説明

ドライアイスブラスト装置

【課題】
ドライアイスブラスト装置の処理不良率の低減,処理品の品質改善とともに、自動装置の無人化を図る。
【解決手段】
ドライアイスブラスト装置は、噴射ガン30Aに送られたドライアイス粒子56を、圧縮空気によって送り出すことで、ワークであるICチップ50に吹き付けて、その表面を洗浄する。前記噴射ガン30Aは、圧縮空気の空気通路32とドライアイス粒子56の導入部34を備えたガン本体32と、噴射ノズル36により構成される。前記導入部34,すなわち、噴射通路37の最終端部には、ファイバセンサ38,40の先端部38A,40Aが取り付けられており、その検出結果からドライアイス粒子56が確実に噴射されているか否かが判断される。また、ファイバセンサ38,40の先端側には、ドライアイスの昇華による霜付,結露,凍結などを防止するためのヒータ42,44が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種成形品や部品などの表面の汚染物や不要物を除去するドライアイスブラスト装置に関し、更に具体的には、洗浄やバリ取りなどの処理の不良率の低減,処理品の品質の改善,ならびに、自動装置の無人化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品や精密機器の製品サイズは、益々小型化する傾向が加速しており、従来では問題とならなかった微小な異物でさえも、製品不良の原因となることが多くなってきている。また、自動車部品などは、信頼性・安全性がより追求される中で、部品やユニットに対する微小な異物混入も問題視される傾向にあり、自動化による洗浄システムを必要とするようになってきた。
【0003】
従来、精密部品,ICチップ,電子部品などに付着している異物や汚れは、顕微鏡を見ながら手作業により取り除かれていた。また、繰り返し使用する部品トレーや使用済み機器のリユース又はリサイクル目的の洗浄,あるいは、部品のバリ取り等の工程は、組立後の製品の信頼性を得るために必要不可欠なものであるが、更に工数を軽減すべく、効率的な洗浄・バリ取りが望まれている。このため、従来の洗浄(ないしバリ取り)工程では、製品機器の製造ラインに近接した場所で、手作業による清掃・洗浄を行っていた。
【0004】
前記使用済み機器のリユース又はリサイクル目的でのユニット洗浄においては、汚染程度がユニット毎に異なるため、上述した手作業による洗浄が最も能率がよく、洗浄後の品質が安定化する。しかしながら、その一方で、作業者にとっては、注意力を要する苛烈な作業となっていた。
【0005】
湿式(ウェット)ではないドライ洗浄技術としては、サンドブラストやドライアイスブラスト方法が公知である。サンドブラスト方法では、媒体(メディア)の選択やブラスト稼動条件が重要であり、該条件が不適切であると、被検体(処理対象物)の表面に付着した汚染源を除去するにとどまらず、表面基材そのものに損傷を与えて材料組織を破壊したり,熱変性を起こさせたり,あるいは、外観品質の表面粗さや光沢を阻害するおそれがある。また、媒体が対象物に衝突して微粉となり、媒体そのものが二次汚染源になって再洗浄が必要となるほか、ユニットを構成するコンポーネント(部品)の隙間に入り込んで、著しく機能を阻害することもある。
【0006】
これに対して、前記ドライアイスブラスト方法では、基材表面に向けて噴射されたドライアイスは、表面衝突時に瞬間的に昇華してガス状になるため、媒体や溶液の後処理が不要であり、二次汚染のおそれも少ない。また、上述した基材表面の損傷問題も極めて軽微であり、ほぼブラスト条件により回避が可能である。このようなドライアイスブラスト方法を洗浄に用いる技術としては、例えば、以下の特許文献1に記載のドライアイスによる洗浄法がある。
【特許文献1】特開昭61−15749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上のような従来のドライアイス洗浄技術を用いて自動化を図る場合、ドライアイスが確実に噴射されているという確証がとれず、洗浄不良を未然に防ぐことが困難である。このため、自動装置の無人化ができず、洗浄不良率も上がり、洗浄品やそれを用いた製品の品質低下を招くという不都合がある。特に、ドライアイスの粒径をより小さくすると、供給経路にて詰まり、凍結などのリスクが増して、噴射ノズルへのドライアイス供給の信頼性が一層低下するため、対象物に対してドライアイスが確実に噴射されているか否かを検出する必要性が更に増す。
【0008】
