また、断面丸形のOリング34の他、断面矩形の角リング(図示せず)でもよい。本実施形態では、ひとつのOリング34の場合に則して説明する。また、ボルト33は、少なくともひとつがあればよく、本実施形態では、2つの場合に則して説明する。
ハウジング22は、周壁36を有している。この周壁36は、金属としてのアルミニウム合金により筒状に形成されている。また、ハウジング22は、周壁36に形成された挿入孔37と、この挿入孔37の開口38の周囲に設けられた取付面39とを有している。挿入孔37は、周壁36を貫通している。
【0021】
取付面39は、ハウジング22の周壁36の外周に形成され、開口38を取り囲んで環状をなしている。取付面39は、トルク検出装置16の固定側ユニット29の後述する対向面60の一部に当接する当接面40と、当接面40から窪んだ凹部41とを有している。この凹部41は、挿入孔37を取り囲んで環状をなしており、収容溝35を形成している。当接面40は、凹部41を取り囲む平坦面である。当接面40には、複数、例えば2つのねじ孔42が形成されている。
【0022】
トルク検出装置16の可動部28は、ハウジング22内に配置されている。可動部28は、入力軸23と、出力軸24と、トーションバー25と、環状の永久磁石43と、軟磁性体としての環状の第1および第2の磁気ヨーク44,45とを有している。永久磁石43は、入力軸23に固定されている。第1および第2の磁気ヨーク44,45は、合成樹脂部材46により一体にモールドされてなり、出力軸24に固定されている。
【0023】
固定側ユニット29は、軟磁性体としての環状の第1および第2の集磁リング47,48と、第1および第2の磁気センサ49,50と、回路基板51とを有している。これらの部品47,48,49,50,51は操舵トルクを検出する検出部として機能する。
第1および第2の集磁リング47,48は、第1および第2の磁気ヨーク44,45から磁束を誘導する。第1および第2の集磁リング47,48のそれぞれは、環状部52と、環状部52から径方向外方へ突出した2つの爪片53とを有している。第1および第2の磁気センサ49,50は、例えばホール素子、MR素子等を含み、第1および第2の集磁リング47,48が誘導した磁束を検出する。回路基板51は、電気部品が配線板に組み立てられてなる。回路基板51は、第1および第2の磁気センサ49,50にとっての電源および信号処理部として機能する。
【0024】
永久磁石43と、第1および第2の磁気ヨーク44,45と、第1および第2の集磁リング47,48とは、磁気回路を形成する。この磁気回路の磁束密度が、入力軸23および出力軸24の相対回動に応じて変化する。このときの磁束密度の変化が、第1および第2の磁気センサ49,50により検出される。
固定側ユニット29の支持体31は、第1および第2の集磁リング47,48と、第1および第2の磁気センサ49,50と、回路基板51とを支持している。支持体31は、絶縁性の合成樹脂部材55と、金属部材56とを含んでいる。支持体31は、合成樹脂部材55および金属部材56により形成されている。また、支持体31は、環状部57と、ハウジング22に取り付けるための被取付部59とを有している。
【0025】
環状部57は、合成樹脂部材55の一部により形成されている。合成樹脂部材55の上記一部が、第1および第2の集磁リング47,48と、第1および第2の磁気センサ49,50と、回路基板51とを、一体にモールドしている。環状部57は、延設部58を有している。延設部58は、環状部57の周方向の一部が環状部57の径方向外方に延設されてなる。延設部58と被取付部59とが、ハウジング22の外側に配置されている。第1および第2の磁気センサ49,50と、第1および第2の集磁リング47,48の爪片53と、回路基板51とが、ハウジング22の外側に配置されている。第1および第2の集磁リング47,48の環状部52が、挿入孔37に通されており、ハウジング22内に配置されている。
【0026】
図4は、図2のトルク検出装置16とその取付構造32の要部拡大図であり、周辺部分を模式的に図示している。図5は、図4のV−V線に沿う断面図である。図6は、図4の取付構造32の要部拡大図である。図4、図5を参照する。
