ドクターブレード及びチャンバ式インキ供給装置
【課題】チャンバブレード及びそれを備えたチャンバ式インキ供給装置に関し、ドクターブレードの偏磨耗を抑制できるようにしてドクターブレードの耐久性を向上させることができるようにする。
【解決手段】ロール両端部を除いたロール中央部の表面にセルが刻設されたアニロックスロールに摺接し、アニロックスロール表面のインキを掻き取るドクターブレード14であって、ドクターブレード14のブレード両端部14bのロール両端部に摺接する部分に、ロール中央部に摺接するブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造を設ける。
【解決手段】ロール両端部を除いたロール中央部の表面にセルが刻設されたアニロックスロールに摺接し、アニロックスロール表面のインキを掻き取るドクターブレード14であって、ドクターブレード14のブレード両端部14bのロール両端部に摺接する部分に、ロール中央部に摺接するブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷機のアニロックスロールにインキを供給するチャンバに装備されるドクターブレード及びそれを備えたチャンバ式インキ供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機にはローラ上のインキ厚みを調整するために、ドクターブレードが装備されている。例えば、チャンバ式のインキ供給装置を備えたフレキソ印刷機にも、ドクターブレードが装備されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、チャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の概要を説明する。
図10は、チャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の要部構成を示す図である。図10に示すように、かかるフレキソ印刷機は、チャンバ本体2と、チャンバ本体2に取り付けられたシールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5とを有するチャンバ1に加えて、アニロックスロール6と、版胴(ゴムロール)7と、圧胴(硬質ロール、ここでは、Crロール)8とを備えている。
【0003】
チャンバ1のインキ貯留空間は、チャンバ本体2と、シールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5と、アニロックスロール6の円筒状表面6aとによって包囲されて形成される。なお、シールブレード3及びドクターブレード4は、それぞれ先端のエッジ3a,4aをアニロックスロール6の円筒状の表面6aに摺接する。
アニロックスロール6の表面6aには、セル(極めて細かな溝)6bが刻まれておりインキはこのセル6b内に供給される。
【0004】
このようなチャンバ1内には、図示しないインキ給排装置によってインキが蓄えられるようになっており、このチャンバ1内のインキが、回転するアニロックスロール6の表面6aに付着し、アニロックスロール6の表面6aに摺接するドクターブレード4によってインキがセル6b内に進入されつつセル6b内に付着したインキを残して他の余分なインキが掻き落とされる。その後、アニロックスロール6のセル6b内に残留するインキがゴムロール7外周の印刷絵柄に応じた凸面に転移し、ゴムロール7の凸面上のインキが、ゴムロール7とCrロール8とのニップ部に搬送された被印刷媒体(例えば、ウェブ9等)にインキ像として転写されるようになっている。
【0005】
なお、チャンバ本体2には、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2に設けられた支持部2Aによりゴムパッキン21を介して背面を支持されたシールブレード3、及び、チャンバ本体2に設けられた支持部2Aに固定されたバックプレート20によりゴムパッキン22を介して背面を支持されたドクターブレード4には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード4の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード4のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0006】
サイドシール5は、シールブレード3とドクターブレード4との間(アニロックスロール6の周方向)に延びるようにその背面5aをチャンバ本体2に固着され、その両端5b,5cを図示しないシール剤を介してシールブレード3及びドクターブレード4に密着され、さらに、その頂面(アニロックスロール6側の面)5dをアニロックスロール6の表面6aに摺接することにより、チャンバ1内部のインキが漏れないようにシールする。また、シールブレード3は、チャンバ1内部からのインキ漏れ防止のためのシールとして機能する。
【0007】
ドクターブレード4は、上述のように、先端エッジ4aがアニロックスロール6の表面6aに摺接するが、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性を有しているものが使用される。つまり、アニロックスロール6の表面6aが磨耗すると、この表面6aに刻設されたセル6bの深さがその分小さくなって、ゴムロール7へ十分にインキを供給することができなくなってしまう。そこで、ドクターブレード4の先端エッジ4aはアニロックスロール6の表面6aと摺接すると自身は磨耗するがアニロックスロール6の表面6aは磨耗させない(或いは磨耗を抑える)材料が使われる。ただし、ドクターブレード4自身がある程度磨耗すると、ドクターブレード4を交換しなくてはならないので、ドクターブレード4の耐摩耗性も要求される。
【0008】
このような観点から、ドクターブレードに金属製のストリップを用いて、この金属製のストリップにおけるアニロックスロールの表面と摺接するエッジ部分にセラミックコーティングを施して耐摩耗性を高めたものが開発されている(特許文献1参照)。
また、ドクターブレードとローラとの当り調整を簡略化すると共にブレードの偏摩耗を防止することを目的として、ドクターブレードがアニロックスロール表面に対して軸方向に均一に接触させる技術も開発されている(特許文献2参照)。
【0009】
なお、上述のようなフレキソ印刷は、無溶剤のUVインキや水性インキを使用できるため、印刷工程で大気を汚染することが少なく、環境に優しい印刷方法である。また、刷り始めに多量の紙の無駄が発生するオフセット印刷に比べ、フレキソ印刷は、刷り始めから色の安定までが短いため紙の無駄が少なく、経済面においても優れている。
さらに、非常に薄く均一なベタ刷りを得意とし、平滑性の悪い紙(厚紙、段ボール等)やフィルム、布、不織布にも柔軟に対応でき、伸縮性のある薄い素材や変肉のあるフィルムにも高い印刷再現性を発揮することができる。
【0010】
このような利点を有することから、フレキソ印刷は様々な分野に適用されおり、その中でも特に、新聞用の印刷用紙の紙面改良を行う技術において、フレキソ印刷が好適である。
つまり、一般的な新聞用紙は、一般的な印刷用紙(事務用紙、書籍等)に比べ、白色度が低い。そのため、文字の印刷を施す前に、白色インキを新聞用紙の印刷面に印刷し紙面改良を行う技術が提案されている。新聞印刷は、一度に大量の印刷を高速で行うものであるため、非常に薄く均一なベタ刷りを得意とするフレキソ印刷は好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2003−522661号公報
【特許文献2】特開平6−126938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、本願発明者らは、フレキソ印刷方式を用いた紙面改良技術にかかる試験、即ち、フレキソ印刷方式によって紙面に白色インキを印刷することにより紙面改良を繰り返して実施した。その結果、ドクターブレードの先端エッジの磨耗が著しく、ドクターブレードの交換を頻繁に行わなくてはならなないことが判明した。
これは、新聞印刷の場合、印刷速度が速く、これに加えて、白色インキには速乾性が要求され粘性が低いことから、ドクターブレードのアニロックスロールへの押し付け力もある程度強く設定することが必要なためと考えられる。
【0013】
なお、かかる紙面改良の試験では、図11に示すように、ドクターブレード4として、ドクターブレード本体4Aの先端エッジ4aにセラミック11をコーティングしたものを用いている。セラミック11のコーティングは、先端エッジ4aにおけるアニロックスロール6の表面6aに摺接する側にブレード全長に渡って均一に施されている。
このようなドクターブレード4を用いて紙面改良の試験を行った結果、ドクターブレード4の先端エッジ4aの磨耗形態は、図12に示すように、ドクターブレード4の長手方向両端部を除いて磨耗が進行する偏磨耗であることが分かった。そして、このドクターブレード4の先端エッジ4aの偏磨耗域は、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設された箇所に対応していることが分かった。なお、図12においては、偏磨耗状態を説明するために、磨耗量を実際よりも誇張して示している。
【0014】
このように、ドクターブレード4の先端エッジ4aが偏磨耗すると、ドクターブレード4の先端エッジ4aとアニロックスロール6の表面6aとの間に、隙間が生じてしまうので、ドクターブレード4によるアニロックスロール表面6aの白色インキの掻き取りが不十分になり、アニロックスロール6にはインキが厚くのってしまう。そして、白色インキが厚くのった分、ウェブ等の印刷面に転写される白色インキが厚くなるため、これが乾燥しきれずに、印刷面が未乾燥のまま下流の印刷ユニットに送られていくことになる。
【0015】
このように、印刷面の白色インキが未乾燥のまま下流の印刷ユニットに送られて絵柄や文字の印刷が行われると、未乾燥の白色インキが絵柄や文字を印刷するインキと混ざって濁りを生じてしまい、絵柄や文字の色や形状に支障をきたすなどの印刷障害を引き起こしてしまう。
これに対処するには、チャンバのアニロックスロール表面への押し付け力を大きくして、ドクターブレードの先端を弾性変形させてクターブレードの先端エッジとアニロックスロールの表面との間の隙間を減少させることが必要になる。
【0016】
このため、チャンバのアニロックスロール表面への押し付け力(通常、一定圧)を大きく設定することが必要になる。
しかし、チャンバのアニロックスロール表面への押し付け力を強く設定すれば、ドクターブレードの磨耗の進行もその分早まってしまうことになり、ドクターブレードの耐久性の向上とはならず、むしろ、耐久性の低下を招くことになる。
【0017】
