ドナー要素、およびナノ粒子層の熱転写方法
本発明は、ナノ粒子層、およびキャリア層の対応する近接部分、および場合により追加の転写層をともに熱画像形成レシーバー上に熱転写パターニングする方法を開示する。本発明は、電子デバイスの乾式製造に有用である。本発明のさらなる実施形態は、積層順で、ベースフィルム、キャリア層、およびナノ粒子層を含む多層熱画像形成ドナーを含む。キャリア層は誘電体層または伝導層であってよい。キャリア層が誘電体層である場合、ベースフィルムは、染料または顔料の形態の光減衰剤を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NIST先端技術プログラム(NIST Advanced Technology Program)により与えられた契約番号第70NANB2H03032号の下で米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明の一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、基体上にナノ粒子層を熱転写する方法に関する。特に、本発明は、基体上にナノ粒子層を乾式パターン化堆積するための一段階方法に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の電子物品およびデバイスは、ナノ粒子層またはナノスケール要素を有する改質表面を利用している。これらの物品およびデバイスは、好適な基体上にナノ粒子の堆積およびパターニングを行うことで製造される。これらは、典型的には液相または気相から堆積される。
【0004】
レーザー誘起熱転写プロセスは、典型的に、転写される材料の層(本明細書で転写層と呼ばれる)を含むドナー要素と、転写された材料を受容する表面を含むレシーバー要素とを用いる。ドナー要素またはレシーバー要素の基体のいずれかが透明であるか、あるいは両方とも透明である。ドナー要素およびレシーバー要素は、互いに近接または接触させられ、レーザー放射線に(通常、赤外レーザーによって)選択的に露光される。転写層の露光された部分に熱が生成され、転写層の該当部分の転写を、レシーバー要素の表面上に引き起こす。転写層の材料が入射するレーザー放射線を吸収しない場合、ドナー要素は、転写層に加えて、光熱変換(LTHC)層としても知られる加熱層または転写補助層を含む必要がある。
【0005】
典型的なレーザー誘起デジタル熱転写プロセスでは、露光は、1度に、組立体の小さい選択された領域でしか行われないため、ドナー要素からレシーバー要素への材料の転写を、1度に1つの領域で形成することができる。この領域は、1つの画素、1つの画素の一部またはいくつかの画素であり得る。コンピュータ制御により、高速および高分解能での転写が容易になる。あるいは、アナログプロセスでは、組立体全体を照射して、マスクを用いて熱画像形成性層の所望の部分を選択的に露光する。
【0006】
米国特許第6,521,324号明細書には、表面を画定する微細構造特徴を有する微細構造層の熱転写によって形成される物品、ならびにその熱転写要素、およびその物品の製造方法が開示されている。この第‘324号特許において使用される蒸着およびアニーリングの詳細は、さらに米国特許第5,726,524号明細書において開示されている。
【0007】
国際公開第2005/004205号パンフレットには、基体と誘電材料の転写層とを含む熱画像形成可能なドナー要素を熱に曝露するステップを含む熱転写方法によって、基体上に充填剤入り誘電材料のパターンを形成する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子用途および光学用途の基体上に実質的なナノ粒子層の一段階堆積を可能にする方法が必要とされている。たとえば、誘電体粒子が印刷可能な層の実施的な質量%を構成する高kの印刷可能な誘電体が必要とされている。さらに、乾式であり、そのため溶媒の非相溶性の問題が発生しない印刷方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、ナノ粒子の熱転写パターニング方法であって:a)積層順でベースフィルムと、キャリア層と、ナノ粒子層とを含む熱画像形成ドナーを提供するステップと;b)熱画像形成ドナーを熱画像形成レシーバーに接触させるステップであって、熱画像形成レシーバーがベースフィルムを含むステップと;c)ナノ粒子層の少なくとも一部をキャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写して、積層順で、前記レシーバー上に、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を得るステップとを含み;前記熱画像形成ドナーが、(1)不揮発性画分であって、不揮発性画分の質量を基準にして、65〜100質量%の使用量のナノ粒子画分、および場合により最大35質量%の使用量の分散剤を含む不揮発性画分と;(2)揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液を提供するステップと;前記分散液をキャリア層上に適用し、キャリア流体を揮発させて前記熱画像形成ドナーを得るステップとを含む方法によって製造される、ナノ粒子の熱転写パターニング方法である。
【0010】
本発明の別の一実施形態は、積層順で:(a)ベースフィルムと;(b)誘電体層および伝導層からなる群から選択されるキャリア層と;(c)平均最長寸法が約5nm〜約1500nmであることを特徴とする複数のナノ粒子を含むナノ粒子画分を含むナノ粒子層とを含む多層熱画像形成ドナーであって;キャリア層が誘電体層を含む場合、ベースフィルムは、第1の光減衰剤を含み、約350nm〜約1500nmの範囲内の波長で0.1以上のODを有する、多層熱画像形成ドナーである。
【0011】
本発明のさらなる一態様は、ベースフィルム、パターニングされたナノ粒子層、およびパターニングされたキャリア層を含む熱画像形成レシーバーを含む組成物であって:a)積層順で:ベースフィルム、キャリア層、およびナノ粒子層を含む熱画像形成ドナーを提供するステップと;b)熱画像形成ドナーを熱画像形成レシーバーに接触させるステップであって、熱画像形成レシーバーがベースフィルムを含むステップと;c)ナノ粒子層の少なくとも一部をキャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写して、積層順で、前記レシーバー上に、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を得るステップとによって製造され;前記熱画像形成ドナーが、(1)不揮発性画分であって、不揮発性画分の質量を基準にして、65〜100質量%の使用量のナノ粒子画分と、場合により最大35質量%の使用量の分散剤とを含む不揮発性画分と;(2)揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液を提供するステップと;前記分散液をキャリア層上に適用するステップと、キャリア流体を揮発させて前記熱画像形成ドナーを得るステップとを含む方法によって製造される、組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の実施形態による熱画像形成ドナーの断面図である。
【図1B】本発明の実施形態による熱画像形成ドナーの断面図である。
【図1C】本発明の実施形態による熱画像形成ドナーの断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態による熱画像形成レシーバーの断面図である。
【図2B】レーザー媒介転写によって実現される熱転写方法を示す断面図である。
【図3A】レーザー媒介転写後の熱ドナー要素、およびその要素の分離を示している。
【図3B】レーザー媒介転写後の熱レシーバー要素、およびその要素の分離を示している。
【図3C】パターニングされたキャリア層を除去した後の熱レシーバー要素を示している。
【図4A】2つの層104Aおよび104Bを含むキャリア層を使用したレーザー媒介転写後の熱ドナー要素を示している。
【図4B】2つの層104Aおよび104Bを含むキャリア層を使用したレーザー媒介転写後の熱レシーバー要素を示している。
【図4C】キャリア層の1つの転写層が除去された本発明の別の一実施形態を示している。
【図5A】パターニングされた層を含む熱画像形成レシーバーの断面図である。
【図5B】パターニングされた層を含む熱画像形成レシーバーの断面図である。
【図6A】本発明の方法によって提供される組成物の断面図を示している。
【図6B】本発明の方法によって提供される組成物の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、ナノ粒子層の少なくとも一部をキャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写ステップで熱画像形成レシーバー上に転写するステップを含むナノ粒子の熱転写パターニング方法である。熱画像形成ドナーは、ナノ粒子の分散液をキャリア層の自由表面に適用することによって、ベースフィルムおよびキャリア層を含む熱画像形成基体から作製される。本発明の別の実施形態においては、熱画像形成ドナーは、ベースフィルム、任意選択のLTHC層、キャリア層、およびナノ粒子層を含むことができ、これらは記載の通りに連続して適用される。ドナーの自由表面は、任意の特定の順序でベースフィルム底層とは反対側の最終層上のある表面である。この自由表面は、改質されたドナーを構成するための追加層の適用に使用され、最終的にはドナーを熱画像形成レシーバーに接触させるために使用される。キャリア層、およびベースフィルムなどの他の層は、1つ以上の層を含むことができる。熱画像形成ドナーは、場合により、当技術分野において周知の他の層を含むことができ、たとえば、帯電防止層が、ベースフィルムおよび反対側の転写層に隣接して存在することができ;中間層をLTHC層とキャリア層との間に配置することができ;プライマー層、放出層、および/または下層をベースフィルムとLTHC層との間に配置することができ;接着層をベースフィルムとは反対側の転写層に隣接して配置することができる。したがって、本発明において有用な熱画像形成基体中に1つ以上の他の従来の熱転写ドナー要素層を含むことができ、そのような層としては中間層、プライマー層、剥離層、放出層、断熱層、下層、接着層、湿潤剤層、および光減衰層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書における、「アクリル」、「アクリル樹脂」、「(メタ)アクリル樹脂」、および「アクリルポリマー」という用語は、特に明記しない限り同義である。これらの用語は、メタクリル酸およびアクリル酸ならびにそれらのアルキルおよび置換アルキルエステルから誘導されるエチレン性不飽和モノマーの従来の重合から誘導される付加ポリマーの一般的種類を指す。これらの用語はホモポリマーおよびコポリマーを包含する。これらの用語は、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸およびグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを包含する。本明細書におけるコポリマーという用語は、特に明記しない限り、2種以上のモノマーの重合から誘導されるポリマーを包含し、グラフトコポリマーを含む。(メタ)アクリル酸という用語は、メタクリル酸およびアクリル酸の両方を包含する。(メタ)アクリレートという用語は、メタクリレートおよびアクリレートを包含する。「スチレンアクリルポリマー」、「アクリルスチレン」および「スチレンアクリル」という用語は、同義であり、上記の「アクリル樹脂」と、スチレン、および例えばα−メチルスチレンといった置換されたスチレンモノマーとのコポリマーを包含する。用語「熱転写層」は、ナノ粒子層、キャリア層、および追加の転写層を含んでおり、本明細書において開示される熱転写パターニング方法において熱転写ドナーから熱転写レシーバーに転写される層のことである。
【0015】
本明細書において用いられるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含める(includes)」、「含める(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらの任意の他の活用形は、非限定的な包含をカバーするものとする。例えば、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、特に明記されていないかあるいはかかるプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含めてもよい。さらに、特に矛盾する記載がない限り、「または」は包括的な「または」を指し、限定的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0016】
また、単数形(「a」または「an」)の使用は、本明細書に記載の要素および成分を表すために用いられる。これは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を示すために用いられる。本明細書は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、複数でないことを意図することが明白でない限り、単数形は複数形も含める。
【0017】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と同様なまたは等価な方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において用いることができるが、好適な方法および材料は以下に記載される。本明細書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、特定の節を引用しない限り、それらの全体を参照により援用する。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例はあくまで例示であり、限定されるものではない。
【0018】
本明細書に記載されない範囲の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらは、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0019】
ナノ粒子およびナノ粒子層
用語「ナノ粒子」または「ナノ粒子層」は、平均最長寸法が約5nm〜約1500nmおよび好ましくは約5nm〜約500nmであることを特徴とするナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤー、ナノチューブ、およびナノ構造を含むことを意味する。これらの粒子はほぼ球形であり、ナノ粒子は好ましくは平均粒度約5〜約1500nmであり、より好ましくは約5〜500nmである。「ナノ粒子」の概要および個別の詳細が得られる科学的な参考文献としては、「ナノ粒子:理論から応用まで」(Nanoparticles:From Theory to Application)G.シュミット(Schmid),(ワイリー−VCH(Wiley−VCH)、ワインハイム(Weinheim),2004)および「化学におけるナノスケール材料」(Nanoscale Materials in Chemistry)K.J.クラブント(Klabunde),(ワイリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience),ニューヨーク(New York),2001)が挙げられ、これらは参照として本明細書に援用される。これらの参考文献から、ナノ粒子の合成、挙動、および用途を理解することができる。ナノ粒子は有機粒子、無機粒子、またはそれらの組み合わせであってよい。たとえば、ナノ粒子は、無機コアと、必要に応じて、ナノ粒子に物理的に吸着する、または化学結合する有機材料の表面コーティングとを有することもできる。無機ナノ粒子を表面コーティングする方法は当技術分野において周知である。ナノ粒子の多くの供給元は、分散助剤として作用する未公表または独自開発の表面コーティングを使用している。本明細書全体にわたって、ナノ粒子の質量%に関するすべての言及は、製造者が分散助剤として加える場合も加えない場合もあるこれらの未公表または独自開発のコーティングを含んでいることを意味する。たとえば、市販の銀ナノ粉末は公称100質量%の銀と見なされるが、未公表の分散剤が存在する場合もある。
【0020】
本発明において有用なナノ粒子層は、電気的、磁気的、または光学的な機能層であってよく、そのような層としては、半導体層;抵抗層;誘電体層;伝導層;超伝導層;ルミネッセンス層、発光層、蛍光層、またはリン光層などの光発生層;電子生成層;正孔生成層;強誘電体層;圧電層;フェライト層;電気光学層;磁気層;光を吸収、反射、回折、散乱、分散、屈折、または拡散させる層;ならびに屈折率調整層を挙げることができる。伝導性ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、および金属でコーティングされたカーボンナノチューブ;金、銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、スズ、インジウム、ランタン、ガドリニウム、ルテニウム、チタン、イットリウム、ユウロピウム、ガリウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、セリウム、ストロンチウム、鉛、およびアンチモンなどの金属粒子;インジウム−スズ−酸化物(ITO)、アンチモン−スズ−酸化物(ATO)、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、および亜鉛スズ酸化物(ZTO)などの透明伝導性酸化物などのドープおよび非ドープ金属酸化物粒子;それらの合金、それらの複合材料、ならびにそれらのコア−シェル構造などの伝導性粒子が挙げられる。好ましい伝導性ナノ粒子は:金、銀、銅、およびそれらの合金;ITO、ATO、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される。平均最長寸法が約5nm〜約1500nmである銀ナノ粒子がより好ましく、平均粒度が約200nm〜約400nmである銀ナノ粒子が最も好ましい。
【0021】
半導体ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては:ケイ素;ゲルマニウム;ヒ化ガリウム、ヒ化ガリウムの合金、窒化ガリウム、および窒化ガリウムの合金などのIII−V族半導体化合物;ならびに酸化亜鉛、セレン化カドミウム、および硫化カドミウムなどのII−VI族半導体化合物が挙げられる。
【0022】
誘電体ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、チタネート、ジルコネート、ニオベート、スタネート、その他の混合金属酸化物、TiO2、Ta2O5、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、PbTiO3、CaZrO3、BaZrO3、CaSnO3、BaSnO3、Al2O3、ZrO2、Bi4Ti3O12、BaMgF4、PbZrxTi1−xO3、PbMg1/3Nb2/3O3、Zr0.7Sn0.3TiO4、Zr0.4Sn0.66Ti0.94O4、CaZr0.98Ti0.02O3、SrZr0.94Ti0.06O3、BaNd2Ti5O14、Pb2Ta2O7、チタン酸バリウムジルコニウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムネオジム、ニオブ酸鉛マグネシウム、ニオブ酸鉛亜鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸カドミウム、他のストロンチウム、鉛、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、およびネオジムのチタン酸塩およびタンタル酸塩、種々のパイロクロア、ならびに他の高極性無機材料などの誘電体粒子が挙げられる。好ましい誘電体ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および二酸化チタンからなる群から選択される。
【0023】
発光ナノ粒子層を形成するのに有用なナノ粒子としては、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化鉛、硫化鉛、硫化亜鉛、およびリン化インジウムなどの発光粒子が挙げられる。
【0024】
抵抗層の形成に有用なナノ粒子としては、Pd/Ag;金属ルチル、パイロクロア、およびペロブスカイト相、たとえばRuO2、Pb2Ru2O6〜7、SrRuO3など;Ru+4、Ir+4またはこれらの混合物(M”)の多成分化合物が挙げられ、前記化合物は以下の一般式:
(MxBi2−x)(M’yM”2−y)O7−x
で表され、上式中、Mは、イットリウム、タリウム、インジウム、カドミウム、鉛、銅、および希土類金属からなる群から選択され;M’は白金、チタン、クロム、ロジウム、およびアンチモンからなる群から選択され;M”はルテニウム、イリジウム、またはそれらの混合物であり;xは0〜2を表し、但し一価の銅の場合にはx≦1であり;yは0〜0.5を表し、但しM’がロジウムの場合、あるいは白金、チタン、クロム、ロジウムおよびアンチモンの2種類以上である場合にはyは0〜1であり;zは0〜1を表し、但しMが二価の鉛またはカドミウムの場合には、zは少なくとも約x/2である。これらのルテニウムパイロクロア酸化物は米国特許第3,583,931号明細書に開示されている。抵抗組成物は、導体ナノ粒子を絶縁体ナノ粒子と混合することもできる。好ましい導体ナノ粒子としてはルテニウム系金属酸化物が挙げられる。好ましい絶縁体ナノ粒子としては、ガラスなどの低融点ガラス、あるいはセラミックナノ粒子または前駆体を挙げることができる。ガラスは、シリカ、鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛、鉛アルミニウムホウケイ酸ガラス、または銀系ガラスであってよい。
【0025】
強誘電性ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、BaTiO3、SrTiO3、PbTiO3、KNbO3、SrBi2Ta2O9、BaSrTiO3、およびそれらの化学量論的変種の固溶体が挙げられる。
【0026】
圧電性ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、上記の強誘電体、石英、およびAlNが挙げられる。
【0027】
フェライトナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、Y3Fe5O12、Ba2Zn2Fe12O10、バリウムフェライトなどの六方晶フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、マンガン亜鉛フェライト、およびFe3O4などのスピネルフェライトが挙げられる。
【0028】
電気光学ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、LiNbO3、CdTe、およびZnSが挙げられる。
【0029】
超伝導ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、YBa2Cu3O7−x(YBCO)、Tl2CaBa2Cu3O12、BiSrCaCuO、およびBaKBiOが挙げられる。
【0030】
リン光層の形成に有用なナノ粒子としては、SrS:Eu、SrS:Ce、ZnS:Ag、Y2O2:Eu、Zn2SiO4:Mnが挙げられる。
【0031】
屈折率調整ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、フッ化マグネシウムおよびチタン酸ストロンチウムなどの屈折率調整剤が挙げられる。
【0032】
ベースフィルム
図1Aは、本発明の一実施形態による熱画像形成ドナー100の断面図である。熱画像形成ドナー100は、ベースフィルム102、キャリア層104、およびキャリア層104の表面上に分散されたナノ粒子層106を含む。ベースフィルム102は、熱画像形成ドナー100の他の層を支持する。ベースフィルム102は、好ましくは透明である可撓性ポリマーフィルムを含む。ベースフィルム102の好適な厚さは約25μm〜約200μmであるが、より厚いまたはより薄い支持層を使用することもできる。ベースフィルムは、延伸フィルムを形成するために、当技術分野において周知の標準的な方法で延伸することができ、LTHC層などの1種類以上の他の層をベースフィルム上にコーティングした後に、延伸プロセスを完了することができる。好ましい熱画像形成ドナーフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択されるポリマー材料を含む。
【0033】
光減衰剤
光減衰剤は、別個の層中に存在することができるし、ベースフィルム、LTHC層、または転写層などのドナー要素の他の機能層の1つの中に混入することもできる。一実施形態においては、ベースフィルムは、熱画像形成ステップ中にLTHC層中の放射線吸収剤上に放射線源が集中するのを補助できる染料などの光減衰剤を少量(典型的にはベースフィルムの0.2%〜0.5質量%)含み、それによって熱転写の効率が改善される。参照として本明細書に援用される米国特許第6645681号明細書には、レーザー放射線源の集中を補助するためにベースフィルムを改質できる上記およびその他の方法が記載されており、レーザー放射線源の装置は、画像形成レーザーおよび非画像形成レーザーを含み、非画像形成レーザーは、画像形成レーザーと連絡する光検出器を有する。画像形成レーザーおよび非画像形成レーザーが動作する波長範囲(典型的には約350nm〜約1500nmの範囲内)によって、吸収剤および/または拡散剤が活性および不活性となる波長範囲が決定される。たとえば、非画像形成レーザーが670nm領域付近で動作し、画像形成レーザーが830nmで動作する場合、吸収剤および/または拡散剤の作用によって、830nm領域ではなく670nm領域内の波長の光が吸収または拡散されることが好ましい。本発明においては、光減衰剤は、好ましくは可視領域内の光を吸収または拡散し、一実施形態においては670nm付近の光を吸収する。好適な光減衰剤は当技術分野において周知であり、そのようなものとしては、市販のディスパース・ブルー(Disperse Blue)60およびソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料、ならびにカーボンブラックが挙げられる。好ましくは光減衰剤の量は、約400〜約750nmのある波長において光学濃度(OD)が0.1以上、より好ましくは約0.3〜約1.5となるのに十分な量である。
【0034】
光熱変換層(LTHC)
本発明の熱画像形成ドナーは、場合により、図1Bに示されるようにベースフィルムと別の層との間に介在する光熱変換層(LTHC)を有することができる。熱画像形成ドナー100は、ベースフィルム102とキャリア層104との間に介在するLTHC層108を含む。LTHC層108は、放射線誘導熱転写のための熱画像形成ドナー100の一部として組み込まれ、発光源から熱転写ドナー内に放射される光エネルギーと結合する。典型的には、LTHC層(または別の層)中の放射線吸収剤は、電磁スペクトルの赤外領域、可視領域、および/または紫外領域内の光を吸収し、吸収した光を熱に変換する。放射線吸収剤は、典型的には高吸収性であり、画像形成放射線の放射線におけるODが0.1〜3以上、好ましくは0.2〜2となる。好適な放射線吸収材料としては、たとえば、染料(たとえば、可視染料、紫外染料、赤外染料、蛍光染料、および放射線偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属化フィルム、および他の好適な吸収材料を挙げることができる。
【0035】
LTHC層の好適な放射線吸収剤およびバインダーは、当技術分野において周知であり、それらの広範な一覧および参考文献は、国際出願PCT/US05/38010号明細書、国際出願PCT/US05/38009号明細書;米国特許第6,228,555B1号明細書;マツオカ(Matsuoka),M.,「赤外吸収材料」(Infrared Absorbing Materials),プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク(New York),1990;およびマツオカ(Matsuoka),M.,ダイオードレーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)、ぶんしん出版(Bunshin Publishing Co.),東京,1990に見ることができ、これらは参照として本明細書に援用される。
【0036】
LTHC層用の好ましい種類の近赤外染料は、インドシアニン、多置換フタロシアニンや金属含有フタロシアニンなどのフタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択されるシアニン化合物である。好適な赤外吸収染料の供給元としては、H.W.サンズ社(H.W.Sands Corporation)(米国フロリダ州ジュピター(Jupiter,FL,US))、アメリカン・サイアナミッド社(American Cyanamid Co.)(ニュージャージー州ウェイン(Wayne,NJ))、サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)(ニュージャージー州ウエストパターソン(West Paterson,NJ))、グレンデール・プロテクティブ・テクノロジーズ社(Glendale Protective Technologies,Inc.)(フロリダ州レークランド(Lakeland,FL))およびハンプフォード・リサーチ社(Hampford Research Inc.)(コネチカット州ストラトフォード(Stratford,CT))が挙げられる。LTHC、キャリア層、および転写層用の好ましい染料は、CAS番号[128433−68−1]および分子量約619グラム/モルを有し、コネチカット州ストラトフォードのハンプフォード・リサーチ社(Hampford Research Inc,Stratford,CT)よりTIC−5cとして入手可能な2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有しH.W.サンズ社(H.W.Sands Corp)よりSDA 4927として入手可能な2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびにH.W.サンズ社(H.W.Sands Corp)のインドレニン染料SDA 2860およびSDA 4733である。SDA 4927はLTHC層用に特に好ましい染料である。
【0037】
LTHC層は、バインダー中に粒子状放射線吸収剤を含むことができる。好適な顔料の例としてはカーボンブラックおよび黒鉛が挙げられる。
【0038】
質量パーセントの計算において溶媒を排除した層中の放射線吸収剤の質量パーセントは、一般に1質量%〜85質量%、好ましくは3質量%〜60質量%、最も好ましくは5質量%〜40質量%であり、これはLTHC層中に使用される個別の放射線吸収剤およびバインダーによって変動する。
【0039】
LTHC層中に使用すると好適なバインダーとしては、たとえば、フェノール樹脂(たとえば、ノボラックおよびレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、およびスチレンアクリル樹脂などのフィルム形成性ポリマーが挙げられる。LTHC層の%透過率は、放射線吸収剤の種類および量、ならびにLTHC層の厚さの影響を受ける。LTHC層は、熱転写画像形成方法において使用される画像形成放射線の波長における放射線透過率が約20%〜約80%、より好ましくは約40%〜約50%となるべきである。バインダーが存在する場合、放射線吸収剤対バインダーの質量比は、一般に質量で約5:1〜約1:1000、好ましくは質量で約2:1〜約1:100である。ポリマーまたは有機のLTHC層は、0.05μm〜20μm、好ましくは、0.05μm〜10μm、より好ましくは、0.10μm〜5μmの厚さにコーティングされる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態においては、LTHC層は、前出の参考文献の国際出願PCT/US05/38010号明細書および国際出願PCT/US05/38009号明細書に開示されるような組成を有する多種多様の水溶性または水分散性のポリマーバインダーを含むことができる。好ましくは、水分散性バインダーのその水相中の平均粒度は、0.1ミクロン未満であり、より好ましくは0.05ミクロン未満であり、好ましくは狭い粒度分布を有する。本発明において有用なLTHC層に好ましい水溶性または水分散性のポリマーバインダーは、アクリル樹脂および親水性ポリエステルの群から選択されるものであり、より好ましくは前出の参考文献の国際出願PCT/US05/38009号明細書に記載されるようなスルホン化ポリエステルから選択されるものである。
【0041】
LTHC層の他の好ましいポリマーバインダーは、無水マレイン酸ポリマー、ならびに無水マレイン酸ポリマーおよび/またはコポリマーをアルコール、アミン、およびアルカリ金属水酸化物で処理することによって得られる官能性を有するものなどのコポリマーである。無水マレイン酸系コポリマーの特定の種類は式(III)で表される構造を含み
【化1】
上式中、xおよびzは任意の正の整数であり;
yは、0または任意の正の整数であり;
R21およびR22は、同種の場合も異種の場合もあり、個別に水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、およびハロゲンであり、但しR21およびR22の1つは芳香族基であり;
R31、R32、R41、およびR42は、同種または異種であり、水素、または1〜約5個の炭素原子のアルキルであってよく;
R50は:
a)1〜約20個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基;
b)1〜約20個の繰り返し単位であってよい、各オキシアルキレン基中に約2〜約4個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基のオキシアルキル化誘導体;
c)1〜約6個の繰り返し単位であってよい、各オキシアルキレン基中に約2〜約4個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基のオキシアルキル化誘導体;
d)少なくとも1つの不飽和部分;
e)少なくとも1つのヘテロ原子部分;
f)Li、Na、K、およびNH4+から選択される塩を形成することができるアルカリ分子;ならびに
g)それらの組み合わせから選択される官能基である。
【0042】
LTHC層の好ましい無水マレイン酸ポリマーの1つは、R21、R31、R32、R
33、R41、R42、R43が個別に水素であり、R22がフェニルであり、R50が2−(n−ブトキシ)エチルである式(III)のコポリマーを含む。LTHC層において有用な無水マレイン酸コポリマーの具体例の1つは、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Corporation,Exton,PA)の製品のSMA1440Hなどのスチレン無水マレイン酸コポリマーである。
【0043】
本発明の一実施形態においては、好ましいLTHC層の1つは、インドシアニン、多置換フタロシアニンや金属含有フタロシアニンなどのフタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択される1種類以上の水溶性または水分散性の放射線吸収性シアニン化合物と;アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される1種類以上の水溶性のまたは水分散性のポリマーバインダーとを含む。最も好ましいLTHC層の1つは:第4級アンモニウム陽イオン化合物;ホスフェート陰イオン化合物;ホスホネート陰イオン化合物;1〜5個のエステル基と2〜10個のヒドロキシル基とを含む化合物;アルコキシル化アミン化合物;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種類以上の剥離改質剤をさらに含む。
【0044】
粒子の形態、あるいは熱蒸着、e−ビーム加熱、およびスパッタリングなどの種々の技術によって堆積されたフィルムとしてのいずれかで、金属放射線吸収剤をLTHC層として使用することもできる。ニッケルおよびクロムがLTHC層108に好ましい金属であり、クロムが特に好ましい。加熱層用に、あらゆる他の好適な金属を使用することもできる。金属加熱層の好ましい厚さは、使用される金属の光吸収に依存する。クロム、ニッケル/バナジウム合金、またはニッケルの場合、80〜100オングストロームの層が好ましい。
【0045】
本発明において使用されるLTHC層に好ましい放射線吸収剤は、CrおよびNiから選択される金属膜、カーボンブラック、黒鉛、ならびにLTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料からなる群から選択される。
【0046】
キャリア層
本発明の熱画像形成基体は、ベースフィルムとキャリア層とを含む。キャリア層の厚さは、約5nm〜約10μm、好ましくは約100nm〜約5μm、より好ましくは約200nm〜約3μmのいずれかの厚さであってよい。キャリア層104は、熱画像形成またはパターニングが可能な材料でできており、1つ以上の層を含むことができる。キャリア層は伝導層、絶縁層、接着層、平坦化層、または保護層として機能することができ、熱転写プロセスでナノ粒子層とともに転写される。キャリア層は、典型的には絶縁体または導体であり、後述するような多種多様の付加または縮合ポリマーおよびオリゴマーのいずれかを含むことができる。
【0047】
たとえば、π−共役ポリマーを含むキャリア層または転写層は、その層中の他の成分の性質に依存して導体層または半導体層として分類されうる。同様に、たとえば、絶縁性ポリマーを含むキャリア層または転写層は、その層中の他の成分の性質に依存して導体層または誘電体層として分類されうる。本明細書においては、化学的または電気的手段を使用して特定の温度における層の抵抗率が数桁の大きさにわたって可逆的に変動可能である場合に、その層が半導体層として分類される。ある層が半導体層ではなく、約107Ω・cm以上の抵抗率を有する場合に、その層が誘電体層として分類される。層が電子デバイスの誘電体部品として使用される場合、好ましくは抵抗率が約1011Ω・cm以上であり、より好ましくは約1014Ω・cm以上である。本明細書では、層が半導体層ではなく約106Ω・cm以下の抵抗率を有する場合に、その層は導体層として分類される。層が、電子デバイスの機能性伝導性部品である場合、好ましくはその層の抵抗率は約1Ω・cm以下であり、より好ましくは約10−4Ω・cm以下であり、最も好ましくは約10−5Ω・cm以下である。
【0048】
好ましい一実施形態においては、キャリア層は、転写プロセス中に転写されて、パターニングされたナノ粒子層とパターニングされたキャリア層とを熱画像形成レシーバー上に含む多層転写単位が得られる。キャリア層は、屈折率調整剤、吸光剤、発光体、非線形光学媒質、半導体、導体、および誘電体などの多種多様な材料を含むことができる。好ましいキャリア層は、導体層、誘電体層、および半導体層、ならびにそれらの組み合わせである。
【0049】
転写後、キャリア層は、本明細書においてベースフィルムとは反対側のナノ粒子層の面として定義されるパターニングされたナノ粒子層の表面上に位置し、ナノ粒子層の平坦化、接着、および/または保護の機能を果たすことができる。キャリア層は、転写プロセス中にレーザーによって誘発されるナノ粒子層の損傷の防止、および/または完全性の維持のための保護層として機能することもできる。キャリア層は、ナノ粒子層のレシーバーへの付着を改善することもできる。
【0050】
本発明の別の好ましい一実施形態においては、キャリア層は、転写プロセス中のナノ粒子層の転写の促進、ならびに場合により保護および付着を得る目的以外の機能は果たさない。このような場合、転写後にキャリア層を除去することが望ましい場合がある。これらの場合、キャリア層が、転写後にナノ粒子層に対して弱い付着性を示し、ブローイング、剥離、減圧、ならびに粘着面または静電面に接触させることによる付着的除去からなる群から選択される1つ以上のステップによって容易にキャリア層が除去され、それによってパターニングされたナノ粒子層は無傷で熱画像形成レシーバーに付着できるように、キャリア層材料および曝露エネルギーを選択することができる。用語「無傷」は、一般にパターニングされたナノ粒子層の50質量%を超える量が無傷のままであることを意味する。好ましくは80質量%を超える、最も好ましくは90質量%を超えるナノ粒子層が無傷のままとなる。キャリア層の除去に好適な粘着面は、付着的除去に使用される周囲条件未満のTgを有する自由表面粘着層を含む市販のテープ製品である。
【0051】
伝導層および抵抗層
キャリア層として有用な導体としては、π−共役有機ポリマーおよびこれらのポリマーにドープした種類のものが挙げられる。好ましいポリマーは、以下の分類の1つ以上に含まれる:(a)ポリアニリン(PANI)およびポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの安定な伝導性ポリマー;(b)PANI、PEDOTなどの標準的なコーティング技術を使用してフィルムを形成する可溶性または分散性の伝導性ポリマー;ならびにポリ(2,5ジアルコキシ)パラフェニレンビニレンおよびポリ(3−ヘキシル)チオフェンなどの伝導性ポリマーの他のアルキル置換またはアルコキシ置換誘導体;ならびに(c)ドーピングによって高い伝導性が得られる伝導性ポリマー。本明細書において伝導性ポリマーAと呼ぶ好ましい伝導性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ複素環式芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。高伝導性ポリマー、および伝導性ポリマーのドーピング方法の説明は以下の参考文献に見ることができる:ブレダス(Bredas),J.−L.伝導性ポリマーハンドブック(Handbook of Conducting Polymers)中;スコットハイム(Skotheim),T.編;マーセル・デッカー社(Marcel Dekker、Inc.),ニューヨーク(New York),1986,第2巻第25章(Vol.2,Chapter 25);マクダーミッド(MacDiarmid),A.G.,Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2581−2590;およびヒーガー(Heeger),A.J.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2591−2611。米国特許第5,863,465号明細書および第5,370,825号明細書には、ポリアニリンの伝導性および半導体特性が記載されている。可塑剤の酸などの有機酸が好ましいドーパントである。別の好ましいドーパントは前述の伝導性ナノ粒子である。ドーパントとして好ましい伝導性ナノ粒子は、金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、カーボンナノチューブ、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、ポリアニリンおよびその誘導体の伝導性は、参照として本明細書に援用される米国特許公開第2005/0116202号明細書に記載されるように、有機酸、および場合によりカーボンナノチューブなどのドーパントを使用して微調整することで、適切なレベルの伝導性を得ることができる。好ましいキャリア層導体は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、好ましくは約0.1〜12質量%のSWNTのポリアニリン分散体を含む。好ましくは、ポリアニリンおよびその誘導体は、1〜30個の炭素を有する有機プロトン酸でさらにドープされ、前記酸は、ポリマー主鎖中の窒素原子のモル当量の約25%〜約100%である。好ましい有機プロトン酸の1つは、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)である。
【0053】
キャリア層として有用な導体の好ましい厚さは、約0.01〜約10ミクロンであり、好ましくは約0.1〜約5ミクロンであり、より好ましくは約0.2〜約3ミクロンである。
【0054】
伝導性キャリア層は、伝導性または抵抗性ナノ粒子がドープされた非伝導性ポリマーを含むこともできる。伝導性キャリア層の形成に有用な好ましい非伝導性ポリマーは、非伝導性ポリマーAであり、この非伝導性ポリマーAは:アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびにランダムコポリマーおよびグラフトコポリマーなどの溶液系アクリルおよびスチレン−アクリル(コ)ポリマー、ならびに(メタ)アクリレートコポリマー;ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1つ以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマーからなる群から選択されるとして本明細書において定義される。非伝導性ポリマーAの特に好ましい溶液系ポリマーおよびラテックスポリマーは、Tgが約−50℃〜約175℃、より好ましくは約−30℃〜約90℃である。この群の特に好ましい溶液系ポリマーは、Mwが約10,000〜約200,000であることをさらなる特徴とする。伝導性キャリア層の形成に有用なさらに別の好ましい非伝導性ポリマーは、本明細書において非伝導性ポリマーBと呼ばれるものであり、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニルなどのそのコポリマーである。ドーパントとして好ましい伝導性ナノ粒子は、金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、カーボンナノチューブ、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいドーピングは約40〜約90質量%の範囲内のナノ粒子である。
【0055】
半導体層
機能性キャリア層として有用な半導体としては、一般に、当技術分野において周知であり、参照として本明細書に援用される国際公開第03/052841A1号パンフレットに開示されているπ−共役有機化合物およびポリマーから誘導される有機半導体が挙げられる。伝導性および半導体の有機ポリマーの合成及び性質は当技術分野において周知である。「2000年ノーベル賞講演」(Nobel Prize 2000 Lecture) アラン・マクダーミッド(Alan MacDiarmid),Current Applied Physics 1,2001,269−279;および「導電性ポリマーハンドブック」(Handbook of Conducting Polymers), T.スコットハイム(Skotheim),R.エルセンバウマー(Elsenbaumer)、およびJ.レイノルズ(Reynolds)編著、第2版(2nd ed.),マーセル・デッカー社,ニューヨーク(Marcel Dekker Inc.,NY),1998などのいくつかの概略的参考文献が入手可能である。米国特許第5,863,465号明細書および米国特許第5,370,825号明細書には、ポリアニリンの伝導性および半導体特性が記載されている。これらのポリマー半導体キャリア層の好ましい厚さは、約0.05〜約10ミクロン、好ましくは約0.1〜約5ミクロン、より好ましくは約0.2〜約3ミクロンである。本明細書において半導体Aと呼ばれる好ましいオリゴマーおよびポリマーの有機半導体としては、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ポリピレン、ポリアリールアミン、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0056】
