説明

トンネル内の覆工コンクリート養生装置

【解決手段】トンネル1の内周でトンネル1の長手方向に沿って成形した覆工コンクリート2に対し流体を吹き付ける複数の流体出口12を有する流体供給管11を備え、流体供給管11の各流体出口12から出る流体を回収する流体回収トレー4を設け、流体回収トレー4から流体を回収する流体回収タンク13を設けるとともに、流体回収タンク13から流体を流体供給管11へ供給するポンプ14を設けた。
【効果】流体回収トレー4によりトンネル1内への流体の落下を防止して、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体によりトンネル1内や各種設備が汚れることを防止することができる。覆工コンクリート2に吹き付けられた流体を流体回収タンク13に効率良く集め、さらには流体回収タンク13内の流体を流体供給管11へ循環させて覆工コンクリート2に吹き付けるための流体を再利用して節約することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内周でトンネルの長手方向に沿って成形した覆工コンクリートに対しその表面を湿潤させるために水等の流体を吹き付ける流体供給管を備えたトンネル内の覆工コンクリート養生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の下記特許文献1ではこの種の覆工コンクリート養生装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−285803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、覆工コンクリートに吹き付けられた水がトンネル内に落下するため、トンネル内や各種設備がその水により汚れるおそれがあった。また、トンネル内に落下した水は捨てられるため、覆工コンクリートに吹き付けるための水が多量に必要となり、水の補充を頻繁に行わなければならなかった。
【0004】
この発明は、覆工コンクリートに吹き付けられた水によりトンネル内や各種設備が汚れることを防止することを目的としている。また、この発明は、覆工コンクリートに吹き付けるための水を節約することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜2)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるトンネル内の覆工コンクリート養生装置においては、トンネル1の内周でトンネル1の長手方向に沿って成形した覆工コンクリート2に対し流体を吹き付ける複数の流体出口12を有する流体供給管11を備え、その流体供給管11の各流体出口12から出る流体を回収する流体回収トレー4を設けている。請求項1の発明では、この流体回収トレー4によりトンネル1内への流体の落下を防止することができる。
【0006】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明においては、前記流体回収トレー4から流体を回収する流体回収タンク13を設けている。請求項2の発明では、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体をこの流体回収タンク13に効率良く集めることができる。
【0007】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明においては、前記流体回収タンク4から流体を前記流体供給管11へ供給する流体供給手段14,15を設けている。請求項3の発明では、この流体供給手段14,15により流体回収タンク13内の流体を流体供給管11へ循環させて再利用して、覆工コンクリート2に吹き付ける流体を節約することができる。
【0008】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明においては、前記流体回収タンク13に供給される流体を加熱するヒータ18を設けている。請求項4の発明では、流体供給管11へ循環されて再利用される流体をこのヒータ18により覆工コンクリート2の養生温度に加熱することができる。
【0009】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明においては、前記覆工コンクリート2の温度を測定する温度センサ19により検出された覆工コンクリート2の実際温度に関する検出値に基づき前記ヒータ19を覆工コンクリート2の養生温度に関する設定値に制御するヒータ温度制御手段20を設けている。請求項5の発明では、このヒータ温度制御手段20により、流体供給管11へ循環されて再利用される流体を覆工コンクリート2の養生温度に自動的に加熱することができる。
【0010】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記流体回収トレー4は、トンネル1の内周に沿ってトンネル1の周方向Yへ延び、トンネル1の長手方向の両側に設けた側壁5,6と、この両側壁5,6間でトンネル1の内周に面して設けた底壁7とからなり、前記流体供給管11はこの両側壁5,6と底壁7とにより囲まれた流体回収室8に収容されている。請求項6の発明では、この流体回収トレー4の両側壁5,6及び底壁7によりトンネル1内への流体の落下をより一層防止することができる。例えば、この流体回収トレー4の両側壁5,6は、覆工コンクリート2に接触してトンネル1の内周に沿ってトンネル1の周方向Yへ延びる閉塞部5a,6aを有し、その両側壁5,6の閉塞部5a,6aによりトンネル1内への流体の落下をより一層防止することができる。
