説明

トレー包装体の水切り方法と、その装置

【課題】トレー包装体Tの水切りをする。
【解決手段】トレー包装体Tの周囲にサクションフード11を垂下させ、トレーT1 のフランジT1aとサクションフード11との間のギャップgに生じる上向きのエア流により、フランジT1aと蓋材T2 の余裕部分T2aとの間に存在する水分を吹き飛ばして除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、米飯などの調理済みの食品を製造するに際し、トレー包装体の外面に付着する水分を適確に除去することができるトレー包装体の水切り方法と、その装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調理済みの米飯を耐熱性のトレーに収納し、上面をフィルム状の蓋材によってシールする商品が広く普及している(たとえば特許文献1、2)。
【0003】
この商品は、定量の洗米済みの米をトレーに充填し、水を加えて蒸気炊飯し、フィルム状の蓋材によってシールした後、蒸らし、冷却の各工程を経て、トレー包装体の形態に製造される。なお、蒸らしは、所定時間だけ高温に維持して炊飯後の米の上下の水分吸収率差の均一化、でん粉のアルファ化を図るものであり、冷却は、トレー包装体の全体を冷水中に浸漬して常温にまで冷却するものである。また、蓋材は、トレーの上縁に形成するフランジ上にヒートシールした上、僅かな余裕を残してフランジの周縁に沿ってトリミングするのが普通である。この商品は、常温でも6ヶ月程度の保存期間を有し、トレー包装体のまま電子レンジにより加温して、そのまま食することができる。ただし、トレー包装体とは、浅皿状のトレーに食品を収納し、フィルム状の蓋材によってシールされた包装体をいう。
【特許文献1】特開平9−172992号公報
【特許文献2】特開2002−59971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、冷却後のトレー包装体は、外部に水分が付着しているから、上下から冷風または温風によるエアブローを吹き付けて水分を除去するが、トレーのフランジ上において、蓋材の余裕部分とフランジとの間に存在する水分を完全に除去することが難しく、有害なかびの発生原因にもなりかねないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、トレーのフランジとサクションフードとの間のギャップに生じるエア流を利用することによって、蓋材とフランジとの間に存在する水分を効果的に除去することができるトレー包装体の水切り方法と、その装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの出願に係る第1発明(請求項1に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、フィルム状の蓋材を介してシールするトレー包装体の周囲にサクションフードを配置させ、トレーのフランジとサクションフードとの間のギャップに生じる上向きのエア流によりトレー包装体の水切りをすることをその要旨とする。
【0007】
なお、エア流には、フランジの上面に沿う内向きの成分を含ませることができ、エア流を生じさせるとき、フランジ上の蓋材のシール部分を押さえることができる。
【0008】
第2発明(請求項4に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、フィルム状の蓋材を介してシールするトレー包装体の周囲に配置するサクションフードを備えてなり、サクションフードは、トレーのフランジとの間のギャップに上向きのエア流を生じさせることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
かかる第1発明の構成によるときは、トレーのフランジとサクションフードとの間のギャップに生じる上向きのエア流は、フランジの端縁を越えるとき、激しい乱流を生じ、フランジの上面にシールされている蓋材の周縁の余裕部分をめくり上げるため、蓋材とフランジとの間に存在する水分を吹き飛ばして除去することができる。なお、フランジの端縁とサクションフードの内面との間のギャップは、約1〜5mm程度、特に好ましくは2〜3mm程度に設定するのがよく、ギャップに生じさせるエア流の風速は、約75〜80m/秒以上とし、エア流の継続時間は、約0.5〜1秒程度に設定することが好ましい。ギャップを1mm未満にすると、トレー包装体とサクションフードとの相対位置関係に余裕がなくなり、両者の位置決め制御が難しくなる。一方、ギャップを5mm超にすると、エア流を生じさせるための風量が過大となる。なお、サクションフードは、負圧源に接続することによってエア流を生じさせるものとし、トレー包装体の全周をカバーしてもよく、一部をカバーしてもよい。