誘電体層
誘電体キャリア層としては、顔料などの種々の充填剤を有するまたは有さない絶縁性ポリマーが挙げられる。デバイス中の機能性キャリア層として特に有用な誘電体層としては、有機ポリマー、および高K誘電体ナノ粒子と併用されるポリマーが挙げられる。ここで、高K誘電体ナノ粒子は、誘電率が20以上、好ましくは30以上、より好ましくは100以上であるナノ粒子を意味する。
【0057】
本発明の一実施形態では、キャリア層104として有用な誘電体層は、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクリルおよびスチレンポリマー;部分的に水素化されたポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ならびに、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレンと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレンとのコポリマー(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)からなる群から選択されるヘテロ原子−置換スチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせ;ならびにポリ(酢酸ビニル)からなる群から選択される1種類以上の誘電性ポリマーと;層A内で約600〜約1200nmの範囲の吸収極大を特徴とする1種類以上の近赤外線染料を、層Aの乾燥質量を基準にして約0.5質量%〜約10質量%とを含む、本明細書で層Aと呼ばれる、材料の少なくとも1つの層を含む、約1014Ω・cm以上の抵抗率を有する。本明細書における誘電性ポリマーという用語は、ホモポリマー、2種以上のモノマーの重合から誘導されるコポリマー、グラフト(コ)ポリマーを含むポスト誘導体化(post−derivatized)(コ)ポリマー、ならびに低分子量ホモポリマーまたはコポリマーを包含する。ポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、超分岐状または樹枝状であってもよい。
【0058】
層Aのための好ましい誘電性ポリマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレン(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)を含むアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックスが挙げられる。これらのラテックス系ポリマーのための好ましい任意のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。より好ましいアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックスは、少なくとも約85質量%、好ましくは少なくとも約90質量%、およびより好ましくは少なくとも約95質量%の、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレン(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)の群から選択されるモノマーを含む1種類以上のラテックス樹脂と本明細書で定義されるラテックスAの群から選択される。これらのラテックス樹脂のための好ましい任意のモノマーとしては、好ましくは約5質量%以下の(メタ)アクリル酸、好ましくは約10質量%以下のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および好ましくは約5質量%以下のグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、ラテックスは、約150nm未満、より好ましくは、約100nm未満の平均粒径、ならびに約100未満、好ましくは約75未満、およびより好ましくは約25未満の酸価を有する。
【0059】
(1014Ω・cmを超える)高い抵抗率を有する層Aのための特に好ましいポリマーは、アクリルラテックスBおよびスチレン−アクリルラテックスCならびにそれらの組み合わせである。アクリルラテックスBは、少なくとも約85質量%、好ましくは少なくとも約90質量%、およびより好ましくは少なくとも約95質量%の、メチルメタクリレートおよびブチルアクリレートからなる群から選択されるモノマーを含む1種類以上のアクリルラテックスと本明細書で定義される。スチレン−アクリルラテックスCは、少なくとも約85質量%、好ましくは少なくとも約90質量%、およびより好ましくは少なくとも約95質量%の、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびスチレンからなる群から選択されるモノマーを含む1種類以上のスチレン−アクリルラテックスと本明細書で定義される。アクリルラテックスBおよびスチレン−アクリルラテックスCのための好ましい任意のモノマーは、好ましくは約5質量%以下の(メタ)アクリル酸、好ましくは約10質量%以下のヒドロキシエチルメタクリレート、および好ましくは約5質量%以下のグリシジルメタクリレートからなる群から選択される。誘電性ポリマーとして有用なアクリルおよびスチレンアクリルラテックスの市販の例としては、ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95および1915(コ)ポリマー(ジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer))が挙げられる。好適なラテックスポリマーを合成するための方法は、国際公開第03/099574号パンフレットに報告されている。
【0060】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしては、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーが挙げられる。本明細書における「溶液系」という用語は、水ならびに/あるいは、アルコール、例えばエタノールおよびブトキシエタノール;エーテル、例えばジメトキシエタン;エステル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル;ケトン、例えば、アセトンおよび2−ブタノン;および芳香族炭化水素、例えばキシレンを含む1種類以上の一般的な有機溶媒などの溶媒に可溶な材料を指す。好ましい溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーは、約100,000未満、好ましくは50,000未満、およびより好ましくは30,000未満のMwを有する。さらに、好ましい溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーは、約250未満の酸価を有する。好ましい溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレン(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)の群から選択されるモノマーを含む。これらの溶液系ポリマーのための好ましい任意のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
層Aのための特に好ましい材料は、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックスと、上記の水性のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーとの組み合わせである。好ましくは、この組み合わせは、組成物の乾燥質量を基準にして、約20質量%〜約80質量%、より好ましくは約40質量%〜約80質量%の、アクリルまたはスチレン−アクリルラテックス画分および約20質量%〜約80質量%、より好ましくは約20質量%〜約60質量%の、水性のアクリルまたはスチレン−アクリルポリマー画分を含む。
【0062】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしては、部分的に水素化されたポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン(PHS)、ならびにPHSと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレンとのコポリマー(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)からなる群から選択されるヘテロ原子−置換されたスチレンポリマーが挙げられる。特に好ましいコモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびスチレンであり、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびブチルアクリレートが特に好ましい。PHS(コ)ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。PHSホモポリマーが用いられるとき、分岐構造が好ましい。この種類の好ましい(コ)ポリマーは、約30,000未満および好ましくは約20,000未満およびより好ましくは約10,000未満のMwを有する。部分的に水素化されたPHSは、ポリマー内の不飽和の約50当量%まで水素化されたPHSポリマーを指し、好ましいポリマーは、約10〜20当量%まで水素化される。市販の例としては、PHS−B(分岐状PHSホモポリマー;テキサス州ダラスのデュポン・エレクトロニック・テクノロジー(DuPont Electronic Technologies,Dallas,TX))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CMM(メチルメタクリレートとのPHSコポリマー;日本国東京の丸善石油化学株式会社(Maruzen Petrochemical Co.、LTD.Tokyo,Japan))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CHM(ヒドロキシエチルメタクリレートとのPHSコポリマー;丸善(Maruzen))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CBA(ブチルアクリレートとのPHSコポリマー、丸善(Maruzen))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CST15、50、および70(スチレンとのPHSコポリマー、丸善(Maruzen))、ならびにマルカ・リンカー(Maruka Lyncur)PHM−C(部分的に水素化されたPHS、丸善(Maruzen))が挙げられる。
【0063】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしては、フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。この種類の好ましい(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーは、フェノール;アルキル−およびアリール−置換されたフェノール;ホルムアルデヒド;およびアルキル−、アリール−およびヘテロ原子−置換されたアルデヒドからなる群から選択される、モノ−およびビス−フェノールならびにモノ−およびビス−アルデヒドから誘導される。フェノール−アルデヒド樹脂はさらに誘導体化されてもよく、例えば、ヒドロキシ基がエーテル基に変換される。この基内の好ましい(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーは、約20,000以下、好ましくは約10,000以下のMwを有する。市販の例としては、ノボラック(Novolac)(登録商標)/ノボラック(Novolac)(登録商標)樹脂(ニューヨーク州スケネクタディのスケネクタディ・インターナショナル社(Schenectady International Inc.,Schenectady New York))が挙げられる。
【0064】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしてはポリ(酢酸ビニル)ホモポリマーが挙げられる。この基内の好ましいポリマーは、約100,000以下のMwを有する。
【0065】
上記のポリマーは、数ある特性の中でも特に、改良された可撓性、付着性、赤外線染料との相溶性のために、可塑化され得る。場合によっては、可塑剤は、上記の種類のポリマーから選択されてもよい。例えば、より高いTgまたはより高い分子量(MW)のフェノール−アルデヒドポリマーが、より低いTgまたはより低いMWフェノール−アルデヒドポリマーとブレンドすることができる。別の例は、フェノール−アルデヒドポリマーとブレンドされたPHSである。上記の種類のポリマーのいくつかのための好適な可塑剤の例は、ポリ(エチレン)グリコール、グリセリンエトキシレート、ジ(エチレングリコール)ジベンゾエート、およびジブチルフタレートなどのフタレート系可塑剤を含む。様々なポリマーおよびそれらの使用に関する詳細のためのいくつかの潜在的に好適な可塑剤は、次の参照文献:「Handbook of Plasticizers」、G.ウィピッチ(Wypych)編、オンタリオ州トロントのケムテック出版(ChemTec Publishing,Toronto,Ont.)2004年に見られる。
【0066】
層Aは、層Aの乾燥質量を基準にして、約0.5質量%〜約10質量%、およびより好ましくは約0.5質量%〜約6質量%の、層A内で約600〜約1200nmの吸収極大を特徴とする1種類以上の近赤外線染料を含む。好ましくは、近赤外線染料は、その吸収帯域が転写プロセスに用いられる露光レーザーの発光帯域と重なるように選択される。典型的に、露光レーザーは、近赤外線範囲の放射線を発する。好ましい種類の染料は、インドシアニン、多置換フタロシアニンおよび金属含有フタロシアニンを含むフタロシアニン、ならびにメロシアニンの群から選択されるシアニン化合物である。特に好ましい種類の近赤外線染料は、約830nmでの吸収を有するインドシアニン染料のものである。約830nmで吸収を有し、様々な溶媒および水への可溶性を有するいくつかの好適なインドシアニン染料は、H.W.サンド社(H.W.Sands Co.)および他の供給元から入手可能である。本発明のための好ましい近赤外線染料は、3H−インドリウム、2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−クロロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−、CAS番号[128433−68−1]を有するトリフルオロメタンスルホン酸との塩(1:1);2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、分子内塩、CAS番号[162411−28−1]を有する遊離酸;ならびに以下の式(I)および(II)とそれらの共鳴構造とに対応するインドレニン(indolenine)染料の群から選択される。
【化2】
【0067】
材料の好ましい染料レベルは、約0.2以上のフィルムODを生じることとなり、約0.5〜約1.5のODが好ましい。好ましいODに達するために、未充填の(unfilled)水性ラテックス系は、典型的に、約4〜6質量%のより高い染料充填量を必要とするであろう。未充填の溶液系は、典型的に、約0.5〜約2質量%のより低い染料充填量を必要とするであろう。
【0068】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、勾配染料層である2つ以上の層Aを含み、それぞれの勾配染料層は独立して約0.5〜約10質量%の乾燥質量%の近赤外線染料を特徴とし;ここで、少なくとも1つの勾配染料層は、より低い質量%の近赤外線染料を有し、少なくとも1つの勾配染料層は、より高い質量%の近赤外線染料を有し、そして近赤外線染料の前記より高い質量%は、近赤外線染料のより低い質量%の値より少なくとも20%高い値である。
【0069】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの層Aは、層Aの乾燥質量を基準にして約10〜約90質量%の高誘電率ナノ粒子画分をさらに含み、ナノ粒子画分は、約20を超える誘電率、および約5nm〜約500nmの平均粒径を有する。本明細書における高誘電率ナノ粒子画分は、約20以上、好ましくは約30以上、およびより好ましくは約100以上の誘電率を有するナノ粒子を指す。この実施形態を実施するための好ましい誘電性ポリマーは、上述したように、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリル(コ)ポリマー、およびそれらの組み合わせ;ならびにフェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーの群から選択される。この実施形態を実施するための好ましい高誘電率ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウムおよび二酸化チタンの群から選択される。
【0070】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、勾配ナノ粒子層である2つ以上の層Aを含み、それぞれの勾配ナノ粒子層は独立して約10〜約90質量%の乾燥質量%の高誘電率ナノ粒子画分を特徴とし;ここで、少なくとも1つの勾配ナノ粒子層は、より低い質量%の高誘電率ナノ粒子画分を有し、少なくとも1つの勾配ナノ粒子層は、より高い質量%の高誘電率ナノ粒子画分を有し、そして前記より高い質量%の高誘電率ナノ粒子画分は、より低い質量%の値より少なくとも20%高い値である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、約1014Ω・cm以上の抵抗率を特徴とする、1種類以上の誘電性ポリマーを含む、本明細書で層Bと呼ばれる他の誘電体層をさらに含む。誘電性ポリマーの広範なリストは、国際公開第03/052841号パンフレットおよび国際公開第06/024012号パンフレットに見られる。層Bのための好ましい誘電性ポリマーは、上述したように、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクリルおよびスチレンポリマー;部分的に水素化されたポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ならびに、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレンと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレンとのコポリマー(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)からなる群から選択されるヘテロ原子−置換されたスチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせ;ならびにポリ(酢酸ビニル)からなる群から選択される。この実施形態は、上で開示された他の実施形態を含めてさらに実施することができる。層Bのための好ましい任意の添加剤としては、カーボンブラックおよび高誘電率ナノ粒子が挙げられ、この実施形態を実施するための好ましい高誘電率ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウムおよび二酸化チタンからなる群から選択される。
【0072】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、抵抗率が1014Ω・cm以上であり、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換スチレンからなる群から選択されアルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるモノマーを少なくとも約85質量%含むアクリルラテックス、スチレンラテックス、およびスチレン−アクリルラテックスからなる群から選択される1種類以上の誘電性ポリマーを含む層Cとして本明細書で呼ばれる少なくとも1つの材料の層を含む。この実施形態は前述の他の実施形態を含めてさらに実施することができる。一実施形態においては、層Cは、層Cの乾燥質量の最大約90質量%の高誘電率ナノ粒子画分をさらに含み、このナノ粒子画分は、誘電率が約20を超え、平均粒度が約5nm〜約500nmである。層Cに好ましい任意選択の添加剤としては、カーボンブラックおよび高誘電率誘電体ナノ粒子が挙げられ、この実施形態を実施するのに好ましい高誘電率誘電体ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、および二酸化チタンの群から選択される。
【0073】
層A、任意選択の層B、および層C中に使用される誘電性ポリマーのTgは、約−30〜約150℃の範囲であり、好ましくは約20〜約90℃の範囲であり、最も好ましくは約30〜約70℃の範囲である。典型的には、充填剤の添加によって、より低いTgのポリマーの利用が可能となり、可塑剤の添加によって、より高いTgのポリマーの利用が可能となる。誘電体層自体、ならびに層A、層B、および層Cなどの誘電体層中に使用される層の好ましいTgは約30〜約100℃であり、好ましくは約40〜約85℃であり、最も好ましくは約45〜約65℃である。
【0074】
層A、層Bおよび層Cには、充填剤、界面活性剤、消泡剤、分散剤および粉砕助剤などの添加剤が含まれてもよい。この目的のために好適な多数の界面活性剤、消泡剤、分散剤および粉砕助剤が利用可能である。選択は、多くの場合、観察されるコーティングおよび分散体の品質ならびに熱転写プロセスにおける、誘電体層の、他の層への所望の付着に基づくこととなる。特定の実施形態では、界面活性剤は、シロキシ−、フルオリル−、アルキル−およびアルキニル−置換された界面活性剤を含む。これらとしては、ビック(Byk)(登録商標)(ビック・ケミー(Byk Chemie))、ゾニル(Zonyl)(登録商標)(デュポン(DuPont))、トリトン(Triton)(登録商標)(ダウ(Dow))、サーフィノール(Surfynol)(登録商標)(エア・プロダクツ(Air Products))およびダイノール(Dynol)(登録商標)(エア・プロダクツ(Air Products))界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤は、ビック(Byk)(登録商標)345、346および348ならびにゾニル(Zonyl)(登録商標)FSOおよびFSNである。特定の実施形態では、消泡剤はアルキルおよびアルキニル官能基を含み、消泡剤としてはサーフィノール(Surfynol)(登録商標)消泡剤が挙げられる。特定の実施形態では、分散剤は官能化されたポリマー、オリゴマーおよびモノマーを含み、分散剤としては、サーフィノール(Surfynol)(登録商標)およびディスパービック(Disperbyk)(登録商標)分散剤が挙げられる。
【0075】
誘電体キャリア層として有用な他の誘電性ポリマーとしては、前述の非伝導性ポリマーAおよび非伝導性ポリマーBが挙げられる。
【0076】
誘電体層の、ならびに層A、層Bおよび層Cを含む、誘電体層に用いられる層の好ましい厚さは、約0.05〜約10ミクロン、好ましくは約0.1〜約5ミクロン、およびより好ましくは約0.2〜約3ミクロンである。
【0077】
光吸収性顔料が充填された誘電性ポリマーは、反射防止層として有用となる。銀などの伝導性ナノ粒子層の下または表面上のキャリア層または追加の転写層として使用される場合、このような層は特に有用である。この目的に好ましい顔料はカーボンブラックである。好ましい組成は約1質量%〜約90質量%のカーボンブラックである。
【0078】
本明細書において前述した米国特許第6645681号明細書の光減衰剤は、ベースフィルムの代わりまたはこれに加えてキャリア層中に混入することもできる。この光減衰剤の性質は、使用される個別のレーザーおよび印刷システムに依存する。ポリマー系キャリア層の減衰剤として有用な染料としては、オイル・ブルー(Oil Blue)Nおよびメチレン・ブルー(Methylene Blue)が挙げられる。減衰剤は、熱画像形成可能なキャリア層の成分の約0.1〜約15質量%を構成することができる。
【0079】
ナノ粒子の分散液
本発明のドナー要素は、不揮発性画分であって、不揮発性画分の質量を基準にして約65〜100質量%の使用量のナノ粒子、および場合により最大約35質量%の使用量の分散剤とを含有する不揮発性画分と;揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液から一部は作製される。
【0080】
「不揮発性画分」は、必要に応じて熱画像形成ドナーの加熱または乾燥を含むこともできる熱画像形成ドナーの製造後に転写層内に残留するナノ粒子および分散剤を含有する画分を意味する。
【0081】
「分散剤」は、ナノ粒子のキャリアまたはマトリックス媒体として使用される不揮発性の有機材料および無機材料を意味する。分散剤は、ポリマー、オリゴマー、小分子、バインダー、表面処理剤、可塑剤、充填剤、消泡剤などの加工助剤、界面活性剤、安定剤、コーティング助剤、顔料、IR染料などの染料などの1種類以上の成分で構成される。分散剤は、ナノ粒子が均一に分散しコーティングされるようなナノ粒子の分散を可能にすること;ならびに転写特性への寄与、最も顕著には熱転写プロセス中のナノ粒子転写層のキャリア層および熱画像形成レシーバーへの相対的な付着力への寄与などのいくつかの機能を有する。分散剤は、転写層の機能特性にも寄与することができる。たとえば、分散剤は誘電体、半導体、または導体であってよい。
【0082】
本発明の一実施形態においては、分散剤は、ポリマーバインダーの約20%以上、より好ましくは約40%以上から構成される。分散剤の好ましい種類の1つとしては、前述の参考文献の国際公開第94/21701号パンフレットに記載されるようなグラフトコポリマーAが挙げられる。本発明の方法における分散剤として有用な他の好ましい(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーとしては、「キャリア層」と題される項における前述の定義のような伝導性ポリマーA、非伝導性ポリマーA、非伝導性ポリマーB、半導体A、および層Aに関して説明した誘電性ポリマーなどの導体層、半導体層、および誘電体層として前述したものが挙げられる。ナノ粒子転写層が機能性導体である場合には、伝導性ポリマーAから選択される伝導性ポリマーがより好ましい。ナノ粒子転写層が機能性半導体である場合には、半導体Aから選択される半導体分散剤がより好ましい。ナノ粒子転写層が機能性誘電体である場合には、層Aに関して説明した誘電性ポリマーから選択される誘電性分散剤がより好ましい。
【0083】
分散剤または分散剤成分として有用なより低分子量のオリゴマーおよび小分子としては、界面活性剤および消泡剤が挙げられる。好適な界面活性剤および消泡剤としては、キャリア層に関して前述したものが挙げられる。
【0084】
好ましくはナノ粒子の使用量は、不揮発性画分の約65〜100質量%であり、より好ましくは、不揮発性画分の少なくとも70質量%、80質量%、90質量%、および98質量%である。しかし、任意の特定の場合の使用量は、ナノ粒子、キャリア層、および熱画像形成レシーバーの性質に依存する。たとえば、実際には、銀ナノ粒子は、使用量が約65〜約93質量%であり、平均最長寸法が約5nm〜約1500nm、および分散剤画分が7.0〜約35質量%である場合に最も良好に使用されることが分かった。好ましくは銀ナノ粒子は85〜約93質量%の使用量で使用される。
【0085】
「揮発性キャリア流体」は、熱画像形成ドナーの製造中、追加の加熱を伴うが、必要に応じて感熱印刷プロセスの前に蒸発する分散液の画分を本発明者らは意味している。典型的には揮発性キャリア流体は、水、有機溶媒、気体材料、またはそれらの一部の組み合わせである。揮発性キャリア流体は、ナノ粒子、および使用されるあらゆる任意選択の分散剤と適合性となるように選択される。臨界点の圧力および温度よりも上にある超臨界流体は、揮発性キャリア流体として機能することができる。好ましい超臨界流体の1つは二酸化炭素である。
【0086】
追加の転写層
ナノ粒子層に加えて1つ以上の転写層を熱画像形成ドナーに適用することができる。追加の転写層は、ベースフィルムとは反対側のナノ粒子層の面として本明細書において定義されるナノ粒子層の表面上にあることができ、および/またはキャリア層は2つ以上の転写層を含むことができる。追加の転写層は、1つ以上の導体層、半導体層、または誘電体層を含むことができる。
【0087】
熱画像形成ドナーの作製
ナノ粒子層を含む熱画像形成ドナーは、熱画像形成基体上のキャリア層の自由表面上に分散液を適用し、そのキャリア流体を揮発させることによって作製される。分散液の適用は、ナノ粒子の均一層が得られる、または必要に応じてナノ粒子のパターニングされた層または不均一層が得られるあらゆる方法によって行うことができる。ロッドコーティング、押出コーティング、グラビアコーティング、およびスピンコーティングなどのコーティング、吹き付け、印刷、ブレーディング、へら付けを使用することができる。コーティングおよび吹き付けは、均一なナノ粒子層を得るために好ましい分散液適用方法である。多くの市販のコーティング機、コーティングロッドおよびナイフブレードなどの装置、ならびに印刷機を使用して分散液を適用することができる。キャリア流体を蒸発させるとナノ粒子層が得られる。ナノ粒子層は、加熱および減圧などのあらゆる従来の乾燥方法によって乾燥させることができる。
【0088】
保護可剥性カバー層
場合により、熱転写ドナーの最外層の上に保護可剥性カバー層が存在してもよい。このカバー層は、下にある転写層を保護し、容易に除去可能である。図1Cは、カバー層の存在を示す熱画像形成ドナー100の断面図である。熱画像形成ドナー100は、フィルム102、キャリア層104、ナノ粒子層106、および可剥性カバー層112を含む。好ましいカバーシートの1つはポリエチレンフィルムである。
【0089】
熱画像形成レシーバー
図2Aは、本発明の一実施形態による熱画像形成レシーバーの断面図である。熱画像形成レシーバー200は、レシーバーベースフィルム202、および任意選択の画像受容層204を含む。レシーバーベースフィルム202は、熱画像形成ドナーのベースフィルムに関して規定した寸法安定性のシート材料を含む。さらに、レシーバーベースフィルムは、不透明材料であってよく、たとえば、二酸化チタンなどの白色顔料が充填されたポリエチレンテレフタレート、アイボリー紙、またはタイベック(Tyvek)(登録商標)スパンボンドポリオレフィンなどの合成紙などであってよい。シート材料はガラスであってもよい。好ましいレシーバー用ベースフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミド、およびガラスである。
【0090】
任意選択の画像受容層204は、種々の転写層への熱画像形成レシーバー200の付着を促進する。好適な画像受容層204は、キャリア層の説明において前述したあらゆる(コ)ポリマー/コ(オリゴマー)/樹脂などの多様なポリマーを含む。レシーバー層の典型的なポリマーは、(メタ)アクリレートホモポリマーおよびコポリマー、(メタ)アクリレートブロックコポリマー、ならびにスチレン等の他の種類のコモノマーを含有する(メタ)アクリレートコポリマーなどの(メタ)アクリル系ポリマーである。本発明において好ましい画像受容層は、前出の定義のラテックスBである。レシーバー要素は、レシーバー支持体と画像受容層との間に、剥離層、クッション層、および接着層等の1つ以上の追加層を場合により含むことができる。本発明における使用に好適な受容要素は、米国特許第5,565,301号明細書において転写要素として開示され、国際公開第03/099574号パンフレットにおいてレシーバー要素として開示されており、両文献は参照として本明細書に援用される。別のレシーバー要素が米国特許第5,534,387号明細書に開示されており、この記載内容が参照として本明細書に援用される。本発明において好ましいクッション層は、エチレン酢酸ビニルコポリマー(エルバックス(Elvax)(登録商標)、デュポン(DuPont))である。レシーバー表面を粗面化する方法が国際公開第03/099574号パンフレットに記載されている。本発明における好ましい粗面化方法の1つは、シート、典型的には圧力及び熱の存在下で粗面化されたシートにレシーバー表面を接触させることである。
【0091】
接触
本発明の熱画像形成ドナーは、熱画像形成レシーバーに接触させられる。この接触は、ドナーのナノ粒子層と、またはナノ粒子層を覆うあらゆる任意選択層と行うことができる。「接触」とは、ドナーがレシーバーと非常に接近し、好ましくは数ミクロンの範囲内となることを意味する。あらかじめ印刷された層、繊維、または粒子などによって、ドナーとレシーバーとの間の間隙を制御するスペーサーとして機能させて、レシーバーをドナーから偏らせることができる。真空および/または圧力を使用して、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いに保持することができる。一代替法として、組立体の周囲部分で層を溶融させることによって、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いに保持することができる。さらなる一代替法として、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いにテープで留め、画像形成装置にテープで留めることができる。ピン/締め付けシステムを使用することもできる。さらに別の一代替法として、ドナー要素をレシーバー要素に積層することができる。ドナー要素100およびレシーバー要素200が可撓性である場合には、それらの組立体を、レーザー画像形成に有用なドラム上に好都合に取り付けることができる。
【0092】
転写
熱転写は、図2Bに示すようなレーザー媒介転写方法によって行うことができる。一実施形態においては、ドナー要素100とレシーバー要素200との組立体が、好ましくはレーザー放射線(R)の形態である熱に、基体上に形成される所望のパターンの画像の曝露パターンで選択的に曝露される。レーザー放射線またはレーザービーム(R)、104と、存在する場合には108との間の界面付近に焦点が合わされ、その他の場合には104と102との間の界面付近に焦点が合わされる。ナノ粒子およびキャリア層をレシーバーに転写するのに十分な放射線が照射される。
【0093】
熱転写ドナー要素を加熱するために種々の発光源を使用することができる。類似の技術(たとえば、マスクを介した露光)の場合は、高出力光源(たとえば、キセノンフラッシュランプおよびレーザー)が有用である。デジタル画像形成技術の場合は、赤外レーザー、可視レーザー、および紫外レーザーが特に有用である。特に、ドナー要素の構造、転写層材料、熱転写の方式、および他のそのような要因に基づいて、他の光源および照射条件が好適となりうる。
【0094】
放射線は、好ましくはベースフィルム102の裏側、すなわち、ナノ粒子層を含有しない側から照射される。レーザー放射線は、好ましくは最大約600mJ/cm2、より好ましくは約75〜440mJ/cm2のレーザーフルエンスで照射される。約350nm〜約1500nmの動作波長のレーザーが好ましい。約750〜約870nm、および最高1200nmなどの領域で発光するダイオードレーザーが特に好都合であり、これらは小型、低コスト、安定性、信頼性、耐久性、および変調の容易さに関して実質的に好都合となる。このようなレーザーは、たとえば、スペクトラ・ダイオード・ラボラトリーズ(Spectra Diode Laboratories)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA))より入手可能である。レシーバーに画像を適用するために使用される装置の1つは、クレオ・スペクトラム・トレンドセッター(Creo Spectrum Trendsetter)3244Fであり、これは830nm付近で発光するレーザーを使用している。この装置は空間光変調器(Spatial Light Modulator)を利用して、約830nmのレーザーダイオードアレイからの5〜50ワットの出力の分割および変調を行っている。関連する光学素子によって、画像形成可能な要素上にこの光の焦点が合わせられる。これによって、0.1〜30ワットの画像形成光がドナー要素上に生成して、50〜240の個別のビームの配列として集中し、それぞれ約10×10〜2×10ミクロンのスポット中に10〜200mWの光を有する。米国特許第4,743,091号明細書に開示されるようにスポットごとに個別のレーザーを使用して、類似の露光を行うこともできる。この場合、各レーザーは、780〜870nmで電気的に変調された50〜300mWの光を発する。他の選択肢としては、500〜3000mWを放出するファイバー結合レーザーが挙げられ、そのそれぞれが変調され媒体上に焦点が合わせられる。このようなレーザーは、アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ)のオプト・パワー(Opto Power)から入手することができる。
【0095】
熱画像形成に好適なレーザーとしては、たとえば、高出力(>90mW)シングルモードレーザーダイオード、ファイバー結合レーザーダイオード、およびダイオード励起固体レーザー(たとえば、Nd:YAGおよびNd:YLF)が挙げられる。レーザー露光滞留時間は、広範囲で変動させることができ、たとえば、百分の数マイクロ秒〜数十マイクロ秒以上とすることができ、レーザーフルエンスは、たとえば約0.01〜約5J/cm2以上の範囲内とすることができる。
【0096】
ナノ粒子層の少なくとも一部およびキャリア層の対応する近接部分が、熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写されることで、積層順で、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層が得られる。用語「キャリア層の対応する近接部分とともに」は、レシーバー上へのナノ粒子層の移動が、ナノ粒子層に近接して存在する露出キャリア層のレシーバー上への同時で対応した移動を含むことを意味する。キャリア層が、ナノ粒子層の表面上に存在する2つ以上の層または追加の転写層を含む実施形態においては、これらの層も同様に転写される。これらの部分は同じ領域である場合もあるし、実質的に同じ領域である場合もある。本発明者らは、後者が、これらの部分が正確に厳密ではなく1:1対応ではないことを意味している。実質的に同一とは、本発明が、ナノチューブなどのナノ粒子が、パターニングされたキャリア層の周囲を超えて付着しうる場合を含むことを意味している。本発明は、熱画像の周囲におけるキャリア層が完全に無傷では転写されない場合も含んでおり、これは、熱処理の周囲でのばらつき、またはその他の理由によるものと思われる。
【0097】
露光後、ドナー要素100およびレシーバー要素200は、図3Aおよび3Bに示されるように分離されて、ナノ粒子層106およびキャリア層104の転写されなかった部分がドナー要素100上に残り、ナノ粒子層106およびキャリア層104の画像形成された部分はレシーバー要素200上に残る。通常、ドナーおよびレシーバーの分離は、これら2つの要素を単純に剥離して引き離すことによって行われる。これは、一般には必要とする剥離力は非常に小さく、ドナー要素をレシーバー要素から単純に分離することで行われる。これはあらゆる従来の分離技術を使用して行うことができ、手作業または自動的に行うことができる。
【0098】
使用済みドナー要素(ネガ画像)および画像形成されたレシーバー要素(ポジ画像)のいずれかまたは両方が、機能性物体として有用となりうる。さらに、使用済みドナー要素および画像形成されたレシーバー要素のいずれかまたは両方を永久的基体として使用することができ、好ましくは積層によって、使用済みのドナーまたはレシーバーから画像を永久的基体に転写することができる。
【0099】
通常、転写層の転写された部分は、レーザー放射線に露光した転写層部分に対応する。場合によっては、ドナー要素およびレシーバー要素の性質、ならびに転写プロセスパラメーターに依存するが、ドナー要素100およびレシーバー要素200が分離されるときに、レシーバー要素が、1つ以上の転写層の露光部分と未露光部分との両方を含む。熱画像形成レシーバーの表面上に1つ以上の熱転写層の露光部分と未露光部分とを含む、熱画像形成レシーバー上のパターンの解像度を向上させる方法の1つは:(a)熱画像形成レシーバーの前記表面を接着面に接触させて、一時的な積層体を得るステップと;(b)一時的な積層体から前記接着面を除去して、1つ以上の転写層の前記未露光部分が実質的に存在しない表面を有する熱画像形成レシーバーを得るステップとを含む。この方法を実施するのに好適な接着面は、市販の接着テープであり、たとえば、3Mカンパニー(3M company)より入手可能なスコッチ(Scotch)(登録商標)ブランドのテープである。粘着性ローラー、たとえば、SDIのほこり除去システム−1(赤)(Dust Removal System−1(red))(システムズ・ディビジョン社(Systems Division,Inc.)、アーバイン(Irvine),CA 92618−2005)の形態で入手可能な中間粘着性ローラーが上記方法に好適な接着面である。前述のLTHC層として使用されるクロムフィルムも、非常に穏やかな条件下で転写層の未露光部分を除去するための有用な低粘着性接着層となる。
【0100】
本発明の方法は、パターニングされたキャリア層をレシーバー要素200から除去するステップを含んでいる。図3Cは、レシーバーシートが接着層を含み、キャリア層104が除去されている実施形態を示している。前述のようにキャリア層をレシーバーから除去するために剥離またはブローイングを使用することができる。粘着シートまたは静電シートを使用して、この除去プロセスを補助することができる。
【0101】
本発明の方法は、パターニングされたナノ粒子層上にパターニングされた層を配置するステップをさらに含むことができる。この後者の方法は、2つの転写層104Aおよび104Bを含むキャリア層を使用して、図4Aに示されるようにナノ粒子層の転写と同時に行うことができる。熱転写ステップにより得られる対応するレシーバー層(図4B)は、積層順で、前記レシーバーと、パターニングされたナノ粒子層と、パターニングされた転写層104Bおよび104Aを含むパターニングされたキャリア層とを含む。前述したようにパターニングされた転写層104Aを除去して、図4Cに示されるようなパターニングされたナノ粒子層およびパターニングされた転写層104Bを得ることができる。あるいは、独立したステップにおいて、1つ以上のパターニングされた層を、パターニングされたナノ粒子層に熱転写することもできる。好ましいポリマー層としては、導体、半導体、および誘電体の群から選択されるポリマー層が挙げられる。
【0102】
図5Aは、本発明の別の一実施形態による熱画像形成レシーバー200の断面図である。熱画像形成レシーバー200は、ベースフィルム202および少なくとも1つのパターニングされた層205を含む。パターニングされた層205は、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層からなる群から選択される。図5Bは、本発明のさらに別の一実施形態による熱画像形成レシーバー202の断面図である。熱画像形成レシーバー200は、ベースフィルム202、ベースフィルム202上のパターニングされたゲート導体層206、ゲート導体層206上のパターニングされた誘電体層208、および誘電体層208上のパターニングされたソース/ドレイン導体層210を含む。種々の組成物の物品を上記方法により作製することができる。図3B、3C、4B、4C、6A、および6Bは、電子用途のこのような数種類の組成物を示している。
【0103】
少なくとも部分的に本発明を使用することによって形成可能な種々の電気素子としては、電子回路、抵抗、コンデンサ、ダイオード、整流器、エレクトロルミネッセンスランプ、記憶素子、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、ユニジャンクショントランジスタ、薄膜トランジスタ、金属−絶縁体−半導体スタック、有機トランジスタ、電荷結合素子、絶縁体−金属−絶縁体スタック、有機導体−金属−有機導体スタック、集積回路、光検出器、レーザー、レンズ、導波管、格子、ホログラフィック素子、フィルタ(たとえば、アド−ドロップフィルタ、利得平坦化フィルタ、カットオフフィルタなど)、ミラー、スプリッタ、カプラ、コンバイナ、変調器、センサー(たとえば、エバネッセントセンサー、位相変調センサー、干渉センサーなど)、光キャビティ、圧電デバイス、強誘電性デバイス、薄膜電池、またはそれらの組み合わせ、たとえば光ディスプレイ用アクティブマトリックスアレイとしての電界効果トランジスタおよび有機エレクトロルミネッセンスランプが挙げられる。
【0104】
図6Aは、本発明の別の一実施形態により作製される組成物の断面図である。この組成物は、ベースフィルム202および少なくとも1つのパターニングされた層206を含む熱画像形成レシーバー、ならびに熱画像形成レシーバー200の表面上に分散したパターニングされたナノ粒子層106およびキャリア層104を含む。パターニングされた層206は、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層を含む群から選択される材料を含む。パターニングされた熱画像形成性キャリア層104は、場合により、パターニングされたナノ粒子層106の表面から除去することができる。
【0105】
図6Bは、本発明のさらに別の一実施形態により作製される組成物の断面図である。この組成物は、ベースフィルム202と、ベースフィルム202上にパターニングされたゲート導体206層とを含む熱画像形成レシーバーを含む。熱画像形成レシーバーは、ゲート導体層206上にパターニングされた誘電体層208と、誘電体層208上にパターニングされたソース/ドレイン導体層210と、パターニングされたソース/ドレイン導体層210上に分布してパターニングされたナノ粒子層106とをさらに含む。キャリア層104は、ナノ粒子層106の表面から除去されている。この組成物の種々の層の配列は、種々の実施形態で変動してもよい。
【0106】
本発明の別の一実施形態において、熱画像形成ドナーは、本明細書においてナノ粒子層の表面として定義されるベースフィルムとは反対側のナノ粒子層の面上に配置された1つ以上の追加の転写層を含む。本発明の方法に従って、1つ以上の追加の転写層を熱画像形成レシーバーに接触させて、熱転写プロセスが進められる。転写は、1つ以上の前記追加の転写層の対応する近接部分を熱画像形成レシーバー上に転写することで、積層順で前記レシーバー上に、パターニングされた追加の転写層、パターニングされたナノ粒子層、およびパターニングされたキャリア層を得ることを含む。
【0107】
本発明の別の一実施形態は、2つ以上の転写層を含むキャリア層を含む。その熱転写プロセスは、2つ以上の転写層の対応する近接部分を熱画像形成レシーバー上に転写することで、積層順で、前記レシーバーと、パターニングされたナノ粒子層と、2つ以上の転写層を含むパターニングされたキャリア層とを得ることを含む。好ましい多層キャリア層の1つは、誘電体転写層の表面上に半導体転写層を含む。