本発明は、以上の点に着目したもので、ドライアイスブラスト装置による処理不良率の低減,処理品の品質改善,自動装置の無人化を図ることを、その目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、対象物の表面にドライアイスを噴射して汚染物ないし不要物を除去する噴射手段を備えるとともに、該噴射手段の噴射最終端部に、ドライアイスを検出するための検出手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
他の発明は、対象物の表面にドライアイスを噴射して汚染物ないし不要物を除去するドライアイスブラスト装置であって、圧縮空気を生成する圧縮空気生成手段,粒状又は粉末状のドライアイスを供給するドライアイス供給手段,前記粒状又は粉末状のドライアイスを、前記圧縮空気生成手段により生成された圧縮空気によって、前記対象物の表面に向けて噴射する噴射手段,該噴射手段の噴射最終端部に設けられており、ドライアイスを検出するための検出手段,を備えたことを特徴とする。
【0011】
主要な形態の一つは、前記噴射最終端部が、前記噴射手段内へドライアイスが導入される部分であることを特徴とする。他の形態は、前記噴射手段及び前記検出手段の動作を制御する制御手段,を設けたことを特徴とする。更に他の形態は、前記制御手段が、前記ドライアイスの検出レベルの変化に応じて、前記検出手段を自動調整し、最適条件を設定することを特徴とする。
【0012】
更に他の形態は、(1)前記検出手段が、ファイバセンサであること,より好ましくは、該ファイバセンサの先端を加熱し、霜付,結露,凍結による誤作動を防止するセンサ加熱手段を設けたこと,(2)前記検出手段が、温度センサであることを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、対象物の表面にドライアイスを噴射して汚染物ないし不要物を除去する噴射手段の噴射最終端部に、ドライアイスを検出するための検出手段を設けることとした。このため、ドライアイスの噴射異常を瞬時に検出し、洗浄やバリ取りなどのブラスト処理の不良を未然に防止して、不良率の大幅な低減を図るとともに、処理品の品質が向上するという効果が得られる。また、処理不良の確認検査作業や装置の監視が不要になることから、自動装置の無人化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
最初に、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明のドライアイスブラスト装置を、ICチップの最終洗浄用の装置として適用した例である。図1(A)は、本実施例のドライアイスブラスト装置の全体構成を示す模式図,図1(B)は変形例を示す図である。図2は、本実施例の噴射ガンの構造を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印F2方向から見た側面図である。なお、図2(A)及び(B)はいずれも、内部構造を明確にするために、一部破断して示されている。
【0016】
本実施例のドライアイスブラスト装置は、図1(A)に示すように、粒子状のドライアイスを供給するドライアイス供給装置10と、圧縮空気(ないし加圧空気)を生成して供給する圧縮空気供給装置24と、前記ドライアイス供給装置10から供給されたドライアイス粒子を、圧縮空気とともに洗浄対象のICチップ50に噴射する噴射ガン30A及び30Bのほか、ドライアイス供給ライン切替装置60,コントローラ70により構成されている。前記ICチップ50は、吸着装置52,54により吸着保持され、図示しない移動装置によって、図1に矢印F1で示す方向に移動可能となっている。なお、前記噴射ガン30A,30B及び吸着装置52,54は、図示しない加工ブース内などに設置するようにしてもよい。以下、各部の構造について順に詳述する。
【0017】
まず、ドライアイス供給装置10について説明する。ドライアイス供給装置10は、ドライアイスペレット12を収容するためのホッパ14,該ホッパ14から送られたドライアイスペレット12を所定量に計量する計量装置19と計量確認センサ20,前記ドライアイスペレット12を所定の粒径の粒子状に破砕する破砕装置22を備えている。前記ホッパ14には、収容されたドライアイスペレット12が塊を作らないように攪拌するための攪拌羽根16と、ホッパ14内のドライアイスペレット12が所定量以下になったことを検知し、ドライアイスペレット12の投入を促すための空杯センサ18が設けられている。収容されるドライアイスペレット12は、例えば、径3mm,長さ2mm〜10mm程度の円柱状となっている。
