説明

トーションばねを備えた自動注射器

本発明は、液体薬剤(M)の用量を投与するための、以下を含んでなる自動注射器(1)に関する:−中空針(9)、及びシリンジ(7)をシールし、薬剤(M)を移動するための栓(10)を備えたシリンジ(7)を含有するように配置された細長いハウジング(2)(ここで、細長いハウジング(2)は、遠位端(D)、及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを有する近位端(P)を備え、ここで、シリンジ(7)はハウジング(2)に対して摺動可能に配置される);−起動の際、オリフィスを通して、そして近位端(P)を通過してハウジング(2)の内部の被覆位置から前進位置に、針(9)を押すこと、並びに薬剤(M)の用量を供給するためにシリンジ(7)を操作することが可能なばね手段(14);−手動操作前、ばね手段(14)を加圧状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段(14)を開放できるように配置される起動手段(4)。ばね手段(14)は、一端がハウジング(2)中に、そして他端が縦軸の周りに回転できるが軸方向には固定される第一の歯車部材(15)に基礎が置かれるトーションばね(14)であり、ここで、回転の際に、第一の歯車部材(15)は第二の歯車部材(11)を並進的に動かすように配置され、第二の歯車部材(11)は、近位端(P)に向かってそれを押すためにハウジングに対して回転するのを防止され、そして栓(10)に連結され、ここで、第一の歯車部材(15)は、手動操作前回転を防止するように起動手段(4)と係合され、そして手動操作の際に、起動手段(4)から係合解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプレアンブルによる、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射薬の投与は、使用者及び健康管理専門家に対して、多くの精神的及び肉体的両方のリスク及び課題を供するプロセスである。
【0003】
注射デバイス(つまり、薬剤容器から薬剤を送達することが可能なデバイス)は典型的には二つのカテゴリに分けられ得る:手動デバイス及び自動デバイス。
【0004】
手動デバイスにおいて、使用者は、針を通して流体を駆動するために機械的エネルギを供さなければならない。これは、典型的には、注射中に使用者によって連続して押されなければならない幾つかの形態のボタン/プランジャによってなされる。この方法から使用者に対して多くの不利益な点がある。もし、使用者がボタン/プランジャを押すことを停止するならば、注射も停止するであろう。これは、もしデバイスが適切に使用されないならば(つまり、プランジャがその端部位置へと完全に押されないならば)、使用者が過少用量を送達できることを意味する。使用者にとって、特に、もし、患者が老齢者であるか手先の器用さに問題がある場合、注射する力は高過ぎ得る。
【0005】
ボタン/プランジャを伸ばすことはあまりにも大変であるかもしれない。従って、完全に細長いボタンに達することは使用者にとって不便であり得る。注射する力及びボタン延長の組合せによって、手の震え/振動が引き起こされ得て、次いでそれによって挿入された針が動くため不快感が増すことになる。
【0006】
自動注射器デバイスは、注射される治療薬の自己投与を患者にとってより容易にすることを目的とする。自己投与注射器を用いて送達される現在の治療薬には、糖尿病用薬物(インスリン及びより新しいGLP−1クラスの薬物の両方)、偏頭痛、ホルモン治療薬、抗凝血剤などのための薬物が挙げられる。
【0007】
自動注射器は、標準のシリンジから非経口薬物を送達することに関わる行動を完全に又は部分的に代替するデバイスである。これらの行動には、保護シリンジキャップの取り外し、患者の皮膚内への針の挿入、薬剤の注射、針の取り外し、針のシールド、及びデバイスの再使用の防止が挙げられ得る。これによって、手動デバイスの多くの不利益な点が克服される。注射力/ボタン延長、手の振動及び不完全な用量の送達の可能性が低減される。トリガは多くの手段、例えば、トリガボタン又はその注射深さに到達する針の行動によって実行され得る。幾つかのデバイスにおいて、流体の送達エネルギはばねによって供される。
【0008】
特許文献1には、張力ばねが開放されるとき、液体薬剤の事前に測られた量を自動的に注射する自動注射デバイスが開示されている。張力ばねによって、それが開放されるとき、アンプル及び注射針が保存位置から展開位置へと動かされる。その後、アンプルの内容物が、ピストンをアンプル内部に前方に向かって無理に押す張力ばねによって排出される。液体薬剤が注射された後、張力ばね中に蓄えられた張力が開放され、そして注射針が自動的に後退されてその元の保存位置へと戻される。
【0009】
特許文献2には、中間軸を有するトーションばね、及びトーションばねによってその縦軸に沿って移動され得る、縦軸を有する出力エレメントを含む(ここで、トーションばねの中間軸は一般に出力エレメントの縦軸と平行である)注射デバイスが開示されている。
【0010】
特許文献3には、ハウジング、針を通して送達されるべき薬剤を含有するように適合された容器を有する該ハウジング内に配置された容器ホルダ、プランジャ駆動手段、エネルギを蓄積して該プランジャ駆動手段に伝えるように適合されたエネルギ蓄積部材を含んでなる(ここで、該デバイスは、プランジャ駆動手段に、及び容器を保持するための容器ホルダに連結されるように配置されそして設計された容器駆動手段、及び該エネルギが駆動手段に供される前に、該ハウジング内に静置しており、そして該エネルギが駆動手段に供されるときに容器をデバイスの近位端に向かって無理やり押すためのその針を更に含み、そうすることによって、針の侵入及び注射の各々が実行される)注射デバイスが開示されている。
