説明

トレーリングサクションホッパー浚渫船のためのドラグヘッド、およびこのドラグヘッドを用いた浚渫方法

本発明は、トレーリングサクションホッパー浚渫船のドラグヘッド(1)に関する。該ドラグヘッドは、水底で引きずられて土砂を軟化させるバイザー(2)と、このバイザー(2)に接続されて軟化した土砂を排出する吸引パイプ(3)とを備えている。バイザー(2)は、複数のほぼディスク状の貫入体(51、52、53、54)を備えた、個々に可動な少なくとも2つの圧力要素(21、22、23、24)をドラグ方向に対して横方向に備えている。貫入体は、貫入体を収納する圧力要素の重量の影響下において、その周縁部を介して力を水底に伝達し、こうすることによって、水底が破砕される。本ドラグヘッドは高い効率を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、水底で引きずられて土砂を軟化させるバイザー(visor)と、バイザーに接続され、軟化した土砂を排出する吸引パイプとを備えた、トレーリングサクションホッパー浚渫船のドラグヘッドに関する。本発明は、さらに、このドラグヘッドを用いて土砂を浚渫する方法に関する。
【0002】
上記の序文に記載のドラグヘッドは、欧州特許出願公開第0892116号明細書から公知である。欧州特許出願公開第0892116号明細書には、吸引パイプに接続され、浚渫するために水底に向かって開いたバイザーを備えた、トレーリングサクションホッパー浚渫船のためのドラグヘッドについて記載されている。バイザーは、ドラグパイプによってトレーリングサクションホッパー浚渫船に固定されている。バイザー上には複数の歯が設置されている。浚渫時には、ドラグヘッドが、ドラグパイプおよび吸引パイプとともに、ドラグヘッドが水底に接触するまで、トレーリングサクションホッパー浚渫船の後部に設けられたウインチを使って、一般に斜めの角度で水中に降ろされる。トレーリングサクションホッパー浚渫船の航行時には、ドラグヘッドは水中で水底を引きずられ、このとき土砂は水底と噛み合っている歯によって軟化される。軟化した土砂は、吸引パイプを介して吸引されて、例えばトレーリングサクションホッパー浚渫船の格納スペースへ送られる。浚渫時には、水中に位置するコンポーネントが比較的葉大きな重量を有するので、また、随意的には吸引パイプによって吸引力が発生するので、ドラグヘッドは水底に圧力を加える。関連するコンポーネントの水中における重量は、このコンポーネントの陸上における重量から、該コンポーネントによって押しのけられる水の重量を差し引いた重量に対応する。したがって、鋼鉄製のコンポーネントの水中における重量は、陸上における重量の約7/8に達する(鋼鉄の相対的比重はほぼ8である)。
【0003】
公知であるドラグヘッドは妥当な効率を有するものの、この効率をさらに向上させる必要性は大きい。本願の文脈では、効率とは、単位時間当たりに浚渫される土砂の体積を意味している。
【0004】
本発明は、従来よりも高い効率で水中の土砂を浚渫することができる、トレーリングサクションホッパー浚渫船のためのドラグヘッドを提供することを目的とする。
【0005】
本発明に係るドラグヘッドは、この目的を実現するために、ドラグヘッドのバイザーが、個々に可動な少なくとも2つの圧力要素をドラグ方向に対して横方向に備え、圧力要素には、圧力要素の重量の影響下において力を水底に伝達する複数の貫入体が設けられていることを特徴とする。ドラグ方向に対して横方向に並んだ個々に可動なこの圧力要素によって、貫入体は、たとえ水底が平坦でなくても、確実に水底との接触をより良好に維持することができる。既存のドラグヘッドは、比較的多数の貫入体を備えている。水底が平坦でないという条件のもとでは、これらの貫入体のうちの極少数しか水底と接触せず、ドラグヘッド全体の重量が少数の貫入体に分散してかかるということが十分に起こりうる。このような状況で、貫入体は比較的大きな力を受け、その結果、破損および/または早期に損耗しやすくなる。本発明のドラグヘッドは、この問題およびその他の問題を解決する。(平坦でない)水底に接触する貫入体の平均的な個数が増えるだけではなく、貫入体の総数を変えなくても、圧力要素1つ当たりの貫入体の個数を容易に調節することができるようになる。貫入体にかかる力がより良好に分散するので、ドラグヘッドを、これまでの通常の場合に比べて全体的により大きくおよびより重く(例えば、陸上において重量が100トン)設計することも可能になる(公知のドラグヘッドは、一般に陸上における重量が20トン〜30トンである)。より重いおよびより大きなドラグヘッドを用いると、浚渫効率が大幅に増加する。本発明のドラグヘッドの一実施形態では、所望であれば、貫入体の個数を、公知のドラグヘッドにおける貫入体の個数より多くしてもかまわない。より多数の貫入体を用いると、その結果、水底への平均的な貫入深度が浅くなる。驚くべきことに、こうすることによって起こると予想される効率の低下は、個々に可動な圧力要素を適用することによって完全に補償される。
