説明

ドライクリーニング品の仕上げ加工方法

【課題】ドライクリーニングした被洗物に対して、容易に且つ斑なく機能性を付与することができるドライクリーニング品の仕上げ加工方法を提供する。
【解決手段】ドライクリーニングの乾燥工程において、仕上げ剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥することを特徴とするドライクリーニング品の仕上げ加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーニング品の仕上げ加工方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ドライクリーニングした被洗物に対して、容易に且つ斑なく機能性を付与することができるドライクリーニング品の仕上げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライクリーニングは、非水溶性であるターペンなどの石油系溶剤やテトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤などを洗浄溶剤に用いて被洗物を洗濯する方法である。ドライクリーニングの主要な工程は、洗浄、脱液、乾燥の3工程である。近年、クリーニングに対する顧客の要求が高まっており、高級感を出すためにカチオン界面活性剤やシリコーンオイルなどを配合したドライクリーニング用仕上げ剤を用いて、柔軟性などの風合いを改善するための仕上げ加工が施されたり、撥水加工剤や防虫加工剤などの仕上げ剤を用いた洗浄以外の特殊な加工を行うことが多くなってきている。これらの仕上げ加工を施す方法としては、ドライクリーニングの洗浄溶剤の中に風合い改善剤などのドライクリーニング用仕上げ剤を添加して、ドライクリーニング用洗濯機でドライクリーニングを行う方法(チャージ法)や、乾燥時にドライクリーニング用仕上げ剤又はその希釈液を専用のスプレー機を用いて噴霧しドライクリーニングを行う方法(スプレー法)などがある。スプレー法は、少量の仕上げ剤で処理できる利点はあるが、例えば風合い加工を行うとき、表地は均一になるが裏地は不均一になるおそれがあり、さらにはスプレー機は別途に取り付ける必要があって高価となるために、全てのクリーニング店で容易に行える仕上げ加工方法とは言えない。チャージ法は、仕上げ剤による処理を均一にできるという利点はあるが、スプレー法に比べて多量の仕上げ剤が必要となる。さらには風合い改善や撥水加工に使用される仕上げ剤によっては、配合されているシリコーンオイルやフッ素系樹脂の影響で、ドライクリーニングの間やドライクリーニングの後の洗浄溶剤の精製工程である溶剤蒸留時に大幅な発泡が生じ、機械の運転に支障が出やすいという問題点もあり、使用が制限されることが多い。
これらの問題を解決するために、例えば、ドライクリーニングの間及びその後の溶剤蒸留時に発泡を生じないために、溶剤に混合してチャージ法にて使用することができ、被洗物に好ましい風合いを付与することにより風合い改質を行い、かつ防皺、皺伸び効果を有するためにノンアイロン仕上げを行うことができるドライクリーニング用仕上げ剤として、1分子中に少なくとも1個のポリオキシアルキレンエーテル基を側鎖として有するオルガノポリシロキサンを有効成分とするドライクリーニング用仕上げ剤が提案されている(特許文献1)。しかし、チャージ法であるがために、仕上げ剤の使用量が多くなることは言うまでもなく、また、風合い改善の効果も十分とは言えない。このような理由で、チャージ法においても全てのクリーニング店で容易に行うことができ、十分な効果を出す仕上げ加工方法は未だ開発されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平5−171566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ドライクリーニングした被洗物に対して、容易に且つ斑なく機能性を付与することができるドライクリーニング品の仕上げ加工方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ドライクリーニングの乾燥工程において、ドライクリーニング用の仕上げ剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥することによって、被洗物に容易に且つ斑なく機能性を付与すことができることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ドライクリーニングの乾燥工程において、仕上げ剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥することを特徴とするドライクリーニング品の仕上げ加工方法、
(2)生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量を、被洗物100質量部に対して0.01〜3質量部とする(1)に記載のドライクリーニング品の仕上げ加工方法、
(3)生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量が、生地100質量部に対して0.1〜30質量部である(1)又は(2)に記載のドライクリーニング品の仕上げ加工方法、及び、