【0011】
特許文献4には、シリンジの挿入を可能にするよう連結解除され得る駆動ハウジング及びシリンジハウジングを含む自動注射器デバイスが開示されている。駆動ハウジング中の駆動機構は、駆動ハウジングとシリンジハウジングの間に連結されたコードを用いてぴんと立てられる(cocked)。駆動機構は、駆動ハウジング中に回転可能に搭載された、そして連結ロッドによってプランジャに連結されたロータリクランクとして作用する駆動歯車を含む。使用中に、駆動歯車は、駆動機構がシリンジをシリンジハウジングから伸ばし、そして用量排出するよう、そして次にシリンジをハウジング内に後退させて戻すように、トーションばねによって駆動される。発射ボタン(firing button)は、トーションばねによって駆動されるが、また駆動歯車のリム上のブレーキとして係合可能である駆動歯車を開放する。
【0012】
特許文献5には、患者によって吸入されることを意図された、又は患者の体内に注射されることを意図された液体薬剤の所定の用量を患者に送達するためのデバイスが開示されている。デバイスは、薬剤送達状態にあるように、そして薬剤非送達状態にあるように適合される。デバイスが薬剤送達状態にあるとき、該デバイスは、所定の最小の力の値を上回るか又はそれに等しい、そして所定の最大の力の値を下回る力を用いて、送達されるべき液体薬剤を含有するカートリッジ内にピストンを駆動するように適合される。最小の力の値は、所定の用量を送達するために必要な最低の力の値であり、そして最大の力の値は、それがカートリッジ又はデバイスの部品を損傷するリスクを与える最初の力の値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願2002/0095120A1公報
【特許文献2】米国特許出願2006/287630A1公報
【特許文献3】WO2009/037141A1公報
【特許文献4】WO2009/098502A2公報
【特許文献5】EP出願1728529A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、改良された自動注射器を提供することである。
【0015】
本目的は請求項1による自動注射器によって達成される。
【0016】
本発明の好ましい実施態様は従属請求項において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に記載の液体薬剤の用量を投与するための自動注射器は以下を含む:
−シリンジを含有するように配置された細長いハウジング(ここで、細長いハウジングは、注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを有する遠位端及び近位端を持ち、ここで、シリンジはハウジングに対して摺動可能に配置される)、
−起動時に、オリフィスを通り、そして近位端を通過してハウジングの内部の被覆位置から前進位置へと、針を押すこと、並びに薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作することが可能なばね手段、
−手動操作前に、ばね手段を加圧状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段を開放できるように配置される起動手段。
【0018】
この特許出願の文脈において、用語「近位」は、注射中に患者に向かって指し示している方向を言及しており、一方、用語「遠位」は、患者から離れて指し示している反対方向を言及している。
【0019】
本発明によれば、ばね手段は、外部ケーシング中の一端に置かれ、そして第一の歯車部材において他端で縦軸の周りに回転できるトーションばねである。回転の際に、第一の歯車部材は第二の歯車部材を並進的に動かすように配置される。第二の歯車部材は、近位端に向かってそれを押すために回転するのを防止され、そして栓に連結される。第一の歯車部材は、手動操作前に回転を防止するように起動手段と係合され、そして手動操作の際に、起動手段から係合解除される。トーションばねは、好ましくは、自動注射器の製造中に装填され又は捲かれる。作動手段を操作することによってトーションばねが開放されるとき、第一の歯車部材は回転し始める。
【0020】
針を挿入するため、及びシリンジを完全に空にするための両方のために、単一トーションばねが使用される。トーションばねの主要な利点は、力が栓及びシリンジの上に円滑にかけられる点であり、一方、従来の圧縮ばねは、自動注射器のガラスシリンジ又は他の部品を壊し得るかなり急激な力の展開を示す。
【0021】
本発明によれば、実質的にチューブ形をした針カバー(needle shroud)はハウジング中のシリンジの周りに配置される。針カバーは、針カバーがハウジングの内部に殆ど隠された少なくとも後退位置と、針カバーが近位端から突き出ていて、その前進位置で中空針を覆っているその前進位置の間で摺動可能である。針カバーは、第二のばね手段によって、前進位置に向かって付勢され、そして針カバーは、注射ストローク中に第二の歯車部材が完全に前進させられる少し前に、第二の歯車部材によって係合されるクラッチ機構を通して第一の歯車部材から伝達された回転運動によって開放可能であるロッキング手段によって、後退位置にロックされる。従って、一旦、用量が完了すると、第二のばね手段は針に亘って針カバーを戻す。これによってデバイスは、針刺し怪我に関して、同等の手動注射よりももっと安全になる。
【0022】
