説明

トレンドグラフ表示システム

【課題】熱画像センサからの熱画像データに係るトレンドグラフをリアルタイムに表示する。
【解決手段】複数の画素で監視エリア内から放射された赤外線量を検知し、この検知した赤外線量を熱画像データとして出力する熱画像センサ10と、熱画像データに基づき設定された監視エリア内における検知エリアの範囲情報を示すエリア範囲情報と、当該検知エリア内の温度変化をグラフ描画する際に用いる設定情報の選択に関する表示設定情報と、選択された設定情報で演算した検知エリア内における温度変化の演算値を示す演算値情報とに基づき、熱画像センサから逐次入力する熱画像データのトレンドグラフ表示するトレンドグラフ表示装置20とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象となる温体から放射される赤外線を検知する赤外線素子を用いて熱画像データを取得する熱画像センサを用いて取得した任意の熱画像データを所望の設定内容でトレンドグラフの作成・表示をリアルタイムで行うトレンドグラフ表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体をはじめ検知対象となる様々な温体(物体や領域)は、その温度に応じた赤外線を放射しており、この放射される赤外線の熱エネルギーを電気エネルギーに変換するゼーベック効果を利用した赤外線検知素子(サーモパイル)、焦電素子、ボロメータなどを搭載した放射温度計などの赤外線センサが知られている。この赤外線センサは、温体から放射される赤外線を赤外線検知素子で構成される各画素で受光して画素の温度変化を生じさせ、その温度変化による素子の電気的な性質の変化を読み出している。
【0003】
また、この種の赤外線センサを用いて対象物の温度を測定してその対象物の温度変化を視覚的に観察するため、赤外線センサにて対象物の温度を検出し、その温度範囲における所定の階調で識別表示させる装置も知られている。なお、この種の赤外線センサを用いた装置としては、例えば下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3834749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、この種の赤外線センサを例えば不審者の侵入を検知する人体検知センサ、火災から放射される赤外線を検知する炎検知センサ、工場内のボイラー室などで発生する機器の過熱や生産ライン上での異常温度等を検知する温度監視センサとして採用されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置に限らず一般的な赤外線素子による熱画像装置では、検出した赤外線量に基づく熱画像データを解析してトレンドグラフ化する際に、PCなどの管理端末へ取得した熱画像データを一旦保存し、この保存した熱画像データを基に解析ソフトを用いて時系列的なデータ解析を行うことでトレンドグラフを作成していた。従って、監視エリア内における赤外線量の変化をリアルタイムにグラフ表示することができないため、監視エリア内で異常が発生した場合に即座に対応することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱画像センサで取得した熱画像データを所望の設定内容に基づきリアルタイムでトレンドグラフの作成・表示が可能なトレンドグラフ表示システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のトレンドグラフ表示システムは、複数の画素で監視エリア内から放射された赤外線量を検知し、この検知した赤外線量を熱画像データとして出力する熱画像センサと、
前記熱画像データに基づき設定された前記監視エリア内における検知エリアの範囲情報を示すエリア範囲情報と、当該検知エリア内の温度変化をグラフ描画する際に用いる設定情報の選択に関する表示設定情報と、前記選択された設定情報で前記検知エリア内の温度変化を算出した演算値を示す演算値情報とに基づき、前記熱画像センサから逐次入力する熱画像データのトレンドグラフを表示制御するトレンドグラフ表示装置と、
で構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載のトレンドグラフ表示システムは、請求項1記載のトレンドグラフ表示システムにおいて、前記トレンドグラフ表示装置は、
前記熱画像データに基づき設定された前記監視エリア内における前記検知エリアの範囲情報を示すエリア範囲情報を出力するエリア設定手段と、前記検知エリア内の温度変化をグラフ描画する際に用いる前記設定情報の選択に関する表示設定情報を出力する表示設定手段とを有する設定部と、
