説明

ドライクリーニングフィルター用基材およびドライクリーニングフィルター

【目的】本発明は、孔径のバラツキのない、フィルター性能が高く、汚染防止性、プリーツ加工性ならびに外観品位に優れたドライクリーニングフィルター用基材及びドライクリーニングフィルターを、該フィルターユニットの生産性高く提供せんとするものである。
【構成】本発明のドライクリーニングフィルター用基材は、ポリエステル系フィラメントからなる部分的に圧着された不織布で構成されたフィルター用基材であって、該フィラメントが、芯鞘構造を有する複合繊維であることを特徴とするものであり、また本発明のドライクリーニングフィルターは、かかるドライクリーニングフィルター用基材を用いてフィルター部材を構成したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野)】本発明は、フィルター性能が高く、汚染防止性ならびに外観品位の非常に優れたドライクリーニングフィルター用基材及びドライクリーニングフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】ドライクリーニング用フィルターは、一般に、衣料からの脱落物を取り除く目的で使用されるが、衣料に付着した臭い等を脱臭するために、活性炭をフィルターユニットに入れる場合が多い。
【0003】また、衣料関連であることから、使用されるフィルター基材には、パークレン、トリクレン、フッ素系溶剤等、溶剤に対する耐薬品性やフィルター性能はもちろんのことフィルターユニット製品の外観品位が重視され、組立時の活性炭投入による汚れの付着が大きな問題となる。
【0004】そこで従来から、この問題を解決するために、組立場所の清掃管理等、組立時における様々な汚れ防止対策がとられてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような従来の管理面での対応では、作業効率が上がらず、ユニットの生産性は非常に低いものであった。また、従来ドライクリーニングフィルター用基材は、得られる孔径のバラツキが大きく、満足なフイルター機能のものを提供することが非常に難しいものでうあった。
【0006】本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、孔径のバラツキのない、フィルター性能が高く、汚染防止性、プリーツ加工性ならびに外観品位に優れたドライクリーニングフィルター用基材及びドライクリーニングフィルターを、該フィルターユニットの生産性高く提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち本発明のドライクリーニングフィルター用基材は、ポリエステル系フィラメントからなる部分的に圧着された不織布で構成されたフィルター用基材であって、該フィラメントが、芯鞘構造を有する複合繊維であることを特徴とするものであり、また本発明のドライクリーニングフィルターは、かかるドライクリーニングフィルター用基材を用いてフィルター部材を構成したことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】本発明は、バラツキの少ない孔径を有するドライクリーニングフィルターを安定して提供すると共に、フィルター性能、汚染防止性ならびに外観品位にも優れたドライクリーニングフィルターを提供することについて鋭意検討したところ、従来のドライクリーニングフィルター用不織布において、特定なポリエステルフィラメントを採用することにより、見事にかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0009】すなわち、本発明は、該フィルター用不織布を芯鞘構造のポリエステル系複合繊維フィラメントで構成することにより、バラツキのない孔径を有するものを安定して提供することができ、同時にフィルター性能、汚染防止性、プリーツ加工性ならびに外観品位にも優れたものを提供することができたものである。
【0010】本発明のポリエステル系複合繊維フィラメントは、一般的な同心円が最も好ましいが、偏芯円形、異型断面型としてもさしつかえなく使用できる。かかるポリエステル系複合繊維フィラメントとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど強伸度特性に優れた高融点ポリマを芯成分に使用し、接着性、目止め性、熱変形性および柔軟性に優れた低融点ポリマ、すなわち、共重合ポリエステル系ポリマを鞘成分として使用したものである。かかる共重合ポリエステル系ポリマとしては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタール酸、5−スルホイソフタール酸などのジカルボン酸、またはイソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールの少なくとも1種を共重合したものを使用することができる。これらの共重合ポリエステルの中でも、特にジカルボン酸の共重合ポリエステルが、上述の効果を達成する上から好ましく使用される。かかる共重合ポリエステルとしては、かかる共重合成分を、好ましくは5〜20モル%、さらに好ましくは10〜15モル%の範囲で共重合したものがよい。かかる共重合ポリエステルの中でも、芯成分に対し、好ましくは20℃以上低い融点を有するものが、部分的に圧着する際の接着性、熱変形性、さらに剛軟度および孔径などの特性の上から使用される。
