説明

ドライエリア付地下室

【課題】 ドライエリアとしての通風性、採光性並びに開放感を損なわず、また、ガーデニングなどとしての多目的活用の有効スペースを最大限に広くしながら、土圧に対して十分な耐応強度を確保できるようにする。
【解決手段】 軸組用芯材鉄骨5aの外面側に鋼板6が固定された壁構造体の三枚を工場生産段階で平面視コの字形態に配置連結して構成される鋼製ドライエリアユニット4における各壁構造体11A,11B,11Bの軸組用芯材鉄骨5aの上端部に、このドライエリアユニット4に作用する土圧に耐応するに足りる曲げ強度を持つ形鋼(チャンネル)12を笠木状に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエリア付地下室、詳しくは、所定のピッチ間隔に配置された芯材鉄骨を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨の外面側に金属板が固定された壁構造体の三枚を工場生産段階で平面視コの字形態に配置連結して金属製ドライエイアユニットを構成し、この金属製ドライエリアユニットを建設現場で金属製地下躯体の端部に、外方への突き出し状態で一体連結することにより、地下室に連ねて地上に開放するドライエリアを形成してなるドライエリア付地下室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のドライエリア付地下室では、地下室といえども、地上階と同様な通風性、採光性並びに開放感が得られ、地上に庭などを確保するスペースのない敷地条件のもとでも、ガーデニングや箱庭として楽しむなどの多目的な活用が図れるという特長を有している。
【0003】
ところで、ドライエリア付地下室において、そのドライエリアを形成するところの金属製ドライエリアユニットにおける三枚の壁構造体には、地下埋設状態で大きな土圧が作用する。特に、ドライエリアユニットにおける三枚の壁構造体のうち、地下躯体から最も離れて位置し該地下躯体の端面に対向する壁構造体に最も大きな土圧が作用して該構造体メンバーである芯材鉄骨や金属板が曲がり変形しやすい。このような構造体メンバーの曲がり変形を伴う士圧に耐応する強度を確保する手段として、従来は、図5に示すように、ドライエリアユニット20における最も外側に位置する壁構造体21Aと、地下躯体23に一体連結されて外方へ延びる両側の壁構造体21B,21Bの上端部間に亘ってそれぞれ、斜めに筋かい22,22を架け渡し固定することにより、各壁構造体21A,21Bに作用する土圧Fに対して、図4の(B)に示すような応力分布の状態とし、土圧に耐応するに足りる強度を確保する構成が採用されていた(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献】 「鋼製地下室」、大進工業株式会社発行、2002年3月5日、p.6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来手段の場合は、二本の筋かい22,22がドライエリアDEの上部開放空間を斜行する状態に位置するために、目障りで視界を遮り、ドライエリアDEの特長である開放感や採光性が損なわれる。また、ドライエリアDEの天井相当部に筋かい22,22が存在するために、ドライエリアDEをガーデニングや箱庭などとして多目的に活用可能な有効スペースが自ずと制約され、これらの点での改善が要望されるに至っている。
【0006】
本発明は上記のような要望に応えるべくなされたもので、ドライエリアとしての開放感や採光性を損なうことなく、また、ガーデニングなどの多目的活用の有効スペースを最大限に広くしながら、土圧に対して十分な耐応強度を確保することができるドライエリア付地下室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために案出された本発明に係るドライエリア付地下室は、所定のピッチ間隔に配置された芯材鉄骨を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨の外面側に金属板が固定された壁構造体の三枚を工揚生産段階で平面視コの字形態に配置連結して金属製ドライエイアユニットを構成し、この金属製ドライエリアユニットを建設現場で金属製地下躯体の端部に、外方への突き出し状態で一体連結することにより、地下室に連ねて地上に開放するドライエリアを形成してなるドライエリア付地下室であって、前記金属製ドライエリアユニットにおける各壁構造体の軸組用芯材鉄骨の上端部には、前記ドライエリアユニットに作用する土圧に耐応するに足りる曲げ強度をもつ形鋼が笠木状に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記のごとき特徴構成を有する本発明によれば、金属製ドライエリアユニットにおける各壁構造体間に亘って斜めに筋かいを架け渡し固定しなくても、各壁構造体の軸組用芯材鉄骨の上端部に笠木状に形鋼を固定するだけで、土圧に耐応するに足りる十分な強度を確保することができる。したがって、ドライエリアユニットにおける構成部材数を節減しユニット製作コストの低減が図れるのみならず、ドライエリアの上部には目障りの全くない全面開放空間を形成させることが可能で、ドライエリア本来の通風性、採光性並びに開放感を十分に得ることができるとともに、地下室に連なるドライエリアを、例えばガーデニングや箱庭用のスペースとして多目的かつ有効に活用することができるという効果を奏する。
