説明

トンネル内の空気浄化装置

【課題】油圧作業機器を用いたトンネル工事で発生した粉塵を処理する空気浄化装置において、集塵機を小型化および簡単化して粉塵発生個所付近に配置して集塵効率を高め、油圧作業機器および集塵機を含む全体設備を簡単化してその取扱いを容易とし、工事の進捗に合わせて容易に移動させることを可能とするとともに、坑内温度の上昇を抑制可能とすることを課題とする。
【解決手段】油圧作業機器を用いたトンネル工事で発生した粉塵を、吸引ダクトでスクラバランクに回収し、粉塵を分離した清浄空気を送風機で放出するトンネル内の空気浄化装置において、吸引ダクトとスクラバタンクと送風機とを含む水スクラバ式集塵機を、移動可能な走行台車に搭載すると共に、スクラバタンク内に油圧作業機器の作動油を循環させて冷却する配管を設けた空気浄化装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の空気浄化装置に関し、特に中小断面のトンネルに好適に用いられ、吹付機や掘削機などの油圧作業機器を用いたトンネル工事に伴い発生した粉塵を処理する水スクラバ式集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事においては、掘削機や吹付機などを用いた作業に伴って有害な粉塵が発生して空気を汚染し、特に掘削延長が長くなった切羽付近では風通しが悪く、汚染空気が充満しやすい。このような粉塵を含んだ汚染空気から粉塵を除去する公知の方法として、(1)吸引した汚染空気をフィルタに通して粉塵などを除去するフィルタ式集塵機、(2)吸引した汚染空気に水シャワーを噴霧して粉塵などを分離するシャワー式集塵機、(3)吸引した汚染空気をスクラバタンク内の集塵水と接触させて粉塵などを捕集する水スクラバ式集塵機などがある。
【0003】
これらの集塵機では、(1)のフィルタ式集塵機の場合には、フィルタや吸引ポンプが目詰まりして集塵能力が低下したり、集めた粉塵が粉末状態であるために後処理が容易でないこと、(2)のシャワー式集塵機の場合には、均一で且つ接触機会を多くした状態で散水する必要があり、その設備が大型で高価になること、(3)の水スクラバ式集塵機の場合には、大量の汚染空気を高能率で処理するのに難点があること、などそれぞれに短所があった。
【0004】
そこで本件出願人は、構造を簡単とすることにより集塵機の小型化および製造コストの低減を図り、集塵機に大量の汚染空気を高能率で処理する能力を備えた、発明の名称「集塵装置のスクラバタンク」の出願(特許文献1参照)、およびこれを改良した、発明の名称「水スクラバ式集塵装置」の出願(特許文献2参照)を行い、これらの課題を解決し得る提案をしている。
【0005】
また、トンネル工事の吹付け作業において、従来の圧縮空気により吹付け材を掘削側面に吹付ける吹付機を用いた場合には、坑内に大量の粉塵を発生させ、さらに圧縮空気が粉塵を拡散させてしまうため、大量の汚染空気について粉塵処理を行う必要があった。そこで、圧縮空気に代えて遠心力を利用して吹付ける遠心力油圧吹付機を使用することにより、吹付け時の粉塵の発生、および粉塵処理を必要とする汚染空気量を極力低減する、発明の名称「回転投射式の吹付け工法」の出願(特許文献3参照)を行っている。
【特許文献1】特開2003−170017号公報
【特許文献2】特開2004−321892号公報
【特許文献3】特開2004−249197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小型で構造が簡単な集塵装置のスクラバタンクにあっても、スクラバタンク内の汚濁液を排出する排泥ポンプ、排出された汚濁液を移送する排泥液管、および汚濁液を再利用可能な清浄液へと処理する汚濁液処理設備などが必要であり、トンネル断面が小さい場合、これら設備をトンネル坑内に設置するのは困難である。また、トンネル断面が比較的大きい場合であっても、粉塵処理を必要とする汚染空気量が多くなり、そのために設備が大型化し、これら設備を中小断面のトンネル坑内に設置するのが困難であったり、通路を占有して作業を阻害するため好ましくない。