特に好ましい実施態様において、インターロッキング機構は起動手段をロックするように、そしてそれが事故により操作されることを防ぐように配置される。インターロッキング機構は針カバーに連結される。インターロッキング機構は、針カバーを針カバーの後退位置からハウジングへと小さい距離だけ押すことによって、開放可能である。このようにして、デバイスは、針カバーが押し下げられるまで、使用され得ない。通常の使用において、これは、デバイスを注射部位、つまり、患者の皮膚を押しあてることによって起こるであろう。
【0023】
起動手段はハウジングに側面に沿って配置され、そして縦軸に対して横方向に押されることによって操作可能なトリガボタンであり得る。従来の自動注射器はそれらの遠位端でトリガボタンを有する。その側方上でトリガボタンを有する利点は、使用者が、どちらの端から針が現れるかについて万一混乱したとしても、怪我を引き起こす可能性がより少ないということである。
【0024】
トリガボタンは、加圧状態において、ばね手段をロックするように又はそれをロックされた状態に維持するように、その回転を防止するために第一の歯車部材に供された少なくとも一つのドッグツースと係合可能なロッキングピンを有する。ドッグツースは第一の歯車で周辺に配置され得て、そうすることによって回転を止めること、そしてその結果、トリガボタンを開放することによって如何なる時点でも注射することが可能になる。従って、トリガボタンは、ばねを戻すことによって付勢され得る。
【0025】
カバーロッキング手段は、針カバーと、トーションばねの周りに配置される外部後方チューブの間のでヨネットばめの形状を有し得る。針カバーは、例えば、ハウジング中の各スロットを係合している少なくとも一つのスプラインによって、相対的な回転を防止するようにハウジング中に案内される。外部後方チューブはクラッチ機構に連結され、従って、トーションばねによって回転される。バヨネットばめは、バヨネットピン及び外部後方チューブと針カバーの間に配置された対応するピン軌道を含む。ピンは、針カバーをその後退位置において保持するために軌道型の後ろに保持され得る。針カバーを開放するために、外部後方チューブは小さな角度だけ回転され、そのようにして軌道ショルダから離れてバヨネットピンを回し(又は、その逆)、そしてピン軌道の縦方向直線部内へと回し、その結果、自動注射器が注射部位から取り外されるや否や、圧縮ばねは針カバーを前進させ得る。
【0026】
第二の歯車部材は、雄親ねじのねじ山を有するピストンロッドであり得る。ピストンロッドは、ハウジングに取り付けられたシャフト上のピストンロッドを滑ることができるように配置するために軸方向の穴を有し得る。軸方向の穴及びシャフトは、相対的な回転を防止するために対応する非円形プロファイル、例えば、四角プロファイル又は少なくとも一つのスプライン又はフラットを有するプロファイルを有し得る。シャフトは、例えば、端部キャップによってハウジングに直接的に又は間接的に取り付けられ得る。しかしながら、シャフトはハウジングに対する回転に対して固定されなければならない。
【0027】
第一の歯車は、第二の歯車部材の雄親ねじのねじ山と係合されたトップナットであり得る。トップナットは内部親ねじのねじ山、又はピストンロッドの雄親ねじのねじ山中に案内されたピンを有し得る。好ましくは、トップナットには、低い摩擦接触を達成するために、少なくとも一つのボールベアリングが装備される。
【0028】
一つの実施態様において、雄親ねじのねじ山は可変ピッチを有する。このようにして、針の挿入及び薬剤の注射の速度及び力は、使用者に便利であるように、そしてそれが完全に装填されたとき、トーションばねのトルクが最大であること、そして注射工程の最後近くで最低であるという事実に適合され得る。例えば、ネジ山のピッチは、患者に対して引き起こされる苦痛をできる限り最小にするために、迅速な針の挿入及び比較的にゆっくりした薬剤の注射を確保するように適合され得る。
【0029】
インターロッキング機構は、針カバー及びトリガボタンに設けられた各捕捉部を含む。捕捉部は、針カバーが初期の後退位置にあるとき、互いの内に噛みこんでいるフックの形を有し得る。針カバーが後退位置から小さい距離を押されるや否や、フックの形をした捕捉部は、係合から離れて横方向に移動され、そしてトリガボタンは操作され得る。針カバーが後退位置から押し戻されることを可能にするために、軌道ショルダの後ろのピン軌道中に小さな隙間が供され得る。
【0030】
好ましい実施態様において、シリンジはシリンジキャリア中に配置され、そしてシリンジキャリアによって近位端で支持される。特に、ガラスシリンジにおいて、フランジはより壊れやすい故に、そのフランジでよりもむしろその近位端でシリンジを支持することによって、負荷下でシリンジを損傷することが避けられる。シリンジキャリアは針カバー中に滑ることができるように配置される。接合点は、シリンジキャリアの最前方位置を画成している針カバー中に供される。これによって、例えば、皮下注射又は筋肉内注射のための注射深さを画成することが可能になる。
【0031】
