説明

トレーニング装置

【課題】一動作(一ストローク)の中で動作位置ごとに負荷を変えるようにする。
【解決手段】運動者は脚部トレーニング装置本体1におけるサドル2に腰掛け、膝を開く運動をする。脚部トレーニング装置本体1は、サドル2、支持台3、脚部を受容する用具4、4、該用具の支持杆4a、4aと、前記支持台3中に設けた、用具に負荷をかける負荷手段5、負荷手段を制御する負荷制御手段6、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段7とによって構成する。また、操作パネル8には、液晶表示部10と、用具の位置指定ボタン12、13、14、15と、負荷選択ボタン16、17と、前記負荷手段5、負荷制御手段6、位置検出手段7、用具の位置指定ボタン12、13、14、15、負荷選択ボタン16、17の夫々と接続するCPUとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は負荷をかけた状態における用具を、身体の一部をもって一定のストロークの範囲内において動かす動作を繰り返して運動者の筋力を鍛えるトレーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に筋力トレーニングは筋肉に負荷をかけて行う。そして足や手の動作を、設定した負荷にて繰り返し行ない、その後一定期間が経過して筋力が増強したら、その程度に応じて負荷の重さを変化させ、これを繰り返すことによって筋力の増強を図るものである。
【0003】
そして、従来、例えば、腕と胸の筋力を増強するための、コイルばねからなるエキスパンダー、グリップする用具を引っ張り、ロープを介して所定重量の錘を引き上げるトレーニング装置や、サドルに腰掛けて所定の負荷をかけたペダルを足踏みして脚部の筋力を鍛えるトレーニング装置等の種々の筋力トレーニング装置が案出されている。
【0004】
斯かる従来のトレーニング装置は、何回も一定のストロークの範囲内の同一動作を繰り返すものであるが、用具にかかる負荷は常に一定であるから、各一回ごとの動作中における運動者にかかる負荷は常に一定である。即ち、一動作(一ストローク)中における動作の位置に関係なく、最初から最後まで同一の負荷がかかるものである。
【0005】
ところで、人体はその骨格や筋肉が各個人ごとに相違している。このため運動動作をするについても、最適な動作は各個人ごとに異なっている。そして、特に筋力が衰えた高齢者や病後のリハビリ中の人の場合にあっては、従来のトレーニング装置では負担が大き過ぎる場合がある。
【0006】
このようなことから、一動作(一ストローク)の中で固定された負荷しかかけられない上記従来のトレーニング装置は、個々の運動者の身体特性に適合させることができず、最適なトレーニング装置ということはできない。
【0007】
特に、筋力が衰えた高齢者や病後のリハビリ中の人の場合にあっては、一動作(一ストローク)の中で動作位置ごとに負荷を変えることが望ましいが、従来のトレーニング装置ではこのようなことはできず、動作の途中で痛みがあったり、動作を充分に行なうことができない等の問題点があった。
【0008】
例えば、膝を開く動作を行なう場合、両膝を揃えた位置で膝を開くことができるような負荷を適正負荷として設定すると、開く角度が大きくなるにしたがって負荷が重く感じられるようになる。これは人の骨格による構造的なものや普段の生活であまり使用しない筋肉に起因しているが、特に運動者が高齢者や障害者の場合には、例えば膝を開く場合、ある特定の角度が痛いというようなことで膝を開くトレーニングがスムーズに行なわれない。即ち、膝を開くときに各角度ごとの負荷を考慮しない一定の負荷の場合にはトレーニングがスムーズに行なわれないことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、各一回ごとの動作、即ち一動作(一ストローク)の中で動作位置ごとに負荷を変えることができるようになし、もって上記従来のトレーニング装置の問題点を改善することができるようになしたトレーニング装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して、本発明の要旨とするところは、負荷をかけた状態における用具を、身体の一部をもって一定のストロークの範囲内において動かす動作を繰り返して運動者の筋力を鍛えるトレーニング装置において、用具に負荷をかける負荷手段と、用具の各位置における負荷を決定する手段と、前記用具の各位置における負荷を決定する手段による結果に基づいて前記負荷手段を制御する負荷制御手段とを備え、用具の一ストローク中の各位置における負荷を適宜変更調整することができるようになしたことを特徴とするトレーニング装置にある。
【0011】
また、上記構成において、用具の現在の位置とその位置における用具にかかる負荷を表示する表示部を備えるようになしてもよい。
【0012】
また、上記構成における用具の各位置における負荷を決定する手段として、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、設定時における用具の位置の指定手段と、設定時における用具の各位置ごとの負荷の指定手段とをもって構成した場合には、運動者自身の意思による用具の各位置における負荷の設定を行なうことができる。
【0013】
また、上記構成における用具の各位置における負荷を決定する手段として、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の負荷を最大負荷から連続的に一定時間間隔で少しづつ減小させ、運動者の筋力が用具にかかる負荷を上回って用具が動いたときの負荷をその位置における最適負荷として決定するようになした手段とをもって構成した場合には、運動者の身体動作の特性を機械的に認識し、自動的に用具の各位置における負荷の設定を行なうことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各一回ごとの動作、即ち一動作(一ストローク)の中で動作位置ごとに負荷を変えることができるものであり、もって運動者の身体動作の特性に適合する負荷をかけることができ、無理なく、スムーズに充分な筋力トレーニングを行なうことができるものである。