【0018】
前記破砕装置22は、所望の粒径の粒子状にドライアイスペレット12を破砕することが可能であるが、前記ICチップ50に損傷を与えないようにするという点からは、0.7mm以下に破砕するように設定すると都合がよい。また、0.01mm以下に設定すると、前記噴射ガン30A及び30Bに送る最中にドライアイスが昇華して洗浄に適さなくなる場合もあるため、0.01mm〜0.7mm,より好ましくは、0.05〜0.3mmの範囲内で粒径を調整するようにすると、十分な表面洗浄効果を得ることができる。なお、最適粒径は、処理対象の形状,種類,処理部位に応じて、上記範囲内で任意に設定可能である。本破砕装置22で粒径が調整されたドライアイス粒子56は、ホース28を介して前記噴射ガン30A及び30Bに送られる。前記ホース28は、一方の噴射ガン30Aに接続するホース28Aと、他方の噴射ガン30Bに接続するホース28Bに分岐される。
【0019】
なお、前記ホッパ14に収容されるドライアイスペレット12の供給方法は任意である。例えば、使用量が多い場合には、外部設備からタンクローリーなどで供給された液化炭酸ガスを、本ブラスト装置の設置側の設備でドライアイスペレット12に加工して前記ホッパ14に収容するようにしてもよい。また、使用量が少ない場合には、予めペレット状に形成された市販のドライアイスを利用するようにしてもよいし、ブラスト装置の設置側で、ガスボンベ内の炭酸ガスからドライアイスペレット12を形成して、ホッパ14へ送るようにしてもよい。このようなペレタイザーやドライアイス製造装置は、公知技術であり、そのいずれを用いてもよい。
【0020】
次に、圧縮空気供給装置24は、圧縮空気(加圧空気)を生成するもので、生成された圧縮空気は、ホース26を介して前記噴射ガン30A,30Bに送られる。該ホース26は、一方の噴射ガン30Aに接続するホース26Aと、他方の噴射ガン30Bに接続するホース26Bに分岐している。そして、前記噴射ガン30A,30B内で圧縮空気と前記ドライアイス粒子56が混合されたのち、ICチップ50に向けて吹き付けられる。圧縮空気(ないし噴射空気)の圧力は、圧力が高すぎるとICチップ50が傷つき、低すぎてもドライアイス粒子56がICチップ50の表面で跳ね返って洗浄できないため、例えば、0.05Mps〜1.0Mps程度に設定されるが、より良好な洗浄を行うためには、0.1Mps〜0.3Mps程度に設定すると都合がよい。なお、本実施例では、圧縮空気供給装置24を、ドライアイス供給装置10とは別に用意することとしたが、必要に応じてドライアイス供給装置10に内蔵する構成としてもよい。また、圧縮空気の乾燥装置やフィルタ装置などを必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0021】
次に、噴射ガン30A及び30Bについて説明する。第1の噴射ガン30Aは、吸着装置52によって上向きに保持されたICチップ50の上面側にドライアイス粒子56を吹き付けて洗浄するものであり、第2の噴射ガン30Bは、吸着装置54によって下向きに保持された状態のICチップ50の裏面側を洗浄するものである。なお、噴射ガン30A,30Bの構造は同一であるため、以下、噴射ガン30Aを例にして説明する。
【0022】
図2に示すように、噴射ガン30Aは、ガン本体30と噴射ノズル36により構成されており、前記ガン本体30の内側には、前記ホース26Aから導入される圧縮空気の空気通路32と、ホース28Aから送られるドライアイス粒子56の導入部34が形成されている。該導入部34に導入されたドライアイス粒子56は、前記空気通路32から送られる圧縮空気によって、噴射ノズル36の内側の噴射通路37を通って、ICチップ50に向けて噴射される。すなわち、前記導入部34は、前記噴射通路37の最終端であるということができる。
【0023】
前記ガン本体30には、一対のファイバセンサ(光ファイバセンサ)38,40が設けられており、該センサの先端部38A及び40Aは、ガン本体30の側面を貫通して、前記導入部34内に若干露出するように取り付けられている。これらファイバセンサ38,40は、ドライアイスを検出するためのものであって、その検出結果により、ドライアイス粒子56が噴射ノズル36から確実に噴射されているか否かを判断することができる。なお、ファイバセンサ38,40は、ドライアイスの低温に耐えることができるように、耐熱性のものが用いられる。