【0011】本発明のドライクリーニングフィルター用基材として使用される不織布には、かかる共重合ポリエステルのうち、285℃でのメルトフローレート(MFR)が、好ましくは1500〜2700ポイズ(ps)、さらに好ましくは1900〜2300ポイズ(ps)という限られた領域のものが、繊維形成性、接着性およびバラツキの少ない孔径を形成する上から使用される。
【0012】本発明のかかる芯鞘構造のポリエステル系複合繊維フィラメントの鞘部は、該フィラメント重量の、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜20重量%であるのがよい。かかる範囲を越えては、本発明の上述の効果を全うすることができなくなる傾向を生ずる。
【0013】本発明では、かかる特徴の外に、該フィラメントの芯成分にカーボンブラックを含有させたものを使用することができる。すなわち、かかる芯部を採用したことにより、フィルターユニット成形時における汚染問題をクリアすることができると共に、ポリマ粘度の調整が容易となり、目標の繊度を有するフィラメントを形成し易く、かつ、この芯部が鞘部と相乗してバラツキの少ない孔径を形成する不織布を形成する上で好都合に作用する。すなわち、鞘成分にはできるだけ添加剤を含まない方が好ましいが、該作用を阻害しない範囲でポリエステルとなじみの良い酸化チタン等は含んでいてもかまわない。かかるカーボンブラックの含有量は、好ましくは該フィラメント重量の0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量である。
【0014】本発明のドライクリーニング用基材の不織布は、好ましくは平均孔径が30〜70μm、さらに好ましくは40〜60μmであるという範囲のものが使用される。本発明では、かかる孔径においても、バラツキが小さく、非常に均一な孔径のものを提供することができるという特徴を有する。すなわち、最大孔径と平均孔径の差の小さい、均一性の高いものを提供することができる。かかる均一性の高いフィルターは、ドライクリーニング用途として、適正な濾過性能を出すために極めて好ましい性質である。平均孔径が、30μm未満になると濾過性能はよいが、フィルターライフが短くなり、70μmを越えると十分な濾過性能が得られない。 また、本発明の不織布の特徴は、ガーレ法による剛軟度が、好ましくは400〜900mg、さらに好ましくは500〜800mgという柔軟性を有するところにある。すなわち、かかるドライクリーニング用基材の不織布は、400〜900mgの範囲の硬さを有しないと、フィルター組立時のプリーツ加工が難しく、プリーツの形態保持性が悪くなる傾向を示し、ついにはフィルター性能が低下する傾向がでてくる。
【0015】本発明で言う部分的に圧着された不織布とは、不織布を構成しているフィラメント間が熱と圧力によって融着し、部分的にくぼみがあること、即ち、フィラメント密度が高くなった部分が点在することを言う。このように、部分的に圧着するためには、通常、加熱した一対のエンボスロールが使用されるが、本発明においては、エンボスロールの形態、組合わせ等について特に規制するものではない。また、圧着部の不織布全体の面積に占める割合も、特に規制するものではない。 本発明のドライクリーニングフィルターは、かかるドライクリーニングフィルター用基材を用いてフィルター部材を構成されたものである。したがって、かかるフィルターは、均一で安定したフィルター性能を有し、かつ、外観品位が非常に優れているという特徴を有する。
【0016】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、実施例における各種特性は次の方法により測定した。
【0017】目付、厚み :一般長繊維不織布試験方法(JIS−L1906)に準じた。 平均孔径、最大孔径:コールター社のポロメーターで測定した。
【0018】剛軟度 :ガーレ法(JIS−L1096に準じた)
フィルター性能:計量ポンプを備えた濾過装置に、以下の条件で、性能評価した。
【0019】試料の大きさ :50mm径スラッジの種類 :JIS7種スラッジの濃度 :0.1g/l(水)
押出流量 :200ml/分評価尺度 清澄点:褐色液が無色透明になるまでの時間 (単位:分)
ライフ:圧力2kg/cm 2 上昇時間 (単位:分)
実施例1、2、3カーボンブラックをそれぞれ0.6%、0.3%、0.1%含有したポリエチレンテレフタレ−トを芯成分とし、融点が230℃のイソフタル酸共重合ポリエステルを鞘成分とし、芯成分と鞘成分の重量比を8:2とした複合連続フィラメントを単糸繊度2dで溶融紡出し、空気圧により開繊した後、移動するネット上に堆積させ、1対の加熱エンボスロールで圧着し、目付130g/m2 、厚さ0.4mmの不織布を得た。