針カバーを注射の端部に向かって開放するためのクラッチ機構は、例えば、その遠位端で、第二の歯車部材に配置された周囲のショルダ、及び第一の歯車部材の遠位端上に配置されたそれぞれ傾斜した内表面を有する少なくとも一つのクラッチフィンガ、又は多くの弾性クラッチフィンガを含む。ショルダは、前進させられるとき、傾斜した表面を増々押しあてるように配置され、そうすることによってクラッチフィンガを、注射ストロークの末端近くで外側に向かって曲げる。クラッチ機構は、トーションばね内側でクラッチフィンガの周りに配置された、そしてそれらの遠位端で外部後方チューブに取り付けられた内部後方チューブを更に含む。内部後方チューブは外側に曲げられたクラッチフィンガを係合するための多くの内部縦方向スプラインを有する。ショルダによって外側に曲げられる前に、第一の歯車部材、つまり、トップナット及びそのクラッチフィンガは、内部後方チューブの縦方向のスプラインを係合することなくスピンする。クラッチフィンガが外側に半径方向に曲げられるとき、それらは内部後方チューブ中の縦方向のスプラインと係合する。そのようにして、第一の歯車部材の回転はバヨネット噛合へと送られ、その結果、バヨネットピンが軌道ショルダからクリアになり、そしてピン軌道の直線縦方向部分内に入り、そのようにして、注射部位から取り外されたとき、針カバーが前に向かって滑ることが可能になる。クラッチフィンガは、縦方向のスプラインとの画成された係合を供するために半径方向に外側に向かって突き出ているそれぞれの外部歯を有し得る。
【0032】
好ましい実施態様において、内部縦方向スプラインは、クラッチフィンガと係合されるとき、ラチェットを形成するように配置される。これによって、外部後方チューブが回転しそしてその結果バヨネットピンがピン軌道の縦方向部分の側部を打った後でさえ、トップナットの連続回転が可能になり、その結果、栓は、それがシリンジにおいてボトムアウトするまで更に前進され得て、そのためデッドボリュームが避けられる。これは、シリンジ又はカートリッジが完全に空にされるため、改良された用量の正確さ及び高価な薬剤の浪費が全くないことがそれによって確保される故に、特に有利である。対照的に、クラッチフィンガと縦方向のスプラインの間の純粋なポジティブなロック係合は、バヨネットピンがピン軌道の縦方向部分の側部を打つや否や、回転運動を失速させるであろう。更に、ラチェット型の係合は、注射の最後が近づいていることを知らせる、使用者に対する聴覚フィードバックを供する。この時間中、例えば、10秒間に、使用者は注射部位上の圧力を維持することを求められる。
【0033】
使用者が、注射の終了後に注射部位から自動注射器を引き抜くにつれて、針カバーは、圧縮ばねによって、その前進させられた位置へと針に亘って押される。ロッキング機構は、その前進位置において針カバーをロックするために供され、その結果、針は再暴露され得ないで、そしてここで汚染された針を用いた針刺し怪我が避けられる。
【0034】
シリンジを検査するための少なくとも一つの視界窓がハウジング中に供される。
【0035】
自動注射器は、好ましくは、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、Lovenox、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体、及び複合糖質の一つを送達するための、皮下又は筋肉内の注射のために使用され得る。
【0036】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン、若しくはオリゴヌクレオチド、又は上記の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの治療、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の治療、及び/又は、予防のための、少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセンジン−3又はエキセンジン−4、若しくはエキセンジン−3又はエキセンジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0037】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B28位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0038】
ヒトインスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0039】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0040】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0041】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25
,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれかのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0042】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらの拮抗剤である。
【0043】
多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはその誘導体などのグルコアミノグリカン、又はスルホン化された、例えば、上記多糖類のポリスルホン化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0044】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1−C6アルキル基;場合により置換されるC2−C6アルケニル基;場合により置換されるC6−C10アリール基、又は場合により置換されるC6−C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark
Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0045】
薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0046】
本発明の適用性の更なる範囲は以下に述べる詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な記述から、本発明の精神及び範囲内で、種々の変更及び修正が当業者には明白になるであろう故に、詳細な記述及び具体的な例は、本発明の好ましい実施態様を表していながらも、説明目的でのみ供されると理解されるべきである。
【0047】
説明のためにのみ供され、それゆえに本発明を限定するものではない、本明細書の以下に供される詳細な記述及び添付図面から、本発明はより完全に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】針カバー及び横方向のトリガボタンを有する自動注射器の斜視図である。
【図2】使用状態前の自動注射器の縦断面である。
【図3】針カバー及びトリガボタンがインターロックされている図2の縦断面の斜視詳細図である。
【図4】注射部位に対して針カバーを押し付けることによって、トリガボタンがインターロックから開放された斜視詳細図である。
【図5】トリガボタンが押された斜視詳細図である。
【図6】患者の皮膚を突き刺すために、シリンジ及び注射針が前進させられた自動注射器の縦断面である。
【図7】図6の縦断面の詳細図である。
【図8】シリンジから液体薬剤を排出するために、ピストンロッドが栓を前進させた自動注射器の縦断面である。
【図9】クラッチ機構を有する図8の詳細図である。
【図10A】代替クラッチ機構の斜視図を示す。
【図10B】代替クラッチ機構の斜視図を示す。
【図11】針カバーと外部後方チューブの間のバヨネット噛合及び針カバーが前方に向かって動くのを防止された自動注射器の斜視図である。
【図12】針カバーが前方に向かって動くことを可能にするために、バヨネット噛合及び外部後方チューブが回転された自動注射器の斜視図である。
【図13】バイアスばねを用いて、バヨネットばめ及び針カバーが前方に向かって押された自動注射器の斜視図である。
【図14】針を保護するために、前方の位置で針カバーが完全に前進させられ、そしてロックされた自動注射器の縦断面である。
【0049】
対応する部品には全ての図において同じ参照記号がマークされる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、(示されていない)針を保護するための細長いハウジング2及び針カバー3を有する自動注射器1の斜視図を示す。トリガボタン4は、自動注射をトリガするために横断的に押され得る。トリガボタン4は針カバー3を用いてインターロックされ、その結果、それは、針カバー3がそれを注射部位、例えば、患者の皮膚の上に置き、そして圧力をかけることによってハウジング2内に押されるまで押され得ない。針カバー3は、ハウジング1に対する針カバー3の相対的回転を防止するために、ハウジング1における対応している溝中に係合された縦方向のスプライン5を有する。視界窓6によって、自動注射器1中に保持されたシリンジを見ること及び検査することが可能になる。
【0051】
図2は、使用状態前における自動注射器1の縦断面を示す。シリンジ7はシリンジキャリア8によって前端で部分的に囲まれ、そして支持される。シリンジ7の前端に取り付けられて、患者の皮膚を突き刺すための、そしてシリンジ7の内部に保存された液体薬剤Mを送達するための中空針9がある。栓10のシリンジ7の遠位端近くに、薬剤をシールしそして含有するために栓10が配置される。栓10は、液体薬剤Mをシリンジ7から排出するためにピストンロッド11によって前進し得る。シリンジキャリア8は針カバー3の内部に摺動可能に配置される。針カバー3は圧縮ばね12によって近位端Pに向かって付勢される。針カバー3と外部後方チューブ13の間の(図11において示された)バヨネット噛合は、使用前に、針カバー3を圧縮ばね12のバイアスに対して後退位置において保持するために役立ち、そしてそうすることによって患者は、(示されていない)ゴム針シールドを掴んで取り外すことができる。
【0052】
トーションばね14は、外部後方チューブ13の内部に、そして一端をハウジング2の遠位端Dに取り付けて配置され、その結果、トーションばね14からのトルクがハウジング2内に作用される(react into)。トーションばね14の他端は、ピストンロッド11の周りに回転できるように搭載されるトップナット15に連結される。ピストンロッド11はトップナット15と係合された雄親ねじのねじ山16を有する。トップナット15には、この係合のために少なくとも一つのボールベアリング17が装備されるか又は、それは少なくとも一つのピンを有することができよう。図2において示された使用状態の前において、トップナット15はトーションばね14によって付勢されるが、トップナット15で配置されたドッグツース19と係合されたトリガボタン4に配置されたロッキングピン18によって回転することが避けられる。内部後方チューブ20はトーションばね14の内部に、そしてピストンロッド11及びトップナット15の部分の周りに配置される。ピストンロッド11は、ピストンロッド11の軸方向の穴中に配置されたシャフト21に沿って案内される。軸方向の穴及びシャフト21は両者共、ピストンロッド11が回転することを避けるために、非円形プロファイル、例えば、四角のプロファイル又は少なくとも一つのスプライン又はフラットを有するプロファイルを有する。シャフト21は、自動注射器1の遠位端Dに配置された端部キャップ22に取り付けられる。
【0053】