ただし、このような課題は、新聞印刷やその紙面改良に関するだけでなく、ドクターブレードを用いる印刷技術に広く発生しうるものであり、印刷速度が速い印刷や粘性が低いインキを使用する印刷には特に重要な課題となるものと考えられる。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、ドクターブレードの偏磨耗を抑制できるようにしてドクターブレードの耐久性を向上させ、ドクターブレードを用いたチャンバ式インキ供給装置等のメンテナンス負担を軽減することができるようにした、ドクターブレード及びそれを備えたチャンバ式インキ供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するために、本発明のドクターブレードは、ロール両端部を除いたロール中央部の表面にセルが刻設されたアニロックスロールに摺接し、前記アニロックスロール表面のインキを掻き取るドクターブレードであって、前記ドクターブレードのブレード両端部の前記ロール両端部に摺接する部分に、前記ロール中央部に摺接するブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造が設けられていることを特徴としている。
【0019】
前記ドクターブレードの前記アニロックスロール表面に摺接する先端エッジ部には、前記ブレード両端部を除いて硬化処理が施され、前記低耐磨耗性構造とは、前記硬化処理が省かれている構造であることが好ましい。
この場合、前記硬化処理はセラミックコーティングであることが好ましい。
あるいは、前記ドクターブレードを支持して前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けるバックプレートを供え、前記低耐磨耗性構造は、前記バックプレートの前記ブレード両端部を支持する部位は他の部位よりも高い圧力で前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けることにより、前記ブレード両端部の耐磨耗性を低くした構造であることが好ましい。
【0020】
この場合、前記バックプレートは、前記ドクターブレードの前記両端部を支持する部位が他の部位よりも前記ドクターブレードの先端エッジ部に接近する位置まで延びていることが好ましい。
また、前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも厚みを大きく形成されていることも好ましい。
【0021】
さらに、前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも高剛性であることも好ましい。
本発明のチャンバ式インキ供給装置は、チャンバ内にインキを貯留して該インキをアニロックスロールの円筒外表面に供給するチャンバ式インキ供給装置であって、前記チャンバには、請求項1〜7の何れか1項に記載のドクターブレードが装備されていることを特徴としている。
【0022】
前記チャンバを前記アニロックスロールに押し付ける押し付け機構と、前記押し付け機構による押し付け力を調整する調整機構と、前記ドクターブレードの磨耗に応じて前記押し付け力が増加するように前記調整機構を制御するコントローラとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のドクターブレード又はチャンバ式インキ供給装置によれば、ドクターブレードのブレード両端部は、アニロックスロールにおけるセルが刻設されないロール両端部に摺接するので、アニロックスロールにおけるセルが刻設されるロール中央部に摺接するドクターブレードのブレード中央部よりも磨耗が遅くなるが、ブレード両端部には、ブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造が設けられているので、ブレード中央部がロール中央部の表面のセルに摺接して磨耗するのに対して、ロール両端部はこの低耐磨耗性構造の特性により磨耗が促進され、上記の磨耗の遅れが抑制される。
【0024】
この結果、ドクターブレードの偏磨耗が軽減されるため、この偏磨耗に備えて、ドクターブレードのアニロックスロール表面への押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレードのアニロックスロール表面への押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレードの磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレードの耐久性を向上させることができる。
【0025】
ドクターブレードのアニロックスロール表面に摺接するエッジ部に例えばセラミックコーティング等の硬化処理が施されるものの場合には、ドクターブレードのブレード両端部を除いて硬化処理を施せば、硬化処理が省かれたブレード両端部の方がブレード中央部よりも耐磨耗性が低くなり上記低耐磨耗性構造とすることができる。
ドクターブレードを支持してそのエッジ部をアニロックスロール表面に押し付けるバックプレートについて、そのブレード両端部を支持する部位を、他の部位よりも高い圧力でドクターブレードのエッジ部をアニロックスロール表面に押し付けることによっても、両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
【0026】
この場合、バックプレートにおけるブレード両端部を支持する部位が他の部位よりもドクターブレードのエッジ部に接近する位置まで延びるようにすれば、容易に両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
また、バックプレートにおいて、ブレード両端部を支持する部位を他の部位よりも厚みを大きく形成すれば、容易に両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
【0027】
或いは、バックプレートにおいて、ブレード両端部を支持する部位を他の部位よりも高剛性としても、容易に両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
本発明のチャンバ式インキ供給装置において、チャンバをアニロックスロールに押し付ける押し付け力をドクターブレードの磨耗に応じて増加させるようにすれば、押し付け力を抑えてドクターブレードの磨耗を抑制しながら、ドクターブレードの磨耗に応じて避けられない偏磨耗に対してもドクターブレードの機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明する要部斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明するチャンバ式インキ供給装置の要部平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明するドクターブレードの平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する図であって、(a)はその平面図、(b)はその端面図(図4(a)のA矢視図)である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する要部斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する平面図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置の構成図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置のチャンバ押し付け力を説明するグラフである。
【図10】一般的なチャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の要部構成を示す模式的な斜視図である。
【図11】背景技術にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明するチャンバ式インキ供給装置の要部平面図である。
【図12】背景技術にかかる課題を説明するドクターブレードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、新聞用紙の印刷面の紙面改良、つまり、白色度向上のために、印刷面に例えば水性の白色インキを印刷するために、フレキソ印刷を適用する場合を想定して説明するが、本発明にかかるドクターブレード及びチャンバ式インキ供給装置がかかるフレキソ印刷機に限定されずに広く適用できることは言うまでもない。
【0030】
また、本実施形態にかかるフレキソ印刷機については、既に説明した図10を参照する。ただし、図10において、ドクターブレードに関する符号4,4aをそれぞれ符号14,14aに読み替える。
まず、本実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置をそなえたフレキソ印刷機を説明すると、図10に示すように、かかるフレキソ印刷機は、チャンバ本体2と、チャンバ本体2に取り付けられたシールブレード3,ドクターブレード14及びサイドシール5とを有するチャンバ1に加えて、アニロックスロール6と、版胴(ゴムロール)7と、圧胴(硬質ロール、ここでは、Crロール)8と、を備えている。
【0031】
チャンバ1のインキ貯留空間は、チャンバ本体2と、シールブレード3,ドクターブレード14及びサイドシール(シール部材)5と、アニロックスロール6の円筒状表面6aとによって包囲されて形成される。なお、シールブレード3及びドクターブレード14は、それぞれ先端のエッジ3a,14aをアニロックスロール6の円筒状の表面6aに摺接する。
【0032】
アニロックスロール6の表面6aには、セル(極めて細かな溝)6bが刻まれておりインキはこのセル6b内に供給される。
このようなチャンバ1内には、図示しないインキ給排装置によってインキが蓄えられるようになっており、このチャンバ2内のインキが、回転するアニロックスロール6の表面6aに付着し、アニロックスロール6の表面6aに摺接するドクターブレード14によってインキがセル6b内に進入されつつセル6b内に付着したインキを残して他の余分なインキが掻き落とされる。その後、アニロックスロール6のセル6b内に残留するインキがゴムロール7外周の印刷絵柄に応じた凸面に転移し、ゴムロール7の凸面上のインキが、ゴムロール7とCrロール8とのニップ部に搬送された被印刷媒体(例えば、ウェブ9等)にインキ像として転写されるようになっている。
【0033】
なお、チャンバ本体2には、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2に設けられた支持部2Aによりゴムパッキン21を介して背面を支持されたシールブレード3、及び、チャンバ本体2に設けられた支持部2Bに固定されたバックプレートによりゴムパッキン22を介して背面を支持されたドクターブレード14には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード14の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード14のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0034】