前記検知エリア内の温度変化を前記表示設定手段で設定された前記設定情報に基づき算出した演算値を演算値情報として出力する演算手段を有する演算判別部と、
前記設定部から出力された前記エリア範囲情報と前記表示設定情報、前記演算判別部から出力された演算値情報とに基づき、前記熱画像センサから逐次入力する熱画像データのトレンドグラフを表示制御する表示制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載のトレンドグラフ表示システムは、請求項2記載のトレンドグラフ表示システムにおいて、前記設定部は、前記検知エリアにおいて異常が発生したことを外部通知するために設定された警報内容を示す警報設定情報を出力する警報設定手段を有し、
前記演算判別部は、前記演算手段で算出した前記検知エリア毎の演算値情報と前記警報設定手段で設定された警報設定情報とを比較して前記検知エリア毎の演算値情報が異常であるか否かを判別し、その判別結果を警報判別情報として出力する異常判別手段を有し、
前記表示制御部は、前記異常判別手段から前記演算値に異常があることを示す警報判別信号を入力すると、前記熱画像データ及び当該熱画像データのトレンドグラフにおける当該警報判別情報に該当する検知エリアを、前記警報設定手段から出力された前記警報設定情報に応じて識別可能に表示制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載のトレンドグラフ表示システムは、請求項1〜3の何れかに記載のトレンドグラフ表示システムにおいて、前記熱画像センサは、異常発生時に取得される熱画像データを保存する熱画像データ保存領域を有し、該赤外線検知部で検知した赤外線量に基づく赤外線検知情報が異常であるか否かの判別する異常識別用閾値を記憶するセンサ側記憶部と、
前記赤外線検知情報と前記異常識別用閾値とを比較し、前記赤外線検知情報が異常であると判別した場合に当該赤外線検知情報に基づく熱画像データを作成し、前記センサ側記憶部の熱画像データ保存領域に保存させる処理制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載のトレンドグラフ表示システムは、請求項1〜4の何れかに記載のトレンドグラフ表示システムにおいて、前記熱画像センサは、前記熱画像データや前記処理制御部において判別された前記赤外線検知情報の異常の有無を示す判定信号を出力する入出力部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトレンドグラフ表示システムによれば、監視エリアの任意の検知エリア内における赤外線量の変化を所望の演算値で作成されたトレンドグラフを用いてリアルタイムに温度監視することができる。また、検知エリア毎に警報設定が行え、検知エリア内で異常が発生したときにトレンドグラフと連動してリアルタイムに警報発報が可能となるため、利便性とセキュリティ性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るトレンドグラフ表示システムが採用される監視システムの一例を示す概念図である。
【図2】同トレンドグラフ表示システムの構成要件を示す概略ブロック図である。
【図3】熱画像センサの使用例を示す概念図である。
【図4】熱画像センサで取得された熱画像データの表示例を示す熱画像データ表示画面の説明図である。
【図5】図4における熱画像データのトレンドグラフ表示例を示すトレンドグラフ表示画面の説明図である。
【図6】同トレンドグラフ表示システムにおける熱画像センサの処理動作を示すフローチャート図である。
【図7】同トレンドグラフ表示システムにおけるトレンドグラフ表示装置の処理動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
なお、以下の説明では、本例のトレンドグラフ表示システム1を、図1に示すように例えば工場内のボイラー室、冷凍食品や熱処理を行う各種製品の製造ラインなどにおいて、所定領域内に設定温度以上(又は以下)の温体が侵入若しくは発生したか否かを監視する監視システムに採用した例で説明する。
【0017】
[トレンドグラフ表示システムの構成]
まず、本発明に係るトレンドグラフ表示システムの構成について、図2〜5を参照しながら説明する。
図2に示すように、トレンドグラフ表示システム1は、対象物から放射される赤外線を検知し、この検知した赤外線に基づく熱画像データを作成する熱画像センサ10、熱画像センサ10で取得した熱画像データとオペレータにより設定された表示制御情報とに基づきトレンドグラフの表示制御をリアルタイムで行うトレンドグラフ表示装置20とで構成される。
