説明

ドア用換気ダクトユニット

【課題】換気性能を必要とするドアを経済的に製造するのに好適なドア用換気ダクトユニットを提供する。
【解決手段】ダクトユニット30は、表板33と裏板34とその両側辺に配置された側板31と、を備えており、クランク状の通気路35を有している。表板33及び/又は裏板34と、前記側板31とが嵌合組立式とされており、ユニット30全体の高さ及び/又は厚さが可変となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等のドアに組み込んで用いるドア用換気ダクトユニットに関する。特には、換気性能を必要とするドアを経済的に製造するのに好適なドア用換気ダクトユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の内装仕上げに使用される塗料や接着剤に含まれるホルムアルデヒド等に起因するシックハウスの問題が深刻化している。この問題に対応するために、2003年7月には建築基準法が改正され、ドアの閉時においても一定の通気性を確保することが求められるようになった。
【0003】
ドアの閉時における通気性を確保するためには、ドアに通気用の開口部を設けるなどの対策が考えられるが、単に開口部を設けただけでは遮音性が低下してしまう。
これを解決するために、特許文献1には、ドアの片面の上寄りの位置に開口部を形成すると共に、反対の面の下寄りの位置に他の開口部を形成し、これらの開口部同士をドアの内部で縦方向に延びる通路で繋いで、クランク状の通気路を構成した例が示されている。
【特許文献1】特開平10−18726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によれば、通気路がクランク状になっているので通気路の十分な長さが確保され、通気性を維持しつつ遮音性を高めることができる。しかしながら、この構成では、ドア内にクランク状の通気路を作り込む必要があるので、製造に手間がかかり、製造コストを下げるのにも不利である。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、換気性能を必要とするドアを経済的に製造するのに好適なドア用換気ダクトユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するための本発明のドア用換気ダクトユニットは、
表板と、裏板と、該表板及び裏板の両側辺に配置された側板と、を備え、
表板側と裏板側とを繋ぐクランク状の通気路を有するドア用換気ダクトユニットであって、
前記表板及び/又は裏板と、前記側板とが嵌合組立式とされており、
ユニット全体の高さ及び/又は厚さが可変であることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、従来、ドアの内部に作り込む必要があった通気路がユニットとして提供されるので、ドアの製造時には、このユニットをそのまま組み込むだけでドアに通気路を具備させることができる。つまり、従来のようにドアに通気路を作り込む必要がないので、ドアの製造の手間を少なくすることができる。また、このようなユニットは様々な種類のドアに共通部品として使用することができる。さらに、表板及び/又は裏板と前記側板とが嵌合組立式でユニット全体のサイズが可変となっているので、サイズ等が異なる様々なドアに本ユニットを適合させて取り付けることができる。
【0007】
本発明のドア用換気ダクトユニットの具体的な一形態としては、前記表板の上端側、及び、前記裏板の下端側が、厚さ方向に曲げられていると共に、前記表板の上端と前記裏板の上端との間に、前記通気路の出入口の一方が形成され、前記表板の下端と前記裏板の下端との間に、前記通気路の出入口の他方が形成されているものとすることができる。
【0008】
このような構成によれば、表板の上端側の曲げられた部分、及び、裏板の下端側の曲げられた部分が、ユニット(箱)の天面及び底面としての役割を果たすので、天面及び底面を構成する2枚の板材を省略することができる。また、このように表板及び裏板の上下端側を曲げた場合、内側の通気路(出入口付近)が湾曲することとなる。したがって、通気路の出入口付近での空気の圧力損失を低減させて通気効率を向上させることができる。
【0009】
本発明のドア用換気ダクトユニットの具体的な一形態としては、前記表板及び前記裏板の両側にフランジ部が形成されており、前記側板がH型断面の部材であって、前記表板及び裏板の各フランジ部が、前記側板のH型断面の各溝内に嵌合するものとすることもできる。この場合、さらに、前記側板のH型断面の各溝内と、前記表板及び前記裏体の各フランジ部と、のそれぞれに嵌合凹凸部が設けられていてもよい。
【0010】
本発明のドア用換気ダクトユニットは、また、前記通気路内に、断面が流線型の隆起部が形成されていてよいし、空気が通過する多数の通気孔が形成された、消音機能を有するハニカム構造体が配置されていてもよい。これにより、本発明のダクトユニットにさらなる付加価値(通気性や遮音性の向上)を付与することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明によれば、換気性能を必要とするドアを経済的に製造するのに好適なドア用換気ダクトユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一形態に係るダクトユニット30を有する遮音通気ドア1の正面図である。図2は、図1のドアの通気路35(詳細下記)の周辺を拡大して示す破断斜視図であり、通気路35の構造が分かりやすいように端部を縦方向に切断して示している。図3は、図1のA−A切断線における縦断面図である。図4は、本実施形態のダクトユニット30のみの外観斜視図である。なお、図2では、付加的な要素として、通気路35内にハニカム構造体46(詳細後述)を配置した例を示し、図3では整流部47(詳細後述)を設けた例を示している。
