説明

ドアハンドル試験装置

【課題】自動車のドアからドアハンドル付近のみを切り出して衝突試験と同じ加速度を与え、ドアハンドルのハンドル部分が開き出し方向に回動するか否かを試験するようにしたドアハンドル試験装置を提供する。
【解決手段】ドア4からドアハンドル5付き外板を切り出してサンプル40とし、ドアロック装置41と共に可動体10に取り付ける。インパクター(インパクト装置)20から錘体21を打ち出し、錘体21を受衝板(受衝体)12に命中させ、瞬間的に大きな加速度を可動体10に生じさせる。この加速度により、ドアハンドル5には、開き出し方向の力が加えられる。高速度カメラ(高速度撮影装置)30によってドアハンドル5を撮影し、ドアハンドル5が開き出すか再生画像から判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時に衝突の反動でドアハンドルが開き出すか否かを試験するためのドアハンドル試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の安全性能を評価するためにNCAP(New Car Assessment Program)と称されるテストが行われている。このNCAPのテストの1つに側面衝突テストがある。第5図はこの側面衝突テストの説明図であり、重量約950kgの台車1の先頭にアルミ製ハニカム構造体よりなるデフォーマブルバリア2が取り付けられている。この台車を時速55km/hで自動車3の側面に衝突させる。自動車3の前部ドアに台車を衝突させる側面衝突テストを行ったときに、第6図の通り、自動車3の後部ドア4のドアハンドル5には衝突の反動で(即ち、ドアハンドルの静止慣性力により、)第6図の矢印Fの方向に力が加えられる。ドア4は、この力Fがドアハンドル5に加えられても開放しないことが必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JNCAP平成22年度側面衝突安全性能試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、自動車メーカーやドアハンドルメーカーが側面衝突テストでドアが開放しないか試験を行うには、第6図のように実際に自動車を用いて衝突試験を行う必要があり、試験費用が嵩んでいた。
【0005】
本発明は、自動車のドアからドアハンドル付近のみを切り出した部材か、または自動車外板と同様の鋼板等にドアハンドルを取り付けた部材に対して衝突試験と同じ加速度を与え、ドアハンドルのハンドル部分がドア開放方向に回動するか否かを試験するためのドアハンドル試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)のドアハンドル試験装置は、ドアハンドル付き外板が取り付けられる可動体と、該可動体に衝撃を与えるためのインパクト装置と、ドアハンドルを撮影する高速度撮影装置とを備えてなるものである。
【0007】
請求項2のドアハンドル試験装置は、請求項1において、前記インパクト装置は、前記可動体に命中するように打ち出される錘体を備えており、前記可動体には、該錘体を受け止める受衝体が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3のドアハンドル試験装置は、請求項1又は2において、前記可動体は車輪を備えており、レール上を移動可能となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドアハンドル試験装置を用いてドアハンドルの試験を行うには、自動車のドア外板のドアハンドル周囲を切断し、ドアハンドル付き外板を切り出すか、または自動車外板と同様の鋼板等にドアハンドルを取り付けた、ドアハンドル付き部材(以下、「ドアハンドル付き外板」と略記することがある。)。このドアハンドル付き外板を可動体に取り付け、この可動体に対しインパクターによって自動車の側面衝突テスト時と同じ加速度を与える。従って、実際に自動車そのものに台車を衝突させる側面衝突テストを行うことなく、可動体に衝撃を加えるだけで、側面衝突時と同じ加速度(衝撃)を加えてドアハンドルが開き出すか否か試験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係るドアハンドル試験装置を示す斜視図である。
【図2】図1のドアハンドル試験装置の可動体の後方からの斜視図である。
【図3】自動車の後部ドアの斜視図である。
【図4】切り出したドアハンドル付き外板をフレームに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】NCAPによる側面衝突テストを示す平面図である。
【図6】ドアハンドルに加えられる開き出し方向の力Fを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1図〜第4図を参照して実施の形態について説明する。第1図の通り、この実施の形態に係るドアハンドル試験装置は、可動体10と、可動体10に衝撃力を与えるインパクター(インパクト装置)20と、可動体10に取り付けられたドアハンドル5を撮影するための高速度撮影装置としての高速度VTRカメラ(高速度撮影装置)30等を備えている。
【0012】
可動体10は、第2図の通り、直方体骨格構造を有しており、底部には車輪11を備え、レール9上を移動可能となっている。可動体10の前面には、受衝板(受衝体)12が取り付けられている。この受衝体(受衝体)12は可動体10を繰り返し使用する場合には、錘体の衝突エネルギーに耐えて破壊されない強度と厚みを持った受衝板(受衝体)12を用いればよい。可動体10には、該受衝板の裏面に対峙するようにして、長方形枠状のフレーム13が設けられている。このフレーム13に対しドアハンドル付き外板のサンプル40が多数のボルト14によって取り付けられる。