【0024】
ドライアイス粒子56は、前記ホース28Aから噴射通路37に送られるときに、ほぼ直角に移動方向が変化するとともに、ホース28A内よりも広い空間である導入部34に出るため、略直線状の噴射通路37を移動するときよりも、一瞬だけ若干移動速度が遅くなる。このため、前記ファイバセンサ38,40を導入部34に設ける,すなわち、噴射通路37の最終端部に設けることにより、確実にドライアイス粒子56の検出を行うことが可能となる。以上のようなファイバセンサ38及び40は、前記コントローラ70に接続されており、その動作が制御されている。
【0025】
また、ガン本体30には、前記ファイバセンサ38,40の先端部38A,40Aが、ドライアイス粒子56によって霜付,結露,凍結するのを防止するためのヒータ42,44が設けられている。ドライアイスアイス粒子56が通過する経路は、ドライアイスの昇華により温度が極低温となり、上記霜付,結露,凍結等が発生し、検出が困難となるが、前記ヒータ42及び44を設けることにより、このような検出不良を防止することができる。
【0026】
更に、前記噴射ガン30A(30B)の両脇には、ノズル型の静電除去装置(ないしイオナイザ)46及び48が設けられている。これら静電除去装置46及び48は、前記噴射ガン30Aによるドライアイス粒子56の吹き付けと同時に、前記ICチップ50の表面に向けて除電エアを吹き付けるものであって、前記ICチップ50とドライアイス粒子56との衝突によって生じる静電気を除去することができる。なお、静電除去装置46及び58は、空気に電荷を与えて帯電させることによって静電気を中和するものであって、その構成は公知である。
【0027】
次に、ドライアイス供給ライン切替装置60について説明する。ドライアイス供給ライン切替装置60は、バルブ62A,62B,切換弁64により構成されている。前記圧縮空気供給装置24により生成された圧縮空気は、ホース26とそこから分岐したホース26A及び26Bを介して噴射ガン30A,30Bに供給されるが、前記バルブ62Aは、前記ホース26Aの適宜位置に設けられ、バルブ62Bは前記ホース26Bの適宜位置に設けられている。同じように、ドライアイス供給装置10からは、ホース28とそこから分岐したホース28A及び28Bを介して噴射ガン30A,30Bにドライアイス粒子56が供給されるが、前記ホース28A及び28Bへのドライアイス供給の切り替えは、前記切換弁64により行われる。なお、前記切換弁64は、図1(A)に図示する例では、極低温でも凍結しないで、なおかつラインがストレートに接続される特殊な3方向切換弁であるが、例えば、図1(B)に示すY型3方ボールバルブ65のようなものを用いるようにしてもよい。また、他の公知の各種の切換手段を利用するようにしてもよい。このようなドライアイス供給ライン切替装置60は、前記コントローラ70に接続されており、前記バルブ62A,62B,切換弁64の開閉が制御され、ドライアイス粒子56の噴射制御が行われる。
【0028】
前記コントローラ70は、上述した通り、ファイバセンサ38,40や、ドライアイス供給ライン切替装置60の動作制御を行う。また、ファイバセンサ先端部38A,40Aが、ドライアイス粒子56の昇華によって極低温となったり、被洗浄物によりドライアイス粒径やドライアイス噴射量が大きく変わったりして、作業状況により検出レベルが絶えず変化するため、前記ファイバセンサ38,40を調整し、最適条件を自動設定する機能も有している。
【0029】
次に、本実施例の作用を説明する。まず、ドライアイス粒子56の噴射準備として、ドライアイスペレット12をホッパ14に所定量収容する。ホッパ14では攪拌羽根16が回転しており、ペレット同士が付着して塊になるのを防止するとともに、安定して計量ができるように作用する。収容されたドライアイスペレット12は、計量装置19により安定計量されているか、計量確認センサ20によって確認されながら、破砕装置22に送られる。前記ホッパ14には、空杯センサ18が設けられているため、ホッパ14内のドライアイスペレット12が所定量に満たなくなったら外部に警告を発するようになっている。
【0030】