【0108】
追加の転写層は、好ましくは導体層、半導体層、および誘電体層からなる群から選択され、好ましい材料はそれぞれのキャリア層に関して前述した材料である。より具体的には、好ましい追加の転写層としては、伝導性ナノ粒子層が転写される場合には伝導層および誘電体層が挙げられ、半導体ナノ粒子層が転写される場合には半導体層および誘電体層が挙げられる。別の好ましい追加の転写層は、接着層としても機能する誘電体層である。これによって、パターニングされたナノ粒子層を熱画像形成レシーバーに強く付着させることができ、ナノ粒子層を損傷することなくパターニングされたキャリア層を後に除去することができる。
【0109】
本発明によって、導体、半導体、および誘電体などのさまざまな種類の基体上にナノ粒子を一段階で堆積することが可能となる。本発明の堆積方法は、乾式であるため、既に堆積されている場合があるあらゆる層に対する溶媒の不適合性の問題が発生しない。本発明の方法は、所望の構成でナノ粒子を配置するために、あらゆる予備パターニングステップ、およびあらゆる他の領域が選択された表面処理を必要としない。
【0110】
以下の実施例によって本発明をさらに明確にする。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、説明のみを目的として提供しているものであることを理解されたい。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適合させるために本発明の種々の変更および修正を行うことができる。
【0111】
材料
特に示されない限り、化学物質を、さらに精製せずに、入手したままの状態で使用した。溶媒は、アルドリッチ(Aldrich)およびVWRから購入され、試薬グレードの純度またはそれ以上の純度のものであり;入手可能な場合は、HPLCグレードおよび好ましくは電子グレードの溶媒を用いた。水は、脱イオン水、アルドリッチ(Aldrich)製のHPLCグレードの水、または精製水のいずれかであった。ポリマー、可塑剤、赤外線染料、および界面活性剤を、本明細書に挙げた供給元から入手するかまたはアルドリッチ(Aldrich)から購入した。カーボンブラック分散体などの顔料を、ペン・カラー社(Penn Color,Inc.)(ペンシルベニア州ドイルスタウン(Doylestown,PA))から入手した。銀ナノ粒子は、フェロ社(Ferro Co.)の電子材料事業部(Electronic Material Systems)(ウルトラファイン・フェロ(Ultrafine Ferro)RD&S 7000−35Ag粉末:粒度d50=220nmおよびd90=430nm)より購入した。すべての原材料ポリエステルフィルムは、デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))より入手した。
【0112】
ドナー基体
Cr LTHC層
ポリエチレンテレフタレート(PET、特に明記しない限り全ての実施例において厚さ50ミクロン)のベースフィルムを、バージニア州マーチンズビル(Matinsville,VA)のCPフィルム(CP Films)によって真空蒸着室においてクロム金属でコーティングした。光減衰剤(670nmの吸収剤)を用いておよび用いずにPETフィルムに金属化を行った。クロム層を50%Tおよび40%Tの両方でコーティングした。この実施例では、これらのドナーフィルムは、光減衰剤を用いずに金属化されたフィルムについては、40%T Cr PETドナー基体および50%T Cr PETドナー基体と呼ぶこととする。ベースフィルムに670nmの吸収剤を組み込んだドナーフィルムは、40%T Cr青色PETドナー基体および50%T Cr青色PETドナー基体と呼ぶこととする。
【0113】
有機LTHC層
有機LTHC層を、上記のPCT/US05/38009号明細書の実施例の配合Lに報告されるように調製した。
【0114】
LTHCコーティング配合物を以下の材料から調製した:(i)脱塩水:894g;(ii)ジメチルアミノエタノール:5g;(iii)ハンプフォード(Hampford)染料822(ハンプフォード・リサーチ(Hampford Research);配合物はSDA 4927に該当する):10g;(iv)ポリエステルバインダー(アメルテック・ポリエステル・クリア(Amertech Polyester Clear);アメリカン・インク・アンド・コーティング社(American Inks and Coatings Corp);ペンシルベニア州バレーフォージ(Valley Forge;PA)):65gの30%水溶液;(v)テゴウェット(TegoWet)(商標)251(4)(ポリエーテル変性ポリシロキサンコポリマー、ゴールドシュミット(Goldschmidt)):2.5g;(vi)ジメチルアミノエタノールエチルリン酸カリウム:14gの11.5%水溶液[この11.5%水溶液を、3部の水および0.5部のエチルリン酸(ethyl acid phosphate)(ストーファ・ケミカル社(Stauffer Chemical Company)、コネチカット州ウェストポート(Westport,CT):ルーブリゾール(Lubrizol)、オハイオ州ウィクリフ(Wickliffe,OH))ならびに十分な45%水酸化カリウム水溶液を組み合わせて4.5のpHを得た後、十分なジメチルアミノエタノールを加えて7.5のpHを得て、最後に水で希釈して、水を含まない化合物の11.5相対質量パーセントの、合計5部の最終水溶液を得ることによって調製した];(vii)架橋剤サイメル(Cymel)(商標)350(高度にメチル化された、モノマーメラミンホルムアルデヒド樹脂、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries Inc.)、ニュージャージー州ウエストパターソン(West Paterson,NJ)):10gの20%溶液;ならびに(viii)アンモニウムp−トルエンスルホン酸:2gの10%水溶液。
【0115】
成分(ii)および(iii)を水に加え、最大で24時間攪拌させてから、他の成分を示した順序で加えた。この配合物を濾過する必要はない。その配合物をインラインコーティング(in−line coating)技術で以下のように適用した:ポリマーベースフィルム組成物を溶融押し出しし、冷却された回転ドラム上にキャスティングし、75℃の温度でその元の寸法の約3倍になるまで押し出し方向に延伸した。次に、冷却された延伸フィルムの1つの側部をLTHCコーティング組成物でコーティングして、20〜30μmのウェットコーティング厚さを得た。直接グラビアコーティングシステムを用いて、コーティングをフィルムウェブに適用した。60QCHグラビアロール(パマルコ(Pamarco)によって供給される)を溶液に通して回転させて、溶液がグラビアロール表面を覆うようにする。グラビアロールを、フィルムウェブに対して反対方向に回転させ、1つの接触点でウェブにコーティングを適用する。コーティングされたフィルムを、100〜110℃の温度で乾燥器(stenter oven)内に通し、ここで、フィルムを乾燥させ、その元の寸法の約3倍になるまで横方向に延伸した。二軸延伸コーティングフィルムを、従来の手段によって約190℃の温度でヒートセットした。次に、コーティングポリエステルフィルムを、ロールに巻き付ける。最終的なフィルムの全厚は50μmであり;転写補助コーティング層の乾燥厚さは0.07μmである。PET支持層は、ディスパース・ブルー(Disperse Blue)60またはソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料のいずれかを含有し、基体層のポリマーの、典型的に0.2質量%〜0.5質量%の最終染料濃度を得た。ディスパース・ブルー(Disperse Blue)60染料(0.26質量%)を含有するポリマー組成物は、670nmで0.6±0.1の吸収度、および830nmで<0.08の吸収度を有した。ソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料(0.40質量%)を含有するポリマー組成物は、670nmで1.2の吸収度、および830nmで<0.08の吸収度を有した。これらのドナー基体を、有機LTHC青色PETドナー基体および有機LTHCグリーン(Green)PETドナー基体と本明細書で呼ぶこととする。
【0116】
コーティング
ドナー要素およびレシーバー要素上への転写層およびその他の層のコーティングは、R.D.スペシャルティーズ社(R.D.Specialties,Inc.)(RDS;ニューヨーク州ウェブスター(Webster,New York))より購入した直径0.5インチのコーティングロッドを巻き付けて形成されたステンレス鋼と、ブッシュマン社(Buschman Corporation)(オハイオ州クリーブランド(Cleveland,Ohio))より購入したCNプロファイル(CN profile)を有する直径0.625インチのロッドから形成されたクロムめっきステンレス鋼とを使用して行った。表面の粒子汚染を除去するために、コーティングの直前にドナーの自由表面を加圧窒素流で洗浄する。コーティングは、平滑なガラス表面上に手で塗布するか、あるいはE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(DuPont De Nemours Inc.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))製造のウォータープルーフ(WaterProof)(登録商標)カラー・バーサティリティ(Color Versatility)コーティングシステム(CVコーター)またはスロットダイコーターのいずれかを使用して機械でコーティングした。
【0117】
コーティングは、約68℃の平均温度および約40〜50%の平均相対湿度の制御された温度/湿度環境において保管した。
【0118】
導体の電気特性評価
既知の形状の線の抵抗を測定することによって、導体線のシート抵抗および抵抗率を求めた。カスケード・マイクロテック(Cascade MicroTech)(オレゴン州ビーバートン(Beaverton,Oregon))プローブステーションモデルアレッシ(Alessi)REL−6100および半導体パラメーター分析器のアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,California))モデル4155Cを使用して、線に電流を印加し、線の中の既知の2箇所の電圧降下を測定した。典型的には、1×105〜−1×105Aで電流を掃引して、mVからVの範囲内で電圧を求めた。I−V曲線の勾配および線の形状を使用して抵抗、シート抵抗、および抵抗率を求めた。これらの値から、伝導率およびコンダクタンスを計算することができる。
【0119】
熱画像形成装置およびドナーの取付け
クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800(クレオ/コダック(Creo/Kodak)、カナダのバンクーバー(Vancouver,Canada))を用いた。クレオ・トレンドセッター(Creo trendsetter)(登録商標)800は、5080dpi分解能で830nmの波長で12.5ワットの最大平均動作電力を有する改造されたサーマル(Thermal)1.7ヘッド(Head)を用いた改造されたドラム型の画像形成器であった。この800トレンドセッター(Trendsetter)を、平均温度が約68℃および平均相対湿度が約40〜50%の、制御された温度/湿度環境で動作させた。それぞれの印刷装置について、熱画像形成レシーバーの部分をドラム上に位置決めした。ドナー要素の、転写層でコーティングされた側がレシーバーの自由面に面するように、熱画像形成ドナーを取り付けた。画像形成組立体(assemblage)を、ドナーフィルム基部を通して裏側から露光した。真空ホールドダウン(vacuum hold down)を用いて、ドラムに機械的に固定された標準的なプラスチックまたは金属担体プレートにフィルムを取り付けた。クレオ・トレンドセッター(Creo trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッターを用いたある実験では、通常のドナーおよびレシーバーのサイズに適合するようにドラム上に直接機械加工された吸引孔を有する非標準ドラムを、標準的なドラム/担体プレート組立体の代わりとして用いた。約600mmのHg減圧によって、ドナーとレシーバーとを接触させた。レーザー出力は、コンピュータの制御下で、所望の画像形成パターンを形成するためのものであった。レーザー出力およびドラム速度は制御可能であり、受像表面上に転写される画像の目視検査によって判断される画像品質を最適化するために、それを繰返し調節した。
【0120】
ラテックスバインダーの作製
特定のドナーおよびレシーバー要素の作製に用いたラテックスバインダーは、国際公開第03/099574号パンフレット(材料が表1に報告されている)の手順に従って調製した。組成物は、表2に報告され、国際公開第03/099574号パンフレットに報告される分析方法を特徴としていた。モノマーおよび開始剤は、市販されており(アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))、これを入手したままの状態で使用した。界面活性剤は、ポリステップ(Polystep)(登録商標)B−7という、ラウリル硫酸アンモニウムの29質量%水溶液(ステパン社(Stepan Co.)、イリノイ州ノースフィールド(Northfield,IL))であった。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
レシーバー
表面処理した5ミルのメリネックス(Melinex)ST504(デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films))を入手したときの状態で使用した。界面活性剤としてゾニル(Zonyl)(登録商標)FSAを含有するアクリルラテックスポリマー分散体を、4ミルのメリネックス(Melinex)(登録商標)574ベースフィルム(デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films))上にスロットダイコーティングすることによって、国際公開第03/099574号パンフレットの手順(可撓性レシーバーFR−1の手順(Flexible Receiver FR−1 Procedure)により、アクリルラテックス画像受容層を有するR−1 PETレシーバーを作製した。このアクリルラテックスポリマーは前述のように調製し、それらの組成は表2に示している。R−1レシーバー配合物は表3に示すように調製した。
【0124】
【表3】
【0125】
水性誘電体層を作製するための一般手順
指定の量の水、および場合により3質量%水酸化アンモニウム溶液を混合することによって、水溶液を調製した。続いて、IR染料、4分の1の上記水溶液、ならびに場合により消泡剤、界面活性剤、および可塑剤を、褐色ガラス容器中に入れて十分混合した。場合により、容器中で第2のバインダーを4分の1の上記水溶液とともに秤量し、十分に混合した。場合により、別の容器中で顔料を4分の1の上記水溶液とともに秤量し、十分に混合した。撹拌子の入った大型容器中でバインダーを秤量し、残りすべての上記水溶液を加えた。第2のバインダー分散体、IR染料分散体、および顔料分散体の内容物を、撹拌しながらバインダーにゆっくり加えた。少なくともさらに15分間撹拌した後、配合物を濾過して褐色容器または箔で覆った容器中に入れた。特に明記しない限り、孔径0.45ミクロンのシリンジフィルターを使用した(プロピレンハウジングを有する25mmGD/Xガラス・マイクロファイバー(Glass Microfiber)GMF;カタログ番号6894−2504 ワットマン(Whatman)、ニュージャージー州クリフトンのワットマン社(Whatman Inc.,Clifton,New Jersey))。
【0126】
銀ナノ粒子を分散させるための一般手順
銀分散体を音波処理プローブ(デュケイン社(Dukane Co.)モデル(Model)40TP200、トランスデューサー・モデル(Transducer Model)41C28)で15分間処理しながら、5分間隔でスパチュラで混合物を撹拌した。次に、この混合物が入った容器を水浴中に入れ、1時間音波処理を行いながら、0.5時間間隔でスパチュラで混合物を撹拌した。次に、この混合物を、室温の水浴中、プローブ音波処理をさらに15分間行って処理し、この間、5分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。得られた分散液を2.0ミクロンのワットマン(Whatman)(登録商標)MGF−150シリンジ−ディスクフィルターで2回濾過した。
【0127】
実施例1
この実施例では、ベースフィルム、LTHC層、および青色に着色したアクリルラテックスキャリア層を含む熱画像形成基体に、ポリマー分散剤を含有しないアルミナナノロッドを適用し、レーザー放射線を使用して熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。
【0128】
アルミナナノロッド分散液の調製
アルミニウムイソプロポキシド(45.5g)およびアルミニウムsec−ブトキシド(60g)を0.085MのHCl(3L)中で10日間撹拌した。次にこの溶液を、ガラス製振盪管中で4bar(窒素)の圧力で150℃に22時間加熱して、アルミナ(Al2O3)ナノロッド溶液を得た。こうして形成したナノロッドは、直径が約15nmであり、長さが約200nmである。約3質量%までこの溶液を蒸発させて濃縮した。
【0129】
キャリア層を有する熱画像形成ドナー基体の製造
以下のようにして青色に着色したキャリア層を作製した:
【0130】
顔料分散体:
前出の参考文献の国際公開第94/21701号パンフレットに記載されるようにして水性グラフトコポリマー分散剤(60質量%)を調製した。これは69質量%のn−BA/MA/AA(45.5/45.5/9)を31質量%のMMA/MAA(71.25/28.75)とグラフトしたものからなった。最初に2001gの水性グラフトコポリマー分散剤(60質量%)、218.109gのアミノメチルプロパノール、および32998.49gの水を混合することによって、顔料対分散剤比4:1の固形分15質量%の顔料分散体を調製した。得られた混合物を4802.4gのイルガライト・ブルー・グロ・ピグメント(Irgalite Blue Glo Pigment)(チバ(Ciba);C.I.ピグメント・ブルー(Pigment Blue)15:3;CAS 147−14−8)とともに、0.8〜1.0mmのジルコニア媒体およびダイノミル(Dynomill)中90秒/半パイントの時間の再循環ループを使用した10ガロンのダイノミル(Dynomill)ビーズミル中で分散させた。
【0131】
配合物の調製:
約157.5部の水、398部のイルガライト・ブルー・グロ(Irgalite Blue Glo)分散体(15質量%)、60部のラテックスA−1(33質量%)、9.09部のラテックスA−2、2.5部のSDA 4927、0.40部のゾニル(Zonyl)(登録商標)FSA(25質量%)、および2.98部のカプロラクトンと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの2:1付加体を、36.12部のラテックスA−1(33質量%)とともに加えて混合することによって、水性キャリア層配合物の一般手順に従い、固形分15質量%の分散体を得た。
【0132】
コーティングの作製:
上記固形分15質量%のキャリア層配合物を、50%T Cr PETドナー基体のクロム層上にスロットダイコーティングし、乾燥させて13.7mg/dm2の厚さまで減少させて、キャリア層を有する熱画像形成基体を得た。この乾燥キャリア層コーティングは、59.7質量%のイルガライト・ブルー・グロ(Irgalite Blue Glo)分散顔料、0.1質量%ゾニル(Zonyl)(登録商標)FSA、2.5質量%のSDA 4927、31.7質量%のラテックスA−1、3.0質量%のラテックスA−2、および3.0質量%のカプロラクトンと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの2:1付加体の組成を有した。
【0133】
キャリア層上への分散液の適用
ガラスの平坦シート上に上記熱画像形成基体(20cm×30cm)を、キャリア層が上を向くようにして置いた。ナイロンフィルター(孔径5ミクロン)を介してシリンジから、3質量%アルミナナノロッド分散体(5mL)を、ドナーの短い辺に沿って供給した。#4巻線ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、溶液のビードが、熱画像形成基体のキャリア層を覆う均一な薄膜になるように手で延ばした。この膜を乾燥させて、キャリア層の表面上にアルミナナノロッドの薄いコーティングを得た。
【0134】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーおよび熱画像形成R−1レシーバーを、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。830nm放射線を使用して合計11回、幅1cm×長さ2.5cmの長方形のパターンを画像形成した。各画像は、クレオ(CREO)800トレンドセッター(Trendsetter)(登録商標)の0.5W刻みで3W〜12Wまでの異なる出力レベル設定で印刷した。クレオ・トレンドセッター(CREO Trendsetter)(登録商標)のドラムは、すべての出力設定で170rpmで回転するように設定した。印刷パラメーターは:表面深さ=95および表面反射率=0.320であった。6.5Wを超える値で、青色着色アクリルラテックスキャリアポリマーおよびナノ粒子転写層をドナーシートからレシーバーシートに、幅1cmの長方形のパターンに従って転写すると、レシーバー基体の表面に、制御されパターニングされたナノロッドが堆積された。この最初の出力レベルの走査から、ナノロッドおよびキャリア層の転写パターニングに最適な出力が8Wであることを視覚的に決定された。狭い線、正方形、ならびに印刷コンデンサおよびトランジスタを製造するための構成要素の複雑な試験パターンを、8Wで170rpmのドラム速度においてクレオ(CREO)800トレンドセッター(Trendsetter)(登録商標)上で印刷すると、印刷された電子デバイスおよびその他の機能デバイスの製造に適切な小さい長さスケールのパターンでキャリア層およびナノロッドが堆積された。
【0135】
実施例2
この実施例では、670nm吸収剤を含むベースフィルム、LTHC層、およびノボラック(Novolac)キャリア層を含む熱画像形成基体にチタン酸バリウムナノ粒子を適用し、レーザー放射線を使用して熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。ノボラック(Novolac)キャリア層部分は、後にテープを使用して除去した。
【0136】
チタン酸バリウムナノ粒子分散体の調製
チタン酸バリウムナノ粒子を、オブライエン(O’Brien),S.;ブルス(Brus),L.;マレー(Murray),C.B.J.Am.Chem.Soc.2001,123,12085−12086の手順により調製した。この手順のナノ粒子の安定剤としてオレイン酸を使用して直径約8nmのナノ粒子を得た。単離したチタン酸バリウムナノ粒子をp−キシレンと混合して10質量%分散液にして、コーティングするまでこれを振盪し続けた。
【0137】
キャリア層を有する熱画像形成ドナー基体の製造
ノボラック(Novolac)HRJ14198(3.168g、スケネクタディ・インターナショナル(Schenectady International))およびTic−5c(0.032g、Hampford Research、Inc.)のアセトン(10.8g)および2−メトキシエタノール(1.28g)中の溶液を調製し、終夜振盪した。この溶液の一部を、#3成形ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、50%T Cr青色PETドナー基体(30cm×20cm)のCr層上に手でコーティングし、空気中で乾燥させて、キャリア層を有する熱画像形成ドナー基体を得た。
【0138】
キャリア層上への分散液の適用
上記熱画像形成基体を、キャリアポリマー層が上向きになるように平坦面上に置いた。10質量%チタン酸バリウム分散体(約4mL)を、基体の8インチの辺の1つに沿って供給した。#9成形ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、分散体が熱画像形成基体のキャリア層を覆う均一な薄膜となるように手で延ばした。この膜を空気中で乾燥させて、熱画像形成ドナーを得た。
【0139】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーおよび熱画像形成R−1レシーバー(28cm×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。合計11回、幅1cm×高さ2.5cmの長方形のパターンを画像形成した。各画像は、0.5W刻みで7.5W〜12.5Wまでの異なる出力レベル設定で印刷した。ドラムは、11のすべての出力設定で170rpmで回転するように設定した。印刷パラメーターは:表面深さ=105および表面反射率=0.308であった。11のすべての出力レベルでノボラック(Novolac)HRJ14198/チタン酸バリウムナノ粒子の二重層を、幅1cmの長方形のパターンに従ってドナーシートからレシーバーシートに転写すると、レシーバー基体の表面に、制御されパターニングされたチタン酸バリウムナノ粒子が堆積された。ドナーを目視検査すると、7.5W以上の出力で>80%の転写が起こり、10W以上の出力で>95%の転写が起こったことが分かった。
【0140】
キャリア層の除去
印刷実験後、空気の存在下室温で密封したプラスチック袋中にレシーバー基体を保管した。この時間の間、ノボラック(Novolac)キャリア層は黄褐色に変化した。チタン酸バリウムナノ粒子およびノボラック(Novolac)キャリア層の転写印刷から約2年後、スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ片を、8.0Wおよび12.5Wで印刷した領域部分の上に置いた。1分未満、テープ片をそのままの場所に置き、続いて剥離すると、黄変したノボラック(Novolac)キャリア層の対応部分は外れ、白色ナノ粒子層はその場所に残った。
【0141】
実施例3(比較例)
この実施例では、670nm吸収剤を含むベースフィルム、およびLTHC層を含むが、キャリア層は含まない熱画像形成基体にチタン酸バリウムナノ粒子を適用し、続いてレーザー放射線を使用して熱画像形成する方法を説明する。実施例2と実施例3との印刷結果の比較から、転写プロセスを補助し、より低エネルギーで高歩留まりの転写が可能となるキャリア層の有用性が示される。実施例2と実施例3との比較によって、接着層としての機能においてキャリア層が有用であり、それによって、ナノ粒子が転写プロセス全体で連続フィルムを維持し、レシーバーに付着することが可能となることも示す。
【0142】
チタン酸バリウムナノ粒子分散体の調製
実施例2に記載のようにしてチタン酸バリウムナノ粒子分散体を調製した。
【0143】
キャリア層上への分散液の適用
50%T Cr青色PETドナー(30cm×20cm)をCr層が上向きになるように平坦面上に置いた。10質量%チタン酸バリウム分散体(約4mL)を、基体の8インチの辺の1つに沿って供給した。#11成形ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、分散体が熱画像形成基体のCr層を覆う均一な薄膜となるように手で延ばした。この膜を空気中で乾燥させて、熱画像形成ドナーを得た。
【0144】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーおよび熱画像形成R−1レシーバー(28cm×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。0.5W刻みで3.0W〜12.0Wで、ドラム速度170rpmにおいて、幅1cm×高さ2.5cmの長方形のパターンを画像形成した。印刷パラメーターは:表面深さ=105および表面反射率=0.336であった。ドナーの目視検査より、転写は不完全であり、9W以上の出力で転写が約25%以上であることが分かった。レシーバー上に対応する薄いパターンが観察された。0.5W刻みで3.0W〜12.0Wで、ドラム速度100rpmにおいて、幅1cm×高さ2.5cmの長方形のパターンを印刷することによって、転写プロセスのエネルギーを増加させた。ドナーの目視検査より、8W以上で、パターニングされた領域中のナノ粒子の転写が>50%となり、10.5W以上で転写が>80%となることが分かった。レシーバーへのナノ粒子の付着は、7.5および8Wにおいてはパターニングされた領域の一部で観察されたが、8.5W以上では観察されなかった。
【0145】
実施例4
この実施例では、ベースフィルム、有機LTHC層、および黒色アクリルラテックスキャリア層を含む熱画像形成基体に10質量%の分散剤を含有する銀ナノ粒子を適用し、熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。
【0146】
キャリア層の作製およびコーティング
11.18gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)538(45質量%)、0.025gのSDA 2860、0.050gのビック(Byk)(登録商標)348、1.820gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、および18.72gの水を使用して、水性キャリア層配合物の一般手順に従って、pHが9.10の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用して9.8フィート/分で、得られた溶液(3mL)を有機LTHC緑色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。最終的な乾燥コーティングの組成は:88.2質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)538、0.4質量%SDA 2860、0.9質量%のビック(Byk)(登録商標)348、および10.5質量%のブラック(Black)32B56であった。
【0147】
銀分散体の調製およびコーティング
ウルトラファイン(Ultrafine)RD&S 7000−35Ag粉末(22.530g)、20%のエルバサイト(Elvacite)(登録商標)2028(12.550g、キシレン中20質量%)、キシレン(12.516g)、およびジ(エチレングリコール)ジベンゾエート(0.048g)の混合物を前述の一般手順により分散させた。この分散体(6mL)を、#6CN成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用して5.8フィート/分の速度で黒色キャリア層上にコーティングし、42℃で20
分間乾燥させた。
【0148】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーの一部(約30×20cm)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST 504レシーバー(約28×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。600mmHgの減圧によってドナーとレシーバーとの間の接触を確立した。蛇行パターンのブロックを、200、100、および50ミクロンの線幅で、線の間の間隔は線幅と同じにして印刷した。印刷パラメーターは:表面深さ=71;表面反射率=0.28;escan=3であった。ドラム速度120(0.25Wの増分で5〜8W)、ドラム速度80(0.25Wの増分で3.75W〜6.75W)、およびドラム速度40(0.25Wの増分で2.5〜5.5W)でパターンを印刷した。ドラム速度120においては、5.75W以上で転写が観察され、6.7〜8Wにおいて>90%の転写が観察された。ドラム速度80においては、4.25W以上で転写が観察され、5〜6.75Wにおいて>90%の転写が観察された。ドラム速度40においては、5W以上で転写が観察され、5.75〜8Wにおいて>90%の転写が観察された。
【0149】
電気特性評価
前述の標準手順によりシート抵抗を測定した。ドラム速度40において7.25W以上で印刷した線で測定するとRsh<1Ω/□であった。
【0150】
実施例5
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、および黒色可溶性アクリルキャリア層を含む熱画像形成基体に、10質量%の分散剤を含有する銀ナノ粒子を適用して、熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。
【0151】
キャリア層の作製およびコーティング
14.14gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63(30質量%)、0.025gのSDA 2860、0.50gのビック(Byk)(登録商標)348(10質量%)、2.70gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、2.50gのグリセロールエトキシレート(20質量%)、および11.94gの水を使用して、水性キャリア層配合物の一般手順に従って、pHが8.96の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを9.8フィート/分で使用して、得られた溶液(3mL)を40%T Cr青色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。最終的な乾燥コーティングの固形分の質量%は:74.32質量%ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63、0.4質量%SDA 2860、0.9質量%ビック(Byk)(登録商標)348、15.6質量%のブラック(Black)32B56および8.8質量%グリセロールエトキシレートであった。
【0152】
銀分散体の調製およびコーティング
配合、分散、およびコーティングの条件は実施例4と同じである。
【0153】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナー(約30×20cm)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST504レシーバー(約28cm×18cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。蛇行パターンのブロックを、200、100、および50ミクロンの線幅で、線の間の間隔は線幅と同じにして印刷した。印刷パラメーターは:表面深さ=71;表面反射率=0.3;escan=3であった。ドラム速度100(0.25Wの増分で5.75〜8.75W)、ドラム速度70(0.25Wの増分で5.25〜8.25W)、およびドラム速度40(0.25Wの増分で3.5〜6.5W)でパターンを印刷した。すべての出力およびドラム速度において>90%の完成度で転写された。
【0154】
電気特性評価
前述の標準手順によりシート抵抗を測定した。ドラム速度40において4.25W以上、およびドラム速度70において7.5W以上で印刷した線で測定するとRsh<1Ω/□であった。
【0155】
実施例6〜10
実施例6〜10のラテックスバインダーの調製
一連のドナー要素の作製に使用したラテックスバインダーを、表4に示される材料を使用して、「ラテックスバインダーの調製」と題される項に記載の手順および方法により調製し特性決定を行った。
【0156】
連鎖移動剤:この材料は、ベルゲ(Berge)らの米国特許第5,362,826号明細書に記載されるようにして調製した:500リットルの反応器に還流冷却器を取り付け、窒素雰囲気中で使用した。この反応器に、メチルエチルケトン(42.5kg)およびビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシマト)コバルト酸(III)イソプロピル(Co III DMG)(104g)を投入し、内容物を還流させた。Co III DMG(26.0g)、メタクリル酸メチル(260kg)、およびメチルエチルケトン(10.6kg)を上記反応器に4時間かけて加えた。同時にバゾ(Vazo)67(登録商標)(デュポン(DuPont)、5.21kg)およびメチルエチルケトン(53.1kg)の混合物の上記反応器への添加を開始し、5時間かけて加えた。添加後、反応器内容物の還流をさらに1/2時間維持した。冷却後、これより連鎖移動剤の70質量%溶液(連鎖移動剤溶液)が372kg得られ、これを直接重合に使用した。組成を表5に示す。
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
実施例6〜10のAg層のための分散体の調製
表6に示される材料を使用して前述の銀ナノ粒子を分散させる一般手順により分散体を調製した。
【0160】
【表6】
【0161】
実施例6
PANI−CNT−Agナノ粒子多層
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、ならびにポリアニリン−カーボンナノチューブ(PANI−CNT)および銀転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀およびPANI−CNT層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。後処理ステップによってラインエッジ品質が改善された。
【0162】
A.PANI−CNT−Agナノ粒子多層ドナー基体の作製
(a)ポリアニリン層の作製およびコーティング。ヒプコ・ロウ(HiPco Raw)CNT(0.1219g、テキサス州ヒューストンのカーボン・ナノテクノロジーズ社(Carbon Nanotechnologies、Inc.、Houston、Texas)より)、ディスパービック(Disperbyk)(登録商標)163(0.067g、コネチカット州ウォリングフォードのビック・ケミーUSAインコーポレイテッド(BYK Chemie USA Inc.,Wallingford,CT)、1,2−ジクロロベンゼン(8.855g)、およびキシレン(20.662g)の混合物を、音波処理プローブ(デュケイン社(Dukane Co.)モデル(Model)40TP200、トランスデューサー・モデル(Transducer Model)41C28)を使用して室温の水浴中で10分間処理し、この時間の間、5分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。続いて、PANI−DNNSA[7.325g、キシレンおよび2−ブトキシエタノール(比率4:1)中22.23質量%、0.7の酸ドーピング、米国特許第5863465号明細書により合成]を上記混合物中に加え、その混合物を45℃の水浴中に5分間入れた。この温度で平衡になった後、混合物を5分間音波処理し、この時間の間、1分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。得られた分散体を、1.0ミクロンのナイテックス(Nitex)(登録商標)03−1/1ナイロンスクリーン(メッシュ数690×470、孔径:1ミクロン、ニューヨーク州デピューのセファーアメリカ社(Sefar America Inc.,Depew,New York)で濾過した。この濾液中に、トリトン(Triton)(登録商標)X 114(コネチカット州ダンベリーのユニオン・カーバイド社(Union Carbide Co,Danbury,CT)のキシレン中の10質量%溶液を30.5マイクロリットル加えた。5.8フィート/分においてCN#12成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用しCVコーターを使用して40%T Cr PETドナー基体(約90×52cm)上にこの分散体(10.9mL)をコーティングし、40℃で25分間乾燥させた。
【0163】
(b)銀層の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目2に記載している。5.8フィート/分においてCN#6成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用しCVコーターを使用して40%T Cr PETドナー基体上のPANI−CNT層上にこの分散体(7mL)をコーティングし、48℃で20分間乾燥させた。
【0164】
B.PANI−CNT−Agナノ粒子多層をパターニングするための熱転写プロセス
前述の手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST 504レシーバー(約28cm×18cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。蛇行パターンのブロック(4.75cm×1.5cm)を、200、100、および50ミクロンの線幅で線の間の間隔は線幅と同じにして印刷した。印刷パラメーターは:表面深さ=47;表面反射率=0.52;escan=0であった。ドラム速度120(0.25Wの増分で7.5〜10.75W)およびドラム速度60(0.25Wの増分で4.5〜8W)でパターンを印刷した。
【0165】
C.熱転写の評価および後処理
ドラム速度60では転写は不完全であった。9.25W以上で200ミクロンの線の印刷で、印刷した線の間の未露光領域中の材料が線とともに転写されたことを除けば、ドラム速度120では転写は完全であった。接着面(スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ、60秒)をドラム速度120において9.75Wで印刷した50ミクロンの線と接触させると、線の間の材料が選択的に除去されて、レシーバー上に所望の50ミクロンの蛇行パターンが得られ、きれいなラインエッジを有し、線の破断はなかった。
【0166】
D.電気特性評価
前述の標準手順によりシート抵抗を測定した。ドラム速度120において7.75W以上で印刷した線の場合に1Ω/□未満のRshが測定され、10W以上で0.4Ω/□のRshが測定された。
【0167】
実施例7
PANI−CNT−Agナノ粒子−誘電体多層
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、ならびにPANI−CNT、銀、および誘電体転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、およびPANI−CNT層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされたPANI−CNT層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされたPANI−CNT、誘電体、銀、およびPANI−CNT層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。後処理ステップによってラインエッジ品質が改善された。
【0168】
A.多層PANI−CNT-Agナノ粒子−誘電体ドナー基体の作製
(a)ポリアニリン層の作製およびコーティング。手順は、実施例6−A−aにおいて前述した手順と同一であった。
【0169】
(b)銀層の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目3に記載している。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#7成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(5mL)を40%T Cr PETドナー基体(約90×52cm)上のPANI−CNT層にコーティングし、49℃で20分間乾燥させた。
【0170】
(c)誘電体層の作製およびコーティング。16.76gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63(30質量%)、16.78gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95(30質量%)、0.21gのSDA 2860、0.50gのビック(Byk)(登録商標)348(水中10質量%)、および23.26gの水を使用して、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが8.51の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用し6.3フィート/分においてCVコーターを使用して、得られた溶液(3mL)を銀ナノ粒子層上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。この乾燥コーティング中の材料の質量%は:48.7質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63、48.8質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95、2.0質量%のSDA 2860、および0.50質量%のビック(Byk)(登録商標)348であった[ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63は、水溶性スチレンアクリル系樹脂の溶液であり、pHが8.4、MWが12,000、酸価が213、Tgが73である。ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95は、改質スチレンアクリル系ポリマーのアンモニア塩のエマルジョンであり、pHが8.0、酸価が70である。どちらもジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer)製である]。
【0171】
B.パターニングされたPANI−CNT層を有する熱画像形成レシーバーの作製
(a)PANI−CNTドナー基体の作製およびコーティング。キシレン/1,2−ジクロロベンゼン混合物の代わりにキシレンを溶媒として使用したことを除けば、手順および分散体の材料は実施例6−A−aと同一であった。使用した材料の量は:0.1230gのHiPco未精製(Raw)CNT、0.063gのディスパービック(Disperbyk)(登録商標)163、29.680gのキシレン、5.144gのPANI−DNNSA[キシレンおよび2−ブトキシエタノール(比率4:1)中31.68質量%、0.7の酸ドーピング]、および28.9マイクロリットルのトリトン(Triton)(登録商標)X 114(キシレン中10質量%)であった。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#10成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(10.9mL)を40%T Cr PETドナー基体(約90cm×52cm)上にコーティングし、45℃で20分間乾燥させた。
【0172】