【0007】
一方、集塵装置をトンネル坑外に設置すると、切羽から汚染空気を吸引して坑外へ移送するための坑内配管設備が必要であり、坑内配管長が長くなる程圧力損失が大きくなって換気風量が低下してしまう。また、集塵装置は排気方式であるため、換気風量が低下するほど配管内に粉塵が堆積し、さらなる風量低下を引き起こして効率的ではない。そのため、集塵装置をトンネルの切羽にできるだけ近い位置に設置することが望ましいが、掘削作業の進捗に伴い切羽位置は移動し、また、トンネル内のスペースは限られているため、設備をできるだけ小さく簡単にすることが望まれる。
【0008】
他方、トンネル工事の吹付け作業時に発生する粉塵量を低減する遠心力油圧吹付機を使用する場合、駆動源である油圧ユニットを稼動すると、ポンプの圧縮作用による油の発熱、装置内を流れる油の摩擦抵抗による熱などによって作動油の温度が上昇する。作動油の油温上昇は油の粘性を低下させ、シール部での油漏れや油圧作業機器に出力効果の変化を生じさせたり、坑内温度を上昇させて作業環境を悪化させるため、油を冷却して適正範囲に維持するための冷却装置が必要となる。
【0009】
冷却装置には低温の冷却液を順次供給する冷却液供給設備を接続するか、または作動油を適正温度に維持しつつ熱エネルギを吸収し得る大型の冷却装置を用いる必要があり、工事の進捗に伴う移動やトンネル内の作業スペースなどを考慮するとその取扱いは煩雑である。同様に、油圧掘削機など他の油圧作業機器を使用する場合にも油圧ユニット、冷却装置および冷却液供給設備が必要であり、その取扱いは容易ではない。
【0010】
そこで、油圧作業機器を用いたトンネル工事で発生した粉塵を処理する空気浄化装置において、集塵機をトンネル坑外に設置した場合に比べて集塵効率を高め、油圧作業機器および集塵機を含む全体設備を小型化および簡単化してその取扱いを容易とし、工事の進捗に合わせて容易に移動させることを可能とするとともに、坑内温度の上昇を抑制可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の手段として、本発明は、油圧作業機器を用いたトンネル工事で発生した粉塵を、吸引ダクトでスクラバランクに回収し、粉塵を分離した清浄空気を送風機で放出するトンネル内の空気浄化装置であって、前記吸引ダクトとスクラバタンクと送風機とを含む水スクラバ式集塵機を、移動可能な走行台車に搭載すると共に、前記スクラバタンク内に前記油圧作業機器の作動油を循環させて冷却する配管を設けたことを特徴とするトンネル内の空気浄化装置を提供する。
【0012】
これによると、油圧作業機器の使用に伴い粉塵が発生するトンネル工事において、集塵機のスクラバタンク内の集塵液を、油圧作業機器の作動油を冷却する冷却液として兼用することによって、油圧作業機器に必要な冷却装置を省略して油圧作業機器および集塵機を含む全体設備を小型化することができる。
【0013】
また、冷却液として使用される集塵液は作動油の放熱により次第に温度が上昇するが、集塵液として大量の汚染空気を取り込んで接触することにより、汚染空気中に放熱して冷却液としての温度上昇を抑制できるため、冷却装置の冷却液供給設備を省略して全体設備を簡単化し、または冷却装置の大型化を回避して全体設備を小型化することができる。さらに、このように油圧作業機器が発する熱を吸収して粉塵を除去された清浄空気を、集塵機の送風機により作業位置から離れた空間へ拡散することにより切羽付近の坑内温度の上昇を抑制することができる。
【0014】
また、汚濁液を排出するためのポンプや、排出に伴い新たな集塵液を供給する液供給設備などを集塵機から分離して簡単化し、移動用台車に搭載することにより、集塵機をトンネル内に持ち込み可能とするとともに、トンネル工事の進捗に伴って集塵機を移動させ、または他の作業などと干渉しない位置に移動させることを可能とし、作業スペースの限られるトンネル内における取扱いを容易とする。
【0015】