破砕装置22に送られたドライアイスペレット12は、ICチップ50の洗浄に適した粒径(例えば、0.05mm)のドライアイス粒子56となるように破砕され、ホース28,28A,28Bを介して噴射ガン30A,30Bに送られる。一方、圧縮空気供給装置24では、空気の圧縮とともに必要に応じて乾燥処理が行われる。生成された圧縮空気は、ホース26,26A,26Bを介して噴射ガン30A,30Bの空気通路32に送られ、導入部34で前記ホース28A,28Bから送られたドライアイス粒子56と混合される。圧縮空気の圧力は、噴射ガン30A,30Bから噴射されるドライアイス粒子56に、ICチップ50の表面に付着した汚染物の除去に適した勢いを付するように調整されるが、このような圧力調整は、圧縮空気供給装置24自体で行うようにしてもよいし、ホース26A,26Bに設けたバルブ62A,62Bの調節により行うようにしてもよい。あるいは、噴射ガン30A,30B内で行うようにしてもよい。以上のようにして噴射準備が整った噴射ガン30A,30Bは、ドライアイス供給ライン切替装置60により、いずれか一方からドライアイス粒子56が噴射されるように制御される。
【0031】
一方、本実施例の洗浄対象であるICチップ50は、図示しないICチップ専用トレー内にスタックされており、吸着装置52によって上向きに吸着保持された状態で、噴射ガン30Aの手前部分まで自動搬送される。この時点では、ドライアイス供給ライン切替装置60により、第1のドライアイス噴射ガン30Aへ圧縮空気及びドライアイス粒子56が供給可能となっている。噴射ガン30Aからの噴射開始と同時に、ファイバセンサ38,40が作動し、ドライアイス粒子56の検出を行う。このとき、上述した通り、霜付,結露,凍結などによるセンサの誤動作を防止するために、前記ヒータ42,44によりセンサ先端部38A,40Aが、適切な温度に加熱されている。
【0032】
そして、ドライアイス粒子56が確実に噴射されていること,すなわち正常であることが判断された場合には、吸着装置52に保持されたICチップが、図示しない移動手段により所定の速度で、図1に矢印F1で示す方向に移動し、第1の噴射ガン30Aの下を通過する。すると、ICチップ50の表面に噴射ノズル36からドライアイス粒子56が吹き付けられる。ICチップ50の表面に付着している汚染物と衝突したドライアイス粒子56は、衝突と同時に昇華し、その際の急激な体積膨張及びサーマルショックにより、汚染物の除去が可能となる。これにより、まず、ICチップ50の片面(図示の例では上面)が洗浄される。また、ドライアイス粒子56の吹き付けと同時に、静電除去装置46,48からもICチップ50へ向けて除電エアが吹き付けられるため、除去された汚染物の粉塵が、静電気によりICチップ50の表面に再付着するのを防止することができる。なお、圧縮空気の噴射流量とドライアイスの噴射量は、ICチップ50の大きさ(洗浄面積)や搬送速度に応じて任意に調整される。このような、圧縮空気の流量調整,圧力調整,ドライアイス噴射量の調整は、前記コントローラ70で行うようにしてもよいし、図示しない調整パネルの操作で行うようにしてもよい。
【0033】
前記吸着装置52に保持された全てのICチップ50が、前記噴射ガン30Aの下を通り過ぎて洗浄されたら、次に、吸着装置54により、ICチップ50が下向きに持ち替えられる。その間に、前記ドライアイス供給ライン切替装置60により、第2の噴射ガン30Bにドライアイス粒子の供給ラインが切り替わる。そして、噴射ノズル36からの噴射を開始すると同時にファイバセンサ38,40が作動し、ドライアイス粒子56の噴射が正常であると判断されると、吸着装置54によって下向きに保持されたICチップ50が、図示しない移動手段により、所定の速度で、第2の噴射ガン30Bの上を前記矢印F1方向に通過する。すると、ICチップ50の表面に噴射ノズル36からドライアイス粒子56が吹き付けられ、ICチップの他方の面(図示の例では下面)が洗浄される。以上の動作により、ICチップ50の両面の洗浄が完了する。
【0034】
ICチップ50の両面の洗浄作業が終了したら、再び、第1の噴射ガン30Aにドライアイス供給ラインが切り替わり、上述した洗浄動作が継続される。なお、両面の洗浄が完了し、吸着装置54に吸着保持された状態のICチップ50は、第1の噴射ガン30Aで他のICチップ50が洗浄されている間に、図示しない空のICチップ専用トレーに整列され、満了になったら、図示しないトレー収納装置に段積みされる。前記ICチップ専用トレーは、本実施例のブラスト装置で予め洗浄しておくとよいことは言うまでもない。なお、前記ファイバセンサ38,40によって噴射確認ができなかった場合は、モード選択により再度洗浄を実行するか、あるいは、噴射異常警報を発して、装置を自動停止させることができるようになっている。このような再洗浄又は装置の停止は、前記コントローラ70により行われる。本実施例では、噴射ガン30A及び30Bからのドライアイス粒子56の噴射は、例えば、最速2秒程度で切り替えが行われるため、瞬時にドライアイスの噴射確認を行う必要があるが、上述したファイバセンサ38,40を設けることにより、上述した速度で切り替えが行われても、的確に噴射確認を行うことが可能となる。