使用の前に使用者によって取り外されなければならない(示されていない)保護針シールドが提供され得て、その結果、図1の状況をもたらす。この状況において、針9は、事故による針刺し怪我から使用者を保護するために、針カバー内に安全な距離で戻される。
【0054】
図3は、針カバー3及びトリガボタン4に各々提供された、針カバー及3及びトリガボタン4が捕捉部24、25によってインターロックされている、図2の縦断面の斜視詳細図を示す。
【0055】
注射の準備をするために、使用者は自動注射器1の近位端Pを注射部位に押しあてる。このようにして、針カバー3は、インターロック捕捉部24、25を互いから開放するために十分大きな小さい距離だけ自動注射器1内に動かされる。この状況は図4において示される。圧縮ばね12は針カバー3の動きに抗するが、そのばね速度及び事前負荷が使用者に対して自然に感じられるために十分低くなるよう特定される。トリガボタン4はここで操作され得る。
【0056】
図5は、押されてトリガボタン4をハウジング2におけるトリガピボット26の周りに回転させ、トリガボタン4の近位端を上げ、そしてロッキングピン18をトップナット15のドッグツース19との係合を解除して動かす、トリガボタン4の遠位端を示す。このようにして、トップナット15は開放されそしてトーションばね14からのトルクによってトップナット15が回転されることになる。トップナット15がハウジング2中のスラスト面27に対して隣接する故に、それは、回転する一方、ピストンロッド11にかけられる負荷故に、遠位方向Dに動くことから避けられる。
【0057】
その代わりに、図6において示されるように、ピストンロッド11はシャフト21によって回転することを避けられて、トップナット15と親ねじのねじ山16の係合故に、近位方向Pに前に向かって押される。前進しているピストンロッド11は栓10を押しあて、次いでその結果、栓10とシリンジ壁の間の摩擦のせいで、そして薬剤Mの移動に抗する中空針9の内部の薄い流体溝のせいでシリンジ7を前進させる。シリンジ7によっても、針9が自動注射器1の近位端Pを超えて注射部位内、例えば、患者の皮膚内に突き出ることになる。シリンジ7がその近位端でシリンジキャリア8のオリフィスによって支持される故に、シリンジキャリア8も、シリンジキャリア8が図6において示されるように、針カバー3中の接合点.に対して隣接するまで、シリンジ7を用いて前進させられる。この接触によって針カバー3に対する注射深さが設定される。
【0058】
図7は、図6の縦断面の詳細図である。
【0059】
シリンジキャリア8が針カバー3の接合点を打った後、シリンジ7は更なる前進を避けられる。トップナット15がまだ回転しており、そしてピストンロッド11を押しているので、栓10は薬剤Mの摩擦及び水力学的抵抗に打ち克ち、そしてシリンジ7の内部に前進し、そうすることによって、薬剤Mを移動させ、そして中空針9の流体溝を通して、患者の皮膚内に又はそれを通してそれを送達する。この状況は図8において示される。
【0060】
図8は、殆ど完全に前進したピストンロッド11及び栓10、及び少量の残り以外ほぼ完全に空にしたシリンジ7を示す。ここで、図8においてマークされた切断部の異なる詳細図を示している図9、10a及び10bを参照すると、シリンジ7において栓10がボトムアウトする直前に、親ねじのねじ山15の後ろのピストンロッド11の遠位端上のショルダ28はトップナット15の遠位端上のクラッチフィンガ29内に押され、そうすることによって、クラッチフィンガ29を半径方向に外側に向かって曲げる。各クラッチフィンガ29は、ここで、内部後方チューブ20の近位端において提供された各スプライン31と係合する外部歯30を有し、その結果、内部後方チューブ20がトップナット15に沿って回転することになる。縦方向スプライン31は図10aにおけるラチェットのように配置される。
【0061】
図10bは、丸められた指歯30の代替実施態様を示す。両方の実施態様(図10a及び10b)において、クラッチ機構は、クラッチフィンガ29に、図11において以下で述べられるバヨネットばめを開放するために、外部後方チューブ13を部分的に回転するために十分なトルクを縦方向スプライン31上で生み出させるように配置される。しかしながら、生み出されたトルクは、スプライン31の上を飛び越えるばねアームを用いてトップナット15を連続回転させるために、そして注射がほぼ終了したことを指示するガラガラ音をたてるのに十分に低いものでなければならない。内部後方チューブ20は自動注射器1の遠位端D近くで外部後方チューブ13と連結される(図8を参照)。このようにして、外部後方チューブ13も回転される。外部後方チューブ13は、トーションばね14を横たえるためにトーションばねの遠位端がハウジング2へと通過することを可能にする(説明されていない)周囲スロットを有する。周囲スロットは図11において以下に述べられバヨネットばめを係合解除するために、外部後方チューブ13の部分回転を可能にするよう十分長くなければならない。
【0062】
図11は、クラッチフィンガ29と内部縦方向スプライン31の係合の直前での自動注射器1の斜視図を示す。針カバー3のピン32と外部後方チューブ13のピン軌道33の間のバヨネットばめは、まだピン32を軌道ショルダ34の後ろに有する状態にあり、その結果、針カバー3は、もし、まだ押し下げられた針カバー3が開放されたならば、圧縮ばね12のバイアスに対して取り付けられて保持されるであろう。軌道ショルダ34の後ろの小さな軸方向の隙間によって、針カバー3が、上述のようにトリガボタン4と針カバー3の間のインターロックを係合解除するのに丁度十分なように遠位方向Dに押されることが可能になる。