【0010】
トレーのフランジの上面に沿う内向きの成分をエア流に含ませることにより、フランジ上の蓋材の余裕部分を一層確実にめくり上げることができる。なお、エア流の内向きの成分は、たとえばサクションフードの下端部に内向きの段部を形成し、サクションフードの下端部にエアの吸込口を形成し、または、サクションフードの下端部にエアの吹出ノズルを付設することにより、上向きのエア流の流れの方向を変更して実現するものとする。
【0011】
トレーのフランジ上の蓋材のシール部分を押さえることにより、トレー包装体の全体がエア流によってサクションフード内に吸い上げられたり、蓋材が過大にめくれて剥がれたりする不都合がない。
【0012】
第2発明の構成によるときは、サクションフードは、負圧源に接続することによりトレーのフランジとの間に上向きのエア流を生じさせ、第1発明を実施することができる。なお、トレー包装体は、たとえば間欠駆動または連続駆動するコンベヤを介し、順次サクションフードによる水切り位置に搬入するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
トレー包装体の水切り装置は、サクションフード11を備えてなり(図1、図2)、コンベヤ21、23の間にターンテーブル22を配設して構成されている。
【0015】
トレー包装体Tは、トレーT1 に図示しない米飯などの調理済みの食品を収納し、フィルム状の蓋材T2 により上面をシールして形成されている(図3)。トレーT1 の上縁には、外向きのフランジT1aが形成されており、蓋材T2 の全周縁は、フランジT1aの上面にヒートシールされている。なお、フランジT1aの外縁には、下端にサブフランジT1cを有するスカートT1bを形成してもよく(同図(A))、スカートT1bを形成しなくてもよい(同図(B))。蓋材T2 は、フランジT1aの上面において、シール部分Sの範囲をシールされており、シール部分Sの外側は、フランジT1aの外側にまで突出する余裕部分T2aとなっている。なお、蓋材T2 は、フランジT1aの上面にシールし、余裕部分T2aを残してトリミングし、加熱処理すると、余裕部分T2aが下側にカールする傾向になりがちである。
【0016】
コンベヤ21の前端部は、ターンテーブル22の中心に向けて、ターンテーブル22の下に深く進入している(図1、図2)。また、コンベヤ23の後端部も、同様にしてターンテーブル22の下に進入している。ターンテーブル22の中心には、排気管12が下から上に貫通しており、排気管12の中間部には、サクションフード11を支持する支持アーム13が突設されている。サクションフード11は、支持アーム13の先端部に下向きに取り付けられており、支持アーム13上に立設するシリンダ14を介し、上下に昇降駆動することができる。サクションフード11内には、サブフード11aが組み込まれており、サクションフード11の頂部は、可撓性のホース12aを介して排気管12の上端に連結されている。なお、排気管12は、ターンテーブル22、コンベヤ21、23の下の支持部材12bを介して垂直に固定支持されており、排気管12の下端は、ホース12cを介し、図示しない負圧源に連結されている。
【0017】
ターンテーブル22の外周には、トレー包装体Tに適合する切欠き22a、22a…が等角度に形成されている。また、ターンテーブル22は、軸受22bを介して排気管12の中間部に相対回転自在に組み付けられており、駆動チェーン22cを介して切欠き22a、22a…の1ピッチずつ間欠的に回転駆動することができる。ただし、駆動チェーン22cは、ターンテーブル22と一体のスプロケット22dに巻き掛けられ、図示しない駆動モータに連結されている。
【0018】
