説明

トンネル防災設備

【課題】 防災受信盤と各種設備の制御盤との間に新たに専用の配線を敷設する必要がなく、また専用の通信機器を設ける必要がなく、よって、防災設備全体のコストが安いトンネル防災設備を提供することを目的とするものである。

【解決手段】 防災受信盤と各種設備の制御盤の監視・制御の信号点数が少なく、かつ防災受信盤と上記制御盤の距離が離れている場合、各制御盤からの信号を、既存の中継盤またはトンネル内に設置されている端末機器からP接続で取り込み、防災受信盤と中継盤との間の通信線を介して、またはトンネル内端末機器の伝送線を介して、防災受信盤が監視・制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の各部に配置される複数の端末機器が、直接または中継盤を介して、接続される防災受信盤と、上記防災受信盤との間で信号を入出力する各種設備の制御盤とを具備するトンネル防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトンネル防災設備における防災受信盤には、ITVカメラ、ポンプ制御および換気設備等の各種設備の制御盤が直接接続され(たとえば、特許文献1参照)、次の2つの方法で、各制御盤を監視・制御を行う。
【0003】
図6は、従来のトンネル防災設備600において、防災受信盤と各種設備の制御盤とを、P接続によって、接続している状態を示す図である。
【0004】
防災受信盤と制御盤との監視・制御の信号点数が少なく、かつ防災受信盤と制御盤との距離が近い場合、図6に示すように、防災受信盤からP(パラレル)接続し、制御盤の監視・制御を行う。
【0005】
図7は、従来のトンネル防災設備700において、防災受信盤と各種設備の制御盤とを、通信接続によって、接続している状態を示す図である。
【0006】
防災受信盤と制御盤の監視・制御の信号点数が多く、かつ防災受信盤と各制御盤の距離が離れている場合は、図7に示すように、通信方式で接続され、制御盤の監視・制御を行う。
【特許文献1】特開平10−61400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防災受信盤と各種設備の制御盤との監視・制御の信号点数が少なく、かつ防災受信盤と制御盤の距離が離れている場合、P接続(接点式の入出力接続)にすると、距離が遠いため配線コストが高くなり、通信方式とすると、信号点数が少ないので、伝送信号を送受信するための通信機器コストが割高になるという問題がある。
【0008】
本発明は、防災受信盤と各種設備の制御盤との間に新たに専用の配線を敷設する必要がなく、また専用の通信機器を設ける必要がなく、よって、防災設備全体のコストが安いトンネル防災設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、防災盤とトンネル内の各部に配置されている中継盤とが接続され、上記中継盤と各種設備の制御盤とが接続されるトンネル防災設備において、上記防災受信盤と上記中継盤とが通信線で接続され、上記中継盤と上記制御盤とがP配線で接続されていることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0010】
請求項2記載の発明は、防災盤と中継盤とが接続され、上記中継盤とトンネル内の各部に配置されている端末機器とが接続され、上記端末機器と各種設備の制御盤とが接続されているトンネル防災設備において、上記防災受信盤と上記中継盤とが通信線で接続され、上記中継盤と上記各端末機器とが伝送線で接続され、上記端末機器と上記制御盤とがP配線で接続されていることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0011】
請求項3記載の発明は、防災盤とトンネル内の各部に配置されている端末機器とが接続され、上記端末機器と各種設備の制御盤とが接続されているトンネル防災設備において、上記防災受信盤と上記各端末機器とが伝送線で接続され、上記端末機器と上記制御盤とがP配線で接続されていることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記各種設備は、消火ポンプ設備、取水ポンプ設備、ヒータ設備、放流水弁設備、給水弁設備のうちの少なくとも1つであることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0013】