【0015】
また、用具の各位置における負荷を決定する手段として、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、設定時における用具の位置の指定手段と、設定時における用具の各位置ごとの負荷の指定手段とをもって構成した場合には、運動者自身の意思による用具の各位置における負荷の設定を行なうことができるものである。
【0016】
また、用具の各位置における負荷を決定する手段として、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の負荷を最大負荷から連続的に一定時間間隔で少しづつ減小させ、運動者の筋力が用具にかかる負荷を上回って用具が動いたときの負荷をその位置における最適負荷として決定するようになした手段とをもって構成した場合には、運動者の身体動作の特性を機械的に認識し、自動的に用具の各位置における負荷の設定を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態は、用具に負荷をかける負荷手段と、用具の各位置における負荷を決定する手段と、前記用具の各位置における負荷を決定する手段による結果に基づいて前記負荷手段を制御する負荷制御手段とを備え、用具の一ストローク中の各位置における負荷を適宜変更調整することができるようになすことにある。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明の第1実施例の概略的説明図、図2は操作パネルの平面図、図3は制御部のブロック図、図4は用具の一ストロークの説明図、図5は角度と当該角度における負荷を選択決定するまでの手順を示すフローチャートである。
【0019】
本実施例は脚部の筋力を鍛えるトレーニング装置であり、1は脚部トレーニング装置本体である。そして、本実施例は脚部トレーニング装置本体1をサドル2、支持台3、横断面U字形をなし、脚部を受容する用具4、4、該用具4、4の夫々の支持杆4a、4aとをもって構成し、運動者はサドル2に腰掛け、脚部の膝下の部分を用具4、4に嵌め入れて膝を開く動作を行なうものである。そして、膝を開くとき、図4に示す如く、用具4の位置(角度)、例えば0度、30度、60度、80度ごとに夫々当該運動者の身体動作の特性にあった負荷を設定するものである。
【0020】
5は前記脚部トレーニング装置本体1における支持台3中に設けた、用具4、4に負荷をかける負荷手段、6は前記負荷手段5を制御する負荷制御手段、7は前記支持台3中に設けた、用具4、4の一ストローク中における現在位置を検出する手段である。
【0021】
8は前記支持台3の前方に立設した支柱9の上端部に設置した操作パネルであり、運動者又は指導者が運動中に該操作パネルを見ることができ、且つまた所定の操作を行なうことができる位置に設置している。また、支柱9の上端近傍には、運動者が両手で握るハンドル9aを設けている。
【0022】
また、該操作パネル8は、例えば、図2に示す如く中央部に表示部10、該表示部10の左側に電源ボタン11、位置指定ボタン12、13、14、15、該表示部10の下側に負荷選択ボタン16、17、該表示部10の右側にリセットボタン18を夫々配置している。尚、前記表示部10は液晶表示部である。
【0023】
また、該操作パネル8は、図3に示す脚部トレーニング装置の制御部のブロック図に示す通り、バッテリーからなる電源19、スイッチ20、液晶ディスプレイ(LCD)21及びCPU22を備えている。そしてまた、該CPU22は、脚部トレーニング装置本体1における負荷手段5、負荷制御手段6、位置検出手段7に接続している。
【0024】
次に、図5に示した、一ストローク中における用具の位置(角度)と当該位置(角度)における負荷を選択決定するまでの手順を説明する。該手順の概略は、各位置(角度)において、用具4に対して最大負荷からかけ始め、徐々に負荷を弱め、運動者が自分に合った適宜のトルクの位置を選択、決定して行なうものである。
【0025】
即ち、運動者は脚部トレーニング装置本体1におけるサドル2に腰掛け、両膝を揃える。この位置が図4における0度の位置であり、スタート時の位置である。次に、運動者又は指導者は操作パネル8における位置指定ボタン12を押して0度の位置を指定する。これは、位置検出手段7によって検出された用具4の位置(角度)とともにCPU22に読み込まれる。これによりCPU22は負荷制御手段6に対し、用具4に対して最大負荷(初期負荷)をかけるよう指令する。そして、運動者はこの最大負荷がかかった状態において膝を開く動作を行なう。このとき負荷が大き過ぎて膝を開くことができないときには、操作パネル8における「NO」の負荷選択ボタン17を押す。次に、この操作によってCPU22は負荷制御手段6に対して負荷を2分の1にするよう指令する。また、これらの操作をするときには、操作パネル8における表示部10に、用具4の位置(角度)と負荷の程度を表示する。
【0026】
そして、運動者は再び膝を開く動作を行ない、それでもなお開くことができない場合には再び「NO」の負荷選択ボタン17を押す。これにより用具4にかかる負荷はスタート時の4分の1になる。
【0027】
そして再度膝を開く動作を行ない、その時膝が開いたら「YES」の負荷選択ボタン16を押す。これにより、CPU22は、4分の1の半分、即ち8分の1の負荷を、開いたときの負荷の4分の1に加算し、これを最適負荷として記憶する。次に、運動者又は指導者は操作パネル8における位置指定ボタン13を押して30度の位置を指定する。そして、前記と同じ手順によってその位置における負荷を決定する。その後、順次60度、80度の各位置における負荷を決定して各位置における負荷の設定を終了するものである。