ターンテーブル22の任意の切欠き22aをコンベヤ21上に位置させてコンベヤ21を駆動すると、コンベヤ21上の先頭のトレー包装体Tを切欠き22aに搬入して位置決めすることができる(図2の矢印K1 方向)。そこで、シリンダ14を介してサクションフード11を下降させると(図1の矢印K2 方向)、サクションフード11は、切欠き22a内のトレー包装体Tの周囲に垂下するようにして配置され(図4)、このとき、サクションフード11内のサブフード11aは、蓋材T2 のシール部分Sを押さえることができる。また、トレーT1 のフランジT1aの端縁とサクションフード11の内面との間には、ギャップgを形成することができる。サクションフード11、サブフード11aは、トレー包装体Tの全周についてほぼ同一のギャップgが形成されるように、また、フランジT1a上のシール部分Sの全長を均一に押さえるように、それぞれトレー包装体Tの形状に適合させるものとする。ただし、図4において、サクションフード11とホース12aとの間は、極端に短く図示されている。
【0019】
つづいて、ホース12a、排気管12を介してサクションフード11に連結する負圧源を作動させると、フランジT1aとサクションフード11との間のギャップgに生じる上向きのエア流(図4の矢印Ka 、Ka )は、フランジT1a上の蓋材T2 の余裕部分T2aをめくり上げ、蓋材T2 とフランジT1aとの間に存在する水分を上方に吹き飛ばして除去し、トレー包装体Tの水切りをすることができる。ギャップgに生じるエア流は、フランジT1aの端縁を下から上に越える際に、フランジT1aの上面側において激しい乱流を生じるからである。
【0020】
所定時間の経過によって水切りが完了したら、負圧源を停止させてサクションフード11を上昇させ、ターンテーブル22を1ピッチだけ回転させる(図2の矢印K3 方向)。これにより、次の切欠き22aがコンベヤ21上に位置するから、以後、同様の動作を繰り返すことにより、コンベヤ21を介して搬入されるトレー包装体T、T…を順次水切りすることができる。なお、水切り処理後のトレー包装体T、T…は、ターンテーブル22の回転により切欠き22aがコンベヤ23上に位置すると、コンベヤ23を介して排出される(図2の矢印K4 方向)。なお、図1、図2において、ターンテーブル22の下には、切欠き22a、22a…を介してコンベヤ21上からコンベヤ23上に横移動させるトレー包装体T、T…が下方に脱落しないように、コンベヤ21、23と同一高さの図示しない支持板を配設するものとする。
【0021】
以上の説明において、ギャップgに生じる上向きのエア流には、トレーT1 のフランジT1aの上面に沿う内向きの成分を含ませることができる。たとえば、サクションフード11の下端部に斜め内向きの段部11bを形成することにより(図5(A))、上向きのエア流の流れの方向を斜め内向きに変更して内向きの成分を作ることができる。なお、段部11bは、トレーT1 のフランジT1aにほぼ対応する位置に設けることが好ましい。
【0022】
また、トレーT1 のフランジT1aにほぼ対応するようにして、多数のエアの吹出ノズル11c、11c…をサクションフード11の下端部に一列に配列して付設してもよい(同図(B))。吹出ノズル11c、11c…は、マニホールド11dを介して図示しない圧力エア源に接続し、圧力エア源は、サクションフード11用の負圧源と同期して作動させる。また、エアの吹出ノズル11c、11c…に代えて、多数のエアの吸込口を一列に配列して形成してもよい(図示せず)。吹出ノズル11c、11c…や、吸込口からのエアは、ギャップgにおける上向きのエア流の流れの方向を変えて内向きの成分を作ることができる。
【0023】
以上の説明において、ターンテーブル22上のサクションフード11は、切欠き22a、22a…に対応する複数組を設けてもよい。各サクションフード11は、ターンテーブル22と一体に回転し、切欠き22aにトレー包装体Tが収納されると下降してトレー包装体Tを水切りすることができ、したがって、ターンテーブル22を実質的に連続的に回転させることができる。
【他の実施の形態】
【0024】
サクションフード11は、コンベヤ21、23を介して搬送する長方形のトレー包装体T、T…の各一辺に対応するようにして、各一対をそれぞれコンベヤ21、23の両側に沿わせるようにして配設することができる(図6、図7)。なお、このときのターンテーブル22は、90°回転することにより(図7の矢印K3 方向)、コンベヤ21の前端に排出されるトレー包装体Tを90°回転させてコンベヤ23の後端部に移載することができる。
【0025】