また、本発明は、トンネル防災設備において、消火ポンプ制御盤、取水ポンプ制御盤、ヒータ制御盤、放流弁制御盤、給水弁制御盤等の制御盤からの信号を、既存の中継盤またはトンネル内に設置されている端末機器から、P接続で取り込み、防災受信盤と中継盤との間の通信線を介して、または、トンネル内端末機器の通信線線を介して、防災受信盤が制御・監視する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トンネル防災設備における消火ポンプ制御盤等、各種の制御盤からの信号(運転、停止等)を、中継盤またはトンネル内に設置されている端末機器から、P接続で取り込み、防災受信盤と中継盤間の通信線を介して、またはトンネル内端末機器の伝送線を介して防災受信盤で監視・制御を行うので、防災受信盤と制御盤との間に新たに専用の配線を敷設する必要がなく、また専用の通信機器を設ける必要がなく、よって、防災設備全体のコストが安くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1であるトンネル防災設備100を示すブロック図である。
【0017】
トンネル防災設備100は、防災受信盤10と、中継盤20と、消火ポンプ制御盤30と、トンネル内端末機器41〜47と、通信線L1と、P配線L2と、伝送線L3とを有する。
【0018】
防災受信盤10は、トンネル防災設備100の全体を統括する。
【0019】
中継盤20は、消火ポンプ制御盤30とトンネル内端末機器41〜47との信号を中継する。
【0020】
消火ポンプ制御盤30は、各種設備の制御盤のうちの1つであり、消火ポンプを制御(運転、停止等)する。
【0021】
通信線L1は、防災受信盤10と中継盤20との間に接続され、P配線L2は、中継盤20と消火ポンプ制御盤30との間に接続され、伝送線L3は、中継盤20とトンネル内端末機器41〜48との間に接続されている。
【0022】
図2は、本発明の実施例2であるトンネル防災設備200を示すブロック図である。
【0023】
トンネル防災設備200は、防災受信盤10と、中継盤20と、消火ポンプ制御盤30と、トンネル内端末機器41〜48と、通信線L1と、P配線L2と、伝送線L3とを有する。
【0024】
防災受信盤10は、トンネル防災設備100の全体を統括する。
【0025】
中継盤20は、トンネル内端末機器41〜48の信号を中継する。
【0026】
消火ポンプ制御盤30は、各種設備の制御盤のうちの1つであり、消火ポンプを制御(運転、停止等)する。
【0027】
通信線L1は、防災受信盤10と中継盤20との間に接続され、P配線L2は、トンネル内端末機器48と消火ポンプ制御盤30との間に接続されている。
【0028】
また、トンネル内に設置されている伝送線L3は、中継器20と端末機器41〜48との間に接続されている。
【0029】
図3は、本発明の実施例3であるトンネル防災設備300を示すブロック図である。
【0030】
トンネル防災設備300は、防災受信盤10と、消火ポンプ制御盤30と、伝送線L3と、P配線L2とを有する。
【0031】
防災受信盤10は、トンネル防災設備300の全体を統括する。
【0032】
消火ポンプ制御盤30は、各種設備の制御盤のうちの1つであり、消火ポンプを制御(運転、停止等)する。
【0033】
伝送線L3は、防災受信盤10とトンネル内端末機器41〜48との間に接続され、P配線L2は、トンネル内端末機器48と消火ポンプ制御盤30との間に接続されている。
【0034】
防災受信盤10は、トンネル内に設置されている端末機器41〜48の伝送線L3を経由し、消火ポンプ制御盤30を監視・制御している。
【0035】
図4は、図2に示されている本発明の実施例2であるトンネル防災設備200を詳細に示すブロック図である。
【0036】
防災受信盤10は、主制御部11と、中継盤通信部12と、表示・操作部13とが設けられている。
【0037】
中継盤20は、主制御部21と、防災盤通信部22と、トンネル内伝送部23とを有する。
【0038】
信号変換器50は、図2におけるトンネル内端末機器48として設けられるものであり、主制御回路51と、伝送回路52と、入力回路53と、出力回路54とを有する。
【0039】
信号変換器60は、図2におけるトンネル内端末機器41〜47として設けられるものであり(ここではトンネル内端末機器41に対してのみ示す)、主制御回路61と、伝送回路62と、入力回路63と、出力回路64とを有する。
【0040】
信号変換器60の入力回路63には、手動通報機71、消火栓起動72、予備入力73が接続され、出力回路64には、応答灯74が接続されている。
【0041】