被取付部59は、環状をなし、延設部58を取り囲み、この延設部58に固定されている。被取付部59は、取付面39に対向する対向面60と、複数のねじ挿通孔61とを有している。ねじ挿通孔61は、被取付部59を貫通している。被取付部59は、取付面39およびOリング34を覆っている。被取付部59は、合成樹脂部材55と、金属部材56とにより形成されている。
【0027】
合成樹脂部材55は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)により形成されている。合成樹脂部材55は、環状部57を形成する第1の部分62と、被取付部59を形成する第2の部分63とを有している。第1の部分62および第2の部分63は、一体に形成されている。合成樹脂部材55は、検出部の複数の部品、すなわち、第1および第2の集磁リング47,48と、第1および第2の磁気センサ49,50と、回路基板51とを互いに固定している。また、合成樹脂部材55は、検出部の各部品47〜51と金属部材56との間を電気的に絶縁している。また、合成樹脂部材55は、検出部の各部品47〜51と、ハウジング22との間を電気的に絶縁している。
【0028】
合成樹脂部材55は、検出部の各部品47〜51および金属部材56をインサートとして、インサート成形されてなる。インサート成形されることにより、合成樹脂部材55と金属部材56と検出部の各部品47〜51とを互いに固定する手間を低減できる。合成樹脂部材55の第2の部分63は、取付面39に対向する対向面64を有している。この対向面64は、平坦面からなる。対向面64は、この面の法線方向から見たときに矩形の無端状の環状をなしている。合成樹脂部材55と金属部材56とは互いに密着している。
【0029】
金属部材56は、アルミニウム合金により環状に形成されている。金属部材56のアルミニウム合金の線膨張係数と、ハウジング22のアルミニウム合金の線膨張係数とは、互いに等しくされている。金属部材56は、取付面39に対向する対向面65を有している。この対向面65は、平坦面からなり、この面の法線方向から見たときに、矩形の無端状の環状をなしている。
【0030】
支持体31の被取付部59の対向面60は、合成樹脂部材55の対向面64からなる部分(図5における矩形101の外側に図示した。)と、金属部材56の対向面65からなる部分(図5における矩形101と矩形102との間に枠状に図示した。)とを有している。合成樹脂部材55の対向面64の一部分が、ハウジング22の取付面39の当接面40に当接している。対向面64のうちの当接面40に当接した上記一部分に、ねじ挿通孔61が配置されている。金属部材56の対向面65と取付面39の凹部41とは、締付方向Xに関して所定間隔を隔てて互いに対向している。
【0031】
図5,図6を参照して、収容溝35は、環状に延びた部屋からなる。収容溝35は、合成樹脂部材55と、金属部材56と、ハウジング22とにより囲まれて区画されている。収容溝35は、ハウジング22の取付面39の凹部41と、金属部材56の対向面65との間に形成されている。収容溝35は、図5において、矩形102と矩形103との間の枠状領域として図示されている。
【0032】
また、被取付部59の対向面60において、対向面65は対向面64の内側に隣接しており、対向面65の外周と対向面64の内周とが全周にわたり接している。対向面65と対向面64との間に境界66が形成されている。この境界66は、対向面65の環状の外形線である。境界66は、収容溝35内に形成されており、収容溝35が延びる方向に沿って延びている。
【0033】
図3,図4を参照して、Oリング34は、挿入孔37の開口38の周囲を取り囲んでいる。Oリング34は、弾性体としてのゴム部材により形成されている。自由状態のOリング34の断面は、例えば円形をなしている。
ボルト33が、支持体31の被取付部59のねじ挿通孔61を挿通し、ボルト33の雄ねじが、ハウジング22の取付面39のねじ孔42の雌ねじにねじ嵌合されている。ボルト33の頭部と取付面39との間に支持体31の被取付部59が挟まれている。被取付部59が取付面39に締結されている。このときの締付方向Xは、被取付部59と取付面39とが対向する方向である。
【0034】
