トレフォイル因子に結合する高次構造特異的抗体とこれを用いた癌および増殖障害の治療法
本発明は、TFFに対する高次構造特異的抗体およびその組成物に関する。本発明は、細胞増殖および/または生存の調節法、特に癌、腫瘍および増殖障害の治療法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は2006年10月3日提出の米国特許仮出願第60/849,266号の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般には、TFFに対する高次構造特異的抗体、および癌または増殖障害を調節、治療、予防またはその進行を遅延させるためのそのような抗体の使用法に関する
【背景技術】
【0003】
発明の背景
動物における細胞の増殖および/または生存の調節および制御は、いくつかの細胞性因子およびそれらの互いの相互作用を含む複雑なプロセスである。これらの細胞性因子の任意の数における突然変異または発現の変化は、細胞の無制御の増殖または成長を引き起こし、最終的には腫瘍および癌の発生につながることもある。
【0004】
ホルモンおよび/または成長因子は細胞の成長および発生の正常な調節および制御に関与している。例えば、成長ホルモン(GH)は正常な思春期乳腺発生に関与しており(Walden et al., Endocrinology 139, 659-662, 1998(非特許文献1);Kleinberg, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia. 2, 49-57, 1997(非特許文献2);Bchini et al., (1991) Endocrinology 128, 539-546, 1991(非特許文献3);Tornell et al., Int. J. Cancer 49, 114-11, 1991(非特許文献4);Nagasawa et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 21, 1547-1551, 1985(非特許文献5);Swanson and Unterman, Carcinogenesis 23, 977-982, 2002(非特許文献6);Stavrou and Kleinberg, Endocrinol. Metab. Clin. North Am. 30, 545-563, 2001(非特許文献7);Okada and Kopchick, Trends Mol. Med. 7, 126-132, 2001(非特許文献8);Ng et al., Nat. Med. 3, 1141-1144, 1997(非特許文献9))、正常なヒト乳腺において発現される(Raccurt et al., J. Endocrinol. 175, 307-318, 2002(非特許文献10))。GHなどのホルモンの発現レベルの変化は細胞の異常な増殖を引き起こすこともある。例えば、hGH遺伝子の上皮発現の増大は病的増殖の獲得に関連しており、最高レベルのhGH遺伝子発現が転移乳癌細胞において観察される(Raccurt et al., J. Endocrinol. 175, 307-318, 2002(非特許文献10))。そのような自己分泌hGHの発現の変化は正常細胞から癌細胞への形質転換を引き起こすこともある。
【0005】
細胞増殖、細胞生存および/または腫瘍性形質転換を促進する任意の細胞性因子を特定することを含めて、増殖障害の発症に対するホルモンおよび/または成長因子の影響をさらに理解する必要がある。これは増殖および/または生存を調節するための手段、特に癌などの増殖障害を治療するための手段の特定を助けるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walden et al., Endocrinology 139, 659-662, 1998
【非特許文献2】Kleinberg, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia. 2, 49-57, 1997
【非特許文献3】Bchini et al., (1991) Endocrinology 128, 539-546, 1991
【非特許文献4】Tornell et al., Int. J. Cancer 49, 114-11, 1991
【非特許文献5】Nagasawa et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 21, 1547-1551, 1985
【非特許文献6】Swanson and Unterman, Carcinogenesis 23, 977-982, 2002
【非特許文献7】Stavrou and Kleinberg, Endocrinol. Metab. Clin. North Am. 30, 545-563, 2001
【非特許文献8】Okada and Kopchick, Trends Mol. Med. 7, 126-132, 2001
【非特許文献9】Ng et al., Nat. Med. 3, 1141-1144, 1997
【非特許文献10】Raccurt et al., J. Endocrinol. 175, 307-318, 2002
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、TFFに対する高次構造特異的抗体、ならびに癌もしくは増殖障害を調節、例えば、軽減、阻害、治療もしくは予防する、および/または癌もしくは増殖障害の進行を調節、例えば、低下、阻害、もしくは遅延させるためのそのような抗体の使用法を提供する。
【0008】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表3に示す高次構造エピトープから選択される。
【0009】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体は表4に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む。
【0010】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表1に示す高次構造エピトープから選択される。
【0011】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体は表2に示す抗原決定基を含む。
【0012】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子3(TFF3)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF3ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表5に示す高次構造エピトープから選択される。
【0013】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF3ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表5に示す高次構造エピトープから選択される。
【0014】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体は表6に示す抗原決定基を含む。
【0015】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、TFF1結合成分およびTFF3結合成分を含むキメラ抗体組成物が含まれる。
【0016】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、ハイブリドーマ細胞株によって産生され、本明細書において1C6、3F6、2C5、1D、1A12、3A2、3A5、3B8、3F4、3F12、3G4、1A11、2B3、3B4、1C4、2C12、2A8、3D7、1E4、2E2、2H4、1D8および2D7と呼ぶ抗体が含まれる。
【0017】
本明細書において提供するTFFに対する高次構造特異的抗体は、トレフォイル因子ポリペプチドに特異的に結合する。例えば、いくつかの態様において、TFFに対する高次構造特異的抗体はTFF1に結合する。いくつかの態様において、TFFに対する高次構造特異的抗体はTFF3に結合する。本発明は、TFF1およびTFF3の両方を認識する多価抗体も提供する。これらの抗体は本明細書において多量体抗体とも呼ぶ。例えば、いくつかの態様において、TFF特異的抗体はヘテロ二量体である。いくつかの態様において、TFF特異的抗体は、1つの種からの抗体の抗原結合断片がもう1つの種からの定常領域に融合しているキメラ抗体である。例えば、TFF特異的抗体はヒト化抗体である。
【0018】
「抗体」なる用語は本明細書において最も広い意味で用いられ、完全なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそれらが所望の生物活性を示すかぎり、その誘導体、変異体、断片および/または任意の他の改変物を含むことが意図される。抗体は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を含む。これらには、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fc、Fab、Fab'、およびFab2断片、ならびにFab発現ライブラリが含まれるが、それらに限定されるわけではない。抗体分子はIgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDの任意のクラスに関連し、これらは分子に存在する重鎖の性質が互いに異なる。これらにはIgG1、IgG2などのサブクラスも含まれる。軽鎖はκ鎖またはλ鎖でありうる。本明細書における抗体への言及は、すべてのクラス、サブクラス、およびタイプへの言及を含む。キメラ抗体またはその改変物、例えば複数の供給源、例えばマウスまたはヒト配列に特異的なモノクローナル抗体も含まれる。さらに、ラクダ抗体またはナノ抗体も含まれる。TFF結合抗体には多重特異的、例えば、二重特異的抗体およびその機能的断片も含まれる。「TFF結合抗体」および「TFF抗体」なる用語は、本明細書において交換可能に用いられる。「抗体」または任意の同様の用語への言及はそれぞれ、本明細書において完全な抗体、ならびにその任意の改変物を含むことが理解されるであろう。
【0019】
TFFに対する高次構造特異的抗体には、露出したドメインまたは残基、例えば、溶液中のタンパク質の三次構造における外側ループ構造残基に結合するもの、TFF二量体化、凝集に関与するドメイン、ならびに細胞増殖、生存、および腫瘍原性の促進を担うドメインに結合するものが含まれる。例えば、抗体のエピトープ結合特異性には、細胞増殖、生存、および腫瘍原性の刺激に関与するドメインを含むTFF配列が含まれる。例えば、抗体は本明細書の表1、3、または5において提供される高次構造エピトープに結合する。抗体はポリクローナル抗血清もしくはモノクローナル抗体またはそれらのいずれかの誘導体である。本発明は完全なモノクローナル抗体だけでなく、免疫学的に活性な抗体断片、例えば、Fabまたは(Fab)2断片;操作した一本鎖Fv分子;またはキメラ分子、例えば、マウス由来などの1つの抗体の結合特異性と、ヒト由来などの別の抗体の残りの部分とを含む抗体も含む。
【0020】
TFF結合抗体を、標的TFF分子(すなわち、所与のTFF結合抗体が結合するTFF抗原)の別のTFF分子と結合またはさもなくば相互作用する能力を、完全または部分的に調節、例えば、低減またはさもなくば阻害するために用いる。追加のTFF分子は、ホモ多量体化、例えば、ホモ二量体化の場合のように、標的TFF分子と同じであってもよく、または追加のTFF分子は標的TFF分子と異なっていてもよい。
【0021】
TFF結合抗体は、標的TFF分子の、例えば、同族TFF受容体分子、細胞外受容体または他の細胞表面および/もしくは細胞内シグナリング分子などの第二の分子と結合またはさもなくば相互作用する能力を、完全または部分的に調節、例えば、低減またはさもなくば阻害するためにも用いる。
【0022】
他のTFF結合抗体を用いて、TFF過剰発現細胞を破壊のために直接標的とする。後者の場合、抗体、またはその断片は抗体で治療する患者の補体を活性化する。いくつかの場合に、抗体は抗体で治療する患者の腫瘍細胞の抗体依存性細胞毒性を仲介する。抗体、またはその断片を単独または細胞毒性物質に結合して投与する。TFFを発現する腫瘍細胞への抗体の結合は細胞の機能障害または死滅を引き起こし、それにより腫瘍量を低減する。抗体を任意で、それが結合する細胞を放射線またはレーザーによる死滅に対して感作させる放射性化学物質、または化学標識に結合させる。
【0023】
任意で、抗体組成物は薬学的に許容される担体および/または第二の化合物を含む。例えば、第二の化合物は化学療法剤または抗新生物剤である。そのような薬剤は逐次、例えば、TFF抗体投与の前もしくは後に、または同時、例えば、同時投与もしくは同時療法で投与する。
【0024】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体は、細胞、腫瘍細胞を含むことが疑われる生体試料、TFF受容体などの細胞外受容体、または腫瘍細胞上の別の細胞表面タンパク質と本明細書に記載のTFFに対する任意の高次構造特異的抗体とをまたはこれらの抗体の組み合わせとを接触させることによって腫瘍細胞の増殖および/または生存を阻害する方法において用いる。
【0025】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を、それを必要としている被験者において癌または細胞増殖および/もしくは生存障害を予防する方法であって、本明細書に記載のTFFに対する任意の高次構造特異的抗体を投与すること、またはこれらの抗体の組み合わせを投与することによる方法において用いる。
【0026】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を癌または腫瘍を治療するために用いる。例えば、腫瘍または癌は、例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍などの上皮癌である。
【0027】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を増殖障害を治療するために用いる。増殖障害には、例えば、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、サイトカイン変性、子宮内膜症、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤が含まれる。
【0028】
被験者は、腫瘍または癌または増殖障害を患うかその発症リスクの高い哺乳動物、好ましくはヒトである。組成物および方法は、例えば、ネコ、イヌ、および他のペット、ならびに家畜、ウマ、ウシなどを治療する際の獣医学的使用のためにも有用である。
【0029】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体は、様々な診断上の適用においても有用である。本発明は、哺乳動物の癌または細胞増殖および/もしくは生存障害を診断する方法であって、哺乳動物からの組織または体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と、抗原-抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させ、抗原-抗体複合体を検出することによる方法を特徴とする。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される癌または腫瘍には、例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍などの上皮癌が含まれる。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される増殖障害には、例えば、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、サイトカイン変性、子宮内膜症、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤が含まれる。
【0030】
患者由来の組織試料、例えば、固形腫瘍の生検材料、ならびにCNS由来の体液、血液、血清、尿、唾液、痰、肺浸出液、および腹水などの体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と接触させる。
【0031】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先することになる。加えて、材料、方法、および例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1Aは、TFF1およびTFF3組換えタンパク質(3μg)を100mM DTTで還元し、熱変性して電気泳動にかけた、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析の結果を示す写真である。TFF3は約9kDa、TFF1は約7kDaの分子量を有していた。
【図2】組換えTFF1およびTFF3の未変性-PAGE分析の結果を示す写真である。3μgのTFF1およびTFF3を未変性試料緩衝液を用いてロードした。レーンA:TFF3;レーンB:TFF1;レーンC:表示の分子量マーカー。未変性条件下で、TFF1は主に単一のバンド(単量体)と少量のバンド(二量体)として観察されたが、TFF3は二量体と高分子量(四量体)の位置で観察された。
【図3】組換えヒトTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質の未変性-PAGEウェスタンブロット分析の結果を示す写真である。TFF3は多量体型(約35kDa)として泳動したことが観察され、TFF1は主に単量体と、それよりも少量で二量体として観察された。レーンA:組換えTFF1タンパク質をTFF3抗体と共にブロット;レーンB:組換えTFF3タンパク質をTFF3抗体と共にブロット;レーンC:組換えTFF3タンパク質をTFF1抗体と共にブロット;レーンD:組換えTFF1タンパク質をTFF1抗体と共にブロット;レーンE:分子量マーカーを示している。ポリクローナル抗体はそれらが産生された相手の抗原に対して高度に特異的である。抗体はそれらの抗原に対して高度に感受性である:抗体を1:100,000で用い、なお強いシグナルを示し、ELISAでは抗体価を1:5,000,000以上で測定した)。
【図4】TFF1またはTFF3のいずれかに対する抗体がインビトロで乳癌細胞のアポトーシスを引き起こすことを示すグラフである。アポトーシスを起こす細胞のパーセンテージをアポトーシス核のHoescht 33258描出によりもとめた。
【図5】逆転写酵素PCRにより調べたTFF1およびTFF3の様々なヒト癌細胞株における発現を示すグラフ写真である。細胞および組織の源の名前を図に示す。B-アクチンをローディング対照として用いた。
【図6】高次構造特異的TFF1抗体またはTFF3抗体の、インビトロでの(A)乳癌細胞;(B)前立腺癌細胞および(C)胃癌細胞、ならびに(D)T47D乳癌細胞の生存阻害に対する効果を生存率で示すグラフである。比較のために、タモキシフェン(TAM)も(A)に含めた。(IgG=対照IgG;pAb1=TFF1に対するポリクローナル抗血清;pAb3=TFF3に対するポリクローナル抗血清。)
【図7】免疫無防備状態のマウスにおける異種移植アッセイで、MCF-7細胞によって生じた腫瘍体積がTFF1(A)またはTFF3(B)に対するポリクローナル抗体によって減少したことを示すグラフである。矢印は対照IgGまたはTFF1もしくはTFF3いずれかに対する抗体の投与開始を示す。
【図8】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロで胃癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである(A)。この図は、対照IgG(C)に比べてのTFF1モノクローナル抗体1C6(B)とのインキュベーション72時間後の胃癌細胞の代表的顕微写真も含む。
【図9】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体(IC6)が、対照マウスIgG(mIgG)に比べて、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図10】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図11】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図12】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図13】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図14】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図15】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでT47D乳癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図16】2D7モノクローナル抗体を様々な濃度で用いての、TFF1抗原の検出を示すグラフである。10および100ngの2D7 mAbは0.1pg未満のTFF1抗原を検出した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