【0018】
<熱画像センサの構成>
熱画像センサ10は、赤外線検知部11、A/D変換部12、センサ側記憶部13、処理制御部14、センサ側入出力部15を備えて構成される。
【0019】
赤外線検知部11は、例えば複数の画素を有するサーモパイル素子からなる多画素型熱型赤外線センサで構成され、各画素に入射する入射赤外線を画素毎に光電変換し、その電気信号(アナログ信号)を画素毎に出力している。
【0020】
A/D変換部12は、赤外線検知部11からの画素値(アナログ信号)をA/D変換してディジタル信号化した後、処理制御部14に出力している。
【0021】
センサ側記憶部13は、赤外線検知部11で検知した赤外線量に基づくディジタル信号を赤外線検知情報として画素毎に記憶している。また、センサ側記憶部13は、監視エリア内での温度変化に異常が発生したか否かを判別するための閾値となる異常識別用閾値を記憶している。
【0022】
さらに、センサ側記憶部13は、センサ本体の設置状態情報(例えば天井や床などの設置場所や天地位置など)、異常発生時に取得される熱画像データを作成するための処理情報である画像処理情報(例えば、補正が必要な画素の特定や周囲温度や各画素の赤外線量に応じた補正量などの画素補正処理情報など)の他、熱画像センサ10を構成する各部の各種制御データなどを記憶している。
【0023】
また、センサ側記憶部13は、赤外線検知部11で検知した赤外線量が異常識別用閾値を超えたときの各画素の赤外線検知情報に基づき作成された熱画像データを保存するための熱画像データ保存領域13aを有し、異常発生時に処理制御部14から出力される熱画像データを保存している。また、最新の熱画像データを保存する際に保存領域の容量が不足していた場合、最も古いデータから順次削除する構成や、一定期間が経過すると最も古いデータから順次削除される構成となるよう予め設定することもできる。
【0024】
なお、異常識別用閾値は、例えば使用環境、監視エリア内の検知範囲、検知対象となる異常と判断する状態の種類などに応じて設定される各種設定内容や、特殊な熱量変化に対応した多段階の閾値設定などに応じて最適な値を設定することができる。
【0025】
具体的な警報設定例としては、監視エリア内における上限温度値/下限温度値、平均温度値の監視、温度幅(上昇/下降率)の変化の監視、設定時間以内/以上の温度変化の監視、所定温度のエリアの拡大/縮小の監視、温度幅変化の拡大/縮小の監視、所定数以上の極大点の出現/減少の監視、温度ムラの監視、エリア間の(最大、最小、平均)の差分などを適宜設定することができる。すなわち、これら警報設定の任意の組み合わせに基づき異常識別用閾値を設定することで、本例の火災検知以外に例えば配電盤内の構成部品(ブレーカ、端子部、リレーなど)、変圧器、送風機、リフロー炉、排気ダクトにおける異常発熱の監視、暗闇での熱源(人体や動物)の監視、パネルヒータなどの品質検査に用いることができる。
【0026】
処理制御部14は、判別処理手段14a、画像処理手段14bを備え、赤外線検知部11で検知した赤外線量に基づく熱画像データを作成している。
【0027】
判別処理手段14aは、センサ側記憶部13に記憶される画素毎の赤外線検知情報と異常識別用閾値とを比較し、赤外線検知情報が異常識別用閾値を超えた場合にのみ、異常状態が発生したと判別する。そして、判別処理手段14aは、異常発生にしたことを外部に通知するため、例えばEthernet(登録商標)やインターネットなどの通信ネットワーク15aを介して接続されるトレンドグラフ表示装置20に対して異常発生信号を出力するとともに、必要に応じて例えば警報ブザー16や警報ランプ17など警報手段へ異常発生信号を接点信号として出力している。
【0028】
また、判別処理手段14aは、異常発生時における監視エリア内の熱画像をセンサ側記憶部13に保存するためのトリガとして、画像処理手段14bに異常発生信号を出力している。
【0029】
画像処理手段14bは、判別処理手段14aから異常発生信号を入力すると、センサ側記憶部13に記憶された画像処理情報と各画素が検知した赤外線量に応じた赤外線検知情報とに基づき画像処理を行って監視エリア内の熱画像データを作成し、センサ側記憶部13に出力している。
【0030】
センサ側入出力部15は、判別処理手段14aにおいて異常判別された際の判別の有無を示す判別信号(接点信号)の出力を行う接点I/Fや熱画像データの出力や外部からの各種設定内容の入力を行うための通信I/Fで構成される。
【0031】
<トレンドグラフ表示装置の構成>