(b)レシーバーのベースフィルム上にPANI−CNT層をパターニングするための熱転写プロセス。前述の一般手順により、PANI−CNTドナーの一部(約30cm×20cm;熱転写実験の5か月前に50℃でさらに60分間乾燥させた)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST 504レシーバー(約28cm×18cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。1つは材料の中実ブロック(本明細書においては中実ブロックパターンと呼ぶ)であり、1つは幅120ミクロンで間隔が240ミクロンの垂直線に材料がパターニングされたもの(本明細書においては垂直線パターンと呼ぶ)である2つの長方形パターン(1.25cm×0.75cm)を、この印刷実験のパターンとして使用した。2つの列(列1および2)で、各線の中に13の交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターンを印刷した。印刷パラメーターは:ドラム速度=160;表面深さ=47;表面反射率=0.46;escan=0;出力=5.75W(列1)および5.45W(列2)であった。
【0173】
C.PANI−CNT−Agナノ粒子−誘電体多層をパターニングするための熱転写プロセス。
PANI−CNTドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。すべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=47;表面反射率=0.54;escan=0;交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターンであった。列1:ドラム速度120において、0.25Wの増分で7.50〜10.50Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上に多層印刷した。列2:ドラム速度160において、0.25Wの増分で9.00〜12.00Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上に多層印刷した。列3:ドラム速度160において、0.25Wの増分で7.50〜10.50Wで、レシーバー表面上に多層印刷した。
【0174】
D.熱転写の評価および後処理
すべての出力で異なる程度で転写した多層が最適の品質を有し、最高の転写率は、列1の場合7.5〜8.25W、列2の場合9.25〜10W、列3の場合8〜8.25Wで観察された。3つすべての列で、印刷された線の間の未露光領域中の材料が、線とともに転写された。線の間の転写された材料は、レシーバーおよび線自体に非常に弱く付着しており、接着面と接触させることによって容易に選択的に除去することができ、レシーバー上に所望の線パターンを残すことができた。このことは、粘着ローラーを使用した列1(10.5W)、列2(12.0W)、および列3(10.5W)、ならびにスコッチ(Scotch)(登録商標)テープ(1分間の接触)を使用した列3(10.25W)で実証された。
【0175】
実施例8
黒色−Agナノ粒子−誘電体多層
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、ならびに黒色、銀、および誘電体転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされたPANI−CNT層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされたPANI−CNT、誘電体、銀、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされた銀ナノ粒子層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀、誘電体、銀、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。後処理ステップによってラインエッジ品質が改善された。
【0176】
A.多層黒色−Agナノ粒子−誘電体ドナー基体の作製
(a)黒色層の作製およびコーティング。12.60gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56(27質量%)、4.93gのラテックスL−34−1(30質量%)、0.025gのSDA 2860、0.050gのビック(Byk)(登録商標)348、0.910gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、および11.60gの水を使用し、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが9.20の配合物を得た。CVコーターを使用し、CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで6.3フィート/分において、得られた溶液(3mL)を40%T Cr青色PETドナー基体(約90×52cm)でコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。この乾燥コーティング中の材料の質量%は:63.0質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56、30.1質量%のラテックスL−34−1、0.5質量%のSDA 2860、0.90質量%のビック(Byk)(登録商標)348、および5.6質量%の32B56カーボンブラック(Carbon Black)であった[ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56は、水溶性スチレンアクリル系樹脂の溶液であり、pHが9.1、MWが4,600、酸価が108、Tgが60であり、ジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer)製である]。
【0177】
(b)銀層の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目1に記載している。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#6成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(7mL)を40%T Cr青色PETドナー基体上の黒色層上にコーティングし、48℃で20分間乾燥させ、後に50℃で60分間乾燥させた。
【0178】
(c)誘電体層の作製およびコーティング。配合およびコーティング方法は実施例7−A−cと同一であった。このドナーは、熱転写実験の直前に45℃でさらに45分間乾燥させた。
【0179】
B.列1および2中にパターニングされたPANI−CNT層を有し、列3中にパターニングされた銀ナノ粒子層を有する熱画像形成レシーバーの作製
(a)PANI−CNTドナー基体の作製およびコーティング。配合およびコーティングは実施例7−B−aと同一であった。
【0180】
(b)レシーバーのベースフィルム上にPANI−CNT層をパターニングするための熱転写プロセス。以下の点を除けばプロセスは実施例7−B−bと同一であった:表面反射率=0.54;出力=5.5W(列1および2)、14の交互パターンを列2中に印刷した。
【0181】
(c)銀ナノ粒子ドナー基体の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目4に記載している。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#6成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(8mL)をメリネックス(Melinex)(登録商標)453ドナーフィルム(約90×52cm)上にコーティングし、47℃で20分間乾燥させた。このドナーは、熱転写実験の約3週間前に50℃でさらに60分間乾燥させた。
【0182】
(d)レシーバーのベースフィルム上に銀ナノ粒子層をパターニングするための熱転写プロセス。PANI−CNTドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、銀ナノ粒子ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。14の交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターン(1.25×0.75cm)を列3中に印刷した。印刷パラメーターは:ドラム速度=40;表面深さ=30;表面反射率=0.48;escan=0;出力=4.8Wであった。
【0183】
C.黒色−Agナノ粒子−誘電体多層をパターニングするための熱転写プロセス
銀ナノ粒子ドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。すべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=60;表面反射率=0.30;escan=0;交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターン(1.25×0.75cm)であった。列1:ドラム速度40において0.25Wの増分で4.00〜7.25Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上に直接多層を印刷した。列2:ドラム速度100において0.25Wの増分で6.00〜9.25Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上にわずかにずらして多層を印刷した。列3:ドラム速度40において0.30Wの増分で3.50〜7.40Wで、パターニングされた銀ナノ粒子層の表面上に多層を印刷した。列4:ドラム速度40において0.30Wの増分で3.50〜7.40Wで、レシーバー表面上に多層を印刷した。
【0184】
D.熱転写の評価および後処理
列1の場合は4.5Wにおいて、列3の場合は3.75〜4.75Wにおいて、列4の場合は3.5〜4.5Wにおいて、多層の完全な転写が観察された。列2では、パターニングされたPANI−CNT層上およびレシーバー上の両方に異なる出力において異なる程度でずらして多層転写を行った。4つすべての列で、印刷された線の間の未露光領域内の一部の材料が線とともに転写された。列3および4の場合、線の間の転写された材料は、接着面と接触させることによって容易に選択的に除去することができ、レシーバー上に所望の線パターンを残すことができた。このことは、スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ(30〜60秒の接触)を使用した列3(4.75W)および列4(3.75W)で実証された。
【0185】
実施例9
黒色−誘電体−Agナノ粒子多層
この実施例では、ベースフィルム;有機LTHC層;ならびに黒色、誘電体、および銀転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀、誘電体、および黒色−誘電体層をこの積層順で有するレシーバーを有する。パターニングされた誘電体層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、誘電体、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。
【0186】
A.多層黒色−誘電体−Agナノ粒子多層ドナー基体の作製
(a)黒色層の作製およびコーティング。11.10gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56(27質量%)、0.135gの水酸化アンモニウム(水中3質量%)、0.060gのSDA 2860、0.20gのビック(Byk)(登録商標)348(水中10質量%)、3.110gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、および8.28gの水を使用して、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが9.34の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用して6.3フィート/分においてCVコーターを使用して、得られた溶液(3mL)を有機LTHC緑色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。乾燥コーティングの材料の質量%は:73.0質量%ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56、0.1質量%の水酸化アンモニウム、1.5質量%のSDA 2860、0.50質量%のビック(Byk)(登録商標)348、および25.0質量%の32B56カーボンブラックであった。
【0187】
(b)誘電体層の作製およびコーティング。配合およびコーティング方法は実施例7−A−cと同一であった。
【0188】
(c)銀層の作製およびコーティング。配合およびコーティングの方法は実施例8−A−bと同一であった。
【0189】
B.列1、2、5、および6中にパターニングされた誘電体層を有する熱画像形成レシーバーの作製
(a)誘電体ドナー基体の作製およびコーティング。33.32gのラテックスL−56−3(30質量%)、12.34gのラテックスL−33−3(30質量%)、0.87gのSDA 2860、0.165gのビック(Byk)(登録商標)345、4.164gの2−ブトキシエタノール、および38.85gの水を使用して、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが3.84の配合物を得た。CN#7成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用しCVコーターを使用して9.8フィート/分において、得られた溶液(7mL)を有機LTHC緑色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。乾燥コーティング中の材料の質量%は:68.3質量%のラテックスL−56−3、25.3質量%のラテックスL−33−3、5.4質量%のSDA 2860、および1.0質量%のビック(Byk)(登録商標)345であった。
【0190】
(b)レシーバーのベースフィルム上に誘電体層をパターニングするための熱転写プロセス。前述の一般手順により、上記誘電体ドナー(約30cm×20cm)の一部および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST504レシーバー(約28cm×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。列1および5中には17個の中実ブロックパターンを印刷し、列2および6中には17本の垂直線パターンを印刷した。印刷パラメーターは:ドラム速度=160;表面深さ=70;表面反射率=0.30;escan=0;出力=9.70W(列1および5)および10.30W(列2および6)であった。パターンは1.9×1.3cmであった。
【0191】
C.黒色−誘電体−Agナノ粒子多層をパターニングするための熱転写プロセス
誘電体ドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。すべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=70;表面反射率=0.24;escan=0;ドラム速度=60であった。列1:0.30Wの増分で4.50〜9.30Wでパターニングされた誘電体層の表面上に中実ブロックパターンで多層を印刷した。列2:0.30Wの増分で5.20〜10.00Wでパターニングされた誘電体層の表面上に垂直線パターンで多層を印刷した。列3:0.40Wの増分で5.20〜10.80Wでレシーバー上に交互の垂直線および中実ブロックパターンで多層を印刷した。パターンは、列1および2の場合1.9×1.3cmであり、列3の場合1.9×0.8cmであった。
【0192】
D.多層の熱転写の評価
列1の場合4.5〜7.5Wにおいて、列2の場合5.2〜10.0Wにおいて、列3の場合5.2〜6.7Wにおいて一部に帯状の境界およびコーティングの欠陥が生じたのを除けば、露出領域で、多層ドナーのAg部分の完全な転写が示され、これとともに多層の誘電体部分および黒色部分の完全な転写も示され、列3の場合の最良のラインエッジ品質は5.2〜5.8Wにおいて観察された。
【0193】
実施例10
誘電体−Agナノ粒子二重層
この実施例では、ベースフィルム;クロムLTHC層;ならびに誘電体および銀転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀および誘電体層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされた誘電体層を有する表面処理されたベースフィルムを有するレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、および誘電体層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされた二重層のパターニングされた誘電体層のみ、およびパターニングされた二重層の両方の層のレシーバーからの選択的除去を、転写条件の調整によって後処理ステップで行った。これらのステップでは、キャリア層の選択的除去、および印刷パターンのレシーバーから別の表面への転写が説明される。
【0194】
A.誘電体−Agナノ粒子二重層ドナー基体の作製
(a)誘電体層の作製およびコーティング。配合は実施例9−B−aと同一であった。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用し、CVコーターを9.8フィート/分で使用して、得られた溶液(3mL)を40%T Cr青色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。
【0195】
(b)銀層の作製およびコーティング。配合およびコーティング方法は実施例8−A−bと同一であった。
【0196】
B.列1、2、5、および6中にパターニングされた誘電体層を有する熱画像形成レシーバーの作製
実施例9で作製した熱画像形成レシーバーの列4、5、および6を本明細書においてレシーバーAと呼ぶが、これらを使用して、この実施例では列A4、A5、およびA6と呼ぶ。本明細書ではレシーバーBと呼ぶ別のパターニングされていないST504メリネックス(Melinex)(登録商標)レシーバーも使用した(列B1、B2、B3、およびB4)。
【0197】
C.誘電体−Agナノ粒子二重層をパターニングするための熱転写プロセス
実施例9の多層ドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーAはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、本実施例の誘電体−Agナノ粒子二重層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。両方のレシーバーのすべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=70;表面反射率=0.24;escan=0であった。列A4、A5、およびA6の印刷後、二重層ドナーをレシーバーAから剥離し、続いてレシーバーAをドラムから取り外した。次に、一般手順により、レシーバーBおよび二重層ドナーをクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。列B1、B2、B3、およびB4を印刷した。二重層は、レシーバー表面上の列A4(交互の垂直線および中実ブロックパターン;0.40Wの増分で4.50〜10.10W;ドラム速度60)、列B1(垂直線パターン;0.25Wの増分で6.00〜10.50W;ドラム速度120)、列B2(中実ブロックパターン;0.25Wの増分5.00〜9.50W;ドラム速度120)、列B3(垂直線パターン;0.25Wの増分で8.00〜12.50W;ドラム速度160)、および列B4(中実ブロックパターン;0.25Wの増分で7.00〜11.50W;ドラム速度160)に印刷した。二重層は、パターニングされた誘電体層上の列A5(中実ブロックパターン;0.30Wの増分で4.50〜9.30W;ドラム速度60)および列A6(垂直線パターン;0.30Wの増分で5.00〜9.80W;ドラム速度60)に印刷した。パターンは、列A4の場合は1.9×0.8cmであり、列A5およびA6の場合は1.9×1.3cmであり、列B1、B2、B3、およびB4の場合は1.3×1.0cmであった。
【0198】
D.熱転写の評価および後処理
すべての出力で二重層は完全に転写され、転写の最高品質が観察されたのは、列A4の場合は4.5〜4.9Wであり;列A5の場合は4.5Wであり;列A6の場合は5.3〜5.6Wであり、ラインエッジ品質が良好であり;列B1の場合は6.5W以上であり、7.25Wにおいて直線ラインエッジの転写が最適であり;列B2の場合は8.25W以上であり;列B3の場合は8.75〜9Wおよび12〜12.5Wであり;列B4の場合は10.25W以上であった。接着面との接触(スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ、30秒)によって、列A4の7.7Wの垂直線パターンの場合、二重層の誘電体層のみが選択的に除去され、レシーバー上のAgの線が残った。列B2(90%を超えて除去される)および列B4(95%を超えて除去される)の8.25Wパターンの場合、接着面との接触(スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ、60秒)によって、二重層の両方の層がレシーバーから選択的に除去され、パターンがテープ表面に転写された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、NIST先端技術プログラム(NIST Advanced Technology Program)により与えられた契約番号第70NANB2H03032号の下で米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明の一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、基体上にナノ粒子層を熱転写する方法に関する。特に、本発明は、基体上にナノ粒子層を乾式パターン化堆積するための一段階方法に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の電子物品およびデバイスは、ナノ粒子層またはナノスケール要素を有する改質表面を利用している。これらの物品およびデバイスは、好適な基体上にナノ粒子の堆積およびパターニングを行うことで製造される。これらは、典型的には液相または気相から堆積される。
【0004】
レーザー誘起熱転写プロセスは、典型的に、転写される材料の層(本明細書で転写層と呼ばれる)を含むドナー要素と、転写された材料を受容する表面を含むレシーバー要素とを用いる。ドナー要素またはレシーバー要素の基体のいずれかが透明であるか、あるいは両方とも透明である。ドナー要素およびレシーバー要素は、互いに近接または接触させられ、レーザー放射線に(通常、赤外レーザーによって)選択的に露光される。転写層の露光された部分に熱が生成され、転写層の該当部分の転写を、レシーバー要素の表面上に引き起こす。転写層の材料が入射するレーザー放射線を吸収しない場合、ドナー要素は、転写層に加えて、光熱変換(LTHC)層としても知られる加熱層または転写補助層を含む必要がある。
【0005】
典型的なレーザー誘起デジタル熱転写プロセスでは、露光は、1度に、組立体の小さい選択された領域でしか行われないため、ドナー要素からレシーバー要素への材料の転写を、1度に1つの領域で形成することができる。この領域は、1つの画素、1つの画素の一部またはいくつかの画素であり得る。コンピュータ制御により、高速および高分解能での転写が容易になる。あるいは、アナログプロセスでは、組立体全体を照射して、マスクを用いて熱画像形成性層の所望の部分を選択的に露光する。
【0006】
米国特許第6,521,324号明細書には、表面を画定する微細構造特徴を有する微細構造層の熱転写によって形成される物品、ならびにその熱転写要素、およびその物品の製造方法が開示されている。この第‘324号特許において使用される蒸着およびアニーリングの詳細は、さらに米国特許第5,726,524号明細書において開示されている。
【0007】
国際公開第2005/004205号パンフレットには、基体と誘電材料の転写層とを含む熱画像形成可能なドナー要素を熱に曝露するステップを含む熱転写方法によって、基体上に充填剤入り誘電材料のパターンを形成する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子用途および光学用途の基体上に実質的なナノ粒子層の一段階堆積を可能にする方法が必要とされている。たとえば、誘電体粒子が印刷可能な層の実施的な質量%を構成する高kの印刷可能な誘電体が必要とされている。さらに、乾式であり、そのため溶媒の非相溶性の問題が発生しない印刷方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、ナノ粒子の熱転写パターニング方法であって:a)積層順でベースフィルムと、キャリア層と、ナノ粒子層とを含む熱画像形成ドナーを提供するステップと;b)熱画像形成ドナーを熱画像形成レシーバーに接触させるステップであって、熱画像形成レシーバーがベースフィルムを含むステップと;c)ナノ粒子層の少なくとも一部をキャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写して、積層順で、前記レシーバー上に、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を得るステップとを含み;前記熱画像形成ドナーが、(1)不揮発性画分であって、不揮発性画分の質量を基準にして、65〜100質量%の使用量のナノ粒子画分、および場合により最大35質量%の使用量の分散剤を含む不揮発性画分と;(2)揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液を提供するステップと;前記分散液をキャリア層上に適用し、キャリア流体を揮発させて前記熱画像形成ドナーを得るステップとを含む方法によって製造される、ナノ粒子の熱転写パターニング方法である。
【0010】
本発明の別の一実施形態は、積層順で:(a)ベースフィルムと;(b)誘電体層および伝導層からなる群から選択されるキャリア層と;(c)平均最長寸法が約5nm〜約1500nmであることを特徴とする複数のナノ粒子を含むナノ粒子画分を含むナノ粒子層とを含む多層熱画像形成ドナーであって;キャリア層が誘電体層を含む場合、ベースフィルムは、第1の光減衰剤を含み、約350nm〜約1500nmの範囲内の波長で0.1以上のODを有する、多層熱画像形成ドナーである。
【0011】
本発明のさらなる一態様は、ベースフィルム、パターニングされたナノ粒子層、およびパターニングされたキャリア層を含む熱画像形成レシーバーを含む組成物であって:a)積層順で:ベースフィルム、キャリア層、およびナノ粒子層を含む熱画像形成ドナーを提供するステップと;b)熱画像形成ドナーを熱画像形成レシーバーに接触させるステップであって、熱画像形成レシーバーがベースフィルムを含むステップと;c)ナノ粒子層の少なくとも一部をキャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写して、積層順で、前記レシーバー上に、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を得るステップとによって製造され;前記熱画像形成ドナーが、(1)不揮発性画分であって、不揮発性画分の質量を基準にして、65〜100質量%の使用量のナノ粒子画分と、場合により最大35質量%の使用量の分散剤とを含む不揮発性画分と;(2)揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液を提供するステップと;前記分散液をキャリア層上に適用するステップと、キャリア流体を揮発させて前記熱画像形成ドナーを得るステップとを含む方法によって製造される、組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の実施形態による熱画像形成ドナーの断面図である。
【図1B】本発明の実施形態による熱画像形成ドナーの断面図である。
【図1C】本発明の実施形態による熱画像形成ドナーの断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態による熱画像形成レシーバーの断面図である。
【図2B】レーザー媒介転写によって実現される熱転写方法を示す断面図である。
【図3A】レーザー媒介転写後の熱ドナー要素、およびその要素の分離を示している。
【図3B】レーザー媒介転写後の熱レシーバー要素、およびその要素の分離を示している。
【図3C】パターニングされたキャリア層を除去した後の熱レシーバー要素を示している。
【図4A】2つの層104Aおよび104Bを含むキャリア層を使用したレーザー媒介転写後の熱ドナー要素を示している。
【図4B】2つの層104Aおよび104Bを含むキャリア層を使用したレーザー媒介転写後の熱レシーバー要素を示している。
【図4C】キャリア層の1つの転写層が除去された本発明の別の一実施形態を示している。
【図5A】パターニングされた層を含む熱画像形成レシーバーの断面図である。
【図5B】パターニングされた層を含む熱画像形成レシーバーの断面図である。
【図6A】本発明の方法によって提供される組成物の断面図を示している。
【図6B】本発明の方法によって提供される組成物の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、ナノ粒子層の少なくとも一部をキャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写ステップで熱画像形成レシーバー上に転写するステップを含むナノ粒子の熱転写パターニング方法である。熱画像形成ドナーは、ナノ粒子の分散液をキャリア層の自由表面に適用することによって、ベースフィルムおよびキャリア層を含む熱画像形成基体から作製される。本発明の別の実施形態においては、熱画像形成ドナーは、ベースフィルム、任意選択のLTHC層、キャリア層、およびナノ粒子層を含むことができ、これらは記載の通りに連続して適用される。ドナーの自由表面は、任意の特定の順序でベースフィルム底層とは反対側の最終層上のある表面である。この自由表面は、改質されたドナーを構成するための追加層の適用に使用され、最終的にはドナーを熱画像形成レシーバーに接触させるために使用される。キャリア層、およびベースフィルムなどの他の層は、1つ以上の層を含むことができる。熱画像形成ドナーは、場合により、当技術分野において周知の他の層を含むことができ、たとえば、帯電防止層が、ベースフィルムおよび反対側の転写層に隣接して存在することができ;中間層をLTHC層とキャリア層との間に配置することができ;プライマー層、放出層、および/または下層をベースフィルムとLTHC層との間に配置することができ;接着層をベースフィルムとは反対側の転写層に隣接して配置することができる。したがって、本発明において有用な熱画像形成基体中に1つ以上の他の従来の熱転写ドナー要素層を含むことができ、そのような層としては中間層、プライマー層、剥離層、放出層、断熱層、下層、接着層、湿潤剤層、および光減衰層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書における、「アクリル」、「アクリル樹脂」、「(メタ)アクリル樹脂」、および「アクリルポリマー」という用語は、特に明記しない限り同義である。これらの用語は、メタクリル酸およびアクリル酸ならびにそれらのアルキルおよび置換アルキルエステルから誘導されるエチレン性不飽和モノマーの従来の重合から誘導される付加ポリマーの一般的種類を指す。これらの用語はホモポリマーおよびコポリマーを包含する。これらの用語は、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸およびグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを包含する。本明細書におけるコポリマーという用語は、特に明記しない限り、2種以上のモノマーの重合から誘導されるポリマーを包含し、グラフトコポリマーを含む。(メタ)アクリル酸という用語は、メタクリル酸およびアクリル酸の両方を包含する。(メタ)アクリレートという用語は、メタクリレートおよびアクリレートを包含する。「スチレンアクリルポリマー」、「アクリルスチレン」および「スチレンアクリル」という用語は、同義であり、上記の「アクリル樹脂」と、スチレン、および例えばα−メチルスチレンといった置換されたスチレンモノマーとのコポリマーを包含する。用語「熱転写層」は、ナノ粒子層、キャリア層、および追加の転写層を含んでおり、本明細書において開示される熱転写パターニング方法において熱転写ドナーから熱転写レシーバーに転写される層のことである。
【0015】
本明細書において用いられるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含める(includes)」、「含める(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらの任意の他の活用形は、非限定的な包含をカバーするものとする。例えば、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、特に明記されていないかあるいはかかるプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含めてもよい。さらに、特に矛盾する記載がない限り、「または」は包括的な「または」を指し、限定的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0016】
また、単数形(「a」または「an」)の使用は、本明細書に記載の要素および成分を表すために用いられる。これは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を示すために用いられる。本明細書は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、複数でないことを意図することが明白でない限り、単数形は複数形も含める。
【0017】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と同様なまたは等価な方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において用いることができるが、好適な方法および材料は以下に記載される。本明細書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、特定の節を引用しない限り、それらの全体を参照により援用する。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例はあくまで例示であり、限定されるものではない。
【0018】
本明細書に記載されない範囲の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらは、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0019】
ナノ粒子およびナノ粒子層
用語「ナノ粒子」または「ナノ粒子層」は、平均最長寸法が約5nm〜約1500nmおよび好ましくは約5nm〜約500nmであることを特徴とするナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤー、ナノチューブ、およびナノ構造を含むことを意味する。これらの粒子はほぼ球形であり、ナノ粒子は好ましくは平均粒度約5〜約1500nmであり、より好ましくは約5〜500nmである。「ナノ粒子」の概要および個別の詳細が得られる科学的な参考文献としては、「ナノ粒子:理論から応用まで」(Nanoparticles:From Theory to Application)G.シュミット(Schmid),(ワイリー−VCH(Wiley−VCH)、ワインハイム(Weinheim),2004)および「化学におけるナノスケール材料」(Nanoscale Materials in Chemistry)K.J.クラブント(Klabunde),(ワイリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience),ニューヨーク(New York),2001)が挙げられ、これらは参照として本明細書に援用される。これらの参考文献から、ナノ粒子の合成、挙動、および用途を理解することができる。ナノ粒子は有機粒子、無機粒子、またはそれらの組み合わせであってよい。たとえば、ナノ粒子は、無機コアと、必要に応じて、ナノ粒子に物理的に吸着する、または化学結合する有機材料の表面コーティングとを有することもできる。無機ナノ粒子を表面コーティングする方法は当技術分野において周知である。ナノ粒子の多くの供給元は、分散助剤として作用する未公表または独自開発の表面コーティングを使用している。本明細書全体にわたって、ナノ粒子の質量%に関するすべての言及は、製造者が分散助剤として加える場合も加えない場合もあるこれらの未公表または独自開発のコーティングを含んでいることを意味する。たとえば、市販の銀ナノ粉末は公称100質量%の銀と見なされるが、未公表の分散剤が存在する場合もある。
【0020】
本発明において有用なナノ粒子層は、電気的、磁気的、または光学的な機能層であってよく、そのような層としては、半導体層;抵抗層;誘電体層;伝導層;超伝導層;ルミネッセンス層、発光層、蛍光層、またはリン光層などの光発生層;電子生成層;正孔生成層;強誘電体層;圧電層;フェライト層;電気光学層;磁気層;光を吸収、反射、回折、散乱、分散、屈折、または拡散させる層;ならびに屈折率調整層を挙げることができる。伝導性ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、および金属でコーティングされたカーボンナノチューブ;金、銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、スズ、インジウム、ランタン、ガドリニウム、ルテニウム、チタン、イットリウム、ユウロピウム、ガリウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、セリウム、ストロンチウム、鉛、およびアンチモンなどの金属粒子;インジウム−スズ−酸化物(ITO)、アンチモン−スズ−酸化物(ATO)、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、および亜鉛スズ酸化物(ZTO)などの透明伝導性酸化物などのドープおよび非ドープ金属酸化物粒子;それらの合金、それらの複合材料、ならびにそれらのコア−シェル構造などの伝導性粒子が挙げられる。好ましい伝導性ナノ粒子は:金、銀、銅、およびそれらの合金;ITO、ATO、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される。平均最長寸法が約5nm〜約1500nmである銀ナノ粒子がより好ましく、平均粒度が約200nm〜約400nmである銀ナノ粒子が最も好ましい。
【0021】
半導体ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては:ケイ素;ゲルマニウム;ヒ化ガリウム、ヒ化ガリウムの合金、窒化ガリウム、および窒化ガリウムの合金などのIII−V族半導体化合物;ならびに酸化亜鉛、セレン化カドミウム、および硫化カドミウムなどのII−VI族半導体化合物が挙げられる。
【0022】
誘電体ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、チタネート、ジルコネート、ニオベート、スタネート、その他の混合金属酸化物、TiO2、Ta2O5、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、PbTiO3、CaZrO3、BaZrO3、CaSnO3、BaSnO3、Al2O3、ZrO2、Bi4Ti3O12、BaMgF4、PbZrxTi1−xO3、PbMg1/3Nb2/3O3、Zr0.7Sn0.3TiO4、Zr0.4Sn0.66Ti0.94O4、CaZr0.98Ti0.02O3、SrZr0.94Ti0.06O3、BaNd2Ti5O14、Pb2Ta2O7、チタン酸バリウムジルコニウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムネオジム、ニオブ酸鉛マグネシウム、ニオブ酸鉛亜鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸カドミウム、他のストロンチウム、鉛、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、およびネオジムのチタン酸塩およびタンタル酸塩、種々のパイロクロア、ならびに他の高極性無機材料などの誘電体粒子が挙げられる。好ましい誘電体ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および二酸化チタンからなる群から選択される。
【0023】
発光ナノ粒子層を形成するのに有用なナノ粒子としては、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化鉛、硫化鉛、硫化亜鉛、およびリン化インジウムなどの発光粒子が挙げられる。
【0024】
抵抗層の形成に有用なナノ粒子としては、Pd/Ag;金属ルチル、パイロクロア、およびペロブスカイト相、たとえばRuO2、Pb2Ru2O6〜7、SrRuO3など;Ru+4、Ir+4またはこれらの混合物(M”)の多成分化合物が挙げられ、前記化合物は以下の一般式:
(MxBi2−x)(M’yM”2−y)O7−x
で表され、上式中、Mは、イットリウム、タリウム、インジウム、カドミウム、鉛、銅、および希土類金属からなる群から選択され;M’は白金、チタン、クロム、ロジウム、およびアンチモンからなる群から選択され;M”はルテニウム、イリジウム、またはそれらの混合物であり;xは0〜2を表し、但し一価の銅の場合にはx≦1であり;yは0〜0.5を表し、但しM’がロジウムの場合、あるいは白金、チタン、クロム、ロジウムおよびアンチモンの2種類以上である場合にはyは0〜1であり;zは0〜1を表し、但しMが二価の鉛またはカドミウムの場合には、zは少なくとも約x/2である。これらのルテニウムパイロクロア酸化物は米国特許第3,583,931号明細書に開示されている。抵抗組成物は、導体ナノ粒子を絶縁体ナノ粒子と混合することもできる。好ましい導体ナノ粒子としてはルテニウム系金属酸化物が挙げられる。好ましい絶縁体ナノ粒子としては、ガラスなどの低融点ガラス、あるいはセラミックナノ粒子または前駆体を挙げることができる。ガラスは、シリカ、鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛、鉛アルミニウムホウケイ酸ガラス、または銀系ガラスであってよい。
【0025】
強誘電性ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、BaTiO3、SrTiO3、PbTiO3、KNbO3、SrBi2Ta2O9、BaSrTiO3、およびそれらの化学量論的変種の固溶体が挙げられる。
【0026】
圧電性ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、上記の強誘電体、石英、およびAlNが挙げられる。
【0027】
フェライトナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、Y3Fe5O12、Ba2Zn2Fe12O10、バリウムフェライトなどの六方晶フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、マンガン亜鉛フェライト、およびFe3O4などのスピネルフェライトが挙げられる。
【0028】
電気光学ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、LiNbO3、CdTe、およびZnSが挙げられる。
【0029】
超伝導ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、YBa2Cu3O7−x(YBCO)、Tl2CaBa2Cu3O12、BiSrCaCuO、およびBaKBiOが挙げられる。
【0030】
リン光層の形成に有用なナノ粒子としては、SrS:Eu、SrS:Ce、ZnS:Ag、Y2O2:Eu、Zn2SiO4:Mnが挙げられる。
【0031】
屈折率調整ナノ粒子層の形成に有用なナノ粒子としては、フッ化マグネシウムおよびチタン酸ストロンチウムなどの屈折率調整剤が挙げられる。
【0032】
ベースフィルム
図1Aは、本発明の一実施形態による熱画像形成ドナー100の断面図である。熱画像形成ドナー100は、ベースフィルム102、キャリア層104、およびキャリア層104の表面上に分散されたナノ粒子層106を含む。ベースフィルム102は、熱画像形成ドナー100の他の層を支持する。ベースフィルム102は、好ましくは透明である可撓性ポリマーフィルムを含む。ベースフィルム102の好適な厚さは約25μm〜約200μmであるが、より厚いまたはより薄い支持層を使用することもできる。ベースフィルムは、延伸フィルムを形成するために、当技術分野において周知の標準的な方法で延伸することができ、LTHC層などの1種類以上の他の層をベースフィルム上にコーティングした後に、延伸プロセスを完了することができる。好ましい熱画像形成ドナーフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択されるポリマー材料を含む。
【0033】
光減衰剤
光減衰剤は、別個の層中に存在することができるし、ベースフィルム、LTHC層、または転写層などのドナー要素の他の機能層の1つの中に混入することもできる。一実施形態においては、ベースフィルムは、熱画像形成ステップ中にLTHC層中の放射線吸収剤上に放射線源が集中するのを補助できる染料などの光減衰剤を少量(典型的にはベースフィルムの0.2%〜0.5質量%)含み、それによって熱転写の効率が改善される。参照として本明細書に援用される米国特許第6645681号明細書には、レーザー放射線源の集中を補助するためにベースフィルムを改質できる上記およびその他の方法が記載されており、レーザー放射線源の装置は、画像形成レーザーおよび非画像形成レーザーを含み、非画像形成レーザーは、画像形成レーザーと連絡する光検出器を有する。画像形成レーザーおよび非画像形成レーザーが動作する波長範囲(典型的には約350nm〜約1500nmの範囲内)によって、吸収剤および/または拡散剤が活性および不活性となる波長範囲が決定される。たとえば、非画像形成レーザーが670nm領域付近で動作し、画像形成レーザーが830nmで動作する場合、吸収剤および/または拡散剤の作用によって、830nm領域ではなく670nm領域内の波長の光が吸収または拡散されることが好ましい。本発明においては、光減衰剤は、好ましくは可視領域内の光を吸収または拡散し、一実施形態においては670nm付近の光を吸収する。好適な光減衰剤は当技術分野において周知であり、そのようなものとしては、市販のディスパース・ブルー(Disperse Blue)60およびソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料、ならびにカーボンブラックが挙げられる。好ましくは光減衰剤の量は、約400〜約750nmのある波長において光学濃度(OD)が0.1以上、より好ましくは約0.3〜約1.5となるのに十分な量である。
【0034】
光熱変換層(LTHC)
