説明

ドライアイススノー生成装置

【課題】 スノーホーンの内にドライアイススノーの堆積を生じさせることなく、かつ、スノーホーンから降下するドライアイススノーの分散形状を可変にできるドライアイススノー生成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 液化炭酸ガスを噴出するオリィフィスノズル(4)と下端開放状の筒体で構成したスノーホーン(1)とを備え、前記オリィフィスノズル(4)を前記スノーホーン(1)の上部空間に臨ませて配置したドライアイススノー生成装置であって、液化炭酸ガス噴出ノズル(4)の下流側にスノーホーン(1)よりも小径のミスト生成筒(5)を連出する。このミスト生成筒(5)の下端開口をスノーホーン(1)の内部に突入させて臨ませ、前記オリィフィスノズル(4)からミスト生成筒(5)の下端までの長さを変更可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライアイススノーの生成装置に関し、特に、多層ゼリー状デザート等の製造時に下層ゼリーの冷却に適用できるドライアイスの生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二層ゼリーなどの多層ゼリーを製造する一般的な方法は、例えば特許文献1に示されているように、ゲル化剤を水等の溶媒に加えて形成したゲル化物質を加温することにより、流動性を持たせて容器内に投入し、それを冷凍庫に入れて下層ゼリーをゲル化温度以下に冷却してゲル化させ、次いで、この下層ゼリーの上に別のゲル化性物質を加温した状態で投入し、再度冷却することにより、層状のゲルを得るようにしている。
【0003】
ところが、この場合、下層ゼリーを冷凍庫で冷却するのでは、短時間に冷却することができず、工業生産性を高めることができないという問題がある。そこで下層ゼリーを短時間で冷却し、工業生産性を高めるために、下層ゼリーを投入した後に、下層ゼリーの表面に向かって液化二酸化炭素(以下、「液化炭酸ガス」という)を噴霧して、当該下層のゲル化性物質を冷却することを着想した。このような、食品に対して、雪状ドライアイスを供給するドライアイススノー生成装置として、特許文献2に示すものが知られている。
【特許文献1】特開平10−150932号公報
【特許文献2】特開平06−298513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のドライアイススノー生成装置は、スノーホーンの天井部分を半球殻に形成し、この半球殻中心部にジュールトムソン効果を発現するオリィフィスノズルを少なくとも一対上下に位置させ、オリィフィスノズルから噴出させた液化炭酸ガスの噴出流を衝突させることでドライアイススノーの上下方向への運動モーメントを打ち消しあうようにして、ふんわりと降り積もらせるようにしているが、この場合でもスノーホーンの径方向への運動エネルギーは残存することから、スノーホーンの内周面でドライアイススノーが堆積・成長し、スノーホーン自体が詰まるという問題が発生することがあった。
【0005】
また、前述のドライアイススノー生成装置を使用した場合、スノーホーンから降下するドライアイススノーは、周辺部が多く中央部が少ないドーナツ状となり、被冷却物の表面を均一に冷却しにくいという問題が考えられる。
【0006】
その結果、中央部に必要なドライアイススノー量を供給すると、周辺部分が過剰となるため、余分のドライアイススノーを後工程で吹き飛ばす必要があり、作業工程が増えるだけでなく、ドライアイススノーの無駄を生じることにもなる。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、スノーホーン内でドライアイススノーの堆積を生じさせることなくドライアイススノーを生成することができ、かつ、スノーホーンから降下するドライアイススノーの分散形状を可変にできるドライアイススノー生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために請求項1に記載した本発明は、液化炭酸ガスを噴出するオリィフィスノズルと下端開放状の筒体を構成したスノーホーンとを備え、前記オリィフィスノズルの下流側にスノーホーンの本体部分よりも小径のミスト生成筒を連出し、このミスト生成筒の下端開口部を前記スノーホーンの本