【0006】
好適な一実施形態では、本発明に係るドラグヘッドは、上記圧力要素が水底に対してほぼ垂直な方向に並進運動できるように、圧力要素が案内手段によってバイザーの中に収納されることを特徴とする。このような変形例には、各圧力要素のほぼすべての重量が利用されるという長所がある。これは、実施形態の本変形例では、各圧力要素が、水底に対して垂直な方向に(摩擦力などを除けば)ほぼ「自由に」運動できるからである。
【0007】
さらに別の好適な実施形態は、ディスク状貫入体が設けられたドラグヘッドに関し、このディスク状貫入体は、該貫入体を内部に収納する圧力要素の重量の影響下において周縁部を介して力を水底に伝達する。ディスク状貫入体は、好ましくは、そのディスク面が圧力要素の下面に対してほぼ垂直になるように配置され、かつ、その一部がこの下面から突き出るので、周縁部が水底面に接触する。したがって、ホッパー浚渫船の、水中に位置する関連する圧力要素の重量は、分散して貫入体と水底面との間の接触面にかかる。こうすることによって、より高い圧力が局所的に発生し、水底、特に比較的硬い水底を効果的に押しつぶす。
【0008】
本発明に係るドラグヘッドは、好適には、貫入体が浚渫方向に対してほぼ横方向に1列に延びることを特徴とする。特にディスク状貫入体を1列に配置することによって、驚くべきことではあるが、貫入体の下の水底が押しつぶされるだけではなく、貫入体と貫入体との間に位置する水底の部分も押しつぶされることがわかった。
【0009】
圧力要素1つ当たりのディスク状貫入体の個数は、広い上限値と下限値の範囲内で選択可能である。圧力要素1つ当たりのディスク状貫入体の個数は、好ましくは2個〜20個、より好ましくは2個〜10個、もっとも好ましくは3個〜5個である。隣り合う2つの貫入体同士の間の横方向の特に好適な距離は、5cm〜50cm、より好ましくは8cm〜35cm、もっとも好ましくは10cm〜20cmである。本発明に係るドラグヘッドにおける圧力要素の個数も、広い上限値と下限値の範囲内で変更されてよい。多数の圧力要素を設ければ、貫入体によって水底に伝達される平均的な力は減少するものの、水底の等高線をより高い精度でたどることができるという効果を奏する。少数の圧力要素を設ければ、その結果、構造は単純になる。圧力要素の個数が2個〜20個、より好ましくは2個〜8個、もっとも好ましくは3個〜5個の場合に、良好な妥協点が見出される。
【0010】
ドラグヘッドは水中で水底を引きずられ、本発明によれば、ドラグヘッドは貫入体、特にディスク状貫入体を介して主に水底と接触する。したがってドラグヘッドは、好適には、ディスク状貫入体が圧力要素の中に収納され、ディスク面に垂直な軸を中心として回転し、この回転軸がドラグ方向に対してほぼ直角であることを特徴とする。こうすることによって、トレーリングサクションホッパー浚渫船を通常の速さで移動させるために必要とされる推力が大幅に削減される。
【0011】
本発明に係るドラグヘッドのさらに別の効果は、水底を押しつぶして比較的小さな土砂の粒子にすることができ、こうすることによって、この土砂の粒子が高い効率で吸い上げられることである。このことは、吸い上げられた水の中の関連する粒子の濃度が比較的高いことを意味していると理解できる。
【0012】
ディスク状貫入体を保護するために、ドラグヘッドの圧力要素には、好ましくは、ドラグ方向に対してほぼ横方向に延び、使用時にディスク状貫入体の上流側で水底と噛み合う複数の歯が設けられている。この歯が水底の所定の部分を破砕し、その後、貫入体がこの水底の部分に到達する。歯は水底を均すこともでき、こうすることによって、ディスク状貫入体はより高い効率で作業をすることができる。歯とディスク状貫入体をこのように組み合わせることによって、さらに効率を上げることができる。
【0013】
使用時にディスク状貫入体の上流側、および随意的に歯の上流側で水底と噛み合う支持手段が、圧力要素にさらに設けられていると、さらに改善されたドラグヘッドが得られる。水底が相当に平坦でない場合、この支持手段によって、確実に、圧力要素、および時によってはバイザー全体が、水底の等高線をたどるように強制される。こうすることによって、ドラグヘッド、特にディスク状貫入体の詰まりおよび/または破損が防止できる。特に好適な実施形態では、支持手段は複数の滑りブロックを備え、この滑りブロックは好ましくは横方向に設置されている。滑りブロックは、ドラグヘッドが水底を掘ってそこに沈み込んでしまうのではなく、逆に、水底の等高線をたどることができるような輪郭を有する。こうすることによって、滑りブロックも保護機能を有する。