本発明の熱画像形成ドナーは、場合により、図1Bに示されるようにベースフィルムと別の層との間に介在する光熱変換層(LTHC)を有することができる。熱画像形成ドナー100は、ベースフィルム102とキャリア層104との間に介在するLTHC層108を含む。LTHC層108は、放射線誘導熱転写のための熱画像形成ドナー100の一部として組み込まれ、発光源から熱転写ドナー内に放射される光エネルギーと結合する。典型的には、LTHC層(または別の層)中の放射線吸収剤は、電磁スペクトルの赤外領域、可視領域、および/または紫外領域内の光を吸収し、吸収した光を熱に変換する。放射線吸収剤は、典型的には高吸収性であり、画像形成放射線の放射線におけるODが0.1〜3以上、好ましくは0.2〜2となる。好適な放射線吸収材料としては、たとえば、染料(たとえば、可視染料、紫外染料、赤外染料、蛍光染料、および放射線偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属化フィルム、および他の好適な吸収材料を挙げることができる。
【0035】
LTHC層の好適な放射線吸収剤およびバインダーは、当技術分野において周知であり、それらの広範な一覧および参考文献は、国際出願PCT/US05/38010号明細書、国際出願PCT/US05/38009号明細書;米国特許第6,228,555B1号明細書;マツオカ(Matsuoka),M.,「赤外吸収材料」(Infrared Absorbing Materials),プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク(New York),1990;およびマツオカ(Matsuoka),M.,ダイオードレーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)、ぶんしん出版(Bunshin Publishing Co.),東京,1990に見ることができ、これらは参照として本明細書に援用される。
【0036】
LTHC層用の好ましい種類の近赤外染料は、インドシアニン、多置換フタロシアニンや金属含有フタロシアニンなどのフタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択されるシアニン化合物である。好適な赤外吸収染料の供給元としては、H.W.サンズ社(H.W.Sands Corporation)(米国フロリダ州ジュピター(Jupiter,FL,US))、アメリカン・サイアナミッド社(American Cyanamid Co.)(ニュージャージー州ウェイン(Wayne,NJ))、サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)(ニュージャージー州ウエストパターソン(West Paterson,NJ))、グレンデール・プロテクティブ・テクノロジーズ社(Glendale Protective Technologies,Inc.)(フロリダ州レークランド(Lakeland,FL))およびハンプフォード・リサーチ社(Hampford Research Inc.)(コネチカット州ストラトフォード(Stratford,CT))が挙げられる。LTHC、キャリア層、および転写層用の好ましい染料は、CAS番号[128433−68−1]および分子量約619グラム/モルを有し、コネチカット州ストラトフォードのハンプフォード・リサーチ社(Hampford Research Inc,Stratford,CT)よりTIC−5cとして入手可能な2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有しH.W.サンズ社(H.W.Sands Corp)よりSDA 4927として入手可能な2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびにH.W.サンズ社(H.W.Sands Corp)のインドレニン染料SDA 2860およびSDA 4733である。SDA 4927はLTHC層用に特に好ましい染料である。
【0037】
LTHC層は、バインダー中に粒子状放射線吸収剤を含むことができる。好適な顔料の例としてはカーボンブラックおよび黒鉛が挙げられる。
【0038】
質量パーセントの計算において溶媒を排除した層中の放射線吸収剤の質量パーセントは、一般に1質量%〜85質量%、好ましくは3質量%〜60質量%、最も好ましくは5質量%〜40質量%であり、これはLTHC層中に使用される個別の放射線吸収剤およびバインダーによって変動する。
【0039】
LTHC層中に使用すると好適なバインダーとしては、たとえば、フェノール樹脂(たとえば、ノボラックおよびレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、およびスチレンアクリル樹脂などのフィルム形成性ポリマーが挙げられる。LTHC層の%透過率は、放射線吸収剤の種類および量、ならびにLTHC層の厚さの影響を受ける。LTHC層は、熱転写画像形成方法において使用される画像形成放射線の波長における放射線透過率が約20%〜約80%、より好ましくは約40%〜約50%となるべきである。バインダーが存在する場合、放射線吸収剤対バインダーの質量比は、一般に質量で約5:1〜約1:1000、好ましくは質量で約2:1〜約1:100である。ポリマーまたは有機のLTHC層は、0.05μm〜20μm、好ましくは、0.05μm〜10μm、より好ましくは、0.10μm〜5μmの厚さにコーティングされる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態においては、LTHC層は、前出の参考文献の国際出願PCT/US05/38010号明細書および国際出願PCT/US05/38009号明細書に開示されるような組成を有する多種多様の水溶性または水分散性のポリマーバインダーを含むことができる。好ましくは、水分散性バインダーのその水相中の平均粒度は、0.1ミクロン未満であり、より好ましくは0.05ミクロン未満であり、好ましくは狭い粒度分布を有する。本発明において有用なLTHC層に好ましい水溶性または水分散性のポリマーバインダーは、アクリル樹脂および親水性ポリエステルの群から選択されるものであり、より好ましくは前出の参考文献の国際出願PCT/US05/38009号明細書に記載されるようなスルホン化ポリエステルから選択されるものである。
【0041】
LTHC層の他の好ましいポリマーバインダーは、無水マレイン酸ポリマー、ならびに無水マレイン酸ポリマーおよび/またはコポリマーをアルコール、アミン、およびアルカリ金属水酸化物で処理することによって得られる官能性を有するものなどのコポリマーである。無水マレイン酸系コポリマーの特定の種類は式(III)で表される構造を含み
【化1】
上式中、xおよびzは任意の正の整数であり;
yは、0または任意の正の整数であり;
R21およびR22は、同種の場合も異種の場合もあり、個別に水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、およびハロゲンであり、但しR21およびR22の1つは芳香族基であり;
R31、R32、R41、およびR42は、同種または異種であり、水素、または1〜約5個の炭素原子のアルキルであってよく;
R50は:
a)1〜約20個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基;
b)1〜約20個の繰り返し単位であってよい、各オキシアルキレン基中に約2〜約4個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基のオキシアルキル化誘導体;
c)1〜約6個の繰り返し単位であってよい、各オキシアルキレン基中に約2〜約4個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基のオキシアルキル化誘導体;
d)少なくとも1つの不飽和部分;
e)少なくとも1つのヘテロ原子部分;
f)Li、Na、K、およびNH4+から選択される塩を形成することができるアルカリ分子;ならびに
g)それらの組み合わせから選択される官能基である。
【0042】
LTHC層の好ましい無水マレイン酸ポリマーの1つは、R21、R31、R32、R
33、R41、R42、R43が個別に水素であり、R22がフェニルであり、R50が2−(n−ブトキシ)エチルである式(III)のコポリマーを含む。LTHC層において有用な無水マレイン酸コポリマーの具体例の1つは、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Corporation,Exton,PA)の製品のSMA1440Hなどのスチレン無水マレイン酸コポリマーである。
【0043】
本発明の一実施形態においては、好ましいLTHC層の1つは、インドシアニン、多置換フタロシアニンや金属含有フタロシアニンなどのフタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択される1種類以上の水溶性または水分散性の放射線吸収性シアニン化合物と;アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される1種類以上の水溶性のまたは水分散性のポリマーバインダーとを含む。最も好ましいLTHC層の1つは:第4級アンモニウム陽イオン化合物;ホスフェート陰イオン化合物;ホスホネート陰イオン化合物;1〜5個のエステル基と2〜10個のヒドロキシル基とを含む化合物;アルコキシル化アミン化合物;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種類以上の剥離改質剤をさらに含む。
【0044】
粒子の形態、あるいは熱蒸着、e−ビーム加熱、およびスパッタリングなどの種々の技術によって堆積されたフィルムとしてのいずれかで、金属放射線吸収剤をLTHC層として使用することもできる。ニッケルおよびクロムがLTHC層108に好ましい金属であり、クロムが特に好ましい。加熱層用に、あらゆる他の好適な金属を使用することもできる。金属加熱層の好ましい厚さは、使用される金属の光吸収に依存する。クロム、ニッケル/バナジウム合金、またはニッケルの場合、80〜100オングストロームの層が好ましい。
【0045】
本発明において使用されるLTHC層に好ましい放射線吸収剤は、CrおよびNiから選択される金属膜、カーボンブラック、黒鉛、ならびにLTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料からなる群から選択される。
【0046】
キャリア層
本発明の熱画像形成基体は、ベースフィルムとキャリア層とを含む。キャリア層の厚さは、約5nm〜約10μm、好ましくは約100nm〜約5μm、より好ましくは約200nm〜約3μmのいずれかの厚さであってよい。キャリア層104は、熱画像形成またはパターニングが可能な材料でできており、1つ以上の層を含むことができる。キャリア層は伝導層、絶縁層、接着層、平坦化層、または保護層として機能することができ、熱転写プロセスでナノ粒子層とともに転写される。キャリア層は、典型的には絶縁体または導体であり、後述するような多種多様の付加または縮合ポリマーおよびオリゴマーのいずれかを含むことができる。
【0047】
たとえば、π−共役ポリマーを含むキャリア層または転写層は、その層中の他の成分の性質に依存して導体層または半導体層として分類されうる。同様に、たとえば、絶縁性ポリマーを含むキャリア層または転写層は、その層中の他の成分の性質に依存して導体層または誘電体層として分類されうる。本明細書においては、化学的または電気的手段を使用して特定の温度における層の抵抗率が数桁の大きさにわたって可逆的に変動可能である場合に、その層が半導体層として分類される。ある層が半導体層ではなく、約107Ω・cm以上の抵抗率を有する場合に、その層が誘電体層として分類される。層が電子デバイスの誘電体部品として使用される場合、好ましくは抵抗率が約1011Ω・cm以上であり、より好ましくは約1014Ω・cm以上である。本明細書では、層が半導体層ではなく約106Ω・cm以下の抵抗率を有する場合に、その層は導体層として分類される。層が、電子デバイスの機能性伝導性部品である場合、好ましくはその層の抵抗率は約1Ω・cm以下であり、より好ましくは約10−4Ω・cm以下であり、最も好ましくは約10−5Ω・cm以下である。
【0048】
好ましい一実施形態においては、キャリア層は、転写プロセス中に転写されて、パターニングされたナノ粒子層とパターニングされたキャリア層とを熱画像形成レシーバー上に含む多層転写単位が得られる。キャリア層は、屈折率調整剤、吸光剤、発光体、非線形光学媒質、半導体、導体、および誘電体などの多種多様な材料を含むことができる。好ましいキャリア層は、導体層、誘電体層、および半導体層、ならびにそれらの組み合わせである。
【0049】
転写後、キャリア層は、本明細書においてベースフィルムとは反対側のナノ粒子層の面として定義されるパターニングされたナノ粒子層の表面上に位置し、ナノ粒子層の平坦化、接着、および/または保護の機能を果たすことができる。キャリア層は、転写プロセス中にレーザーによって誘発されるナノ粒子層の損傷の防止、および/または完全性の維持のための保護層として機能することもできる。キャリア層は、ナノ粒子層のレシーバーへの付着を改善することもできる。
【0050】
本発明の別の好ましい一実施形態においては、キャリア層は、転写プロセス中のナノ粒子層の転写の促進、ならびに場合により保護および付着を得る目的以外の機能は果たさない。このような場合、転写後にキャリア層を除去することが望ましい場合がある。これらの場合、キャリア層が、転写後にナノ粒子層に対して弱い付着性を示し、ブローイング、剥離、減圧、ならびに粘着面または静電面に接触させることによる付着的除去からなる群から選択される1つ以上のステップによって容易にキャリア層が除去され、それによってパターニングされたナノ粒子層は無傷で熱画像形成レシーバーに付着できるように、キャリア層材料および曝露エネルギーを選択することができる。用語「無傷」は、一般にパターニングされたナノ粒子層の50質量%を超える量が無傷のままであることを意味する。好ましくは80質量%を超える、最も好ましくは90質量%を超えるナノ粒子層が無傷のままとなる。キャリア層の除去に好適な粘着面は、付着的除去に使用される周囲条件未満のTgを有する自由表面粘着層を含む市販のテープ製品である。
【0051】
伝導層および抵抗層
キャリア層として有用な導体としては、π−共役有機ポリマーおよびこれらのポリマーにドープした種類のものが挙げられる。好ましいポリマーは、以下の分類の1つ以上に含まれる:(a)ポリアニリン(PANI)およびポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの安定な伝導性ポリマー;(b)PANI、PEDOTなどの標準的なコーティング技術を使用してフィルムを形成する可溶性または分散性の伝導性ポリマー;ならびにポリ(2,5ジアルコキシ)パラフェニレンビニレンおよびポリ(3−ヘキシル)チオフェンなどの伝導性ポリマーの他のアルキル置換またはアルコキシ置換誘導体;ならびに(c)ドーピングによって高い伝導性が得られる伝導性ポリマー。本明細書において伝導性ポリマーAと呼ぶ好ましい伝導性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ複素環式芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。高伝導性ポリマー、および伝導性ポリマーのドーピング方法の説明は以下の参考文献に見ることができる:ブレダス(Bredas),J.−L.伝導性ポリマーハンドブック(Handbook of Conducting Polymers)中;スコットハイム(Skotheim),T.編;マーセル・デッカー社(Marcel Dekker、Inc.),ニューヨーク(New York),1986,第2巻第25章(Vol.2,Chapter 25);マクダーミッド(MacDiarmid),A.G.,Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2581−2590;およびヒーガー(Heeger),A.J.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2591−2611。米国特許第5,863,465号明細書および第5,370,825号明細書には、ポリアニリンの伝導性および半導体特性が記載されている。可塑剤の酸などの有機酸が好ましいドーパントである。別の好ましいドーパントは前述の伝導性ナノ粒子である。ドーパントとして好ましい伝導性ナノ粒子は、金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、カーボンナノチューブ、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、ポリアニリンおよびその誘導体の伝導性は、参照として本明細書に援用される米国特許公開第2005/0116202号明細書に記載されるように、有機酸、および場合によりカーボンナノチューブなどのドーパントを使用して微調整することで、適切なレベルの伝導性を得ることができる。好ましいキャリア層導体は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、好ましくは約0.1〜12質量%のSWNTのポリアニリン分散体を含む。好ましくは、ポリアニリンおよびその誘導体は、1〜30個の炭素を有する有機プロトン酸でさらにドープされ、前記酸は、ポリマー主鎖中の窒素原子のモル当量の約25%〜約100%である。好ましい有機プロトン酸の1つは、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)である。
【0053】
キャリア層として有用な導体の好ましい厚さは、約0.01〜約10ミクロンであり、好ましくは約0.1〜約5ミクロンであり、より好ましくは約0.2〜約3ミクロンである。
【0054】
伝導性キャリア層は、伝導性または抵抗性ナノ粒子がドープされた非伝導性ポリマーを含むこともできる。伝導性キャリア層の形成に有用な好ましい非伝導性ポリマーは、非伝導性ポリマーAであり、この非伝導性ポリマーAは:アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびにランダムコポリマーおよびグラフトコポリマーなどの溶液系アクリルおよびスチレン−アクリル(コ)ポリマー、ならびに(メタ)アクリレートコポリマー;ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1つ以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマーからなる群から選択されるとして本明細書において定義される。非伝導性ポリマーAの特に好ましい溶液系ポリマーおよびラテックスポリマーは、Tgが約−50℃〜約175℃、より好ましくは約−30℃〜約90℃である。この群の特に好ましい溶液系ポリマーは、Mwが約10,000〜約200,000であることをさらなる特徴とする。伝導性キャリア層の形成に有用なさらに別の好ましい非伝導性ポリマーは、本明細書において非伝導性ポリマーBと呼ばれるものであり、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニルなどのそのコポリマーである。ドーパントとして好ましい伝導性ナノ粒子は、金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、カーボンナノチューブ、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいドーピングは約40〜約90質量%の範囲内のナノ粒子である。
【0055】
半導体層
機能性キャリア層として有用な半導体としては、一般に、当技術分野において周知であり、参照として本明細書に援用される国際公開第03/052841A1号パンフレットに開示されているπ−共役有機化合物およびポリマーから誘導される有機半導体が挙げられる。伝導性および半導体の有機ポリマーの合成及び性質は当技術分野において周知である。「2000年ノーベル賞講演」(Nobel Prize 2000 Lecture) アラン・マクダーミッド(Alan MacDiarmid),Current Applied Physics 1,2001,269−279;および「導電性ポリマーハンドブック」(Handbook of Conducting Polymers), T.スコットハイム(Skotheim),R.エルセンバウマー(Elsenbaumer)、およびJ.レイノルズ(Reynolds)編著、第2版(2nd ed.),マーセル・デッカー社,ニューヨーク(Marcel Dekker Inc.,NY),1998などのいくつかの概略的参考文献が入手可能である。米国特許第5,863,465号明細書および米国特許第5,370,825号明細書には、ポリアニリンの伝導性および半導体特性が記載されている。これらのポリマー半導体キャリア層の好ましい厚さは、約0.05〜約10ミクロン、好ましくは約0.1〜約5ミクロン、より好ましくは約0.2〜約3ミクロンである。本明細書において半導体Aと呼ばれる好ましいオリゴマーおよびポリマーの有機半導体としては、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ポリピレン、ポリアリールアミン、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0056】
誘電体層
誘電体キャリア層としては、顔料などの種々の充填剤を有するまたは有さない絶縁性ポリマーが挙げられる。デバイス中の機能性キャリア層として特に有用な誘電体層としては、有機ポリマー、および高K誘電体ナノ粒子と併用されるポリマーが挙げられる。ここで、高K誘電体ナノ粒子は、誘電率が20以上、好ましくは30以上、より好ましくは100以上であるナノ粒子を意味する。
【0057】
本発明の一実施形態では、キャリア層104として有用な誘電体層は、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクリルおよびスチレンポリマー;部分的に水素化されたポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ならびに、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレンと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレンとのコポリマー(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)からなる群から選択されるヘテロ原子−置換スチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせ;ならびにポリ(酢酸ビニル)からなる群から選択される1種類以上の誘電性ポリマーと;層A内で約600〜約1200nmの範囲の吸収極大を特徴とする1種類以上の近赤外線染料を、層Aの乾燥質量を基準にして約0.5質量%〜約10質量%とを含む、本明細書で層Aと呼ばれる、材料の少なくとも1つの層を含む、約1014Ω・cm以上の抵抗率を有する。本明細書における誘電性ポリマーという用語は、ホモポリマー、2種以上のモノマーの重合から誘導されるコポリマー、グラフト(コ)ポリマーを含むポスト誘導体化(post−derivatized)(コ)ポリマー、ならびに低分子量ホモポリマーまたはコポリマーを包含する。ポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、超分岐状または樹枝状であってもよい。
【0058】
層Aのための好ましい誘電性ポリマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレン(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)を含むアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックスが挙げられる。これらのラテックス系ポリマーのための好ましい任意のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。より好ましいアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックスは、少なくとも約85質量%、好ましくは少なくとも約90質量%、およびより好ましくは少なくとも約95質量%の、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレン(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)の群から選択されるモノマーを含む1種類以上のラテックス樹脂と本明細書で定義されるラテックスAの群から選択される。これらのラテックス樹脂のための好ましい任意のモノマーとしては、好ましくは約5質量%以下の(メタ)アクリル酸、好ましくは約10質量%以下のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および好ましくは約5質量%以下のグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、ラテックスは、約150nm未満、より好ましくは、約100nm未満の平均粒径、ならびに約100未満、好ましくは約75未満、およびより好ましくは約25未満の酸価を有する。
【0059】
(1014Ω・cmを超える)高い抵抗率を有する層Aのための特に好ましいポリマーは、アクリルラテックスBおよびスチレン−アクリルラテックスCならびにそれらの組み合わせである。アクリルラテックスBは、少なくとも約85質量%、好ましくは少なくとも約90質量%、およびより好ましくは少なくとも約95質量%の、メチルメタクリレートおよびブチルアクリレートからなる群から選択されるモノマーを含む1種類以上のアクリルラテックスと本明細書で定義される。スチレン−アクリルラテックスCは、少なくとも約85質量%、好ましくは少なくとも約90質量%、およびより好ましくは少なくとも約95質量%の、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびスチレンからなる群から選択されるモノマーを含む1種類以上のスチレン−アクリルラテックスと本明細書で定義される。アクリルラテックスBおよびスチレン−アクリルラテックスCのための好ましい任意のモノマーは、好ましくは約5質量%以下の(メタ)アクリル酸、好ましくは約10質量%以下のヒドロキシエチルメタクリレート、および好ましくは約5質量%以下のグリシジルメタクリレートからなる群から選択される。誘電性ポリマーとして有用なアクリルおよびスチレンアクリルラテックスの市販の例としては、ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95および1915(コ)ポリマー(ジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer))が挙げられる。好適なラテックスポリマーを合成するための方法は、国際公開第03/099574号パンフレットに報告されている。
【0060】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしては、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーが挙げられる。本明細書における「溶液系」という用語は、水ならびに/あるいは、アルコール、例えばエタノールおよびブトキシエタノール;エーテル、例えばジメトキシエタン;エステル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル;ケトン、例えば、アセトンおよび2−ブタノン;および芳香族炭化水素、例えばキシレンを含む1種類以上の一般的な有機溶媒などの溶媒に可溶な材料を指す。好ましい溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーは、約100,000未満、好ましくは50,000未満、およびより好ましくは30,000未満のMwを有する。さらに、好ましい溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーは、約250未満の酸価を有する。好ましい溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレン(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)の群から選択されるモノマーを含む。これらの溶液系ポリマーのための好ましい任意のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
層Aのための特に好ましい材料は、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックスと、上記の水性のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマーとの組み合わせである。好ましくは、この組み合わせは、組成物の乾燥質量を基準にして、約20質量%〜約80質量%、より好ましくは約40質量%〜約80質量%の、アクリルまたはスチレン−アクリルラテックス画分および約20質量%〜約80質量%、より好ましくは約20質量%〜約60質量%の、水性のアクリルまたはスチレン−アクリルポリマー画分を含む。
【0062】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしては、部分的に水素化されたポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン(PHS)、ならびにPHSと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレンとのコポリマー(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)からなる群から選択されるヘテロ原子−置換されたスチレンポリマーが挙げられる。特に好ましいコモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびスチレンであり、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびブチルアクリレートが特に好ましい。PHS(コ)ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。PHSホモポリマーが用いられるとき、分岐構造が好ましい。この種類の好ましい(コ)ポリマーは、約30,000未満および好ましくは約20,000未満およびより好ましくは約10,000未満のMwを有する。部分的に水素化されたPHSは、ポリマー内の不飽和の約50当量%まで水素化されたPHSポリマーを指し、好ましいポリマーは、約10〜20当量%まで水素化される。市販の例としては、PHS−B(分岐状PHSホモポリマー;テキサス州ダラスのデュポン・エレクトロニック・テクノロジー(DuPont Electronic Technologies,Dallas,TX))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CMM(メチルメタクリレートとのPHSコポリマー;日本国東京の丸善石油化学株式会社(Maruzen Petrochemical Co.、LTD.Tokyo,Japan))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CHM(ヒドロキシエチルメタクリレートとのPHSコポリマー;丸善(Maruzen))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CBA(ブチルアクリレートとのPHSコポリマー、丸善(Maruzen))、マルカ・リンカー(Maruka Lyncur)CST15、50、および70(スチレンとのPHSコポリマー、丸善(Maruzen))、ならびにマルカ・リンカー(Maruka Lyncur)PHM−C(部分的に水素化されたPHS、丸善(Maruzen))が挙げられる。
【0063】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしては、フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。この種類の好ましい(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーは、フェノール;アルキル−およびアリール−置換されたフェノール;ホルムアルデヒド;およびアルキル−、アリール−およびヘテロ原子−置換されたアルデヒドからなる群から選択される、モノ−およびビス−フェノールならびにモノ−およびビス−アルデヒドから誘導される。フェノール−アルデヒド樹脂はさらに誘導体化されてもよく、例えば、ヒドロキシ基がエーテル基に変換される。この基内の好ましい(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーは、約20,000以下、好ましくは約10,000以下のMwを有する。市販の例としては、ノボラック(Novolac)(登録商標)/ノボラック(Novolac)(登録商標)樹脂(ニューヨーク州スケネクタディのスケネクタディ・インターナショナル社(Schenectady International Inc.,Schenectady New York))が挙げられる。
【0064】
層Aのための他の好ましい誘電性ポリマーとしてはポリ(酢酸ビニル)ホモポリマーが挙げられる。この基内の好ましいポリマーは、約100,000以下のMwを有する。
【0065】
上記のポリマーは、数ある特性の中でも特に、改良された可撓性、付着性、赤外線染料との相溶性のために、可塑化され得る。場合によっては、可塑剤は、上記の種類のポリマーから選択されてもよい。例えば、より高いTgまたはより高い分子量(MW)のフェノール−アルデヒドポリマーが、より低いTgまたはより低いMWフェノール−アルデヒドポリマーとブレンドすることができる。別の例は、フェノール−アルデヒドポリマーとブレンドされたPHSである。上記の種類のポリマーのいくつかのための好適な可塑剤の例は、ポリ(エチレン)グリコール、グリセリンエトキシレート、ジ(エチレングリコール)ジベンゾエート、およびジブチルフタレートなどのフタレート系可塑剤を含む。様々なポリマーおよびそれらの使用に関する詳細のためのいくつかの潜在的に好適な可塑剤は、次の参照文献:「Handbook of Plasticizers」、G.ウィピッチ(Wypych)編、オンタリオ州トロントのケムテック出版(ChemTec Publishing,Toronto,Ont.)2004年に見られる。
【0066】
層Aは、層Aの乾燥質量を基準にして、約0.5質量%〜約10質量%、およびより好ましくは約0.5質量%〜約6質量%の、層A内で約600〜約1200nmの吸収極大を特徴とする1種類以上の近赤外線染料を含む。好ましくは、近赤外線染料は、その吸収帯域が転写プロセスに用いられる露光レーザーの発光帯域と重なるように選択される。典型的に、露光レーザーは、近赤外線範囲の放射線を発する。好ましい種類の染料は、インドシアニン、多置換フタロシアニンおよび金属含有フタロシアニンを含むフタロシアニン、ならびにメロシアニンの群から選択されるシアニン化合物である。特に好ましい種類の近赤外線染料は、約830nmでの吸収を有するインドシアニン染料のものである。約830nmで吸収を有し、様々な溶媒および水への可溶性を有するいくつかの好適なインドシアニン染料は、H.W.サンド社(H.W.Sands Co.)および他の供給元から入手可能である。本発明のための好ましい近赤外線染料は、3H−インドリウム、2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−クロロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−、CAS番号[128433−68−1]を有するトリフルオロメタンスルホン酸との塩(1:1);2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、分子内塩、CAS番号[162411−28−1]を有する遊離酸;ならびに以下の式(I)および(II)とそれらの共鳴構造とに対応するインドレニン(indolenine)染料の群から選択される。
【化2】
【0067】
材料の好ましい染料レベルは、約0.2以上のフィルムODを生じることとなり、約0.5〜約1.5のODが好ましい。好ましいODに達するために、未充填の(unfilled)水性ラテックス系は、典型的に、約4〜6質量%のより高い染料充填量を必要とするであろう。未充填の溶液系は、典型的に、約0.5〜約2質量%のより低い染料充填量を必要とするであろう。
【0068】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、勾配染料層である2つ以上の層Aを含み、それぞれの勾配染料層は独立して約0.5〜約10質量%の乾燥質量%の近赤外線染料を特徴とし;ここで、少なくとも1つの勾配染料層は、より低い質量%の近赤外線染料を有し、少なくとも1つの勾配染料層は、より高い質量%の近赤外線染料を有し、そして近赤外線染料の前記より高い質量%は、近赤外線染料のより低い質量%の値より少なくとも20%高い値である。
【0069】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの層Aは、層Aの乾燥質量を基準にして約10〜約90質量%の高誘電率ナノ粒子画分をさらに含み、ナノ粒子画分は、約20を超える誘電率、および約5nm〜約500nmの平均粒径を有する。本明細書における高誘電率ナノ粒子画分は、約20以上、好ましくは約30以上、およびより好ましくは約100以上の誘電率を有するナノ粒子を指す。この実施形態を実施するための好ましい誘電性ポリマーは、上述したように、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリル(コ)ポリマー、およびそれらの組み合わせ;ならびにフェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーの群から選択される。この実施形態を実施するための好ましい高誘電率ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウムおよび二酸化チタンの群から選択される。
【0070】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、勾配ナノ粒子層である2つ以上の層Aを含み、それぞれの勾配ナノ粒子層は独立して約10〜約90質量%の乾燥質量%の高誘電率ナノ粒子画分を特徴とし;ここで、少なくとも1つの勾配ナノ粒子層は、より低い質量%の高誘電率ナノ粒子画分を有し、少なくとも1つの勾配ナノ粒子層は、より高い質量%の高誘電率ナノ粒子画分を有し、そして前記より高い質量%の高誘電率ナノ粒子画分は、より低い質量%の値より少なくとも20%高い値である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、約1014Ω・cm以上の抵抗率を特徴とする、1種類以上の誘電性ポリマーを含む、本明細書で層Bと呼ばれる他の誘電体層をさらに含む。誘電性ポリマーの広範なリストは、国際公開第03/052841号パンフレットおよび国際公開第06/024012号パンフレットに見られる。層Bのための好ましい誘電性ポリマーは、上述したように、アクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリル、スチレンおよびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアクリルおよびスチレンポリマー;部分的に水素化されたポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、ならびに、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレンと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換されたスチレンとのコポリマー(ここで、アルキル基がC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基である)からなる群から選択されるヘテロ原子−置換されたスチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせ;ならびにポリ(酢酸ビニル)からなる群から選択される。この実施形態は、上で開示された他の実施形態を含めてさらに実施することができる。層Bのための好ましい任意の添加剤としては、カーボンブラックおよび高誘電率ナノ粒子が挙げられ、この実施形態を実施するための好ましい高誘電率ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウムおよび二酸化チタンからなる群から選択される。
【0072】
別の好ましい実施形態では、誘電体層は、抵抗率が1014Ω・cm以上であり、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、およびアルキル置換スチレンからなる群から選択されアルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるモノマーを少なくとも約85質量%含むアクリルラテックス、スチレンラテックス、およびスチレン−アクリルラテックスからなる群から選択される1種類以上の誘電性ポリマーを含む層Cとして本明細書で呼ばれる少なくとも1つの材料の層を含む。この実施形態は前述の他の実施形態を含めてさらに実施することができる。一実施形態においては、層Cは、層Cの乾燥質量の最大約90質量%の高誘電率ナノ粒子画分をさらに含み、このナノ粒子画分は、誘電率が約20を超え、平均粒度が約5nm〜約500nmである。層Cに好ましい任意選択の添加剤としては、カーボンブラックおよび高誘電率誘電体ナノ粒子が挙げられ、この実施形態を実施するのに好ましい高誘電率誘電体ナノ粒子は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、および二酸化チタンの群から選択される。
【0073】
層A、任意選択の層B、および層C中に使用される誘電性ポリマーのTgは、約−30〜約150℃の範囲であり、好ましくは約20〜約90℃の範囲であり、最も好ましくは約30〜約70℃の範囲である。典型的には、充填剤の添加によって、より低いTgのポリマーの利用が可能となり、可塑剤の添加によって、より高いTgのポリマーの利用が可能となる。誘電体層自体、ならびに層A、層B、および層Cなどの誘電体層中に使用される層の好ましいTgは約30〜約100℃であり、好ましくは約40〜約85℃であり、最も好ましくは約45〜約65℃である。
【0074】
層A、層Bおよび層Cには、充填剤、界面活性剤、消泡剤、分散剤および粉砕助剤などの添加剤が含まれてもよい。この目的のために好適な多数の界面活性剤、消泡剤、分散剤および粉砕助剤が利用可能である。選択は、多くの場合、観察されるコーティングおよび分散体の品質ならびに熱転写プロセスにおける、誘電体層の、他の層への所望の付着に基づくこととなる。特定の実施形態では、界面活性剤は、シロキシ−、フルオリル−、アルキル−およびアルキニル−置換された界面活性剤を含む。これらとしては、ビック(Byk)(登録商標)(ビック・ケミー(Byk Chemie))、ゾニル(Zonyl)(登録商標)(デュポン(DuPont))、トリトン(Triton)(登録商標)(ダウ(Dow))、サーフィノール(Surfynol)(登録商標)(エア・プロダクツ(Air Products))およびダイノール(Dynol)(登録商標)(エア・プロダクツ(Air Products))界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤は、ビック(Byk)(登録商標)345、346および348ならびにゾニル(Zonyl)(登録商標)FSOおよびFSNである。特定の実施形態では、消泡剤はアルキルおよびアルキニル官能基を含み、消泡剤としてはサーフィノール(Surfynol)(登録商標)消泡剤が挙げられる。特定の実施形態では、分散剤は官能化されたポリマー、オリゴマーおよびモノマーを含み、分散剤としては、サーフィノール(Surfynol)(登録商標)およびディスパービック(Disperbyk)(登録商標)分散剤が挙げられる。
【0075】
誘電体キャリア層として有用な他の誘電性ポリマーとしては、前述の非伝導性ポリマーAおよび非伝導性ポリマーBが挙げられる。
【0076】
誘電体層の、ならびに層A、層Bおよび層Cを含む、誘電体層に用いられる層の好ましい厚さは、約0.05〜約10ミクロン、好ましくは約0.1〜約5ミクロン、およびより好ましくは約0.2〜約3ミクロンである。
【0077】
光吸収性顔料が充填された誘電性ポリマーは、反射防止層として有用となる。銀などの伝導性ナノ粒子層の下または表面上のキャリア層または追加の転写層として使用される場合、このような層は特に有用である。この目的に好ましい顔料はカーボンブラックである。好ましい組成は約1質量%〜約90質量%のカーボンブラックである。
【0078】
本明細書において前述した米国特許第6645681号明細書の光減衰剤は、ベースフィルムの代わりまたはこれに加えてキャリア層中に混入することもできる。この光減衰剤の性質は、使用される個別のレーザーおよび印刷システムに依存する。ポリマー系キャリア層の減衰剤として有用な染料としては、オイル・ブルー(Oil Blue)Nおよびメチレン・ブルー(Methylene Blue)が挙げられる。減衰剤は、熱画像形成可能なキャリア層の成分の約0.1〜約15質量%を構成することができる。
【0079】
ナノ粒子の分散液
本発明のドナー要素は、不揮発性画分であって、不揮発性画分の質量を基準にして約65〜100質量%の使用量のナノ粒子、および場合により最大約35質量%の使用量の分散剤とを含有する不揮発性画分と;揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液から一部は作製される。
【0080】
「不揮発性画分」は、必要に応じて熱画像形成ドナーの加熱または乾燥を含むこともできる熱画像形成ドナーの製造後に転写層内に残留するナノ粒子および分散剤を含有する画分を意味する。
【0081】
「分散剤」は、ナノ粒子のキャリアまたはマトリックス媒体として使用される不揮発性の有機材料および無機材料を意味する。分散剤は、ポリマー、オリゴマー、小分子、バインダー、表面処理剤、可塑剤、充填剤、消泡剤などの加工助剤、界面活性剤、安定剤、コーティング助剤、顔料、IR染料などの染料などの1種類以上の成分で構成される。分散剤は、ナノ粒子が均一に分散しコーティングされるようなナノ粒子の分散を可能にすること;ならびに転写特性への寄与、最も顕著には熱転写プロセス中のナノ粒子転写層のキャリア層および熱画像形成レシーバーへの相対的な付着力への寄与などのいくつかの機能を有する。分散剤は、転写層の機能特性にも寄与することができる。たとえば、分散剤は誘電体、半導体、または導体であってよい。
【0082】
本発明の一実施形態においては、分散剤は、ポリマーバインダーの約20%以上、より好ましくは約40%以上から構成される。分散剤の好ましい種類の1つとしては、前述の参考文献の国際公開第94/21701号パンフレットに記載されるようなグラフトコポリマーAが挙げられる。本発明の方法における分散剤として有用な他の好ましい(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーとしては、「キャリア層」と題される項における前述の定義のような伝導性ポリマーA、非伝導性ポリマーA、非伝導性ポリマーB、半導体A、および層Aに関して説明した誘電性ポリマーなどの導体層、半導体層、および誘電体層として前述したものが挙げられる。ナノ粒子転写層が機能性導体である場合には、伝導性ポリマーAから選択される伝導性ポリマーがより好ましい。ナノ粒子転写層が機能性半導体である場合には、半導体Aから選択される半導体分散剤がより好ましい。ナノ粒子転写層が機能性誘電体である場合には、層Aに関して説明した誘電性ポリマーから選択される誘電性分散剤がより好ましい。