サイドシール5は、シールブレード3とドクターブレード14との間(アニロックスロール6の周方向)に延びるようにその背面5aをチャンバ本体2に固着され、その両端5b,5cを図示しないシール剤を介してシールブレード3及びドクターブレード14に密着され、さらに、その頂面(アニロックスロール6側の面)5dをアニロックスロール6の表面6aに摺接することにより、チャンバ1内部のインキが漏れないようにシールする。
【0035】
また、シールブレード3は、チャンバ1内部からのインキ漏れ防止のためのシールとして機能するものであれば、材質は樹脂、金属を問わない。シールブレード3には、アニロックスロール6の表面6aと接触するその先端エッジ3aの真直度が高い(寄り直線に近い)ことや、その先端エッジ3aの近傍の面の平面度が高い(寄り平面に近い)ことや、シールブレード3の固定の際のうねりを吸収でき、且つ、未使用の戻りのインキを掻き取らない程度の適度な剛性があり、アニロックスロール6に軽く接触させられるものであればよい。
【0036】
また、ドクターブレード14は、アニロックスロール6に接触する先端エッジ14aの真直度が高く(より直線に近い)、先端エッジ14a近傍の面の平面度が高く(より平面に近い)、且つ、過剰に変形せず、ドクターブレード14の固定の際のうねりを吸収できる程度の適度な剛性があり、アニロックスロール6の全面にフィットするもの、つまり、アニロックスロール6の回転時に、ドクターブレード14の先端エッジ14aが常時アニロックスロール6の表面に接触するもの、が好しい。
【0037】
さらに、ドクターブレード14は、先端エッジ14aがアニロックスロール6の表面6aに摺接するが、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性を有しているものが好ましい。
つまり、アニロックスロール6の表面6aが磨耗すると、この表面6aに刻設されたセル6bの深さがその分小さくなって、ゴムロール7へ十分にインキを供給することができなくなってしまう。そこで、ドクターブレード14の先端エッジ14aはアニロックスロール6の表面6aと摺接すると自身は磨耗するがアニロックスロール6の表面6aは磨耗させない(或いは磨耗を抑える)材料が使われる。ただし、ドクターブレード14自身がある程度磨耗すると、ドクターブレード14を交換しなくてはならないので、ドクターブレード14の耐摩耗性も要求される。
【0038】
本実施形態では、ドクターブレード14は、ステンレス鋼(SUS)の帯状板材で形成されたドクターブレード本体14Aの先端エッジ14a部分の近傍のアニロックスロール6の表面6aに摺接する側の面に、硬化処理としてセラミック溶射によるセラミックコーティング21が施され、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性が確保されている。なお、ドクターブレード14の材質や硬化処理の手法はこれに限定されるものではない。
【0039】
ただし、本実施形態の特徴的構成は、図1〜図3に示すように、このセラミックコーティング21が、ドクターブレード14の先端エッジ14aの全長にわたって設けられるのではなく、その両端部(ブレード両端部)14bを除いた中央部(ブレード中央部)14cにのみ設けられている点である。これにより、ドクターブレード14のブレード両端部14bのアニロックスロール6の両端部(ロール両端部)に摺接する部分は、ロール中央部に摺接するブレード中央部14cよりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造となっている。
【0040】
セラミックコーティング21が省かれているブレード両端部14bは、図2に示すように、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設されない領域(ロール両端部)、若しくは、セル6bが刻設されない領域から僅かにセル6bが刻設された領域(ロール中央部)にかかるような領域である。僅かにセル6bが刻設された領域にかかる領域まで、セラミックコーティング21が省かれているのは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設されないが、ドクターブレード14にはセラミックコーティング21が施されている領域が発生しないように配慮したものである。
【0041】
そして、このように、セラミックコーティング21が省かれていること、即ち、硬化処理が省かれていることにより、ブレード両端部14bにおける低耐磨耗性構造が構成されている。
本発明の第1実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、印刷を実施していくと、ドクターブレード14は、その先端エッジ14aをアニロックスロール6の表面6aと摺接しながら、アニロックスロール6の表面6aのインキを掻き取って、アニロックスロール6からは、セル6bに残存した適正な量(適正なインキ膜厚)のインキがゴムロール7に供給される。
【0042】
このようなアニロックスロール6の表面6aのインキを掻き取ることによって、ドクターブレード14の先端エッジ14aは磨耗していくが、特に、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接する部分はセル6bによってより早期に磨耗し易い。本ドクターブレードでは、先端エッジ14aにセラミックコーティング21が施され、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性が確保されているが、先端エッジ14aはやはり磨耗していく。
【0043】
一方、ドクターブレード14のブレード両端部14bの先端エッジ14aには、セラミックコーティング21が省かれている。このドクターブレード14のブレード両端部14bは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設されない領域(ロール両端部)に対応するのでセル6bによる強い磨耗はないが、セラミックコーティング21が省かれているので、これによって、磨耗し易い。
【0044】
したがって、ドクターブレード14のブレード中央部14cの磨耗の進行に、ブレード両端部14bの磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部の偏った磨耗が抑制される。
この結果、ドクターブレード14の偏磨耗が軽減されるため、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態の場合、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aのセル6bに摺接する部分(ブレード中央部)には、硬化処理としてセラミックコーティングが施され、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aのセル6bに摺接しない部分(ブレード両端部)には、硬化処理としてセラミックコーティングが施されないという、極めて簡素な構成により、上記の効果を得ることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の構成に、ドクターブレード14´のドクターブレード本体14A´におけるブレード両端部14b´を、先端エッジ14a´を除いて厚肉化してその剛性を高める構成を加えた点が特徴である。つまり、ブレード両端部14b´の剛性を高めることにより、ブレード両端部14b´のアニロックスロール表面6aへの圧接が強まり、ブレード両端部14b´における耐磨耗性が低くなっている。これにより、ブレード両端部14b´においてセラミックコーティング21が省かれていることに加えて、このブレード両端部14b´がブレード中央部14c´よりも耐磨耗性が低いことによって、低耐磨耗性構造が構成されている。他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0047】
本発明の第2実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14´のブレード中央部14c´では、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接することによってより早期に磨耗し、ドクターブレード14´のブレード両端部14b´は、支持剛性を高めることにより先端エッジ14a´をブレード中央部14c´よりも強くアニロックスロール表面6aに押し付けるように構成された低耐磨耗性構造によって、磨耗し易い。
【0048】
したがって、ドクターブレード14´のブレード中央部の磨耗の進行に、ブレード両端部14b´の磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部の偏った磨耗が抑制される。
これにより、第1実施形態と同様に、ドクターブレード14´の偏磨耗が軽減され、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14´のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14´のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14´の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14´の耐久性を向上させることができる。
【0049】
本実施形態の場合、第1実施形態のものに付加する構成なので、ブレード両端部14b´の耐磨耗性をよりより適切に低くすることができるが、剛性を高めることにより構成された耐磨耗性低下構造のみを備えるようにしてもよい。
【0050】
<第3実施形態>
次に、図5,図6を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、ドクターブレード14を背面から支持してそのエッジ部14aをアニロックスロール表面6aに押し付けるバックプレート20A(図10の20に相当する)が、図5,図6に示すように、そのブレード両端部14bを支持する部位201の先端(エッジ部4a側の端部)を、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)202の先端(エッジ部14a側の端部)よりもエッジ部14aに接近する位置まで延在させている点に特徴がある。
【0051】
これによって、バックプレート20Aは、そのブレード両端部14bを支持する部位201が、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)202よりも高い圧力でドクターブレード14のエッジ部14aをアニロックスロール表面6aに押し付けるために、ブレード両端部14bでは、磨耗が促進され耐磨耗性が低下しており、低耐磨耗性構造となっている。
【0052】
このように、本実施形態では、バックプレート20Aのブレード両端部14bを支持する部位201を、他の部位202よりもエッジ部14aに接近する位置まで延在させ、ドクターブレード14のエッジ部14aをアニロックスロール表面6aにブレード中央部14cよりも強く押し付ける構造により、低耐磨耗性構造を構成している。