図2に示すように、トレンドグラフ表示装置20は、例えばマウスやキーボードなどの入力手段を有するネットワーク通信可能な端末装置で構成され、表示装置側入出力部21、設定部22、表示装置側記憶部23、演算判別部24、表示制御部25、表示部26を備えている。トレンドグラフ表示装置20は、通信ネットワーク15aを介して接続される熱画像センサ10からの熱画像データと、オペレータ所望の表示制御情報(検知エリアの設定に関する情報、トレンドグラフ作成に基づく演算値や表示形態に関する設定情報、警報に関する設定情報など)とに基づき作成したトレンドグラフをリアルタイムに表示制御している。
【0032】
なお、本明細書における「演算値」とは、熱画像センサ10で取得した熱画像データ内で指定された検知エリアの温度変化をトレンドグラフで表示する際に、各グラフの描画に用いる演算結果の値であり、設定部22で設定されたオペレータ所望の設定情報に基づき演算判別部24にて算出される。
【0033】
表示装置側入出力部21は、熱画像センサ10からの熱画像データの出力や外部からの各種設定内容の入力を行うための通信I/Fで構成され、熱画像センサ10からの熱画像データや熱画像データに異常が発生したことを示す異常発生信号を逐次入力している。
【0034】
設定部22は、エリア設定手段22a、表示設定手段22b、警報設定手段22cを備え、オペレータによる入力手段の所定操作に基づき、監視エリア内における検知エリアの範囲設定(エリア範囲情報)、所望の演算値におけるトレンドグラフの表示に関する表示設定(表示設定情報)、監視エリア内における警報設定(警報設定情報)などの表示制御情報の設定をしている。
【0035】
エリア設定手段22aは、監視エリア内においてオペレータが所望する検知エリアの範囲設定を行い、この設定された検知エリアの範囲情報をエリア範囲情報として表示制御部25に出力している。
【0036】
具体的な検知エリアの範囲設定方法としては、熱画像センサ10からの熱画像データが表示された表示画面を視認しながらマウスを用いて始点位置と終点位置を設定して検知エリアの範囲を設定する方法、熱画像データにおける画素の位置を座標表示(例えばX:○○、Y:××)した設定画面に始点・終点位置を直接入力して検知エリアの範囲を設定する方法などがあげられる。
なお、始点位置と終点位置を同じ位置で設定した場合、検知エリアが1画素分として設定される。また、検知エリアは、熱画像データにおける画素範囲内であればエリア数やエリア範囲の大小は特に限定されず、監視エリア内において検知エリアを複数個同時に設定したり、大きさの異なる複数の検知エリアを設定したりすることも可能である。
【0037】
表示設定手段22bは、オペレータの所望のトレンドグラフを表示するための情報である表示設定情報(設定情報の選択、グラフの表示形態など)を設定し、この設定された表示設定情報を表示制御部25に出力している。
【0038】
ここで、表示設定情報の具体例について説明する。設定情報の選択に関する表示設定情報としては、エリア設定手段22aで設定された検知エリア内における上限温度値/下限温度値の表示設定、平均温度値の表示設定、温度幅(上昇/下降率)の表示設定、各エリアの最大値、最小値、平均値、エリア間の差分値などの演算設定、その他所望の設定情報による演算値の表示設定などがあげられる。すなわち、これらの設定が行われることで、設定内容に応じた演算値を得るための演算式が選択される。
また、グラフの表示形態に関する表示設定情報としては、例えば表示するグラフの時間軸や表示温度の設定、各グラフの色別設定などがあげられる。
【0039】
警報設定手段22cは、エリア設定手段22aで設定された検知エリアにおいて異常が発生したことを外部通知するための警報内容の設定を行い、この設定された警報内容を警報設定情報として表示制御部25に出力している。
【0040】
警報設定情報の一例としては、異常発生時を判別するための警報判別情報(警報設定値以上/以下になった場合、所定の割合以上/以下で演算値が変化した場合など)、警報を発報する検知エリアの選択設定、選択された検知エリアを識別可能に表示する設定(点滅表示、背景色と異なる色での表示や引き出し線による識別表示)などがあげられる。
【0041】
表示装置側記憶部23は、設定部22にて選択された設定情報に基づく演算をする際に用いられる演算式、この演算式で算出された検知エリア毎の演算値(例えば1台の熱画像センサ10につき500点の演算値の過去データを時系列データ(CSV形式)で保存)や警報設定の有無などのトレンドグラフ表示内容、熱画像センサ10から出力された熱画像データ(例えばJPEG形式で保存)、設定部22で設定された表示制御情報(エリア範囲情報、表示設定情報、警報設定情報)の他、トレンドグラフ表示装置20を構成する各部の駆動に関する制御データを記憶している。
【0042】
