トルク駆動回路
【課題】ゼロg不連続効果および不感帯を軽減するためのレギュレータ回路を含む、トルク駆動器を提供する。
【解決手段】レギュレータ回路は、トルク信号が、制御信号を同時に追跡するトルク信号を発生するのを防止することにより、ゼロg不連続効果および不感帯を軽減する。そうするために、レギュレータ回路は、調整バッファおよび/または調整器を含むことができる。左トルク信号および制御信号を受け取るように結合された差動入力100、104を備え、左トルク信号を出力するための左調整バッファ88と、右トルク信号および制御信号を受け取るように結合された差動入力92、96を備え、右トルク信号を出力するための右調整バッファ86と、を備え、左トルク信号は、左トルク信号と制御信号間の電圧差に相関的に対応し、右トルク信号は、右トルク信号と制御信号間の電圧差に相関的に対応する。
【解決手段】レギュレータ回路は、トルク信号が、制御信号を同時に追跡するトルク信号を発生するのを防止することにより、ゼロg不連続効果および不感帯を軽減する。そうするために、レギュレータ回路は、調整バッファおよび/または調整器を含むことができる。左トルク信号および制御信号を受け取るように結合された差動入力100、104を備え、左トルク信号を出力するための左調整バッファ88と、右トルク信号および制御信号を受け取るように結合された差動入力92、96を備え、右トルク信号を出力するための右調整バッファ86と、を備え、左トルク信号は、左トルク信号と制御信号間の電圧差に相関的に対応し、右トルク信号は、右トルク信号と制御信号間の電圧差に相関的に対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度計の分野に関し、より詳細にはMEMSベースの加速度計を動作させるための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府は、米国陸軍によって認められた契約番号DAAE30−01−9−0100に基づき本発明の特定の権利を有する。
加速度計は、慣性誘導システムから、最新の自動車のエアバッグ起動システムまで、ならびにその他多くの科学および工業システムに用いられる。一般に加速度計は、微小電気機械システム(MEMS)をベースとしており、数千gまでの範囲の様々な加速度検出で利用可能である。さらに、単軸、2軸、および3軸構成が利用可能である。MEMSベースの加速度計のプルーフマスビームは、単純な片持ち梁、またはマスの重心から変位された支点を有する二重複合片持ち梁(シーソー)を備えることができる。いずれのタイプのMEMSビームも、開ループまたは閉ループの加速度計システムで用いることができる。開ループおよび閉ループのシステムでは共に、MEMS機構は、プルーフマスビームの撓みを検出するための1つまたは複数の1組のプレートを含む。閉ループシステムでは、MEMS機構は、プルーフマスの位置を制御するために、さらに2つ以上の1組のプレートを含む。これらの「駆動」または「トルク」プレートは、引き合う静電力を用いて、プルーフマスを比較的固定の位置に保持するために用いられる。このような「再平衡」加速度計システムは、動作範囲が広く、検出された加速度のひずみが最小になる。
【0003】
加速度計が加速度を受けると、撓み検出回路は、変位または(たとえば片持ち梁における)撓みの小さな変化を測定する。次いで制御回路は、プルーフマスを再平衡化させ、撓みを最小にするように、制御すなわち「トルク」電圧を発生する。次いで、通常、トルク駆動回路は、必要な力を生ずるために、この電圧を正しいプレート(右または左)に切り替える。トルク駆動回路はまた、制御回路が低電圧で動作できるように、トルク電圧を増幅する。撓み検出回路によって連続的に帰還を受けるこの力は、加速度計を補正的に平衡化させる。補正力を与えるために使われる電圧信号の大きさは、加速度計が受ける加速度の大きさと方向を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
数mgより大きい正または負の加速度に対しては、大体において、この検出および平衡化の方式は有効である。しかし、加速度がゼロgに近づくにつれ、制御および駆動回路の小さなオフセットおよびノイズにより、測定された加速度に不感帯または急峻な不連続が生じ得る。これらの誤差は小さい(しばしば1〜100ミリgの範囲)が、スイッチングの結果作り出されるものである。たとえば正から負の加速度(またはその逆)への遷移は、無限大ループ利得またはゼロループ利得を生じる場合があり、共にその結果、制御ループの不安定性を含む様々な問題を生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、トルク駆動器が提案される。トルク駆動器はたとえば、加速度計内の平衡回路として用いることができ、ゼロg不連続効果を防止し、不感帯を大幅に低減することができる。例として、一実施例のトルク駆動器は、調整バッファを備える。調整バッファの出力ノードは、トルク信号を発生し、この信号は加速度計を物理的に駆動するのに用いることができる。調整バッファは、差動入力端において、たとえば制御回路から伝達されるトルク信号および制御信号を受け取る。動作において、トルク駆動器は、バッファを用いて、制御信号が所定の閾値よりも低下するとき、トルク信号が制御信号に追従するのを防止することにより、ゼロg不連続効果および/または不感帯を軽減する。
【0006】
追加の、または代替の実施例では、制御信号が電圧信号の場合、所定の閾値をゼロボルトとすることができる。構成に応じて、バッファは、制御信号が正または負のとき、トルク信号が制御信号に追従するのを防止することができる。
【0007】
他の実施例では、バッファは、トランジスタに結合された増幅器を含むことができる。増幅器およびトランジスタは、バッファの差動入力の両端に電圧差が生じるとき、トルク信号が電圧差の大きさに応じて増減するように構成することができる。しかし制御信号が所定の閾値より低いときは、トルク信号は接地電位など、固定または一定にすることができる。増幅器はさらに、増幅器に固有のオフセットを低減するためのオフセット信号を受け取るように構成することもできる。
【0008】
他の例示の駆動回路は、2つ以上の調整バッファを含むことができ、他の表記法(たとえば上および下、第1および第2など)も可能であるが、これらを左および右バッファと呼ぶ。実施例では、左および右バッファはそれぞれ、制御信号を受け取る。左および右バッファは、1つの時点ではバッファのうちの1つだけが制御信号に追従するように構成される。たとえば、制御信号が正のときは右バッファが制御信号を追跡することができ、制御信号が負のときは左バッファが制御信号を追跡することができる。
【0009】
他の例示のトルク駆動器は、レギュレータ回路を含むことができる。レギュレータ回路は、同時に2つのトルク信号が制御信号に追従するのを防止するように構成することができる。一実施例では、レギュレータ回路は、第1および第2のトルク信号のどちらが制御信号に追従すべきかを決定するための、スイッチまたは調整器を備える。調整器はさらに、制御信号に追従すべきトルク信号を選択するための選択器信号を受け取るように結合することができ、他方のトルク信号は固定の入力インピーダンスを有するバイアス信号に追従するように選択される。代替実施例では、レギュレータ回路は、調整バッファを備えることができる。
【0010】
上記その他の態様および利点は、当業者なら、添付の図面を適切に参照し、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。さらに、課題を解決するための手段に記載のものは、単に一例であって、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものでないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、加速度計の等角図である。図1Bは、一実施例による、加速度計内のプルーフマスビームを制御するために用いることができる撓み検出、制御、およびトルク駆動回路のブロック図である。
【図2】図2Aは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができる撓み信号を示すグラフである。図2Bは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができる制御信号を示すグラフである。図2Cは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができるトルク信号を示すグラフである。図2Dは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができる結果としての力を示すグラフである。