【0083】
分散剤または分散剤成分として有用なより低分子量のオリゴマーおよび小分子としては、界面活性剤および消泡剤が挙げられる。好適な界面活性剤および消泡剤としては、キャリア層に関して前述したものが挙げられる。
【0084】
好ましくはナノ粒子の使用量は、不揮発性画分の約65〜100質量%であり、より好ましくは、不揮発性画分の少なくとも70質量%、80質量%、90質量%、および98質量%である。しかし、任意の特定の場合の使用量は、ナノ粒子、キャリア層、および熱画像形成レシーバーの性質に依存する。たとえば、実際には、銀ナノ粒子は、使用量が約65〜約93質量%であり、平均最長寸法が約5nm〜約1500nm、および分散剤画分が7.0〜約35質量%である場合に最も良好に使用されることが分かった。好ましくは銀ナノ粒子は85〜約93質量%の使用量で使用される。
【0085】
「揮発性キャリア流体」は、熱画像形成ドナーの製造中、追加の加熱を伴うが、必要に応じて感熱印刷プロセスの前に蒸発する分散液の画分を本発明者らは意味している。典型的には揮発性キャリア流体は、水、有機溶媒、気体材料、またはそれらの一部の組み合わせである。揮発性キャリア流体は、ナノ粒子、および使用されるあらゆる任意選択の分散剤と適合性となるように選択される。臨界点の圧力および温度よりも上にある超臨界流体は、揮発性キャリア流体として機能することができる。好ましい超臨界流体の1つは二酸化炭素である。
【0086】
追加の転写層
ナノ粒子層に加えて1つ以上の転写層を熱画像形成ドナーに適用することができる。追加の転写層は、ベースフィルムとは反対側のナノ粒子層の面として本明細書において定義されるナノ粒子層の表面上にあることができ、および/またはキャリア層は2つ以上の転写層を含むことができる。追加の転写層は、1つ以上の導体層、半導体層、または誘電体層を含むことができる。
【0087】
熱画像形成ドナーの作製
ナノ粒子層を含む熱画像形成ドナーは、熱画像形成基体上のキャリア層の自由表面上に分散液を適用し、そのキャリア流体を揮発させることによって作製される。分散液の適用は、ナノ粒子の均一層が得られる、または必要に応じてナノ粒子のパターニングされた層または不均一層が得られるあらゆる方法によって行うことができる。ロッドコーティング、押出コーティング、グラビアコーティング、およびスピンコーティングなどのコーティング、吹き付け、印刷、ブレーディング、へら付けを使用することができる。コーティングおよび吹き付けは、均一なナノ粒子層を得るために好ましい分散液適用方法である。多くの市販のコーティング機、コーティングロッドおよびナイフブレードなどの装置、ならびに印刷機を使用して分散液を適用することができる。キャリア流体を蒸発させるとナノ粒子層が得られる。ナノ粒子層は、加熱および減圧などのあらゆる従来の乾燥方法によって乾燥させることができる。
【0088】
保護可剥性カバー層
場合により、熱転写ドナーの最外層の上に保護可剥性カバー層が存在してもよい。このカバー層は、下にある転写層を保護し、容易に除去可能である。図1Cは、カバー層の存在を示す熱画像形成ドナー100の断面図である。熱画像形成ドナー100は、フィルム102、キャリア層104、ナノ粒子層106、および可剥性カバー層112を含む。好ましいカバーシートの1つはポリエチレンフィルムである。
【0089】
熱画像形成レシーバー
図2Aは、本発明の一実施形態による熱画像形成レシーバーの断面図である。熱画像形成レシーバー200は、レシーバーベースフィルム202、および任意選択の画像受容層204を含む。レシーバーベースフィルム202は、熱画像形成ドナーのベースフィルムに関して規定した寸法安定性のシート材料を含む。さらに、レシーバーベースフィルムは、不透明材料であってよく、たとえば、二酸化チタンなどの白色顔料が充填されたポリエチレンテレフタレート、アイボリー紙、またはタイベック(Tyvek)(登録商標)スパンボンドポリオレフィンなどの合成紙などであってよい。シート材料はガラスであってもよい。好ましいレシーバー用ベースフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミド、およびガラスである。
【0090】
任意選択の画像受容層204は、種々の転写層への熱画像形成レシーバー200の付着を促進する。好適な画像受容層204は、キャリア層の説明において前述したあらゆる(コ)ポリマー/コ(オリゴマー)/樹脂などの多様なポリマーを含む。レシーバー層の典型的なポリマーは、(メタ)アクリレートホモポリマーおよびコポリマー、(メタ)アクリレートブロックコポリマー、ならびにスチレン等の他の種類のコモノマーを含有する(メタ)アクリレートコポリマーなどの(メタ)アクリル系ポリマーである。本発明において好ましい画像受容層は、前出の定義のラテックスBである。レシーバー要素は、レシーバー支持体と画像受容層との間に、剥離層、クッション層、および接着層等の1つ以上の追加層を場合により含むことができる。本発明における使用に好適な受容要素は、米国特許第5,565,301号明細書において転写要素として開示され、国際公開第03/099574号パンフレットにおいてレシーバー要素として開示されており、両文献は参照として本明細書に援用される。別のレシーバー要素が米国特許第5,534,387号明細書に開示されており、この記載内容が参照として本明細書に援用される。本発明において好ましいクッション層は、エチレン酢酸ビニルコポリマー(エルバックス(Elvax)(登録商標)、デュポン(DuPont))である。レシーバー表面を粗面化する方法が国際公開第03/099574号パンフレットに記載されている。本発明における好ましい粗面化方法の1つは、シート、典型的には圧力及び熱の存在下で粗面化されたシートにレシーバー表面を接触させることである。
【0091】
接触
本発明の熱画像形成ドナーは、熱画像形成レシーバーに接触させられる。この接触は、ドナーのナノ粒子層と、またはナノ粒子層を覆うあらゆる任意選択層と行うことができる。「接触」とは、ドナーがレシーバーと非常に接近し、好ましくは数ミクロンの範囲内となることを意味する。あらかじめ印刷された層、繊維、または粒子などによって、ドナーとレシーバーとの間の間隙を制御するスペーサーとして機能させて、レシーバーをドナーから偏らせることができる。真空および/または圧力を使用して、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いに保持することができる。一代替法として、組立体の周囲部分で層を溶融させることによって、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いに保持することができる。さらなる一代替法として、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いにテープで留め、画像形成装置にテープで留めることができる。ピン/締め付けシステムを使用することもできる。さらに別の一代替法として、ドナー要素をレシーバー要素に積層することができる。ドナー要素100およびレシーバー要素200が可撓性である場合には、それらの組立体を、レーザー画像形成に有用なドラム上に好都合に取り付けることができる。
【0092】
転写
熱転写は、図2Bに示すようなレーザー媒介転写方法によって行うことができる。一実施形態においては、ドナー要素100とレシーバー要素200との組立体が、好ましくはレーザー放射線(R)の形態である熱に、基体上に形成される所望のパターンの画像の曝露パターンで選択的に曝露される。レーザー放射線またはレーザービーム(R)、104と、存在する場合には108との間の界面付近に焦点が合わされ、その他の場合には104と102との間の界面付近に焦点が合わされる。ナノ粒子およびキャリア層をレシーバーに転写するのに十分な放射線が照射される。
【0093】
熱転写ドナー要素を加熱するために種々の発光源を使用することができる。類似の技術(たとえば、マスクを介した露光)の場合は、高出力光源(たとえば、キセノンフラッシュランプおよびレーザー)が有用である。デジタル画像形成技術の場合は、赤外レーザー、可視レーザー、および紫外レーザーが特に有用である。特に、ドナー要素の構造、転写層材料、熱転写の方式、および他のそのような要因に基づいて、他の光源および照射条件が好適となりうる。
【0094】
放射線は、好ましくはベースフィルム102の裏側、すなわち、ナノ粒子層を含有しない側から照射される。レーザー放射線は、好ましくは最大約600mJ/cm2、より好ましくは約75〜440mJ/cm2のレーザーフルエンスで照射される。約350nm〜約1500nmの動作波長のレーザーが好ましい。約750〜約870nm、および最高1200nmなどの領域で発光するダイオードレーザーが特に好都合であり、これらは小型、低コスト、安定性、信頼性、耐久性、および変調の容易さに関して実質的に好都合となる。このようなレーザーは、たとえば、スペクトラ・ダイオード・ラボラトリーズ(Spectra Diode Laboratories)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA))より入手可能である。レシーバーに画像を適用するために使用される装置の1つは、クレオ・スペクトラム・トレンドセッター(Creo Spectrum Trendsetter)3244Fであり、これは830nm付近で発光するレーザーを使用している。この装置は空間光変調器(Spatial Light Modulator)を利用して、約830nmのレーザーダイオードアレイからの5〜50ワットの出力の分割および変調を行っている。関連する光学素子によって、画像形成可能な要素上にこの光の焦点が合わせられる。これによって、0.1〜30ワットの画像形成光がドナー要素上に生成して、50〜240の個別のビームの配列として集中し、それぞれ約10×10〜2×10ミクロンのスポット中に10〜200mWの光を有する。米国特許第4,743,091号明細書に開示されるようにスポットごとに個別のレーザーを使用して、類似の露光を行うこともできる。この場合、各レーザーは、780〜870nmで電気的に変調された50〜300mWの光を発する。他の選択肢としては、500〜3000mWを放出するファイバー結合レーザーが挙げられ、そのそれぞれが変調され媒体上に焦点が合わせられる。このようなレーザーは、アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ)のオプト・パワー(Opto Power)から入手することができる。
【0095】
熱画像形成に好適なレーザーとしては、たとえば、高出力(>90mW)シングルモードレーザーダイオード、ファイバー結合レーザーダイオード、およびダイオード励起固体レーザー(たとえば、Nd:YAGおよびNd:YLF)が挙げられる。レーザー露光滞留時間は、広範囲で変動させることができ、たとえば、百分の数マイクロ秒〜数十マイクロ秒以上とすることができ、レーザーフルエンスは、たとえば約0.01〜約5J/cm2以上の範囲内とすることができる。
【0096】
ナノ粒子層の少なくとも一部およびキャリア層の対応する近接部分が、熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写されることで、積層順で、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層が得られる。用語「キャリア層の対応する近接部分とともに」は、レシーバー上へのナノ粒子層の移動が、ナノ粒子層に近接して存在する露出キャリア層のレシーバー上への同時で対応した移動を含むことを意味する。キャリア層が、ナノ粒子層の表面上に存在する2つ以上の層または追加の転写層を含む実施形態においては、これらの層も同様に転写される。これらの部分は同じ領域である場合もあるし、実質的に同じ領域である場合もある。本発明者らは、後者が、これらの部分が正確に厳密ではなく1:1対応ではないことを意味している。実質的に同一とは、本発明が、ナノチューブなどのナノ粒子が、パターニングされたキャリア層の周囲を超えて付着しうる場合を含むことを意味している。本発明は、熱画像の周囲におけるキャリア層が完全に無傷では転写されない場合も含んでおり、これは、熱処理の周囲でのばらつき、またはその他の理由によるものと思われる。
【0097】
露光後、ドナー要素100およびレシーバー要素200は、図3Aおよび3Bに示されるように分離されて、ナノ粒子層106およびキャリア層104の転写されなかった部分がドナー要素100上に残り、ナノ粒子層106およびキャリア層104の画像形成された部分はレシーバー要素200上に残る。通常、ドナーおよびレシーバーの分離は、これら2つの要素を単純に剥離して引き離すことによって行われる。これは、一般には必要とする剥離力は非常に小さく、ドナー要素をレシーバー要素から単純に分離することで行われる。これはあらゆる従来の分離技術を使用して行うことができ、手作業または自動的に行うことができる。
【0098】
使用済みドナー要素(ネガ画像)および画像形成されたレシーバー要素(ポジ画像)のいずれかまたは両方が、機能性物体として有用となりうる。さらに、使用済みドナー要素および画像形成されたレシーバー要素のいずれかまたは両方を永久的基体として使用することができ、好ましくは積層によって、使用済みのドナーまたはレシーバーから画像を永久的基体に転写することができる。
【0099】
通常、転写層の転写された部分は、レーザー放射線に露光した転写層部分に対応する。場合によっては、ドナー要素およびレシーバー要素の性質、ならびに転写プロセスパラメーターに依存するが、ドナー要素100およびレシーバー要素200が分離されるときに、レシーバー要素が、1つ以上の転写層の露光部分と未露光部分との両方を含む。熱画像形成レシーバーの表面上に1つ以上の熱転写層の露光部分と未露光部分とを含む、熱画像形成レシーバー上のパターンの解像度を向上させる方法の1つは:(a)熱画像形成レシーバーの前記表面を接着面に接触させて、一時的な積層体を得るステップと;(b)一時的な積層体から前記接着面を除去して、1つ以上の転写層の前記未露光部分が実質的に存在しない表面を有する熱画像形成レシーバーを得るステップとを含む。この方法を実施するのに好適な接着面は、市販の接着テープであり、たとえば、3Mカンパニー(3M company)より入手可能なスコッチ(Scotch)(登録商標)ブランドのテープである。粘着性ローラー、たとえば、SDIのほこり除去システム−1(赤)(Dust Removal System−1(red))(システムズ・ディビジョン社(Systems Division,Inc.)、アーバイン(Irvine),CA 92618−2005)の形態で入手可能な中間粘着性ローラーが上記方法に好適な接着面である。前述のLTHC層として使用されるクロムフィルムも、非常に穏やかな条件下で転写層の未露光部分を除去するための有用な低粘着性接着層となる。
【0100】
本発明の方法は、パターニングされたキャリア層をレシーバー要素200から除去するステップを含んでいる。図3Cは、レシーバーシートが接着層を含み、キャリア層104が除去されている実施形態を示している。前述のようにキャリア層をレシーバーから除去するために剥離またはブローイングを使用することができる。粘着シートまたは静電シートを使用して、この除去プロセスを補助することができる。
【0101】
本発明の方法は、パターニングされたナノ粒子層上にパターニングされた層を配置するステップをさらに含むことができる。この後者の方法は、2つの転写層104Aおよび104Bを含むキャリア層を使用して、図4Aに示されるようにナノ粒子層の転写と同時に行うことができる。熱転写ステップにより得られる対応するレシーバー層(図4B)は、積層順で、前記レシーバーと、パターニングされたナノ粒子層と、パターニングされた転写層104Bおよび104Aを含むパターニングされたキャリア層とを含む。前述したようにパターニングされた転写層104Aを除去して、図4Cに示されるようなパターニングされたナノ粒子層およびパターニングされた転写層104Bを得ることができる。あるいは、独立したステップにおいて、1つ以上のパターニングされた層を、パターニングされたナノ粒子層に熱転写することもできる。好ましいポリマー層としては、導体、半導体、および誘電体の群から選択されるポリマー層が挙げられる。
【0102】
図5Aは、本発明の別の一実施形態による熱画像形成レシーバー200の断面図である。熱画像形成レシーバー200は、ベースフィルム202および少なくとも1つのパターニングされた層205を含む。パターニングされた層205は、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層からなる群から選択される。図5Bは、本発明のさらに別の一実施形態による熱画像形成レシーバー202の断面図である。熱画像形成レシーバー200は、ベースフィルム202、ベースフィルム202上のパターニングされたゲート導体層206、ゲート導体層206上のパターニングされた誘電体層208、および誘電体層208上のパターニングされたソース/ドレイン導体層210を含む。種々の組成物の物品を上記方法により作製することができる。図3B、3C、4B、4C、6A、および6Bは、電子用途のこのような数種類の組成物を示している。
【0103】
少なくとも部分的に本発明を使用することによって形成可能な種々の電気素子としては、電子回路、抵抗、コンデンサ、ダイオード、整流器、エレクトロルミネッセンスランプ、記憶素子、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、ユニジャンクショントランジスタ、薄膜トランジスタ、金属−絶縁体−半導体スタック、有機トランジスタ、電荷結合素子、絶縁体−金属−絶縁体スタック、有機導体−金属−有機導体スタック、集積回路、光検出器、レーザー、レンズ、導波管、格子、ホログラフィック素子、フィルタ(たとえば、アド−ドロップフィルタ、利得平坦化フィルタ、カットオフフィルタなど)、ミラー、スプリッタ、カプラ、コンバイナ、変調器、センサー(たとえば、エバネッセントセンサー、位相変調センサー、干渉センサーなど)、光キャビティ、圧電デバイス、強誘電性デバイス、薄膜電池、またはそれらの組み合わせ、たとえば光ディスプレイ用アクティブマトリックスアレイとしての電界効果トランジスタおよび有機エレクトロルミネッセンスランプが挙げられる。
【0104】
図6Aは、本発明の別の一実施形態により作製される組成物の断面図である。この組成物は、ベースフィルム202および少なくとも1つのパターニングされた層206を含む熱画像形成レシーバー、ならびに熱画像形成レシーバー200の表面上に分散したパターニングされたナノ粒子層106およびキャリア層104を含む。パターニングされた層206は、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層を含む群から選択される材料を含む。パターニングされた熱画像形成性キャリア層104は、場合により、パターニングされたナノ粒子層106の表面から除去することができる。
【0105】
図6Bは、本発明のさらに別の一実施形態により作製される組成物の断面図である。この組成物は、ベースフィルム202と、ベースフィルム202上にパターニングされたゲート導体206層とを含む熱画像形成レシーバーを含む。熱画像形成レシーバーは、ゲート導体層206上にパターニングされた誘電体層208と、誘電体層208上にパターニングされたソース/ドレイン導体層210と、パターニングされたソース/ドレイン導体層210上に分布してパターニングされたナノ粒子層106とをさらに含む。キャリア層104は、ナノ粒子層106の表面から除去されている。この組成物の種々の層の配列は、種々の実施形態で変動してもよい。
【0106】
本発明の別の一実施形態において、熱画像形成ドナーは、本明細書においてナノ粒子層の表面として定義されるベースフィルムとは反対側のナノ粒子層の面上に配置された1つ以上の追加の転写層を含む。本発明の方法に従って、1つ以上の追加の転写層を熱画像形成レシーバーに接触させて、熱転写プロセスが進められる。転写は、1つ以上の前記追加の転写層の対応する近接部分を熱画像形成レシーバー上に転写することで、積層順で前記レシーバー上に、パターニングされた追加の転写層、パターニングされたナノ粒子層、およびパターニングされたキャリア層を得ることを含む。
【0107】
本発明の別の一実施形態は、2つ以上の転写層を含むキャリア層を含む。その熱転写プロセスは、2つ以上の転写層の対応する近接部分を熱画像形成レシーバー上に転写することで、積層順で、前記レシーバーと、パターニングされたナノ粒子層と、2つ以上の転写層を含むパターニングされたキャリア層とを得ることを含む。好ましい多層キャリア層の1つは、誘電体転写層の表面上に半導体転写層を含む。
【0108】
追加の転写層は、好ましくは導体層、半導体層、および誘電体層からなる群から選択され、好ましい材料はそれぞれのキャリア層に関して前述した材料である。より具体的には、好ましい追加の転写層としては、伝導性ナノ粒子層が転写される場合には伝導層および誘電体層が挙げられ、半導体ナノ粒子層が転写される場合には半導体層および誘電体層が挙げられる。別の好ましい追加の転写層は、接着層としても機能する誘電体層である。これによって、パターニングされたナノ粒子層を熱画像形成レシーバーに強く付着させることができ、ナノ粒子層を損傷することなくパターニングされたキャリア層を後に除去することができる。
【0109】
本発明によって、導体、半導体、および誘電体などのさまざまな種類の基体上にナノ粒子を一段階で堆積することが可能となる。本発明の堆積方法は、乾式であるため、既に堆積されている場合があるあらゆる層に対する溶媒の不適合性の問題が発生しない。本発明の方法は、所望の構成でナノ粒子を配置するために、あらゆる予備パターニングステップ、およびあらゆる他の領域が選択された表面処理を必要としない。
【0110】
以下の実施例によって本発明をさらに明確にする。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、説明のみを目的として提供しているものであることを理解されたい。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適合させるために本発明の種々の変更および修正を行うことができる。
【0111】
材料
特に示されない限り、化学物質を、さらに精製せずに、入手したままの状態で使用した。溶媒は、アルドリッチ(Aldrich)およびVWRから購入され、試薬グレードの純度またはそれ以上の純度のものであり;入手可能な場合は、HPLCグレードおよび好ましくは電子グレードの溶媒を用いた。水は、脱イオン水、アルドリッチ(Aldrich)製のHPLCグレードの水、または精製水のいずれかであった。ポリマー、可塑剤、赤外線染料、および界面活性剤を、本明細書に挙げた供給元から入手するかまたはアルドリッチ(Aldrich)から購入した。カーボンブラック分散体などの顔料を、ペン・カラー社(Penn Color,Inc.)(ペンシルベニア州ドイルスタウン(Doylestown,PA))から入手した。銀ナノ粒子は、フェロ社(Ferro Co.)の電子材料事業部(Electronic Material Systems)(ウルトラファイン・フェロ(Ultrafine Ferro)RD&S 7000−35Ag粉末:粒度d50=220nmおよびd90=430nm)より購入した。すべての原材料ポリエステルフィルムは、デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))より入手した。
【0112】
ドナー基体
Cr LTHC層
ポリエチレンテレフタレート(PET、特に明記しない限り全ての実施例において厚さ50ミクロン)のベースフィルムを、バージニア州マーチンズビル(Matinsville,VA)のCPフィルム(CP Films)によって真空蒸着室においてクロム金属でコーティングした。光減衰剤(670nmの吸収剤)を用いておよび用いずにPETフィルムに金属化を行った。クロム層を50%Tおよび40%Tの両方でコーティングした。この実施例では、これらのドナーフィルムは、光減衰剤を用いずに金属化されたフィルムについては、40%T Cr PETドナー基体および50%T Cr PETドナー基体と呼ぶこととする。ベースフィルムに670nmの吸収剤を組み込んだドナーフィルムは、40%T Cr青色PETドナー基体および50%T Cr青色PETドナー基体と呼ぶこととする。
【0113】
有機LTHC層
有機LTHC層を、上記のPCT/US05/38009号明細書の実施例の配合Lに報告されるように調製した。
【0114】
LTHCコーティング配合物を以下の材料から調製した:(i)脱塩水:894g;(ii)ジメチルアミノエタノール:5g;(iii)ハンプフォード(Hampford)染料822(ハンプフォード・リサーチ(Hampford Research);配合物はSDA 4927に該当する):10g;(iv)ポリエステルバインダー(アメルテック・ポリエステル・クリア(Amertech Polyester Clear);アメリカン・インク・アンド・コーティング社(American Inks and Coatings Corp);ペンシルベニア州バレーフォージ(Valley Forge;PA)):65gの30%水溶液;(v)テゴウェット(TegoWet)(商標)251(4)(ポリエーテル変性ポリシロキサンコポリマー、ゴールドシュミット(Goldschmidt)):2.5g;(vi)ジメチルアミノエタノールエチルリン酸カリウム:14gの11.5%水溶液[この11.5%水溶液を、3部の水および0.5部のエチルリン酸(ethyl acid phosphate)(ストーファ・ケミカル社(Stauffer Chemical Company)、コネチカット州ウェストポート(Westport,CT):ルーブリゾール(Lubrizol)、オハイオ州ウィクリフ(Wickliffe,OH))ならびに十分な45%水酸化カリウム水溶液を組み合わせて4.5のpHを得た後、十分なジメチルアミノエタノールを加えて7.5のpHを得て、最後に水で希釈して、水を含まない化合物の11.5相対質量パーセントの、合計5部の最終水溶液を得ることによって調製した];(vii)架橋剤サイメル(Cymel)(商標)350(高度にメチル化された、モノマーメラミンホルムアルデヒド樹脂、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries Inc.)、ニュージャージー州ウエストパターソン(West Paterson,NJ)):10gの20%溶液;ならびに(viii)アンモニウムp−トルエンスルホン酸:2gの10%水溶液。
【0115】
成分(ii)および(iii)を水に加え、最大で24時間攪拌させてから、他の成分を示した順序で加えた。この配合物を濾過する必要はない。その配合物をインラインコーティング(in−line coating)技術で以下のように適用した:ポリマーベースフィルム組成物を溶融押し出しし、冷却された回転ドラム上にキャスティングし、75℃の温度でその元の寸法の約3倍になるまで押し出し方向に延伸した。次に、冷却された延伸フィルムの1つの側部をLTHCコーティング組成物でコーティングして、20〜30μmのウェットコーティング厚さを得た。直接グラビアコーティングシステムを用いて、コーティングをフィルムウェブに適用した。60QCHグラビアロール(パマルコ(Pamarco)によって供給される)を溶液に通して回転させて、溶液がグラビアロール表面を覆うようにする。グラビアロールを、フィルムウェブに対して反対方向に回転させ、1つの接触点でウェブにコーティングを適用する。コーティングされたフィルムを、100〜110℃の温度で乾燥器(stenter oven)内に通し、ここで、フィルムを乾燥させ、その元の寸法の約3倍になるまで横方向に延伸した。二軸延伸コーティングフィルムを、従来の手段によって約190℃の温度でヒートセットした。次に、コーティングポリエステルフィルムを、ロールに巻き付ける。最終的なフィルムの全厚は50μmであり;転写補助コーティング層の乾燥厚さは0.07μmである。PET支持層は、ディスパース・ブルー(Disperse Blue)60またはソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料のいずれかを含有し、基体層のポリマーの、典型的に0.2質量%〜0.5質量%の最終染料濃度を得た。ディスパース・ブルー(Disperse Blue)60染料(0.26質量%)を含有するポリマー組成物は、670nmで0.6±0.1の吸収度、および830nmで<0.08の吸収度を有した。ソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料(0.40質量%)を含有するポリマー組成物は、670nmで1.2の吸収度、および830nmで<0.08の吸収度を有した。これらのドナー基体を、有機LTHC青色PETドナー基体および有機LTHCグリーン(Green)PETドナー基体と本明細書で呼ぶこととする。
【0116】
コーティング
ドナー要素およびレシーバー要素上への転写層およびその他の層のコーティングは、R.D.スペシャルティーズ社(R.D.Specialties,Inc.)(RDS;ニューヨーク州ウェブスター(Webster,New York))より購入した直径0.5インチのコーティングロッドを巻き付けて形成されたステンレス鋼と、ブッシュマン社(Buschman Corporation)(オハイオ州クリーブランド(Cleveland,Ohio))より購入したCNプロファイル(CN profile)を有する直径0.625インチのロッドから形成されたクロムめっきステンレス鋼とを使用して行った。表面の粒子汚染を除去するために、コーティングの直前にドナーの自由表面を加圧窒素流で洗浄する。コーティングは、平滑なガラス表面上に手で塗布するか、あるいはE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(DuPont De Nemours Inc.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))製造のウォータープルーフ(WaterProof)(登録商標)カラー・バーサティリティ(Color Versatility)コーティングシステム(CVコーター)またはスロットダイコーターのいずれかを使用して機械でコーティングした。
【0117】
コーティングは、約68℃の平均温度および約40〜50%の平均相対湿度の制御された温度/湿度環境において保管した。
【0118】
導体の電気特性評価
既知の形状の線の抵抗を測定することによって、導体線のシート抵抗および抵抗率を求めた。カスケード・マイクロテック(Cascade MicroTech)(オレゴン州ビーバートン(Beaverton,Oregon))プローブステーションモデルアレッシ(Alessi)REL−6100および半導体パラメーター分析器のアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,California))モデル4155Cを使用して、線に電流を印加し、線の中の既知の2箇所の電圧降下を測定した。典型的には、1×105〜−1×105Aで電流を掃引して、mVからVの範囲内で電圧を求めた。I−V曲線の勾配および線の形状を使用して抵抗、シート抵抗、および抵抗率を求めた。これらの値から、伝導率およびコンダクタンスを計算することができる。
【0119】
熱画像形成装置およびドナーの取付け
クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800(クレオ/コダック(Creo/Kodak)、カナダのバンクーバー(Vancouver,Canada))を用いた。クレオ・トレンドセッター(Creo trendsetter)(登録商標)800は、5080dpi分解能で830nmの波長で12.5ワットの最大平均動作電力を有する改造されたサーマル(Thermal)1.7ヘッド(Head)を用いた改造されたドラム型の画像形成器であった。この800トレンドセッター(Trendsetter)を、平均温度が約68℃および平均相対湿度が約40〜50%の、制御された温度/湿度環境で動作させた。それぞれの印刷装置について、熱画像形成レシーバーの部分をドラム上に位置決めした。ドナー要素の、転写層でコーティングされた側がレシーバーの自由面に面するように、熱画像形成ドナーを取り付けた。画像形成組立体(assemblage)を、ドナーフィルム基部を通して裏側から露光した。真空ホールドダウン(vacuum hold down)を用いて、ドラムに機械的に固定された標準的なプラスチックまたは金属担体プレートにフィルムを取り付けた。クレオ・トレンドセッター(Creo trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッターを用いたある実験では、通常のドナーおよびレシーバーのサイズに適合するようにドラム上に直接機械加工された吸引孔を有する非標準ドラムを、標準的なドラム/担体プレート組立体の代わりとして用いた。約600mmのHg減圧によって、ドナーとレシーバーとを接触させた。レーザー出力は、コンピュータの制御下で、所望の画像形成パターンを形成するためのものであった。レーザー出力およびドラム速度は制御可能であり、受像表面上に転写される画像の目視検査によって判断される画像品質を最適化するために、それを繰返し調節した。
【0120】
ラテックスバインダーの作製
特定のドナーおよびレシーバー要素の作製に用いたラテックスバインダーは、国際公開第03/099574号パンフレット(材料が表1に報告されている)の手順に従って調製した。組成物は、表2に報告され、国際公開第03/099574号パンフレットに報告される分析方法を特徴としていた。モノマーおよび開始剤は、市販されており(アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))、これを入手したままの状態で使用した。界面活性剤は、ポリステップ(Polystep)(登録商標)B−7という、ラウリル硫酸アンモニウムの29質量%水溶液(ステパン社(Stepan Co.)、イリノイ州ノースフィールド(Northfield,IL))であった。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
レシーバー
表面処理した5ミルのメリネックス(Melinex)ST504(デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films))を入手したときの状態で使用した。界面活性剤としてゾニル(Zonyl)(登録商標)FSAを含有するアクリルラテックスポリマー分散体を、4ミルのメリネックス(Melinex)(登録商標)574ベースフィルム(デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films))上にスロットダイコーティングすることによって、国際公開第03/099574号パンフレットの手順(可撓性レシーバーFR−1の手順(Flexible Receiver FR−1 Procedure)により、アクリルラテックス画像受容層を有するR−1 PETレシーバーを作製した。このアクリルラテックスポリマーは前述のように調製し、それらの組成は表2に示している。R−1レシーバー配合物は表3に示すように調製した。
【0124】
【表3】
【0125】
水性誘電体層を作製するための一般手順
指定の量の水、および場合により3質量%水酸化アンモニウム溶液を混合することによって、水溶液を調製した。続いて、IR染料、4分の1の上記水溶液、ならびに場合により消泡剤、界面活性剤、および可塑剤を、褐色ガラス容器中に入れて十分混合した。場合により、容器中で第2のバインダーを4分の1の上記水溶液とともに秤量し、十分に混合した。場合により、別の容器中で顔料を4分の1の上記水溶液とともに秤量し、十分に混合した。撹拌子の入った大型容器中でバインダーを秤量し、残りすべての上記水溶液を加えた。第2のバインダー分散体、IR染料分散体、および顔料分散体の内容物を、撹拌しながらバインダーにゆっくり加えた。少なくともさらに15分間撹拌した後、配合物を濾過して褐色容器または箔で覆った容器中に入れた。特に明記しない限り、孔径0.45ミクロンのシリンジフィルターを使用した(プロピレンハウジングを有する25mmGD/Xガラス・マイクロファイバー(Glass Microfiber)GMF;カタログ番号6894−2504 ワットマン(Whatman)、ニュージャージー州クリフトンのワットマン社(Whatman Inc.,Clifton,New Jersey))。
【0126】
銀ナノ粒子を分散させるための一般手順
銀分散体を音波処理プローブ(デュケイン社(Dukane Co.)モデル(Model)40TP200、トランスデューサー・モデル(Transducer Model)41C28)で15分間処理しながら、5分間隔でスパチュラで混合物を撹拌した。次に、この混合物が入った容器を水浴中に入れ、1時間音波処理を行いながら、0.5時間間隔でスパチュラで混合物を撹拌した。次に、この混合物を、室温の水浴中、プローブ音波処理をさらに15分間行って処理し、この間、5分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。得られた分散液を2.0ミクロンのワットマン(Whatman)(登録商標)MGF−150シリンジ−ディスクフィルターで2回濾過した。
【0127】
実施例1
この実施例では、ベースフィルム、LTHC層、および青色に着色したアクリルラテックスキャリア層を含む熱画像形成基体に、ポリマー分散剤を含有しないアルミナナノロッドを適用し、レーザー放射線を使用して熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。
【0128】
アルミナナノロッド分散液の調製
アルミニウムイソプロポキシド(45.5g)およびアルミニウムsec−ブトキシド(60g)を0.085MのHCl(3L)中で10日間撹拌した。次にこの溶液を、ガラス製振盪管中で4bar(窒素)の圧力で150℃に22時間加熱して、アルミナ(Al2O3)ナノロッド溶液を得た。こうして形成したナノロッドは、直径が約15nmであり、長さが約200nmである。約3質量%までこの溶液を蒸発させて濃縮した。
【0129】
キャリア層を有する熱画像形成ドナー基体の製造
以下のようにして青色に着色したキャリア層を作製した:
【0130】
顔料分散体:
前出の参考文献の国際公開第94/21701号パンフレットに記載されるようにして水性グラフトコポリマー分散剤(60質量%)を調製した。これは69質量%のn−BA/MA/AA(45.5/45.5/9)を31質量%のMMA/MAA(71.25/28.75)とグラフトしたものからなった。最初に2001gの水性グラフトコポリマー分散剤(60質量%)、218.109gのアミノメチルプロパノール、および32998.49gの水を混合することによって、顔料対分散剤比4:1の固形分15質量%の顔料分散体を調製した。得られた混合物を4802.4gのイルガライト・ブルー・グロ・ピグメント(Irgalite Blue Glo Pigment)(チバ(Ciba);C.I.ピグメント・ブルー(Pigment Blue)15:3;CAS 147−14−8)とともに、0.8〜1.0mmのジルコニア媒体およびダイノミル(Dynomill)中90秒/半パイントの時間の再循環ループを使用した10ガロンのダイノミル(Dynomill)ビーズミル中で分散させた。
【0131】
配合物の調製:
約157.5部の水、398部のイルガライト・ブルー・グロ(Irgalite Blue Glo)分散体(15質量%)、60部のラテックスA−1(33質量%)、9.09部のラテックスA−2、2.5部のSDA 4927、0.40部のゾニル(Zonyl)(登録商標)FSA(25質量%)、および2.98部のカプロラクトンと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの2:1付加体を、36.12部のラテックスA−1(33質量%)とともに加えて混合することによって、水性キャリア層配合物の一般手順に従い、固形分15質量%の分散体を得た。
【0132】
コーティングの作製:
上記固形分15質量%のキャリア層配合物を、50%T Cr PETドナー基体のクロム層上にスロットダイコーティングし、乾燥させて13.7mg/dm2の厚さまで減少させて、キャリア層を有する熱画像形成基体を得た。この乾燥キャリア層コーティングは、59.7質量%のイルガライト・ブルー・グロ(Irgalite Blue Glo)分散顔料、0.1質量%ゾニル(Zonyl)(登録商標)FSA、2.5質量%のSDA 4927、31.7質量%のラテックスA−1、3.0質量%のラテックスA−2、および3.0質量%のカプロラクトンと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの2:1付加体の組成を有した。
【0133】
キャリア層上への分散液の適用
ガラスの平坦シート上に上記熱画像形成基体(20cm×30cm)を、キャリア層が上を向くようにして置いた。ナイロンフィルター(孔径5ミクロン)を介してシリンジから、3質量%アルミナナノロッド分散体(5mL)を、ドナーの短い辺に沿って供給した。#4巻線ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、溶液のビードが、熱画像形成基体のキャリア層を覆う均一な薄膜になるように手で延ばした。この膜を乾燥させて、キャリア層の表面上にアルミナナノロッドの薄いコーティングを得た。
【0134】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーおよび熱画像形成R−1レシーバーを、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。830nm放射線を使用して合計11回、幅1cm×長さ2.5cmの長方形のパターンを画像形成した。各画像は、クレオ(CREO)800トレンドセッター(Trendsetter)(登録商標)の0.5W刻みで3W〜12Wまでの異なる出力レベル設定で印刷した。クレオ・トレンドセッター(CREO Trendsetter)(登録商標)のドラムは、すべての出力設定で170rpmで回転するように設定した。印刷パラメーターは:表面深さ=95および表面反射率=0.320であった。6.5Wを超える値で、青色着色アクリルラテックスキャリアポリマーおよびナノ粒子転写層をドナーシートからレシーバーシートに、幅1cmの長方形のパターンに従って転写すると、レシーバー基体の表面に、制御されパターニングされたナノロッドが堆積された。この最初の出力レベルの走査から、ナノロッドおよびキャリア層の転写パターニングに最適な出力が8Wであることを視覚的に決定された。狭い線、正方形、ならびに印刷コンデンサおよびトランジスタを製造するための構成要素の複雑な試験パターンを、8Wで170rpmのドラム速度においてクレオ(CREO)800トレンドセッター(Trendsetter)(登録商標)上で印刷すると、印刷された電子デバイスおよびその他の機能デバイスの製造に適切な小さい長さスケールのパターンでキャリア層およびナノロッドが堆積された。
【0135】
実施例2
この実施例では、670nm吸収剤を含むベースフィルム、LTHC層、およびノボラック(Novolac)キャリア層を含む熱画像形成基体にチタン酸バリウムナノ粒子を適用し、レーザー放射線を使用して熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。ノボラック(Novolac)キャリア層部分は、後にテープを使用して除去した。
【0136】
チタン酸バリウムナノ粒子分散体の調製
チタン酸バリウムナノ粒子を、オブライエン(O’Brien),S.;ブルス(Brus),L.;マレー(Murray),C.B.J.Am.Chem.Soc.2001,123,12085−12086の手順により調製した。この手順のナノ粒子の安定剤としてオレイン酸を使用して直径約8nmのナノ粒子を得た。単離したチタン酸バリウムナノ粒子をp−キシレンと混合して10質量%分散液にして、コーティングするまでこれを振盪し続けた。
【0137】
キャリア層を有する熱画像形成ドナー基体の製造
ノボラック(Novolac)HRJ14198(3.168g、スケネクタディ・インターナショナル(Schenectady International))およびTic−5c(0.032g、Hampford Research、Inc.)のアセトン(10.8g)および2−メトキシエタノール(1.28g)中の溶液を調製し、終夜振盪した。この溶液の一部を、#3成形ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、50%T Cr青色PETドナー基体(30cm×20cm)のCr層上に手でコーティングし、空気中で乾燥させて、キャリア層を有する熱画像形成ドナー基体を得た。
【0138】
キャリア層上への分散液の適用
上記熱画像形成基体を、キャリアポリマー層が上向きになるように平坦面上に置いた。10質量%チタン酸バリウム分散体(約4mL)を、基体の8インチの辺の1つに沿って供給した。#9成形ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、分散体が熱画像形成基体のキャリア層を覆う均一な薄膜となるように手で延ばした。この膜を空気中で乾燥させて、熱画像形成ドナーを得た。
【0139】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーおよび熱画像形成R−1レシーバー(28cm×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。合計11回、幅1cm×高さ2.5cmの長方形のパターンを画像形成した。各画像は、0.5W刻みで7.5W〜12.5Wまでの異なる出力レベル設定で印刷した。ドラムは、11のすべての出力設定で170rpmで回転するように設定した。印刷パラメーターは:表面深さ=105および表面反射率=0.308であった。11のすべての出力レベルでノボラック(Novolac)HRJ14198/チタン酸バリウムナノ粒子の二重層を、幅1cmの長方形のパターンに従ってドナーシートからレシーバーシートに転写すると、レシーバー基体の表面に、制御されパターニングされたチタン酸バリウムナノ粒子が堆積された。ドナーを目視検査すると、7.5W以上の出力で>80%の転写が起こり、10W以上の出力で>95%の転写が起こったことが分かった。
【0140】
キャリア層の除去
印刷実験後、空気の存在下室温で密封したプラスチック袋中にレシーバー基体を保管した。この時間の間、ノボラック(Novolac)キャリア層は黄褐色に変化した。チタン酸バリウムナノ粒子およびノボラック(Novolac)キャリア層の転写印刷から約2年後、スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ片を、8.0Wおよび12.5Wで印刷した領域部分の上に置いた。1分未満、テープ片をそのままの場所に置き、続いて剥離すると、黄変したノボラック(Novolac)キャリア層の対応部分は外れ、白色ナノ粒子層はその場所に残った。
【0141】
実施例3(比較例)
この実施例では、670nm吸収剤を含むベースフィルム、およびLTHC層を含むが、キャリア層は含まない熱画像形成基体にチタン酸バリウムナノ粒子を適用し、続いてレーザー放射線を使用して熱画像形成する方法を説明する。実施例2と実施例3との印刷結果の比較から、転写プロセスを補助し、より低エネルギーで高歩留まりの転写が可能となるキャリア層の有用性が示される。実施例2と実施例3との比較によって、接着層としての機能においてキャリア層が有用であり、それによって、ナノ粒子が転写プロセス全体で連続フィルムを維持し、レシーバーに付着することが可能となることも示す。
