説明

トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、グリップ性能(特にウェットグリップ性能)、耐摩耗性、操縦安定性をバランスよく改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】軟化点が40℃以上の固体樹脂と、オイル、液状クマロンインデン樹脂及び液状インデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の軟化剤との溶融混合物を含み、上記固体樹脂及び上記軟化剤の質量比が90/10〜50/50であるトレッド用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から自動車用タイヤに対して転がり抵抗の低下による低燃費性の改善が要求されているとともに、安全性、耐久性などの観点からグリップ性能(特にウェットグリップ性能)、耐摩耗性、操縦安定性も必要とされている。これらのタイヤ特性はトレッド性能の寄与が大きいため、トレッド用ゴムの改良が多く検討されている。
【0003】
これらの性能に関し、例えば、転がり抵抗の低下とウェットグリップ性能の向上は背反性能であり、これらの改善のためにシリカ、変性ゴム、反応性の高いシランカップリング剤を使用することが提案されている。しかし、一般的にシリカは、カーボンブラックに比べるとゴム成分に対する親和性が低く、補強効果が小さいため、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0004】
また、グリップ性能を改善したタイヤ用ゴム組成物として、特許文献1にはスチレンブタジエンゴムにクマロンレジン、石油系レジン、フェノール系レジンなどを配合することが提案されている。しかしながら、低燃費性、グリップ性能(特にウェットグリップ性能)、耐摩耗性、操縦安定性をバランスよく改善することは困難であり、更なる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−350535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、グリップ性能(特にウェットグリップ性能)、耐摩耗性、操縦安定性をバランスよく改善できるトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軟化点が40℃以上の固体樹脂と、オイル、液状クマロンインデン樹脂及び液状インデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の軟化剤との溶融混合物を含み、上記固体樹脂及び上記軟化剤の質量比が90/10〜50/50であるトレッド用ゴム組成物に関する。
【0008】
上記固体樹脂は、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂及びロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
上記溶融混合物は常温で固体状態であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム及びシリカを含むことが好ましい。ここで、該スチレンブタジエンゴムは変性剤で末端を変性した溶液重合スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定軟化点を持つ固体樹脂と特定の軟化剤からなる溶融混合物を含有するトレッド用ゴム組成物であるので、低燃費性、グリップ性能(特にウェットグリップ性能)、耐摩耗性、操縦安定性をバランスよく改善した空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、軟化点が40℃以上の固体樹脂と、オイル、液状クマロンインデン樹脂及び液状インデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の軟化剤との溶融混合物を含む。
【0013】
上記固体樹脂及び軟化剤を予め溶融混合して得られた溶融混合物を使用すると、固体樹脂と軟化剤を単に混合したゴム組成物に比べて、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を顕著に改善できるとともに、転がり抵抗も低下させることができる。そのため、タイヤの転がり抵抗、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、操縦安定性をバランスよく改善することが可能となる。
【0014】
上記ゴム組成物はゴム成分を含む。ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、前記性能バランスを改善できる点から、SBRを使用することが好ましく、SBRとBR及び/又はNRを併用することがより好ましい。
【0015】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、SBRとして、ウェットグリップ性能及び転がり抵抗特性に優れるという理由から、溶液重合SBRが好ましく、変性剤で末端を変性した溶液重合SBR(変性S−SBR)がより好ましい。
【0016】
SBRの変性に使用する変性剤としては、例えば、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリマーとの結合性がよく、かつフィラーとの親和性が高いという点から、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0017】
変性剤によるSBRの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、SBRと変性剤とを接触させればよく、SBR溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0018】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満の場合、グリップ性が悪化する傾向がある。また、該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。45質量%を超えると、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H−NMR測定によって算出される。
【0019】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。40質量%未満であると、グリップ性が充分に得られない傾向がある。また、該含有量は、100質量%であってもよいが、他のゴム成分との併用によって各性能をバランス良く改善する点からは、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
なお、後述する固体樹脂、軟化剤は、ゴム成分には含まれない。
【0020】
ゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、耐摩耗性が劣る傾向がある。該含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。50質量%を超えると、グリップ性が劣る傾向がある。