この締付状態において、Oリング34は、収容溝35に収容され、締付方向Xに弾性圧縮されている。これに伴い、Oリング34は、取付面39の凹部41および金属部材56の対向面65に押圧しつつ面当たりで接触している。これにより、Oリング34は、取付面39の凹部41および金属部材56の対向面65の間を封止している。また、Oリング34は合成樹脂部材55の対向面64に接触していない。
【0035】
また、金属部材56は、対向面65を形成する環状の主体部67と、起伏部としての凸部68とを有している。凸部68は、主体部67から所定の脱落方向Yとは交差する方向Y1に突出している。
脱落方向Yは、仮に、固定側ユニット29がハウジング22から取り外された状態で、合成樹脂部材55から金属部材56が脱落する場合に、金属部材56が脱落する向きに移動する方向である。例えば、脱落方向Yは、対向面65の法線方向に平行とされている。また、交差する方向Y1は、一例として、脱落方向Yに垂直に交差する方向を図示している。
【0036】
凸部68は、係合面69を有している。この係合面69は、脱落方向Yと交差している。係合面69は、脱落方向Yに関して、合成樹脂部材55の凹部70の係合面71に対向している。係合面69が係合面71に係合することにより、合成樹脂部材55からの金属部材56の脱落が防止される。また、固定側ユニット29内に凸部68と凹部70とが形成されている。これにより、脱落方向Yと環状の金属部材56の径方向Rとを含む断面において、合成樹脂部材55と金属部材56との接触長さが長くなる。その結果、水、油等の浸入がより一層確実に防止される。
【0037】
また、図示しないが、金属部材56の凸部68に代えて、抜け止め用の起伏部としての凹部を設けてもよい。この凹部は、合成樹脂部材55の凸部に係合し、脱落方向Yに交差する方向Y1に窪んでいればよい。
図4を参照して、本実施形態のトルク検出装置16の取付構造32は、筒状の金属製のハウジング22と、このハウジング22に取り付けられたトルク検出装置16とを備えている。ハウジング22は、周壁36と、この周壁36に形成された挿入孔37と、この挿入孔37の開口38の周囲に設けられた取付面39とを含んでいる。トルク検出装置16は、挿入孔37内に一部としての環状部52が挿入される検出部としての上述の各部品47〜51と、上述の検出部を支持する支持体31とを含んでいる。この支持体31は、絶縁性の合成樹脂部材55と、取付面39に対向する対向面65を有する金属部材56とを含んでいる。取付面39および金属部材56の対向面65の間が、開口38の周囲を取り囲む弾性を有する環状の封止部材としてのOリング34によって封止されている。このOリング34は、取付面39および金属部材56の対向面65に接触している。
【0038】
本実施形態によれば、対向面65は、金属部材56により形成されるので、高い強度と高い耐油性と高い耐薬品性とを有する。その結果、金属部材56の対向面65がOリング34により押圧された状態で、対向面65に油、薬品等が付着するとしても、金属部材56の対向面65にへたりが生じる虞はない。従って、Oリング34の封止性の低下を防止でき、ひいては水、油等の浸入を確実に防止できる。また、金属部材56が設けられるのに伴い、合成樹脂部材55に生じる応力が低くなり、また、合成樹脂部材55にへたりが生じる虞もない。ここで、上述の薬品は、例えば、製造工程で付着するグリースを挙げることができる。
【0039】
支持体31が合成樹脂部材55および金属部材56を有するので、上述の検出部を絶縁しつつ保持することが安価に達成され、しかも、水、油等の浸入を確実に防止できる。
また、対向面65が金属により形成される場合には、対向面65を、従来の合成樹脂部材により形成された対向面に比べて、平滑にできる。その結果、本実施形態のOリング34により、水、油等の浸入をより一層確実に防止できる。
【0040】
図4,図5を参照して、ハウジング22および支持体31の間に、Oリング34を収容する収容溝35が形成されている。合成樹脂部材55は、取付面39に対向する対向面64を有する。合成樹脂部材55の対向面64および金属部材56の対向面65は、収容溝35内に互いの境界66を形成している。
ところで、仮に、ハウジングの取付面の当接面と支持体の対向面との間に微小な隙間が形成され、この隙間に合成樹脂部材と金属部材との境界が配置される場合を考える。この場合、水、油等が上記微小な隙間を通るときに、境界を通じて合成樹脂部材と金属部材との間に浸入することが懸念される。
【0041】