タンパク質のトレフォイル因子ファミリーは、3つの保存されたジスルフィド結合を含む40アミノ酸の三つ葉モチーフによって特徴づけられる。3つの鎖内ジスルフィド結合が三つ葉モチーフ(TFFドメイン)を形成する。三つ葉モチーフは当技術分野において公知であり、例えば、Taupin and Podolsky, Nat Rev Mol Cell Bio. 4(9):721-32, 2003;Hoffmann et al., Histol Histopathol 16(1):319-34, 2001;およびThim, Cell Mol Life Sci 53(11-12):888-903, 1997。
【0035】
ヒトにおいて、トレフォイルペプチドの3つの異なるメンバーが特定されている。TFF1またはpS2は最初、乳癌細胞株でエストロゲン誘導性遺伝子として検出された。ヒト胃において、これは主に胃粘膜の小窩細胞に位置する。TFF2(以前は鎮痙ポリペプチドまたはSP)は最初、ブタ膵臓から精製され、胃腺頚部粘液細胞、深幽門線、およびブルンナー腺において発現される。TFF3または腸トレフォイル因子(ITF)は最後に特定され、主に小腸および大腸の杯細胞において発現される。トレフォイルペプチドは粘膜治癒プロセスに関与し、新生物疾患において異常な高レベルで発現される。消化性潰瘍形成および結腸炎、クローン症候群、膵炎、ならびに胆管疾患を含む、広範なヒト癌および胃腸炎症性悪性病変は、トレフォイルペプチドを異常に発現する。これらのヒトタンパク質のオルソログが他の動物;例えば、ラット、マウスおよび霊長類において特定されている。
【0036】
ペプチドのトレフォイルファミリーは乳腺において多岐にわたる機能を有し、ここでTFF1はマイトジェンとして機能し、TFF2は形態形成の分岐および細胞生存を刺激する。TFF3はヒト乳腺の悪性病変においてTFF1と広く同時発現されるが、TFF2は乳房上皮細胞で発現されない。
【0037】
本明細書における「TFF」、「TFFタンパク質」、または「タンパク質のTFFファミリー」への言及は、TFF1、TFF2、およびTFF3を含む関連タンパク質の群を意味する。TFFタンパク質は同じ種内で少なくとも約28から45%のアミノ酸同一性を有する。
【0038】
本明細書において用いられる「抗体」なる用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を意味する。そのような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab、Fab'、およびF(ab')2断片、ならびにFab発現ライブラリが含まれるが、それらに限定されるわけではない。「特異的に結合する」または「免疫反応する」とは、抗体が所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドとは反応(すなわち、結合)しないか、または他のポリペプチドとははるかに低い親和性(Kd>10-6)で結合することを意味する。
【0039】
基本的な抗体構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同じ対からなり、各対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100から110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。ヒト軽鎖はκおよびλ軽鎖に分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、またはεに分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgA、およびIgEと規定する。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖はさらに約10アミノ酸の「D」領域も含む。一般には、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ea., 2nd ed. Raven Press, N. Y. (1989))参照。各軽/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。
【0040】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、特有の軽鎖遺伝子産物および特有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の唯一の分子種を含む、抗体分子集団を意味する。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は集団のすべての分子で同じである。MAbは、特有の結合親和性によって特徴づけられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0041】
一般に、ヒトから得た抗体分子はIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDの任意のクラスに関連し、これらは分子に存在する重鎖の性質が互いに異なる。特定のクラスはIgG1、IgG2などのサブクラスも有する。さらに、ヒトにおいて、軽鎖はκ鎖またはλ鎖でありうる。
【0042】
「抗原結合部位」または「結合部分」なる用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を意味する。抗原結合部位は重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐した領域は「高頻度可変領域」と呼ばれ、「フレームワーク領域」または「FR」として公知のより保存された隣接領域の間にはさまれている。したがって、「FR」なる用語は、免疫グロブリンの高頻度可変領域の間、およびそれに隣接して天然に見いだされるアミノ酸配列を意味する。抗体分子において、軽鎖の3つの高頻度可変領域および重鎖の3つの高頻度可変領域は、抗原結合表面を形成するように、三次元空間において互いに相対的に配置される。抗体結合表面は結合した抗原の三次元表面に相補的で、重鎖および軽鎖それぞれの3つの高頻度可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。各ドメインへのアミノ酸の割付はKabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、またはChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987), Chothia et al. Nature 342:878-883 (1989)の定義に従う。
【0043】
本明細書において用いられる「エピトープ」なる用語は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体への特異的結合が可能な任意のタンパク質決定基を含む。「エピトープ」なる用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体への特異的結合が可能な任意のタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は通常はアミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面配置群からなり、通常は特有の三次元構造上の特徴、ならびに特有の電荷の特徴を有する。抗体は解離定数が≦1μM;好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMの時に特異的に抗原を結合すると言われる。
【0044】
当業者であれば、過度の実験を行うことなく、抗体が本明細書に記載のTFF1抗体またはTFF3抗体と同じ特異性を有するかどうかを、前者がCD3抗原ポリペプチドへの結合から後者を阻止するかどうかを確認することにより評価しうることを理解するであろう。本発明のTFF1抗体またはTFF3抗体による結合の低下によって示されるとおり、試験抗体が本発明の抗体と競合する場合、2つの抗体は同じ、または密接に関連するエピトープに結合する。抗体が本発明の抗体の特異性を有するかどうかを調べる別の方法は、本発明の抗体をそれが通常反応性であるTFF抗原、すなわちTFF1またはTFF3とあらかじめインキュベートし、次いで、試験抗体を加えて、試験抗体のTFF抗原に結合する能力が阻害されるかどうかを調べるものである。試験抗体が阻害されれば、これは本発明の抗体と同じ、または機能的に等価のエピトープの特異性を有すると考えられる。
【0045】
本明細書に記載のデータは、以下の材料および方法を用いて得た。
【0046】
組換えヒトTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質産生
Amersham BiosciencesのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合システムを用いて組換えTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質を大腸菌(E. coli)で産生した。成熟タンパク質をコードする乳癌(MCF-7)細胞からのヒトTFF1およびTFF3 cDNAを、逆転写酵素-PCR(RT-PCR)を下記のプライマー対と共に用いて増幅した:TFF1については
(フォワード、小文字はクローニングリンカー)および
(リバース);ならびにTFF3については
(フォワード)および
(リバース)。RT-PCR生成物を5'EcoRIおよび3'XhoI消化によりpGEX 4T1ベクター(Amersham Biosciences)にクローニングして、pGEX 4T1-TFF1およびpGEX 4T1-TFF3プラスミドを生成した。プラスミドのDNA配列を検証した。
【0047】
pGEX 4T1-TFF1またはpGEX 4T1-TFF3プラスミドを用いてBL21-Goldコンピテント細胞(Strategene)を形質転換した。1つの組換え大腸菌コロニーをカルベニシリン(50μg/ml)を含むLB培地に播種した。一晩培養物をLB培地/カルベニシリン、pH7.4で1:200に希釈し、37℃で600nmの光学密度約0.5まで培養した。次いで、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.2mMまで加えることにより、タンパク質発現を誘導し、培養物を37℃でさらに3〜4時間インキュベートした。細胞を回収し、GST融合タンパク質をペレットから非変性条件下で抽出し、グルタチオンセファロース4Bマトリックス(Amersham Biosciences)を用いて精製した。カラムに結合したGST融合タンパク質をトロンビンプロテアーゼで消化して、GSTからTFF1/TFF3を切断し、カラムからPBSで溶離して、基本的に純粋な生成物を得た。GST融合タンパク質ならびに精製したTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質の完全性を、4〜12%NuPAGEビス-トリスゲル(Invitrogen)上のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分析し、クーマシー-ブルー染色により可視化し、ブラッドフォードアッセイを用いて定量した(図1)。
【0048】
TFF1およびTFF3組換えタンパク質を細菌から成功裡に抽出した。次いで、タンパク質を未変性条件下で可溶化し、アフィニティクロマトグラフィで精製した。したがって、最終未変性タンパク質はポリクローナル抗体産生用の抗原として用いるのに適していた。プロトコルの規模を拡大して、高次構造特異的ポリクローナル抗体の産生およびアフィニティ精製に必要とされるミリグラムスケールの組換えタンパク質を産生した。
【0049】
ポリクローナル抗体産生
大腸菌において産生した精製組換え未変性TFF1タンパク質およびTFF3タンパク質5ミリグラムを用いて、それぞれウサギ抗TFF1ポリクローナル抗体および抗TFF3ポリクローナル抗体を産生させた。2羽のZIKA雌ウサギにそれぞれ200μgの抗原を筋肉内注射することにより、免疫化した。ウサギに毎月100μgの抗原で追加免疫した。ウサギを各月末に耳辺縁静脈にカテーテル挿入して採血し、抗体を抗血清からアフィニティ精製した:抗TFF1-06および抗TFF1-07、ならびに抗TFF3-08および抗TFF3-09。感受性をELISA滴定を用いて測定し、特異性を未変性および還元ウェスタンブロット分析を用いて測定した。
【0050】
高次構造特異的ポリクローナル抗体を未変性のTFF1およびTFF3抗原に対して産生させ、アフィニティ精製した。4羽のウサギからの抗体のすべてのバッチをELISAによる感受性/親和性および未変性ウェスタンブロット分析による特異性/抗原選択性について試験した。
【0051】
生体材料の寄託
特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の下に、本明細書において1C6、3F6、2D7、2C5、および1D8と呼ぶ抗体を産生するハイブリドーマ細胞株M661/7E5/1C6、M661/7E5/3F6、M661/7E5/2D7、M661/7E5/2C5、およびM661/7E5/1D8を、2007年9月27日、10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209 USAの米国菌培養収集所(American Type Culture Collection、ATCC)にFederal Express Airbill Tracking Number 7991 9353 8311の下に寄託した。2007年9月27日の寄託細胞株の受領通知が2007年10月3日にATCC特許寄託機関により送付された。
【0052】
ELISA
未変性のTFF1およびTFF3組換えタンパク質100ngを別々に96穴NUNC MaxiSorpマイクロタイタープレートに50mM NaHCO3/pH8.5 100μl中でコーティングし、室温で一晩インキュベートした。ウェルをPBS/0.1%トゥイーン20(PBST)中5%脱脂粉乳で1時間ブロックした。ブロック後、一次抗体(ポリクローナル抗TFF1または抗TFF3)100μlをウェルに加え、1時間インキュベートした。TFF1およびTFF3ポリクローナル抗体の保存溶液濃度は1μg/μlで、PBSTを用いて以下のとおりに連続希釈した:1:500、1:1000、1:10000、1:25000、1:50000、1:1000000、1:2000000、1:4000000および1:8000000、三重複。その後、ウェルをPBSTで3回洗浄し、次いでHRP結合抗ウサギ二次抗体(PBST中で1:1000に希釈)と共に1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで5回洗浄し、基質緩衝液を用いてシグナルを発生させた。反応を3N HCl添加により停止した。プレートを405nmで読み取った。
【0053】
ELISAの結果より、4つのポリクローナル抗体はすべて、それぞれの未変性抗原に対して高い親和性を有し、他の未変性トレフォイル因子抗原によって交差生成しないことが判明した。1:4000000を超えて希釈した後に抗体価を測定した。
【0054】
未変性PAGEおよび未変性ウェスタンブロット分析
組換えタンパク質を、Novex(登録商標)4〜20%トリス-グリシン成形済みゲル(Invitrogen)を125Vで用いる未変性条件下でポンソーS追跡用色素がゲルの基部に近づくまで電気泳動した。タンパク質をポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)膜にトリス/グリシン転写緩衝液を用い、25V、2時間で転写した。次いで、PBS-0.1%トゥイーン20(PBST)中5%脱脂粉乳を用い、室温で2時間膜をブロックした。膜をブロック緩衝液中で適宜希釈した一次抗体(ポリクローナルTFF1またはTFF3)と共に4℃で一晩インキュベートした。PBSTで洗浄後、ブロック緩衝液で希釈した抗ウサギIgG-HRP結合二次抗体と共にゆっくり撹拌しながら膜を室温で1時間インキュベートした。PBST緩衝液による5分間の洗浄をさらに3回行い、次いでSuperSignal West Dura Extended Duration Substrate(Pierce)を加え、膜をフィルムに露光した。
【0055】
未変性PAGEにより、組換え未変性TFF1は主に単一のバンド(単量体)と少量のバンド(二量体)に分離するが、組換えTFF3は単一のバンド(四量体)と少量のバンド(二量体)に分離することが判明した(図2)。ポリクローナル抗体を用いての未変性ウェスタンからも、TFF1は主に単量体と少量の二量体を生成するが、TFF3は約35kDaの四量体と二量体を生成することが確認された(図3)。ポリクローナル抗体はそれらの抗原に対して完全な特異性を示し、他のトレフォイル因子タンパク質との交差反応性はなかった。
【0056】
コンピューターによる高次構造エピトープ(CE)予測
TFF1タンパク質およびTFF3タンパク質は高いヌクレオチド配列相同性を有している。ヒトTFF1およびTFF3の構造がNMRを用いて分析されており、座標がタンパク質データバンク(PDB)に寄託されている。NMR座標を3D分子表示ソフトであるRASMOLに入力した。TFF1およびTFF3によって形成したホモ二量体は全体の構造および高次構造において著しい相違を示す。エピトープを抗体の抗原結合部位と相互作用する抗原分子の部分と規定する。本明細書において提示する未変性ウェスタン分析は、抗体が特異的で他のトレフォイル因子と交差反応しないことを示している。エピトープは2つの型、すなわち、配列エピトープ(SE)(抗体(Ab)がペプチド結合で連結されたアミノ酸残基の近接する突出部に結合する場合)および高次構造エピトープ(CE)(Abがポリペプチド鎖の折りたたみにより一緒にされた非近接残基に結合する場合)である。配列エピトープは本明細書において線状エピトープとも呼ぶ。線状エピトープに結合する抗体は抗原配列の連続するアミノ酸に結合するAbである。高次構造エピトープは本明細書において未変性エピトープとも呼ぶ。高次構造エピトープまたは未変性エピトープに結合する抗体は溶液中、例えば、生理的に適合する条件でTFFポリペプチドおよび/またはタンパク質に結合するAbである。Ag-Ab複合体の結晶構造の分析から、抗体によって認識されるために、残基は相互作用のために到達可能でなくてはならず、したがって抗原の表面に存在しなくてはならないことが知られている。加えて、本明細書において提供するTFFに対する高次構造特異的抗体は変性したTFFポリペプチドもしくはタンパク質またはTFF由来の線状配列にも結合しうる。商業的に利用可能なアルゴリズムを用いてTFF1およびTFF3のSEおよびCEを予測した。結果を以下の表1〜6に示す。
【0057】
(表1)TFF1ホモ二量体で予測した高次構造エピトープ
AD - 抗原決定基;CE - 高次構造エピトープ;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF1タンパク質である。
【0058】
表1は、TFF1ホモ二量体に存在する7つの異なる高次構造エピトープを示している。基準ADまでの距離6Å以内に見いだされる任意のADは高次構造エピトープの一部を形成する。予測された配列エピトープ(SE)はなかった。大文字は表面で利用可能なアミノ酸を示し、小文字は三次構造内に埋め込まれて、抗体への到達性が25%未満のアミノ酸を示す。
【0059】
(表2)TFF1ホモ二量体で予測した抗原決定基
AD - 抗原決定基;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF1タンパク質である。
【0060】
表2は、未変性TFF1ホモ二量体において見いだされた7つの異なる抗原決定基(AD)を示している。ADは7〜31アミノ酸長で、異なる高次構造エピトープの形成に関与している一次タンパク質配列の80%以上におよぶ。
【0061】
(表3)TFF1単量体で予測した高次構造エピトープ
AD - 抗原決定基;CE - 高次構造エピトープ。
【0062】
表3は、TFF1単量体に存在する3つの異なる高次構造エピトープを示している。基準ADまでの距離6Å以内に見いだされる任意のADは高次構造エピトープの一部を形成する。配列エピトープは認められなかった。大文字は表面で利用可能なアミノ酸を示し、小文字は三次構造内に埋め込まれて、抗体への到達性が25%未満のアミノ酸を示す。
【0063】
(表4)TFF1単量体で予測した抗原決定基
AD - 抗原決定基。
【0064】
表4は、TFF1ホモ二量体において見いだされた4つの異なる抗原決定基(AD)を示している。ADは7〜16アミノ酸長で、異なる高次構造エピトープの形成に関与している一次タンパク質配列の80%以上におよぶ。
【0065】
(表5)TFF3ホモ二量体で予測した高次構造エピトープ
AD - 抗原決定基;CE - 高次構造エピトープ;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF3タンパク質である。
【0066】
表5は、TFF3ホモ二量体に存在する6つの異なる高次構造エピトープを示している。基準ADまでの距離6Å以内に見いだされる任意のADは高次構造エピトープの一部を形成する。TFF1ホモ二量体と同様に、配列エピトープ(SE)は認められなかった。CEのいずれにおいてもTFF1ホモ二量体との重複は見られなかった。大文字は表面で利用可能なアミノ酸を示し、小文字は三次構造内に埋め込まれて、抗体への到達性が25%未満のアミノ酸を示す。