つまり、本実施形態では、ブレード両端部14bにおいてセラミックコーティング21が省かれていることに加えて、このブレード両端部14bをブレード中央部14cよりも強くアニロックスロール表面6aに押し付けることによって、低耐磨耗性構造が構成されている。他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0053】
本発明の第3実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14のブレード中央部14cでは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接することによってより早期に磨耗し、ドクターブレード14のブレード両端部14bは、バックプレート20Aによってブレード中間部よりも強く押し付けられて磨耗が促進される。
【0054】
したがって、ドクターブレード14のブレード中央部の磨耗の進行に、ブレード両端部14bの磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部の偏った磨耗が抑制される。
これにより、第1実施形態と同様に、ドクターブレード14の偏磨耗が軽減され、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
【0055】
本実施形態の場合、第1実施形態のものに付加する構成なので、ブレード両端部14bの耐磨耗性をよりより適切に低くすることができるが、もちろん、ブレード両端部14bをブレード中央部14cよりも強くアニロックスロール表面6aに押し付けることによる低耐磨耗性構造のみを備えるようにしてもよい。
【0056】
<第4実施形態>
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、ドクターブレード14を支持してそのエッジ部4aをアニロックスロール表面6aに押し付けるバックプレート20B(図10の20に相当する)が、図7に示すように、そのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)204よりも高剛性に設定されている。なお、「高剛性に設定する」とは、バックプレート20Bの材質が一定であれば、その厚みを部分的に大きくすることでもよく、バックプレート20Bの材質をより高剛性のものに替えてもよい。
【0057】
これによって、バックプレート20Bは、そのブレード両端部14bを支持する部位203が、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)204よりも高い圧力でドクターブレード14のエッジ部14aをアニロックスロール表面6aに押し付けるために、ブレード両端部14bでは、磨耗が促進され耐磨耗性が低くなっており、低耐磨耗性構造となっている。
【0058】
このように、本実施形態では、バックプレート20Bのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位204よりも高剛性に設定する構造により、耐磨耗性低下構造を構成している。
つまり、本実施形態では、ブレード両端部14bにおいてセラミックコーティング21が省かれていることに加えて、バックプレート20Bのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位204よりも高剛性に設定することによって、低耐磨耗性構造が構成されている。他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0059】
本発明の第4実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14のブレード中央部14cでは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接することによってより早期に磨耗し、ドクターブレード14のブレード両端部14bは、バックプレート20Bによってブレード中間部よりも強く押し付けられて磨耗が促進される。
【0060】
したがって、ドクターブレード14のブレード中央部の磨耗の進行に、ブレード両端部14bの磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部14cの偏った磨耗が抑制される。
これにより、第1実施形態と同様に、ドクターブレード14の偏磨耗が軽減され、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
【0061】
本実施形態の場合、第1実施形態のものに付加する構成なので、ブレード両端部14bの耐磨耗性をよりより適切に低くすることができるが、もちろん、バックプレート20Bのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位204よりも高剛性に設定することによる低耐磨耗性構造のみを備えるようにしてもよい。
【0062】
<第5実施形態>
次に、図8,図9を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態は、第1〜4実施形態のものと併用することを前提にしたドクターブレードを備えたチャンバ式インキ供給装置に関する。図8中、図10と同様な符号は同様なものを示し、説明は一部省略する。
図8に示すように、チャンバ1はエアシリンダ(押し付け機構)31によって、アニロックスロール6に押し付けられるが、この押し付け力(押し付け圧)Pは、エア圧調整機構32によって調整できるようになっている。エア圧調整機構32を制御するコントローラ33が装備される。コントローラ33は、チャンバ1の位置(前進ストローク)Sを検出するセンサ(例えば、ストロークセンサ、或いは、レベルゲージ)34の検出信号を受けて、図9に示すように、前進ストロークSが大きくなるほど、つまり、ドクターブレード14の磨耗が進むほどエア圧を高め、押し付け力(押し付け圧)Pを高めるように、エア圧調整機構32を制御する。
【0063】
本発明の第5実施形態にかかるドクターブレードを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14の磨耗が少ない段階では、ドクターブレード14の先端エッジ14aは直線に近く、比較的小さな押し付け力(押し付け圧)Pをチャンバに付与するだけで、ドクターブレード14の先端エッジ14aがアニロックスロール表面6aに当接してインキを適正に掻き取る。ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力Pが低いと、ドクターブレード14の先端エッジ14aの磨耗も少ない。
【0064】
そして、ドクターブレード14の磨耗が進んでいくと、その偏磨耗が抑制されたとしても、ドクターブレード14の磨耗が少ない段階よりも、ドクターブレード14の先端エッジ4aは直線から次第に歪んだものになる。これに対して、押し付け力Pを高めるので、ドクターブレード14の先端エッジ14aがアニロックスロール表面6aに当接してインキを適正に掻き取る。
【0065】
これにより、ドクターブレード14の機能を確保しながらドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態では紙面改良剤として白色インキを印刷するフレキソ印刷機に用いるチャンバ式インキ供給装置及びドクターブレードを説明したが、本発明は、新聞印刷やその紙面改良に関するだけでなく、ドクターブレードを用いる印刷技術に広く適用しうる。
【符号の説明】
【0066】
1 チャンバ
2 チャンバ本体
2A,2B 支持部
3 シールブレード
3a 先端エッジ
4,14,14´ ドクターブレード
4A,14A,14A´ ドクターブレード本体
4a,14a,14a´ 先端エッジ
14b,14b´ ブレード端部(ブレード両端部)
14c,14c´ ブレード中央部
5 サイドシール
6 アニロックスロール
6a 円筒状表面
6b セル(極めて細かな溝)
7 版胴(ゴムロール)
8 圧胴(硬質ロール、Crロール)
9 被印刷媒体としてのウェブ
11,21 セラミックコーティング
20,20A,20B バックプレート
21,22 ゴムパッキン
201,203 ブレード両端部14bを支持する部位
202,204 ブレード中間部14cを支持する部位
31 エアシリンダ(押し付け機構)
32 エア圧調整機構
33 コントローラ
34 センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷機のアニロックスロールにインキを供給するチャンバに装備されるドクターブレード及びそれを備えたチャンバ式インキ供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機にはローラ上のインキ厚みを調整するために、ドクターブレードが装備されている。例えば、チャンバ式のインキ供給装置を備えたフレキソ印刷機にも、ドクターブレードが装備されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、チャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の概要を説明する。
図10は、チャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の要部構成を示す図である。図10に示すように、かかるフレキソ印刷機は、チャンバ本体2と、チャンバ本体2に取り付けられたシールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5とを有するチャンバ1に加えて、アニロックスロール6と、版胴(ゴムロール)7と、圧胴(硬質ロール、ここでは、Crロール)8とを備えている。
【0003】
チャンバ1のインキ貯留空間は、チャンバ本体2と、シールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5と、アニロックスロール6の円筒状表面6aとによって包囲されて形成される。なお、シールブレード3及びドクターブレード4は、それぞれ先端のエッジ3a,4aをアニロックスロール6の円筒状の表面6aに摺接する。
アニロックスロール6の表面6aには、セル(極めて細かな溝)6bが刻まれておりインキはこのセル6b内に供給される。
【0004】
このようなチャンバ1内には、図示しないインキ給排装置によってインキが蓄えられるようになっており、このチャンバ1内のインキが、回転するアニロックスロール6の表面6aに付着し、アニロックスロール6の表面6aに摺接するドクターブレード4によってインキがセル6b内に進入されつつセル6b内に付着したインキを残して他の余分なインキが掻き落とされる。その後、アニロックスロール6のセル6b内に残留するインキがゴムロール7外周の印刷絵柄に応じた凸面に転移し、ゴムロール7の凸面上のインキが、ゴムロール7とCrロール8とのニップ部に搬送された被印刷媒体(例えば、ウェブ9等)にインキ像として転写されるようになっている。