【0013】
図1に示す遮音通気ドア1はトイレ用のドア(一例)であり、ドアの上側に、通気路35を有するダクトユニット30が組み込まれている。
ダクトユニット30は、図4に示すように、全体としてやや平たい箱状であり、手前側の表板33と、それに対向配置された奥側の裏板34と、両板33、34の両側に配置された側板31と、を備えている。これらの4枚の板に囲まれた内側にクランク状の通気路35が形成されている。
【0014】
図3、図4に示すように、表板33及び裏板34はほぼ同じ形をしており、上下にやや位置をずらして配置されている。表板33の上端側(この例では、部材の上側およそ1/4程の領域を占める)は、裏板34側に向けてなだらかに曲げられている。同様に、裏板34の下端側(部材の下側およそ1/4程の領域を占める)は、表板33側に向けてなだらかに曲げられている。
【0015】
図3に分かりやすく示すように、表板33の上端33a(曲げられた側の端部)と及び裏板34の上端34aが、通気路35の上側の開口部35aの上縁及び下縁を縁どっている。また、表板33の下端33b及び裏板34の下端34bが、通気路35の下側の開口部35bの上縁及び下縁を縁どっている。両開口部35a、35bの両側縁は、図4に示す通り、左右の側板31が縁どっている。
【0016】
このダクトユニット30のより具体的な構成を説明する前に、このユニット30がどのような形態でドア1内に組み込まれているかについて図3を参照して説明する。
図3に示すように、ダクトユニット30の表板33はドア1の面材2(表面材)の内面に接着固定されている。裏板34はドア1の裏側の面材3(裏面材)の内面に接着固定されている。ダクトユニット30の上側の開口部35aは面材3に開口し、下側の開口部35bは面材2に開口している。各面材2、3には、ダクトユニット30の開口部35a、35bをそれぞれ縁取る口枠48が取り付けられている。特に限定されるものではないが、ダクトユニット30の上下には、横方向に延びる桟5、6が配置されている。
【0017】
このように構成されたドア1によれば、ドアの閉時においても、ダクトユニット30の通気路35を通じて換気をすることができ、かつ、通気路35がクランク状とされて長さが確保されているので遮音性も確保される。
なお、図2に例示した通気路35内のハニカム構造体46及び図3に例示した整流部47については後で述べる。
【0018】
次に、ダクトユニット30のより具体的な構成について図4〜図7を参照して説明する。
図5は、ダクトユニット30の表板33単体を示す斜視図である。図6は、表板33及び裏板34を側板31に嵌合させた状態を示す一部断面斜視図である。図7は、ダクトユニット30の全体のサイズが調整される様子を示す斜視図である。
なお、表板33と裏板34とは実質的に同じ形状なので、表板33についてのみ説明する。
【0019】
図5に示すように、表板33はその上端側が厚さ方向になだらかに曲げられている。表板33の両側縁には、同板から略垂直に立ち上がったフランジ部36fが形成されている。フランジ部36fはほぼ一定の幅L36を有している。
フランジ部36fの下側およそ半分の領域には、断面が山形の突部が所定ピッチで縦方向に多数並んだ嵌合凹凸部36eが形成されている。図5では、フランジ部36fの外面のみに嵌合凹凸部36eが形成されているが、両面に形成してもよい。
【0020】
次に、側板31について説明する。
側板31は、図6に示すように略H型の断面形状を有しており、一方の端面から掘り込まれた溝31dと、他方の端面から掘り込まれた溝31dを有している。各溝31dの内面には、上記したフランジ部の嵌合凹凸部36eと嵌合する嵌合凹凸部が形成されている。表板33又は裏板34の側板31に対する取付け位置(上下方向、図6参照)は、嵌合凹凸部同士が嵌り合う限り任意に調整することができる。また、溝31d内へのフランジ部36fの差込み量を変更すれば、ユニット全体の厚さを調整することもできる。
つまり、本実施形態のダクトユニット30では、ユニットの上下のサイズ及び厚さをある程度任意に調整できるようになっている。
【0021】
図7(A)は、ダクトユニット30の上下のサイズを小さくした例を示している。この状態から図7(B)に示すように、例えば、上板33を側板31から一度抜いて上方向にずらして再度側板31に嵌め直すと共に、同様に下板34を下方向にずらして側板31に嵌め直すことで、ユニット全体の上下のサイズを大きくし、通気路35の上下の開口部35a、35bも大きくすることができる。
【0022】
なお、図7(B)のように上板33をより上側に嵌め直した場合、及び、下板34をより下側に嵌め直した場合であっても、各フランジ部34fは板33、34の曲げられた部分にも形成されているので、側板31の上下の溝31dから抜けず、ユニットの側面部に隙間が生じることはない。したがって、通気路35の密閉性が損なわれることもない。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のドア用換気ダクトユニット30によれば、従来、ドアの内部に作り込む必要があった通気路が、ユニット30に設けられているので、ドアの製造時には、このユニット30をそのまま組み込むだけでドア1に通気路35をもたせることができるので、製造の手間を少なくすることができ、ドアの製造コストを下げるのにも有利である。さらに、本実施形態の構成によれば、表板33及び/又は裏板34と側板31とが嵌合組立式で、ユニット30全体のサイズが可変となっているので、サイズ等が異なる様々なドアに本ユニットを適合させて取り付けることができ、さらには、必要通気面積の調整対応も可能となる。