さらに、システムをトンネル坑外へ移動させて集塵液を交換し、または集塵液に吸収され残存している熱を放出させることにより切羽付近の坑内温度の上昇を抑制することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、第1の手段である空気浄化装置において、前記スクラバタンクの内部を、隔壁により2槽に分割し、一方の槽に前記配管を設けたトンネル内の空気浄化装置を提供する。
【0017】
これによると、一方の槽の冷却液が吸収した作動油の熱を、隔壁を介して他方の槽の集塵液に放熱しつつ、集塵されたセメントなどが作動油の冷却配管に付着して冷却能力が低下することを回避することができる。また、配管が破損したような場合に配管内に冷却液が流入すると、油圧ユニットなどの故障の原因となり得るが、これが清浄水であれば、汚濁液であった場合に比べてその修復を容易に行うことができる。
【0018】
また、上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、第1の手段である空気浄化装置において、前記油圧作業機器を、前記水スクラバ式集塵機と共に前記走行台車に搭載したトンネル内の空気浄化装置を提供する。
【0019】
油圧作業機器は、その作動油の冷却装置として利用する水スクラバ式集塵機と、油圧ホースにより連結されているが、これによると、同一の走行台車に搭載されているために移動するときなど、その取扱いが容易となる。
【0020】
また、上記課題を解決するための第4の手段として、本発明は、第1の手段である空気浄化装置において、前記油圧作業機器が、ライニング材と急結剤を混練りした吹付け材を、油圧モータで回転するインペラの遠心力によって回転投射する回転投射式吹付機であるトンネル内の空気浄化装置を提供する。
【0021】
これによると、吹付け作業時に発生する粉塵量および粉塵除去処理が必要な汚染空気量の少ない当該吹付機を使用することにより、小型化されたスクラバタンクを備えた集塵機を、小断面のトンネルの坑内に持ち込むことが可能となる。したがって、トンネル坑外に設置する場合に必要となる集塵用の風管設備を設ける必要がなくなり、効率の良い粉塵処理が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
これらの手段を用いることにより、油圧作業機器を用いたトンネル工事により発生した粉塵を処理する空気浄化装置において、油圧作業機器に必要な冷却装置を省略して小型化することができるとともに、冷却装置に接続されるべき冷却液供給設備を省略して油圧装置を簡単化し、または冷却装置の大型化を回避して油圧装置を小型化することができる。また、集塵機から排出ポンプや集塵液供給設備を分離して簡単化し、移動可能とすることにより、集塵機をトンネル内に持ち込み可能とするとともに、作業空間が限られるトンネル内における取扱いを容易とする。その結果、一般的には困難とされている小断面のトンネル坑内にも集塵機を持ち込み可能とし、トンネル坑外に設置した場合と比べて効率的な粉塵処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、小断面トンネルにおいて、本発明による空気浄化装置、および油圧作業機器を使用する様子を示す概念図である。油圧作業機器として、小断面のトンネル1の切羽2付近で使用され、ライニング材と急結剤を混練りした吹付け材3を、油圧モータで回転するインペラの遠心力によって回転投射する回転投射式吹付機4を用いている。回転投射式吹付機4を用いたトンネル工事で発生した粉塵5を、吸引ダクト13でスクラバタンク7に回収し、粉塵5を分離した清浄空気24を送風機14で放出するトンネル内の空気浄化装置6は、吸引ダクト13とスクラバタンク7と送風機14とを含む水スクラバ式集塵機を、トンネル内のレール上を移動可能な走行台車8に搭載されると共に、スクラバタンク7内に回転投射式吹付機4の作動油10を循環させて冷却する配管11を設けられている。
【0025】
空気浄化装置6のスクラバタンク7内の下層側には、粉塵5を捕集する集塵液としての集塵水9が貯留されており、配管11は集塵水9に浸漬するように配管されている。
