説明

ドットラインプリンタ

【課題】標準印刷ドット数を超えて印刷を継続している場合には、印刷機構部とプラテン部の距離を調整し印刷濃度の低減を防止することを可能とする。
【解決手段】複数の印刷素子が駆動した総印刷ドット数と標準印刷ドット数比較し、インクリボン交換時期を過ぎた場合は、印刷回数を変更するか、印刷機構部とプラテン部の距離を調整するか、印刷を中断するかの選択を行うことによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットラインプリンタに係り、特にそれの印刷制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4にドットラインプリンタの印刷機構部の概略を示す。
複数の印刷素子(図示せず)を有する印刷機構部41は、シャトル機構部(図示せず)の駆動力により桁方向に往復運動され、インクリボン42と用紙43を介して、印刷力を確保するためのプラテン部44と対向した状態で配置されている。印刷機構部41が往復運動している状態で印刷素子が適時駆動される毎に、インクリボン42を介して用紙43にドットマトリクスの形で印刷される。更に、ドットマトリクス形式の印刷後、トラクタ駆動用のステッピングモータ46により相切り替え(1ステップ回転)を行い、トラクタ47を前進させて用紙43を搬送させる。このように、ドットマトリクス形式の印刷と紙送り動作を繰り返し行うことにより、文字、図形等の印刷がなされる。
【0003】
上述したドットラインプリンタの印刷動作を続けていると、印刷素子の打撃によってインクリボンのインクが用紙に転写されることにより、インクリボンの濃度が次第に低下するという問題がある。これを解決するため、従来は、印刷文字数がリボン寿命を超えた場合に、リボン交換メッセージを表示し、オペレータにリボン寿命を知らせる方法が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、オペレータにインクリボン交換メッセージを通知している間にも、印刷処理が継続され続けているため、オペレータがリボン交換メッセージに気がつかない場合、印刷濃度が低減してしまい、後になって(例えば印刷終了後に)、インクリボンを交換し、再度、同じ印刷をやり直さなければならないという問題がある。そこで、これを解決するため、従来は、印刷素子の駆動回数に応じて、プラテン位置を移動させ、印刷素子とプラテンとのギャップを適正に維持する方法が採用されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述した従来の構成の場合には、印刷素子とプラテンの間を走行するインクリボンや用紙の状況を無視して制御を行うため、インクリボンや用紙を傷めてしまったり、用紙の搬送を妨げたりすることによって、印刷品質に影響を及ぼすという問題生じていた。
【0006】
そこで本発明では、これらの問題を解消し、高品質の印刷をアウトプットすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明においては、複数の印刷素子を搭載した印刷機構部と、印刷機構部に対向し、移動手段で以って印刷機構部との距離を調整可能なプラテン部と、用紙の両端に設けられた送り穴をトラクタの送りピンに係合させて搬送する用紙搬送手段とを有するドットラインプリンタにおいて、標準印刷ドット数を超えて印刷を継続している場合に、印刷回数を変更するか、印刷機構部とプラテン部の距離を調整するか、印刷を中断するかの選択を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オペレータがインクリボン交換メッセージに気づかず印刷を継続した場合でも、プラテン部位置調整手段により印刷機構部とプラテン部の距離を自動的に調整することで印刷濃度の低減を防止することができる。その上、印刷機構部とプラテン部の距離を狭めることにより、用紙に穴ガレが発生した場合でも、同じ行を複数回印刷することで、用紙の搬送を妨げることなく、印刷濃度の低減を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のドットラインプリンタの一例となる印刷制御ブロック図である。
【図2】本発明の一例となる印刷制御のフローチャートである。
【図3】本発明の一例となる印刷制御のフローチャートである。
【図4】ドットラインプリンタ一例となる要部概略側面断面図である。
【図5】印刷ドットの割合と印刷回数の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図4にドットラインプリンタの印刷機構部の概略を示す。
【0011】
複数の印刷素子(図示せず)を有する印刷機構部41は、シャトル機構部(図示せず)の駆動力により桁方向に往復運動される。インクリボン42と用紙43を介して、印刷力を確保するためのプラテン部44と対向した状態で配置されている。印刷機構部41が往復運動している状態で印刷素子が適時駆動される毎に、インクリボン42を介して用紙43にドットマトリクスの形で印刷される。更に、ドットマトリクス形式の印刷後、用紙43の搬送を行う。用紙43はその両端に設けてある用紙送り穴をトラクタの送りピンに係合させ、トラクタ駆動用のステッピングモータ46により相切り替え(1ステップ回転)を行い、トラクタ47を駆動させることにより用紙43を搬送させる。そして、このように、ドットマトリクス形式の印刷と紙送り動作を繰り返し行うことにより、文字、図形等の印刷がなされる。
【0012】
図1は、本発明のドットラインプリンタで用いられる印刷制御用の制御ブロック図の一例である。