【0067】
(表6)TFF3ホモ二量体で予測した抗原決定基
AD - 抗原決定基;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF3分子である。
【0068】
表6は、未変性TFF1ホモ二量体において見いだされた6つの異なる抗原決定基(AD)を示している。ADは5〜21アミノ酸長で、異なる高次構造エピトープの形成に関与しているタンパク質の一次配列の50%におよぶ。
【0069】
未変性TFF1の単量体および二量体型ならびにTFF3の二量体型のNMR分析した3D構造を用いて、それらのエピトープを予測した。未変性TFF1およびTFF3はいずれも、露出した未変性の表面構造に広がる複数の高次構造エピトープ(CE)を有し、配列エピトープ(SE)は有していなかった。2つの抗原は異なるCEを示し、これは未変性ウェスタンで観察された抗体の抗原特異性と一致していた。TFF1単量体および二量体は2つのエピトープを共有している。TFF1およびTFF3は抗原決定基(AD)を共有していない。
【0070】
モノクローナル抗体産生
マウスを未変性TFF1タンパク質およびTFF3タンパク質の注射により免疫化した。モノクローナル抗体を標準の方法に従って産生した。ハイブリドーマクローンを培養中に拡大し、高次構造エピトープに対する1つの型の抗体を大量に産生した。モノクローナル抗体と呼ぶこれらの抗体の特異性および感受性を、ELISAを用いて試験した。
【0071】
MTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)アッセイ
生存細胞だけを測定し、走査型マルチウェル分光光度計(ELISA読み取り器)で読み取ることができる、テトラゾリウム塩MTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)に基づく迅速な比色アッセイ。MTTはミトコンドリアの還元酵素が活性な時にのみ紫のホルマザンに変換され、したがって、変換は生存細胞の数に直接関連する。薬剤で処理した細胞におけるホルマザンの生成を、対照細胞における生成に対して測定し、用量-反応曲線をもとめることができる。
【0072】
様々な癌細胞株をATCCから購入し、96穴プレートの各ウェルに培地100μl中2500細胞の密度で播種した。細胞を異なる濃度のポリクローナルウサギまたはマウスモノクローナルTFF1およびTFF3抗体(最終量100μl)で処理した。同じ手順を同じ濃度のウサギIgG(ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体)またはマウスIgG(マウスモノクローナルTFF1およびTFF3ポリクローナル抗体)で実施し、対照として用いた。マイクロプレートを5%CO2雰囲気下、37℃で72時間インキュベートした。続いて、異なる濃度の抗体で処理した細胞を含む96穴プレートの各ウェルに20μlのMTT(5mg/ml)溶液を加えた。4時間インキュベートした後、イソプロパノール中0.04mol/LのHCl 140μlを加えて反応を停止し、各ウェルの吸光度をELISA読み取り器で490nmの試験波長を用いて測定した。各濃度の処理を三重複のウェルで行った。
【0073】
アポトーシスアッセイ
TFF1またはTFF3に対する抗体存在下または非存在下でのアポトーシス細胞死を、核親和性Hoechst 33258(Del, B. G., Z. Darzynkiewicz, C. Degraef, R. Mosselmans, D. Fokan, and P. Galand. 1999)による細胞DNA染色パターンの蛍光顕微鏡分析により測定した。
【0074】
癌および/または増殖障害の診断
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体は、様々な診断上の適用においても有用である。本発明は、哺乳動物の癌または細胞増殖および/もしくは生存障害を診断する方法であって、哺乳動物からの組織または体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と、抗原-抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させ、抗原-抗体複合体を検出することによる方法を特徴とする。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される癌または腫瘍には、例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍などの上皮癌が含まれる。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される増殖障害には、例えば、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、サイトカイン変性、子宮内膜症、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤が含まれる。
【0075】
診断法は、体液または組織においてインビボまたはエクスビボで腫瘍細胞を検出する段階を含む。例えば、生検組織を抗体と接触させて、抗体結合を測定する。生検組織試料に加えて、全血、血清、血漿、便、尿、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、痰、呼気濃縮物、精液、唾液、滑液または潰瘍分泌物を試験する。全身診断画像法を行って、通常の診断法を用いて検出不能の微小腫瘍を検出する。したがって、哺乳動物の腫瘍を診断する方法を、哺乳動物の組織、例えば、リンパ節をTFF高次構造エピトープに結合する検出可能に標識した抗体と接触させることにより実施する。通常の非新生物組織への結合レベルと比較した、組織部位での抗体結合のレベルの上昇は、組織部位における新生物の存在を示す。検出のために、抗体を検出可能なマーカー、例えば、非放射性タグ、放射性化合物、または比色剤で標識する。例えば、抗体または抗体断片を125I、99Tc、Gd+++、またはFe++で標識する。緑色蛍光タンパク質を比色タグとして用いる。
【0076】
診断法または予後診断法を、哺乳動物からの体液または組織試料を抗体と、抗原-抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させ、抗原-抗体複合体を検出すること;複合体の量を定量してTFFのレベルをもとめ、TFFの通常の対照レベルと比較することにより実施する。予後のために、TFFの経時的に上昇するレベルは疾患の進行性増悪、したがって有害な予後を示している。
【0077】
患者由来の組織試料、例えば、固形腫瘍の生検材料、ならびにCNS由来の体液、血液、血清、尿、唾液、痰、肺浸出液、および腹水などの体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と接触させる。
【0078】
患者由来の組織試料(例えば、固形組織または体液)におけるTFFまたはTFF遺伝子産物の増大の検出を、標準の方法、例えば、ウェスタンブロットアッセイまたはELISAなどの定量アッセイを用いて実施する。例えば、TFFに対する高次構造特異的抗体を用いての標準の競合ELISA様式を用いて、患者のTFFレベルを定量する。または、捕捉抗体として第一の抗体と検出抗体として第二の高次構造特異的抗体を用いてのサンドイッチELISAを用いる。
【0079】
TFFの検出法は、体液の成分を固体マトリックス、例えば、マイクロタイタープレート、ビーズ、ディップスティックに結合した高次構造特異的抗体と接触させる段階を含む。例えば、固体マトリックスを患者由来の体液試料に浸漬し、洗浄し、固体マトリックスを試薬と接触させて、固体マトリックス上の免疫複合体の存在を検出する。
【0080】
試験試料中のタンパク質を固体マトリックスに固定する(例えば、結合させる)。固体マトリックスにタンパク質を共有または非共有結合させる方法および手段は当技術分野において公知である。固体表面の性質はアッセイ様式に応じて変動しうる。マイクロタイターウェルで実施するアッセイでは、固体表面はマイクロタイターウェルまたはカップの壁である。ビーズを用いるアッセイでは、固体表面はビーズの表面である。ディップスティック(すなわち、布地または紙などの多孔性または繊維材料で作られた固体)を用いるアッセイにおいて、表面はディップスティックが作られている材料の表面である。有用な固体支持体の例には、ニトロセルロース(例えば、膜またはマイクロタイターウェル型)、ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート、ポリフッ化ビニリデン(IMMULON(商標)として公知)、ジアゾ化された紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズが含まれる。抗体を含む固体支持体を、典型的には、試験試料と接触させた後、結合した免疫複合体の検出前に洗浄する。抗体を試験試料と共にインキュベートした後、免疫複合体を検出可能な標識により検出する。例えば、標識は酵素、蛍光、化学発光、放射性、または色素である。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセイ、例えば、ビオチンおよびアビジンを用いるアッセイも当技術分野において公知である。
【0081】
TFF検出試薬、例えば、高次構造特異的抗体を、1つまたは複数の高次構造特異的抗体、対照製剤(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識を含むキットの形に包装する。アッセイは当技術分野において公知の標準の2抗体サンドイッチ様式であってもよい。
【0082】
実施例
TFF1およびTFF3は様々な臓器の癌細胞において過剰発現され、新生物細胞の侵入、生存および増殖を誘導する。本明細書に記載の試験は、癌細胞に対する細胞毒性物質としてTFF1および/またはTFF3特異的抗体を用いて、分泌されたTFF1およびTFF3の中和を評価するよう設計した。
【0083】
実施例1:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト結腸癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はHT-29結腸癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0084】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はCOLO-320DM結腸癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0085】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はDLD-19結腸癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0086】
実施例2:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト卵巣癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はOVCAR-4卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0087】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はOVCAR-5卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0088】
TFF1およびTFF3抗体はOVCAR-8卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0089】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はSKOV-3卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0090】
実施例3. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト乳癌細胞株の細胞生存、インビトロでの腫瘍形成および足場非依存性成長の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はMCF-7乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0091】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はMCF-7乳癌細胞の足場非依存性成長を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞の足場非依存性成長を、前述の軟寒天アッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0092】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるMCF-7乳癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0093】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はT47D乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0094】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はT47D乳癌細胞の足場非依存性成長を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞の足場非依存性成長を、前述の軟寒天アッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0095】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるT47D乳癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0096】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はMDA-MB-231乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0097】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はBT-549乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0098】
実施例4:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト胃癌細胞株における細胞生存の阻害
TFF1およびTFF3抗体はAGS胃癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0099】
実施例5:高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体によるヒト肺癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はA549肺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0100】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はNCI-H1299肺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0101】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はNCI-H2009肺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0102】
実施例6:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト膵臓癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はBX-PC3膵臓癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0103】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はHPAC膵臓癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0104】
実施例7:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト前立腺癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はDU 145前立腺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0105】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体は22RV1前立腺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0106】
実施例8:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト肝臓癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はSK-HEP-1肝臓癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0107】
実施例9. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト子宮内膜癌細胞株の細胞生存、インビトロでの腫瘍形成および足場非依存性成長の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はAN3 CA子宮内膜癌細胞の足場非依存性成長を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞の足場非依存性成長を、前述の軟寒天アッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0108】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるAN3 CA子宮内膜癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0109】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はRL95-2子宮内膜癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0110】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるRL95-2子宮内膜癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0111】
実施例10. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1抗体の腫瘍体積およびその減少に対する効果
異種移植分析:MCF-7(5×106)細胞をマトリゲルに懸濁し、TFF1抗体(n=5、黒丸)または対照マウスIgG(n=5、白丸)のいずれかで処理した3から4週齢の無胸腺(nu/nu)雌ヌードマウスの第一の乳房(腋窩)脂肪体に注射した。TFF1抗体(200μg)を毎日2週間、腹腔内注射により送達した。マウスに同時に0.72mgの17β-エストラジオールを含む60日間放出ペレット(Innovative Research of America, Southfield, MI)を投与した。
【0112】
腫瘍体積を第16、19、22、15日に測定し、第30日の実験終了時にマウスを屠殺した。剖検で、原発腫瘍およびすべての臓器を腫瘍の存在について肉眼で評価した。原発腫瘍および臓器の組織試料を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、H&Eで染色して、形態を評価した。
【0113】
TF-1抗体処理群において、IgG処理群に比べて腫瘍体積の有意な減少が観察された(p<0.001)。
【0114】
実施例11. TFF1およびTFF3に対する抗体はMCF-7乳癌細胞のアポトーシスを生じる
高次構造特異的TFF1(α-TFF-1 pAb)およびTFF3(α-TFF-3 pAb)ポリクローナル抗体はMCF-7乳癌細胞のアポトーシス率を高めた(図4)。血清含有培地中でのこれらの抗体による処理に反応してのアポトーシスを、MCF-7細胞を抗体で72時間処理した後にHoescht 33258で評価した。ウサギIgGを対照として用いた。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0115】
実施例12. 様々なヒト癌細胞株におけるTFF1およびTFF3の発現
いくつかのヒト細胞株におけるTFF-1およびTFF-3タンパク質の発現を、逆転写酵素PCRを用いて評価した。発現をヒトの前立腺癌(22RV1、PC3、LnCapおよびDU145)、胃癌(AGS)、結腸直腸癌(HCT-116、COLO320DM、HT-29およびDLD-1)、卵巣癌(OVCAR5およびOVCAR8)および乳癌(MCF-7、T47D、BT-549およびMDA-MB-231)細胞株で試験した。β-アクチンをローディング対照として用いた(図5)。