【0021】
ゴム組成物がNRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、転がり抵抗が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。50質量%を超えると、グリップ性が劣る傾向がある。
【0022】
本発明における溶融混合物は、軟化点が40℃以上の固体樹脂と、オイル、液状クマロンインデン樹脂及び液状インデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の軟化剤とを溶融混合したものである。
【0023】
上記固体樹脂の軟化点(Softening Point)は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。40℃未満であると、薬品保管中にブロッキングしたり、バンバリーミキサー投入用の計量薬品機又は導入管中で固結する傾向がある。一方、該軟化点は、好ましくは150℃以下、より好ましくは110℃以下である。150℃を超えると、バンバリーミキサーのベース練り時に融解せず、分散性が劣る傾向がある。
なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K 6220に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0024】
上記固体樹脂としては、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂などを好適に使用でき、なかでも、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂が好ましい。これにより、前記性能バランスを改善できる。
【0025】
上記α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合した芳香族ビニル重合体(α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂)では、芳香族ビニル単量体(単位)としてスチレン、α−メチルスチレンが使用され、該重合体は、それぞれの単量体の単独重合体、両単量体の共重合体のいずれでもよい。上記芳香族ビニル重合体としては、経済的で加工しやすく、ウェットグリップ性能に優れていることから、α−メチルスチレンの単独重合体、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましい。
【0026】
上記芳香族ビニル重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500以上、より好ましくは800以上である。500未満では、ウェットグリップ性能の充分な改善効果が得られにくい傾向がある。また、上記芳香族ビニル重合体の重量平均分子量は、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下である。3000を超えると、フィラーの分散性が低下し、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計)による測定値をもとに標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0027】
クマロンインデン樹脂、インデン樹脂は、それぞれ炭素数8のクマロン及び炭素数9のインデンを主要なモノマー、インデンを主要なモノマーとする石炭系又は石油系樹脂である。具体的には、ビニルトルエン−α−メチルスチレン−インデン樹脂、ビニルトルエン−インデン樹脂、α−メチルスチレン−インデン樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン−インデン共重合体樹脂等が挙げられる。
【0028】
テルペン樹脂は、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンなどのテルペンを基本骨格とするテルペン化合物を主要なモノマーとする樹脂であり、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂などが挙げられる。また、ロジン樹脂としては、松脂を加工することにより得られるアビエチン酸、ピマール酸などの樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)、水素添加ロジン樹脂、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジングリセリンエステル、不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
【0029】
上記軟化剤として使用されるオイル、液状クマロンインデン樹脂、液状インデン樹脂は、常温(23℃)で液体である。
上記軟化剤の軟化点は、好ましくは20℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を超えると、上記液状レジンの発熱性が上昇し、低燃費性が悪化する傾向がある。該軟化点の下限は特に限定されないが、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−5℃以上、更に好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、分子量が小さすぎてポリマーとの親和性に劣る傾向がある。
【0030】
オイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイルを用いることができる。なかでも、ゴムとの親和性が良い(SP値も近い)という理由から、アロマ系プロセスオイルが好ましい。
【0031】
上記溶融混合物において、固体樹脂及び軟化剤の質量比(固体樹脂/軟化剤)は、常温で液体の軟化剤を適量添加することにより、固体樹脂と軟化剤の溶融混合物が配合ゴム中に適度に膨潤し、ゴム成分に混ざり易いという理由から、90/10〜50/50、好ましくは85/15〜70/30である。固体樹脂が90質量%を超えると、ゴム成分が混ざりにくくなるおそれがある。一方、50質量%未満であると、溶融した固体樹脂がオイルに馴染み、ゴム成分中に固体樹脂を良好に分散させることが困難になるおそれがある。
【0032】
上記溶融混合物は、固体樹脂と軟化剤とをそれぞれの融解温度以上で混合することで調製でき、例えば、50〜160℃で2〜6分間(好ましくは80〜130℃で3〜5分間)の条件で溶融混合を実施すればよい。溶融混合は公知の加熱装置、混合装置を用いて行うことができ、例えば、水浴バス、油浴バスなどを用いて固体樹脂と軟化剤を加熱しながら、攪拌融解させることにより溶融混合物を調製できる。
【0033】
得られた溶融混合物は、常温(23℃)で固体状態であることが好ましい。固体状態の混合物をゴム成分と混練りすることで、固体樹脂をゴム成分中に良好に分散でき、転がり抵抗、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランス良く改善できる。
【0034】