これに対して、本実施形態では、境界66が収容溝35内に配置されているので、境界66が上記微小な隙間から離隔される。その結果、水、油等が境界66を通じて、合成樹脂部材55と金属部材56との間に浸入することを抑制できる。例えば、温度が高くなったときに、万一、境界66に隙間が生じるとしても、この隙間を通じて水、油等が浸入することを抑制できる。
【0042】
また、収容溝35内に、収容溝35の内面とOリング34との間に空き空間72が形成されるようになっている。この空き空間72に、水、油等を貯留することができる。この場合、仮に、対向面64と当接面40との間に微小な隙間73(一点鎖線で図示)が形成され、この隙間73を通じて、水、油等が収容溝35内に到達したとしても、収容溝35の上記空き空間72内に溜められる。従って、水、油等が境界66を通じて、合成樹脂部材55と金属部材56との間に浸入することを抑制できる。
【0043】
また、ハウジング22および金属部材56が、線膨張係数の等しい材料としての互いに同じ金属、例えばアルミニウム合金により形成されている。この場合、例えば、温度上昇時に、金属部材56とハウジング22との熱膨張量の相違に起因してOリング34の封止性が低下することを防止できる。
また、金属部材56は、当該金属部材56が合成樹脂部材55から所定の脱落方向Yに脱落することを防止するために合成樹脂部材55と係合する起伏部としての凸部68を含んでいる。この起伏部は、上記所定の脱落方向Yとは交差する方向Y1に起伏している。この場合、支持体31を取付面39に組み付けるときに、金属部材56と合成樹脂部材55とを一体的に扱うことができる。その結果、支持体31を取付面39に容易に組み付けることができる。
【0044】
図1を参照して、本実施形態のトルク検出装置16は、水、油等の浸入を確実に防止できる。その結果、電動パワーステアリング装置1の操舵トルクが正確に検出されるので、操舵補助力が正確に得られ、ひいては操舵感の違和感が発生することが抑制される。従って、電動パワーステアリング装置1の操舵感を高めることができる。トルク検出装置16が自動車の乗員室91の外に配置される場合には、水、油等がハウジング22に付着し易い。しかし、本実施形態の取付構造32は、水、油等の浸入を確実に防止できる。
【0045】
また、以下の変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。
例えば、図7は、第2の実施形態のトルク検出装置74とその取付構造76の要部を拡大した断面図であり、周辺部分を模式的に図示している。本実施形態のトルク検出装置74の支持体75は、合成樹脂部材77と、金属部材78とを有している。合成樹脂部材77の対向面64と、金属部材78の対向面65の一部とが、ハウジング22の取付面39の当接面40に当接している。対向面64,65の境界79は、収容溝35を外側から取り囲んでいる。なお、トルク検出装置74と、支持体75と、合成樹脂部材77と、金属部材78とは、上記の点を除いて、トルク検出装置16と、支持体31と、合成樹脂部材55と、金属部材56と同様である。また、以下の各変形例を、その都度説明はしないが、取付構造76に適用することもできる。
【0046】
上述の各実施形態において、金属部材56に代えて、ステンレス鋼により形成された金属部材(図示せず)を用いてもよい。ステンレス鋼は錆や腐食に強いので、ステンレス鋼製の金属部材の対向面は劣化し難い。その結果、この対向面の劣化に起因したOリング34の封止性の低下の虞がない。また、オーステナイト系のステンレス鋼の線膨張係数は、アルミニウム合金の線膨張係数に近似した値である。従って、オーステナイト系ステンレス鋼製の金属部材は、アルミニウム合金製の金属部材56と同様に、Oリング34の封止性を高くできる。
【0047】