【0026】
回転投射式吹付機4は、走行台車8に搭載され、吹付け材3を回転投射する吹付けヘッドであって、作動油10の圧油により回転駆動される吹付けヘッド15と、吹付けヘッド15を吹付け作業位置に配置する配置手段であるブーム16と、作動油10を貯留する作動油タンク17と、作動油10を圧送する圧送手段である油圧ポンプ18と、油圧ポンプ18の駆動により作動油10を吹付けヘッド15へ移送する油圧ホース(図示せず)と、吹付けヘッド15においてライニング材に混練りする急結剤を供給する急結剤供給装置19とを有している。
【0027】
ライニング材運搬車であるアジテータカー21によりトンネルの切羽2付近に運搬されたライニング材は、ライニング材圧送手段であるコンクリートポンプ22に供給され、材料圧送ホース23を介して吹付けヘッド15へ供給される。油圧ポンプ18は作動油10を圧送して油圧吹付けヘッド15を回転駆動し、ライニング材と急結剤供給装置19から供給された急結剤とを混練りして吹付け材3を生成し、回転投射してトンネル1の内壁を覆工する。この際、粉塵5が発生して切羽2付近の空気が汚染空気12となる。
【0028】
汚染空気12は、ブーム16に固定され吸引口を吹付け作業位置付近に配置された吸引ダクト13により吸引され、スクラバタンク7に貯留された集塵水9に取り込まれ、気泡となって接触することで粉塵5を除去される。粉塵5を除去された清浄空気24は送風機14により吸引され空気浄化装置6外へ放出される。
【0029】
油圧ポンプ18の圧縮作用および回転投射式吹付機4内を流れる摩擦抵抗により油温が上昇した作動油10は、配管11を循環してスクラバタンク7内の集塵水9に放熱する。冷却液としての集塵水9は、給水設備を設けていないため次第に温度が上昇するが、吸引ダクト13によって吸引されてくる大量の汚染空気12が接触することにより、汚染空気12に放熱するため、水温はある一定の温度に保たれる。そして吸熱した清浄空気24は、送風機14により切羽から離れた空間へ拡散され、トンネル換気設備により切羽付近に送気され坑口へ向かう空気の流れに乗って排出される。したがって、切羽の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
なお、走行台車8に搭載された回転投射式吹付機4および空気浄化装置6は移動可能であり、掘進にしたがって切羽の位置が変動しても、回転投射式吹付機4および空気浄化装置6を切羽位置に容易に移動することができ、常に吸引ダクトの短い効率的な集塵作業を行うことができる。また、集塵水9が粉塵により汚濁して汚濁水処理が必要となったときには、空気浄化装置6をトンネル坑外などに設置された汚濁水処理設備へ移動させて、スクラバタンク内の汚濁水を排出口(図示せず)から取り出し、汚濁水処理設備に収容して沈殿するスラッジと上澄み水に分離し、再利用可能となった上澄み水を補充する。
【0031】
また、汚染空気への放熱によってもなお集塵水9の水温が高い場合にも、回転投射式吹付機4および空気浄化装置6をトンネル坑外へ移動させ、集塵水9中に残存する熱を開放スペースで放出することにより、または集塵水9を排出して新たな上澄み水を補充することにより、切羽の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
図示の実施形態では、回転投射式吹付機4および空気浄化装置6は1台の走行台車8に搭載されているが、ブーム16および吹付けヘッド15と、作動油タンク17と、スクラバタンク7とをそれぞれ別の移動可能な走行台車に搭載してもよく、走行台車は牽引式でも自走式でもよい。また、走行台車はレール上を移動可能な車輪式としているが、レールを必要としない車輪式やクローラ式であってもよい。作動油タンク17とスクラバタンク7とを別の移動用台車に搭載する場合には、配管11の始点および終点付近のスクラバタンク7との連結部分は、可撓性のある油圧ホースを用いて配管すればよい。油圧作業機器が油圧掘削機など、吹付機以外の場合にも同様である。
【0033】