【0116】
実施例13. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1(α-TFF-1 pAb)およびTFF3(α-TFF-3 pAb)ポリクローナル抗体は、MCF-7乳癌細胞(図6(A))、PC3前立腺癌細胞(図6(B))、AGS胃癌細胞(図6(C))およびT47D乳癌細胞(図6(D))の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。ウサギIgGを対照として用いた。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0117】
実施例14 高次構造特異的ポリクローナルTFF1抗体の腫瘍体積およびその減少に対する効果
異種移植分析:MCF-7(5×106)細胞をマトリゲルに懸濁し、TFF1抗体(n=5、黒丸)または対照マウスIgG(n=5、白丸)のいずれかで処理した3から4週齢の無胸腺(nu/nu)雌ヌードマウスの第一の乳房(腋窩)脂肪体に注射した。TFF1抗体(200μg)を毎日2週間、腹腔内注射により送達した。マウスに同時に0.72mgの17β-エストラジオールを含む60日間放出ペレット(Innovative Research of America, Southfield, MI)を投与した。
【0118】
腫瘍体積を第16、19、22、15日に測定し、第30日の実験終了時にマウスを屠殺した。
【0119】
TFF1(図7(A))またはTFF-3(7(B))に対するポリクローナル抗体は、免疫無防備状態のマウスにおいて乳癌(MCF-7)異種移植片成長を低減した。矢印は対照IgGまたはTFF-1もしくはTFF-3のいずれかに対する抗体の投与開始を示す。
【0120】
実施例15 高次構造特異的TFF1モノクローナル抗体によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
試験したTFF1に対するマウスモノクローナル抗体(1C6、1A12、3A2、3A5、3B8、3F4、3F12、3G4、1A11、2B3、3B4、1C4、2C12、2A8、2D7、1E4、2E2、2H4(図8(A))および1C6、3F6、2C5、3F11、3F3(図8(B))はインビトロで胃癌細胞の生存率を低下させた。最も劇的な阻害効果は細胞のTFF1 1C6モノクローナル抗体とのインキュベーション後に観察された。顕微鏡写真(C)および(D)は、対照IgG群(C)に比べてのTFF1モノクローナル抗体1C6(D)の72時間のインキュベーション後の有効性を示す。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0121】
実施例16 高次構造特異的TFF1マウスモノクローナル抗体1C6によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0122】
1C6マウスモノクローナルTFF1抗体は、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図9)。
【0123】
1C6マウスモノクローナルTFF1抗体は、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図10)。
【0124】
1C6マウスモノクローナルTFF1抗体は、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を有意に低下させた(図11)。
【0125】
実施例17. 高次構造特異的TFF3マウスモノクローナル抗体1D8によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0126】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図12)。
【0127】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図13)。
【0128】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を有意に低下させた(図14)。
【0129】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでT47D乳癌細胞の生存率を有意に低下させた(図15)。
【0130】
癌療法のための組成物の投与
本明細書に記載の高次構造特異的TFF特異的抗体を用いて、腫瘍細胞の成長を阻害する、または腫瘍細胞を死滅させる。癌療法に加えて、この方法は前癌状態もしくは病変または非癌過剰増殖障害を患うかその発症リスクの高い者に対して臨床上の利益を与えるために有用である。
【0131】
TFFを阻害する際に役立つ薬剤(例えば、本発明のペプチドまたは核酸)はそれ自体で、または1つもしくは複数の薬学的に許容される希釈剤、担体、および/もしくは賦形剤と組み合わせての組成物の形で用いうる。
【0132】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤」なる語句は、薬学的組成物を調製する際に有用であり、本発明の薬剤と同時投与してもよく、同時に本発明の薬剤にその所期の機能を実行させ、かつ一般に安全、非毒性で、生物学的にもそれ以外でも有害ではない物質を含むことが意図される。薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤の例には、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤、乳剤などが含まれる。希釈剤、担体、および/または賦形剤は、等張性および化学的安定性を増強する物質などの少量の添加物を含んでいてもよい。
【0133】
当技術分野において公知の様々な薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤を、本発明の組成物において用いてもよい。理解されるであろうとおり、そのような希釈剤、担体、および/または賦形剤の選択はある程度までは用いる薬剤の性質、組成物の所期の剤形、およびその投与様式によって規定されることになる。例として、アンチセンスまたはiRNAを発現するために適合させたベクターなどの核酸の投与の場合、適当な担体には等張溶液、水、水性食塩溶液、水性デキストロース溶液などが含まれる。
【0134】
標準の希釈剤、担体、および/または賦形剤に加えて、本発明の薬学的組成物は追加の成分と共に、または薬剤の活性を増強する、もしくは薬剤の完全性の保護を助けるための様式で製剤してもよい。例えば、組成物は補助剤、または被験者への投与後、薬剤の分解に対する保護を提供する、もしくは抗原性を低減する成分をさらに含んでいてもよい。または、薬剤を特定の細胞、組織または腫瘍を標的とさせるように改変してもよい。
【0135】
加えて、抗体を、特定の場合に被験者にとって有益でありうる他の成分と共に製剤する。例えば、任意で、1つまたは複数の抗新生物剤を同時投与するか、または製剤中に組み込む。そのような薬剤の例には下記が含まれる:アルキル化剤(例えば、クロラムブシル(Leukeran(商標))、シクロホスファミド(Endoxan(商標)、Cycloblastin(商標)、Neosar(商標)、Cyclophosphamide(商標))、イホスファミド(Holoxan(商標)、Ifex(商標)、Mesnex(商標))、チオテパ(Thioplex(商標)、Thiotepa(商標)));代謝拮抗剤/S相阻害剤(例えば、メトトレキセートナトリウム(Folex(商標)、Abitrexate(商標)、Edertrexate(商標))、5-フルオロウラシル(Efudix(商標)、Efudex(商標))、ヒドロキシ尿素(Droxia(商標)、ヒドロキシ尿素、Hydrea(商標))、アムサクリン、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、ダカルバジン、チオグアニン(Lanvis(商標)));代謝拮抗剤/細胞分裂毒(例えば、エトポシド(Etopophos(商標)、エトポシド、Toposar(商標))、ビンブラスチン(Velbe(商標)、Velban(商標))、ビンデスチン(Eldesine(商標))、ビノレルビン(Navelbine(商標))、パクリタキセル(Taxol(商標)));抗生物質型薬剤(例えば、ドキソルビシン(Rubex(商標))、ブレオマイシン(Blenoxane(商標))、ダクチノマイシン(Cosmegen(商標))、ダウノルビシン(Cerubidin(商標))、マイトマイシン(Mutamycin(商標)));ホルモン剤(例えば、アミノグルタチミド(Cytadren(商標));アナストロゾール(Arimidex(商標))、エストラムスチン(Estracyt(商標)、Emcyt(商標))、ゴセレリン(Zoladex(商標))、ヘキサメチルメラニン(Hexamet(商標))、レトロゾール(Femara(商標))、アナストロゾール(Arimidex(商標))、タモキシフェン(Estroxyn(商標)、Genox(商標)、Novaldex(商標)、Soltamox(商標)、Tamofen(商標)));または任意の複数の抗新生物剤の任意の組み合わせ(例えば、アドリアマイシン/5-フルオロウラシル/シクロホスファミド(FAC)、シクロホスファミド/メトトレキセート/5-フルオロウラシル(CMF))。本発明の抗体を、本明細書において特に言及するもの以外の化合物および薬剤と共に、認められた薬学的慣例に従って製剤してもよい。
【0136】
用いる投与の様式、および本明細書において前述した適当な薬学的賦形剤、希釈剤および/または担体に応じて、本発明の組成物を溶液、経口投与可能な液体、注射可能な液体、錠剤、コーティング錠、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、坐剤、経皮パッチ、懸濁剤、乳剤、徐放性製剤、ゲル剤、エアロゾル、リポソーム、散剤および免疫リポソームなどの慣例的剤形に変換する。選択される剤形は用いることが望まれる投与の様式、治療する障害および用いる薬剤の性質を反映することになる。特に好ましい剤形には、経口投与可能な錠剤、ゲル剤、丸剤、カプセル剤、半固体、散剤、徐放性製剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアロゾル、軟膏または局所投与用の溶液、および注射可能な液体が含まれる。
【0137】
当業者であれば、適当な剤形および製剤法を容易に理解するであろう。組成物は、特定の薬剤および成分を互いに接触または混合することにより調製することができる。次いで、必要があれば、生成物を所望の製剤に成形する。例として、組成物を製剤する特定の方法は、Gennaro AR: Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 2000などの参照文献において見いだすことができる。
【0138】
組成物中の本発明の抗体の量は、組成物のタイプ、単位用量のサイズ、担体、希釈剤および/または賦形剤の種類、ならびに当業者には周知の他の因子に応じて大きく変動しうる。最終組成物は0.0001重量パーセント(%w)から100%w、好ましくは0.001%wから10%wの本発明の活性物質を含むことができ、残りは任意の他の活性物質、ならびに/または担体、希釈剤および/もしくは賦形剤である。
【0139】
本発明の任意の薬剤または組成物の投与は、所望の活性(腫瘍細胞増殖の阻害)を被験者の体内の標的部位に送達可能な任意の手段によって行うことができる。「標的部位」は、増殖障害を有するか、または増殖障害に感受性でありえ、かつ1つまたは複数の細胞、組織、または特定の腫瘍を含みうる、体内の任意の部位でありうる。
【0140】
例えば、投与には非経口投与経路、全身投与経路、経口および局所投与が含まれうる。例えば、投与は注射、皮下、眼窩内、眼、脊髄内、大槽内、局所、注入(例えば、徐放装置もしくは浸透圧ポンプなどのミニポンプまたは皮膚パッチを用いて)、埋め込み、エアロゾル、吸入、乱切、腹腔内、嚢内、筋肉内、腫瘍内、鼻内、経口、口腔内、経皮、肺、直腸または膣でありうる。理解されるであろうとおり、選択される投与経路は被験者の体内の標的部位の位置、ならびに用いている薬剤または組成物の性質に依存しうる。
【0141】
投与する本発明の抗体または組成物の用量、投与期間、および一般的な投与法は、治療する状態の性質、被験者の症状の重症度、治療する任意の腫瘍のサイズ、治療する標的部位、選択される投与経路、ならびに被験者の年齢、性別および/または全身の健康などの変数に応じて、被験者間で異なることがある。本発明が関連する分野の当業者であれば、いかなる過度の実験を行うこともなく、そのような因子を考慮して適当な投与法を容易に理解するか、または決定することができるであろう。本発明の抗体の投与は、少なくとも部分的に所望の反応を得るために必要な量である。投与は、単一の1日用量、または適宜いくつかの別々の分割用量の投与を含みうる。投与法は異なる投与様式または経路を組み合わせることもできる。例えば、腫瘍内注射および全身投与を組み合わせることができる。
【0142】
方法は、治療する状態を考慮して、被験者にとって有益でありうる追加の薬剤または組成物の投与などの、さらなる段階をさらに含んでいてもよい。例えば、増殖障害を治療する際に役立つ他の薬剤(前述の抗新生物剤など)を投与しうる。そのような追加の薬剤および組成物を、本発明の薬剤および組成物と同時に、または逐次様式で投与しうる(例えば、追加の薬剤または組成物を本発明の薬剤または組成物の投与の前または後に投与しうる)ことが理解されるべきである。薬剤または組成物の逐次送達に関して、1つの薬剤または組成物の他のものの後の逐次投与は直後に行う必要はないが、直後が好ましいこともあることが理解されるべきである。薬剤または組成物の送達の間に時間遅れがあってもよい。遅延期間は、治療する状態および送達する組成物または薬剤の性質などの因子に依存することになる。しかし、例として、遅延期間は数時間から数日または数ヶ月の間でありうる。
【0143】
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前述の記載は例示を意図するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、これは添付の特許請求の範囲によって規定される。他の局面、利点、および改変は添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0144】
本発明を以下の実施例においてさらに記載することになるが、これらは特許請求の範囲において記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は2006年10月3日提出の米国特許仮出願第60/849,266号の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般には、TFFに対する高次構造特異的抗体、および癌または増殖障害を調節、治療、予防またはその進行を遅延させるためのそのような抗体の使用法に関する
【背景技術】
【0003】
発明の背景
動物における細胞の増殖および/または生存の調節および制御は、いくつかの細胞性因子およびそれらの互いの相互作用を含む複雑なプロセスである。これらの細胞性因子の任意の数における突然変異または発現の変化は、細胞の無制御の増殖または成長を引き起こし、最終的には腫瘍および癌の発生につながることもある。
【0004】
ホルモンおよび/または成長因子は細胞の成長および発生の正常な調節および制御に関与している。例えば、成長ホルモン(GH)は正常な思春期乳腺発生に関与しており(Walden et al., Endocrinology 139, 659-662, 1998(非特許文献1);Kleinberg, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia. 2, 49-57, 1997(非特許文献2);Bchini et al., (1991) Endocrinology 128, 539-546, 1991(非特許文献3);Tornell et al., Int. J. Cancer 49, 114-11, 1991(非特許文献4);Nagasawa et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 21, 1547-1551, 1985(非特許文献5);Swanson and Unterman, Carcinogenesis 23, 977-982, 2002(非特許文献6);Stavrou and Kleinberg, Endocrinol. Metab. Clin. North Am. 30, 545-563, 2001(非特許文献7);Okada and Kopchick, Trends Mol. Med. 7, 126-132, 2001(非特許文献8);Ng et al., Nat. Med. 3, 1141-1144, 1997(非特許文献9))、正常なヒト乳腺において発現される(Raccurt et al., J. Endocrinol. 175, 307-318, 2002(非特許文献10))。GHなどのホルモンの発現レベルの変化は細胞の異常な増殖を引き起こすこともある。例えば、hGH遺伝子の上皮発現の増大は病的増殖の獲得に関連しており、最高レベルのhGH遺伝子発現が転移乳癌細胞において観察される(Raccurt et al., J. Endocrinol. 175, 307-318, 2002(非特許文献10))。そのような自己分泌hGHの発現の変化は正常細胞から癌細胞への形質転換を引き起こすこともある。
【0005】
細胞増殖、細胞生存および/または腫瘍性形質転換を促進する任意の細胞性因子を特定することを含めて、増殖障害の発症に対するホルモンおよび/または成長因子の影響をさらに理解する必要がある。これは増殖および/または生存を調節するための手段、特に癌などの増殖障害を治療するための手段の特定を助けるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walden et al., Endocrinology 139, 659-662, 1998
【非特許文献2】Kleinberg, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia. 2, 49-57, 1997
【非特許文献3】Bchini et al., (1991) Endocrinology 128, 539-546, 1991
【非特許文献4】Tornell et al., Int. J. Cancer 49, 114-11, 1991
【非特許文献5】Nagasawa et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 21, 1547-1551, 1985
【非特許文献6】Swanson and Unterman, Carcinogenesis 23, 977-982, 2002
【非特許文献7】Stavrou and Kleinberg, Endocrinol. Metab. Clin. North Am. 30, 545-563, 2001
【非特許文献8】Okada and Kopchick, Trends Mol. Med. 7, 126-132, 2001
【非特許文献9】Ng et al., Nat. Med. 3, 1141-1144, 1997
【非特許文献10】Raccurt et al., J. Endocrinol. 175, 307-318, 2002
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、TFFに対する高次構造特異的抗体、ならびに癌もしくは増殖障害を調節、例えば、軽減、阻害、治療もしくは予防する、および/または癌もしくは増殖障害の進行を調節、例えば、低下、阻害、もしくは遅延させるためのそのような抗体の使用法を提供する。
【0008】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表3に示す高次構造エピトープから選択される。
【0009】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体は表4に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む。
【0010】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表1に示す高次構造エピトープから選択される。
【0011】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体は表2に示す抗原決定基を含む。
【0012】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子3(TFF3)ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF3ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表5に示す高次構造エピトープから選択される。
【0013】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体はTFF3ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する。例えば、高次構造エピトープは表5に示す高次構造エピトープから選択される。