また、上述の各実施形態において、トルク検出装置16の固定側ユニット29の検出部の全体が挿入孔37に通される場合も考えられる。また、合成樹脂部材55および金属部材56の起伏部を廃止する場合も考えられる。また、Oリング34が、支持体31の凹部により形成された収容溝に収容されてもよい。Oリング34が、ハウジング22の凹部と支持体31の凹部とにより形成された収容溝に収容されてもよい。また、固定部材として、ボルトと、このボルトにねじ嵌合する雌ねじ部材としてのナットとが用いられてもよい。また、固定側ユニット29が、互いに連結された2つのユニット(図示せず)により構成されてもよい。また、永久磁石43が出力軸24に固定され、且つ第1および第2の磁気ヨーク44,45が入力軸23に固定される場合も考えられる。また、トルク検出装置16の取付構造32が操舵機構5に代えてステアリングコラム7に適用される場合も考えられる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態のトルク検出装置の取付構造が適用された電動パワーステアリング装置の模式図である。
【図2】図1のトルク検出装置とその取付構造の断面図である。
【図3】図1のトルク検出装置とその取付構造の一部を切り欠いた分解斜視図である。
【図4】図2のトルク検出装置とその取付構造の要部拡大図である。
【図5】図4に示すV−V線に沿う断面図である。
【図6】図4の取付構造の要部拡大図である。
【図7】第2の実施形態のトルク検出装置の取付構造の要部を拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0049】
16,74…トルク検出装置、22…ハウジング、31,75…支持体、32,76…取付構造、34…Oリング(封止部材)、35…収容溝、36…周壁、37…挿入孔、38…開口、39…取付面、47…第1の集磁リング(検出部)、48…第2の集磁リング(検出部)、49…第1の磁気センサ(検出部)、50…第2の磁気センサ(検出部)、51…回路基板(検出部)、52…環状部(検出部の一部)、55,77…合成樹脂部材、56,78…金属部材、64…(合成樹脂部材の)対向面、65…(金属部材の)対向面、66…境界、68…凸部(起伏部)、Y…脱落方向、Y1…交差する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金属製のハウジングと、このハウジングに取り付けられたトルク検出装置とを備え、
上記ハウジングは、周壁と、この周壁に形成された挿入孔と、この挿入孔の開口の周囲に設けられた取付面とを含み、
上記トルク検出装置は、上記挿入孔内に少なくとも一部が挿入される検出部と、この検出部を支持する支持体とを含み、
この支持体は、絶縁性の合成樹脂部材と、上記取付面に対向する対向面を有する金属部材とを含み、
上記取付面および上記金属部材の上記対向面の間が、上記開口の周囲を取り囲む弾性を有する環状の封止部材によって封止されており、
この封止部材は、上記取付面および上記金属部材の上記対向面に接触していることを特徴とするトルク検出装置の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、上記ハウジングおよび支持体の間に、上記封止部材を収容する収容溝が形成され、上記合成樹脂部材は、上記取付面に対向する対向面を有し、上記合成樹脂部材の上記対向面および上記金属部材の上記対向面は、上記収容溝内に互いの境界を形成していることを特徴とするトルク検出装置の取付構造。
【請求項3】
請求項1または2において、上記ハウジングおよび上記金属部材が、線膨張係数の等しい材料により形成されていることを特徴とするトルク検出装置の取付構造。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項において、上記ハウジングおよび上記金属部材は、アルミニウム合金により形成されていることを特徴とするトルク検出装置の取付構造。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項において、上記金属部材は、当該金属部材が上記合成樹脂部材から所定の脱落方向に脱落することを防止するために合成樹脂部材と係合する起伏部を含み、この起伏部は、上記所定の脱落方向とは交差する方向に起伏していることを特徴とするトルク検出装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−162541(P2009−162541A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340176(P2007−340176)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)