図2は、本発明による空気浄化装置の一実施形態であって、水スクラバ式集塵機の要部を示す縦断面図である。スクラバタンク7は、下層側に集塵水9を貯留し、一定に保持される水位W.Lの上層側に空気流動領域30を有している。
【0034】
作動油10の配管11は、作動油タンク17を始点とし、集塵水9内に浸漬するように配管され、作動油タンク17を終点として循環する経路とされている。集塵水9内の配管11は、管内を流通する作動油10の油温を効率的に低下させるため、放熱面積が大きくなるような形状とする。スクラバタンク7外の配管11にはポンプ(図示せず)を設置して作動油10を循環させ、油温が上昇した作動油10は周囲の集塵水9との温度差により熱を放出して冷却される。
【0035】
スクラバタンク7の空気流動領域30には空気流路を画定する第1および第2の流路案内板31,32が装着され、スクラバタンク7の中央部であって水位W.Lの上方には各流路案内板31,32の内端側により、細隙状の連通路33(33A,33B)が形成されている。2枚の流路案内板31,32は、第1の流路案内板31が入力側を始端にしてスクラバタンク7の中央部の終端に向けて、集塵水9A側の水位W.Lより僅か上方を下向き傾斜状に延在すると共に、第2の流路案内板32がスクラバタンク7の中央部の始端から出力側の終端に向けて、集塵水9B側の水位W.Lの上方を上向き傾斜状に延在し、互い違いに交差している。
【0036】
これにより、第1の流路案内板31の下側には容積の小さい第1の空気流路30Aが、第2の流路案内板32の下側にはこれより容積の大きい第2の空気流路30Bが形成されると共に、2枚の流路案内板31,32上側には更に容積が大きい第3の空気流路30Cが形成され、各空気流路30A,30B,30Cの間は細隙状の連通路33(33A,33B)を介して連通される。
【0037】
集塵水9には、水位W.Lより僅かに水没する状態で入力筒34の先端を第1の流路案内板31の下方へ突設させる。また、スクラバタンク7内には第1の流路案内板31の中間部下側には消波板を兼用する第1の除塵フィルタ36を設け、第2の流路案内板32の上側には第2の除塵フィルタ37を設けている。
【0038】
スクラバタンク7は、送風機14で空気流動領域30の清浄空気24を吸引すると、次第に負圧状態になって第2の空気流路30B側の集塵水9Bの水位が上昇すると共に、第1の空気流路30A側の集塵水9Aの水位が下降し、集塵水9Aにおける水位の下降で吸引ダクト13及び入力筒34を介し、トンネル1から汚染空気12がスクラバタンク7内へ順次送り込まれる。
【0039】
汚染空気12は、集塵水と接触して気泡状態になって粉塵などが集塵水9内に捕集され、汚泥として集塵水9Aの底部に順次沈殿して堆積するので、この汚泥層を含む汚濁水を図示しない排出口から排出し、汚濁水処理設備において再利用すべく浄化処理を行う。
【0040】
一方、粉塵などが除去された空気は集塵水9Aを浮上して第1の空気流路30Aに清浄空気24として取り込まれ、連通路33Aを介して第2の空気流路30B側へ順次流動した後に、連通路33Bを介して第3の空気流路30C側へ流動し、出力筒35に連結された送風機14側へ移送され、清浄空気24としてトンネル内に放出される。
【0041】
また、第1の空気流路30Aに取り込まれた清浄空気24中には、除去されずに残余した粉塵などの汚染物質や水分が含有されているが、2枚の流路案内板31,32を設けたことにより、流動空気の流速が高まって空気流動領域30を流動中に流路案内板31,32の下面やスクラバタンク7の天井に付着した粉塵などを含む水滴は2枚の流路案内板31,32の傾斜面に沿って流下し、集塵水9内に滴下して回収される。
【0042】
空気流動領域30の途中には第1の除塵フィルタ36及び第2の除塵フィルタ37を設けた構成を採ることによって、汚染空気12に対して汚染物質を除去する機能を一段と向上している。
【0043】