【0035】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)噴射ガン30A,30Bの噴射通路37の最終端部にあたるドライアイス導入部34に、ドライアイスを検出するための一対のファイバセンサ38,40をそれぞれ設けることとした。このため、ドライアイスの噴射異常を瞬時に検出し、洗浄不良を未然に防止するとともに、洗浄品(ICチップ50)の品質の信頼性を向上させることができる。
(2)コントローラ70により前記ファイバセンサ38,40によるドライアイス粒子56の検出制御,噴射確認の通知,ブラスト装置の停止などを行うため、処理不良を確認するための検査作業や装置の監視が不要となり、装置の無人化を図ることが可能となる。
(3)ファイバセンサ38,40の先端部38A,40Aの霜付,結露,凍結などを防止するためのヒータ42,44を設けたので、ファイバセンサ38,40の誤動作を防止することができる。
(4)コントローラ70により、ファイバセンサ38,40の自動調整を行うこととしたので、被洗浄物に応じてドライアイス粒径や噴射量が大きく変わったり、作業状況により検出レベルが絶えず変化したりするような場合にも、良好に自動洗浄を行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した各部の形状,大きさは一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。また、前記実施例の装置構成も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。例えば、ドライアイス供給装置10内に図示しないペレタイザーを設け、該ペレタイザーによって生成されたドライアイスペレット12を、前記ホッパ14へ供給することにより、ドライアイス供給装置10でドライアイスの製造と供給を行うようにしてもよい。また、噴射ガン30A,30Bを出入口が設けられた加工ブース内に設け、該加工ブース内で洗浄作業を行うとともに、除去した付着物ないし汚染物を回収する集塵ダクトを設けて、除去物の飛散を防止するようにしてもよい。噴射ガンの本数も任意であり、必要に応じて適宜増減してよい。
【0037】
(2)前記実施例では、噴射ガン30A,30Bから、粒子状のドライアイスをICチップ50に向けて噴射することとしたが、粉末状ドライアイス(炭酸ガススノー,パウダードライアイス,二酸化炭素スノー,ドライアイススノー,パーティクルースノー,スノードライ)を用いても同様の効果が得られる。この場合、ドライアイス供給装置10は、液化炭酸ガスを断熱膨張させてドライアイスを粉末状にするような公知の構成のものを利用してよい。
【0038】
(3)前記ドライアイス粒子56の粒径,圧縮空気の圧力及び流量も一例であり、処理対象の材質,洗浄部位,洗浄速度などに応じて適宜変更可能である。
【0039】
(4)前記実施例では、固定式の噴射ガン30A,30Bの位置まで、ICチップ50を自動的に移送することとしたが、ワークの搬送方法は任意であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。また、ワークを固定し、噴射ガン30A,30Bを可動式としてもよい。
【0040】
(5)前記実施例では、ドライアイス粒子56の検出装置として、ファイバセンサ38,40を利用することとしたが、温度センサをドライアイス粒子56の検出装置として用いるようにしてもよい。また、前記ファイバセンサ38,40を、図3に示すように、ドライアイス供給のホース28Aの接続用アダプタ29に内蔵させ、噴射通路37の最終端に近接する位置に設けるようにすると、既存のブラスト装置にも適用可能となる。
【0041】