【0011】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項3から請求項5のうちいずれか一つの請求項を前提とする第7の発明において、前記流体回収タンク13及び流体供給手段14,15は、トンネル1の長手方向に対し直交するトンネル1の幅方向Xの両側にそれぞれ配設されている。第7の発明では、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体をトンネル1の幅方向Xの両側でこの流体回収タンク13に効率良く集めることができるとともに、この両流体回収タンク13内の流体をトンネル1の幅方向Xの両側でこの両流体供給手段14,15により流体供給管11へ効率良く循環させることができる。例えば、流体回収トレー4と流体供給管11と流体回収タンク13と流体供給手段14,15とは、トンネル1の長手方向へ走行し得る台車3に設置され、その台車3によりトンネル1の長手方向への移動を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、流体回収トレー4によりトンネル1内への流体の落下を防止して、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体によりトンネル1内や各種設備が汚れることを防止することができる。また、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体を流体回収タンク13に効率良く集め、さらには流体供給手段14,15により流体回収タンク13内の流体を流体供給管11へ循環させて再利用して、覆工コンクリート2に吹き付けるための流体を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかるトンネル内の覆工コンクリート養生装置について図面を参照して説明する。
トンネル1の内周でトンネル1の長手方向に沿って覆工コンクリート2が成形されている。この覆工コンクリート2の下方でトンネル1内の底部にはトンネル1の長手方向に対し直交するトンネル1の幅方向Xの両側でトンネル1の長手方向へ走行し得る台車3が設置され、その両台車3間に流体回収トレー4がトンネル1の内周に沿ってトンネル1の周方向Yへ延びるように架設されている。この流体回収トレー4は、トンネル1の長手方向両側のうち、一方の側に設けられた側壁5と、他方の側に設けられた側壁6と、この両側壁5,6間でトンネル1の内周に面して設けられた底壁7とにより断面コ字形状をなし、この両側壁5,6と底壁7とにより囲まれた流体回収室8を有している。この流体回収室8は、台車3の付近まで延びる流体回収トレー4の両端部で開口8aにより開放されている。この両側壁5,6間には送風管9がトンネル1の長手方向へ通る切欠き10が形成されている。この流体回収トレー4の両側壁5,6には、覆工コンクリート2の内周表面に接触してトンネル1の内周に沿ってトンネル1の周方向Yへ延びるゴム板である閉塞部5a,6aが流体回収トレー4の両端部と切欠き10との間で取着されている。
【0014】
前記流体回収トレー4の流体回収室8内には流体供給管11がトンネル1の内周に沿ってトンネル1の周方向Yへ延びるように収容され、この流体供給管11には覆工コンクリート2に対し水である流体を吹き付ける複数の流体出口12がトンネル1の周方向Yへ並設されている。この流体回収室8の両開口8aに面して流体回収タンク13が台車3に設置されて流体回収トレー4よりもトンネル1の長手方向へ長く延設されているとともに、この台車3で流体供給手段としてのポンプ14が流体回収タンク13に接続され、このポンプ14により流体回収タンク13から流体が流体供給手段としての接続管15を通して前記流体供給管11へ供給される。
【0015】
前記流体回収トレー4において流体回収室8の両開口8aで底壁7には回収樋16が両側壁5,6間にわたり設けられている。前記両流体回収タンク13には覆工コンクリート2の内周表面に接触する回収樋17が流体回収室8の両開口8aに面して設けられている。この両回収樋16及び両回収樋17は、図の実線で示すように流体回収タンク13上に設置されたヒータ18を介してこの流体回収タンク13に接続されている。前記両流体回収タンク13には覆工コンクリート2の内周表面に接触する温度センサ19が設けられている。ヒータ温度制御手段としてのコントローラ20はこの両ヒータ18及び両温度センサ19に接続されている。
【0016】
