説明

ドライアイスを用いた洗浄方法及び該方法に使用する装置

【課題】
この発明は、廃液が生ぜず、しかもフィンへのダメージが生じないドライアイスを使用した洗浄方法及び洗浄装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、液化二酸化炭素を断熱膨張させてドライアイス粒子を含む二酸化炭素を生成させ、エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスを導入してリング状の噴流を形成させ、前記ドライアイス粒子を含む二酸化炭素を前記リング状の噴流を通過させて、ドライアイスの粉末を形成させ、ライアイスの粉末を含むガス噴流を被洗浄物に噴霧することによって、洗浄により生じた汚物は、排気ホースから除去することによって、廃液が生ぜず、フィンへのダメージも生じないようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイスを用いた洗浄方法及び該方法に使用する洗浄装置に係り、詳記すれば、空調機の熱交換器及びケーシング内面の洗浄に好適なドライアイスを用いた洗浄方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の熱交換器は、使用中にフィルターを通過した塵埃が付着する為、加熱及び冷却効率の低下が起きることから、定期的な洗浄が求められている。
熱交換器は主にフィン状の金属片で熱交換を行うが、ブラシで擦る等の手段によったのでは、フィンが変形する為、水、温水、洗剤などの液体による洗浄がほとんどであった。
【0003】
液体による方法はフィンを痛めずに清掃できる利点がある反面、塵埃や界面活性剤を含む廃液が大量に生じるので、この廃液の処理に手間とコストが掛かる問題があった。
【0004】
一方、粒状のドライアイス、即ちドライアイスペレットを洗浄液として洗浄物に衝突させ、洗浄物に付着している付着物を除去する技術が開示されている(特許文献1参照)。
本発明者は、ドライアイスは、使用後に昇華するから洗浄液が生ぜず、処理が簡単となることに着目し、これを空調機の熱交換器の洗浄に応用しようとしたが、ドライアイスペレットがフィンを痛めるので、このままでは、使用し得なかった。
【特許文献1】特開昭61−15749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、熱交換器のフィンは比較的柔らかいアルミニュウム製で形状は薄く衝撃に弱い為、塗膜の剥離等に使用されるドライアイスペレットの重量と硬度では フィンの変形や表面の研削が起こるからである。
【0006】
この発明は、このような点に鑑みなされたものであり、廃液が生ぜず、しかもフィンへのダメージが生じないドライアイスを使用した洗浄方法及び洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に沿う本発明の構成は、液化二酸化炭素を断熱膨張させてドライアイス粒子を含む二酸化炭素を生成する工程と、
エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスを導入してリング状の噴流を形成する工程と、
前記ドライアイス粒子を含む二酸化炭素を前記リング状の噴流を通過させて、ドライアイスの粉末を形成する工程と、
ドライアイスの粉末を含むガス噴流を被洗浄物に噴霧する工程と、
洗浄により生じた汚物を、排気ホースから吸引除去する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
被洗浄物は、空調機であり、空調機の周囲を閉鎖し一時的な洗浄空間を形成するのが好ましい(請求項2)。エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスをリングノズルに導入して、前記リング状の噴流を形成するのが好ましい(請求項3)。
【0009】
前記噴霧する先端の吹出し口は、クランク機構によって、回転及び揺動するのが好ましい(請求項4)。
【0010】
本発明の洗浄装置は、液化二酸化炭素を断熱膨張させてドライアイス粒子を含む二酸化炭素を生成する手段と、
エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスを導入してリング状の噴流を形成する手段と、
前記ドライアイス粒子を含む二酸化炭素を前記リング状の噴流を通過させて、ドライアイスの粉末を形成する手段と、
ドライアイスの粉末を含むガス噴流を被洗浄物に噴霧する手段と、
洗浄した汚物を、排気ホースから吸引去する手段と、
を含むことを特徴とする(請求項5)。
【0011】
被洗浄物は、空調機であり、空調機の周囲を閉鎖し一時的な洗浄空間を形成するのが好ましい(請求項6)。エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスをリングノズルに導入して、前記リング状の噴流を形成するのが好ましい(請求項7)。
【0012】