【0063】
クラッチフィンガ29が内部縦方向スプライン31と係合されるとき、外部後方チューブ13は、軌道ショルダ34からクリアするようになるピン32によってバヨネットばめを係合解除するように回転され、その結果、針カバー3は圧縮ばね12によって前方に向かって押され得る(図12を参照)。この時点で、使用者は、注射部位で自動注射器1を用いて短時間、例えば、10秒間、圧力を保持することを求められる。この時間中に、トップナット15はまだ回転しており、そして栓10がシリンジ7の近位端でボトムアウトするまで、ピストンロッド11及び栓10を前進させていて、そうすることによって、薬剤Mの残りをシリンジ7から事実上完全に移動させる。
【0064】
使用者が、注射部位から自動注射器1を引き抜くにつれて、針カバー3は、圧縮ばね12によって、近位方向Pに針9に亘って押される。ロッキング機構は、その前進位置において針カバーをロックするために供され、その結果、針は再暴露され得ないで、そしてここで汚染された針を用いた針刺し怪我が避けられる。この状態は図13及び14において示される。一方向性のかかり又は当業者に公知の他のもののようなロッキング機構が、針の再暴露を防ぐために、この前方位置において針カバー3をロックするように供され得る。
【0065】
自動注射器1は、好ましくは、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、Lovenox、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体、及び複合糖質の一つを送達するために使用され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 自動注射器
2 ハウジング
3 針カバー
4 トリガボタン、起動手段
5 スプライン
6 視界窓
7 シリンジ、薬剤容器
8 シリンジキャリア
9. 中空針
10 栓
11 ピストンロッド、第二の歯車部材
12 圧縮ばね、第二のばね手段
13 外部後方チューブ
14 トーションばね、ばね手段
15 トップナット、第一の歯車部材
16 親ねじのねじ山
17 ボールベアリング
18 ロッキングピン
19 ドッグツース
20 内部後方チューブ
21 シャフト
22 端部キャップ
23 ボタンピボット
24 捕捉部
25 捕捉部
26 トリガピボット
27 スラスト面
28 ショルダ
29 クラッチフィンガ
30 外部歯
31 内部縦方向スプライン
32 バヨネットピン
33 ピン軌道
34 軌道ショルダ

D 遠位方向、遠位端
M 薬剤
P 近位方向、近位端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−中空針(9)、及びシリンジ(7)をシールし、薬剤(M)を移動させるための栓(10)を備えたシリンジ(7)、を含有するように配置された細長いハウジング(2)(ここで、細長いハウジング(2)は、遠位端(D)、及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを備えた近位端(P)を備え、ここで、シリンジ(7)はハウジング(2)に対して摺動可能に配置される)、
−起動の際、オリフィスを通して、そして近位端(P)を通過してハウジング(2)の内部の被覆位置から前進位置へと、針(9)を押すこと、並びに薬剤(M)の用量を供給するためにシリンジ(7)を操作することが可能なばね手段(14)、
−手動操作前、ばね手段(14)を加圧状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段(14)を開放できるように配置される起動手段(4)、を含んでなり、
ここで、ばね手段(14)は、一端がハウジング(2)内に、そして他端が縦軸の周りに回転できるが軸方向には固定される第一の歯車部材(15)に基礎が置かれるトーションばね(14)であり、ここで、回転の際、第一の歯車部材(15)は第二の歯車部材(11)を並進的に動かすように配置され、第二の歯車部材(11)は、近位端(P)に向かって栓(10)を押すためにハウジングに対して回転するのを防止され、そして栓(10)に連結され、ここで、第一の歯車部材(15)は、手動操作前回転を防止するように起動手段(4)と係合され、そして手動操作の際に、起動手段(4)から係合解除され、ここで、本質的にチューブ形状をした針カバー(3)はハウジング(2)内のシリンジ(7)の周りに配置され、ここで針カバー(3)は、針カバー(3)がハウジング(2)の内部に殆ど隠された少なくとも後退位置と、針カバー(3)が近位端(P)から突出し、その前進位置で中空針(9)を覆うその前進位置の間で摺動可能であり、ここで針カバー(3)は、第二のばね手段(12)によって、前進位置に向かって付勢される、液体薬剤(M)の用量を投与するための自動注射器(1)であって、