【0014】
ディスク状貫入体は、一般に圧力要素の重量を受けて、ある貫入深度で水底に沈む。この典型的な貫入深度は、ディスク状貫入体の設計時に決定可能である。好適な実施形態の変形例では、本発明に係るドラグヘッドは、歯が、ディスク状貫入体よりも、ディスク状貫入体の貫入深度の好ましくは0.5倍〜10倍、より好ましくは0.5倍〜5倍、もっとも好ましくは0.5倍〜1.5倍分だけ高い位置で、水底と噛み合うことを特徴とする。こうすることによって、歯は最適な保護効果を奏し、もっとも高い効率が達成される。上記歯も貫入深度を有する。歯の貫入深度は、好ましくは、歯の破損または過度に大きな切削力を発生させないように限定される。支持手段の下面が歯の下面の上方で所定の距離、好ましくは限定された距離で位置していることが、ここでは好適である。支持手段は、好ましくは歯よりも高い位置で、より好ましくは歯の貫入深度の0.5倍〜1.5倍分だけ高い位置で、支持手段が水底と噛み合うことができるように、位置している。この態様によって、さらに改善された効率とともに、さらに良好な保護効果が得られる。
【0015】
さらに改善された好適な実施形態では、本発明に係るドラグヘッドには、少なくとも部分的にコンポーネントとコンポーネントとの間、特にバイザーと水底との間の開口部を閉じるための閉鎖手段が設けられている。閉鎖手段を設けることによって、吸引パイプを介して供給される吸引力は、いわば、ドラグヘッドを水底へ向かって吸い寄せることができる。発生した吸引力によって、確実に、貫入体の下で水底に十分な圧力がかかり、その結果、水底は破壊、破砕、または別の形態で崩壊する。バイザーと水底との間の開口部の閉鎖は、当業者にとって既知の任意の様態で実現されればよい。したがって、閉鎖手段は、屈曲性を有する物質細でできた、開口部を跨ぐ、開口部の少なくとも一方の側で関連するコンポーネントに固定された細片状部を備えている。
【0016】
なお、貫入体の寸法は、所望する圧力、圧力要素1つ当たりの貫入体の個数などの諸要因に応じて選択される。貫入体の直径は、数cmから数十cmの間であればよい。特に好適な直径は、2cm〜80cm、より好ましくは5cm〜60cm、もっとも好ましくは10cm〜40cmである。このような直径を有する貫入体は、1m前進するために必要とされる推力と達成すべき浚渫効率、つまり1秒当たりに浚渫される土砂の体積(m)との間で、良好なバランスを有する。
【0017】
所望であれば、本発明に係るドラグヘッドは、(好ましくは高圧下で)水を注入するための少なくとも1組の噴流パイプを備えていてもよい。圧力は2500barでもかまわないが、通常の圧力は、例えば約10bar〜200barの範囲である。水の噴流は、貫入体の前、下、または後で水底に向かって導かれればよく、こうすることによって浚渫効率が向上する。
【0018】
本発明は、本発明に係るドラグヘッドを設けたトレーリングサクションホッパー浚渫船を用いて、水中で少なくとも部分的に硬い水底を破砕させるおよび/または浚渫する方法にも関する。本方法は、本発明に係るドラグヘッドを水底に降ろした後に、これを水底で引きずることを含む。ここで、閉鎖手段を介して少なくとも部分的に閉鎖され、かつ、バイザーおよび水底によって内包された空間に、吸引パイプを介して吸引力が加えられ、その結果、圧力要素の重量および吸引力の影響下において、ディスク状貫入体はその周縁部を介して水底に貫入して水底に亀裂を生じさせる。チップ状に破砕した土砂は、吸引パイプを介して吸い上げられる。本発明によれば、圧力要素はここで互いに独立して運動し、こうすることによって効率の向上が達成される。浚渫時に圧力要素は、好ましくは、互いに独立して水底に対してほぼ垂直な方向に並進運動する。好ましい方法では、まず、圧力要素の支持手段が水底と噛み合い、上記圧力要素が水底の等高線をたどるように強制され、その後、上記歯が水底と噛み合って水底が少なくとも部分的に均され、さらにその後、上記貫入体が水底と噛み合う。
【0019】
次に、本発明に係るドラグヘッドおよび方法を、好適な実施形態および図面についての以下の記載に基づいてさらに説明するが、これは本発明に対してなんら限定を加えるものではない。
【0020】
図1は、本発明に係るドラグヘッドを下から見た、概略的な斜視図を示している。
【0021】
図2は、図1のドラグヘッドを上から見た、概略的な斜視図を示している。
【0022】
図3は、本発明に係るドラグヘッドの圧力要素を下から見た、概略的な斜視図を示している。
【0023】
図4は、圧力要素が図3に示すように収納可能な支持構造物を上から見た、概略的な斜視図を示している。
【0024】
図5は、本発明に係るドラグヘッドの動作中の概略図を示している。