【0013】
このサンプル40は、第3図の通り、自動車のドア4の鋼板からドアハンドル5周囲をレーザーカッターで切り抜くことによって切り出されたものである。第3図の2点鎖線Cは、このレーザーカッターによる切り出し線を示している。なお、サンプル40をドア4から切り出すと共に、ドアロック装置41もドア4から取り出し、第2図の通り、可動体10に取り付ける。第2図の符号42はドアハンドル5とドアロック装置41とを連繋するリンクロッドである。
【0014】
第2図の通り、フレーム13は受衝板(受衝体)12と平行となっている。尚、この角度は実車への取付角度等により、適宜選択して決定すればよい。サンプル40はフレーム13の後面側(受衝板)12と反対側に取り付けられる。当然ながら、ドアの車外側の面が受衝板(受衝体)12側となるようにサンプル40がフレーム13に取り付けられればよいが、ドアの車内側の面が受衝板12側となる様にサンプル40をフレーム13に取り付けることで、非衝突側のドアハンドル挙動を再現することも可能である。
【0015】
インパクター(インパクト装置)20は略球状の錘体21をエアシリンダ22によって打ち出すよう構成されている。具体的には例えば、略球状の錘体(重量10kg)21をエアシリンダ22によって時速37km/hにて打ち出せばよい。この錘体21の質量や速度は適宜選択して決定すればよいが、例えば4.5〜20kg、であり速度は10〜60km/hである。インパクター(インパクト装置)20は、打ち出された錘体21が第1図の2点鎖線で示すように飛翔して受衝板(受衝体)12に命中するように配置されている。可動体10の後方には防護壁50が設置されている。
【0016】
なお、防護壁50の前面側に、後退してきた可動体10を受け止めるための緩衝材を配置するのが好ましい。
【0017】
このように構成されたドアハンドル試験装置によってドアハンドルのテストを行うには、上述の通りドア4からドアハンドル5付き外板を切り出してサンプル40とし、ドアロック装置41と共に可動体10に取り付ける。そして、この可動体10を規定位置に配置する。次いで、この可動体10のサンプル40を照らすように複数の照明ランプを点灯させた後、インパクター(インパクト装置)20から錘体21を打ち出し、錘体21を受衝板(受衝体)12に命中させ、瞬間的に大きな加速度を可動体10に生じさせる。この加速度により、ドアハンドル5には、第6図に矢印Fで示される開き出し方向の力が加えられる。高速度VTRカメラ(高速度撮影装置)30によってドアハンドル5を撮影し、ドアハンドル5が開き出すか再生VTR画像から判定を行う。尚、この加速度Gを調整して衝撃を変化させ、衝撃の強さとドアハンドルが開き出すか否かの試験をすることが出来る。そして適宜、実車でのロック機構の要否が判断できる。
この衝撃は車種等により適宜選択して決定すればよいが、実車側突試験時の加速度や衝撃波形等を参考にして決定することができる。具体的には例えば、実車側突試験時に、ドアハンドルの近傍(例えばドアハンドル中心部より2cm程度上方)に加速度計を設置し、得られた衝突時の加速度を参照すればよく、この際の加速度は例えばISO6487:2002CFC180のフィルタを用いて計測することができる。そしてこの波形を再現するように、治具への衝突速度、錘等を適宜調節すればよい。
【0018】
このように、このドアハンドル試験装置によれば、実車の側面衝突試験を行うことなく、ドアハンドルの衝突開放試験を行うことができる。また、同一のドアハンドルについて繰り返し試験を行うことも可能である。本発明のドアハンドル試験装置によると、ドアハンドル等の試験コストが大幅に低くなる。
【0019】
上記実施の形態では、錘体21を打ち出して可動体10に衝突させているが、錘体をロープ、チェーン等で吊っておき、高所から落下させて可動体10に振り子状に衝突させてもよい。
【0020】
本発明のドアハンドル試験装置を用いて試験を行うに際し、錘体の衝突速度を種々変更し、衝撃加速度がどれ程以上になるとドアハンドルが開き出すか試験することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
4 ドア
5 ドアハンドル
10 可動体
11 車輪
12 受衝板(受衝体)
13 フレーム
20 インパクター(インパクト装置)
21 錘体
30 高速度VTRカメラ(高速度撮影装置)
40 サンプル
50 防護壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアハンドル付き外板が取り付けられる可動体と、該可動体に衝撃を与えるためのインパクト装置と、ドアハンドルを撮影する高速度撮影装置とを備えてなるドアハンドル試験装置。
【請求項2】
請求項1において、前記インパクト装置は、前記可動体に命中するように打ち出される錘体を備えており、
前記可動体には、該錘体を受け止める受衝体が設けられていることを特徴とするドアハンドル試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記可動体は車輪を備えており、レール上を移動可能となっていることを特徴とするドアハンドル試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137299(P2012−137299A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287807(P2010−287807)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000101916)イオ インダストリー株式会社 (5)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)