【0009】
上記のような本発明に係るドライエリア付地下室において、ドライエリアユニットを一体連結する金属製地下躯体としては、建設現場で逐次構築されるものであってもよいが、特に、請求項2に記載のように、前記金属製地下躯体が、芯材鉄骨を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨の外面側に金属板が固定された左右一対の壁構造体、天井構造体及び床構造体を工場生産段階でラーメン構造に組立て構成された金属製地下ユニットの任意複数個を建設現場で接合連結することにより耐震壁構造に構築される地下躯体を用いる場合は、共に工場で高品質、高精度に製作可能なドライエリアユニット及び地下ユニットを建設現場に搬入して地下に埋設し接合連結するといった少ない建て方工事によって、上述のように通風性、採光性並びに開放感に優れたドライエリアを含む地下室全体を能率的かつ経済的に構築することができるとともに、土圧に対する耐応強度の一層の増大並びに耐震性の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るドライエリア付地下室の施工状態の概要を示す概略斜視図、図2は同地下室の施工完了状態を示す概略平面図である。
【0011】
このドライエリア付地下室は、寸法や形状などを標準化して同一仕様、同一構造に工場製作された金属製(具体的には、鋼製であり、以下、「鋼製」という)地下ユニット1の任意複数個をトラック等によって建設現場に搬入した上、地下室施工予定箇所に予め形成の鉄筋コンクリート製基礎2上に各地下ユニット1が長辺方向に連続するように直列状に据付け設置して隣接する地下ユニット1,1同士を相互に接合連結し、かつ、直列状に設置された複数個の地下ユニット1の長辺方向一端に妻壁3を固定することにより、地下室BRを形成するボックス形の鋼製地下躯体10が構築されているとともに、この鋼製地下躯体10の長辺方向一端に、後述する鋼製ドライエリアユニット4を鋼製地下躯体10の他端部外方への突き出し状態で一体連結することにより完工されている。
【0012】
上記各鋼製地下ユニット1は、図2に示すように、所定のピッチ間隔に配置されたT型鋼、H型鋼やチャンネル鋼等の芯材鉄骨5…を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨5…の外面側に鋼板(金属板の一例であり、以下、「鋼板」という)6が固定されてなる左右一対の壁構造体7,7と一つの天井構造体8と一つの床構造体9とを備え、これら左右一対の壁構造体7,7、天井構造体8及び床構造体9を工場製作段階で一体的に組立てることにより短辺方向に□型ラーメン構造に構成されており、これら地下ユニット1の任意複数個を接合連結することによって、長辺方向に耐震壁構造のボックス形鋼製地下躯体10が構築される。なお、前記妻壁3は前記地下ユニット1における壁構造体7と同様に、所定のピッチ間隔に配置された芯材鉄骨5’…を軸組とし、その外面側に鋼板6’を固定することにより構成されている。
【0013】
一方、上記のような鋼製地下躯体10の長辺方向一端に一体連結される鋼製ドライエリアユニット4は、前記した鋼製地下ユニット1と同様に、所定のピッチ間隔に配置された芯材鉄骨5a…を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨5a…の外面側に鋼板6aが固定されてなる一枚の長尺壁構造体11Aと二枚の短尺壁構造体11B,11Bとを工場製作段階で平面視コの字形態に配置し連結することにより構成されており、このような平面視コの字形態の鋼製ドライエリアユニット4を上記各地下ユニット1とは別体のままでトラック等によって建設現場に搬入し、その建設現場において鉄筋コンクリート製基礎2上に構築されたボックス形鋼製地下躯体10の長辺方向一端に、外方への突き出し状態で一体連結することにより、地下室BRに連ねて地上に開放するドライエリアDEが形成される。
【0014】
そして、上記鋼製ドライエリアニット4における各壁構造体11A及び11B,11Bの軸組用芯材鉄骨5a…の上端部には、図3に明示するように、地中設置状態で該ドライエリアユニット4に作用する土圧に耐応するに足りる曲げ強度を発揮するような成hを持つ形鋼としてチャンネル12が笠木状に固定されており、このチャンネル12の固定により、各壁構造体11A,11B,11Bに作用する土圧Fに対して、図4の(A)に示すような応力分布の状態として、ドライエリアユニット4全体の対土圧耐応強度を確保している。