なお、表示装置側記憶部23に記憶される検知エリア毎の演算値は、検知エリアが変更された場合に、変更された検知エリアの演算値を自動消去する構成、変更された検知エリアに関する過去データを削除せずに一定期間保存する構成など、装置の使用環境に応じて適宜設定可能である。
【0043】
演算判別部24は、設定部22で設定された設定情報に基づき表示装置側記憶部23に記憶された演算式を用いて算出する演算手段24a、設定部22で設定された警報設定情報と演算手段24aで得られた演算値とを比較して検知エリア毎の演算値情報が異常であるか否かを判別する異常判別手段24bで構成されている。
【0044】
演算手段24aは、熱画像センサ10で検知した熱画像データを逐次読み込み、この読み込んだ熱画像データと設定部22から表示設定情報とに基づき演算値を算出している。すなわち、設定部22で選択された演算値に係る設定情報を表示設定情報として入力すると、選択された設定情報に基づく演算式を表示装置側記憶部23から読み取り、所定の測定間隔(任意に設定可能)で検知エリア毎の演算値を算出している。そして、演算手段24aは、この演算値を演算値情報として表示制御部25に出力している。
【0045】
異常判別手段24bは、演算手段24aで算出した検知エリア毎の演算値情報と警報設定手段22cで設定された警報設定情報(警報内容)とを比較して検知エリア毎の演算値情報が異常であるか否かを判別し、その判別結果を警報判別情報として表示制御部25に出力している。
【0046】
表示制御部25は、設定部22で設定された表示制御情報(エリア範囲情報、表示設定情報、警報設定情報)と、演算判別部24から入力する演算値情報、警報判別情報とに基づく表示制御を行うための表示制御信号を表示部26に出力している。表示制御部25が行う表示制御としては、熱画像データの色別表示(グレースケール、レインボー、グラデーションなど)、複数の熱画像センサ10からの各熱画像データを同時表示する制御、エリア設定手段22aで設定された各検知エリアを識別可能に表示(色別表示、エリア名表示など)する制御、各検知エリアとトレンドグラフとに関連性を持たせて表示する制御、警報設定を行った検知エリアについて識別可能に表示(点滅表示、背景と異なる色で表示、引き出し線などを用いて表示)があげられる。また、表示制御部25は、熱画像センサ10から熱画像データに異常が発生したことを示す異常発生信号を入力すると、この情報を表示するための表示制御信号を表示部26に出力している。
【0047】
表示部26は、例えば液晶ディスプレイやCRTなどの表示装置で構成され、表示制御部25からの表示制御信号に基づく表示内容に応じて、熱画像センサ10からの熱画像データに関する各種情報や検知エリア毎のトレンドグラフをリアルタイム表示している。
【0048】
ここで、表示部26における具体的な表示例を説明する。図3に示すように、工場内において被測定物であるパネルヒータの品質検査を行った場合、表示部26では、図4に示すような熱画像センサ10からの熱画像データを表示する「熱画像データ表示画面26a」と、図5に示すような熱画像データに関するトレンドグラフを表示する「トレンドグラフ表示画面26b」が表示される。
【0049】
図4に示すように、熱画像データ表示画面26aは、設定部22で設定された表示設定情報に基づき、熱画像データに検知エリア(No.1〜4)を表示している。また、図5に示すように、トレンドグラフ表示画面26bにおけるトレンドグラフ表示欄26cには、設定部22で設定された表示設定情報に基づき、X軸を時間(検知時間)、Y軸を温度(℃)としてトレンドグラフを表示している。さらに、図5の下段には検知エリア毎の設定内容が表示される設定内容表示欄26dが設けられており、「番号」:設定された検知エリア順に割り振られるエリア判別用情報、「センサ番号」:使用した熱画像センサ10を識別するための情報、「始点X」:熱画像データにおける始点のX座標の位置、「始点Y」:熱画像データにおける始点のY座標の位置、「終点X」:熱画像データにおける終点のX座標の位置、「終点Y」:熱画像データにおける終点のY座標の位置、「領域」:各検知エリアにおけるトレンドグラフ表示をする演算値の内容、「警報」:警報設定の有無を示す情報、をそれぞれ表示している。
【0050】
なお、本例では、設定手段で設定された最大温度の表示(検知エリアNo.2)、最小温度の表示(検知エリアNo.3、No.4)、平均温度の表示(検知エリアNo.1)、警報設定の表示(検知エリアNo.2〜No.4)をそれぞれ表示し、警報が発報されると、図4に示すように異常が発生したエリアが「検知エリアNo.2」であると識別可能に表示するため、熱画像データの画面に「検知エリアNo.2」を示す「警報No.2」の文字を引き出し表示するとともに、図5に示す「検知エリアNo.2」のトレンドグラフ及び/又は設定内容表示欄における「No.2」の欄を点滅表示する例である。