【0142】
チタン酸バリウムナノ粒子分散体の調製
実施例2に記載のようにしてチタン酸バリウムナノ粒子分散体を調製した。
【0143】
キャリア層上への分散液の適用
50%T Cr青色PETドナー(30cm×20cm)をCr層が上向きになるように平坦面上に置いた。10質量%チタン酸バリウム分散体(約4mL)を、基体の8インチの辺の1つに沿って供給した。#11成形ステンレス鋼RDSコーティングロッドを使用して、分散体が熱画像形成基体のCr層を覆う均一な薄膜となるように手で延ばした。この膜を空気中で乾燥させて、熱画像形成ドナーを得た。
【0144】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーおよび熱画像形成R−1レシーバー(28cm×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。0.5W刻みで3.0W〜12.0Wで、ドラム速度170rpmにおいて、幅1cm×高さ2.5cmの長方形のパターンを画像形成した。印刷パラメーターは:表面深さ=105および表面反射率=0.336であった。ドナーの目視検査より、転写は不完全であり、9W以上の出力で転写が約25%以上であることが分かった。レシーバー上に対応する薄いパターンが観察された。0.5W刻みで3.0W〜12.0Wで、ドラム速度100rpmにおいて、幅1cm×高さ2.5cmの長方形のパターンを印刷することによって、転写プロセスのエネルギーを増加させた。ドナーの目視検査より、8W以上で、パターニングされた領域中のナノ粒子の転写が>50%となり、10.5W以上で転写が>80%となることが分かった。レシーバーへのナノ粒子の付着は、7.5および8Wにおいてはパターニングされた領域の一部で観察されたが、8.5W以上では観察されなかった。
【0145】
実施例4
この実施例では、ベースフィルム、有機LTHC層、および黒色アクリルラテックスキャリア層を含む熱画像形成基体に10質量%の分散剤を含有する銀ナノ粒子を適用し、熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。
【0146】
キャリア層の作製およびコーティング
11.18gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)538(45質量%)、0.025gのSDA 2860、0.050gのビック(Byk)(登録商標)348、1.820gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、および18.72gの水を使用して、水性キャリア層配合物の一般手順に従って、pHが9.10の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用して9.8フィート/分で、得られた溶液(3mL)を有機LTHC緑色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。最終的な乾燥コーティングの組成は:88.2質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)538、0.4質量%SDA 2860、0.9質量%のビック(Byk)(登録商標)348、および10.5質量%のブラック(Black)32B56であった。
【0147】
銀分散体の調製およびコーティング
ウルトラファイン(Ultrafine)RD&S 7000−35Ag粉末(22.530g)、20%のエルバサイト(Elvacite)(登録商標)2028(12.550g、キシレン中20質量%)、キシレン(12.516g)、およびジ(エチレングリコール)ジベンゾエート(0.048g)の混合物を前述の一般手順により分散させた。この分散体(6mL)を、#6CN成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用して5.8フィート/分の速度で黒色キャリア層上にコーティングし、42℃で20
分間乾燥させた。
【0148】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナーの一部(約30×20cm)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST 504レシーバー(約28×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。600mmHgの減圧によってドナーとレシーバーとの間の接触を確立した。蛇行パターンのブロックを、200、100、および50ミクロンの線幅で、線の間の間隔は線幅と同じにして印刷した。印刷パラメーターは:表面深さ=71;表面反射率=0.28;escan=3であった。ドラム速度120(0.25Wの増分で5〜8W)、ドラム速度80(0.25Wの増分で3.75W〜6.75W)、およびドラム速度40(0.25Wの増分で2.5〜5.5W)でパターンを印刷した。ドラム速度120においては、5.75W以上で転写が観察され、6.7〜8Wにおいて>90%の転写が観察された。ドラム速度80においては、4.25W以上で転写が観察され、5〜6.75Wにおいて>90%の転写が観察された。ドラム速度40においては、5W以上で転写が観察され、5.75〜8Wにおいて>90%の転写が観察された。
【0149】
電気特性評価
前述の標準手順によりシート抵抗を測定した。ドラム速度40において7.25W以上で印刷した線で測定するとRsh<1Ω/□であった。
【0150】
実施例5
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、および黒色可溶性アクリルキャリア層を含む熱画像形成基体に、10質量%の分散剤を含有する銀ナノ粒子を適用して、熱画像形成レシーバーに転写する本発明の方法を説明する。
【0151】
キャリア層の作製およびコーティング
14.14gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63(30質量%)、0.025gのSDA 2860、0.50gのビック(Byk)(登録商標)348(10質量%)、2.70gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、2.50gのグリセロールエトキシレート(20質量%)、および11.94gの水を使用して、水性キャリア層配合物の一般手順に従って、pHが8.96の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを9.8フィート/分で使用して、得られた溶液(3mL)を40%T Cr青色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。最終的な乾燥コーティングの固形分の質量%は:74.32質量%ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63、0.4質量%SDA 2860、0.9質量%ビック(Byk)(登録商標)348、15.6質量%のブラック(Black)32B56および8.8質量%グリセロールエトキシレートであった。
【0152】
銀分散体の調製およびコーティング
配合、分散、およびコーティングの条件は実施例4と同じである。
【0153】
熱転写プロセス
前述の手順により、上記ドナー(約30×20cm)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST504レシーバー(約28cm×18cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。蛇行パターンのブロックを、200、100、および50ミクロンの線幅で、線の間の間隔は線幅と同じにして印刷した。印刷パラメーターは:表面深さ=71;表面反射率=0.3;escan=3であった。ドラム速度100(0.25Wの増分で5.75〜8.75W)、ドラム速度70(0.25Wの増分で5.25〜8.25W)、およびドラム速度40(0.25Wの増分で3.5〜6.5W)でパターンを印刷した。すべての出力およびドラム速度において>90%の完成度で転写された。
【0154】
電気特性評価
前述の標準手順によりシート抵抗を測定した。ドラム速度40において4.25W以上、およびドラム速度70において7.5W以上で印刷した線で測定するとRsh<1Ω/□であった。
【0155】
実施例6〜10
実施例6〜10のラテックスバインダーの調製
一連のドナー要素の作製に使用したラテックスバインダーを、表4に示される材料を使用して、「ラテックスバインダーの調製」と題される項に記載の手順および方法により調製し特性決定を行った。
【0156】
連鎖移動剤:この材料は、ベルゲ(Berge)らの米国特許第5,362,826号明細書に記載されるようにして調製した:500リットルの反応器に還流冷却器を取り付け、窒素雰囲気中で使用した。この反応器に、メチルエチルケトン(42.5kg)およびビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシマト)コバルト酸(III)イソプロピル(Co III DMG)(104g)を投入し、内容物を還流させた。Co III DMG(26.0g)、メタクリル酸メチル(260kg)、およびメチルエチルケトン(10.6kg)を上記反応器に4時間かけて加えた。同時にバゾ(Vazo)67(登録商標)(デュポン(DuPont)、5.21kg)およびメチルエチルケトン(53.1kg)の混合物の上記反応器への添加を開始し、5時間かけて加えた。添加後、反応器内容物の還流をさらに1/2時間維持した。冷却後、これより連鎖移動剤の70質量%溶液(連鎖移動剤溶液)が372kg得られ、これを直接重合に使用した。組成を表5に示す。
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
実施例6〜10のAg層のための分散体の調製
表6に示される材料を使用して前述の銀ナノ粒子を分散させる一般手順により分散体を調製した。
【0160】
【表6】
【0161】
実施例6
PANI−CNT−Agナノ粒子多層
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、ならびにポリアニリン−カーボンナノチューブ(PANI−CNT)および銀転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀およびPANI−CNT層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。後処理ステップによってラインエッジ品質が改善された。
【0162】
A.PANI−CNT−Agナノ粒子多層ドナー基体の作製
(a)ポリアニリン層の作製およびコーティング。ヒプコ・ロウ(HiPco Raw)CNT(0.1219g、テキサス州ヒューストンのカーボン・ナノテクノロジーズ社(Carbon Nanotechnologies、Inc.、Houston、Texas)より)、ディスパービック(Disperbyk)(登録商標)163(0.067g、コネチカット州ウォリングフォードのビック・ケミーUSAインコーポレイテッド(BYK Chemie USA Inc.,Wallingford,CT)、1,2−ジクロロベンゼン(8.855g)、およびキシレン(20.662g)の混合物を、音波処理プローブ(デュケイン社(Dukane Co.)モデル(Model)40TP200、トランスデューサー・モデル(Transducer Model)41C28)を使用して室温の水浴中で10分間処理し、この時間の間、5分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。続いて、PANI−DNNSA[7.325g、キシレンおよび2−ブトキシエタノール(比率4:1)中22.23質量%、0.7の酸ドーピング、米国特許第5863465号明細書により合成]を上記混合物中に加え、その混合物を45℃の水浴中に5分間入れた。この温度で平衡になった後、混合物を5分間音波処理し、この時間の間、1分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。得られた分散体を、1.0ミクロンのナイテックス(Nitex)(登録商標)03−1/1ナイロンスクリーン(メッシュ数690×470、孔径:1ミクロン、ニューヨーク州デピューのセファーアメリカ社(Sefar America Inc.,Depew,New York)で濾過した。この濾液中に、トリトン(Triton)(登録商標)X 114(コネチカット州ダンベリーのユニオン・カーバイド社(Union Carbide Co,Danbury,CT)のキシレン中の10質量%溶液を30.5マイクロリットル加えた。5.8フィート/分においてCN#12成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用しCVコーターを使用して40%T Cr PETドナー基体(約90×52cm)上にこの分散体(10.9mL)をコーティングし、40℃で25分間乾燥させた。
【0163】
(b)銀層の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目2に記載している。5.8フィート/分においてCN#6成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用しCVコーターを使用して40%T Cr PETドナー基体上のPANI−CNT層上にこの分散体(7mL)をコーティングし、48℃で20分間乾燥させた。
【0164】
B.PANI−CNT−Agナノ粒子多層をパターニングするための熱転写プロセス
前述の手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST 504レシーバー(約28cm×18cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。蛇行パターンのブロック(4.75cm×1.5cm)を、200、100、および50ミクロンの線幅で線の間の間隔は線幅と同じにして印刷した。印刷パラメーターは:表面深さ=47;表面反射率=0.52;escan=0であった。ドラム速度120(0.25Wの増分で7.5〜10.75W)およびドラム速度60(0.25Wの増分で4.5〜8W)でパターンを印刷した。
【0165】
C.熱転写の評価および後処理
ドラム速度60では転写は不完全であった。9.25W以上で200ミクロンの線の印刷で、印刷した線の間の未露光領域中の材料が線とともに転写されたことを除けば、ドラム速度120では転写は完全であった。接着面(スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ、60秒)をドラム速度120において9.75Wで印刷した50ミクロンの線と接触させると、線の間の材料が選択的に除去されて、レシーバー上に所望の50ミクロンの蛇行パターンが得られ、きれいなラインエッジを有し、線の破断はなかった。
【0166】
D.電気特性評価
前述の標準手順によりシート抵抗を測定した。ドラム速度120において7.75W以上で印刷した線の場合に1Ω/□未満のRshが測定され、10W以上で0.4Ω/□のRshが測定された。
【0167】
実施例7
PANI−CNT−Agナノ粒子−誘電体多層
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、ならびにPANI−CNT、銀、および誘電体転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、およびPANI−CNT層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされたPANI−CNT層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされたPANI−CNT、誘電体、銀、およびPANI−CNT層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。後処理ステップによってラインエッジ品質が改善された。
【0168】
A.多層PANI−CNT-Agナノ粒子−誘電体ドナー基体の作製
(a)ポリアニリン層の作製およびコーティング。手順は、実施例6−A−aにおいて前述した手順と同一であった。
【0169】
(b)銀層の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目3に記載している。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#7成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(5mL)を40%T Cr PETドナー基体(約90×52cm)上のPANI−CNT層にコーティングし、49℃で20分間乾燥させた。
【0170】
(c)誘電体層の作製およびコーティング。16.76gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63(30質量%)、16.78gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95(30質量%)、0.21gのSDA 2860、0.50gのビック(Byk)(登録商標)348(水中10質量%)、および23.26gの水を使用して、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが8.51の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用し6.3フィート/分においてCVコーターを使用して、得られた溶液(3mL)を銀ナノ粒子層上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。この乾燥コーティング中の材料の質量%は:48.7質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63、48.8質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95、2.0質量%のSDA 2860、および0.50質量%のビック(Byk)(登録商標)348であった[ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)63は、水溶性スチレンアクリル系樹脂の溶液であり、pHが8.4、MWが12,000、酸価が213、Tgが73である。ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)95は、改質スチレンアクリル系ポリマーのアンモニア塩のエマルジョンであり、pHが8.0、酸価が70である。どちらもジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer)製である]。
【0171】
B.パターニングされたPANI−CNT層を有する熱画像形成レシーバーの作製
(a)PANI−CNTドナー基体の作製およびコーティング。キシレン/1,2−ジクロロベンゼン混合物の代わりにキシレンを溶媒として使用したことを除けば、手順および分散体の材料は実施例6−A−aと同一であった。使用した材料の量は:0.1230gのHiPco未精製(Raw)CNT、0.063gのディスパービック(Disperbyk)(登録商標)163、29.680gのキシレン、5.144gのPANI−DNNSA[キシレンおよび2−ブトキシエタノール(比率4:1)中31.68質量%、0.7の酸ドーピング]、および28.9マイクロリットルのトリトン(Triton)(登録商標)X 114(キシレン中10質量%)であった。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#10成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(10.9mL)を40%T Cr PETドナー基体(約90cm×52cm)上にコーティングし、45℃で20分間乾燥させた。
【0172】
(b)レシーバーのベースフィルム上にPANI−CNT層をパターニングするための熱転写プロセス。前述の一般手順により、PANI−CNTドナーの一部(約30cm×20cm;熱転写実験の5か月前に50℃でさらに60分間乾燥させた)および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST 504レシーバー(約28cm×18cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。1つは材料の中実ブロック(本明細書においては中実ブロックパターンと呼ぶ)であり、1つは幅120ミクロンで間隔が240ミクロンの垂直線に材料がパターニングされたもの(本明細書においては垂直線パターンと呼ぶ)である2つの長方形パターン(1.25cm×0.75cm)を、この印刷実験のパターンとして使用した。2つの列(列1および2)で、各線の中に13の交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターンを印刷した。印刷パラメーターは:ドラム速度=160;表面深さ=47;表面反射率=0.46;escan=0;出力=5.75W(列1)および5.45W(列2)であった。
【0173】
C.PANI−CNT−Agナノ粒子−誘電体多層をパターニングするための熱転写プロセス。
PANI−CNTドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。すべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=47;表面反射率=0.54;escan=0;交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターンであった。列1:ドラム速度120において、0.25Wの増分で7.50〜10.50Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上に多層印刷した。列2:ドラム速度160において、0.25Wの増分で9.00〜12.00Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上に多層印刷した。列3:ドラム速度160において、0.25Wの増分で7.50〜10.50Wで、レシーバー表面上に多層印刷した。
【0174】
D.熱転写の評価および後処理
すべての出力で異なる程度で転写した多層が最適の品質を有し、最高の転写率は、列1の場合7.5〜8.25W、列2の場合9.25〜10W、列3の場合8〜8.25Wで観察された。3つすべての列で、印刷された線の間の未露光領域中の材料が、線とともに転写された。線の間の転写された材料は、レシーバーおよび線自体に非常に弱く付着しており、接着面と接触させることによって容易に選択的に除去することができ、レシーバー上に所望の線パターンを残すことができた。このことは、粘着ローラーを使用した列1(10.5W)、列2(12.0W)、および列3(10.5W)、ならびにスコッチ(Scotch)(登録商標)テープ(1分間の接触)を使用した列3(10.25W)で実証された。
【0175】
実施例8
黒色−Agナノ粒子−誘電体多層
この実施例では、ベースフィルム、クロムLTHC層、ならびに黒色、銀、および誘電体転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされたPANI−CNT層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされたPANI−CNT、誘電体、銀、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされた銀ナノ粒子層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀、誘電体、銀、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。後処理ステップによってラインエッジ品質が改善された。
【0176】
A.多層黒色−Agナノ粒子−誘電体ドナー基体の作製
(a)黒色層の作製およびコーティング。12.60gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56(27質量%)、4.93gのラテックスL−34−1(30質量%)、0.025gのSDA 2860、0.050gのビック(Byk)(登録商標)348、0.910gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、および11.60gの水を使用し、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが9.20の配合物を得た。CVコーターを使用し、CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで6.3フィート/分において、得られた溶液(3mL)を40%T Cr青色PETドナー基体(約90×52cm)でコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。この乾燥コーティング中の材料の質量%は:63.0質量%のジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56、30.1質量%のラテックスL−34−1、0.5質量%のSDA 2860、0.90質量%のビック(Byk)(登録商標)348、および5.6質量%の32B56カーボンブラック(Carbon Black)であった[ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56は、水溶性スチレンアクリル系樹脂の溶液であり、pHが9.1、MWが4,600、酸価が108、Tgが60であり、ジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer)製である]。
【0177】
(b)銀層の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目1に記載している。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#6成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(7mL)を40%T Cr青色PETドナー基体上の黒色層上にコーティングし、48℃で20分間乾燥させ、後に50℃で60分間乾燥させた。
【0178】
(c)誘電体層の作製およびコーティング。配合およびコーティング方法は実施例7−A−cと同一であった。このドナーは、熱転写実験の直前に45℃でさらに45分間乾燥させた。
【0179】
B.列1および2中にパターニングされたPANI−CNT層を有し、列3中にパターニングされた銀ナノ粒子層を有する熱画像形成レシーバーの作製
(a)PANI−CNTドナー基体の作製およびコーティング。配合およびコーティングは実施例7−B−aと同一であった。
【0180】
(b)レシーバーのベースフィルム上にPANI−CNT層をパターニングするための熱転写プロセス。以下の点を除けばプロセスは実施例7−B−bと同一であった:表面反射率=0.54;出力=5.5W(列1および2)、14の交互パターンを列2中に印刷した。
【0181】
(c)銀ナノ粒子ドナー基体の作製およびコーティング。銀配合物および分散体の成分は、前出の表6の項目4に記載している。CVコーターを使用し5.8フィート/分においてCN#6成形ブッシュマン(Buschman)ロッドで、この分散体(8mL)をメリネックス(Melinex)(登録商標)453ドナーフィルム(約90×52cm)上にコーティングし、47℃で20分間乾燥させた。このドナーは、熱転写実験の約3週間前に50℃でさらに60分間乾燥させた。
【0182】
(d)レシーバーのベースフィルム上に銀ナノ粒子層をパターニングするための熱転写プロセス。PANI−CNTドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、銀ナノ粒子ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。14の交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターン(1.25×0.75cm)を列3中に印刷した。印刷パラメーターは:ドラム速度=40;表面深さ=30;表面反射率=0.48;escan=0;出力=4.8Wであった。
【0183】
C.黒色−Agナノ粒子−誘電体多層をパターニングするための熱転写プロセス
銀ナノ粒子ドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。すべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=60;表面反射率=0.30;escan=0;交互の中実ブロックパターンおよび垂直線パターン(1.25×0.75cm)であった。列1:ドラム速度40において0.25Wの増分で4.00〜7.25Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上に直接多層を印刷した。列2:ドラム速度100において0.25Wの増分で6.00〜9.25Wで、パターニングされたPANI−CNT層の表面上にわずかにずらして多層を印刷した。列3:ドラム速度40において0.30Wの増分で3.50〜7.40Wで、パターニングされた銀ナノ粒子層の表面上に多層を印刷した。列4:ドラム速度40において0.30Wの増分で3.50〜7.40Wで、レシーバー表面上に多層を印刷した。
【0184】
D.熱転写の評価および後処理
列1の場合は4.5Wにおいて、列3の場合は3.75〜4.75Wにおいて、列4の場合は3.5〜4.5Wにおいて、多層の完全な転写が観察された。列2では、パターニングされたPANI−CNT層上およびレシーバー上の両方に異なる出力において異なる程度でずらして多層転写を行った。4つすべての列で、印刷された線の間の未露光領域内の一部の材料が線とともに転写された。列3および4の場合、線の間の転写された材料は、接着面と接触させることによって容易に選択的に除去することができ、レシーバー上に所望の線パターンを残すことができた。このことは、スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ(30〜60秒の接触)を使用した列3(4.75W)および列4(3.75W)で実証された。
【0185】
実施例9
黒色−誘電体−Agナノ粒子多層
この実施例では、ベースフィルム;有機LTHC層;ならびに黒色、誘電体、および銀転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀、誘電体、および黒色−誘電体層をこの積層順で有するレシーバーを有する。パターニングされた誘電体層を有する表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、誘電体、および黒色層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。
【0186】
A.多層黒色−誘電体−Agナノ粒子多層ドナー基体の作製
(a)黒色層の作製およびコーティング。11.10gのジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56(27質量%)、0.135gの水酸化アンモニウム(水中3質量%)、0.060gのSDA 2860、0.20gのビック(Byk)(登録商標)348(水中10質量%)、3.110gのカーボン・ブラック・アクロバース・ペースト(Carbon Black Acroverse Paste)32B56(33質量%;ペン・カラー(Penn Color))、および8.28gの水を使用して、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが9.34の配合物を得た。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用して6.3フィート/分においてCVコーターを使用して、得られた溶液(3mL)を有機LTHC緑色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。乾燥コーティングの材料の質量%は:73.0質量%ジョンクリル(Joncryl)(登録商標)56、0.1質量%の水酸化アンモニウム、1.5質量%のSDA 2860、0.50質量%のビック(Byk)(登録商標)348、および25.0質量%の32B56カーボンブラックであった。
【0187】
(b)誘電体層の作製およびコーティング。配合およびコーティング方法は実施例7−A−cと同一であった。
【0188】
(c)銀層の作製およびコーティング。配合およびコーティングの方法は実施例8−A−bと同一であった。
【0189】
B.列1、2、5、および6中にパターニングされた誘電体層を有する熱画像形成レシーバーの作製
(a)誘電体ドナー基体の作製およびコーティング。33.32gのラテックスL−56−3(30質量%)、12.34gのラテックスL−33−3(30質量%)、0.87gのSDA 2860、0.165gのビック(Byk)(登録商標)345、4.164gの2−ブトキシエタノール、および38.85gの水を使用して、水性誘電体層配合物の一般手順に従って、pHが3.84の配合物を得た。CN#7成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用しCVコーターを使用して9.8フィート/分において、得られた溶液(7mL)を有機LTHC緑色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。乾燥コーティング中の材料の質量%は:68.3質量%のラテックスL−56−3、25.3質量%のラテックスL−33−3、5.4質量%のSDA 2860、および1.0質量%のビック(Byk)(登録商標)345であった。
【0190】
(b)レシーバーのベースフィルム上に誘電体層をパターニングするための熱転写プロセス。前述の一般手順により、上記誘電体ドナー(約30cm×20cm)の一部および熱画像形成メリネックス(Melinex)(登録商標)ST504レシーバー(約28cm×18cm)を、クレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。列1および5中には17個の中実ブロックパターンを印刷し、列2および6中には17本の垂直線パターンを印刷した。印刷パラメーターは:ドラム速度=160;表面深さ=70;表面反射率=0.30;escan=0;出力=9.70W(列1および5)および10.30W(列2および6)であった。パターンは1.9×1.3cmであった。
【0191】
C.黒色−誘電体−Agナノ粒子多層をパターニングするための熱転写プロセス
誘電体ドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、上記多層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。すべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=70;表面反射率=0.24;escan=0;ドラム速度=60であった。列1:0.30Wの増分で4.50〜9.30Wでパターニングされた誘電体層の表面上に中実ブロックパターンで多層を印刷した。列2:0.30Wの増分で5.20〜10.00Wでパターニングされた誘電体層の表面上に垂直線パターンで多層を印刷した。列3:0.40Wの増分で5.20〜10.80Wでレシーバー上に交互の垂直線および中実ブロックパターンで多層を印刷した。パターンは、列1および2の場合1.9×1.3cmであり、列3の場合1.9×0.8cmであった。
【0192】
D.多層の熱転写の評価
列1の場合4.5〜7.5Wにおいて、列2の場合5.2〜10.0Wにおいて、列3の場合5.2〜6.7Wにおいて一部に帯状の境界およびコーティングの欠陥が生じたのを除けば、露出領域で、多層ドナーのAg部分の完全な転写が示され、これとともに多層の誘電体部分および黒色部分の完全な転写も示され、列3の場合の最良のラインエッジ品質は5.2〜5.8Wにおいて観察された。
【0193】
実施例10
誘電体−Agナノ粒子二重層
この実施例では、ベースフィルム;クロムLTHC層;ならびに誘電体および銀転写層をこの積層順で有する熱画像形成基体を製造した本発明の方法を説明する。表面処理されたベースフィルムを含むレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた銀および誘電体層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされた誘電体層を有する表面処理されたベースフィルムを有するレシーバー上に熱転写することによって、ベースフィルム、表面処理、ならびにパターニングされた誘電体、銀、および誘電体層をこの積層順で有するレシーバー要素を得た。パターニングされた二重層のパターニングされた誘電体層のみ、およびパターニングされた二重層の両方の層のレシーバーからの選択的除去を、転写条件の調整によって後処理ステップで行った。これらのステップでは、キャリア層の選択的除去、および印刷パターンのレシーバーから別の表面への転写が説明される。
【0194】
A.誘電体−Agナノ粒子二重層ドナー基体の作製
(a)誘電体層の作製およびコーティング。配合は実施例9−B−aと同一であった。CN#2成形ブッシュマン(Buschman)ロッドを使用し、CVコーターを9.8フィート/分で使用して、得られた溶液(3mL)を40%T Cr青色PETドナー基体(約90×52cm)上にコーティングし、45℃で6分間乾燥させた。
【0195】
(b)銀層の作製およびコーティング。配合およびコーティング方法は実施例8−A−bと同一であった。
【0196】
B.列1、2、5、および6中にパターニングされた誘電体層を有する熱画像形成レシーバーの作製
実施例9で作製した熱画像形成レシーバーの列4、5、および6を本明細書においてレシーバーAと呼ぶが、これらを使用して、この実施例では列A4、A5、およびA6と呼ぶ。本明細書ではレシーバーBと呼ぶ別のパターニングされていないST504メリネックス(Melinex)(登録商標)レシーバーも使用した(列B1、B2、B3、およびB4)。
【0197】
C.誘電体−Agナノ粒子二重層をパターニングするための熱転写プロセス
実施例9の多層ドナーをドラムから取り外しながら、パターニングされたレシーバーAはドラム上の同じ位置に残した。前述の一般手順により、本実施例の誘電体−Agナノ粒子二重層ドナーの一部(約30cm×20cm)をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。両方のレシーバーのすべての列の印刷パラメーターは:表面深さ=70;表面反射率=0.24;escan=0であった。列A4、A5、およびA6の印刷後、二重層ドナーをレシーバーAから剥離し、続いてレシーバーAをドラムから取り外した。次に、一般手順により、レシーバーBおよび二重層ドナーをクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(登録商標)800サーマルプレートセッター中に搭載した。列B1、B2、B3、およびB4を印刷した。二重層は、レシーバー表面上の列A4(交互の垂直線および中実ブロックパターン;0.40Wの増分で4.50〜10.10W;ドラム速度60)、列B1(垂直線パターン;0.25Wの増分で6.00〜10.50W;ドラム速度120)、列B2(中実ブロックパターン;0.25Wの増分5.00〜9.50W;ドラム速度120)、列B3(垂直線パターン;0.25Wの増分で8.00〜12.50W;ドラム速度160)、および列B4(中実ブロックパターン;0.25Wの増分で7.00〜11.50W;ドラム速度160)に印刷した。二重層は、パターニングされた誘電体層上の列A5(中実ブロックパターン;0.30Wの増分で4.50〜9.30W;ドラム速度60)および列A6(垂直線パターン;0.30Wの増分で5.00〜9.80W;ドラム速度60)に印刷した。パターンは、列A4の場合は1.9×0.8cmであり、列A5およびA6の場合は1.9×1.3cmであり、列B1、B2、B3、およびB4の場合は1.3×1.0cmであった。
【0198】
D.熱転写の評価および後処理
すべての出力で二重層は完全に転写され、転写の最高品質が観察されたのは、列A4の場合は4.5〜4.9Wであり;列A5の場合は4.5Wであり;列A6の場合は5.3〜5.6Wであり、ラインエッジ品質が良好であり;列B1の場合は6.5W以上であり、7.25Wにおいて直線ラインエッジの転写が最適であり;列B2の場合は8.25W以上であり;列B3の場合は8.75〜9Wおよび12〜12.5Wであり;列B4の場合は10.25W以上であった。接着面との接触(スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ、30秒)によって、列A4の7.7Wの垂直線パターンの場合、二重層の誘電体層のみが選択的に除去され、レシーバー上のAgの線が残った。列B2(90%を超えて除去される)および列B4(95%を超えて除去される)の8.25Wパターンの場合、接着面との接触(スコッチ(Scotch)(登録商標)テープ、60秒)によって、二重層の両方の層がレシーバーから選択的に除去され、パターンがテープ表面に転写された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子の熱転写パターニング方法であって:
a)積層順でベースフィルムと、キャリア層と、ナノ粒子層とを含む熱画像形成ドナーを提供する工程;
b)前記熱画像形成ドナーを熱画像形成レシーバーに接触させる工程であって、前記熱画像形成レシーバーがベースフィルムを含む工程;および
c)前記ナノ粒子層の少なくとも一部を前記キャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写によって前記熱画像形成レシーバー上に転写して、積層順で、該レシーバー上に、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を提供する工程を含み;
前記熱画像形成ドナーが、(1)不揮発性画分であって、前記不揮発性画分の質量を基準にして、65〜100質量%装填のナノ粒子画分、および場合により最大35質量%装填の分散剤を含む不揮発性画分と(2)揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液を提供する工程と;前記ベースフィルムと前記キャリア層とを含む熱画像形成基体を提供するステップと;前記分散液を前記キャリア層上に塗布し、前記キャリア流体を揮発させて前記熱画像形成ドナーを提供する工程とを含む方法によって製造される、熱転写パターニング方法。
【請求項2】
熱転写がレーザー媒介転写によって行われ、レーザーが約350〜1500nmの動作波長を有する、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項3】
キャリア層が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ複素環式芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された1またはそれ以上の導電性の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーを含む導体層;複数の導電性ナノ粒子と、1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーであって、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリルポリマーおよびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;ポリビニルピロリドン、およびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニルなどのそのコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーとを含む導体層;1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーであって:アクリルラテックス、スチレンラテックス、およびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリルポリマー、スチレンポリマー、およびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択された(アクリルおよびスチレン)ポリマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されたヘテロ原子置換スチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、ノルボルネン、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、一酸化炭素、および酢酸ビニルからなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとを含むエチレン(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー;ならびに酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコール、およびビニルピロリドンからなる群から選択された繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーからなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーを含む誘導体層;ならびに1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーであって:ポリアセン;ポリフェニレン;ポリ(フェニレンビニレン);ポリフルオレン;ポリチオフェン;ポリ(3,4−二置換チオフェン);ポリベンゾチオフェン;ポリイソチアナフテン;ポリピロール;ポリフラン;ポリピリジン;ポリ−1,3,4−オキサジアゾール;ポリイソチアナフテン;ポリアニリン;ポリアズレン;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ポリピレン;ポリアリールアミン;およびそれらの誘導体からなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーを含む半導体層からなる群から選択された層を含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項4】
誘電体層が、フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー、およびそれらの組み合わせ;ならびに1またはそれ以上のラテックス樹脂であって、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ならびにアルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル置換スチレンからなる群から選択されたモノマーを少なくとも約85質量%含む1またはそれ以上のラテックス樹脂;からなる群から選択されたポリマーを含む、請求項3に記載の熱転写方法。
【請求項5】