【図3A】一実施例による、「スイッチ」をベースとするトルク駆動器の概略図である。
【図3B】図3Aのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図3C】図3Aのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図3D】一実施例による、「スイッチ」をベースとするトルク駆動器の概略図である。
【図3E】図3Dのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図4】図4Aは、一実施例による、「調整バッファ」をベースとするトルク駆動器の概略図である。図4Bは、図4Aのトルク駆動器に関連する信号図である。図4Cは、図4Aのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図5】図5Aは、一実施例によるトルク駆動器によって発生されるトルク信号の変化を示すグラフである。図5Bは、一実施例によるトルク駆動器によって発生されるトルク信号の変化を示すグラフである。図5Cは、一実施例によるトルク駆動器によって発生される再平衡力の変化を示すグラフである。図5Dは、一実施例によるトルク駆動器によって発生されるトルク信号の変化を示すグラフである。図5Eは、一実施例によるトルク駆動器によって発生される再平衡力の変化を示すグラフである。
【図6】一実施例による、AC電圧信号を出力するように構成されたトルク駆動器の概略図である。
【図7】図7Aは、一実施例による、調整バッファ回路がプルーフマスビームの支点を駆動するように構成された調整バッファ回路の概略図である。図7Bは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。図7Cは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。図7Dは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。図7Eは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面では、様々な図において同じ参照番号は同じ要素を指しており、いくつかの実施例について、添付の図面に関連して以下に説明する。
a)加速度計
図面を参照すると、図1Aは、プルーフマスビーム12、支点14、検出パッド16、18、およびトルクパッド20、22を含む、加速度計10の等角図である。(ビーム12および支点14は、検出およびトルクパッドと共に、機構と呼ばれることに留意されるべきである。)ビーム12は、支点14から延びる片持ち梁24、26を含む。支点14は、片持ち梁24が検出パッド16およびトルクパッド20の上に延び、片持ち梁26が検出パッド18およびトルクパッド22の上に延びるように、基板28上に配置される。片持ち梁24は長さが片持ち梁26の約2倍であり、一方、検出パッド16、20およびトルクパッド20、22はそれぞれ支点14から等距離の間隔にある。片持ち梁24の追加の長さは「プルーフマス」として動作し、加速度を検出するために用いられる。
【0013】
ビーム12は、一般にはアルミニウムまたは銅などの金属から構成されるが、他の材料も可能である。支点14は同様に、金属または導電材料(すなわち結晶または多結晶シリコン)から構成することができる。基板28は、絶縁性でよく、ガラス(すなわちパイレックス)または二酸化シリコンなどの誘電体が含まれる。検出パッド16、18は、金属またはシリサイド材料から構成することができ、それぞれとビーム12の間の容量を測定するために撓み検出回路によって用いられ、バイアスまたは接地することができる。トルクパッド20、22も金属またはシリサイドであり、ビーム12を「平衡」させるためにトルク駆動回路によって用いられる。
【0014】
図1Bは、加速度計10に結合することができる回路を表すブロック図である。検出パッド16、18、および支点14は、線32〜34を介して撓み検出回路30に結合される。トルクパッド20、22は、線38、40を介してトルク駆動器36に結合される。トルク駆動器36は制御回路42に結合され、制御回路42は撓み検出回路30から撓み信号SAを受け取る。撓み信号SAは加速度に直接比例し、制御回路42は撓み信号SAを用いて制御信号VTQRを発生し、制御信号VTQRはトルク駆動器36に伝達される。
【0015】
動作においては、撓み検出回路30は増幅器を含むことができ、この増幅器は適当に高い発振周波数の発振電圧出力を発生する。容量を検出するのに適した発振器は、一般に1〜10kHzの範囲にある片持ち梁24、26の機械的共振よりも高い周波数で動作するべきである。撓み検出回路30は、検出パッド16、18のそれぞれに電圧波形(たとえば方形波)を伝達する。波形は同一であるが、180°逆位相とすることができる。2つの波形が180°離れていれば、片持ち梁が平衡しているとき、信号線34はゼロボルトの電圧を有する。しかし、片持ち梁24、26のいずれかが撓むと、支点14に波形が発生し、信号線34を通して撓み検出回路30に伝達される。このような波形の位相は、加速度の方向を示すものとして働く。それに応じて、撓み検出回路30は、加速度信号SAを発生する。加速度信号SAは、容量の差と相関関係にあり、信号線34から供給される「生の」信号、または生の信号を加工したものでもよく、制御信号VTQRを発生するために制御回路42によって処理される。
【0016】
b)プルーフマスの平衡化
トルク駆動器36は、制御信号VTQRを受け取ると、トルク信号VLEFTおよびVRIGHTを発生し、これらの信号は、ビーム12がゼロg近くの位置すなわち「静止」位置になるように、ビーム12を再平衡化させるのに用いられる。再平衡電圧の静電力は、印加された加速度を打ち消すので、加速度計10に加えられた加速度を示している。ビーム12は、片持ち梁24、26の少なくとも1つを、基板28の方向へ「引き寄せる」ことによって平衡化される。「引寄せ」は、ビーム12とトルクパッドの間に電圧差を生成することによって得られる。電圧差により、片持ち梁24、26のいずれにも働く静電力(FLEFTおよびFRIGHTとして示される)が生成される。正および負電位は共に、片持ち梁を基板28の方向に引き寄せることになることに留意されたい。
【0017】
たとえば、正の加速度が、片持ち梁26を基板28から遠ざけ、片持ち梁24を基板28に近づける場合は、トルクパッド22の電圧信号が、片持ち梁26を基板28へ引き寄せ、片持ち梁24を基板28から引き離すことになる。トルクパッド22の電圧信号は、撓み信号SAが、ビーム12が平衡化されたことを示すまで増加させることができる。加速度が負になる場合は、トルクパッド20に電圧を印加することができ、この電圧は、同様に片持ち梁24を基板28へ引き寄せ、片持ち梁26を基板28から引き離すために用いることができる。
【0018】
ビーム12に印加される正味の力は、次のように、印加されるトルク電圧の関数である。
F=m×A=(C/d)×[VLEFT2−VRIGHT2]
ただし、VLEFTはトルクパッド20に印加された電圧、VRIGHTはトルクパッド22に印加された電圧、Cおよびdは、それぞれ、ビーム12と基板28の間の容量および間隔である。上式は、検出パッド20、22の容量または面積は等しく、支点14から等距離であると仮定している。上式はさらに、検出パッド20、22は共にビーム12から等距離であり、間隔dは一定であると仮定している。力および加速度ベクトルFおよびAは、反対の方向に定義される。同様に、質量mは、片持ち梁24、26のそれぞれに関連する質量の差として定義される。
【0019】
ビーム12に印加されるトルクを最大にする(すなわちビーム12を効率的に平衡化する)ためには、一時にトルクパッド20、22のうちの1つだけが電圧を受けるべきである。すなわち、トルクパッド20に電圧が印加されるときは、トルクパッド22に電圧が印加されるべきではない(その逆も同様である)。図2A〜Dは、撓み信号、制御信号、トルク電圧、およびビーム12に印加される再平衡力を示すグラフの例である。
【0020】
図2Aは、加速度による、プルーフマスの実際の撓みを示す。一次として、これは30の出力にSA信号を発生する。図2Bは、ビーム12が正または負(−gから+gの範囲)に加速されたときに、その結果生成される制御信号VTQRを示す。加速度の大きさが増加するにつれて、制御信号VTQRの大きさが増加する。理想的には、原点(すなわちゼロg)で、制御信号VTQRはゼロである。制御信号は、上述の式によれば、加速度入力の大きさの平方根に比例することに留意されたい。