なお、手動通報機71、消火栓起動72、応答灯74は、トンネル消火栓(図示しない)に関する機器であり、信号変換器60は、トンネル内端末機器として、トンネル内の所定間隔毎に配置される各トンネル消火栓の内部に設けられるものである。そして、伝送線L3は、トンネル全体にわたって配線されることになる。
【0042】
信号変換器50の入力回路53には、消火ポンプ制御盤30が接続され(起動入力など)、出力回路54には、消火ポンプ制御盤30が接続されている(応答出力など)。
【0043】
次に、トンネル防災設備200の動作について説明する。
【0044】
信号変換器60が、手動通報機71の動作信号を検出すると、伝送線L3によって、中継盤20へ通知し、中継盤20は、通信線L1によって、防災受信盤10へ通知する。
【0045】
手動通報機71が動作したと、防災受信盤10が判断すると、表示・操作部13に、規定の表示や音響鳴動をし、また、中継盤20を介して、信号変換器60に、応答灯74を点灯制御させる。
【0046】
また、防災受信盤10は、中継盤20、信号変換器50を介して、消火ポンプ起動制御を行う。消火ポンプ制御盤30は、信号変換器50から消火ポンプ運転信号を受け取ると、消火ポンプを起動させ、消火栓ポンプ運転応答信号を、信号変換器50に送信する。
【0047】
消火ポンプ運転応答を受け取った信号変換器50は、伝送線L3によって、中継盤20へ通知し、中継盤20は、通信線L1によって、防災受信盤10へ通知する。
【0048】
防災受信盤10が、消火ポンプ運転応答を受信すると、表示・操作部13に規定の表示を行う。
【0049】
図5は、トンネル防災設備100を詳細に示すブロック図である。
【0050】
トンネル防災設備100における防災受信盤10は、図4に示す防災受信盤10と同様であり、トンネル防災設備100における中継盤20は、図4に示す中継盤20に、入力回路26と出力回路27とが付加されたものである。これら入力回路26、出力回路27は、図4に示す信号変換器50における入力回路53、出力回路54に相当し、同じ機能を有するものである。すなわち、入力回路26には、消火ポンプ制御盤30が接続され(起動入力など)、出力回路に27には、消火ポンプ制御盤30が接続されている(応答出力など)。
【0051】
トンネル防災設備100における消火ポンプ制御盤30は、図4に示す消火ポンプ制御盤30と同様である。
【0052】
なお、伝送線L3に接続されているトンネル内端末機器41〜47については、図示を省略してある。
【0053】
また、図3に示すトンネル防災設備300における防災受信盤10は、詳細なブロック図を示さないが、図4に示す防災受信盤10とほぼ同じであり、中継盤通信部12が、中継盤20内のトンネル伝送部23に相当する伝送部に置き換えられていることのみが異なる。つまり、トンネル防災設備300には、中継盤が設けられていないので、中継盤のトンネル伝送部機能が防災受信盤10に搭載され、よって、防災受信盤10の中継盤通信部12が、中継盤におけるトンネル内伝送部23の機能を具備する。
【0054】
なお、トンネル内端末機器41〜47として、図4に示してある信号変換器60が設けられ、トンネル内端末機器48として、図4に示してある信号変換器50が設けられている。
【0055】
上記のように、防災受信盤10から離れた箇所に設置されている消火ポンプ制御盤30に、トンネルに設置されている中継盤20、またはトンネル内端末機器41〜48を介して、入出力するので、専用線や専用の通信装置は不要である。
【0056】
図8は、トンネル防災設備200の動作を示すフローチャートである。
【0057】
図8において、検知器動作であるか、手動通報動作であるかを判断し(S1)、検知器動作であれば(S1)、検知器が動作信号を中継盤20に送信処理(S2)し、中継盤20が防災受信盤10に動作信号を送信処理し(S3)、防災受信盤10がポンプ起動処理を実行する(S4)。
【0058】
手動通報動作であれば(S1)、信号変換器が動作信号を中継盤20に送信し(S5)、中継盤20が防災受信盤10に動作信号を送信処理し(S6)、防災受信盤10がポンプ起動処理する(S7)。
【0059】
次に、ポンプ起動モードが自動であるか、手動であるかを判断し(S11)、自動でポンプ起動するモードであれば、防災受信盤10が、中継盤20にポンプ起動信号を送信し(S12)、中継盤20が、信号変換器にポンプ起動信号を送信し(S13)、信号変換器が消火ポンプ制御盤30に、ポンプ起動信号を送信し(S14)、消火ポンプ制御盤30がポンプ起動処理し(S15)、終了する。
【0060】