【0005】
なお、チャンバ本体2には、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2に設けられた支持部2Aによりゴムパッキン21を介して背面を支持されたシールブレード3、及び、チャンバ本体2に設けられた支持部2Aに固定されたバックプレート20によりゴムパッキン22を介して背面を支持されたドクターブレード4には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード4の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード4のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0006】
サイドシール5は、シールブレード3とドクターブレード4との間(アニロックスロール6の周方向)に延びるようにその背面5aをチャンバ本体2に固着され、その両端5b,5cを図示しないシール剤を介してシールブレード3及びドクターブレード4に密着され、さらに、その頂面(アニロックスロール6側の面)5dをアニロックスロール6の表面6aに摺接することにより、チャンバ1内部のインキが漏れないようにシールする。また、シールブレード3は、チャンバ1内部からのインキ漏れ防止のためのシールとして機能する。
【0007】
ドクターブレード4は、上述のように、先端エッジ4aがアニロックスロール6の表面6aに摺接するが、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性を有しているものが使用される。つまり、アニロックスロール6の表面6aが磨耗すると、この表面6aに刻設されたセル6bの深さがその分小さくなって、ゴムロール7へ十分にインキを供給することができなくなってしまう。そこで、ドクターブレード4の先端エッジ4aはアニロックスロール6の表面6aと摺接すると自身は磨耗するがアニロックスロール6の表面6aは磨耗させない(或いは磨耗を抑える)材料が使われる。ただし、ドクターブレード4自身がある程度磨耗すると、ドクターブレード4を交換しなくてはならないので、ドクターブレード4の耐摩耗性も要求される。
【0008】
このような観点から、ドクターブレードに金属製のストリップを用いて、この金属製のストリップにおけるアニロックスロールの表面と摺接するエッジ部分にセラミックコーティングを施して耐摩耗性を高めたものが開発されている(特許文献1参照)。
また、ドクターブレードとローラとの当り調整を簡略化すると共にブレードの偏摩耗を防止することを目的として、ドクターブレードがアニロックスロール表面に対して軸方向に均一に接触させる技術も開発されている(特許文献2参照)。
【0009】
なお、上述のようなフレキソ印刷は、無溶剤のUVインキや水性インキを使用できるため、印刷工程で大気を汚染することが少なく、環境に優しい印刷方法である。また、刷り始めに多量の紙の無駄が発生するオフセット印刷に比べ、フレキソ印刷は、刷り始めから色の安定までが短いため紙の無駄が少なく、経済面においても優れている。
さらに、非常に薄く均一なベタ刷りを得意とし、平滑性の悪い紙(厚紙、段ボール等)やフィルム、布、不織布にも柔軟に対応でき、伸縮性のある薄い素材や変肉のあるフィルムにも高い印刷再現性を発揮することができる。
【0010】
このような利点を有することから、フレキソ印刷は様々な分野に適用されおり、その中でも特に、新聞用の印刷用紙の紙面改良を行う技術において、フレキソ印刷が好適である。
つまり、一般的な新聞用紙は、一般的な印刷用紙(事務用紙、書籍等)に比べ、白色度が低い。そのため、文字の印刷を施す前に、白色インキを新聞用紙の印刷面に印刷し紙面改良を行う技術が提案されている。新聞印刷は、一度に大量の印刷を高速で行うものであるため、非常に薄く均一なベタ刷りを得意とするフレキソ印刷は好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2003−522661号公報
【特許文献2】特開平6−126938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、本願発明者らは、フレキソ印刷方式を用いた紙面改良技術にかかる試験、即ち、フレキソ印刷方式によって紙面に白色インキを印刷することにより紙面改良を繰り返して実施した。その結果、ドクターブレードの先端エッジの磨耗が著しく、ドクターブレードの交換を頻繁に行わなくてはならなないことが判明した。
これは、新聞印刷の場合、印刷速度が速く、これに加えて、白色インキには速乾性が要求され粘性が低いことから、ドクターブレードのアニロックスロールへの押し付け力もある程度強く設定することが必要なためと考えられる。
【0013】
なお、かかる紙面改良の試験では、図11に示すように、ドクターブレード4として、ドクターブレード本体4Aの先端エッジ4aにセラミック11をコーティングしたものを用いている。セラミック11のコーティングは、先端エッジ4aにおけるアニロックスロール6の表面6aに摺接する側にブレード全長に渡って均一に施されている。
このようなドクターブレード4を用いて紙面改良の試験を行った結果、ドクターブレード4の先端エッジ4aの磨耗形態は、図12に示すように、ドクターブレード4の長手方向両端部を除いて磨耗が進行する偏磨耗であることが分かった。そして、このドクターブレード4の先端エッジ4aの偏磨耗域は、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設された箇所に対応していることが分かった。なお、図12においては、偏磨耗状態を説明するために、磨耗量を実際よりも誇張して示している。
【0014】
このように、ドクターブレード4の先端エッジ4aが偏磨耗すると、ドクターブレード4の先端エッジ4aとアニロックスロール6の表面6aとの間に、隙間が生じてしまうので、ドクターブレード4によるアニロックスロール表面6aの白色インキの掻き取りが不十分になり、アニロックスロール6にはインキが厚くのってしまう。そして、白色インキが厚くのった分、ウェブ等の印刷面に転写される白色インキが厚くなるため、これが乾燥しきれずに、印刷面が未乾燥のまま下流の印刷ユニットに送られていくことになる。
【0015】
このように、印刷面の白色インキが未乾燥のまま下流の印刷ユニットに送られて絵柄や文字の印刷が行われると、未乾燥の白色インキが絵柄や文字を印刷するインキと混ざって濁りを生じてしまい、絵柄や文字の色や形状に支障をきたすなどの印刷障害を引き起こしてしまう。
これに対処するには、チャンバのアニロックスロール表面への押し付け力を大きくして、ドクターブレードの先端を弾性変形させてクターブレードの先端エッジとアニロックスロールの表面との間の隙間を減少させることが必要になる。
【0016】
このため、チャンバのアニロックスロール表面への押し付け力(通常、一定圧)を大きく設定することが必要になる。
しかし、チャンバのアニロックスロール表面への押し付け力を強く設定すれば、ドクターブレードの磨耗の進行もその分早まってしまうことになり、ドクターブレードの耐久性の向上とはならず、むしろ、耐久性の低下を招くことになる。
【0017】
ただし、このような課題は、新聞印刷やその紙面改良に関するだけでなく、ドクターブレードを用いる印刷技術に広く発生しうるものであり、印刷速度が速い印刷や粘性が低いインキを使用する印刷には特に重要な課題となるものと考えられる。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、ドクターブレードの偏磨耗を抑制できるようにしてドクターブレードの耐久性を向上させ、ドクターブレードを用いたチャンバ式インキ供給装置等のメンテナンス負担を軽減することができるようにした、ドクターブレード及びそれを備えたチャンバ式インキ供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するために、本発明のドクターブレードは、ロール両端部を除いたロール中央部の表面にセルが刻設されたアニロックスロールに摺接し、前記アニロックスロール表面のインキを掻き取るドクターブレードであって、前記ドクターブレードのブレード両端部の前記ロール両端部に摺接する部分に、前記ロール中央部に摺接するブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造が設けられていることを特徴としている。
【0019】
前記ドクターブレードの前記アニロックスロール表面に摺接する先端エッジ部には、前記ブレード両端部を除いて硬化処理が施され、前記低耐磨耗性構造とは、前記硬化処理が省かれている構造であることが好ましい。
この場合、前記硬化処理はセラミックコーティングであることが好ましい。
あるいは、前記ドクターブレードを支持して前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けるバックプレートを供え、前記低耐磨耗性構造は、前記バックプレートの前記ブレード両端部を支持する部位は他の部位よりも高い圧力で前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けることにより、前記ブレード両端部の耐磨耗性を低くした構造であることが好ましい。
【0020】
この場合、前記バックプレートは、前記ドクターブレードの前記両端部を支持する部位が他の部位よりも前記ドクターブレードの先端エッジ部に接近する位置まで延びていることが好ましい。
また、前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも厚みを大きく形成されていることも好ましい。
【0021】
さらに、前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも高剛性であることも好ましい。
本発明のチャンバ式インキ供給装置は、チャンバ内にインキを貯留して該インキをアニロックスロールの円筒外表面に供給するチャンバ式インキ供給装置であって、前記チャンバには、請求項1〜7の何れか1項に記載のドクターブレードが装備されていることを特徴としている。
【0022】
前記チャンバを前記アニロックスロールに押し付ける押し付け機構と、前記押し付け機構による押し付け力を調整する調整機構と、前記ドクターブレードの磨耗に応じて前記押し付け力が増加するように前記調整機構を制御するコントローラとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のドクターブレード又はチャンバ式インキ供給装置によれば、ドクターブレードのブレード両端部は、アニロックスロールにおけるセルが刻設されないロール両端部に摺接するので、アニロックスロールにおけるセルが刻設されるロール中央部に摺接するドクターブレードのブレード中央部よりも磨耗が遅くなるが、ブレード両端部には、ブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造が設けられているので、ブレード中央部がロール中央部の表面のセルに摺接して磨耗するのに対して、ロール両端部はこの低耐磨耗性構造の特性により磨耗が促進され、上記の磨耗の遅れが抑制される。