【0021】
図2Cは、図2Bに示されるような制御信号VTQRに応答して発生される、2つのトルクプレート電圧の例を示す。制御信号VTQRの大きさが増加するにつれて、トルク信号も同様に増加する。同様に、制御信号VTQRの大きさが減少(すなわち図2Bの原点の方向へ移動)するにつれて、トルクパッド22に印加されるトルク信号(VRIGHT)は、同様に減少することによって制御信号VTQRに追従する。図2Cは、2つの電圧を1つのグラフに組み合わせていることに留意されたい。g>0の値に対してはVLEFT=0であり、g<0の値に対してはVRIGHT=0である。トルク信号の1つの目的は、ビーム12に、印加された加速度と大きさがほぼ等しく方向が反対の、線形な再平衡力すなわち「トルク」を発生することである。図2Dは、ビーム12に印加される、総計の再平衡力を示す。
【0022】
図2Cグラフの原点では、約ゼロgであり、トルク駆動器36はトルクパッド20、22に印加される電圧を切り替える。たとえば加速度が負から正に増加する場合は、トルク信号はトルクパッド22に印加され、トルクパッド20には印加されないことになる。あるいは、加速度が正から負に減少する場合は、トルク信号はトルクパッド20に印加され、トルクパッド22には印加されないことになる。トルク駆動器36は、一時に、トルク信号VLEFTまたはVRIGHTの1つだけが加速度に追従することを可能にするレギュレータ回路を含むことが有利である。そうすることにより特にゼロgで、トルク駆動器36は、ゼロg不連続効果および/または不感帯が、トルク信号ならびに印加される力FLEFT+FRIGHT(図2D参照)に影響を及ぼすのを防止する。
【0023】
c)「スイッチ」をベースとするトルク駆動器
図3Aは、トルク信号VLEFTおよびVRIGHTが同時に、制御信号VTQRなどの制御信号に追従するのを防止するように構成された、「スイッチ」をベースとするトルク駆動器50のブロック図を示す。トルク駆動器50は、増幅器59から、(信号線56、58を通して)トルク信号VTQRおよびトルク信号VTQRの反転を受け取るように結合された、スイッチ52、54を含む。スイッチ52、54は、比較器62を含むスイッチ駆動器60に結合され、比較器62は、制御信号のうちの1つ(すなわち、VTQRまたはVTQRの反転)だけがトルク信号を発生するように、スイッチ52、54をトグルする。たとえば制御信号VTQRが、0〜15ボルトの範囲にある場合、比較器62はスイッチ52を閉路させる(かつスイッチ54を開路のままとする)出力を発生することができる。この場合、VRIGHTのトルク信号は、制御信号VTQRに追従することができる。これに対して、VTQRが−15〜0ボルトの範囲にある場合、比較器62はスイッチ54を閉路させ(かつスイッチ52は開路のままとし)、VLEFTのトルク信号を制御信号VTQRの反転に追従させることができる。図3Bは、トルク駆動器50を用いて発生される、トルク電圧のグラフである。
【0024】
この技法の変形形態として、スイッチ52および54の両方を、増幅器59の非反転出力56に接続することができる。この場合、2つのトルク電圧出力は、図3Cに示されるようになる。両技法は、プルーフマスに同じ力を印加するので等価である。増幅器59は、抵抗器(図示せず)の構成によって決定される固定利得をもつことができることを理解されたい。
【0025】
図3Dは、トルク信号VLEFTおよびVRIGHTが同時に制御信号に追従するのを防止するように構成された、他の「スイッチ」をベースとするトルク駆動器70のブロック図である。トルク駆動器70は、それぞれ信号線74、76に印加されたトルク信号およびバイアス信号を受け取るように結合された、2×2のクロスポイントスイッチすなわち調整器72を含む。スイッチ72は、スイッチ駆動器78に入力される選択信号TQR_SIGNが、2つの信号線80、82のどちらがトルク信号を出力するか、および信号線80、82のどちらがバイアス信号を出力するかをトグルできるように構成される。この実施例では、制御信号VTRQは約0〜15ボルトの範囲とすることができる。加速度がゼロgを横切るとき、それに応じて選択信号はトルク信号をトグルすることができる。図3Eは、トルク駆動器70によって発生することができるトルク信号のグラフを示す。
【0026】
d)「調整バッファ」をベースとするトルク駆動器
「スイッチ」をベースとするトルク駆動器50の代替形態は、図4Aに示される「調整バッファ」をベースとするトルク駆動器84である。「スイッチ」をベースとするトルク駆動器70と異なり、トルク駆動器84は、0Vでのゼロgクロスオーバを有することができ、それにより選択信号の必要性をなくすことができる。スイッチ72の代わりに、調整バッファはトルク信号が制御信号を追従するのを抑止する。特に、加速度信号が所定の閾値より低下するとき、調整バッファは接地信号などの一定のバイアスを出力する。
【0027】
トルク駆動器84は、1対の調整バッファ86、88を含む。バッファ86は、差動入力増幅器90を含む。差動入力増幅器90の端子92は、出力ノード94に結合される。差動入力増幅器90の別の端子96は、制御信号VTRQを受け取るように結合される。同様に、バッファ88は、出力ノード102に結合された端子100、および制御信号VTRQを受け取るように結合された別の端子104を有する、差動入力増幅器98を含む。図4Bは、負の加速度(−g)から正の加速度(+g)の範囲の、制御信号VTRQを示すグラフである。
【0028】
図4Cは、トルク駆動器84によって生成されるトルク信号のグラフを示し、この信号は制御信号VTRQに応答する。加速度計が負の加速度を受けると、調整バッファ88は、制御信号VTRQに追従する電圧信号VLEFTを、出力ノード102に生成する。負の加速度のときは、出力ノード94の電圧(VRIGHT)は、一定のバイアス(たとえばゼロボルト)となる。しかし、加速度が正のときは、バッファ88は出力ノード102に一定のバイアスを出力し、バッファ86は制御信号VTRQに追従し始め、制御信号VTRQに追従する電圧信号VRIGHTを発生する。バッファ86、88は、一時に、1つの増幅器だけが制御信号VTRQに追従するように構成される。
【0029】
こうするためにバッファ86は、p型電界効果トランジスタ(PFET)に結合された増幅器を備える。一方、バッファ88は、n型FET(NFET)に結合された増幅器を備える。入力ノード96の電圧が負のときは、バッファ86内の増幅器はPFETをオフにし、ゼロボルトの一定バイアスが抵抗器によって発生される。同様に、入力ノード104の電圧が正のときは、バッファ88内の増幅器はNFETをオフにし、ゼロボルトの一定バイアスが発生される。
【0030】
どのようなトルク駆動回路を実現する場合でも、左出力から右出力への切替えが、ゼロボルトまたはできるだけゼロボルトの近くで生ずることを考慮することが重要である。図3Aの回路では、比較器62の入力オフセット電圧によって制限を受け、増幅器59のオフセットによってさらに悪化し得る。最悪の場合、これら2つのオフセットは加え合わされ、出力が切り替わるとき、g=0にてそれらのオフセット電圧の和に等しい不連続を生じ得る。しかし図4Aの回路では、2つの調整バッファ86、88の「実効切替えポイント」は、両方が整合している限り重要ではない。したがって、出力が切り替わるときに生じ得る不連続または不感帯の最大値は、比較器90と98のオフセット電圧の差に等しい。これは、同じ半導体基板上の整合した増幅器を用いることにより、図3Aの回路によって発生されるものより、少なくとも1桁小さくすることができる。望むなら、この影響は、いくつかの任意の技法を用い、増幅器90、98の1つまたは両方のオフセットを調整することによってさらに低減することができる。
【0031】