図9は、トンネル防災設備100の動作を示すフローチャートである。
【0061】
まず、検知器動作であるか手動通報動作であるかを判断し(S21)、検知器動作であれば、検知器が動作信号を中継盤20に送信処理し(S22)、中継盤20が防災受信盤10に動作信号を送信処理し(S23)、防災受信盤10が、ポンプ起動処理する(S24)。
【0062】
手動通報動作であれば(S21)、信号変換器(図示せず)が、動作信号を中継盤20に送信し(S25)、中継盤20が、防災受信盤10に動作信号を送信処理し(S26)、防災受信盤10が、ポンプ起動処理する(S27)。
【0063】
そして、ポンプ起動モードが自動であるか手動であるかを判断し(S31)、ポンプ起動モードが自動であれば、防災受信盤10が、中継盤20にポンプ起動信号を送信し(S32)、中継盤20が、消火ポンプ制御盤30にポンプ起動信号を送信し(S34)、ポンプ起動処理し(S15)、終了する。
【0064】
上記各実施例において、消火ポンプ等の各種設備は、トンネルの地形等に基づいて、適度な位置に配置され、また、トンネル全体に渡って配置されている上記各種設備の制御盤と防災受信盤10との間における情報のやり取りは、伝送線L3や通信線L1を経由して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1であるトンネル防災設備100のブロック図である。
【図2】本発明の実施例2であるトンネル防災設備200のブロック図である。
【図3】本発明の実施例3であるトンネル防災設備300のブロック図である。
【図4】本発明の実施例2であるトンネル防災設備200の詳細を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例1であるトンネル防災設備100の詳細を示すブロック図である。
【図6】従来のトンネル防災設備600において、防災受信盤と各制御盤とを、P接続によって、接続している状態を示す図である。
【図7】従来のトンネル防災設備700において、防災受信盤と各制御盤とを、通信接続によって、接続している状態を示す図である。
【図8】本発明の実施例2の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例1の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10…防災受信盤、
20…中継盤、
30…消火ポンプ制御盤、
41〜48…トンネル内端末機器、
L1…通信線、
L2…P配線、
L3…伝送線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災盤とトンネル内の各部に配置されている中継盤とが接続され、上記中継盤と各種設備の制御盤とが接続されるトンネル防災設備において、
上記防災受信盤と上記中継盤とが通信線で接続され、上記中継盤と上記制御盤とがP配線で接続されていることを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項2】
防災盤と中継盤とが接続され、上記中継盤とトンネル内の各部に配置されている端末機器とが接続され、上記端末機器と各種設備の制御盤とが接続されているトンネル防災設備において、
上記防災受信盤と上記中継盤とが通信線で接続され、上記中継盤と上記各端末機器とが伝送線で接続され、上記端末機器と上記制御盤とがP配線で接続されていることを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項3】
防災盤とトンネル内の各部に配置されている端末機器とが接続され、上記端末機器と各種設備の制御盤とが接続されているトンネル防災設備において、
上記防災受信盤と上記各端末機器とが伝送線で接続され、上記端末機器と上記制御盤とがP配線で接続されていることを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、
上記各種設備は、消火ポンプ設備、取水ポンプ設備、ヒータ設備、放流水弁設備、給水弁設備のうちの少なくとも1つまたは組合せであることを特徴とするトンネル防災設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−106832(P2006−106832A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288554(P2004−288554)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】