【0024】
この結果、ドクターブレードの偏磨耗が軽減されるため、この偏磨耗に備えて、ドクターブレードのアニロックスロール表面への押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレードのアニロックスロール表面への押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレードの磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレードの耐久性を向上させることができる。
【0025】
ドクターブレードのアニロックスロール表面に摺接するエッジ部に例えばセラミックコーティング等の硬化処理が施されるものの場合には、ドクターブレードのブレード両端部を除いて硬化処理を施せば、硬化処理が省かれたブレード両端部の方がブレード中央部よりも耐磨耗性が低くなり上記低耐磨耗性構造とすることができる。
ドクターブレードを支持してそのエッジ部をアニロックスロール表面に押し付けるバックプレートについて、そのブレード両端部を支持する部位を、他の部位よりも高い圧力でドクターブレードのエッジ部をアニロックスロール表面に押し付けることによっても、両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
【0026】
この場合、バックプレートにおけるブレード両端部を支持する部位が他の部位よりもドクターブレードのエッジ部に接近する位置まで延びるようにすれば、容易に両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
また、バックプレートにおいて、ブレード両端部を支持する部位を他の部位よりも厚みを大きく形成すれば、容易に両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
【0027】
或いは、バックプレートにおいて、ブレード両端部を支持する部位を他の部位よりも高剛性としても、容易に両端部の耐磨耗性を低くすることができる。
本発明のチャンバ式インキ供給装置において、チャンバをアニロックスロールに押し付ける押し付け力をドクターブレードの磨耗に応じて増加させるようにすれば、押し付け力を抑えてドクターブレードの磨耗を抑制しながら、ドクターブレードの磨耗に応じて避けられない偏磨耗に対してもドクターブレードの機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明する要部斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明するチャンバ式インキ供給装置の要部平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明するドクターブレードの平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する図であって、(a)はその平面図、(b)はその端面図(図4(a)のA矢視図)である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する要部斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかるドクターブレードの構成を説明する平面図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置の構成図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置のチャンバ押し付け力を説明するグラフである。
【図10】一般的なチャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の要部構成を示す模式的な斜視図である。
【図11】背景技術にかかるチャンバ式インキ供給装置に装備されたドクターブレードの構成を説明するチャンバ式インキ供給装置の要部平面図である。
【図12】背景技術にかかる課題を説明するドクターブレードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、新聞用紙の印刷面の紙面改良、つまり、白色度向上のために、印刷面に例えば水性の白色インキを印刷するために、フレキソ印刷を適用する場合を想定して説明するが、本発明にかかるドクターブレード及びチャンバ式インキ供給装置がかかるフレキソ印刷機に限定されずに広く適用できることは言うまでもない。
【0030】
また、本実施形態にかかるフレキソ印刷機については、既に説明した図10を参照する。ただし、図10において、ドクターブレードに関する符号4,4aをそれぞれ符号14,14aに読み替える。
まず、本実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置をそなえたフレキソ印刷機を説明すると、図10に示すように、かかるフレキソ印刷機は、チャンバ本体2と、チャンバ本体2に取り付けられたシールブレード3,ドクターブレード14及びサイドシール5とを有するチャンバ1に加えて、アニロックスロール6と、版胴(ゴムロール)7と、圧胴(硬質ロール、ここでは、Crロール)8と、を備えている。
【0031】
チャンバ1のインキ貯留空間は、チャンバ本体2と、シールブレード3,ドクターブレード14及びサイドシール(シール部材)5と、アニロックスロール6の円筒状表面6aとによって包囲されて形成される。なお、シールブレード3及びドクターブレード14は、それぞれ先端のエッジ3a,14aをアニロックスロール6の円筒状の表面6aに摺接する。
【0032】
アニロックスロール6の表面6aには、セル(極めて細かな溝)6bが刻まれておりインキはこのセル6b内に供給される。
このようなチャンバ1内には、図示しないインキ給排装置によってインキが蓄えられるようになっており、このチャンバ2内のインキが、回転するアニロックスロール6の表面6aに付着し、アニロックスロール6の表面6aに摺接するドクターブレード14によってインキがセル6b内に進入されつつセル6b内に付着したインキを残して他の余分なインキが掻き落とされる。その後、アニロックスロール6のセル6b内に残留するインキがゴムロール7外周の印刷絵柄に応じた凸面に転移し、ゴムロール7の凸面上のインキが、ゴムロール7とCrロール8とのニップ部に搬送された被印刷媒体(例えば、ウェブ9等)にインキ像として転写されるようになっている。
【0033】
なお、チャンバ本体2には、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2に設けられた支持部2Aによりゴムパッキン21を介して背面を支持されたシールブレード3、及び、チャンバ本体2に設けられた支持部2Bに固定されたバックプレートによりゴムパッキン22を介して背面を支持されたドクターブレード14には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード14の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード14のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0034】
サイドシール5は、シールブレード3とドクターブレード14との間(アニロックスロール6の周方向)に延びるようにその背面5aをチャンバ本体2に固着され、その両端5b,5cを図示しないシール剤を介してシールブレード3及びドクターブレード14に密着され、さらに、その頂面(アニロックスロール6側の面)5dをアニロックスロール6の表面6aに摺接することにより、チャンバ1内部のインキが漏れないようにシールする。
【0035】
また、シールブレード3は、チャンバ1内部からのインキ漏れ防止のためのシールとして機能するものであれば、材質は樹脂、金属を問わない。シールブレード3には、アニロックスロール6の表面6aと接触するその先端エッジ3aの真直度が高い(寄り直線に近い)ことや、その先端エッジ3aの近傍の面の平面度が高い(寄り平面に近い)ことや、シールブレード3の固定の際のうねりを吸収でき、且つ、未使用の戻りのインキを掻き取らない程度の適度な剛性があり、アニロックスロール6に軽く接触させられるものであればよい。
【0036】
また、ドクターブレード14は、アニロックスロール6に接触する先端エッジ14aの真直度が高く(より直線に近い)、先端エッジ14a近傍の面の平面度が高く(より平面に近い)、且つ、過剰に変形せず、ドクターブレード14の固定の際のうねりを吸収できる程度の適度な剛性があり、アニロックスロール6の全面にフィットするもの、つまり、アニロックスロール6の回転時に、ドクターブレード14の先端エッジ14aが常時アニロックスロール6の表面に接触するもの、が好しい。
【0037】
さらに、ドクターブレード14は、先端エッジ14aがアニロックスロール6の表面6aに摺接するが、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性を有しているものが好ましい。
つまり、アニロックスロール6の表面6aが磨耗すると、この表面6aに刻設されたセル6bの深さがその分小さくなって、ゴムロール7へ十分にインキを供給することができなくなってしまう。そこで、ドクターブレード14の先端エッジ14aはアニロックスロール6の表面6aと摺接すると自身は磨耗するがアニロックスロール6の表面6aは磨耗させない(或いは磨耗を抑える)材料が使われる。ただし、ドクターブレード14自身がある程度磨耗すると、ドクターブレード14を交換しなくてはならないので、ドクターブレード14の耐摩耗性も要求される。
【0038】
本実施形態では、ドクターブレード14は、ステンレス鋼(SUS)の帯状板材で形成されたドクターブレード本体14Aの先端エッジ14a部分の近傍のアニロックスロール6の表面6aに摺接する側の面に、硬化処理としてセラミック溶射によるセラミックコーティング21が施され、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性が確保されている。なお、ドクターブレード14の材質や硬化処理の手法はこれに限定されるものではない。
【0039】
ただし、本実施形態の特徴的構成は、図1〜図3に示すように、このセラミックコーティング21が、ドクターブレード14の先端エッジ14aの全長にわたって設けられるのではなく、その両端部(ブレード両端部)14bを除いた中央部(ブレード中央部)14cにのみ設けられている点である。これにより、ドクターブレード14のブレード両端部14bのアニロックスロール6の両端部(ロール両端部)に摺接する部分は、ロール中央部に摺接するブレード中央部14cよりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造となっている。
【0040】