針カバー(3)が、注射ストローク中に第二の歯車部材(11)が完全に前進させられる少し前に、第二の歯車部材(11)によって係合されるクラッチ機構を通して第一の歯車部材(15)から伝達された回転運動によって開放可能であるロッキング手段によって、後退位置にロックされることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の自動注射器(1)であって、インターロック機構が起動手段(4)をロックするように、そしてそれが手動で操作されることを防止するように配置される(ここで、インターロック機構は針カバー(3)に連結され、ここで、インターロック機構は、針カバー(3)を針カバー(3)の後退位置からハウジング(2)へと小さい距離だけ押すことによって、開放可能である)ことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動注射器(1)であって、起動手段(4)が、ハウジング(2)に側面に沿って配置され、そして縦軸に対して横方向に押されることによって操作可能なトリガボタン(4)であることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の自動注射器(1)であって、トリガボタン(4)が、その加圧された状態においてばね手段(14)をロックするようにその回転を防止するために第一の歯車部材(15)に設けられた少なくとも一つのドッグツース(19)と係合可能なロッキングピン(18)を有することを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、ロッキング手段が、針カバー(3)と、トーションばね(14)の周りに配置された外部後方チューブ(13)の間のバヨネットばめの形状を有する(ここで、針カバー(3)は、相対的な回転を防止するようにハウジング(2)中に案内され、ここで、外部後方チューブ(13)はクラッチ機構に連結され、ここで、バヨネットばめは、外部後方チューブ(13)又は針カバー(3)の一方に配置されたバヨネットピン(32)、及び外部後方チューブ(13)又は針カバー(3)の他方に配置されたピン軌道(33)を含む)ことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、第二の歯車部材(11)が、雄親ねじのねじ山(16)を有するピストンロッド(11)であり、ピストンロッド(11)は、ピストンロッド(11)をハウジング(2)に取り付けられたシャフト(21)上に摺動可能に配置するために軸方向の穴を有し、軸方向の穴及びシャフト(21)は対応する非円形プロファイルを有する(ここで、第一の歯車部材(15)は雄親ねじのねじ山(16)と係合したトップナット(15)である)ことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項7】
雄親ねじのねじ山(16)が可変ピッチを有することを特徴とする、請求項6に記載の自動注射器(1)。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、インターロック機構が、針カバー(3)及びトリガボタン(4)に設けられたそれぞれの捕捉部(24、25)を含むことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、シリンジ(7)がシリンジキャリア(8)中に配置され、そしてシリンジキャリア(8)によって近位端で支持される(ここで、シリンジキャリア(8)は針カバー(3)中に摺動可能に配置され、そしてここで、接合点は、シリンジキャリア(8)の最前方位置を画成している針カバー(3)中に提供される)ことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、クラッチ機構が、第二の歯車部材(11)に配置された周囲のショルダ(28)、及び第一の歯車部材(15)の遠位端に配置されたそれぞれの傾斜した内表面を有する少なくとも一つの弾力的なクラッチフィンガ(29)を含み、ショルダ(28)は傾斜した表面を増々押しあてるように配置され、そうすることによってクラッチフィンガ(29)を、注射ストロークの末端近くで外側に向かって曲げる(ここで、クラッチ機構は更に、トーションばね(14)内側でクラッチフィンガ(29)の周りに配置され、そしてそれらの遠位端で外部後方チューブ(13)に取り付けられた内部後方チューブ(20)を含み、ここで、内部後方チューブ(14)は外側に曲げられたクラッチフィンガ(29)を係合するための多くの内部縦方向スプライン(31)を有する)ことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項11】
請求項10に記載の自動注射器(1)であって、内部縦方向スプライン(31)が、クラッチフィンガ(29)と係合したとき、ラチェットを形成するように配置されることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、ロッキング機構が、その前進位置において針カバー(3)をロックするために設けられることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、シリンジ(7)を検査するための少なくとも一つの視界窓(6)がハウジング(2)中に設けられることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項14】
請求項6〜13のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、トップナット(15)には、雄親ねじのねじ山(16)を係合するための少なくとも一つのピンを設けるか又はボールベアリング(17)が設けられることを特徴とする、上記自動注射器(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−519471(P2013−519471A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553299(P2012−553299)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052297
【国際公開番号】WO2011/101375
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】