【0028】
これにより、以降は自動的に運動者が運動するときに所定の負荷がかけられるものである。また、設定をやり直すときには、操作パネル8におけるリセットボタン18を押すことによって行なうものである。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
本実施例は、基本的な構成においては前記第1実施例と同様であるが、用具の各位置における負荷を決定する手段として、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の負荷を最大負荷から連続的に一定時間間隔で少しづつ減小させ、運動者の筋力が用具にかかる負荷を上回って用具が動いたときの負荷をその位置における最適負荷として決定するようになした手段とをもって構成する点において相違するものである。尚、基本的な構成は実施例1と同様であるから、実施例1の図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図6は本実施例による一ストローク中における用具の位置(角度)と当該位置(角度)における負荷を決定するまでの手順を示すフローチャートである。
【0031】
本実施例は、図4における0度の位置がスタート時の位置であり、CPU22は負荷制御手段6に対して、用具4の負荷を最大負荷から連続的に一定時間間隔で少しづつ減小させるように指令する。これにより用具4にかかる負荷は一定時間ごとに次第に減少する。運動者は常に一定の力で膝を開こうとするが、その力が用具4にかかる負荷を上回ったときに初めて開く。そして、この膝が開いたことは用具4の移動を通して検出し、CPU22はその位置における負荷を算出して記憶する。
【0032】
次に、CPU22は用具4の位置を30度の位置に設定し、前記と同様の手順によって最適負荷を設定する。そして、これが済んだら順次60度、80度の各位置における負荷を設定するものである。
【0033】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、脚部の筋力を鍛えるトレーニング装置としては、椅子に腰掛けて負荷をかけた用具を足で押し出すことを繰り返すことによって鍛練する構成としてもよく、また腕と胸の筋力を増強するために、腕で負荷をかけた用具を押し開くようにすることを繰り返すことによって鍛練する構成としてもよいものであり、更に、負荷をかけた状態における用具を、身体の一部をもって一定のストロークの範囲内において動かす動作を繰り返して筋力を鍛えるトレーニング装置であれば、これら以外の構成としてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施例の概略的説明図である。
【図2】操作パネルの平面図である。
【図3】制御部のブロック図である。
【図4】用具の一ストロークの説明図である。
【図5】角度と当該角度における負荷を選択決定するまでの手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例の角度と当該角度における負荷を決定するまでの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 脚部トレーニング装置本体
2 サドル
3 支持台
4、4 用具
4a、4a 支持杆
5 負荷手段
6 負荷制御手段
7 位置検出手段
8 操作パネル
10 表示部
12、13、14、15 位置指定ボタン
16、17 負荷選択ボタン
19 電源
21 液晶ディスプレイ(LCD)
22 CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷をかけた状態における用具を、身体の一部をもって一定のストロークの範囲内において動かす動作を繰り返して運動者の筋力を鍛えるトレーニング装置において、用具に負荷をかける負荷手段と、用具の各位置における負荷を決定する手段と、前記用具の各位置における負荷を決定する手段による結果に基づいて前記負荷手段を制御する負荷制御手段とを備え、用具の一ストローク中の各位置における負荷を適宜変更調整することができるようになしたことを特徴とするトレーニング装置。
【請求項2】
用具の現在の位置とその位置における用具にかかる負荷を表示する表示部を備えてなる請求項1記載のトレーニング装置。
【請求項3】
用具の各位置における負荷を決定する手段が、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、設定時における用具の位置の指定手段と、設定時における用具の各位置ごとの負荷の指定手段とからなるものである請求項1又は2記載のトレーニング装置。
【請求項4】
用具の各位置における負荷を決定する手段が、用具の一ストローク中における現在位置を検出する手段と、負荷を制御する負荷制御手段と、用具の負荷を最大負荷から連続的に一定時間間隔で少しづつ減小させ、運動者の筋力が用具にかかる負荷を上回って用具が動いたときの負荷をその位置における最適負荷として決定するようになした手段とからなるものである請求項1又は2記載のトレーニング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−275355(P2007−275355A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106567(P2006−106567)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(392017303)システム・インスツルメンツ株式会社 (15)
【出願人】(393026733)株式会社ソフィアプレシジョン (9)