さらに、図4Aの調整バッファ86、88は、図3Aおよび3Cの回路が発生するような形の真のゼロg不連続は生じ得ない。このことは、図5A〜Eのグラフによって示される。たとえば図4Cは、増幅器90、98の両方のDCオフセットがゼロのときの、図4Aの調整バッファ回路の左および右出力の公称伝達曲線を示す。増幅器90、98の両方が等しい正の入力オフセット電圧を有する場合は、この1組の曲線はそのオフセット電圧だけ右にシフトされることになる。同様に、両方が等しい負のオフセット電圧を有する場合は、図4Cの曲線はそのオフセット電圧だけ左へシフトされることになる。次に、増幅器90、98の2つのオフセット電圧が等しくないときに何が起こるかを考える。図5Aは、増幅器90が正のオフセットを有し、増幅器98が負のオフセットを有する場合に、何が起こるかを示している。ここでVRIGHTは右にシフトされ、VLEFTは左にシフトされる。ゼロ付近に、VRIGHTおよびVLEFTが共にゼロとなる領域があることに留意されたい。2つの曲線がオーバーラップする、この「不感帯」領域の幅は、単に2つのオフセット電圧の差をとることによって求めることができる。図5Bは、それぞれの役割が逆のとき、すなわち増幅器90が負のオフセットを有し、増幅器98が正のオフセットを有するときに、何が起こるかを示す。ここでVRIGHTは左にシフトされ、VLEFTは右にシフトされる。ゼロ付近に、VRIGHTおよびVLEFTが共にゼロでない領域があることに留意されたい。2つの曲線がオーバーラップしない「ギャップ」領域の幅も、単に2つのオフセット電圧の差をとることによって求めることができる。しかし図5Cに示されるように、これは結果として、プルーフマスに印加される正味の力に重大な不連続を生じない。その代わり、この領域内の力対加速度曲線の傾きは、この領域外の傾きの2倍となる。一方、図3Aの回路で、増幅器59のオフセットが適切に補償されない場合に生じ得る、1つの起こり得るタイプの不連続を示す図5Dの曲線について考える。ここでは、増幅器59は正のオフセットを有し、比較器62はオフセットがない。不連続における、この曲線の無限大の傾きに留意されたい。このタイプの不連続は、機械的発振を誘起し得るので、有害となり得る。図5Eは、関連する力対加速度曲線上に結果として生ずるg=0における不連続による、ばらばらな傾きを示す。
【0032】
e)ビルディングブロックとしての「調整バッファ」
上述の調整バッファおよび/またはスイッチは、所望のトルク駆動器を実現するために、様々な構成で用いることができる。図6は、1組のACトルク信号VRIGHT−U、VRIGHT−D、VLEFT−D、VLEFT−Uを出力する、一実施例のトルク駆動器110を示す。トルク駆動器50、70、84と異なり、トルク駆動器110は、支点の左側および右側両方の上部および下部トルクプレートに、ACトルク信号を出力するように構成される。ACトルク印加は、たとえばSiO2基板でなく、パイレックス基板上に組み立てられたセンサを駆動する場合に必要となり得る。これは、長い時間にトルクプレートへのDCオフセット誤差のように働く、「パイレックス荷電」効果による。ACトルク印加はまた、機構のトルクプレートにトルク電圧を容量性で結合することが可能になり、それにより駆動回路内のDCオフセット電圧の影響を除去することができる。トルク駆動器110は、調整バッファ112、114、およびクロスポイントスイッチ116、118を含む。バッファ112、114は、制御信号VTRQを受け取る。スイッチ116、118は、TQR_COM入力に印加された方形波の制御の下で、バッファ112、114の出力をクロスすなわち切り替えるように構成される。適切な動作のためには、このAC調整の周波数は、機械振動および関連する振動修正誤差を防止するために、機構の固有振動周波数より高くすべきである。
【0033】
f)支点に結合された「調整バッファ」
図7Aに他の構成が示され、ここで1対の調整バッファ回路120、122は共通の抵抗器124によって互いに結合され、プルーフマスを能動的に駆動するのに用いられる。このようにして、トルクプレートとプルーフマスの両方が同時に駆動され、それにより、図7B〜Eに示されるように、所与の電源電圧に対して2倍の電位差を得ることができる。電圧駆動を2倍にすることにより、プルーフマスを再平衡する力は4倍になる。たとえば、+15ボルトおよび−15ボルト電源を有する任意の以前のトルク駆動回路によって駆動した場合に、所与の機構が±70gの範囲を有すると仮定する。図7Aの回路で駆動すると、この同じ機構の範囲は±280gとなる。
【0034】
この回路の2つの調整バッファは、2つのトルクプレート電圧VRIGHTおよびVLEFTの低い方を有効にバッファリングすることにより、VPM電圧を発生する(図7D)。(電圧VPMは、MEMS機構のプルーフマスに供給される。)VRIGHT<VLEFTのときは、右調整バッファ回路122がアクティブとなり、VRIGHT>VLEFTのときは、左調整バッファ回路120がアクティブとなる。また、2つのトルクプレート電圧の高い方のVPM電圧を発生するには、負の調整バッファではなく正の調整バッファを用いることができることに留意すべきである。どちらの場合も、プルーフマスへの正味の力は同じである。プルーフマスをこのように駆動することにより、差動増幅器のオフセット電圧は、駆動誤差には寄与しない。さらに、2つの調整バッファ120、122のオフセット電圧も、駆動誤差には寄与しない。しかし、2つの調整バッファのオフセット電圧の差すなわち不整合は、駆動誤差に寄与する。上述のように、これは、実際のオフセット電圧よりも1桁小さくすることができる。
【0035】
g)結論
以上、様々な実施例について説明してきた。より一般に、当業者には、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、これらの実施例を変更および修正できることが理解されよう。すなわち、たとえば図1Aに示される加速度計は、様々な構造を有することができ、図示の素子だけを含むものと限定されない加速度計は、より多いまたはより少ない、検出またはトルクパッドを含むことができる。また素子の命名法またはラベル付けは、限定するものとみなすべきではない。たとえばいくつかの検出およびトルクパッドの説明に、「左」または「右」のラベルが用いられる。これらのラベルは、「上」または「下」、「第1」または「第2」などに適切に置き換えることができる。さらに、検出および/またはトルクパッドは、様々な形に構成することができ、加速度計内の機構または片持ち梁は、具体的な用途向けに設計または適合させることができる。たとえば機構は、面内および面外構造を共に含むことができる。
【0036】
また、制御回路から受け取られ、トルクパッドに伝達される信号のタイプは、極めて多様となり得る。信号の範囲も、多様となり得る。いくつかの実施例では、トルク信号に対する好ましい電圧範囲は±15Vである。しかし、トルク駆動器の構成に応じて、様々な出力電圧の範囲が可能である。さらに、静電的な電位は出力電圧信号の正負符号には依存しないので、いくつかの実施例では、正および負電圧は、互換可能である
したがって本発明の説明は、例示としてのみであり、当業者に本発明を実施するための最良の形態を教示するためのものと解釈すべきである。詳細は、本発明の趣旨から逸脱することなく大幅に変更することができ、添付の特許請求の範囲内のすべての変更形態の専用を留保する。
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度計の分野に関し、より詳細にはMEMSベースの加速度計を動作させるための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府は、米国陸軍によって認められた契約番号DAAE30−01−9−0100に基づき本発明の特定の権利を有する。
加速度計は、慣性誘導システムから、最新の自動車のエアバッグ起動システムまで、ならびにその他多くの科学および工業システムに用いられる。一般に加速度計は、微小電気機械システム(MEMS)をベースとしており、数千gまでの範囲の様々な加速度検出で利用可能である。さらに、単軸、2軸、および3軸構成が利用可能である。MEMSベースの加速度計のプルーフマスビームは、単純な片持ち梁、またはマスの重心から変位された支点を有する二重複合片持ち梁(シーソー)を備えることができる。いずれのタイプのMEMSビームも、開ループまたは閉ループの加速度計システムで用いることができる。開ループおよび閉ループのシステムでは共に、MEMS機構は、プルーフマスビームの撓みを検出するための1つまたは複数の1組のプレートを含む。閉ループシステムでは、MEMS機構は、プルーフマスの位置を制御するために、さらに2つ以上の1組のプレートを含む。これらの「駆動」または「トルク」プレートは、引き合う静電力を用いて、プルーフマスを比較的固定の位置に保持するために用いられる。このような「再平衡」加速度計システムは、動作範囲が広く、検出された加速度のひずみが最小になる。
【0003】