【0014】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれ、ここで抗体は表6に示す抗原決定基を含む。
【0015】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、TFF1結合成分およびTFF3結合成分を含むキメラ抗体組成物が含まれる。
【0016】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体には、ハイブリドーマ細胞株によって産生され、本明細書において1C6、3F6、2C5、1D、1A12、3A2、3A5、3B8、3F4、3F12、3G4、1A11、2B3、3B4、1C4、2C12、2A8、3D7、1E4、2E2、2H4、1D8および2D7と呼ぶ抗体が含まれる。
【0017】
本明細書において提供するTFFに対する高次構造特異的抗体は、トレフォイル因子ポリペプチドに特異的に結合する。例えば、いくつかの態様において、TFFに対する高次構造特異的抗体はTFF1に結合する。いくつかの態様において、TFFに対する高次構造特異的抗体はTFF3に結合する。本発明は、TFF1およびTFF3の両方を認識する多価抗体も提供する。これらの抗体は本明細書において多量体抗体とも呼ぶ。例えば、いくつかの態様において、TFF特異的抗体はヘテロ二量体である。いくつかの態様において、TFF特異的抗体は、1つの種からの抗体の抗原結合断片がもう1つの種からの定常領域に融合しているキメラ抗体である。例えば、TFF特異的抗体はヒト化抗体である。
【0018】
「抗体」なる用語は本明細書において最も広い意味で用いられ、完全なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそれらが所望の生物活性を示すかぎり、その誘導体、変異体、断片および/または任意の他の改変物を含むことが意図される。抗体は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を含む。これらには、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fc、Fab、Fab'、およびFab2断片、ならびにFab発現ライブラリが含まれるが、それらに限定されるわけではない。抗体分子はIgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDの任意のクラスに関連し、これらは分子に存在する重鎖の性質が互いに異なる。これらにはIgG1、IgG2などのサブクラスも含まれる。軽鎖はκ鎖またはλ鎖でありうる。本明細書における抗体への言及は、すべてのクラス、サブクラス、およびタイプへの言及を含む。キメラ抗体またはその改変物、例えば複数の供給源、例えばマウスまたはヒト配列に特異的なモノクローナル抗体も含まれる。さらに、ラクダ抗体またはナノ抗体も含まれる。TFF結合抗体には多重特異的、例えば、二重特異的抗体およびその機能的断片も含まれる。「TFF結合抗体」および「TFF抗体」なる用語は、本明細書において交換可能に用いられる。「抗体」または任意の同様の用語への言及はそれぞれ、本明細書において完全な抗体、ならびにその任意の改変物を含むことが理解されるであろう。
【0019】
TFFに対する高次構造特異的抗体には、露出したドメインまたは残基、例えば、溶液中のタンパク質の三次構造における外側ループ構造残基に結合するもの、TFF二量体化、凝集に関与するドメイン、ならびに細胞増殖、生存、および腫瘍原性の促進を担うドメインに結合するものが含まれる。例えば、抗体のエピトープ結合特異性には、細胞増殖、生存、および腫瘍原性の刺激に関与するドメインを含むTFF配列が含まれる。例えば、抗体は本明細書の表1、3、または5において提供される高次構造エピトープに結合する。抗体はポリクローナル抗血清もしくはモノクローナル抗体またはそれらのいずれかの誘導体である。本発明は完全なモノクローナル抗体だけでなく、免疫学的に活性な抗体断片、例えば、Fabまたは(Fab)2断片;操作した一本鎖Fv分子;またはキメラ分子、例えば、マウス由来などの1つの抗体の結合特異性と、ヒト由来などの別の抗体の残りの部分とを含む抗体も含む。
【0020】
TFF結合抗体を、標的TFF分子(すなわち、所与のTFF結合抗体が結合するTFF抗原)の別のTFF分子と結合またはさもなくば相互作用する能力を、完全または部分的に調節、例えば、低減またはさもなくば阻害するために用いる。追加のTFF分子は、ホモ多量体化、例えば、ホモ二量体化の場合のように、標的TFF分子と同じであってもよく、または追加のTFF分子は標的TFF分子と異なっていてもよい。
【0021】
TFF結合抗体は、標的TFF分子の、例えば、同族TFF受容体分子、細胞外受容体または他の細胞表面および/もしくは細胞内シグナリング分子などの第二の分子と結合またはさもなくば相互作用する能力を、完全または部分的に調節、例えば、低減またはさもなくば阻害するためにも用いる。
【0022】
他のTFF結合抗体を用いて、TFF過剰発現細胞を破壊のために直接標的とする。後者の場合、抗体、またはその断片は抗体で治療する患者の補体を活性化する。いくつかの場合に、抗体は抗体で治療する患者の腫瘍細胞の抗体依存性細胞毒性を仲介する。抗体、またはその断片を単独または細胞毒性物質に結合して投与する。TFFを発現する腫瘍細胞への抗体の結合は細胞の機能障害または死滅を引き起こし、それにより腫瘍量を低減する。抗体を任意で、それが結合する細胞を放射線またはレーザーによる死滅に対して感作させる放射性化学物質、または化学標識に結合させる。
【0023】
任意で、抗体組成物は薬学的に許容される担体および/または第二の化合物を含む。例えば、第二の化合物は化学療法剤または抗新生物剤である。そのような薬剤は逐次、例えば、TFF抗体投与の前もしくは後に、または同時、例えば、同時投与もしくは同時療法で投与する。
【0024】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体は、細胞、腫瘍細胞を含むことが疑われる生体試料、TFF受容体などの細胞外受容体、または腫瘍細胞上の別の細胞表面タンパク質と本明細書に記載のTFFに対する任意の高次構造特異的抗体とをまたはこれらの抗体の組み合わせとを接触させることによって腫瘍細胞の増殖および/または生存を阻害する方法において用いる。
【0025】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を、それを必要としている被験者において癌または細胞増殖および/もしくは生存障害を予防する方法であって、本明細書に記載のTFFに対する任意の高次構造特異的抗体を投与すること、またはこれらの抗体の組み合わせを投与することによる方法において用いる。
【0026】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を癌または腫瘍を治療するために用いる。例えば、腫瘍または癌は、例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍などの上皮癌である。
【0027】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を増殖障害を治療するために用いる。増殖障害には、例えば、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、サイトカイン変性、子宮内膜症、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤が含まれる。
【0028】
被験者は、腫瘍または癌または増殖障害を患うかその発症リスクの高い哺乳動物、好ましくはヒトである。組成物および方法は、例えば、ネコ、イヌ、および他のペット、ならびに家畜、ウマ、ウシなどを治療する際の獣医学的使用のためにも有用である。
【0029】
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体は、様々な診断上の適用においても有用である。本発明は、哺乳動物の癌または細胞増殖および/もしくは生存障害を診断する方法であって、哺乳動物からの組織または体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と、抗原-抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させ、抗原-抗体複合体を検出することによる方法を特徴とする。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される癌または腫瘍には、例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍などの上皮癌が含まれる。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される増殖障害には、例えば、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、サイトカイン変性、子宮内膜症、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤が含まれる。
【0030】
患者由来の組織試料、例えば、固形腫瘍の生検材料、ならびにCNS由来の体液、血液、血清、尿、唾液、痰、肺浸出液、および腹水などの体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と接触させる。
【0031】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先することになる。加えて、材料、方法、および例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1Aは、TFF1およびTFF3組換えタンパク質(3μg)を100mM DTTで還元し、熱変性して電気泳動にかけた、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析の結果を示す写真である。TFF3は約9kDa、TFF1は約7kDaの分子量を有していた。
【図2】組換えTFF1およびTFF3の未変性-PAGE分析の結果を示す写真である。3μgのTFF1およびTFF3を未変性試料緩衝液を用いてロードした。レーンA:TFF3;レーンB:TFF1;レーンC:表示の分子量マーカー。未変性条件下で、TFF1は主に単一のバンド(単量体)と少量のバンド(二量体)として観察されたが、TFF3は二量体と高分子量(四量体)の位置で観察された。
【図3】組換えヒトTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質の未変性-PAGEウェスタンブロット分析の結果を示す写真である。TFF3は多量体型(約35kDa)として泳動したことが観察され、TFF1は主に単量体と、それよりも少量で二量体として観察された。レーンA:組換えTFF1タンパク質をTFF3抗体と共にブロット;レーンB:組換えTFF3タンパク質をTFF3抗体と共にブロット;レーンC:組換えTFF3タンパク質をTFF1抗体と共にブロット;レーンD:組換えTFF1タンパク質をTFF1抗体と共にブロット;レーンE:分子量マーカーを示している。ポリクローナル抗体はそれらが産生された相手の抗原に対して高度に特異的である。抗体はそれらの抗原に対して高度に感受性である:抗体を1:100,000で用い、なお強いシグナルを示し、ELISAでは抗体価を1:5,000,000以上で測定した)。
【図4】TFF1またはTFF3のいずれかに対する抗体がインビトロで乳癌細胞のアポトーシスを引き起こすことを示すグラフである。アポトーシスを起こす細胞のパーセンテージをアポトーシス核のHoescht 33258描出によりもとめた。
【図5】逆転写酵素PCRにより調べたTFF1およびTFF3の様々なヒト癌細胞株における発現を示すグラフ写真である。細胞および組織の源の名前を図に示す。B-アクチンをローディング対照として用いた。
【図6】高次構造特異的TFF1抗体またはTFF3抗体の、インビトロでの(A)乳癌細胞;(B)前立腺癌細胞および(C)胃癌細胞、ならびに(D)T47D乳癌細胞の生存阻害に対する効果を生存率で示すグラフである。比較のために、タモキシフェン(TAM)も(A)に含めた。(IgG=対照IgG;pAb1=TFF1に対するポリクローナル抗血清;pAb3=TFF3に対するポリクローナル抗血清。)
【図7】免疫無防備状態のマウスにおける異種移植アッセイで、MCF-7細胞によって生じた腫瘍体積がTFF1(A)またはTFF3(B)に対するポリクローナル抗体によって減少したことを示すグラフである。矢印は対照IgGまたはTFF1もしくはTFF3いずれかに対する抗体の投与開始を示す。
【図8】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロで胃癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである(A)。この図は、対照IgG(C)に比べてのTFF1モノクローナル抗体1C6(B)とのインキュベーション72時間後の胃癌細胞の代表的顕微写真も含む。
【図9】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体(IC6)が、対照マウスIgG(mIgG)に比べて、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図10】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図11】TFF1に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図12】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図13】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図14】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図15】TFF3に対するマウスモノクローナル抗体が、インビトロでT47D乳癌細胞の生存率を低下させたことを示すグラフである。
【図16】2D7モノクローナル抗体を様々な濃度で用いての、TFF1抗原の検出を示すグラフである。10および100ngの2D7 mAbは0.1pg未満のTFF1抗原を検出した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
タンパク質のトレフォイル因子ファミリーは、3つの保存されたジスルフィド結合を含む40アミノ酸の三つ葉モチーフによって特徴づけられる。3つの鎖内ジスルフィド結合が三つ葉モチーフ(TFFドメイン)を形成する。三つ葉モチーフは当技術分野において公知であり、例えば、Taupin and Podolsky, Nat Rev Mol Cell Bio. 4(9):721-32, 2003;Hoffmann et al., Histol Histopathol 16(1):319-34, 2001;およびThim, Cell Mol Life Sci 53(11-12):888-903, 1997。
【0035】
ヒトにおいて、トレフォイルペプチドの3つの異なるメンバーが特定されている。TFF1またはpS2は最初、乳癌細胞株でエストロゲン誘導性遺伝子として検出された。ヒト胃において、これは主に胃粘膜の小窩細胞に位置する。TFF2(以前は鎮痙ポリペプチドまたはSP)は最初、ブタ膵臓から精製され、胃腺頚部粘液細胞、深幽門線、およびブルンナー腺において発現される。TFF3または腸トレフォイル因子(ITF)は最後に特定され、主に小腸および大腸の杯細胞において発現される。トレフォイルペプチドは粘膜治癒プロセスに関与し、新生物疾患において異常な高レベルで発現される。消化性潰瘍形成および結腸炎、クローン症候群、膵炎、ならびに胆管疾患を含む、広範なヒト癌および胃腸炎症性悪性病変は、トレフォイルペプチドを異常に発現する。これらのヒトタンパク質のオルソログが他の動物;例えば、ラット、マウスおよび霊長類において特定されている。
【0036】
ペプチドのトレフォイルファミリーは乳腺において多岐にわたる機能を有し、ここでTFF1はマイトジェンとして機能し、TFF2は形態形成の分岐および細胞生存を刺激する。TFF3はヒト乳腺の悪性病変においてTFF1と広く同時発現されるが、TFF2は乳房上皮細胞で発現されない。
【0037】
本明細書における「TFF」、「TFFタンパク質」、または「タンパク質のTFFファミリー」への言及は、TFF1、TFF2、およびTFF3を含む関連タンパク質の群を意味する。TFFタンパク質は同じ種内で少なくとも約28から45%のアミノ酸同一性を有する。
【0038】
本明細書において用いられる「抗体」なる用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を意味する。そのような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab、Fab'、およびF(ab')2断片、ならびにFab発現ライブラリが含まれるが、それらに限定されるわけではない。「特異的に結合する」または「免疫反応する」とは、抗体が所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドとは反応(すなわち、結合)しないか、または他のポリペプチドとははるかに低い親和性(Kd>10-6)で結合することを意味する。
【0039】
基本的な抗体構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同じ対からなり、各対は1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100から110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。ヒト軽鎖はκおよびλ軽鎖に分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、またはεに分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgA、およびIgEと規定する。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖はさらに約10アミノ酸の「D」領域も含む。一般には、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ea., 2nd ed. Raven Press, N. Y. (1989))参照。各軽/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。
【0040】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、特有の軽鎖遺伝子産物および特有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の唯一の分子種を含む、抗体分子集団を意味する。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は集団のすべての分子で同じである。MAbは、特有の結合親和性によって特徴づけられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0041】
一般に、ヒトから得た抗体分子はIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDの任意のクラスに関連し、これらは分子に存在する重鎖の性質が互いに異なる。特定のクラスはIgG1、IgG2などのサブクラスも有する。さらに、ヒトにおいて、軽鎖はκ鎖またはλ鎖でありうる。
【0042】
「抗原結合部位」または「結合部分」なる用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を意味する。抗原結合部位は重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐した領域は「高頻度可変領域」と呼ばれ、「フレームワーク領域」または「FR」として公知のより保存された隣接領域の間にはさまれている。したがって、「FR」なる用語は、免疫グロブリンの高頻度可変領域の間、およびそれに隣接して天然に見いだされるアミノ酸配列を意味する。抗体分子において、軽鎖の3つの高頻度可変領域および重鎖の3つの高頻度可変領域は、抗原結合表面を形成するように、三次元空間において互いに相対的に配置される。抗体結合表面は結合した抗原の三次元表面に相補的で、重鎖および軽鎖それぞれの3つの高頻度可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。各ドメインへのアミノ酸の割付はKabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、またはChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987), Chothia et al. Nature 342:878-883 (1989)の定義に従う。
【0043】