【0025】
トレーリングサクションホッパー浚渫船のためのドラグヘッド1を、図1に示す。ドラグヘッド1は、使用時に水底50でドラグ方向P(図5も参照)に引きずられて、土砂を軟化させるバイザー2と、バイザー2に接続し、軟化した土砂を排出する吸引パイプ3とを備えている。バイザー2には、側壁(84、85)と、吸引パイプ3に接続された上部プレート86とが設けられている。本発明に係るドラグヘッドの図示された実施形態では、バイザー2は、個々に可動な4つの圧力要素(21、22、23、24)をドラグ方向Pに対して横方向に備えている。圧力要素(21、22、23、24)は、案内手段(211、212、213、214、215、216、217、218)(図3を参照)によってバイザー2の中に収納される。この目的を実現するために、バイザー2は、図4に図示された支持構造を備え、この支持構造は、図示された実施形態の変形例では、圧力要素(21、22、23、24)を内部に収納する4つの部屋(25、26、27、28)を備えている。該案内手段は、圧力要素21の後部壁31に配置された4つの案内ローラ(211、212、213、214)と、前部壁32に配置された4つの案内ローラ(215、216、217、218)とを備え、各4つの案内ローラは、部屋(25、26、27、28)の対応する後部壁41および前部壁42で回転可能である。圧力要素(21、22、23、24)がバイザー2が離れないようにするために、各圧力要素では、停止縁(33、34)が各後部壁31および前部壁32に設けられている。圧力要素(21、22、23、24)は、こうすることによって水底50に対してほぼ垂直な方向Lに比較的自由に並進運動できるようになり、停止縁(33、34)は、例えば圧力要素21がもっとも低い位置にある時には部屋25の上側の縁に載る。
【0026】
圧力要素21の場合について図3に示したように、各圧力要素(21、22、23、24)には、4つの貫入体(51、52、53、54)が設けられている。この貫入体(51、52、53、54)はディスク状の形状を有しており、該貫入体を内部に収納する圧力要素の重量の影響下において周縁部を介して力を水底50に伝達し、こうすることによって水底に亀裂を生じさせる。各圧力要素において、ディスク状貫入体(51、52、53、54)はドラグ方向Pに対してほぼ横方向に1列に延びている。また、すべての圧力要素の貫入体が、好ましくは、全体としてドラグ方向Pに対してほぼ横方向に1列に延びるように構成されている。この構成を図1に示す。
【0027】
図示した実施形態において、ドラグヘッド1の圧力要素(21、22、23、24)には、ドラグ方向Pに対してほぼ横方向に延びて、使用時にはディスク状貫入体(51、52、53、54)の上流側で水底50に噛み合う複数の歯(61、62、63、64)がさらに設けられている。圧力要素(21、22、23、24)には、さらに、支持手段(71、72、73、74)が設けられている。この支持手段は滑りブロックを備えている。この滑りブロックは例えば鋼鉄製であって、関連する圧力要素21の前部壁32からディスク状貫入体(51、52、53、54)および/または歯(61、62、63、64)まで斜めに広がる下面を有している。使用時において、支持手段(71、72、73、74)は、ディスク状貫入体(51、52、53、54)の上流側、および必要に応じて歯(61、62、63、64)の上流側で水底と噛み合い、こうすることによって、最初に支持手段が水底50と噛み合う。したがって、関連する圧力要素は、水底50の等高線をたどるように強制される。水底50が盛り上がる場合、歯(61、62、63、64)および貫入体(51、52、53、54)が水底に貫入するより先に、関連する圧力要素が押し上げられる。支持手段(71、72、73、74)は、歯およびディスク状貫入体を保護するだけではなく、貫入体(51、52、53、54、61、62、63、64)の所望の貫入深度の制御も行う。歯(61、62、63、64)は、ディスク状貫入体(51、52、53、54)の上流側で水底と噛み合うので、歯がディスク状貫入体を同様に保護し、さらに貫入体(51、52、53、54)の所望の貫入深度を制御する。最良の結果が達成されるのは、支持手段の下面が歯の下面の上方で所定の距離、好ましくは限定された距離に位置しているときである。これが成立するのは、例えば、歯(61、62、63、64)が貫入深度を有し、かつ、支持手段が、歯よりも、歯の貫入深度の0.5倍〜1.5倍分だけ高い位置で、水底50と噛み合う場合、および、ディスク状貫入体(51、52、53、54)が貫入深度を有し、かつ、歯(61、62、63、64)が、ディスク状貫入体よりも、ディスク状貫入体の貫入深度の0.5倍〜1.5倍分だけ高い位置で、水底50と噛み合う場合である。