加速度計が加速度を受けると、撓み検出回路は、変位または(たとえば片持ち梁における)撓みの小さな変化を測定する。次いで制御回路は、プルーフマスを再平衡化させ、撓みを最小にするように、制御すなわち「トルク」電圧を発生する。次いで、通常、トルク駆動回路は、必要な力を生ずるために、この電圧を正しいプレート(右または左)に切り替える。トルク駆動回路はまた、制御回路が低電圧で動作できるように、トルク電圧を増幅する。撓み検出回路によって連続的に帰還を受けるこの力は、加速度計を補正的に平衡化させる。補正力を与えるために使われる電圧信号の大きさは、加速度計が受ける加速度の大きさと方向を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
数mgより大きい正または負の加速度に対しては、大体において、この検出および平衡化の方式は有効である。しかし、加速度がゼロgに近づくにつれ、制御および駆動回路の小さなオフセットおよびノイズにより、測定された加速度に不感帯または急峻な不連続が生じ得る。これらの誤差は小さい(しばしば1〜100ミリgの範囲)が、スイッチングの結果作り出されるものである。たとえば正から負の加速度(またはその逆)への遷移は、無限大ループ利得またはゼロループ利得を生じる場合があり、共にその結果、制御ループの不安定性を含む様々な問題を生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、トルク駆動器が提案される。トルク駆動器はたとえば、加速度計内の平衡回路として用いることができ、ゼロg不連続効果を防止し、不感帯を大幅に低減することができる。例として、一実施例のトルク駆動器は、調整バッファを備える。調整バッファの出力ノードは、トルク信号を発生し、この信号は加速度計を物理的に駆動するのに用いることができる。調整バッファは、差動入力端において、たとえば制御回路から伝達されるトルク信号および制御信号を受け取る。動作において、トルク駆動器は、バッファを用いて、制御信号が所定の閾値よりも低下するとき、トルク信号が制御信号に追従するのを防止することにより、ゼロg不連続効果および/または不感帯を軽減する。
【0006】
追加の、または代替の実施例では、制御信号が電圧信号の場合、所定の閾値をゼロボルトとすることができる。構成に応じて、バッファは、制御信号が正または負のとき、トルク信号が制御信号に追従するのを防止することができる。
【0007】
他の実施例では、バッファは、トランジスタに結合された増幅器を含むことができる。増幅器およびトランジスタは、バッファの差動入力の両端に電圧差が生じるとき、トルク信号が電圧差の大きさに応じて増減するように構成することができる。しかし制御信号が所定の閾値より低いときは、トルク信号は接地電位など、固定または一定にすることができる。増幅器はさらに、増幅器に固有のオフセットを低減するためのオフセット信号を受け取るように構成することもできる。
【0008】
他の例示の駆動回路は、2つ以上の調整バッファを含むことができ、他の表記法(たとえば上および下、第1および第2など)も可能であるが、これらを左および右バッファと呼ぶ。実施例では、左および右バッファはそれぞれ、制御信号を受け取る。左および右バッファは、1つの時点ではバッファのうちの1つだけが制御信号に追従するように構成される。たとえば、制御信号が正のときは右バッファが制御信号を追跡することができ、制御信号が負のときは左バッファが制御信号を追跡することができる。
【0009】
他の例示のトルク駆動器は、レギュレータ回路を含むことができる。レギュレータ回路は、同時に2つのトルク信号が制御信号に追従するのを防止するように構成することができる。一実施例では、レギュレータ回路は、第1および第2のトルク信号のどちらが制御信号に追従すべきかを決定するための、スイッチまたは調整器を備える。調整器はさらに、制御信号に追従すべきトルク信号を選択するための選択器信号を受け取るように結合することができ、他方のトルク信号は固定の入力インピーダンスを有するバイアス信号に追従するように選択される。代替実施例では、レギュレータ回路は、調整バッファを備えることができる。
【0010】
上記その他の態様および利点は、当業者なら、添付の図面を適切に参照し、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。さらに、課題を解決するための手段に記載のものは、単に一例であって、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものでないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、加速度計の等角図である。図1Bは、一実施例による、加速度計内のプルーフマスビームを制御するために用いることができる撓み検出、制御、およびトルク駆動回路のブロック図である。
【図2】図2Aは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができる撓み信号を示すグラフである。図2Bは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができる制御信号を示すグラフである。図2Cは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができるトルク信号を示すグラフである。図2Dは、一実施例による、プルーフマスビームに適用することができる結果としての力を示すグラフである。
【図3A】一実施例による、「スイッチ」をベースとするトルク駆動器の概略図である。
【図3B】図3Aのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図3C】図3Aのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図3D】一実施例による、「スイッチ」をベースとするトルク駆動器の概略図である。
【図3E】図3Dのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図4】図4Aは、一実施例による、「調整バッファ」をベースとするトルク駆動器の概略図である。図4Bは、図4Aのトルク駆動器に関連する信号図である。図4Cは、図4Aのトルク駆動器に関連する信号図である。
【図5】図5Aは、一実施例によるトルク駆動器によって発生されるトルク信号の変化を示すグラフである。図5Bは、一実施例によるトルク駆動器によって発生されるトルク信号の変化を示すグラフである。図5Cは、一実施例によるトルク駆動器によって発生される再平衡力の変化を示すグラフである。図5Dは、一実施例によるトルク駆動器によって発生されるトルク信号の変化を示すグラフである。図5Eは、一実施例によるトルク駆動器によって発生される再平衡力の変化を示すグラフである。
【図6】一実施例による、AC電圧信号を出力するように構成されたトルク駆動器の概略図である。
【図7】図7Aは、一実施例による、調整バッファ回路がプルーフマスビームの支点を駆動するように構成された調整バッファ回路の概略図である。図7Bは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。図7Cは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。図7Dは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。図7Eは、図7Aの調整バッファ回路に関連する信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面では、様々な図において同じ参照番号は同じ要素を指しており、いくつかの実施例について、添付の図面に関連して以下に説明する。
a)加速度計
図面を参照すると、図1Aは、プルーフマスビーム12、支点14、検出パッド16、18、およびトルクパッド20、22を含む、加速度計10の等角図である。(ビーム12および支点14は、検出およびトルクパッドと共に、機構と呼ばれることに留意されるべきである。)ビーム12は、支点14から延びる片持ち梁24、26を含む。支点14は、片持ち梁24が検出パッド16およびトルクパッド20の上に延び、片持ち梁26が検出パッド18およびトルクパッド22の上に延びるように、基板28上に配置される。片持ち梁24は長さが片持ち梁26の約2倍であり、一方、検出パッド16、20およびトルクパッド20、22はそれぞれ支点14から等距離の間隔にある。片持ち梁24の追加の長さは「プルーフマス」として動作し、加速度を検出するために用いられる。
【0013】