本発明のゴム組成物において、上記固体樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、本発明の効果が得られないおそれがある。また、該固体樹脂の含有量は、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。25質量部を超えると、ポリマー中での保持が困難となり、ブルームして耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0035】
上記軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。10質量部未満では、グリップ性の発現が充分でない傾向がある。また、該軟化剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、耐摩耗性が低下し、更には発熱性も悪化する傾向がある。
なお、固体樹脂、軟化剤は溶融混合物の他に別途配合してもよく、その場合、上記各含有量はゴム組成物中に含まれる総量を意味する。
【0036】
本発明のゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能を改善でき、前記性能バランスを改善できる。
【0037】
シリカのNSAは、好ましくは80m/g以上、より好ましくは150m/g以上、である。80m/g未満であると、充分な補強性が得られないため、操縦安定性、耐摩耗性、ゴム強度が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。220m/gを超えると、配合したゴムの粘度が大幅に上昇し、加工性が悪化するおそれがある。更にはシリカの分散性を向上させることが困難となり、発熱性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0038】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。40質量部未満であると、ゴムの補強効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましい。150質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、発熱性及び加工性が悪化するおそれがある。
【0039】
本発明では、シリカとともに、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが特に好ましい。
【0040】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは6質量部以上である。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。上記範囲内に調整することでシリカを充分に分散させることができ、低発熱性、耐摩耗性などの改善効果が得られる。
【0041】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、補強性と耐紫外線劣化性を高めることができ、ゴム強度も向上できる。
【0042】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは70m/g以上である。50m/g未満であると、充分な補強性が得られないため、操縦安定性、耐摩耗性、ゴム強度が低下する傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは150m/g以下、より好ましくは120m/g以下である。150m/gを超えると、加工性が悪化するおそれがある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0043】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。該含有量は、60質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。上記範囲内に調整することで、良好な補強性、耐紫外線劣化性、操縦安定性が得られる。
【0044】
本発明のゴム組成物がシリカ及びカーボンブラックの両成分を含む場合、該両成分の合計100質量%中のシリカの含有率は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。また、シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有率は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、操縦安定性をバランスよく改善できる。
【0045】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などを必要に応じて配合してもよい。
【0046】
老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、モノフェノール系老化防止剤などが挙げられ、なかでも、アミン系老化防止剤とキノリン系老化防止剤を併用することが好ましい。
【0047】
アミン系老化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系などのアミン誘導体が挙げられる。ジフェニルアミン系誘導体としては、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミンなどが挙げられる。p−フェニレンジアミン系誘導体としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0048】
キノリン系老化防止剤としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
【0049】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜7質量部である。
また、アミン系老化防止剤とキノリン系老化防止剤を併用する場合、アミン系老化防止剤とキノリン系老化防止剤の配合比率(アミン系/キノリン系(質量比))は、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは65/35〜85/15である。
【0050】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部である。
【0051】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤〔N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなど〕、グアニジン系加硫促進剤(ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなど)が好ましい。なかでも、TBBS及びDPGの併用が特に好ましい。
【0052】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜6質量部である。
【0053】