熱画像形成ドナーが、ベースフィルムとキャリア層との間に介在するLTHC層をさらに含む、請求項2に記載の熱転写方法。
【請求項6】
LTHC層が、インドシアニン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性または水分散性のシアニン化合物と;アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性または水分散性のポリマーバインダーとを含む、請求項2に記載の熱転写方法。
【請求項7】
LTHC層が、熱転写において使用されたレーザーの動作波長において約20%〜約80%の透過率を有し、CrおよびNiから選択された金属膜、カーボンブラック、黒鉛、ならびに前記LTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料からなる群から選択された1またはそれ以上の放射線吸収剤を含む、請求項5に記載の熱転写方法。
【請求項8】
ナノ粒子画分が、不揮発性画分の質量を基準にして98〜100質量%の装填である、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項9】
ナノ粒子画分が:金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、およびカーボンナノチューブからなる群から選択された導電性ナノ粒子;セレン化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化鉛、硫化鉛、硫化亜鉛、およびリン化インジウムからなる群から選択された発光ナノ粒子;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および二酸化チタンからなる群から選択された誘電体ナノ粒子;ならびにケイ素、ゲルマニウム、III−V族半導体化合物、およびII−VI族半導体化合物からなる群から選択された半導体ナノ粒子からなる群から選択される、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項10】
不揮発性画分が、前記不揮発性画分の質量を基準にして、平均最長寸法が約5nm〜約1500nmの銀ナノ粒子約65〜約95質量%と、分散剤約5〜約35質量%とを含み;前記分散剤が:ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、およびそれらの誘導体からなる群から選択された導電性ポリマー;ならびにTgが約−30℃〜約90℃であり、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびに溶媒可溶性アクリル樹脂およびスチレン−アクリル樹脂からなる群から選択された1またはそれ以上の樹脂を含むポリマー;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上のポリマーを含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項11】
熱画像形成ドナーおよびレシーバーのベースフィルムが独立に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択されたポリマー材料を含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項12】
熱画像形成ドナーのベースフィルムが、光減衰剤を含み、約400〜約750nmの波長において0.1を超えるODを有する、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項13】
熱画像形成ドナーが、半導体層、導体層、および誘電体層からなる群から選択された1つまたはそれ以上の追加の転写層をナノ粒子層の表面上に含み、転写工程が、前記追加の転写層の対応する近接部分を転写して、積層順でレシーバー上に、パターニングされた追加の転写層、前記パターニングされたナノ粒子層、および前記パターニングされたキャリア層を提供することをさらに含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項14】
キャリア層が、半導体層、導体層、および誘電体層からなる群から選択された2つまたはそれ以上の転写層を含み;転写工程が、前記2つまたはそれ以上の転写層の対応する近接部分を転写して、積層順で、レシーバー、パターニングされたナノ粒子層、および2つまたはそれ以上の転写層を含む前記パターニングされたキャリア層を提供することを含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項15】
パターニングされたキャリア層を熱画像形成レシーバーから除去して、実質的に無傷であり前記レシーバーに付着した前記パターニングされたナノ粒子層を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項16】
パターニングされたキャリア層を除去する工程が、ブローイング、剥離、減圧、ならびに前記パターニングされたキャリア層を粘着面または静電面に接触させることによる付着による除去からなる群から選択された1つまたはそれ以上の工程を含む、請求項15に記載の熱転写方法。
【請求項17】
パターニングされたキャリア層を熱画像形成レシーバーから除去して、積層順で前記レシーバー上に、前記パターニングされた追加の転写層、および実質的に無傷であり前記レシーバーに付着した前記パターニングされたナノ粒子層を提供する工程をさらに含む、請求項13に記載の熱転写方法。
【請求項18】
キャリア層が、誘電体層または導体層であり、前記誘電体層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料;およびカーボンブラックからなる群から選択された1またはそれ以上の光吸収性化合物をさらに含む、請求項3に記載の熱転写方法。
【請求項19】
1またはそれ以上の光吸収性化合物が:CAS番号[128433−68−1]を有する2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有する2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンゾ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびに式(I)および(II)の化合物およびそれらの共鳴構造体:
【化1】
からなる群から選択されたシアニン染料を含む、請求項18に記載の熱転写方法。
【請求項20】
パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を熱画像形成レシーバーから第2のレシーバーシートに転写する工程をさらに含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項21】
多層熱画像形成ドナーであって、積層順で:
a)ベースフィルムと;
b)誘電体層および導電層からなる群から選択されたキャリア層と;
c)平均最長寸法が約5nm〜約1500nmであることを特徴とする複数のナノ粒子を含むナノ粒子画分を含むナノ粒子層とを含み;
前記キャリア層が誘電体層を含む場合には、前記ベースフィルムが、第1の光減衰剤を含み、約350〜約1500nmの波長において0.1またはそれ以上のODを有する、多層熱画像形成ドナー。
【請求項22】
キャリア層が、誘電体層であり、光吸収性化合物である第2の光減衰剤をさらに含み;前記キャリア層が約350nm〜約1500nmの範囲内の波長において約0.2またはそれ以上のODを有する、請求項21に記載のドナー。
【請求項23】
第1の光減衰剤および第2の光減衰剤が、ベースフィルムおよびキャリア層の内部で、前記光減衰剤の吸収極大の差が少なくとも50nmとなるような吸収極大を有する、請求項22に記載のドナー。
【請求項24】
ベースフィルムが約400〜約750nmの波長において0.1またはそれ以上のODを有し;キャリア層が約750nm〜約1200nmの波長において約0.2またはそれ以上のODを有する、請求項22に記載のドナー。
【請求項25】
キャリア層が、誘電体層であり、溶媒可溶性であり実質的に未架橋であることを特徴とする熱可塑性ポリマーを含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項26】
キャリア層が、誘電体層であり、1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーであって:アクリルラテックス、スチレン−アクリルラテックス、溶液系アクリル系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択された(アクリルポリマーおよびスチレン)ポリマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるヘテロ原子置換スチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、ノルボルネン、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、一酸化炭素、および酢酸ビニルからなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとを含むエチレン(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー;ならびに酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコール、およびビニルピロリドンの群から選択される繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーからなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーを前記キャリア層が含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項27】
キャリア層が:フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーおよびそれらの組み合わせ;ならびに、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ならびにアルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル置換スチレンからなる群から選択されたモノマーを少なくとも約85質量%含む1またはそれ以上のラテックス樹脂の群から選択されたポリマーを含む誘電体層である、請求項21に記載のドナー。
【請求項28】
キャリア層が、誘電体層であり、ラテックス粒子と、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびに水溶性のアクリルポリマーおよびスチレン−アクリル(コ)ポリマーからなる群から選択された低分子量水溶性ポリマーとを含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項29】
第2の光減衰剤が:誘電体層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する1またはそれ以上の近赤外染料;およびカーボンブラックからなる群から選択される、請求項22に記載のドナー。
【請求項30】
第2の光減衰剤が、約800nm〜約900nmの範囲内の波長において2000またはそれ以上の吸光計数を有するインドレニン染料であり、キャリア層の乾燥質量を基準にして約0.5〜約10質量%で存在する、請求項22に記載のドナー。
【請求項31】
第2の光減衰剤が:CAS番号[128433−68−1]を有する2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有する2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンゾ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびに式(I)および(II)の化合物およびそれらの共鳴構造体:
【化2】
からなる群から選択される、請求項22に記載のドナー。
【請求項32】
ベースフィルムとキャリア層との間に介在するLTHC層をさらに含み、前記LTHC層が:CrおよびNiから選択された金属膜、カーボンブラック、黒鉛、ならびに前記LTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料の群から選択された1またそれ以上の放射線吸収剤を含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項33】
1またはそれ以上の放射線吸収剤が、インドシアニン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性または水分散性のシアニン化合物であり;LTHC層が、アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性のまたは水分散性のポリマーバインダーをさらに含む、請求項32に記載のドナー。
【請求項34】
ナノ粒子層が、前記ナノ粒子層の質量を基準にして65〜100質量%装填のナノ粒子画分と、場合により最大35質量%装填の分散剤とを含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項35】
ナノ粒子画分が:金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、およびカーボンナノチューブからなる群から選択された導電性ナノ粒子;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および二酸化チタンからなる群から選択された誘電体ナノ粒子;ならびにケイ素、ゲルマニウム、III−V族半導体化合物、およびII−VI族半導体化合物からなる群から選択された半導体ナノ粒子からなる群から選択される、請求項21に記載のドナー。
【請求項36】
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、およびそれらの誘導体からなる群から選択された導電性ポリマー;ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリアズレン、ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ポリピレン、ポリアリールアミン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された半導体ポリマー;誘電性ポリマーであって、フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーおよびそれらの組み合わせ;アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびに溶液系アクリルポリマーおよびスチレン−アクリルコポリマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとのコポリマー;ポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;ポリビニルピロリドンおよびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニル;ならびに、ポリマー主鎖と、前記主鎖に結合した1またはそれ以上のマクロモノマー側鎖とを含み、質量平均分子量が約5,000〜約100,000であることを特徴とするグラフトコポリマーであって、前記ポリマー主鎖が、重合したエチレン性不飽和疎水性モノマーと、前記グラフトコポリマーの質量を基準にして最大20質量%の重合したエチレン性不飽和酸モノマーとから実質的になり;前記側鎖が、重合したエチレン性不飽和モノマーと、前記マクロモノマーの質量を基準にして2〜約100質量%の重合したエチレン性不飽和酸含有モノマーとから実質的になる親水性マクロモノマーであり、質量平均分子量が約1,000〜約30,000であることを特徴とし;前記グラフトコポリマーの酸基が無機塩基またはアミンで中和されているグラフトコポリマーからなる群から選択される誘電性ポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の樹脂を前記分散剤が含む、請求項34に記載のドナー。
【請求項37】
ベースフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択されたポリマー材料を含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項38】
キャリア層が2つ以上の層を含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項39】
キャリア層が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ複素環式芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された導電性ポリマーを含む導電性層であり、前記ポリマー主鎖中に窒素原子または硫黄原子が存在する、請求項21に記載のドナー。
【請求項40】
キャリア層が、ポリアニリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される導電性層であり、0.1〜12質量%の単層カーボンナノチューブと、1〜30個の炭素を有する有機プロトン酸とをさらに含み、前記酸が、前記ポリアニリン主鎖中の窒素原子のモル当量の約25%〜約100%である、請求項21に記載のドナー。
【請求項41】
a)ベースフィルムを含む熱画像形成レシーバーと;
b)パターニングされたナノ粒子層と、
c)パターニングされたキャリア層とを含む、請求項1に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項42】
a)ベースフィルムを含む熱画像形成レシーバーと、
b)パターニングされたナノ粒子層とを含む、請求項15に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項43】
熱画像形成レシーバーが、ベースフィルムとパターニングされたナノ粒子層との間に介在する、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層からなる群から選択された少なくとも1つのパターニングされた層をさらに含む、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項44】
熱画像形成レシーバーが、積層順で:
a)パターニングされたゲート導体層と、
b)パターニングされた誘電体層と、
c)パターニングされたソース/ドレイン導体層とをさらに含み、これらすべてが、前記ベースフィルムと前記パターニングされたナノ粒子層との間に介在する、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項45】
積層順でレシーバー上に、パターニングされた追加の転写層、前記パターニングされたナノ粒子層、および前記パターニングされたキャリア層を含み、前記パターニングされた追加の転写層が、半導体層、導体層、および誘電体層からなる群から選択される、請求項13に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項46】
熱画像形成レシーバーが、ベースフィルムとパターニングされた追加の転写層との間に介在する、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層からなる群から選択された少なくとも1つのパターニングされた層をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
熱画像形成レシーバーが、積層順で:
a)パターニングされたゲート導体層と、
b)パターニングされた誘電体層と、
c)パターニングされたソース/ドレイン導体層とをさらに含み、
これらすべてがベースフィルムと前記パターニングされた追加の転写層との間に介在する、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
積層順でレシーバー上に、パターニングされた追加の転写層および前記パターニングされたナノ粒子層を含む、請求項17に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項49】
ナノ粒子層の表面上に追加の転写層をさらに含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項1】
ナノ粒子の熱転写パターニング方法であって:
a)積層順でベースフィルムと、キャリア層と、ナノ粒子層とを含む熱画像形成ドナーを提供する工程;
b)前記熱画像形成ドナーを熱画像形成レシーバーに接触させる工程であって、前記熱画像形成レシーバーがベースフィルムを含む工程;および
c)前記ナノ粒子層の少なくとも一部を前記キャリア層の対応する近接部分とともに、熱転写によって前記熱画像形成レシーバー上に転写して、積層順で、該レシーバー上に、パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を提供する工程を含み;
前記熱画像形成ドナーが、(1)不揮発性画分であって、前記不揮発性画分の質量を基準にして、65〜100質量%装填のナノ粒子画分、および場合により最大35質量%装填の分散剤を含む不揮発性画分と(2)揮発性キャリア流体とから実質的になる分散液を提供する工程と;前記ベースフィルムと前記キャリア層とを含む熱画像形成基体を提供するステップと;前記分散液を前記キャリア層上に塗布し、前記キャリア流体を揮発させて前記熱画像形成ドナーを提供する工程とを含む方法によって製造される、熱転写パターニング方法。
【請求項2】
熱転写がレーザー媒介転写によって行われ、レーザーが約350〜1500nmの動作波長を有する、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項3】
キャリア層が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ複素環式芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された1またはそれ以上の導電性の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーを含む導体層;複数の導電性ナノ粒子と、1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーであって、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリルポリマーおよびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;ポリビニルピロリドン、およびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニルなどのそのコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーとを含む導体層;1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーであって:アクリルラテックス、スチレンラテックス、およびスチレン−アクリルラテックス、溶液系のアクリルポリマー、スチレンポリマー、およびスチレン−アクリルポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択された(アクリルおよびスチレン)ポリマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されたヘテロ原子置換スチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、ノルボルネン、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、一酸化炭素、および酢酸ビニルからなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとを含むエチレン(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー;ならびに酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコール、およびビニルピロリドンからなる群から選択された繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーからなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーを含む誘導体層;ならびに1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーであって:ポリアセン;ポリフェニレン;ポリ(フェニレンビニレン);ポリフルオレン;ポリチオフェン;ポリ(3,4−二置換チオフェン);ポリベンゾチオフェン;ポリイソチアナフテン;ポリピロール;ポリフラン;ポリピリジン;ポリ−1,3,4−オキサジアゾール;ポリイソチアナフテン;ポリアニリン;ポリアズレン;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ポリピレン;ポリアリールアミン;およびそれらの誘導体からなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーを含む半導体層からなる群から選択された層を含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項4】
誘電体層が、フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー、およびそれらの組み合わせ;ならびに1またはそれ以上のラテックス樹脂であって、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ならびにアルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル置換スチレンからなる群から選択されたモノマーを少なくとも約85質量%含む1またはそれ以上のラテックス樹脂;からなる群から選択されたポリマーを含む、請求項3に記載の熱転写方法。
【請求項5】
熱画像形成ドナーが、ベースフィルムとキャリア層との間に介在するLTHC層をさらに含む、請求項2に記載の熱転写方法。
【請求項6】
LTHC層が、インドシアニン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性または水分散性のシアニン化合物と;アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性または水分散性のポリマーバインダーとを含む、請求項2に記載の熱転写方法。
【請求項7】
LTHC層が、熱転写において使用されたレーザーの動作波長において約20%〜約80%の透過率を有し、CrおよびNiから選択された金属膜、カーボンブラック、黒鉛、ならびに前記LTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料からなる群から選択された1またはそれ以上の放射線吸収剤を含む、請求項5に記載の熱転写方法。
【請求項8】
ナノ粒子画分が、不揮発性画分の質量を基準にして98〜100質量%の装填である、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項9】
ナノ粒子画分が:金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、およびカーボンナノチューブからなる群から選択された導電性ナノ粒子;セレン化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化鉛、硫化鉛、硫化亜鉛、およびリン化インジウムからなる群から選択された発光ナノ粒子;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および二酸化チタンからなる群から選択された誘電体ナノ粒子;ならびにケイ素、ゲルマニウム、III−V族半導体化合物、およびII−VI族半導体化合物からなる群から選択された半導体ナノ粒子からなる群から選択される、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項10】
不揮発性画分が、前記不揮発性画分の質量を基準にして、平均最長寸法が約5nm〜約1500nmの銀ナノ粒子約65〜約95質量%と、分散剤約5〜約35質量%とを含み;前記分散剤が:ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、およびそれらの誘導体からなる群から選択された導電性ポリマー;ならびにTgが約−30℃〜約90℃であり、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびに溶媒可溶性アクリル樹脂およびスチレン−アクリル樹脂からなる群から選択された1またはそれ以上の樹脂を含むポリマー;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上のポリマーを含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項11】
熱画像形成ドナーおよびレシーバーのベースフィルムが独立に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択されたポリマー材料を含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項12】
熱画像形成ドナーのベースフィルムが、光減衰剤を含み、約400〜約750nmの波長において0.1を超えるODを有する、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項13】
熱画像形成ドナーが、半導体層、導体層、および誘電体層からなる群から選択された1つまたはそれ以上の追加の転写層をナノ粒子層の表面上に含み、転写工程が、前記追加の転写層の対応する近接部分を転写して、積層順でレシーバー上に、パターニングされた追加の転写層、前記パターニングされたナノ粒子層、および前記パターニングされたキャリア層を提供することをさらに含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項14】
キャリア層が、半導体層、導体層、および誘電体層からなる群から選択された2つまたはそれ以上の転写層を含み;転写工程が、前記2つまたはそれ以上の転写層の対応する近接部分を転写して、積層順で、レシーバー、パターニングされたナノ粒子層、および2つまたはそれ以上の転写層を含む前記パターニングされたキャリア層を提供することを含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項15】
パターニングされたキャリア層を熱画像形成レシーバーから除去して、実質的に無傷であり前記レシーバーに付着した前記パターニングされたナノ粒子層を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項16】
パターニングされたキャリア層を除去する工程が、ブローイング、剥離、減圧、ならびに前記パターニングされたキャリア層を粘着面または静電面に接触させることによる付着による除去からなる群から選択された1つまたはそれ以上の工程を含む、請求項15に記載の熱転写方法。
【請求項17】
パターニングされたキャリア層を熱画像形成レシーバーから除去して、積層順で前記レシーバー上に、前記パターニングされた追加の転写層、および実質的に無傷であり前記レシーバーに付着した前記パターニングされたナノ粒子層を提供する工程をさらに含む、請求項13に記載の熱転写方法。
【請求項18】
キャリア層が、誘電体層または導体層であり、前記誘電体層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料;およびカーボンブラックからなる群から選択された1またはそれ以上の光吸収性化合物をさらに含む、請求項3に記載の熱転写方法。
【請求項19】
1またはそれ以上の光吸収性化合物が:CAS番号[128433−68−1]を有する2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有する2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンゾ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびに式(I)および(II)の化合物およびそれらの共鳴構造体:
【化1】
からなる群から選択されたシアニン染料を含む、請求項18に記載の熱転写方法。
【請求項20】
パターニングされたナノ粒子層およびパターニングされたキャリア層を熱画像形成レシーバーから第2のレシーバーシートに転写する工程をさらに含む、請求項1に記載の熱転写方法。
【請求項21】
多層熱画像形成ドナーであって、積層順で:
a)ベースフィルムと;
b)誘電体層および導電層からなる群から選択されたキャリア層と;
c)平均最長寸法が約5nm〜約1500nmであることを特徴とする複数のナノ粒子を含むナノ粒子画分を含むナノ粒子層とを含み;
前記キャリア層が誘電体層を含む場合には、前記ベースフィルムが、第1の光減衰剤を含み、約350〜約1500nmの波長において0.1またはそれ以上のODを有する、多層熱画像形成ドナー。
【請求項22】
キャリア層が、誘電体層であり、光吸収性化合物である第2の光減衰剤をさらに含み;前記キャリア層が約350nm〜約1500nmの範囲内の波長において約0.2またはそれ以上のODを有する、請求項21に記載のドナー。
【請求項23】
第1の光減衰剤および第2の光減衰剤が、ベースフィルムおよびキャリア層の内部で、前記光減衰剤の吸収極大の差が少なくとも50nmとなるような吸収極大を有する、請求項22に記載のドナー。
【請求項24】
ベースフィルムが約400〜約750nmの波長において0.1またはそれ以上のODを有し;キャリア層が約750nm〜約1200nmの波長において約0.2またはそれ以上のODを有する、請求項22に記載のドナー。
【請求項25】
キャリア層が、誘電体層であり、溶媒可溶性であり実質的に未架橋であることを特徴とする熱可塑性ポリマーを含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項26】
キャリア層が、誘電体層であり、1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーであって:アクリルラテックス、スチレン−アクリルラテックス、溶液系アクリル系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択された(アクリルポリマーおよびスチレン)ポリマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるヘテロ原子置換スチレンポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、ノルボルネン、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、一酸化炭素、および酢酸ビニルからなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとを含むエチレン(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマー;ならびに酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコール、およびビニルピロリドンの群から選択される繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーからなる群から選択された1またはそれ以上の(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマーを前記キャリア層が含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項27】
キャリア層が:フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーおよびそれらの組み合わせ;ならびに、アルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ならびにアルキル基がC1〜C18直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキル置換スチレンからなる群から選択されたモノマーを少なくとも約85質量%含む1またはそれ以上のラテックス樹脂の群から選択されたポリマーを含む誘電体層である、請求項21に記載のドナー。
【請求項28】
キャリア層が、誘電体層であり、ラテックス粒子と、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびに水溶性のアクリルポリマーおよびスチレン−アクリル(コ)ポリマーからなる群から選択された低分子量水溶性ポリマーとを含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項29】
第2の光減衰剤が:誘電体層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する1またはそれ以上の近赤外染料;およびカーボンブラックからなる群から選択される、請求項22に記載のドナー。
【請求項30】
第2の光減衰剤が、約800nm〜約900nmの範囲内の波長において2000またはそれ以上の吸光計数を有するインドレニン染料であり、キャリア層の乾燥質量を基準にして約0.5〜約10質量%で存在する、請求項22に記載のドナー。
【請求項31】
第2の光減衰剤が:CAS番号[128433−68−1]を有する2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有する2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンゾ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびに式(I)および(II)の化合物およびそれらの共鳴構造体:
【化2】
からなる群から選択される、請求項22に記載のドナー。
【請求項32】
ベースフィルムとキャリア層との間に介在するLTHC層をさらに含み、前記LTHC層が:CrおよびNiから選択された金属膜、カーボンブラック、黒鉛、ならびに前記LTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料の群から選択された1またそれ以上の放射線吸収剤を含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項33】
1またはそれ以上の放射線吸収剤が、インドシアニン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性または水分散性のシアニン化合物であり;LTHC層が、アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の水溶性のまたは水分散性のポリマーバインダーをさらに含む、請求項32に記載のドナー。
【請求項34】
ナノ粒子層が、前記ナノ粒子層の質量を基準にして65〜100質量%装填のナノ粒子画分と、場合により最大35質量%装填の分散剤とを含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項35】
ナノ粒子画分が:金、銀、銅、およびそれらの合金、ITO、ATO、およびカーボンナノチューブからなる群から選択された導電性ナノ粒子;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および二酸化チタンからなる群から選択された誘電体ナノ粒子;ならびにケイ素、ゲルマニウム、III−V族半導体化合物、およびII−VI族半導体化合物からなる群から選択された半導体ナノ粒子からなる群から選択される、請求項21に記載のドナー。
【請求項36】
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、およびそれらの誘導体からなる群から選択された導電性ポリマー;ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリアズレン、ポリセレノフェン、ポリベンゾフラン、ポリインドール、ポリピリダジン、ポリピレン、ポリアリールアミン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された半導体ポリマー;誘電性ポリマーであって、フェノール−アルデヒド(コ)ポリマー/(コ)オリゴマーおよびそれらの組み合わせ;アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびに溶液系アクリルポリマーおよびスチレン−アクリルコポリマー、ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素、および(メタ)アクリル酸からなる群から選択された1またはそれ以上のモノマーとのコポリマー;ポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;ポリビニルピロリドンおよびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニル;ならびに、ポリマー主鎖と、前記主鎖に結合した1またはそれ以上のマクロモノマー側鎖とを含み、質量平均分子量が約5,000〜約100,000であることを特徴とするグラフトコポリマーであって、前記ポリマー主鎖が、重合したエチレン性不飽和疎水性モノマーと、前記グラフトコポリマーの質量を基準にして最大20質量%の重合したエチレン性不飽和酸モノマーとから実質的になり;前記側鎖が、重合したエチレン性不飽和モノマーと、前記マクロモノマーの質量を基準にして2〜約100質量%の重合したエチレン性不飽和酸含有モノマーとから実質的になる親水性マクロモノマーであり、質量平均分子量が約1,000〜約30,000であることを特徴とし;前記グラフトコポリマーの酸基が無機塩基またはアミンで中和されているグラフトコポリマーからなる群から選択される誘電性ポリマーからなる群から選択された1またはそれ以上の樹脂を前記分散剤が含む、請求項34に記載のドナー。
【請求項37】
ベースフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択されたポリマー材料を含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項38】
キャリア層が2つ以上の層を含む、請求項21に記載のドナー。
【請求項39】
キャリア層が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ複素環式芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された導電性ポリマーを含む導電性層であり、前記ポリマー主鎖中に窒素原子または硫黄原子が存在する、請求項21に記載のドナー。
【請求項40】
キャリア層が、ポリアニリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される導電性層であり、0.1〜12質量%の単層カーボンナノチューブと、1〜30個の炭素を有する有機プロトン酸とをさらに含み、前記酸が、前記ポリアニリン主鎖中の窒素原子のモル当量の約25%〜約100%である、請求項21に記載のドナー。
【請求項41】
a)ベースフィルムを含む熱画像形成レシーバーと;
b)パターニングされたナノ粒子層と、
c)パターニングされたキャリア層とを含む、請求項1に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項42】
a)ベースフィルムを含む熱画像形成レシーバーと、
b)パターニングされたナノ粒子層とを含む、請求項15に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項43】
熱画像形成レシーバーが、ベースフィルムとパターニングされたナノ粒子層との間に介在する、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層からなる群から選択された少なくとも1つのパターニングされた層をさらに含む、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項44】
熱画像形成レシーバーが、積層順で:
a)パターニングされたゲート導体層と、
b)パターニングされた誘電体層と、
c)パターニングされたソース/ドレイン導体層とをさらに含み、これらすべてが、前記ベースフィルムと前記パターニングされたナノ粒子層との間に介在する、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項45】
積層順でレシーバー上に、パターニングされた追加の転写層、前記パターニングされたナノ粒子層、および前記パターニングされたキャリア層を含み、前記パターニングされた追加の転写層が、半導体層、導体層、および誘電体層からなる群から選択される、請求項13に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項46】
熱画像形成レシーバーが、ベースフィルムとパターニングされた追加の転写層との間に介在する、パターニングされた半導体層、パターニングされた導体層、およびパターニングされた誘電体層からなる群から選択された少なくとも1つのパターニングされた層をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
熱画像形成レシーバーが、積層順で:
a)パターニングされたゲート導体層と、
b)パターニングされた誘電体層と、
c)パターニングされたソース/ドレイン導体層とをさらに含み、
これらすべてがベースフィルムと前記パターニングされた追加の転写層との間に介在する、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
積層順でレシーバー上に、パターニングされた追加の転写層および前記パターニングされたナノ粒子層を含む、請求項17に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項49】
ナノ粒子層の表面上に追加の転写層をさらに含む、請求項21に記載のドナー。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2010−505640(P2010−505640A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520790(P2009−520790)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/016120
【国際公開番号】WO2008/091285
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/016120
【国際公開番号】WO2008/091285
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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