前記両流体回収タンク13内の流体はヒータ18により加熱され、この流体がポンプ14により流体回収タンク13から接続管15を通して流体供給管11に供給されると、この流体供給管11の各流体出口12から出た流体が散水状態または噴霧状態で覆工コンクリート2の内周表面に吹き付けられる。覆工コンクリート2に付着せずに落下する流体は、流体回収トレー4で、底壁7や両側壁5,6を伝って回収樋16に集まりヒータ18に回収されたり、覆工コンクリート2の内周表面を伝って回収樋17に集まりヒータ18に回収されたり、開口8aから直接落下してヒータ18に回収され、そのヒータ18により加熱されて流体回収タンク13に戻される。このようにして回収された流体は再びポンプ14により流体回収タンク13から接続管15を通して流体供給管11に循環される。前記温度センサ19は覆工コンクリート2の内周表面の温度を測定して前記コントローラ20に出力する。コントローラ20は、この覆工コンクリート2の実際温度に関する検出値と、予め記憶された覆工コンクリート2の養生温度に関する設定値とを比較し、その検出値が設定値になるように前記ヒータ18を制御する。
【0017】
図の二点鎖線で示すようにヒータ18を流体回収タンク13の周りに設置してもよい。その場合、覆工コンクリート2に付着せずに落下する流体は、回収樋16,17や開口8aからヒータ18を通さずに流体回収タンク13に直接落下し、流体回収タンク13でこのヒータ18により加熱される。なお、いずれのヒータ18を採用した場合でも、流体回収タンク13の周りを断熱材により覆った方が好ましい。
【0018】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 流体回収トレー4により、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体のトンネル1内への落下を防止することができる。従って、覆工コンクリート2に吹き付けられた流体によりトンネル1内や各種設備が汚れることを防止することができる。
【0019】
* 覆工コンクリート2に吹き付けられた流体をトンネル1の幅方向Xの両側で流体回収タンク13に効率良く集めることができる。
* 流体回収タンク13内の流体をトンネル1の幅方向Xの両側で流体供給管11へ効率良く循環させて覆工コンクリート2に吹き付ける流体を再利用して節約することができる。
【0020】
* 流体供給管11へ循環されて再利用される流体をヒータ18により覆工コンクリート2の養生温度に自動的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態にかかる覆工コンクリート養生装置をトンネル内に設置した状態を正面側から見て概略的に示す断面図である。
【図2】同じく概略的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…トンネル、2…覆工コンクリート、4…流体回収トレー、5,6…側壁、7…底壁、8…流体回収室、11…流体供給管、12…流体出口、13…流体回収タンク、14…流体供給手段としてポンプ、15…流体供給手段として接続管、18…ヒータ、19…温度センサ、20…ヒータ温度制御手段としてのコントローラ、X…トンネルの幅方向、Y…トンネルの周方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周でトンネルの長手方向に沿って成形した覆工コンクリートに対し流体を吹き付ける複数の流体出口を有する流体供給管を備え、その流体供給管の各流体出口から出る流体を回収する流体回収トレーを設けたことを特徴とするトンネル内の覆工コンクリート養生装置。
【請求項2】
前記流体回収トレーから流体を回収する流体回収タンクを設けたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の覆工コンクリート養生装置。
【請求項3】
前記流体回収タンクから流体を前記流体供給管へ供給する流体供給手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載のトンネル内の覆工コンクリート養生装置。
【請求項4】
前記流体回収タンクに供給される流体を加熱するヒータを設けたことを特徴とする請求項3に記載のトンネル内の覆工コンクリート養生装置。
【請求項5】
前記覆工コンクリートの温度を測定する温度センサにより検出された覆工コンクリートの実際温度に関する検出値に基づき前記ヒータを覆工コンクリートの養生温度に関する設定値に制御するヒータ温度制御手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載のトンネル内の覆工コンクリート養生装置。
【請求項6】
前記流体回収トレーは、トンネルの内周に沿ってトンネルの周方向へ延び、トンネルの長手方向両側に設けた側壁と、この両側壁間でトンネルの内周に面して設けた底壁とからなり、前記流体供給管はこの両側壁と底壁とにより囲まれた流体回収室に収容されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載のトンネル内の覆工コンクリート養生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−155820(P2009−155820A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332309(P2007−332309)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】