前記噴霧する先端に、吹出し口がクランク機構によって、回転及び揺動する手段を連結するのが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空調機の熱交換器のフィンを損傷する事なく液体を使わずに洗浄する事が可能となり、ドライアイスは気体として除去できるから、清掃に伴う廃棄物の発生量を最低限とする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2(a)】図1の洗浄装置の先端に連結するヘッド部の側面図である。
【図2(b)】図1の洗浄装置の先端に連結するヘッド部の正面図である。
【図2(c)】図1の洗浄装置の先端に連結するヘッド部の平面図である。
【図3】天井埋め込み型空調室内機の場合の洗浄システム構成例を示す図である。
【図4】本発明の洗浄装置の配管系統図である。
【図5】エアハン型空調機の場合の洗浄システム構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施例を示すものであり、先端からドライアイス粉を含むガス1−9を噴出し、後端から空気を吸入する細長い筒状体1−6と、該細長い筒状体1−6の後部下部に設けた液化炭酸ガス導入管1−3と、該液化炭酸ガス導入管1−3の前方に外嵌したリングノズル外筒1−8と、該外筒から内筒1−6に圧縮空気1−5を導入する圧縮空気導入体(圧縮空気用ジョイント)1−4と、リングノズル先端のリングノズル噴射口1−7とを具備した例を示す。
【0016】
液化炭酸ガス導入管1−3は、液化炭酸ガス1−1がチューブを通り、液化炭酸ガス用ノズル1−2から、筒状の膨張室1−10に導入して、ドライアイス粒を含む炭酸ガスを形成し、混合部1−11に到達する。
【0017】
混合部の先には、リングノズルが設置され、圧縮空気導入体1−4から圧縮空気1−5をリングノズル外筒1−8内に導入して、リングノズル内に圧縮空気のリング状の噴流を形成する。
【0018】
同時に筒状体1−6後端からの空気と、ドライアイス粒を含む炭酸ガスが、該噴流に混合して、直進し前方のリングノズル噴出口1−7から直進して、先端の噴出口1−9から被洗浄物に噴射する。ドライアイス粒を含む炭酸ガスが、噴流に混合する過程で、ドライアイス粒は、若干溶けて粉末化する。図1では、流量を増す為、リングノズル1−8の後方から外気を吸入する方式を採用した。
【0019】
液化二酸化炭素は高圧ボンベから開閉弁、減圧器を通り断熱ホースでノズル部まで運ばれ、手元弁(手動或いは電磁弁)を通り液化炭酸ガス用のノズルから膨張室へ放出され、膨張室1−10を通過しながら固体のドライアイス微粒と二酸化炭素の気体の混合物となり、微粒は衝突しながら融着して適度な大きさに成長して混合部1−11に到達する。
【0020】
膨張室1−10の前方には、エアコンプレッサーからの圧縮空気または高圧ボンベからのキャリアガスが、リングノズル1−8を通りドーナツ状の噴流を形成している。膨張室を出たドライアイスと二酸化炭素ガスの混合物は、直進してノズル内を進行しながらキャリアガス噴流内に拡散し、直進ノズルの先端から噴射される。
【0021】
排気ファンの風量を噴流の流量に見合ったものとすれば、洗浄空間内ではスムーズな気体の流れが持続し、微細な漏れがあっても周囲に汚れを出さずに隈無く洗浄することができる。
【0022】
膨張により生成したドライアイス粒子を別に生成した高速のキャリアガス噴流中に分散せしめて粉末化し、ドライアイス粉末を含むガスを平行流として、ノズルからほぼ直進するガス噴流を作るのが好ましい。
【0023】
直進型の噴流は扇型または円錐形のスプレーパターンの場合に比べて、奥行きがある場合でも洗浄効果の低下が少ない。更に、ガス噴流が被洗浄物に当たって生ずる乱流の影響を小さくする為に、廃ガス(キャリアガスにドライアイス昇華物や剥離物を含む物)を吸引する手段を併用するのが好ましい。
【0024】
図2(a)〜図2(c)は、図1に示す本発明の洗浄装置に連結するヘッド部を示すものであり、図1に示す洗浄装置の噴出口1−12にフレキシブルチューブ2−8を連結した例を示す。
フレキシブルチューブ2−8の先端は、水平に折曲され、先端にパイプ2−11が、フレキシブルチューブに連結した筒状体2−12を外嵌させることにより連結されている。
【0025】
パイプ2−11は、回転モータ2−2によって回転し、揺動モータ2−3によって上下動し、クランク機構2−4によって、揺動するようになっている。クランク軸2−4は、一端が筒状体2−12に他端が上下動させるモータの駆動軸に連結されている。筒状体2−12は、固定フレーム2−10上の柱2−14と結合している。
【0026】
吹き出し口は、クランク機構によって、回転軸2−13の周りを、一定の角度上下方向に回転する。図2Cに示すように、吹き出し口は、回転固定軸2−9の周りを水平方向に回転する。
【0027】