【0015】
なお、上記鋼製地下ユニット1における各壁構造体7,8,9の軸組用芯材鉄骨5…の内面側、妻壁3の芯材鉄骨5’…の内面側、並びに、鋼製ドライエリアユニット4の各壁構造体11A,11B,11Bの軸組用芯材鉄骨5a…の内面側にはそれぞれ、下地材13を介して仕上げ材14が固定されている。
【0016】
上記のように構築されたドライエリア付地下室においては、鋼製ドライエリアユニット4における各壁構造体11A,11B,11Bの軸組用芯材鉄骨5a…の上端部に笠木状にチャンネル12を固定するだけで、土圧に耐応するに足りる十分な強度を確保することが可能であって、ドライエリアDEの上部開放空間を斜行し目障りとなる筋かい等が全く存在しないので、ドライエリアDE本来の通風性、採光性並びに開放感を十分に得ることができるとともに、地下室BRに連なるドライエリアDEを、例えばガーデニングや箱庭用のスペースとして多目的かつ有効に活用することができる。
【0017】
特に、上記実施の形態で示したように、ドライエリアユニット4を一体連結する鋼製地下躯体10として、軸組用芯材鉄骨5…の外面側に鋼板6が固定された壁構造体7,7、天井構造体8及び床構造体9を工場生産段階でラーメン構造に組立てて構成された鋼製地下ユニット1の複数個を建設現場で接合連結して耐震壁構造に構築されるものを用いることによって、工場で高品質、高精度に製作可能なドライエリアユニット4及び地下ユニット1を建設現場に搬入して地下に埋設し接合連結するといった少ない建て方工事によって、上述のように通風性、採光性並びに開放感に優れたドライエリアDEを含む地下室全体の工期短縮、工費節減が図れるとともに、土圧に対する耐応強度の一層の増大並びに耐震性の向上を実現することができる。
【0018】
なお、本発明において、地下躯体10としては、建設現場で逐次構築されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明に係るドライエリア付地下室の施工状態の概要を示す概略斜視図である。
【図2】 同地下室の施工完了状態を示す概略平面図である。
【図3】 要部の拡大縦断面図である。
【図4】 (A)は本発明のドライエリアユニットの場合の土圧に対する応力分布、(B)は従来のドライエリアユニットの場合の土圧に対する応力分布の状態を説明する平面図である。
【図5】 従来のドライエリア付地下室の要部平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 鋼製地下ユニット(金属製地下ユニット)
4 鋼製ドライエリアユニット(金属製ドライエリアユニット)
5,5a 芯材鉄骨
6,6a 鋼板(金属板)
7 壁構造体
8 天井構造体
9 床構造体
10 鋼製地下躯体(金属製地下躯体)
11A,11B 壁構造体
12 チャンネル(形鋼)
BR 地下室
DE ドライエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチ間隔に配置された芯材鉄骨を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨の外面側に金属板が固定された壁構造体の三枚を工場生産段階で平面視コの字形態に配置連結して金属製ドライエイアユニットを構成し、この金属製ドライエリアユニットを建設現場で金属製地下躯体の端部に、外方への突き出し状態で一体連結することにより、地下室に連ねて地上に開放するドライエリアを形成してなるドライエリア付地下室であって、
前記金属製ドライエリアユニットにおける各壁構造体の軸組用芯材鉄骨の上端部には、前記ドライエリアユニットに作用する土圧に耐応するに足りる曲げ強度をもつ形鋼が笠木状に固定されていることを特徴とするドライエリア付地下室。
【請求項2】
前記金属製地下躯体が、芯材鉄骨を軸組とし、この軸組用芯材鉄骨の外面側に金属板が固定された左右一対の壁構造体、天井構造体及び床構造体を工場生産段階でラーメン構造に組立て構成された金属製地下ユニットの任意複数個を建設現場で接合連結することにより耐震壁構造に構築されたものである請求項1に記載のドライエリア付地下室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−299782(P2006−299782A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158012(P2005−158012)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(502408791)株式会社ビィアンドエル (4)
【Fターム(参考)】