(4)生地がポリエステル製のネットである(1)ないし(3)のいずれか1項に記載のドライクリーニング品の仕上げ加工方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明方法によれば、ドライクリーニング用機械を特に改良することもなく、被洗物に対して容易に且つ斑なく柔軟性、撥水性などの機能性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のドライクリーニング品の仕上げ加工方法においては、ドライクリーニングの乾燥工程において、仕上げ剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥する。
本発明に用いる仕上げ剤としては、従来よりドライクリーニング用仕上げ剤として用いられているドライクリーニング用の洗浄溶剤に可溶な仕上げ剤を制限なく用いることができ、具体的には、柔軟剤、撥水剤、抗菌加工剤、防虫剤、仕上げ促進剤などの仕上げ剤を挙げることができる。仕上げ剤の市販品としては、例えば、柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)]、撥水剤[日華化学(株)、セルティガード(商品名)P]、抗菌加工剤[日華化学(株)、タッチアップ(商品名)P−480]、防虫剤[日華化学(株)、オーリス(登録商標)64]、仕上げ促進剤[日華化学(株)、タッチアップ(商品名)A−100]などを挙げることができる。これらの仕上げ剤は、そのままで、あるいは、ドライクリーニング用の洗浄溶剤で希釈して生地に含ませて用いることができる。
【0007】
本発明方法において、ドライクリーニング品の加工に使用する仕上げ剤は、ドライクリーニングで使用する洗浄溶剤で希釈して希釈液として使用することが好ましい。仕上げ剤を希釈液として使用することにより、仕上げ加工の作業性と被洗物に対する加工の均一性を向上することができる。仕上げ剤の希釈割合は、使用する仕上げ剤の粘度、有効成分濃度などに応じて適宜選択することができるが、通常は100質量倍以下であることが好ましい。本発明方法において、生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量は、生地100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量は、仕上げ剤の有効成分濃度、生地の枚数などを選択することにより調整することができる。生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量が生地100質量部に対して0.1質量部未満であると、仕上げ剤の機能を十分に被洗物に付与することが困難となるおそれや、被洗物の乾燥に時間がかかるなど乾燥性に問題を生じるおそれがある。生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量が生地100質量部に対して30質量部を超えると、仕上げ剤の機能を被洗物に斑なく付与することが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明方法において、仕上げ剤を含ませる生地の材質に特に制限はなく、例えば、綿、麻、羊毛などの天然繊維、セルロースなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの合成繊維、これらの混合繊維などを挙げることができる。仕上げ剤を含ませる生地の形態に特に制限はなく、例えば、織物、編み物、組み物、不織布、ネットなどを挙げることができる。ネットとしては、例えば、ポリエチレン製、ポリエステル製、ナイロン製などの織物、編み物などを挙げることができる。これらの中で、ポリエステル製のネットは、仕上げ剤の被洗物への移行性に優れ、乾燥が速く、安価であり、洗濯ネットとして市販品を容易に入手し得るので好適に用いることができる。市販の洗濯ネットとしては、例えば、クリーニング店向けに販売されているシルキーネット(商品名)[ライト(株)]、スーパーネット(商品名)[ライト(株)]、Pコックネット(商品名)[(株)中村商店]、テトロンネット(商品名)[(株)中村商店]などを挙げることができる。本発明方法に用いるポリエステル製のネットは、仕上げ剤の被洗物への移行性の面からは、厚手の編み物より薄手の織物の方が好ましく、網目が細かい方が好ましい。
【0009】
本発明方法に用いる生地の大きさに特に制限はなく、衣類などの被洗物の乾燥に支障をきたさない範囲で、乾燥機の大きさなどに応じて適宜選択することができ、通常は30cm×30cm〜120cm×120cmの大きさであることが好ましい。また、用いる生地は1枚とすることができ、複数枚を使用することもできるが、仕上げ剤の被洗物への移行性の面より複数枚を使用することが好ましい。
本発明方法において、生地に含ませる仕上げ剤又はその希釈液の含浸量に特に制限はなく、生地の素材や形態、また、仕上げ剤の有効成分量や希釈に用いるクリーニング用の洗浄溶剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、生地100質量部に対して30〜400質量部であることが好ましく、液だれをしない程度に仕上げ剤又はその希釈液を含ませることが好ましい。
【0010】