フレキシブルチューブ2−8内に、ドライアイス粉末を含む噴流が導入され、回転及び上下動する吹き出し口から噴出するようになっている。従って、吹出し口は、回転しながら上下動(揺動)するので、ガス噴流を目的とする被洗浄面全体に当たるようにすることができる。尚、エンコーダ2−11は、空調機内でこの装置を適切に位置決めするためのものである。
【0028】
図3は、図2(a)〜図2(c)に示す装置で空調機を洗浄している状態を示す図である。
【0029】
洗浄空間を周囲から隔離する方法は、透明な樹脂製のシートで全体を被い、天井・壁・床等との境は粘着剤付きのテープを貼り、気密を保てる様に設置する。
【0030】
隔離シート7に設けた窓から、ノズルへ供給される液化二酸化炭素及びキャリアガスのホースを引き出して、ドライアイス粉を含む液化二酸化炭素の高圧ボンベ5やエアコンプレッサー(或いは高圧ガスボンベ)4に接続して、ホースを通して液化ガスとキャリアガスを図1に示す装置に供給する。
【0031】
別の窓から排気用のホース6−1を出して吸引用のファンユニットに接続する。排気ホースから排気ファンユニットに入った排気は、ユニットに組み込まれたフィルター6を通り塵埃、汚れ等の固形物を除去して、気体のみを放出ホースで室外に運び、大気中に放出する。尚、外気ホース1−12から外気を吸引して、ドライアイス粒を含む炭酸ガスと混合するようになっている。
【0032】
図3の実施例では、ノズルの移動に図2(a)〜図(c)に示す自動旋回機構を使っているので、旋回機構全体を隔離シート7内に設置している。図4に示すように、人が手でノズルを動かす場合は、ホース引き出し用の窓から腕を挿入して行う。
【0033】
図5は、エアハン型の空調機を図1に示す洗浄装置1で手作業で洗浄する例を示すものであり、手作業ノズル1で炭酸ガス粉末を含む噴流を、被洗浄物に噴射し、廃ガスは、排気ファンフィルター6で除去している。
【0034】
被洗浄物として空調機を例に挙げて説明したが、ドライアイス粒では傷つくようなものの洗浄には、どのようなものでも好適に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、被洗浄物を傷つけることなく、しかも洗浄液が生じることもないので、特に空調機の洗浄への利用が期待される。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化二酸化炭素を断熱膨張させてドライアイス粒子を含む二酸化炭素を生成する工程と、
エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスを導入してリング状の噴流を形成する工程と、
前記ドライアイス粒子を含む二酸化炭素を前記リング状の噴流を通過させて、ドライアイスの粉末を形成する工程と、
ドライアイスの粉末を含むガス噴流を被洗浄物に噴霧する工程と、
洗浄により生じた汚物は、排気ホースから吸引排出する工程と、
を含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記被洗浄物は、空調機であり、空調機の周囲を閉鎖し一時的な洗浄空間を形成する請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスをリングノズルに導入して、前記リング状の噴流を形成する請求項1又は2記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記噴霧する先端の吹出し口は、クランク機構によって、回転及び揺動する請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
液化二酸化炭素を断熱膨張させてドライアイス粒子を含む二酸化炭素を生成する手段と、
エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスを導入してリング状の噴流を形成する手段と、
前記ドライアイス粒子を含む二酸化炭素を前記リング状の噴流を通過させて、ドライアイスの粉末を形成する手段と、
ドライアイスの粉末を含むガス噴流を被洗浄物に噴霧する手段と、
洗浄した汚物は、排気ホースから除去する手段と、
を含むことを特徴とする洗浄装置
【請求項6】
前記被洗浄物は、空調機であり、空調機の周囲を閉鎖し一時的な洗浄空間を形成する請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項7】
エアコンプレッサーからの圧縮空気又は高圧ボンベからのキャリアガスをリングノズルに導入して、前記リング状の噴流を形成する請求項4又は5記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記噴霧する先端に、吹出し口がクランク機構によって、回転及び揺動する手段を連結する請求項5〜7のいずれかに記載の洗浄方法。


【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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