【0028】
例えば図1に図示したドラグヘッド1の実施形態では、バイザー2には、バイザー2の比較的非生産的な側面に沿って供給水が供給される可能性を無くすために、バイザー2と水底50との間の開口部をほぼ閉鎖する閉鎖手段が設けられている。この閉鎖手段は、両方の側壁(84、85)に配置された、高さ方向に摺動可能で、所望であれば下側の縁にゴム製の被覆層を有する閉鎖プレート(81、82)を備えている。バイザー2には、上流の側の下面において、水底50上で十分な支持を提供し、水が上流側に沿って引き入れられることを防止する踵部プレート83が設けられている。
【0029】
浚渫時には、軟化した硬い土砂の粒子およびその他の土砂の粒子を、吸引パイプ3を介して吸い上げることができるように、ドラグヘッド1の内側において減圧状態が維持される。図5を参照すると、本発明に係る方法では、ドラグヘッド1を水底50に降ろし、ドラグヘッド1を水底50でドラグ方向Pに引きずる。ここで、閉鎖手段(84、85)を介して少なくとも部分的に閉鎖され、かつ、バイザー2および水底50によって内包された空間に、吸引パイプ3によって吸引力を加え、こうすることによって、ディスク状貫入体(51、52、53、54)を収納する圧力要素の重量の影響下において、該貫入体(51、52、53、54)をその周縁部を介して水底50に貫入させて水底に亀裂を発生させる。互いに隣り合うように配置された多数のディスク状貫入体(51、52、53、54)を適用することによって、貫入体と貫入体との間に位置する水底も押しつぶされ、こうすることによって効率が相当高くなることがわかった。水底が破砕してできたチップ状の土砂は、吸引パイプ3を介して吸い上げられる。本発明によれば、圧力要素(21、22、23、24)は、ここでは、水底50に対してほぼ垂直な方向Lにほぼ互いに独立して並進運動する。こうすることによって、多数の貫入体が水底50に接触した状態を維持し、こうすることによって、先行技術に比べると、平均的貫入深度が小さくなる可能性があるにもかかわらず、効率は向上する。支持手段(71、72、73、74)が、まず水底50と噛み合い、例えば貫入体に対する保護を提供する。歯とディスク状貫入体との組み合わせを適用することによって、さらに高い効率が達成される。この場合、まず、この歯が所定の貫入深度まで水底と噛み合って水底50を少なくとも部分的に均し、その後、ディスク状貫入体が水底50と噛み合う。また、ディスク状貫入体がまず所定の貫入深度まで水底と噛み合って水底50を少なくとも部分的に破砕し、その後に歯が水底50と噛み合うドラグヘッドを設置することも好適である。
【0030】
本発明は、例としての上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明に対する修正は可能であって、これらの修正は添付の請求項の技術的範囲から逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るドラグヘッドを下から見た、概略的な斜視図である。
【図2】図1のドラグヘッドを上から見た、概略的な斜視図である。
【図3】本発明に係るドラグヘッドの圧力要素を下から見た、概略的な斜視図である。
【図4】圧力要素が図3に示すように収納可能な支持構造物を上から見た、概略的な斜視図である。
【図5】本発明に係るドラグヘッドの動作中の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底(50)で引きずられて土砂を軟化させるバイザー(2)と、上記バイザー(2)に接続され、軟化した土砂を排出する吸引パイプ(3)とを備えた、トレーリングサクションホッパー浚渫船のドラグヘッド(1)であって、
上記バイザー(2)が、個々に可動な少なくとも2つの圧力要素(21、22、23、24)をドラグ方向に対して横方向に備え、
上記圧力要素にはそれぞれ、上記圧力要素の重量の影響下において力を上記水底(50)に伝達する複数の貫入体(51、52、53、54、61、62、63、64)が設けられていることを特徴とする、ドラグヘッド。
【請求項2】
上記圧力要素(21、22、23、24)が上記水底(50)に対してほぼ垂直な方向に並進運動できるように、上記圧力要素(21、22、23、24)が案内手段(211、212、213、214)によって上記バイザー(2)の中に収納されることを特徴とする、請求項1に記載のドラグヘッド。
【請求項3】
上記貫入体には、上記圧力要素の重量の影響下において周縁部(23)を介して力を上記水底(50)に伝達するディスク状貫入体(51、52、53、54)が含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載のドラグヘッド。