セラミックコーティング21が省かれているブレード両端部14bは、図2に示すように、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設されない領域(ロール両端部)、若しくは、セル6bが刻設されない領域から僅かにセル6bが刻設された領域(ロール中央部)にかかるような領域である。僅かにセル6bが刻設された領域にかかる領域まで、セラミックコーティング21が省かれているのは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設されないが、ドクターブレード14にはセラミックコーティング21が施されている領域が発生しないように配慮したものである。
【0041】
そして、このように、セラミックコーティング21が省かれていること、即ち、硬化処理が省かれていることにより、ブレード両端部14bにおける低耐磨耗性構造が構成されている。
本発明の第1実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、印刷を実施していくと、ドクターブレード14は、その先端エッジ14aをアニロックスロール6の表面6aと摺接しながら、アニロックスロール6の表面6aのインキを掻き取って、アニロックスロール6からは、セル6bに残存した適正な量(適正なインキ膜厚)のインキがゴムロール7に供給される。
【0042】
このようなアニロックスロール6の表面6aのインキを掻き取ることによって、ドクターブレード14の先端エッジ14aは磨耗していくが、特に、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接する部分はセル6bによってより早期に磨耗し易い。本ドクターブレードでは、先端エッジ14aにセラミックコーティング21が施され、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性が確保されているが、先端エッジ14aはやはり磨耗していく。
【0043】
一方、ドクターブレード14のブレード両端部14bの先端エッジ14aには、セラミックコーティング21が省かれている。このドクターブレード14のブレード両端部14bは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bが刻設されない領域(ロール両端部)に対応するのでセル6bによる強い磨耗はないが、セラミックコーティング21が省かれているので、これによって、磨耗し易い。
【0044】
したがって、ドクターブレード14のブレード中央部14cの磨耗の進行に、ブレード両端部14bの磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部の偏った磨耗が抑制される。
この結果、ドクターブレード14の偏磨耗が軽減されるため、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態の場合、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aのセル6bに摺接する部分(ブレード中央部)には、硬化処理としてセラミックコーティングが施され、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aのセル6bに摺接しない部分(ブレード両端部)には、硬化処理としてセラミックコーティングが施されないという、極めて簡素な構成により、上記の効果を得ることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の構成に、ドクターブレード14´のドクターブレード本体14A´におけるブレード両端部14b´を、先端エッジ14a´を除いて厚肉化してその剛性を高める構成を加えた点が特徴である。つまり、ブレード両端部14b´の剛性を高めることにより、ブレード両端部14b´のアニロックスロール表面6aへの圧接が強まり、ブレード両端部14b´における耐磨耗性が低くなっている。これにより、ブレード両端部14b´においてセラミックコーティング21が省かれていることに加えて、このブレード両端部14b´がブレード中央部14c´よりも耐磨耗性が低いことによって、低耐磨耗性構造が構成されている。他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0047】
本発明の第2実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14´のブレード中央部14c´では、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接することによってより早期に磨耗し、ドクターブレード14´のブレード両端部14b´は、支持剛性を高めることにより先端エッジ14a´をブレード中央部14c´よりも強くアニロックスロール表面6aに押し付けるように構成された低耐磨耗性構造によって、磨耗し易い。
【0048】
したがって、ドクターブレード14´のブレード中央部の磨耗の進行に、ブレード両端部14b´の磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部の偏った磨耗が抑制される。
これにより、第1実施形態と同様に、ドクターブレード14´の偏磨耗が軽減され、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14´のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14´のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14´の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14´の耐久性を向上させることができる。
【0049】
本実施形態の場合、第1実施形態のものに付加する構成なので、ブレード両端部14b´の耐磨耗性をよりより適切に低くすることができるが、剛性を高めることにより構成された耐磨耗性低下構造のみを備えるようにしてもよい。
【0050】
<第3実施形態>
次に、図5,図6を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、ドクターブレード14を背面から支持してそのエッジ部14aをアニロックスロール表面6aに押し付けるバックプレート20A(図10の20に相当する)が、図5,図6に示すように、そのブレード両端部14bを支持する部位201の先端(エッジ部4a側の端部)を、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)202の先端(エッジ部14a側の端部)よりもエッジ部14aに接近する位置まで延在させている点に特徴がある。
【0051】
これによって、バックプレート20Aは、そのブレード両端部14bを支持する部位201が、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)202よりも高い圧力でドクターブレード14のエッジ部14aをアニロックスロール表面6aに押し付けるために、ブレード両端部14bでは、磨耗が促進され耐磨耗性が低下しており、低耐磨耗性構造となっている。
【0052】
このように、本実施形態では、バックプレート20Aのブレード両端部14bを支持する部位201を、他の部位202よりもエッジ部14aに接近する位置まで延在させ、ドクターブレード14のエッジ部14aをアニロックスロール表面6aにブレード中央部14cよりも強く押し付ける構造により、低耐磨耗性構造を構成している。
つまり、本実施形態では、ブレード両端部14bにおいてセラミックコーティング21が省かれていることに加えて、このブレード両端部14bをブレード中央部14cよりも強くアニロックスロール表面6aに押し付けることによって、低耐磨耗性構造が構成されている。他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0053】
本発明の第3実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14のブレード中央部14cでは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接することによってより早期に磨耗し、ドクターブレード14のブレード両端部14bは、バックプレート20Aによってブレード中間部よりも強く押し付けられて磨耗が促進される。
【0054】
したがって、ドクターブレード14のブレード中央部の磨耗の進行に、ブレード両端部14bの磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部の偏った磨耗が抑制される。
これにより、第1実施形態と同様に、ドクターブレード14の偏磨耗が軽減され、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
【0055】
本実施形態の場合、第1実施形態のものに付加する構成なので、ブレード両端部14bの耐磨耗性をよりより適切に低くすることができるが、もちろん、ブレード両端部14bをブレード中央部14cよりも強くアニロックスロール表面6aに押し付けることによる低耐磨耗性構造のみを備えるようにしてもよい。
【0056】
<第4実施形態>
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、ドクターブレード14を支持してそのエッジ部4aをアニロックスロール表面6aに押し付けるバックプレート20B(図10の20に相当する)が、図7に示すように、そのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)204よりも高剛性に設定されている。なお、「高剛性に設定する」とは、バックプレート20Bの材質が一定であれば、その厚みを部分的に大きくすることでもよく、バックプレート20Bの材質をより高剛性のものに替えてもよい。
【0057】
これによって、バックプレート20Bは、そのブレード両端部14bを支持する部位203が、他の部位(ブレード中間部14cを支持する部位)204よりも高い圧力でドクターブレード14のエッジ部14aをアニロックスロール表面6aに押し付けるために、ブレード両端部14bでは、磨耗が促進され耐磨耗性が低くなっており、低耐磨耗性構造となっている。
【0058】
このように、本実施形態では、バックプレート20Bのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位204よりも高剛性に設定する構造により、耐磨耗性低下構造を構成している。
つまり、本実施形態では、ブレード両端部14bにおいてセラミックコーティング21が省かれていることに加えて、バックプレート20Bのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位204よりも高剛性に設定することによって、低耐磨耗性構造が構成されている。他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0059】