本明細書において用いられる「エピトープ」なる用語は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体への特異的結合が可能な任意のタンパク質決定基を含む。「エピトープ」なる用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体への特異的結合が可能な任意のタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は通常はアミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面配置群からなり、通常は特有の三次元構造上の特徴、ならびに特有の電荷の特徴を有する。抗体は解離定数が≦1μM;好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMの時に特異的に抗原を結合すると言われる。
【0044】
当業者であれば、過度の実験を行うことなく、抗体が本明細書に記載のTFF1抗体またはTFF3抗体と同じ特異性を有するかどうかを、前者がCD3抗原ポリペプチドへの結合から後者を阻止するかどうかを確認することにより評価しうることを理解するであろう。本発明のTFF1抗体またはTFF3抗体による結合の低下によって示されるとおり、試験抗体が本発明の抗体と競合する場合、2つの抗体は同じ、または密接に関連するエピトープに結合する。抗体が本発明の抗体の特異性を有するかどうかを調べる別の方法は、本発明の抗体をそれが通常反応性であるTFF抗原、すなわちTFF1またはTFF3とあらかじめインキュベートし、次いで、試験抗体を加えて、試験抗体のTFF抗原に結合する能力が阻害されるかどうかを調べるものである。試験抗体が阻害されれば、これは本発明の抗体と同じ、または機能的に等価のエピトープの特異性を有すると考えられる。
【0045】
本明細書に記載のデータは、以下の材料および方法を用いて得た。
【0046】
組換えヒトTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質産生
Amersham BiosciencesのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合システムを用いて組換えTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質を大腸菌(E. coli)で産生した。成熟タンパク質をコードする乳癌(MCF-7)細胞からのヒトTFF1およびTFF3 cDNAを、逆転写酵素-PCR(RT-PCR)を下記のプライマー対と共に用いて増幅した:TFF1については
(フォワード、小文字はクローニングリンカー)および
(リバース);ならびにTFF3については
(フォワード)および
(リバース)。RT-PCR生成物を5'EcoRIおよび3'XhoI消化によりpGEX 4T1ベクター(Amersham Biosciences)にクローニングして、pGEX 4T1-TFF1およびpGEX 4T1-TFF3プラスミドを生成した。プラスミドのDNA配列を検証した。
【0047】
pGEX 4T1-TFF1またはpGEX 4T1-TFF3プラスミドを用いてBL21-Goldコンピテント細胞(Strategene)を形質転換した。1つの組換え大腸菌コロニーをカルベニシリン(50μg/ml)を含むLB培地に播種した。一晩培養物をLB培地/カルベニシリン、pH7.4で1:200に希釈し、37℃で600nmの光学密度約0.5まで培養した。次いで、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.2mMまで加えることにより、タンパク質発現を誘導し、培養物を37℃でさらに3〜4時間インキュベートした。細胞を回収し、GST融合タンパク質をペレットから非変性条件下で抽出し、グルタチオンセファロース4Bマトリックス(Amersham Biosciences)を用いて精製した。カラムに結合したGST融合タンパク質をトロンビンプロテアーゼで消化して、GSTからTFF1/TFF3を切断し、カラムからPBSで溶離して、基本的に純粋な生成物を得た。GST融合タンパク質ならびに精製したTFF1タンパク質およびTFF3タンパク質の完全性を、4〜12%NuPAGEビス-トリスゲル(Invitrogen)上のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分析し、クーマシー-ブルー染色により可視化し、ブラッドフォードアッセイを用いて定量した(図1)。
【0048】
TFF1およびTFF3組換えタンパク質を細菌から成功裡に抽出した。次いで、タンパク質を未変性条件下で可溶化し、アフィニティクロマトグラフィで精製した。したがって、最終未変性タンパク質はポリクローナル抗体産生用の抗原として用いるのに適していた。プロトコルの規模を拡大して、高次構造特異的ポリクローナル抗体の産生およびアフィニティ精製に必要とされるミリグラムスケールの組換えタンパク質を産生した。
【0049】
ポリクローナル抗体産生
大腸菌において産生した精製組換え未変性TFF1タンパク質およびTFF3タンパク質5ミリグラムを用いて、それぞれウサギ抗TFF1ポリクローナル抗体および抗TFF3ポリクローナル抗体を産生させた。2羽のZIKA雌ウサギにそれぞれ200μgの抗原を筋肉内注射することにより、免疫化した。ウサギに毎月100μgの抗原で追加免疫した。ウサギを各月末に耳辺縁静脈にカテーテル挿入して採血し、抗体を抗血清からアフィニティ精製した:抗TFF1-06および抗TFF1-07、ならびに抗TFF3-08および抗TFF3-09。感受性をELISA滴定を用いて測定し、特異性を未変性および還元ウェスタンブロット分析を用いて測定した。
【0050】
高次構造特異的ポリクローナル抗体を未変性のTFF1およびTFF3抗原に対して産生させ、アフィニティ精製した。4羽のウサギからの抗体のすべてのバッチをELISAによる感受性/親和性および未変性ウェスタンブロット分析による特異性/抗原選択性について試験した。
【0051】
生体材料の寄託
特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の下に、本明細書において1C6、3F6、2D7、2C5、および1D8と呼ぶ抗体を産生するハイブリドーマ細胞株M661/7E5/1C6、M661/7E5/3F6、M661/7E5/2D7、M661/7E5/2C5、およびM661/7E5/1D8を、2007年9月27日、10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209 USAの米国菌培養収集所(American Type Culture Collection、ATCC)にFederal Express Airbill Tracking Number 7991 9353 8311の下に寄託した。2007年9月27日の寄託細胞株の受領通知が2007年10月3日にATCC特許寄託機関により送付された。
【0052】
ELISA
未変性のTFF1およびTFF3組換えタンパク質100ngを別々に96穴NUNC MaxiSorpマイクロタイタープレートに50mM NaHCO3/pH8.5 100μl中でコーティングし、室温で一晩インキュベートした。ウェルをPBS/0.1%トゥイーン20(PBST)中5%脱脂粉乳で1時間ブロックした。ブロック後、一次抗体(ポリクローナル抗TFF1または抗TFF3)100μlをウェルに加え、1時間インキュベートした。TFF1およびTFF3ポリクローナル抗体の保存溶液濃度は1μg/μlで、PBSTを用いて以下のとおりに連続希釈した:1:500、1:1000、1:10000、1:25000、1:50000、1:1000000、1:2000000、1:4000000および1:8000000、三重複。その後、ウェルをPBSTで3回洗浄し、次いでHRP結合抗ウサギ二次抗体(PBST中で1:1000に希釈)と共に1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで5回洗浄し、基質緩衝液を用いてシグナルを発生させた。反応を3N HCl添加により停止した。プレートを405nmで読み取った。
【0053】
ELISAの結果より、4つのポリクローナル抗体はすべて、それぞれの未変性抗原に対して高い親和性を有し、他の未変性トレフォイル因子抗原によって交差生成しないことが判明した。1:4000000を超えて希釈した後に抗体価を測定した。
【0054】
未変性PAGEおよび未変性ウェスタンブロット分析
組換えタンパク質を、Novex(登録商標)4〜20%トリス-グリシン成形済みゲル(Invitrogen)を125Vで用いる未変性条件下でポンソーS追跡用色素がゲルの基部に近づくまで電気泳動した。タンパク質をポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)膜にトリス/グリシン転写緩衝液を用い、25V、2時間で転写した。次いで、PBS-0.1%トゥイーン20(PBST)中5%脱脂粉乳を用い、室温で2時間膜をブロックした。膜をブロック緩衝液中で適宜希釈した一次抗体(ポリクローナルTFF1またはTFF3)と共に4℃で一晩インキュベートした。PBSTで洗浄後、ブロック緩衝液で希釈した抗ウサギIgG-HRP結合二次抗体と共にゆっくり撹拌しながら膜を室温で1時間インキュベートした。PBST緩衝液による5分間の洗浄をさらに3回行い、次いでSuperSignal West Dura Extended Duration Substrate(Pierce)を加え、膜をフィルムに露光した。
【0055】
未変性PAGEにより、組換え未変性TFF1は主に単一のバンド(単量体)と少量のバンド(二量体)に分離するが、組換えTFF3は単一のバンド(四量体)と少量のバンド(二量体)に分離することが判明した(図2)。ポリクローナル抗体を用いての未変性ウェスタンからも、TFF1は主に単量体と少量の二量体を生成するが、TFF3は約35kDaの四量体と二量体を生成することが確認された(図3)。ポリクローナル抗体はそれらの抗原に対して完全な特異性を示し、他のトレフォイル因子タンパク質との交差反応性はなかった。
【0056】
コンピューターによる高次構造エピトープ(CE)予測
TFF1タンパク質およびTFF3タンパク質は高いヌクレオチド配列相同性を有している。ヒトTFF1およびTFF3の構造がNMRを用いて分析されており、座標がタンパク質データバンク(PDB)に寄託されている。NMR座標を3D分子表示ソフトであるRASMOLに入力した。TFF1およびTFF3によって形成したホモ二量体は全体の構造および高次構造において著しい相違を示す。エピトープを抗体の抗原結合部位と相互作用する抗原分子の部分と規定する。本明細書において提示する未変性ウェスタン分析は、抗体が特異的で他のトレフォイル因子と交差反応しないことを示している。エピトープは2つの型、すなわち、配列エピトープ(SE)(抗体(Ab)がペプチド結合で連結されたアミノ酸残基の近接する突出部に結合する場合)および高次構造エピトープ(CE)(Abがポリペプチド鎖の折りたたみにより一緒にされた非近接残基に結合する場合)である。配列エピトープは本明細書において線状エピトープとも呼ぶ。線状エピトープに結合する抗体は抗原配列の連続するアミノ酸に結合するAbである。高次構造エピトープは本明細書において未変性エピトープとも呼ぶ。高次構造エピトープまたは未変性エピトープに結合する抗体は溶液中、例えば、生理的に適合する条件でTFFポリペプチドおよび/またはタンパク質に結合するAbである。Ag-Ab複合体の結晶構造の分析から、抗体によって認識されるために、残基は相互作用のために到達可能でなくてはならず、したがって抗原の表面に存在しなくてはならないことが知られている。加えて、本明細書において提供するTFFに対する高次構造特異的抗体は変性したTFFポリペプチドもしくはタンパク質またはTFF由来の線状配列にも結合しうる。商業的に利用可能なアルゴリズムを用いてTFF1およびTFF3のSEおよびCEを予測した。結果を以下の表1〜6に示す。
【0057】
(表1)TFF1ホモ二量体で予測した高次構造エピトープ
AD - 抗原決定基;CE - 高次構造エピトープ;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF1タンパク質である。
【0058】
表1は、TFF1ホモ二量体に存在する7つの異なる高次構造エピトープを示している。基準ADまでの距離6Å以内に見いだされる任意のADは高次構造エピトープの一部を形成する。予測された配列エピトープ(SE)はなかった。大文字は表面で利用可能なアミノ酸を示し、小文字は三次構造内に埋め込まれて、抗体への到達性が25%未満のアミノ酸を示す。
【0059】
(表2)TFF1ホモ二量体で予測した抗原決定基
AD - 抗原決定基;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF1タンパク質である。
【0060】
表2は、未変性TFF1ホモ二量体において見いだされた7つの異なる抗原決定基(AD)を示している。ADは7〜31アミノ酸長で、異なる高次構造エピトープの形成に関与している一次タンパク質配列の80%以上におよぶ。
【0061】
(表3)TFF1単量体で予測した高次構造エピトープ
AD - 抗原決定基;CE - 高次構造エピトープ。
【0062】
表3は、TFF1単量体に存在する3つの異なる高次構造エピトープを示している。基準ADまでの距離6Å以内に見いだされる任意のADは高次構造エピトープの一部を形成する。配列エピトープは認められなかった。大文字は表面で利用可能なアミノ酸を示し、小文字は三次構造内に埋め込まれて、抗体への到達性が25%未満のアミノ酸を示す。
【0063】
(表4)TFF1単量体で予測した抗原決定基
AD - 抗原決定基。
【0064】
表4は、TFF1ホモ二量体において見いだされた4つの異なる抗原決定基(AD)を示している。ADは7〜16アミノ酸長で、異なる高次構造エピトープの形成に関与している一次タンパク質配列の80%以上におよぶ。
【0065】
(表5)TFF3ホモ二量体で予測した高次構造エピトープ
AD - 抗原決定基;CE - 高次構造エピトープ;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF3タンパク質である。
【0066】
表5は、TFF3ホモ二量体に存在する6つの異なる高次構造エピトープを示している。基準ADまでの距離6Å以内に見いだされる任意のADは高次構造エピトープの一部を形成する。TFF1ホモ二量体と同様に、配列エピトープ(SE)は認められなかった。CEのいずれにおいてもTFF1ホモ二量体との重複は見られなかった。大文字は表面で利用可能なアミノ酸を示し、小文字は三次構造内に埋め込まれて、抗体への到達性が25%未満のアミノ酸を示す。
【0067】
(表6)TFF3ホモ二量体で予測した抗原決定基
AD - 抗原決定基;AおよびBはホモ二量体を形成する2つのTFF3分子である。
【0068】
表6は、未変性TFF1ホモ二量体において見いだされた6つの異なる抗原決定基(AD)を示している。ADは5〜21アミノ酸長で、異なる高次構造エピトープの形成に関与しているタンパク質の一次配列の50%におよぶ。
【0069】
未変性TFF1の単量体および二量体型ならびにTFF3の二量体型のNMR分析した3D構造を用いて、それらのエピトープを予測した。未変性TFF1およびTFF3はいずれも、露出した未変性の表面構造に広がる複数の高次構造エピトープ(CE)を有し、配列エピトープ(SE)は有していなかった。2つの抗原は異なるCEを示し、これは未変性ウェスタンで観察された抗体の抗原特異性と一致していた。TFF1単量体および二量体は2つのエピトープを共有している。TFF1およびTFF3は抗原決定基(AD)を共有していない。
【0070】
モノクローナル抗体産生
マウスを未変性TFF1タンパク質およびTFF3タンパク質の注射により免疫化した。モノクローナル抗体を標準の方法に従って産生した。ハイブリドーマクローンを培養中に拡大し、高次構造エピトープに対する1つの型の抗体を大量に産生した。モノクローナル抗体と呼ぶこれらの抗体の特異性および感受性を、ELISAを用いて試験した。
【0071】
MTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)アッセイ
生存細胞だけを測定し、走査型マルチウェル分光光度計(ELISA読み取り器)で読み取ることができる、テトラゾリウム塩MTT(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム)に基づく迅速な比色アッセイ。MTTはミトコンドリアの還元酵素が活性な時にのみ紫のホルマザンに変換され、したがって、変換は生存細胞の数に直接関連する。薬剤で処理した細胞におけるホルマザンの生成を、対照細胞における生成に対して測定し、用量-反応曲線をもとめることができる。
【0072】
様々な癌細胞株をATCCから購入し、96穴プレートの各ウェルに培地100μl中2500細胞の密度で播種した。細胞を異なる濃度のポリクローナルウサギまたはマウスモノクローナルTFF1およびTFF3抗体(最終量100μl)で処理した。同じ手順を同じ濃度のウサギIgG(ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体)またはマウスIgG(マウスモノクローナルTFF1およびTFF3ポリクローナル抗体)で実施し、対照として用いた。マイクロプレートを5%CO2雰囲気下、37℃で72時間インキュベートした。続いて、異なる濃度の抗体で処理した細胞を含む96穴プレートの各ウェルに20μlのMTT(5mg/ml)溶液を加えた。4時間インキュベートした後、イソプロパノール中0.04mol/LのHCl 140μlを加えて反応を停止し、各ウェルの吸光度をELISA読み取り器で490nmの試験波長を用いて測定した。各濃度の処理を三重複のウェルで行った。
【0073】
アポトーシスアッセイ
TFF1またはTFF3に対する抗体存在下または非存在下でのアポトーシス細胞死を、核親和性Hoechst 33258(Del, B. G., Z. Darzynkiewicz, C. Degraef, R. Mosselmans, D. Fokan, and P. Galand. 1999)による細胞DNA染色パターンの蛍光顕微鏡分析により測定した。
【0074】
癌および/または増殖障害の診断
本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体は、様々な診断上の適用においても有用である。本発明は、哺乳動物の癌または細胞増殖および/もしくは生存障害を診断する方法であって、哺乳動物からの組織または体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と、抗原-抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させ、抗原-抗体複合体を検出することによる方法を特徴とする。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される癌または腫瘍には、例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍などの上皮癌が含まれる。本明細書に記載のTFFに対する高次構造特異的抗体を用いて検出される増殖障害には、例えば、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、サイトカイン変性、子宮内膜症、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤が含まれる。
【0075】
診断法は、体液または組織においてインビボまたはエクスビボで腫瘍細胞を検出する段階を含む。例えば、生検組織を抗体と接触させて、抗体結合を測定する。生検組織試料に加えて、全血、血清、血漿、便、尿、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、痰、呼気濃縮物、精液、唾液、滑液または潰瘍分泌物を試験する。全身診断画像法を行って、通常の診断法を用いて検出不能の微小腫瘍を検出する。したがって、哺乳動物の腫瘍を診断する方法を、哺乳動物の組織、例えば、リンパ節をTFF高次構造エピトープに結合する検出可能に標識した抗体と接触させることにより実施する。通常の非新生物組織への結合レベルと比較した、組織部位での抗体結合のレベルの上昇は、組織部位における新生物の存在を示す。検出のために、抗体を検出可能なマーカー、例えば、非放射性タグ、放射性化合物、または比色剤で標識する。例えば、抗体または抗体断片を125I、99Tc、Gd+++、またはFe++で標識する。緑色蛍光タンパク質を比色タグとして用いる。
【0076】
診断法または予後診断法を、哺乳動物からの体液または組織試料を抗体と、抗原-抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させ、抗原-抗体複合体を検出すること;複合体の量を定量してTFFのレベルをもとめ、TFFの通常の対照レベルと比較することにより実施する。予後のために、TFFの経時的に上昇するレベルは疾患の進行性増悪、したがって有害な予後を示している。
【0077】
患者由来の組織試料、例えば、固形腫瘍の生検材料、ならびにCNS由来の体液、血液、血清、尿、唾液、痰、肺浸出液、および腹水などの体液をTFFに対する高次構造特異的抗体と接触させる。
【0078】
患者由来の組織試料(例えば、固形組織または体液)におけるTFFまたはTFF遺伝子産物の増大の検出を、標準の方法、例えば、ウェスタンブロットアッセイまたはELISAなどの定量アッセイを用いて実施する。例えば、TFFに対する高次構造特異的抗体を用いての標準の競合ELISA様式を用いて、患者のTFFレベルを定量する。または、捕捉抗体として第一の抗体と検出抗体として第二の高次構造特異的抗体を用いてのサンドイッチELISAを用いる。