【0020】いずれの不織布も、プリーツ加工時の加工性、ユニット製作時の汚れ、フィルター性能共に良好であり、ドライクリーニングフィルター用基材として満足できるものであった。結果を表1に示した。
【0021】実施例4ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、融点が230℃であるイソフタル酸共重合ポリエステルを鞘成分とし、芯成分と鞘成分の重量比を8:2とした複合連続フィラメントを単糸繊度2dで溶融紡出し、空気圧により開繊した後、移動するネット上に堆積させ、1対の加熱エンボスロールで圧着し、目付130g/m2 、厚さ0.4mmの不織布を得た。
【0022】プリーツ加工時の加工性、フィルター性能については問題なかったが、ユニット製作時に汚れが付着するという問題があった。結果を表1に示した。
【0023】実施例5、6カーボンブラックを0.3%含有したポリエチレンテレフタレ−トを芯成分とし、融点が230℃のイソフタル酸共重合ポリエステルを鞘成分とし、芯成分と鞘成分の重量比を8:2とした複合連続フィラメントを単糸繊度それぞれ1、4dで溶融紡出し、空気圧により開繊した後、移動するネット上に堆積させ、1対の加熱エンボスロールで圧着し、目付130g/m2 、厚さ0.4mmの不織布を得た。
【0024】得られた不織布はどちらも、プリーツ加工時の加工性、ユニット製作時の汚れについては問題なかったが、フィルター性能については、平均孔径の違いにより、実施例て5ではライフが短く、実施例6では、精澄点に至るまでに少し時間がかかるものであった。結果を表1に示した。
【0025】比較例1カーボンブラックを0.3%含有したポリエチレンテレフタレ−トと融点が230℃のイソフタル酸共重合体ポリエステルの連続フィラメントを、それぞれ単糸繊度2dで、重量比8:2となるように紡糸混繊し、空気圧により開繊した後、移動するネット上に堆積させ、1対の加熱エンボスロールで圧着し、目付130g/m2 、厚さ0.4mmの不織布を得た。
【0026】得られた不織布は、剛軟度が低いためプリーツ加工時の加工性が悪くユニットの作製が困難であった。また、孔径のバラツキが大きいため、フィルター性能の評価においても30分間全く濾過できない不充分なものであった。結果を表1に示した。
【0027】
【表1】


表1から明らかなように、実施例1〜3のフィルターが性能、加工性、製品品位のバラスがとれていて最も優れていることがわかる。
【0028】
【発明の効果】本発明のドライクリーニングフィルター用基材は、フィルター性能に優れ、プリーツ加工性、組立作業性が良いだけでなく、外観品位の非常に優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエステル系フィラメントからなる部分的に圧着された不織布で構成されたフィルター用基材であって、該フィラメントが芯鞘構造の複合繊維であることを特徴とするドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項2】 該フィラメントの芯成分が、カーボンブラックを含有する請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項3】 該カーボンブラックの含有量が、該フィラメント重量の0.01〜2重量%である請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項4】 該芯鞘構造の鞘部が、該フィラメント重量の10〜30重量%である請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項5】 該芯鞘構造の鞘部が、該フィラメント重量の15〜20重量%である請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項6】 該鞘成分が、芯成分に対し20℃以上低い融点を有する共重合ポリエステルである請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項7】 該不織布の平均孔径が、30〜70μmの範囲である請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項8】 該不織布が、400mg以上のガーレ法による剛軟度を有するものである請求項1記載のドライクリーニングフィルター用基材。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載のドライクリーニングフィルター用基材を用いてフィルター部材を構成したことを特徴とするドライクリーニングフィルター。

【公開番号】特開平9−21053
【公開日】平成9年(1997)1月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−167521
【出願日】平成7年(1995)7月3日
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)