本発明の第4実施形態にかかるドクターブレード及びこれを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14のブレード中央部14cでは、アニロックスロール6の表面6aのセル6bと摺接することによってより早期に磨耗し、ドクターブレード14のブレード両端部14bは、バックプレート20Bによってブレード中間部よりも強く押し付けられて磨耗が促進される。
【0060】
したがって、ドクターブレード14のブレード中央部の磨耗の進行に、ブレード両端部14bの磨耗の進行を追従させることができ、ブレード中央部14cの偏った磨耗が抑制される。
これにより、第1実施形態と同様に、ドクターブレード14の偏磨耗が軽減され、この偏磨耗に備えて、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を予め大きく設定する必要がなく、ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力を比較的低く設定することができる。これにより、ドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
【0061】
本実施形態の場合、第1実施形態のものに付加する構成なので、ブレード両端部14bの耐磨耗性をよりより適切に低くすることができるが、もちろん、バックプレート20Bのブレード両端部14bを支持する部位203を、他の部位204よりも高剛性に設定することによる低耐磨耗性構造のみを備えるようにしてもよい。
【0062】
<第5実施形態>
次に、図8,図9を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態は、第1〜4実施形態のものと併用することを前提にしたドクターブレードを備えたチャンバ式インキ供給装置に関する。図8中、図10と同様な符号は同様なものを示し、説明は一部省略する。
図8に示すように、チャンバ1はエアシリンダ(押し付け機構)31によって、アニロックスロール6に押し付けられるが、この押し付け力(押し付け圧)Pは、エア圧調整機構32によって調整できるようになっている。エア圧調整機構32を制御するコントローラ33が装備される。コントローラ33は、チャンバ1の位置(前進ストローク)Sを検出するセンサ(例えば、ストロークセンサ、或いは、レベルゲージ)34の検出信号を受けて、図9に示すように、前進ストロークSが大きくなるほど、つまり、ドクターブレード14の磨耗が進むほどエア圧を高め、押し付け力(押し付け圧)Pを高めるように、エア圧調整機構32を制御する。
【0063】
本発明の第5実施形態にかかるドクターブレードを備えたチャンバ式インキ供給装置は、上述のように構成されているので、ドクターブレード14の磨耗が少ない段階では、ドクターブレード14の先端エッジ14aは直線に近く、比較的小さな押し付け力(押し付け圧)Pをチャンバに付与するだけで、ドクターブレード14の先端エッジ14aがアニロックスロール表面6aに当接してインキを適正に掻き取る。ドクターブレード14のアニロックスロール表面6aへの押し付け力Pが低いと、ドクターブレード14の先端エッジ14aの磨耗も少ない。
【0064】
そして、ドクターブレード14の磨耗が進んでいくと、その偏磨耗が抑制されたとしても、ドクターブレード14の磨耗が少ない段階よりも、ドクターブレード14の先端エッジ4aは直線から次第に歪んだものになる。これに対して、押し付け力Pを高めるので、ドクターブレード14の先端エッジ14aがアニロックスロール表面6aに当接してインキを適正に掻き取る。
【0065】
これにより、ドクターブレード14の機能を確保しながらドクターブレード14の磨耗の進行を抑えることができ、ドクターブレード14の耐久性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態では紙面改良剤として白色インキを印刷するフレキソ印刷機に用いるチャンバ式インキ供給装置及びドクターブレードを説明したが、本発明は、新聞印刷やその紙面改良に関するだけでなく、ドクターブレードを用いる印刷技術に広く適用しうる。
【符号の説明】
【0066】
1 チャンバ
2 チャンバ本体
2A,2B 支持部
3 シールブレード
3a 先端エッジ
4,14,14´ ドクターブレード
4A,14A,14A´ ドクターブレード本体
4a,14a,14a´ 先端エッジ
14b,14b´ ブレード端部(ブレード両端部)
14c,14c´ ブレード中央部
5 サイドシール
6 アニロックスロール
6a 円筒状表面
6b セル(極めて細かな溝)
7 版胴(ゴムロール)
8 圧胴(硬質ロール、Crロール)
9 被印刷媒体としてのウェブ
11,21 セラミックコーティング
20,20A,20B バックプレート
21,22 ゴムパッキン
201,203 ブレード両端部14bを支持する部位
202,204 ブレード中間部14cを支持する部位
31 エアシリンダ(押し付け機構)
32 エア圧調整機構
33 コントローラ
34 センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール両端部を除いたロール中央部の表面にセルが刻設されたアニロックスロールに摺接し、前記アニロックスロール表面のインキを掻き取るドクターブレードであって、
前記ドクターブレードのブレード両端部の前記ロール両端部に摺接する部分に、前記ロール中央部に摺接するブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造が設けられている
ことを特徴とする、ドクターブレード。
【請求項2】
前記ドクターブレードの前記アニロックスロール表面に摺接する先端エッジ部には、前記ブレード両端部を除いて硬化処理が施され、
前記低耐磨耗性構造とは、前記硬化処理が省かれている構造である
ことを特徴とする、請求項1記載のドクターブレード。
【請求項3】
前記ドクターブレードを支持して前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けるバックプレートを供え、
前記低耐磨耗性構造は、前記バックプレートの前記ブレード両端部を支持する部位は他の部位よりも高い圧力で前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けることにより、前記ブレード両端部の耐磨耗性を低くした構造である
ことを特徴とする、請求項1記載のドクターブレード。
【請求項4】
前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも前記ドクターブレードの先端エッジ部に接近する位置まで延びている
ことを特徴とする、請求項3記載のドクターブレード。
【請求項5】
前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも厚みを大きく形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載のドクターブレード。
【請求項6】
前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも高剛性である
ことを特徴とする、請求項3記載のドクターブレード。
【請求項7】
チャンバ内にインキを貯留して該インキをアニロックスロールの円筒外表面に供給するチャンバ式インキ供給装置であって、
前記チャンバには、請求項1〜6の何れか1項に記載のドクターブレードが装備されている
ことを特徴とする、チャンバ式インキ供給装置。
【請求項8】
前記チャンバを前記アニロックスロールに押し付ける押し付け機構と、
前記押し付け機構による押し付け力を調整する調整機構と、
前記ドクターブレードの磨耗に応じて前記押し付け力が増加するように前記調整機構を制御するコントローラとを有する
ことを特徴とする、請求項7記載のチャンバ式インキ供給装置。
【請求項1】
ロール両端部を除いたロール中央部の表面にセルが刻設されたアニロックスロールに摺接し、前記アニロックスロール表面のインキを掻き取るドクターブレードであって、
前記ドクターブレードのブレード両端部の前記ロール両端部に摺接する部分に、前記ロール中央部に摺接するブレード中央部よりも耐磨耗性を低くした低耐磨耗性構造が設けられている
ことを特徴とする、ドクターブレード。
【請求項2】
前記ドクターブレードの前記アニロックスロール表面に摺接する先端エッジ部には、前記ブレード両端部を除いて硬化処理が施され、
前記低耐磨耗性構造とは、前記硬化処理が省かれている構造である
ことを特徴とする、請求項1記載のドクターブレード。
【請求項3】
前記ドクターブレードを支持して前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けるバックプレートを供え、
前記低耐磨耗性構造は、前記バックプレートの前記ブレード両端部を支持する部位は他の部位よりも高い圧力で前記ドクターブレードの先端エッジ部を前記アニロックスロール表面に押し付けることにより、前記ブレード両端部の耐磨耗性を低くした構造である
ことを特徴とする、請求項1記載のドクターブレード。
【請求項4】
前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも前記ドクターブレードの先端エッジ部に接近する位置まで延びている
ことを特徴とする、請求項3記載のドクターブレード。
【請求項5】
前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも厚みを大きく形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載のドクターブレード。
【請求項6】
前記バックプレートは、前記ブレード両端部を支持する部位が他の部位よりも高剛性である
ことを特徴とする、請求項3記載のドクターブレード。
【請求項7】
チャンバ内にインキを貯留して該インキをアニロックスロールの円筒外表面に供給するチャンバ式インキ供給装置であって、
前記チャンバには、請求項1〜6の何れか1項に記載のドクターブレードが装備されている
ことを特徴とする、チャンバ式インキ供給装置。
【請求項8】
前記チャンバを前記アニロックスロールに押し付ける押し付け機構と、
前記押し付け機構による押し付け力を調整する調整機構と、
前記ドクターブレードの磨耗に応じて前記押し付け力が増加するように前記調整機構を制御するコントローラとを有する
ことを特徴とする、請求項7記載のチャンバ式インキ供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−79143(P2011−79143A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230886(P2009−230886)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】
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