【0079】
TFFの検出法は、体液の成分を固体マトリックス、例えば、マイクロタイタープレート、ビーズ、ディップスティックに結合した高次構造特異的抗体と接触させる段階を含む。例えば、固体マトリックスを患者由来の体液試料に浸漬し、洗浄し、固体マトリックスを試薬と接触させて、固体マトリックス上の免疫複合体の存在を検出する。
【0080】
試験試料中のタンパク質を固体マトリックスに固定する(例えば、結合させる)。固体マトリックスにタンパク質を共有または非共有結合させる方法および手段は当技術分野において公知である。固体表面の性質はアッセイ様式に応じて変動しうる。マイクロタイターウェルで実施するアッセイでは、固体表面はマイクロタイターウェルまたはカップの壁である。ビーズを用いるアッセイでは、固体表面はビーズの表面である。ディップスティック(すなわち、布地または紙などの多孔性または繊維材料で作られた固体)を用いるアッセイにおいて、表面はディップスティックが作られている材料の表面である。有用な固体支持体の例には、ニトロセルロース(例えば、膜またはマイクロタイターウェル型)、ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート、ポリフッ化ビニリデン(IMMULON(商標)として公知)、ジアゾ化された紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズが含まれる。抗体を含む固体支持体を、典型的には、試験試料と接触させた後、結合した免疫複合体の検出前に洗浄する。抗体を試験試料と共にインキュベートした後、免疫複合体を検出可能な標識により検出する。例えば、標識は酵素、蛍光、化学発光、放射性、または色素である。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセイ、例えば、ビオチンおよびアビジンを用いるアッセイも当技術分野において公知である。
【0081】
TFF検出試薬、例えば、高次構造特異的抗体を、1つまたは複数の高次構造特異的抗体、対照製剤(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識を含むキットの形に包装する。アッセイは当技術分野において公知の標準の2抗体サンドイッチ様式であってもよい。
【0082】
実施例
TFF1およびTFF3は様々な臓器の癌細胞において過剰発現され、新生物細胞の侵入、生存および増殖を誘導する。本明細書に記載の試験は、癌細胞に対する細胞毒性物質としてTFF1および/またはTFF3特異的抗体を用いて、分泌されたTFF1およびTFF3の中和を評価するよう設計した。
【0083】
実施例1:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト結腸癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はHT-29結腸癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0084】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はCOLO-320DM結腸癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0085】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はDLD-19結腸癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0086】
実施例2:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト卵巣癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はOVCAR-4卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0087】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はOVCAR-5卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0088】
TFF1およびTFF3抗体はOVCAR-8卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0089】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はSKOV-3卵巣癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0090】
実施例3. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト乳癌細胞株の細胞生存、インビトロでの腫瘍形成および足場非依存性成長の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はMCF-7乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0091】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はMCF-7乳癌細胞の足場非依存性成長を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞の足場非依存性成長を、前述の軟寒天アッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0092】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるMCF-7乳癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0093】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はT47D乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0094】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はT47D乳癌細胞の足場非依存性成長を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞の足場非依存性成長を、前述の軟寒天アッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0095】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるT47D乳癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0096】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はMDA-MB-231乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0097】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はBT-549乳癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0098】
実施例4:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト胃癌細胞株における細胞生存の阻害
TFF1およびTFF3抗体はAGS胃癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0099】
実施例5:高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体によるヒト肺癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はA549肺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0100】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はNCI-H1299肺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0101】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はNCI-H2009肺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0102】
実施例6:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト膵臓癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はBX-PC3膵臓癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0103】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はHPAC膵臓癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0104】
実施例7:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト前立腺癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はDU 145前立腺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0105】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体は22RV1前立腺癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0106】
実施例8:高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト肝臓癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はSK-HEP-1肝臓癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0107】
実施例9. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト子宮内膜癌細胞株の細胞生存、インビトロでの腫瘍形成および足場非依存性成長の阻害
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はAN3 CA子宮内膜癌細胞の足場非依存性成長を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞の足場非依存性成長を、前述の軟寒天アッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0108】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるAN3 CA子宮内膜癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0109】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はRL95-2子宮内膜癌細胞の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0110】
高次構造特異的TFF1およびTFF3抗体はマトリゲルにおけるRL95-2子宮内膜癌細胞による腫瘍形成を阻害した。処理の1週間後、位相差顕微鏡検査を用いてのコロニーサイズの形態学的検査によりインビトロでの腫瘍退行を試験した。
【0111】
実施例10. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1抗体の腫瘍体積およびその減少に対する効果
異種移植分析:MCF-7(5×106)細胞をマトリゲルに懸濁し、TFF1抗体(n=5、黒丸)または対照マウスIgG(n=5、白丸)のいずれかで処理した3から4週齢の無胸腺(nu/nu)雌ヌードマウスの第一の乳房(腋窩)脂肪体に注射した。TFF1抗体(200μg)を毎日2週間、腹腔内注射により送達した。マウスに同時に0.72mgの17β-エストラジオールを含む60日間放出ペレット(Innovative Research of America, Southfield, MI)を投与した。
【0112】
腫瘍体積を第16、19、22、15日に測定し、第30日の実験終了時にマウスを屠殺した。剖検で、原発腫瘍およびすべての臓器を腫瘍の存在について肉眼で評価した。原発腫瘍および臓器の組織試料を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、H&Eで染色して、形態を評価した。
【0113】
TF-1抗体処理群において、IgG処理群に比べて腫瘍体積の有意な減少が観察された(p<0.001)。
【0114】
実施例11. TFF1およびTFF3に対する抗体はMCF-7乳癌細胞のアポトーシスを生じる
高次構造特異的TFF1(α-TFF-1 pAb)およびTFF3(α-TFF-3 pAb)ポリクローナル抗体はMCF-7乳癌細胞のアポトーシス率を高めた(図4)。血清含有培地中でのこれらの抗体による処理に反応してのアポトーシスを、MCF-7細胞を抗体で72時間処理した後にHoescht 33258で評価した。ウサギIgGを対照として用いた。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0115】
実施例12. 様々なヒト癌細胞株におけるTFF1およびTFF3の発現
いくつかのヒト細胞株におけるTFF-1およびTFF-3タンパク質の発現を、逆転写酵素PCRを用いて評価した。発現をヒトの前立腺癌(22RV1、PC3、LnCapおよびDU145)、胃癌(AGS)、結腸直腸癌(HCT-116、COLO320DM、HT-29およびDLD-1)、卵巣癌(OVCAR5およびOVCAR8)および乳癌(MCF-7、T47D、BT-549およびMDA-MB-231)細胞株で試験した。β-アクチンをローディング対照として用いた(図5)。
【0116】
実施例13. 高次構造特異的ポリクローナルTFF1およびTFF3抗体によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
高次構造特異的TFF1(α-TFF-1 pAb)およびTFF3(α-TFF-3 pAb)ポリクローナル抗体は、MCF-7乳癌細胞(図6(A))、PC3前立腺癌細胞(図6(B))、AGS胃癌細胞(図6(C))およびT47D乳癌細胞(図6(D))の生存を阻害した。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。ウサギIgGを対照として用いた。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0117】
実施例14 高次構造特異的ポリクローナルTFF1抗体の腫瘍体積およびその減少に対する効果
異種移植分析:MCF-7(5×106)細胞をマトリゲルに懸濁し、TFF1抗体(n=5、黒丸)または対照マウスIgG(n=5、白丸)のいずれかで処理した3から4週齢の無胸腺(nu/nu)雌ヌードマウスの第一の乳房(腋窩)脂肪体に注射した。TFF1抗体(200μg)を毎日2週間、腹腔内注射により送達した。マウスに同時に0.72mgの17β-エストラジオールを含む60日間放出ペレット(Innovative Research of America, Southfield, MI)を投与した。
【0118】
腫瘍体積を第16、19、22、15日に測定し、第30日の実験終了時にマウスを屠殺した。
【0119】
TFF1(図7(A))またはTFF-3(7(B))に対するポリクローナル抗体は、免疫無防備状態のマウスにおいて乳癌(MCF-7)異種移植片成長を低減した。矢印は対照IgGまたはTFF-1もしくはTFF-3のいずれかに対する抗体の投与開始を示す。
【0120】
実施例15 高次構造特異的TFF1モノクローナル抗体によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
試験したTFF1に対するマウスモノクローナル抗体(1C6、1A12、3A2、3A5、3B8、3F4、3F12、3G4、1A11、2B3、3B4、1C4、2C12、2A8、2D7、1E4、2E2、2H4(図8(A))および1C6、3F6、2C5、3F11、3F3(図8(B))はインビトロで胃癌細胞の生存率を低下させた。最も劇的な阻害効果は細胞のTFF1 1C6モノクローナル抗体とのインキュベーション後に観察された。顕微鏡写真(C)および(D)は、対照IgG群(C)に比べてのTFF1モノクローナル抗体1C6(D)の72時間のインキュベーション後の有効性を示す。これらの抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0121】
実施例16 高次構造特異的TFF1マウスモノクローナル抗体1C6によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0122】
1C6マウスモノクローナルTFF1抗体は、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図9)。
【0123】
1C6マウスモノクローナルTFF1抗体は、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図10)。
【0124】
1C6マウスモノクローナルTFF1抗体は、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を有意に低下させた(図11)。
【0125】
実施例17. 高次構造特異的TFF3マウスモノクローナル抗体1D8によるヒト癌細胞株における細胞生存の阻害
抗体による処理に反応しての細胞生存を、前述のMTTアッセイにより評価した。各点は三重複測定の平均±標準誤差(SE)を表す。
【0126】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでDLD-1結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図12)。
【0127】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでHT-29結腸癌細胞の生存率を有意に低下させた(図13)。
【0128】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでMCF-7乳癌細胞の生存率を有意に低下させた(図14)。
【0129】
1D8マウスモノクローナルTFF3抗体は、インビトロでT47D乳癌細胞の生存率を有意に低下させた(図15)。
【0130】
癌療法のための組成物の投与
本明細書に記載の高次構造特異的TFF特異的抗体を用いて、腫瘍細胞の成長を阻害する、または腫瘍細胞を死滅させる。癌療法に加えて、この方法は前癌状態もしくは病変または非癌過剰増殖障害を患うかその発症リスクの高い者に対して臨床上の利益を与えるために有用である。
【0131】
TFFを阻害する際に役立つ薬剤(例えば、本発明のペプチドまたは核酸)はそれ自体で、または1つもしくは複数の薬学的に許容される希釈剤、担体、および/もしくは賦形剤と組み合わせての組成物の形で用いうる。
【0132】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤」なる語句は、薬学的組成物を調製する際に有用であり、本発明の薬剤と同時投与してもよく、同時に本発明の薬剤にその所期の機能を実行させ、かつ一般に安全、非毒性で、生物学的にもそれ以外でも有害ではない物質を含むことが意図される。薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤の例には、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤、乳剤などが含まれる。希釈剤、担体、および/または賦形剤は、等張性および化学的安定性を増強する物質などの少量の添加物を含んでいてもよい。
【0133】
当技術分野において公知の様々な薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤を、本発明の組成物において用いてもよい。理解されるであろうとおり、そのような希釈剤、担体、および/または賦形剤の選択はある程度までは用いる薬剤の性質、組成物の所期の剤形、およびその投与様式によって規定されることになる。例として、アンチセンスまたはiRNAを発現するために適合させたベクターなどの核酸の投与の場合、適当な担体には等張溶液、水、水性食塩溶液、水性デキストロース溶液などが含まれる。
【0134】
標準の希釈剤、担体、および/または賦形剤に加えて、本発明の薬学的組成物は追加の成分と共に、または薬剤の活性を増強する、もしくは薬剤の完全性の保護を助けるための様式で製剤してもよい。例えば、組成物は補助剤、または被験者への投与後、薬剤の分解に対する保護を提供する、もしくは抗原性を低減する成分をさらに含んでいてもよい。または、薬剤を特定の細胞、組織または腫瘍を標的とさせるように改変してもよい。
【0135】