【請求項4】
上記ディスク状貫入体(51、52、53、54)が、浚渫方向に対してほぼ横方向に1列に延びることを特徴とする、請求項3に記載のドラグヘッド。
【請求項5】
上記圧力要素1つ当たりのディスク状貫入体(51、52、53、54)の個数が2個〜10個、より好ましくは3個〜5個であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項6】
上記圧力要素(21、22、23、24)の個数が2個〜8個、より好ましくは3個〜5個であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項7】
上記圧力要素(21、22、23、24)には、ドラグ方向に対してほぼ横方向に延び、使用時にディスク状貫入体(51、52、53、54)の上流側で上記水底(50)と噛み合う複数の歯(61、62、63、64)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項8】
上記圧力要素(21、22、23、24)には、使用時にディスク状貫入体(51、52、53、54)の上流側、また随意的には歯(61、62、63、64)の上流側で、上記水底(50)と噛み合う支持手段(71、72、73、74)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項9】
上記支持手段(71、72、73、74)が滑りブロックを備えていることを特徴とする、請求項8に記載のドラグヘッド。
【請求項10】
上記ディスク状貫入体(51、52、53、54)が貫入深度を有し、
上記歯(61、62、63、64)が、上記ディスク状貫入体より高い位置で上記水底と噛み合うことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項11】
上記歯(61、62、63、64)が貫入深度を有し、
支持手段(71、72、73、74)が、上記歯より高い位置で上記水底(50)と噛み合うことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項12】
上記ドラグヘッド(1)には、上記バイザー(2)と上記水底(50)との間の開口部をほぼ閉鎖する閉鎖手段(81、82)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項13】
上記ドラグヘッドが、高圧下で水を注入するための少なくとも1組の噴流パイプを備えていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のドラグヘッド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のドラグヘッドが設けられたトレーリングサクションホッパー浚渫船を用いて、少なくとも部分的に硬い上記水底を水中で浚渫する方法であって、
上記ドラグヘッドを上記水底に降ろして上記水底で引きずり、
閉鎖手段を介して少なくとも部分的に閉鎖され、かつ、上記バイザーおよび上記水底によって内包された空間に、上記吸引パイプを介して吸引力を加え、上記圧力要素の重量および減圧の影響下において、ディスク状貫入体をその周縁部を介して上記水底に貫入させて上記水底に亀裂を発生させ、
チップ状に破砕した土砂を、上記吸引パイプを介して吸い上げることを特徴とする、方法。
【請求項15】
浚渫時には、上記圧力要素が、互いに独立して上記水底に対してほぼ垂直な方向に並進運動することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
まず、上記圧力要素の支持手段が上記水底と噛み合い、
上記圧力要素が上記水底の等高線をたどるように強制され、
その後、歯が上記水底と噛み合って上記水底が少なくとも部分的に均され、
さらにその後、上記貫入体が上記水底に噛み合うことを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504196(P2012−504196A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528323(P2011−528323)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062388
【国際公開番号】WO2010/034775
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(505458599)ドレッジング・インターナショナル・ナムローゼ・フエンノートシャップ (13)
【氏名又は名称原語表記】DREDGING INTERNATIONAL N.V.