(6)前記実施例では、洗浄対象のワークとして、ICチップ50を例に挙げて説明したが、洗浄対象としては、他に、精密部品や組立ユニット,電子部品(またはユニット),繰り返し使用される部品トレー,使用済み機器など、多様なものが挙げられる。また、本発明のブラスト装置で行う処理は、前記実施例1で示す洗浄のみではなく、例えば、携帯電話の筐体用のプラスチック成形品の表面に形成されている皮膜のバリ取りなどに適用可能である。更に、本発明は、洗浄やバリ取りのみならず、被膜除去による穴あけなどにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、対象物の表面にドライアイスを噴射して汚染物ないし不要物を除去する噴射手段の噴射最終端部に、ドライアイスを検出するための検出手段を設けることとしたので、洗浄やバリ取りなどの処理を行うブラスト装置の用途に適用できる。特に、処理不良の確認検査作業や装置の監視が不要になることから、自動装置の無人化を図る場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)は全体構成を示す図,(B)は変形例を示す図である。
【図2】前記実施例1の噴射ガンを示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印F2方向から見た側面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0044】
10:ドライアイス供給装置
12:ドライアイスペレット
14:ホッパ
16:攪拌羽根
18:空杯センサ
19:計量装置
20:計量確認センサ
22:破砕装置
24:圧縮空気供給装置
26,26A,26B,28,28A,28B:ホース
29:接続用アダプタ
30A,30B:噴射ガン
30:ガン本体
32:空気通路
34:導入部
36:噴射ノズル
37:噴射通路
38,40:ファイバセンサ
38A,40A:先端部
42,44:ヒータ
46,48:静電除去装置(イオナイザ)
50:ICチップ
52,54:吸着装置
56:ドライアイス粒子
60:ドライアイス供給ライン切替装置
62A,62B:バルブ
64:切換弁
65:Y型3方ボールバルブ
70:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面にドライアイスを噴射して汚染物ないし不要物を除去する噴射手段を備えるとともに、該噴射手段の噴射最終端部に、ドライアイスを検出するための検出手段を設けたことを特徴とするドライアイスブラスト装置。
【請求項2】
対象物の表面にドライアイスを噴射して汚染物ないし不要物を除去するドライアイスブラスト装置であって、
圧縮空気を生成する圧縮空気生成手段,
粒状又は粉末状のドライアイスを供給するドライアイス供給手段,
前記粒状又は粉末状のドライアイスを、前記圧縮空気生成手段により生成された圧縮空気によって、前記対象物の表面に向けて噴射する噴射手段,
該噴射手段の噴射最終端部に設けられており、ドライアイスを検出するための検出手段,
を備えたことを特徴とするドライアイスブラスト装置。
【請求項3】
前記噴射最終端部が、前記噴射手段内へドライアイスが導入される部分であることを特徴とする請求項1又は2記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項4】
前記噴射手段及び前記検出手段の動作を制御する制御手段,
を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ドライアイスの検出レベルの変化に応じて、前記検出手段を自動調整し、最適条件を設定することを特徴とする請求項4記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項6】
前記検出手段が、ファイバセンサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項7】
前記ファイバセンサの先端を加熱し、霜付,結露,凍結による誤作動を防止するセンサ加熱手段,
を設けたことを特徴とする請求項6記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項8】
前記検出手段が、温度センサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のドライアイス洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−203448(P2007−203448A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29066(P2006−29066)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(503235525)株式会社シュトルツ (8)