制御部11は、複数の印刷素子を有する印刷機構部41をシャトル機構部の駆動力により桁方向に往復させてライン印刷を行う印刷制御手段12と、複数の印刷素子が駆動した総印刷ドット数の割合が10%増加する度にステッピングモータ48(トラクタ部駆動用)により相切替え(1ステップ回転)を行い印刷機構部41に対向して配置されているプラテン部44の前進動作を行うプラテン部制御手段13と、リボン交換後に複数の印刷素子が駆動した総ドットを保持する印刷ドット数記憶部14と、プラテン部制御手段13により相切換えを実施した回数を保持するプラテン部移動カウンタ記憶部15と、ドットの重ね印刷を実施する回数を保持する印刷回数記憶部16と、実際にドットの重ね印刷を実施した回数を保持する印刷回数カウンタ記憶部17を有している。
【0013】
図2は、本発明の印刷制御を示すフローチャートの一例である。
【0014】
印刷処理21は、印刷機構部41が移動している状態で印刷素子が適時駆動される毎に、インクリボン42を介して用紙43にドットマトリクスの形で文字、図形等を印刷する処理である。
【0015】
印刷機構部41の1回の印刷に伴う移動が終了した後、印刷回数カウンタ更新処理22により、印刷カウンタ記憶部17の値を1カウントアップする。そして、印刷回数判断23により印刷回数記憶部16の値と印刷回数カウンタ記憶部17の値を比較し、印刷回数カウンタ記憶部17の値が印刷回数記憶部16の値と同じ値になるまで、同じ印刷領域を印刷する印刷処理21と印刷回数カウンタ更新処理22を繰り返し、ドットの重ね印刷を実施する。通常は、印刷回数カウンタの値が1となっており、後述する処理によって、印刷回数カウンタの値は変更される。
【0016】
所定の回数分印刷を実行した後に、印刷回数カウンタ初期化処理24にて印刷回数カウンタを初期化処理(=0)する。
【0017】
次に、紙送り処理25にて紙送りを実施後、印刷ドット数の割合判断26は、印刷ドット数記憶部14に記憶された複数の印刷素子が駆動した総印刷ドット数の標準印刷ドット数に対する割合を計算する。ここで、印刷ドット数の割合が100%を超えていない場合は、「プラテン部位置調整不要」へ分岐し、印刷処理を継続する。一方、200%を超えている場合は「プラテン部位置調整不要」へ分岐し、印刷制御手段12の処理を終了する。つまり、印刷を中断する。
【0018】
また、複数の印刷素子が駆動した総印刷ドット数の割合が100%〜200%の場合は「プラテン部位置調整必要」へ分岐し、操作パネル制御処理27により操作パネル48に「リボン交換の必要あり」のメッセージを表示すことで、操作員にインクリボンの交換時期を通知する。
【0019】
更に、穴ガレ判断28により用紙の紙送り穴の穴ガレが発生しているか否かを判断し、穴ガレが発生している場合は印刷回数更新処理30により、総印刷ドット数に応じて、図5に示す表に従って印刷回数を更新し印刷回数記憶部16の値を設定し、印刷制御手段12を終了する。穴ガレの検出は常に一定の用紙送り穴を監視するフォトセンサの出力信号を検出し、その信号から穴ガレ量を算出することで行う。
【0020】
一方、穴ガレが発生していない場合、プラテン部移動処理29は総印刷ドット数の割合が10%増加する度にプラテン部駆動用のステッピングモータ45により相切替え(1ステップ回転)を行い、印刷機構部41に対向して配置されているプラテン部44を前進させる。相切替え(1ステップ回転)を実施した場合は、プラテン部移動カウンタ記憶部15の値を1カウント更新する。
【0021】
なお、上記の通り、総印刷ドット数に応じて印刷機構部41とプラテン部44との距離を狭めた場合、印刷素子とプラテン部との距離が狭くなるので、印刷データによっては印刷動作中に印刷素子が用紙を押さえつける現象が発生し、用紙に対して搬送方向とは逆の方向への負荷が大きくかかるようになり、最終的には紙送り穴の位置がずれる穴ガレ現象が発生する。そこで、本発明では、穴ガレ現象がより大きくならないように穴ガレを検出し、穴ガレが検出された以降は印刷機構部41とプラテン部44の距離を狭めない処理を行うことが必須である。
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、印刷濃度を一定に保つ上で、プラテン部移動処理の前に穴ガレの有無を確認することにより、プラテン部の移動と印刷回数の増加のどちらが適切化を判断するようにしたので、用紙への悪影響を排除しつつ、印刷濃度を適正に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1は連続用紙、2は印刷部、3は紙送りトラクタ、4は用紙出口部、5は排紙スペース、6は給紙スペース、7はトップカバー、8はペーパーガイド、9は用紙先頭位置合わせスケール、10は用紙ガイド、11はホルダ、12は引張りコイルバネである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2000−85203号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷素子を搭載した印刷機構部と、印刷機構部に対向し、移動手段で以って印刷機構部との距離を調整可能なプラテン部と、用紙の両端に設けられた送り穴をトラクタの送りピンに係合させて搬送する用紙搬送手段とを有するドットラインプリンタにおいて、
標準印刷ドット数を超えて印刷を継続している場合に、印刷回数を変更するか、印刷機構部とプラテン部の距離を調整するか、印刷を中断するかの選択を行うことを特徴とするドットラインプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−16838(P2012−16838A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154018(P2010−154018)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】