【0051】
[トレンドグラフ表示システムの処理動作]
次に、上述したトレンドグラフ表示システム1における処理動作として、図6、7を参照しながら説明する。ここでは、熱画像センサ10において熱画像データを取得する際の処理動作(図6)、トレンドグラフ表示装置20にて熱画像センサ10で取得した熱画像データをトレンドグラフ表示する際の処理動作(図7)についてそれぞれ説明する。
【0052】
<熱画像センサの処理動作>
まず、熱画像センサ10において熱画像データを取得する際の処理動作について説明する。
図6に示すように、熱画像センサ10は、所定の監視エリアが監視可能な位置に配置されており、まず監視エリア内の赤外線量を検知すると(ST1)、赤外線検知部11の各画素で検知した赤外線量とセンサ側記憶部13に記憶された画像処理情報とに基づき熱画像データを作成する(ST2)。そして、作成した熱画像データをトレンドグラフ表示装置20に出力した後(ST3)、作成した熱画像データにおける赤外線量が異常識別用閾値を超えたか否かを判別する(ST4)。
【0053】
このとき、作成した熱画像データにおける赤外線量が異常識別用閾値を超えた場合は(ST4−Yes)、監視エリア内に異常状態が発生したと判別し、熱画像データに保存日時を付した状態で保存した後(ST5)、再度ST1へ戻る。
一方、検知した赤外線量が異常識別用閾値を超えなかった場合は(ST4−No)、監視エリア内が正常であると判別し、再度ST1へ戻る。
【0054】
<トレンドグラフ表示装置の処理動作>
次に、トレンドグラフ表示装置20にて熱画像センサ10で取得した熱画像データをトレンドグラフ表示する際の処理動作について説明する。
図7に示すように、トレンドグラフを表示する場合は、まず熱画像センサ10で取得した熱画像データを読み込む(ST11)。次に、読み取った熱画像データを視認しながら入力手段を操作し、表示制御情報(エリア範囲情報、表示設定情報、警報設定情報)を設定する(ST12)。
【0055】
ST12において設定された表示設定情報に基づき検知エリア毎の演算値を算出し(ST13)、この算出された演算値に基づくトレンドグラフを表示する(ST14)。そして、各検知エリアにおいて警報設定が有効であるか否かを判別する(ST15)。
【0056】
このとき、警報設定が有効であった場合は(ST15−Yes)、警報設定が有効な検知エリアの演算値が異常であるか否かを判別する(ST16)。
一方、警報設定が有効でなかった場合は(ST15−No)、トレンドグラフ表示を終了するか否かを判別する(ST18)。そして、トレンドグラフ表示を終了する場合は(ST18−Yes)、そのまま処理を終了し、トレンドグラフ表示を終了しない場合は(ST18−No)、検知エリア毎の演算値や警報内容などのトレンドグラフ表示内容を保存し(ST19)、再度ST11へ戻る。
【0057】
また、ST16において、演算値が異常であった場合は(ST16−Yes)、その検知エリアにおける警報を発報し(ST17)、ST18へ進み、トレンドグラフ表示を終了するか否かを判別する。
一方、演算値が異常でなかった場合は(ST16−No)、ST18へ進み、トレンドグラフ表示を終了するか否かを判別する。
【0058】
このように、上述したトレンドグラフ表示システム1は、熱画像センサ10で監視エリアの熱画像データを取得し、この取得した熱画像データがトレンドグラフ表示装置20へ出力される。トレンドグラフ表示装置20では、熱画像センサ10からの熱画像データを基にオペレータが検知エリアを設定するとともに、この検知エリア内の温度変化を所望の設定情報で算出した演算値に基づくトレンドグラフをリアルタイムに表示する。
【0059】
これにより、監視エリアの任意の検知エリア内における赤外線量の変化を所望の演算値でリアルタイムに温度監視することができる。また、検知エリア毎に警報設定が任意に行えるため、設定した警報設定情報の条件を満たした場合に、トレンドグラフと連動してリアルタイムに警報を発報することができる。
【0060】
ところで、上述した形態において、設定部22で設定された検知エリアに関するトレンドグラフを表示制御する構成として説明したが、設定部22で検知エリアを設定せずに監視エリア内全てにおけるトレンドグラフの表示内容を設定し表示制御する構成とすることもできる。
【0061】