第1の除塵フィルタ36は、上部側を第1の空気流路30Aの途中に突設されると共に、下部側を入力側の集塵水9A内の底面へ連結されて、水位W.Lの上下に延在しており、配管11と交錯する部分には開口を設けて配管11との間隙がないように処理されている。第1の空気流路30Aから下流側の第2の空気流路30Bへ流動する汚染物質を除去するとともに、上流側で発生した波立ちによる乱流が下流側に波及しないように消波し、捕捉した粉塵などをスクラッピングによる波立ちで自動的に洗い落とし、スクラバタンク7の底部に堆積させる。
【0044】
第2の除塵フィルタ37は、第3の空気流路30Cに対して流路案内板32の始端上部側に設け、下流側へ流動する清浄空気24中に残留する汚染物質を捕捉して阻止し、粉塵濃度の低い清浄空気24を送風機14側へ移送する。
【0045】

図示の実施形態では、第1及び第2の除塵フィルタ36,37の双方を設けているが、いずれか一方の除塵フィルタのみを設ける実施形態や、除塵フィルタを設けない実施形態を採ることも可能であり、2つの除塵フィルタ36,37又は除塵フィルタ36,37のいずれかを設けることによって、除塵フィルタを設けない場合と比べて集塵効果及び空気清浄効果その他の点において顕著な相違があることが確認されている。
【0046】
図3は、本発明の空気浄化装置の他の実施形態であって、水スクラバ式集塵機の要部を示す縦断面図である。スクラバタンク7の内部に隔壁38を設け、スクラバタンク7内に貯留された集塵水9を、上槽の集塵水9A,9Bと、下槽の集塵水9Cとに上下に分割している。除塵フィルタ36は隔壁38の上方に突設され、集塵水9A,9Bを隔てており、隔壁38の下方の集塵水9C内には配管11が配管されている。
【0047】
配管11内を流通する作動油10の熱は、まず集塵水9Cに放出され、集塵水9Cのうち配管周りの温度上昇したものは集塵水9C内を上昇し、隔壁38を介して集塵水9A,9Bに熱を放出する。したがって隔壁38は、熱伝導率の高い材料からなることが望ましく、集塵水9B,9Cが集塵水9Aに混入しないような不透水性の材料からなる。隔壁38には例えば鉄板を用いてもよいが、熱伝導率のより高い銅板やアルミニウム板などを用いるのが好ましい。
【0048】
入力筒34から流入した汚染空気は、集塵水9A,9B及び空気流路30を通過して出力筒35へ流出する。集塵水9Cは汚染空気と接触しないため粉塵により汚濁されることはなく、常に清浄な状態に保たれる。したがって、配管11が破損したような場合にも配管内に汚濁水が流入して油圧ユニットが故障することを回避でき、また、配管11にセメントなど捕集された集塵が付着して冷却効果が低下することも回避できる。
【0049】
なお、本発明は、図3に示すようなスクラバタンク7を上下に分割する実施形態に限定されるものではなく、例えば、隔壁38を垂直方向や斜め方向に設置してスクラバタンク7を水平方向に2槽に分割するような形態をとることも可能である。
【0050】
図4は、図1の油圧作業機器として用いる回転投射式吹付機を示す断面図である。回転投射式吹付機4は、材料導入部4Aと、撹拌混合部4Bと、回転投射部4Cと、回転駆動部4Dとで構成されている。
【0051】
材料導入部4Aは、ライニング材を導入する大径の第1導入管42と、急結剤を導入する小径の第2導入管43が同心状に配置され、第1導入管42にはコンクリートポンプ22に接続された材料圧送ホース23を介してライニング材を、第2導入管43には急結剤供給装置19から急結剤をポンプ圧送する。撹拌混合部4Bでは、始端側内周面に導入されたライニング材に急結剤が添加され、終端側へ流動しながら複数の撹拌羽根44により混練りされて吹付け材3となる。
【0052】
図5は、図4のV断面図である。回転投射部4Cは、複数の羽根板45を装着した投射用インペラ46を装着し、投射用インペラ46の外周囲には方向制御板47に枢着した複数の案内ローラ48を配置させ、投射用インペラ46と各案内ローラ48の間には投射方向Dに投射口49を開放する態様で無端ベルト50を巻掛けてある。
【0053】
投射用インペラ46内に順次移送される吹付け材3は、投射用インペラ46が回転駆動されると各羽根板45で押し出されるようにして、投射口49から投射方向Dへ遠心力で回転投射される。この際、方向制御板47を所定角度に揺動回転させると、案内ローラ48に巻掛けた無端ベルト50の投射口49を所望に設定して投射方向Dを所望の角度に可変調整することができる。