各サクションフード11は、トレーT1 のフランジT1aにほぼ対応する位置において、外側に山形に膨出する突部11eを形成することにより(図8)、ギャップgに生じる上向きのエア流に対し、フランジT1aの上面に沿う内向きの成分を作ることができる。また、左右のサクションフード11、11の間には、ガイドコンベヤ24が配設されており、ガイドコンベヤ24は、トレー包装体Tの上面を押さえながらサクションフード11、11の間を前後に貫通している。ただし、図8は、コンベヤ21側のサクションフード11、11、ガイドコンベヤ24を図示しているが、コンベヤ23側のサクションフード11、11、ガイドコンベヤ24も、同様に構成されている。
【0026】
また、コンベヤ21側、コンベヤ23側のガイドコンベヤ24、24は、それぞれ対応するサクションフード11、11より長く、ターンテーブル22の上方にまで延びており、コンベヤ21からターンテーブル22上に排出されるトレー包装体T、ターンテーブル22上からコンベヤ23上に移載されるトレー包装体Tの上面を押圧することができる。なお、ガイドコンベヤ24、24は、それぞれ対応するコンベヤ21またはコンベヤ23と同期して同速度に駆動するものとする。
【0027】
コンベヤ21上のトレー包装体Tは、コンベヤ21、ガイドコンベヤ24を間欠または連続駆動してサクションフード11、11の間を通過させ、サクションフード11、11を長辺側の2辺に沿って配置させた上、各サクションフード11に連結する負圧源により長辺側の2辺の水切りを完了すると、コンベヤ21を介してターンテーブル22上に排出される。そこで、ターンテーブル22を介してトレー包装体Tの方向を90°回転してコンベヤ23上に移載し、コンベヤ23側のサクションフード11、11により短辺側の2辺の水切りを完了してコンベヤ23の下流側に排出すればよい。なお、コンベヤ21、23上において、左右のサクションフード11、11は、それぞれ複数のトレー包装体T、T…の長辺側または短辺側をカバーするように形成してもよく(図6、図7)、1個のトレー包装体Tの長辺側または短辺側をカバーするようにしてもよい(図示せず)。また、左右のサクションフード11、11は、互いに同期して作動させることが好ましいが、互いに時間差を設けて作動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】全体構成側面図
【図2】全体構成平面図
【図3】トレー包装体の要部拡大断面説明図
【図4】図1の要部拡大図
【図5】他の実施の形態を示す図4相当説明図
【図6】他の実施の形態を示す図1相当図
【図7】他の実施の形態を示す図2相当図
【図8】図6のX−X線矢視相当拡大断面図
【符号の説明】
【0029】
T…トレー包装体
T1 …トレー
T1a…フランジ
T2 …蓋材
S…シール部分
g…ギャップ
11…サクションフード

特許出願人 有限会社 アイ・エス・エス
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の蓋材を介してシールするトレー包装体の周囲にサクションフードを配置させ、トレーのフランジとサクションフードとの間のギャップに生じる上向きのエア流によりトレー包装体の水切りをすることを特徴とするトレー包装体の水切り方法。
【請求項2】
エア流には、フランジの上面に沿う内向きの成分を含ませることを特徴とする請求項1記載のトレー包装体の水切り方法。
【請求項3】
エア流を生じさせるとき、フランジ上の蓋材のシール部分を押さえることを特徴とする請求項1または請求項2記載のトレー包装体の水切り方法。
【請求項4】
フィルム状の蓋材を介してシールするトレー包装体の周囲に配置するサクションフードを備えてなり、該サクションフードは、トレーのフランジとの間のギャップに上向きのエア流を生じさせることを特徴とするトレー包装体の水切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−256648(P2006−256648A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74577(P2005−74577)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(505098498)有限会社 アイ・エス・エス (3)
【Fターム(参考)】