ビーム12は、一般にはアルミニウムまたは銅などの金属から構成されるが、他の材料も可能である。支点14は同様に、金属または導電材料(すなわち結晶または多結晶シリコン)から構成することができる。基板28は、絶縁性でよく、ガラス(すなわちパイレックス)または二酸化シリコンなどの誘電体が含まれる。検出パッド16、18は、金属またはシリサイド材料から構成することができ、それぞれとビーム12の間の容量を測定するために撓み検出回路によって用いられ、バイアスまたは接地することができる。トルクパッド20、22も金属またはシリサイドであり、ビーム12を「平衡」させるためにトルク駆動回路によって用いられる。
【0014】
図1Bは、加速度計10に結合することができる回路を表すブロック図である。検出パッド16、18、および支点14は、線32〜34を介して撓み検出回路30に結合される。トルクパッド20、22は、線38、40を介してトルク駆動器36に結合される。トルク駆動器36は制御回路42に結合され、制御回路42は撓み検出回路30から撓み信号SAを受け取る。撓み信号SAは加速度に直接比例し、制御回路42は撓み信号SAを用いて制御信号VTQRを発生し、制御信号VTQRはトルク駆動器36に伝達される。
【0015】
動作においては、撓み検出回路30は増幅器を含むことができ、この増幅器は適当に高い発振周波数の発振電圧出力を発生する。容量を検出するのに適した発振器は、一般に1〜10kHzの範囲にある片持ち梁24、26の機械的共振よりも高い周波数で動作するべきである。撓み検出回路30は、検出パッド16、18のそれぞれに電圧波形(たとえば方形波)を伝達する。波形は同一であるが、180°逆位相とすることができる。2つの波形が180°離れていれば、片持ち梁が平衡しているとき、信号線34はゼロボルトの電圧を有する。しかし、片持ち梁24、26のいずれかが撓むと、支点14に波形が発生し、信号線34を通して撓み検出回路30に伝達される。このような波形の位相は、加速度の方向を示すものとして働く。それに応じて、撓み検出回路30は、加速度信号SAを発生する。加速度信号SAは、容量の差と相関関係にあり、信号線34から供給される「生の」信号、または生の信号を加工したものでもよく、制御信号VTQRを発生するために制御回路42によって処理される。
【0016】
b)プルーフマスの平衡化
トルク駆動器36は、制御信号VTQRを受け取ると、トルク信号VLEFTおよびVRIGHTを発生し、これらの信号は、ビーム12がゼロg近くの位置すなわち「静止」位置になるように、ビーム12を再平衡化させるのに用いられる。再平衡電圧の静電力は、印加された加速度を打ち消すので、加速度計10に加えられた加速度を示している。ビーム12は、片持ち梁24、26の少なくとも1つを、基板28の方向へ「引き寄せる」ことによって平衡化される。「引寄せ」は、ビーム12とトルクパッドの間に電圧差を生成することによって得られる。電圧差により、片持ち梁24、26のいずれにも働く静電力(FLEFTおよびFRIGHTとして示される)が生成される。正および負電位は共に、片持ち梁を基板28の方向に引き寄せることになることに留意されたい。
【0017】
たとえば、正の加速度が、片持ち梁26を基板28から遠ざけ、片持ち梁24を基板28に近づける場合は、トルクパッド22の電圧信号が、片持ち梁26を基板28へ引き寄せ、片持ち梁24を基板28から引き離すことになる。トルクパッド22の電圧信号は、撓み信号SAが、ビーム12が平衡化されたことを示すまで増加させることができる。加速度が負になる場合は、トルクパッド20に電圧を印加することができ、この電圧は、同様に片持ち梁24を基板28へ引き寄せ、片持ち梁26を基板28から引き離すために用いることができる。
【0018】
ビーム12に印加される正味の力は、次のように、印加されるトルク電圧の関数である。
F=m×A=(C/d)×[VLEFT2−VRIGHT2]
ただし、VLEFTはトルクパッド20に印加された電圧、VRIGHTはトルクパッド22に印加された電圧、Cおよびdは、それぞれ、ビーム12と基板28の間の容量および間隔である。上式は、検出パッド20、22の容量または面積は等しく、支点14から等距離であると仮定している。上式はさらに、検出パッド20、22は共にビーム12から等距離であり、間隔dは一定であると仮定している。力および加速度ベクトルFおよびAは、反対の方向に定義される。同様に、質量mは、片持ち梁24、26のそれぞれに関連する質量の差として定義される。
【0019】
ビーム12に印加されるトルクを最大にする(すなわちビーム12を効率的に平衡化する)ためには、一時にトルクパッド20、22のうちの1つだけが電圧を受けるべきである。すなわち、トルクパッド20に電圧が印加されるときは、トルクパッド22に電圧が印加されるべきではない(その逆も同様である)。図2A〜Dは、撓み信号、制御信号、トルク電圧、およびビーム12に印加される再平衡力を示すグラフの例である。
【0020】
図2Aは、加速度による、プルーフマスの実際の撓みを示す。一次として、これは30の出力にSA信号を発生する。図2Bは、ビーム12が正または負(−gから+gの範囲)に加速されたときに、その結果生成される制御信号VTQRを示す。加速度の大きさが増加するにつれて、制御信号VTQRの大きさが増加する。理想的には、原点(すなわちゼロg)で、制御信号VTQRはゼロである。制御信号は、上述の式によれば、加速度入力の大きさの平方根に比例することに留意されたい。
【0021】
図2Cは、図2Bに示されるような制御信号VTQRに応答して発生される、2つのトルクプレート電圧の例を示す。制御信号VTQRの大きさが増加するにつれて、トルク信号も同様に増加する。同様に、制御信号VTQRの大きさが減少(すなわち図2Bの原点の方向へ移動)するにつれて、トルクパッド22に印加されるトルク信号(VRIGHT)は、同様に減少することによって制御信号VTQRに追従する。図2Cは、2つの電圧を1つのグラフに組み合わせていることに留意されたい。g>0の値に対してはVLEFT=0であり、g<0の値に対してはVRIGHT=0である。トルク信号の1つの目的は、ビーム12に、印加された加速度と大きさがほぼ等しく方向が反対の、線形な再平衡力すなわち「トルク」を発生することである。図2Dは、ビーム12に印加される、総計の再平衡力を示す。
【0022】
図2Cグラフの原点では、約ゼロgであり、トルク駆動器36はトルクパッド20、22に印加される電圧を切り替える。たとえば加速度が負から正に増加する場合は、トルク信号はトルクパッド22に印加され、トルクパッド20には印加されないことになる。あるいは、加速度が正から負に減少する場合は、トルク信号はトルクパッド20に印加され、トルクパッド22には印加されないことになる。トルク駆動器36は、一時に、トルク信号VLEFTまたはVRIGHTの1つだけが加速度に追従することを可能にするレギュレータ回路を含むことが有利である。そうすることにより特にゼロgで、トルク駆動器36は、ゼロg不連続効果および/または不感帯が、トルク信号ならびに印加される力FLEFT+FRIGHT(図2D参照)に影響を及ぼすのを防止する。
【0023】
c)「スイッチ」をベースとするトルク駆動器
図3Aは、トルク信号VLEFTおよびVRIGHTが同時に、制御信号VTQRなどの制御信号に追従するのを防止するように構成された、「スイッチ」をベースとするトルク駆動器50のブロック図を示す。トルク駆動器50は、増幅器59から、(信号線56、58を通して)トルク信号VTQRおよびトルク信号VTQRの反転を受け取るように結合された、スイッチ52、54を含む。スイッチ52、54は、比較器62を含むスイッチ駆動器60に結合され、比較器62は、制御信号のうちの1つ(すなわち、VTQRまたはVTQRの反転)だけがトルク信号を発生するように、スイッチ52、54をトグルする。たとえば制御信号VTQRが、0〜15ボルトの範囲にある場合、比較器62はスイッチ52を閉路させる(かつスイッチ54を開路のままとする)出力を発生することができる。この場合、VRIGHTのトルク信号は、制御信号VTQRに追従することができる。これに対して、VTQRが−15〜0ボルトの範囲にある場合、比較器62はスイッチ54を閉路させ(かつスイッチ52は開路のままとし)、VLEFTのトルク信号を制御信号VTQRの反転に追従させることができる。図3Bは、トルク駆動器50を用いて発生される、トルク電圧のグラフである。
【0024】
この技法の変形形態として、スイッチ52および54の両方を、増幅器59の非反転出力56に接続することができる。この場合、2つのトルク電圧出力は、図3Cに示されるようになる。両技法は、プルーフマスに同じ力を印加するので等価である。増幅器59は、抵抗器(図示せず)の構成によって決定される固定利得をもつことができることを理解されたい。
【0025】