【0024】
(他の実施形態)
図2に示したように、ダクトユニット30の通気路内にはハニカム構造体46が配置されていてもよい。ここで、ハニカム構造体46とは、空気が通過する多数の通気孔を有したアルミコルゲートコア(一例)である。各通気孔の開口面積は2〜10mm程度である。このようなハニカム構造体46を配置することにより、音が、通気路35内の内部通路からアルミルゲートコアの狭い通気孔を通り、再び広い内部通路へと伝わることとなるので、通路面積の急激な変化により、音を減衰させることができる。
【0025】
図3に示したように、ダクトユニット30の通気路内には渦の発生を抑制する整流部47を設けてもよい。この例の整流部47は、通気路35内の下側の開口部35b付近に設けられた、断面が流線型(なだらかにカーブした丘状)の隆起部である。このような隆起部35が形成されている場合、下側の開口部35bから上側の開口部35aへと向かう流れの剥離が防止されて渦の発生が抑えられ、圧力損失が少なくなるので、空気の通気効率を向上させることができる。また、通気路を狭めたことにより遮音性も向上させることができる。
【0026】
さらに、次のような改変を加えることもできる。
(1)ダクトユニット30の外面に発泡クッション材等を貼り付け、該クッション材を介してドアの面材にユニット30を取り付けることでドアの面材の固定音(振動)をユニットに伝わりにくくできる。
(2)表板33及び/又は裏板34の内面に、断面形状が略波型となるような凹凸部を設けることで、通気とは逆の進行方向の音の空気伝播の妨げとして、消音効果を向上させることができる。
(3)ダクトユニット30を幾つか(例えば2、3個)のダクトユニットの集合体とすることで、様々なサイズのドア1に適合できるようにすると共に通気性能を適宜調整できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一形態に係るダクトユニットを有する遮音通気ドアの正面図である。
【図2】図1のドアの通気路の周辺を拡大して示す破断斜視図であり、通気路の構造が分かりやすいように端部を縦方向に切断して示している。
【図3】図1のA−A切断線における縦断面図である。
【図4】本実施形態のダクトユニットのみの外観斜視図である。
【図5】ダクトユニットの表板単体を示す斜視図である。
【図6】表板及び裏板を側板に嵌合させた状態を示す一部断面斜視図である。
【図7】ダクトユニットの全体のサイズが調整される様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・遮音通気ドア、2、3・・・面板、5、6・・・桟
30・・・ダクトユニット、31・・・側板、31d・・・溝、33・・・表板、34・・・裏板、36e・・・嵌合凹凸部、36f・・・フランジ部
35・・・通気路、35a、35b・・・開口部、46・・・ハニカム構造体、47・・・整流部、48・・・口枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表板と、裏板と、該表板及び裏板の両側辺に配置された側板と、を備え、
表板側と裏板側とを繋ぐクランク状の通気路を有するドア用換気ダクトユニットであって、
前記表板及び/又は裏板と、前記側板とが嵌合組立式とされており、
ユニット全体の高さ及び/又は厚さが可変であることを特徴とするドア用換気ダクトユニット。
【請求項2】
前記表板の上端側、及び、前記裏板の下端側が、厚さ方向に曲げられており、
前記表板の上端と前記裏板の上端との間に、前記通気路の出入口の一方が形成されており、
前記表板の下端と前記裏板の下端との間に、前記通気路の出入口の他方が形成されていることを特徴する、請求項1に記載のドア用換気ダクトユニット。
【請求項3】
前記表板及び前記裏板の両側にはフランジ部が形成されており、
前記側板がH型断面の部材であって、
前記表板及び裏板の各フランジ部が、前記側板のH型断面の各溝内に嵌合することを特徴とする、請求項1又は2に記載のドア用換気ダクトユニット。
【請求項4】
前記側板のH型断面の各溝内と、前記表板及び前記裏体の各フランジ部とのそれぞれに嵌合凹凸部が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載のドア用換気ダクトユニット。
【請求項5】
前記通気路内に、断面が流線型の隆起部が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のドア用換気ダクトユニット。
【請求項6】
前記通気路内に、空気が通過する多数の通気孔が形成された、消音機能を有するハニカム構造体が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のドア用換気ダクトユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−248489(P2008−248489A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87908(P2007−87908)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(390008534)株式会社ユニフロー (31)
【Fターム(参考)】