体部分の内部に臨ませて配置し、前記オリィフィスノズルからミスト生成筒の下端までの長さを変更可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、オリィフィスノズルの下流側にスノーホーンの本体部分よりも小径のミスト生成筒を連出し、このミスト生成筒の下端開口をスノーホーンの本体部分の内部(以下、単に「スノーホーン内」という)に臨ませていることから、オリィフィスノズルが噴出した液化炭酸ガスは、ミスト生成筒内とスノーホーン内とで二段階に膨張することになり、膨張に伴う冷熱の発生も段階的となり、ミスト生成筒内外の温度差やスノーホーン内外での温度差がそれぞれ小さくなることから、スノーホーン内面やミスト生成筒内面でのドライアイススノーの堆積がなくなり、スノーホーンの詰まりをなくすことができる。
【0010】
また、オリィフィスノズルからミスト生成筒の下端までの長さを変更可能に構成していることから、スノーホーン内でのドライアイススノーの分散状態を調整することができ、スノーホーンの下側に位置させた被冷却物上に積層するドライアイススノーの好ましい形状を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図は、本発明の一実施形態を示すドライアイススノー生成装置の縦断端面図を示す。
このドライアイススノー生成装置は、スノーホーン(1)と、液化炭酸ガスを貯蔵した貯蔵容器(2)と、前記スノーホーン(1)の天井壁(9)にミスト生成筒(5)を介して設けられたオリィフィスノズル(4)とを備え、前記貯蔵容器(2)内の液化炭酸ガスを供給路(3)を介してオリィフィスノズル(4)に供給するように構成されている。前記ミスト生成筒(5)は、スノーホーン(1)の天井壁(9)にオリィフィスノズル(4)を取り囲む状態に配置されている。上記スノーホーン(1)は、下面開放状の筒体からなる本体部分(6)を有し、その本体部分(6)の直径はミスト生成筒(5)の直径の2〜10倍に設定してある。
【0012】
上記オリィフィスノズル(4)は、小口径の貫通孔(7)を複数個(本例では4個)透設したオリィフィス板(8)を備えてなり、このオリィフィスノズル(4)はミスト生成筒(5)の上部に装着固定してある。
【0013】
上記ミスト生成筒(5)は、前記スノーホーン(1)の天井壁(9)の中央部に取り付けられている上半部(5a)と、該天井壁(9)の内面部分に着脱可能に取り付けられている下半部(5b)とで構成してあり、ミスト生成筒(5)の上半部(5a)と下半部(5b)とはその内面同士が円滑に連続するように構成してあり、ミスト生成筒(5)の下半部(5b)はスノーホーン(1)の本体部分(6)の内側空間に開口している。
【0014】
上記ミスト生成筒(5)は、多段に継ぎ足し、その下半部(5b)の長さを変えることで、オリィフィス板(8)からミスト生成筒(5)の下端開までの長さを変更可能に構成してある。この場合、上記オリィフィス板(8)の位置からミスト生成筒(5)k下端までの長さは、スノーホーン(1)の本体部分(6)の全長に対して、0.2〜0.4倍の長さになるように構成してある。そして、ミスト生成筒(5)の長さが短い場合には、中央部よりも周縁部分でのドライアイススノーの積層量が多いドーナツ状となり、ミスト生成筒(5)の長さが長い場合、中央部でのドライアイス積層量が多い円錐状となる。
【0015】
また、ミスト生成筒(5)のノズル近傍部分の外周にヒータ(10)を装着してある。図中符号(W)はスノーホーン(1)の下側に所定間隔隔てて配置した被冷却物で、例えばゼリーを収容した容器などが想定される。
【0016】
上述の構成からなるドライアイススノー生成装置では、液化炭酸ガスの供給路(3)を通してオリィフィスノズル(4)に供給された液化炭酸ガスは、オリィフィス板(8)を通ってミスト生成筒(5)内に噴出され、ミスト生成筒(5)の内部で一次膨張する。この膨張により生じたドライアイススノー、液化炭酸ガスミスト及び炭酸ガスの混合流がミスト生成筒(5)からスノーホーン(1)の本体部分(6)に噴出して、この本体部分(6)の内部で二次膨張して、ドライアイススノーと炭酸ガスの混合流が生成される
【0017】