図3Dは、トルク信号VLEFTおよびVRIGHTが同時に制御信号に追従するのを防止するように構成された、他の「スイッチ」をベースとするトルク駆動器70のブロック図である。トルク駆動器70は、それぞれ信号線74、76に印加されたトルク信号およびバイアス信号を受け取るように結合された、2×2のクロスポイントスイッチすなわち調整器72を含む。スイッチ72は、スイッチ駆動器78に入力される選択信号TQR_SIGNが、2つの信号線80、82のどちらがトルク信号を出力するか、および信号線80、82のどちらがバイアス信号を出力するかをトグルできるように構成される。この実施例では、制御信号VTRQは約0〜15ボルトの範囲とすることができる。加速度がゼロgを横切るとき、それに応じて選択信号はトルク信号をトグルすることができる。図3Eは、トルク駆動器70によって発生することができるトルク信号のグラフを示す。
【0026】
d)「調整バッファ」をベースとするトルク駆動器
「スイッチ」をベースとするトルク駆動器50の代替形態は、図4Aに示される「調整バッファ」をベースとするトルク駆動器84である。「スイッチ」をベースとするトルク駆動器70と異なり、トルク駆動器84は、0Vでのゼロgクロスオーバを有することができ、それにより選択信号の必要性をなくすことができる。スイッチ72の代わりに、調整バッファはトルク信号が制御信号を追従するのを抑止する。特に、加速度信号が所定の閾値より低下するとき、調整バッファは接地信号などの一定のバイアスを出力する。
【0027】
トルク駆動器84は、1対の調整バッファ86、88を含む。バッファ86は、差動入力増幅器90を含む。差動入力増幅器90の端子92は、出力ノード94に結合される。差動入力増幅器90の別の端子96は、制御信号VTRQを受け取るように結合される。同様に、バッファ88は、出力ノード102に結合された端子100、および制御信号VTRQを受け取るように結合された別の端子104を有する、差動入力増幅器98を含む。図4Bは、負の加速度(−g)から正の加速度(+g)の範囲の、制御信号VTRQを示すグラフである。
【0028】
図4Cは、トルク駆動器84によって生成されるトルク信号のグラフを示し、この信号は制御信号VTRQに応答する。加速度計が負の加速度を受けると、調整バッファ88は、制御信号VTRQに追従する電圧信号VLEFTを、出力ノード102に生成する。負の加速度のときは、出力ノード94の電圧(VRIGHT)は、一定のバイアス(たとえばゼロボルト)となる。しかし、加速度が正のときは、バッファ88は出力ノード102に一定のバイアスを出力し、バッファ86は制御信号VTRQに追従し始め、制御信号VTRQに追従する電圧信号VRIGHTを発生する。バッファ86、88は、一時に、1つの増幅器だけが制御信号VTRQに追従するように構成される。
【0029】
こうするためにバッファ86は、p型電界効果トランジスタ(PFET)に結合された増幅器を備える。一方、バッファ88は、n型FET(NFET)に結合された増幅器を備える。入力ノード96の電圧が負のときは、バッファ86内の増幅器はPFETをオフにし、ゼロボルトの一定バイアスが抵抗器によって発生される。同様に、入力ノード104の電圧が正のときは、バッファ88内の増幅器はNFETをオフにし、ゼロボルトの一定バイアスが発生される。
【0030】
どのようなトルク駆動回路を実現する場合でも、左出力から右出力への切替えが、ゼロボルトまたはできるだけゼロボルトの近くで生ずることを考慮することが重要である。図3Aの回路では、比較器62の入力オフセット電圧によって制限を受け、増幅器59のオフセットによってさらに悪化し得る。最悪の場合、これら2つのオフセットは加え合わされ、出力が切り替わるとき、g=0にてそれらのオフセット電圧の和に等しい不連続を生じ得る。しかし図4Aの回路では、2つの調整バッファ86、88の「実効切替えポイント」は、両方が整合している限り重要ではない。したがって、出力が切り替わるときに生じ得る不連続または不感帯の最大値は、比較器90と98のオフセット電圧の差に等しい。これは、同じ半導体基板上の整合した増幅器を用いることにより、図3Aの回路によって発生されるものより、少なくとも1桁小さくすることができる。望むなら、この影響は、いくつかの任意の技法を用い、増幅器90、98の1つまたは両方のオフセットを調整することによってさらに低減することができる。
【0031】
さらに、図4Aの調整バッファ86、88は、図3Aおよび3Cの回路が発生するような形の真のゼロg不連続は生じ得ない。このことは、図5A〜Eのグラフによって示される。たとえば図4Cは、増幅器90、98の両方のDCオフセットがゼロのときの、図4Aの調整バッファ回路の左および右出力の公称伝達曲線を示す。増幅器90、98の両方が等しい正の入力オフセット電圧を有する場合は、この1組の曲線はそのオフセット電圧だけ右にシフトされることになる。同様に、両方が等しい負のオフセット電圧を有する場合は、図4Cの曲線はそのオフセット電圧だけ左へシフトされることになる。次に、増幅器90、98の2つのオフセット電圧が等しくないときに何が起こるかを考える。図5Aは、増幅器90が正のオフセットを有し、増幅器98が負のオフセットを有する場合に、何が起こるかを示している。ここでVRIGHTは右にシフトされ、VLEFTは左にシフトされる。ゼロ付近に、VRIGHTおよびVLEFTが共にゼロとなる領域があることに留意されたい。2つの曲線がオーバーラップする、この「不感帯」領域の幅は、単に2つのオフセット電圧の差をとることによって求めることができる。図5Bは、それぞれの役割が逆のとき、すなわち増幅器90が負のオフセットを有し、増幅器98が正のオフセットを有するときに、何が起こるかを示す。ここでVRIGHTは左にシフトされ、VLEFTは右にシフトされる。ゼロ付近に、VRIGHTおよびVLEFTが共にゼロでない領域があることに留意されたい。2つの曲線がオーバーラップしない「ギャップ」領域の幅も、単に2つのオフセット電圧の差をとることによって求めることができる。しかし図5Cに示されるように、これは結果として、プルーフマスに印加される正味の力に重大な不連続を生じない。その代わり、この領域内の力対加速度曲線の傾きは、この領域外の傾きの2倍となる。一方、図3Aの回路で、増幅器59のオフセットが適切に補償されない場合に生じ得る、1つの起こり得るタイプの不連続を示す図5Dの曲線について考える。ここでは、増幅器59は正のオフセットを有し、比較器62はオフセットがない。不連続における、この曲線の無限大の傾きに留意されたい。このタイプの不連続は、機械的発振を誘起し得るので、有害となり得る。図5Eは、関連する力対加速度曲線上に結果として生ずるg=0における不連続による、ばらばらな傾きを示す。
【0032】
e)ビルディングブロックとしての「調整バッファ」
上述の調整バッファおよび/またはスイッチは、所望のトルク駆動器を実現するために、様々な構成で用いることができる。図6は、1組のACトルク信号VRIGHT−U、VRIGHT−D、VLEFT−D、VLEFT−Uを出力する、一実施例のトルク駆動器110を示す。トルク駆動器50、70、84と異なり、トルク駆動器110は、支点の左側および右側両方の上部および下部トルクプレートに、ACトルク信号を出力するように構成される。ACトルク印加は、たとえばSiO2基板でなく、パイレックス基板上に組み立てられたセンサを駆動する場合に必要となり得る。これは、長い時間にトルクプレートへのDCオフセット誤差のように働く、「パイレックス荷電」効果による。ACトルク印加はまた、機構のトルクプレートにトルク電圧を容量性で結合することが可能になり、それにより駆動回路内のDCオフセット電圧の影響を除去することができる。トルク駆動器110は、調整バッファ112、114、およびクロスポイントスイッチ116、118を含む。バッファ112、114は、制御信号VTRQを受け取る。スイッチ116、118は、TQR_COM入力に印加された方形波の制御の下で、バッファ112、114の出力をクロスすなわち切り替えるように構成される。適切な動作のためには、このAC調整の周波数は、機械振動および関連する振動修正誤差を防止するために、機構の固有振動周波数より高くすべきである。
【0033】
f)支点に結合された「調整バッファ」
図7Aに他の構成が示され、ここで1対の調整バッファ回路120、122は共通の抵抗器124によって互いに結合され、プルーフマスを能動的に駆動するのに用いられる。このようにして、トルクプレートとプルーフマスの両方が同時に駆動され、それにより、図7B〜Eに示されるように、所与の電源電圧に対して2倍の電位差を得ることができる。電圧駆動を2倍にすることにより、プルーフマスを再平衡する力は4倍になる。たとえば、+15ボルトおよび−15ボルト電源を有する任意の以前のトルク駆動回路によって駆動した場合に、所与の機構が±70gの範囲を有すると仮定する。図7Aの回路で駆動すると、この同じ機構の範囲は±280gとなる。