本発明のゴム組成物の製造方法は、一般的な方法で製造される。例えば、前記各成分をバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。なお、混練工程の最高温度(180℃程度)では、溶融混合物が融解しゴム配合中に充分に分散させることが望ましく、これにより、グリップ性能を高めることができる。
【0054】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤなどに好適に用いられる。
【実施例】
【0055】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0056】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR150B:宇部興産(株)製のBR150B
変性S−SBR:JSR(株)製のHPR355(3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて変性、スチレン含有量:27質量%)
NR:TSR20
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:111m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤TMQ:FLEXSYS(株)製のFLECTOL TMQ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
5%オイル含有粉末硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル処理粉末硫黄(オイル分5質量%含む可溶性硫黄)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N−ジフェニルグアニジン)
芳香族ビニル重合体(SA85)(固体樹脂(1)):Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Mw:1000)
C90(固体樹脂(2)):Rutgers Chemicals社製のNOVARES C90(クマロンインデン樹脂、軟化点:85〜95℃)
インデン樹脂(固体樹脂(3)):日石ネオポリマーL−90(芳香族系石油樹脂、軟化点:95℃)
テルペン樹脂(固体樹脂(4)):Arizona chemical社製のSYLVARES TP115(テルペンフェノール樹脂、軟化点:115℃)
ロジン樹脂(固体樹脂(5)):荒川化学社製のTSF25(軟化点:75℃)
TDAEオイル:H&R(株)製のVivaTec400(Low PCA アロマオイル、軟化点:−50℃以下)
アロマオイル:ジャパンエナジー(株)製のプロセスX−140(軟化点:−50℃以下)
C10:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)
ミネラルオイル:出光興産(株)製のPW−32(軟化点:−50℃以下)
液体インデン樹脂:日石ネオポリマー 特殊グレード試作品(芳香族系石油樹脂、常温液体)
【0057】
(溶融混合物の調製)
実施例1〜13及び比較例7〜9について、表1〜2に示す配合に従い、油浴バスを用いて固体樹脂を120℃に加熱した後に軟化剤を添加し、完全に融解後5分間攪拌混合したのちに水冷することで溶融混合物を得た。
【0058】
(実施例及び比較例)
表1〜2に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、50℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0059】
得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で10分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0060】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1〜2に示す。
【0061】
(粘弾性試験)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度30℃でE、tanδを測定した。Eが大きいほど剛性が高く、操縦安定性が優れることを示し、tanδが小さいほど発熱性が低く、低燃費性が優れることを示す。
【0062】
(ウェットグリップ性能)
水を撒いて湿潤路面(水膜厚み1.0mm±0.5、アスファルト舗装路面)としたテストコースにて、試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定し、その距離の逆数の値を比較例1を100として、それぞれ指数表示した。指数が大きいほどウェットグリッブ性能が高いことを示す。
【0063】
(実車摩耗試験)
上記試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着してアスファルト舗装テストコースを実車走行させ、約30000km走行した後のパターン溝深さの減少量を求めた。そして、比較例1の減少量を100とし、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の減少量)/(各配合の減少量)×100
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1〜2から、固体樹脂と軟化剤の溶融混合物を使用することでウェットグリップ性能及び耐摩耗性を顕著に改善できるとともに、tanδ、Eの改善もみられることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化点が40℃以上の固体樹脂と、オイル、液状クマロンインデン樹脂及び液状インデン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の軟化剤との溶融混合物を含み、
前記固体樹脂及び前記軟化剤の質量比が90/10〜50/50であるトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記固体樹脂は、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂及びロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記溶融混合物は常温で固体状態である請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
スチレンブタジエンゴム及びシリカを含む請求項1〜3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記スチレンブタジエンゴムが変性剤で末端を変性した溶液重合スチレンブタジエンゴムである請求項4記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−36370(P2012−36370A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88557(P2011−88557)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】