また、熱画像センサ10において、取得した熱画像データが異常識別用閾値を超えた場合にのみ熱画像データ保存領域13aに保存する構成としたが、これに限定されることはなく、例えば熱画像データ保存領域13aの領域量によって所定時間(監視開始から終了まで)に取得した全ての熱画像データを保存する構成、取得した熱画像データを保存せずにトレンドグラフ表示装置20へ出力する構成など、使用環境や装置仕様に応じて適宜設定することができる。
【0062】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1…トレンドグラフ表示システム
10…熱画像センサ
11…赤外線検知部
12…A/D変換部
13…記憶部(13a…熱画像データ保存領域)
14…処理制御部(14a…判別処理手段、14b…画像処理手段)
15…入出力部(15a…通信ネットワーク)
16…警報ブザー
17…警報ランプ
20…トレンドグラフ表示装置
21…表示装置側入出力部
22…設定部(22a…エリア設定手段、22b…表示設定手段、22c…警報設定手段22c)
23…表示装置側記憶部
24…演算判別部(24a…演算手段、24b…異常判別手段)
25…表示制御部
26…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素で監視エリア内から放射された赤外線量を検知し、この検知した赤外線量を熱画像データとして出力する熱画像センサと、
前記熱画像データに基づき設定された前記監視エリア内における検知エリアの範囲情報を示すエリア範囲情報と、当該検知エリア内の温度変化をグラフ描画する際に用いる設定情報の選択に関する表示設定情報と、前記選択された設定情報で前記検知エリア内の温度変化を算出した演算値を示す演算値情報とに基づき、前記熱画像センサから逐次入力する熱画像データのトレンドグラフを表示制御するトレンドグラフ表示装置と、
で構成されることを特徴とするトレンドグラフ表示システム。
【請求項2】
前記トレンドグラフ表示装置は、
前記熱画像データに基づき設定された前記監視エリア内における前記検知エリアの範囲情報を示すエリア範囲情報を出力するエリア設定手段と、前記検知エリア内の温度変化をグラフ描画する際に用いる前記設定情報の選択に関する表示設定情報を出力する表示設定手段とを有する設定部と、
前記検知エリア内の温度変化を前記表示設定手段で設定された前記設定情報に基づき算出した演算値を演算値情報として出力する演算手段を有する演算判別部と、
前記設定部から出力された前記エリア範囲情報と前記表示設定情報、前記演算判別部から出力された演算値情報とに基づき、前記熱画像センサから逐次入力する熱画像データのトレンドグラフを表示制御する表示制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のトレンドグラフ表示システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記検知エリアにおいて異常が発生したことを外部通知するために設定された警報内容を示す警報設定情報を出力する警報設定手段を有し、
前記演算判別部は、前記演算手段で算出した前記検知エリア毎の演算値情報と前記警報設定手段で設定された警報設定情報とを比較して前記検知エリア毎の演算値情報が異常であるか否かを判別し、その判別結果を警報判別情報として出力する異常判別手段を有し、
前記表示制御部は、前記異常判別手段から前記演算値に異常があることを示す警報判別信号を入力すると、前記熱画像データ及び当該熱画像データのトレンドグラフにおける当該警報判別情報に該当する検知エリアを、前記警報設定手段から出力された前記警報設定情報に応じて識別可能に表示制御することを特徴とする請求項2記載のトレンドグラフ表示システム。
【請求項4】
前記熱画像センサは、異常発生時に取得される熱画像データを保存する熱画像データ保存領域を有し、該赤外線検知部で検知した赤外線量に基づく赤外線検知情報が異常であるか否かの判別する異常識別用閾値を記憶するセンサ側記憶部と、
前記赤外線検知情報と前記異常識別用閾値とを比較し、前記赤外線検知情報が異常であると判別した場合に当該赤外線検知情報に基づく熱画像データを作成し、前記センサ側記憶部の熱画像データ保存領域に保存させる処理制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のトレンドグラフ表示システム。
【請求項5】
さらに、前記熱画像センサは、前記熱画像データや前記処理制御部において判別された前記赤外線検知情報の異常の有無を示す判定信号を出力する入出力部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のトレンドグラフ表示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図4】
image rotate