【0034】
この回路の2つの調整バッファは、2つのトルクプレート電圧VRIGHTおよびVLEFTの低い方を有効にバッファリングすることにより、VPM電圧を発生する(図7D)。(電圧VPMは、MEMS機構のプルーフマスに供給される。)VRIGHT<VLEFTのときは、右調整バッファ回路122がアクティブとなり、VRIGHT>VLEFTのときは、左調整バッファ回路120がアクティブとなる。また、2つのトルクプレート電圧の高い方のVPM電圧を発生するには、負の調整バッファではなく正の調整バッファを用いることができることに留意すべきである。どちらの場合も、プルーフマスへの正味の力は同じである。プルーフマスをこのように駆動することにより、差動増幅器のオフセット電圧は、駆動誤差には寄与しない。さらに、2つの調整バッファ120、122のオフセット電圧も、駆動誤差には寄与しない。しかし、2つの調整バッファのオフセット電圧の差すなわち不整合は、駆動誤差に寄与する。上述のように、これは、実際のオフセット電圧よりも1桁小さくすることができる。
【0035】
g)結論
以上、様々な実施例について説明してきた。より一般に、当業者には、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、これらの実施例を変更および修正できることが理解されよう。すなわち、たとえば図1Aに示される加速度計は、様々な構造を有することができ、図示の素子だけを含むものと限定されない加速度計は、より多いまたはより少ない、検出またはトルクパッドを含むことができる。また素子の命名法またはラベル付けは、限定するものとみなすべきではない。たとえばいくつかの検出およびトルクパッドの説明に、「左」または「右」のラベルが用いられる。これらのラベルは、「上」または「下」、「第1」または「第2」などに適切に置き換えることができる。さらに、検出および/またはトルクパッドは、様々な形に構成することができ、加速度計内の機構または片持ち梁は、具体的な用途向けに設計または適合させることができる。たとえば機構は、面内および面外構造を共に含むことができる。
【0036】
また、制御回路から受け取られ、トルクパッドに伝達される信号のタイプは、極めて多様となり得る。信号の範囲も、多様となり得る。いくつかの実施例では、トルク信号に対する好ましい電圧範囲は±15Vである。しかし、トルク駆動器の構成に応じて、様々な出力電圧の範囲が可能である。さらに、静電的な電位は出力電圧信号の正負符号には依存しないので、いくつかの実施例では、正および負電圧は、互換可能である
したがって本発明の説明は、例示としてのみであり、当業者に本発明を実施するための最良の形態を教示するためのものと解釈すべきである。詳細は、本発明の趣旨から逸脱することなく大幅に変更することができ、添付の特許請求の範囲内のすべての変更形態の専用を留保する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク駆動器であって、
左トルク信号および制御信号を受け取るように結合された差動入力を備え、前記左トルク信号を出力するための左調整バッファと、
右トルク信号および前記制御信号を受け取るように結合された差動入力を備え、前記右トルク信号を出力するための右調整バッファと、を備え、
前記左トルク信号は、前記左トルク信号と前記制御信号間の電圧差に相関的に対応し、
前記右トルク信号は、前記右トルク信号と前記制御信号間の電圧差に相関的に対応する、
トルク駆動器。
【請求項2】
前記制御信号は加速度計から伝達され、加速度計内のプルーフマスビームを調整するために、前記左および右トルク信号がトルクパッドに供給される、請求項1に記載のトルク駆動器。
【請求項3】
前記制御信号が正のとき、前記右調整バッファは前記制御信号を追跡するように構成され、それにより前記右トルク信号が前記制御信号に追従し、かつ前記制御信号が負のとき、前記左調整バッファは前記制御信号を追跡するように構成され、それにより前記左トルク信号が制御信号に追従する、請求項1に記載のトルク駆動器。
【請求項4】
加速度信号に対応する制御信号を受け取り、加速度計内のプルーフマスビームを応答可能に調整するためのレギュレータ回路を含み、前記調整するプロセスは、
前記制御信号に追従する第1のトルク信号、および前記制御信号に追従しない第2のトルク信号を出力するステップと、
前記制御信号が範囲外になる場合、前記第2のトルク信号が前記制御信号に追従し、前記第1のトルク信号が前記制御信号に追従しないように、前記第1および第2のトルク信号を変化させるステップとを含み、前記レギュレータ回路は前記第1および第2のトルク信号が同時に前記制御信号に追従するのを防止するように構成される、
トルク駆動器。
【請求項5】
前記レギュレータ回路は、前記制御信号および選択器信号を受け取るように結合された調整器を含み、動作時に前記選択器信号は、前記第1および第2のトルク信号のどちらが前記制御信号に追従すべきかを決定する、請求項4に記載のトルク駆動器。
【請求項6】
前記調整器はさらに、バイアス信号を受け取るように結合され、前記選択器信号はさらに、前記第1および第2のトルク信号のどちらが前記バイアス信号に追従すべきかを決定する、請求項5に記載のトルク駆動器。
【請求項1】
トルク駆動器であって、
左トルク信号および制御信号を受け取るように結合された差動入力を備え、前記左トルク信号を出力するための左調整バッファと、
右トルク信号および前記制御信号を受け取るように結合された差動入力を備え、前記右トルク信号を出力するための右調整バッファと、を備え、
前記左トルク信号は、前記左トルク信号と前記制御信号間の電圧差に相関的に対応し、
前記右トルク信号は、前記右トルク信号と前記制御信号間の電圧差に相関的に対応する、
トルク駆動器。
【請求項2】
前記制御信号は加速度計から伝達され、加速度計内のプルーフマスビームを調整するために、前記左および右トルク信号がトルクパッドに供給される、請求項1に記載のトルク駆動器。
【請求項3】
前記制御信号が正のとき、前記右調整バッファは前記制御信号を追跡するように構成され、それにより前記右トルク信号が前記制御信号に追従し、かつ前記制御信号が負のとき、前記左調整バッファは前記制御信号を追跡するように構成され、それにより前記左トルク信号が制御信号に追従する、請求項1に記載のトルク駆動器。
【請求項4】
加速度信号に対応する制御信号を受け取り、加速度計内のプルーフマスビームを応答可能に調整するためのレギュレータ回路を含み、前記調整するプロセスは、
前記制御信号に追従する第1のトルク信号、および前記制御信号に追従しない第2のトルク信号を出力するステップと、
前記制御信号が範囲外になる場合、前記第2のトルク信号が前記制御信号に追従し、前記第1のトルク信号が前記制御信号に追従しないように、前記第1および第2のトルク信号を変化させるステップとを含み、前記レギュレータ回路は前記第1および第2のトルク信号が同時に前記制御信号に追従するのを防止するように構成される、
トルク駆動器。
【請求項5】
前記レギュレータ回路は、前記制御信号および選択器信号を受け取るように結合された調整器を含み、動作時に前記選択器信号は、前記第1および第2のトルク信号のどちらが前記制御信号に追従すべきかを決定する、請求項4に記載のトルク駆動器。
【請求項6】
前記調整器はさらに、バイアス信号を受け取るように結合され、前記選択器信号はさらに、前記第1および第2のトルク信号のどちらが前記バイアス信号に追従すべきかを決定する、請求項5に記載のトルク駆動器。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−76706(P2013−76706A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269094(P2012−269094)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2007−160957(P2007−160957)の分割
【原出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2007−160957(P2007−160957)の分割
【原出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
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