加えて、抗体を、特定の場合に被験者にとって有益でありうる他の成分と共に製剤する。例えば、任意で、1つまたは複数の抗新生物剤を同時投与するか、または製剤中に組み込む。そのような薬剤の例には下記が含まれる:アルキル化剤(例えば、クロラムブシル(Leukeran(商標))、シクロホスファミド(Endoxan(商標)、Cycloblastin(商標)、Neosar(商標)、Cyclophosphamide(商標))、イホスファミド(Holoxan(商標)、Ifex(商標)、Mesnex(商標))、チオテパ(Thioplex(商標)、Thiotepa(商標)));代謝拮抗剤/S相阻害剤(例えば、メトトレキセートナトリウム(Folex(商標)、Abitrexate(商標)、Edertrexate(商標))、5-フルオロウラシル(Efudix(商標)、Efudex(商標))、ヒドロキシ尿素(Droxia(商標)、ヒドロキシ尿素、Hydrea(商標))、アムサクリン、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、ダカルバジン、チオグアニン(Lanvis(商標)));代謝拮抗剤/細胞分裂毒(例えば、エトポシド(Etopophos(商標)、エトポシド、Toposar(商標))、ビンブラスチン(Velbe(商標)、Velban(商標))、ビンデスチン(Eldesine(商標))、ビノレルビン(Navelbine(商標))、パクリタキセル(Taxol(商標)));抗生物質型薬剤(例えば、ドキソルビシン(Rubex(商標))、ブレオマイシン(Blenoxane(商標))、ダクチノマイシン(Cosmegen(商標))、ダウノルビシン(Cerubidin(商標))、マイトマイシン(Mutamycin(商標)));ホルモン剤(例えば、アミノグルタチミド(Cytadren(商標));アナストロゾール(Arimidex(商標))、エストラムスチン(Estracyt(商標)、Emcyt(商標))、ゴセレリン(Zoladex(商標))、ヘキサメチルメラニン(Hexamet(商標))、レトロゾール(Femara(商標))、アナストロゾール(Arimidex(商標))、タモキシフェン(Estroxyn(商標)、Genox(商標)、Novaldex(商標)、Soltamox(商標)、Tamofen(商標)));または任意の複数の抗新生物剤の任意の組み合わせ(例えば、アドリアマイシン/5-フルオロウラシル/シクロホスファミド(FAC)、シクロホスファミド/メトトレキセート/5-フルオロウラシル(CMF))。本発明の抗体を、本明細書において特に言及するもの以外の化合物および薬剤と共に、認められた薬学的慣例に従って製剤してもよい。
【0136】
用いる投与の様式、および本明細書において前述した適当な薬学的賦形剤、希釈剤および/または担体に応じて、本発明の組成物を溶液、経口投与可能な液体、注射可能な液体、錠剤、コーティング錠、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、坐剤、経皮パッチ、懸濁剤、乳剤、徐放性製剤、ゲル剤、エアロゾル、リポソーム、散剤および免疫リポソームなどの慣例的剤形に変換する。選択される剤形は用いることが望まれる投与の様式、治療する障害および用いる薬剤の性質を反映することになる。特に好ましい剤形には、経口投与可能な錠剤、ゲル剤、丸剤、カプセル剤、半固体、散剤、徐放性製剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアロゾル、軟膏または局所投与用の溶液、および注射可能な液体が含まれる。
【0137】
当業者であれば、適当な剤形および製剤法を容易に理解するであろう。組成物は、特定の薬剤および成分を互いに接触または混合することにより調製することができる。次いで、必要があれば、生成物を所望の製剤に成形する。例として、組成物を製剤する特定の方法は、Gennaro AR: Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 2000などの参照文献において見いだすことができる。
【0138】
組成物中の本発明の抗体の量は、組成物のタイプ、単位用量のサイズ、担体、希釈剤および/または賦形剤の種類、ならびに当業者には周知の他の因子に応じて大きく変動しうる。最終組成物は0.0001重量パーセント(%w)から100%w、好ましくは0.001%wから10%wの本発明の活性物質を含むことができ、残りは任意の他の活性物質、ならびに/または担体、希釈剤および/もしくは賦形剤である。
【0139】
本発明の任意の薬剤または組成物の投与は、所望の活性(腫瘍細胞増殖の阻害)を被験者の体内の標的部位に送達可能な任意の手段によって行うことができる。「標的部位」は、増殖障害を有するか、または増殖障害に感受性でありえ、かつ1つまたは複数の細胞、組織、または特定の腫瘍を含みうる、体内の任意の部位でありうる。
【0140】
例えば、投与には非経口投与経路、全身投与経路、経口および局所投与が含まれうる。例えば、投与は注射、皮下、眼窩内、眼、脊髄内、大槽内、局所、注入(例えば、徐放装置もしくは浸透圧ポンプなどのミニポンプまたは皮膚パッチを用いて)、埋め込み、エアロゾル、吸入、乱切、腹腔内、嚢内、筋肉内、腫瘍内、鼻内、経口、口腔内、経皮、肺、直腸または膣でありうる。理解されるであろうとおり、選択される投与経路は被験者の体内の標的部位の位置、ならびに用いている薬剤または組成物の性質に依存しうる。
【0141】
投与する本発明の抗体または組成物の用量、投与期間、および一般的な投与法は、治療する状態の性質、被験者の症状の重症度、治療する任意の腫瘍のサイズ、治療する標的部位、選択される投与経路、ならびに被験者の年齢、性別および/または全身の健康などの変数に応じて、被験者間で異なることがある。本発明が関連する分野の当業者であれば、いかなる過度の実験を行うこともなく、そのような因子を考慮して適当な投与法を容易に理解するか、または決定することができるであろう。本発明の抗体の投与は、少なくとも部分的に所望の反応を得るために必要な量である。投与は、単一の1日用量、または適宜いくつかの別々の分割用量の投与を含みうる。投与法は異なる投与様式または経路を組み合わせることもできる。例えば、腫瘍内注射および全身投与を組み合わせることができる。
【0142】
方法は、治療する状態を考慮して、被験者にとって有益でありうる追加の薬剤または組成物の投与などの、さらなる段階をさらに含んでいてもよい。例えば、増殖障害を治療する際に役立つ他の薬剤(前述の抗新生物剤など)を投与しうる。そのような追加の薬剤および組成物を、本発明の薬剤および組成物と同時に、または逐次様式で投与しうる(例えば、追加の薬剤または組成物を本発明の薬剤または組成物の投与の前または後に投与しうる)ことが理解されるべきである。薬剤または組成物の逐次送達に関して、1つの薬剤または組成物の他のものの後の逐次投与は直後に行う必要はないが、直後が好ましいこともあることが理解されるべきである。薬剤または組成物の送達の間に時間遅れがあってもよい。遅延期間は、治療する状態および送達する組成物または薬剤の性質などの因子に依存することになる。しかし、例として、遅延期間は数時間から数日または数ヶ月の間でありうる。
【0143】
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前述の記載は例示を意図するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、これは添付の特許請求の範囲によって規定される。他の局面、利点、および改変は添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0144】
本発明を以下の実施例においてさらに記載することになるが、これらは特許請求の範囲において記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、該TFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する抗体。
【請求項2】
前記高次構造エピトープが表3に示す高次構造エピトープから選択される、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、表4に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む抗体。
【請求項4】
トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドまたはヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、該TFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する抗体。
【請求項5】
前記高次構造エピトープが表1に示す高次構造エピトープから選択される、請求項4記載の抗体。
【請求項6】
トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドまたはヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、表2に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む抗体。
【請求項7】
トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体、TFF3ヘテロ二量体ポリペプチド、またはTFF-3ホモ二量体の凝集物に特異的に結合する抗体であって、該TFF3ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する抗体。
【請求項8】
前記高次構造エピトープが表5に示す高次構造エピトープから選択される、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体ポリペプチドまたはヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、表6に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む抗体。
【請求項10】
1C6、3F6、2C5、1D、1A12、3A2、3A5、3B8、3F4、3F12、3G4、1A11、2B3、3B4、1C4、2C12、2A8、3D7、1E4、2E2、2H4、1D8、および2D7から選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生される、請求項1から9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項11】
TFF1結合成分およびTFF3結合成分を含む、キメラ抗体組成物。
【請求項12】
多量体である、請求項1から11のいずれか一項記載の抗体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項記載の抗体を含む組成物であって、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物。
【請求項14】
腫瘍細胞の増殖または生存を阻害する方法であって、該細胞を請求項1から12のいずれか一項記載の抗体と接触させる段階を含む方法。
【請求項15】
前記腫瘍細胞が上皮腫瘍細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記上皮腫瘍細胞が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍から選択される腫瘍由来である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
それを必要としている被験者において癌、細胞増殖障害、または細胞生存障害を治療または予防する方法であって、該被験者に請求項1から12のいずれか一項記載の抗体を投与する段階を含む方法。
【請求項18】
前記癌が上皮癌である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記上皮癌が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記細胞増殖障害または細胞生存障害が、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、子宮内膜症、サイトカイン変性、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記被験者がヒトである、請求項14から20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
化学療法剤または抗新生物剤である第二の化合物の投与をさらに含む、請求項14から20のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
被験者由来の試験試料を請求項1から12のいずれか一項記載の抗体と接触させる段階、および該試料に結合する抗体のレベルを検出する段階を含む、該被験者の癌、細胞増殖障害、または細胞生存障害を診断する方法であって、対照試料における結合のレベルと比較した該試料における抗体結合のレベルの上昇が、癌、細胞増殖障害、または細胞生存障害の存在を示す方法。
【請求項24】
前記癌が上皮癌である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記上皮癌が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記細胞増殖障害または細胞生存障害が、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、子宮内膜症、サイトカイン変性、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記被験者がヒトである、請求項23から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、該TFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する抗体。
【請求項2】
前記高次構造エピトープが表3に示す高次構造エピトープから選択される、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
トレフォイル因子1(TFF1)ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、表4に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む抗体。
【請求項4】
トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドまたはヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、該TFF1ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する抗体。
【請求項5】
前記高次構造エピトープが表1に示す高次構造エピトープから選択される、請求項4記載の抗体。
【請求項6】
トレフォイル因子1(TFF1)ホモ二量体ポリペプチドまたはヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、表2に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む抗体。
【請求項7】
トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体、TFF3ヘテロ二量体ポリペプチド、またはTFF-3ホモ二量体の凝集物に特異的に結合する抗体であって、該TFF3ポリペプチドの高次構造エピトープに結合する抗体。
【請求項8】
前記高次構造エピトープが表5に示す高次構造エピトープから選択される、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
トレフォイル因子3(TFF3)ホモ二量体ポリペプチドまたはヘテロ二量体ポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、表6に示す抗原決定基から選択される抗原決定基を含む抗体。
【請求項10】
1C6、3F6、2C5、1D、1A12、3A2、3A5、3B8、3F4、3F12、3G4、1A11、2B3、3B4、1C4、2C12、2A8、3D7、1E4、2E2、2H4、1D8、および2D7から選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生される、請求項1から9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項11】
TFF1結合成分およびTFF3結合成分を含む、キメラ抗体組成物。
【請求項12】
多量体である、請求項1から11のいずれか一項記載の抗体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項記載の抗体を含む組成物であって、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物。
【請求項14】
腫瘍細胞の増殖または生存を阻害する方法であって、該細胞を請求項1から12のいずれか一項記載の抗体と接触させる段階を含む方法。
【請求項15】
前記腫瘍細胞が上皮腫瘍細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記上皮腫瘍細胞が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍から選択される腫瘍由来である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
それを必要としている被験者において癌、細胞増殖障害、または細胞生存障害を治療または予防する方法であって、該被験者に請求項1から12のいずれか一項記載の抗体を投与する段階を含む方法。
【請求項18】
前記癌が上皮癌である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記上皮癌が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記細胞増殖障害または細胞生存障害が、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、子宮内膜症、サイトカイン変性、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記被験者がヒトである、請求項14から20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
化学療法剤または抗新生物剤である第二の化合物の投与をさらに含む、請求項14から20のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
被験者由来の試験試料を請求項1から12のいずれか一項記載の抗体と接触させる段階、および該試料に結合する抗体のレベルを検出する段階を含む、該被験者の癌、細胞増殖障害、または細胞生存障害を診断する方法であって、対照試料における結合のレベルと比較した該試料における抗体結合のレベルの上昇が、癌、細胞増殖障害、または細胞生存障害の存在を示す方法。
【請求項24】
前記癌が上皮癌である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記上皮癌が、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、甲状腺癌、胆管癌、食道癌、脳癌、黒色腫、多発性骨髄腫、血液腫瘍、およびリンパ系腫瘍から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記細胞増殖障害または細胞生存障害が、角化細胞過剰増殖、炎症細胞浸潤、子宮内膜症、サイトカイン変性、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の形成異常腫瘤からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記被験者がヒトである、請求項23から26のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−505847(P2010−505847A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531459(P2009−531459)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/021355
【国際公開番号】WO2008/042435
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509093945)ニューレン ファーマシューティカルズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/021355
【国際公開番号】WO2008/042435
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509093945)ニューレン ファーマシューティカルズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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