【0054】
回転駆動部4Dは、撹拌羽根44を高速回転させる駆動部、投射用インペラ46を高速回転させる駆動部、方向制御板47を揺動回転させる駆動部などが必要であり、これらの各回転駆動部はプーリやVベルトなどによる動力伝達手段を介して、それぞれ油圧モータに連結されている。この実施形態では、撹拌羽根44及び投射用インペラ46を連結し、動力伝達手段を介して第2のモータM2で高速回転駆動を行い、共用化することで回転駆動部の構成を簡略化している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】小断面トンネルにおいて、本発明による空気浄化装置、および油圧作業機器を使用する様子を示す概念図である。
【図2】本発明による空気浄化装置の一実施形態であって、水スクラバ式集塵機の要部を示す縦断面図である。
【図3】本発明による空気浄化装置の他の実施形態であって、水スクラバ式集塵機の要部を示す縦断面図である。
【図4】図1の油圧作業機器として用いる回転投射式吹付機を示す断面図である。
【図5】図4のIV断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 トンネル
2 切羽
3 吹付け材
4 回転投射式吹付機
4A 材料導入部
4B 撹拌混合部
4C 回転投射部
4D 回転駆動部
5 粉塵
6 空気浄化装置
7 スクラバタンク
8 走行台車
9 集塵水
10 作動油
11 配管
12 汚染空気
13 吸引ダクト
14 送風機
15 吹付けヘッド
16 ブーム
17 作動油タンク
18 油圧ポンプ
19 急結剤供給装置
21 アジテータカー
22 コンクリートポンプ
23 材料圧送ホース
24 清浄空気
30 空気流動領域
30A 第1の空気流路
30B 第2の空気流路
30C 第3の空気流路
31 第1の流路案内板
32 第2の流路案内板
33 連通路
34 入力筒
35 出力筒
36 第1の除塵フィルタ
37 第2の除塵フィルタ
38 隔壁
42 第1導入管
43 第2導入管
44 撹拌羽根
45 羽根板
46 投射用インペラ
47 方向制御板
48 案内ローラ
49 投射口
50 無端ベルト
D 投射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧作業機器を用いたトンネル工事で発生した粉塵を、吸引ダクトでスクラバタンクに回収し、粉塵を分離した清浄空気を送風機で放出するトンネル内の空気浄化装置であって、前記吸引ダクトとスクラバタンクと送風機とを含む水スクラバ式集塵機を、移動可能な走行台車に搭載すると共に、前記スクラバタンク内に前記油圧作業機器の作動油を循環させて冷却する配管を設けたことを特徴とするトンネル内の空気浄化装置。
【請求項2】
前記スクラバタンクの内部を、隔壁により2槽に分割し、一方の槽に前記配管を設けたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の空気浄化装置。
【請求項3】
前記油圧作業機器を、前記水スクラバ式集塵機と共に前記走行台車に搭載したことを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の空気浄化装置。
【請求項4】
前記前記油圧作業機器が、ライニング材と急結剤を混練りした吹付け材を、油圧モータで回転するインペラの遠心力によって回転投射する回転投射式吹付機であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−138423(P2007−138423A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330096(P2005−330096)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】