このように、オリィフィス板(8)を用いたオリィフィスノズル(4)から噴出する液化炭酸ガスをミスト生成筒(5)とそれよりも大径の本体部分(6)とで2段に分けて膨張させると、各段階での膨張に起因する冷熱の発生量が減少することになるからオリィフィスノズル近傍部分でのドライアイススノーの堆積・成長を抑制できる。さらに、ミスト生成筒(5)のノズル近傍部分に対応させてヒータ(10)が配置してあるから、液化炭酸ガスの膨張にともなって生じる寒冷エネルギーに対応する熱量をヒータ(10)から得ることができ、スノーホーン(1)の内面のノズル近傍部分でのドライアイススノーの堆積・成長を一層抑制できることになる。
【0018】
また、液化炭酸ガスの膨張度合いが1段で膨張するものに比べて小さくなることから、その噴出速度も小さくなって、ドライアイススノーと炭酸ガスとの混合流の直進性も小さくなり、本体部分(6)内でドライアイススノーが均一に分散しやすくなる。
【0019】
さらに、ミスト生成筒(5)の長さを調整変更可能に構成し、ミスト生成筒(5)の長さをスーホーン本体部分(6)に対して0.4倍の長さに設定した場合には、スノーホーン(1)の下側に配置した被冷却物の表面に円錐状にドライアイススノーが積層することになる。この被冷却物が多層ゼリーなどの場合には、カップに入れたゼリーはその中央部分での温度が高いことから、中央部にドライアイススノーを集中させることは望ましい。
【0020】
一方、ミスト生成筒(5)の長さをスノーホーン(1)の本体部分(6)の長さに対して0.4倍よりも長く設定すると、その長くした分だけミスト生成筒(5)から被冷却物までの距離が短くなり、ミスト生成筒(5)からの噴射流のスノーホーン(1)の内壁に接する時間が相対的に短くなり、かつ、その噴射流の被冷却物への風力が強くなる。その結果、上記被冷却物の中央部でのドライアイススノーの積層高さが増大する。つまり、ミスト生成筒(5)から被冷却物までの距離が短くなるにつれて、積層するドライアイススノーは、上記噴射流により中心部を残してそぎ落とされ、例えば鉛筆の先のように鋭角になり、その裾野部分は余分に拡がることとなる。
【0021】
また、ミスト生成筒(5)の長さがスノーホーン本体部分(6)の長さに対して0.1倍よりも短いと、二段膨張の効果が薄れ、ドライアイススノーは周辺部が多く中央部が少ないドーナツ状になる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、多層ゼリーの製造過程での冷却や、中間部に具材を浮遊する状態に収容する冷菓の製造過程での冷却に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を示すドライアイススノー生成装置の縦断端面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…スノーホーン、4…オリィフィスノズル、5…ミスト生成筒、8…オリフィス板、10…ヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスを噴出するオリィフィスノズル(4)と下端開放状の筒体で構成したスノーホーン(1)とを備え、前記オリィフィスノズル(4)を前記スノーホーン(1)の上部空間に臨ませて配置したドライアイススノー生成装置において、
前記オリィフィスノズル(4)の下流側にスノーホーン(1)の本体部分(6)よりも小径のミスト生成筒(5)を連出し、このミスト生成筒(5)の下端開口を前記本体部分(6)の内部に臨ませて配置し、前記オリィフィスノズル(4)から前記ミスト生成筒(5)の下端までの長さを変更可能に構成したことを特徴とするドライアイススノー生成装置。
【請求項2】
前記ミスト生成筒(5)を多段に継ぎ足し可能に構成した請求項1に記載のドライアイススノー生成装置。
【請求項3】
前記ミスト生成筒(5)のノズル近傍部分にヒータ(10)を配置した請求項1又は2に記載のドライアイススノー生成装置。


【図1】
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【公開番号】特開2008−1576(P2008−1576A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174897(P2006−174897)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(506219889)有限会社クールテクノス (10)
【Fターム(参考)】