本発明のドライクリーニング品の仕上げ加工方法において、生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量は、被洗物100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく、0.1〜2質量部であることがより好ましい。生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量が被洗物100質量部に対して0.01質量部未満であると、仕上げ剤の機能を十分に被洗物に付与することが困難となるおそれがある。生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量が被洗物100質量部に対して3質量部を超えると、仕上げ剤の機能付与効果の向上に限度があり、経済性が損なわれるおそれがある。
本発明方法において、生地に含ませる仕上げ剤又はその希釈液の量は、被洗物1kg当たり20〜300mLであることが好ましい。生地に含ませる仕上げ剤又はその希釈液の量が被洗物1kg当たり20mL未満であると、仕上げ剤の被洗物への移行性が十分に発現しないために、仕上げ剤の機能を斑なく付与することが困難となるおそれがある。生地に含ませる仕上げ剤又はその希釈液の量が被洗物1kg当たり300mLを超えると、被洗物の乾燥に時間がかかるなど乾燥性に問題を生じるおそれがある。
【0011】
本発明のドライクリーニング品の仕上げ加工方法に用いるドライクリーニング用の洗浄溶剤に特に制限はなく、従来よりドライクリーニングに用いられている洗浄溶剤を用いることができ、例えば、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族炭化水素などの単独又は混合物からなる石油系溶剤、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、HCFC−225、ペンタフルオロブタンなどのフロン系溶剤、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシリコーン系溶剤などを挙げることができる。
本発明方法において、仕上げ剤を含ませた生地と共に乾燥する被洗物は、通常の洗浄工程を経て最終的に乾燥工程を行う脱液後の状態、すなわち、被洗物100質量部に対してドライクリーニング用の洗浄溶剤が約15〜25質量部残留した状態のものを用いることが好ましい。これより乾燥した状態の被洗物に本発明のドライクリーニング品の仕上げ加工方法を適用する場合には、ドライクリーニング用の洗浄溶剤が被洗物100質量部に対して約15〜25質量部含まれるように調整した後に、仕上げ加工を行うことが好ましい。
本発明のドライクリーニング品の仕上げ加工方法に用いるドライクリーニング機に特に制限はなく、コールドマシン、ホットマシンのいずれをも用いることができる。コールドマシンは、洗浄工程、脱液工程及び乾燥工程をそれぞれ別個の3台で処理する機械、又は、一体となった洗濯、脱液機と乾燥機の2台で処理する機械であり、石油系溶剤で主に用いられている。ホットマシンは、洗浄、脱液、乾燥を1台の機械で行うものであり、合成溶剤で主に用いられている。ホットマシンを使用する場合には、乾燥工程に移行する前にドアを開けて、仕上げ剤又はその希釈液を含ませた生地を投入することができる。
【実施例】
【0012】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、ドライクリーニング品の柔軟性、乾燥性及び撥水性は、下記の方法により評価した。
(1)柔軟性
実施例1〜11及び比較例1〜2において得られた評価試験布を、20℃、65%RHの室内に1時間放置したのち、柔軟性を触感法により以下の5段階の評価基準に従って評価した。なお、性能がわずかに良好な場合には等級に「+」をつけ、性能がわずかに劣る場合には等級に「−」をつけた。数値が小さいほど粗硬であり、数値が大きいほど柔軟性が良好である。
1:硬く感じる。
2:やや硬く感じる。
3:やや柔らかく感じる。
4:柔らかく感じる。
5:非常に柔らかく感じる。
(b)乾燥性
実施例1〜11及び比較例1〜2において得られた評価試験布のうち、紳士用スーツ及び婦人用セーターについて、20℃、65%RHの室内に1時間放置したのち、乾燥性を触感法により以下の3段階の評価基準に従って評価した。なお、性能がわずかに良好な場合には等級に「+」をつけ、性能がわずかに劣る場合には等級に「−」をつけた。数値が小さいほど乾燥性が悪く、数値が大きいほど乾燥性が良好である。
1:衣類に湿潤を感じる。
2:衣類にわずかに湿潤を感じる。
3:衣類に湿潤を感じない。
(3)撥水性
実施例12〜14及び比較例3において得られた評価試験布を、20℃、60%RHの室内に1時間放置したのち、撥水性をJIS L 1092(1998) 6.2 撥水度試験(スプレー試験)に準じて、下記の5段階の基準で評価した。なお、性能がわずかに良好な場合には等級に「+」をつけ、性能がわずかに劣る場合には等級に「−」をつけた。数値が小さいほど撥水性が悪く、数値が大きいほど撥水性が良好である。
1:表面全体に湿潤を示すもの。
2:表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの。
3:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの。
4:表面に湿潤しないが、小さな水滴状の付着を示すもの。
5:表面に湿潤や水滴の付着がないもの。
【0013】
実施例1
評価試験布としての綿メリヤス(目付250g/m2)、ウールサージ(目付270g/m2)、アクリルメリヤス(目付230g/m2)及びポリエステルジャージ(目付200g/m2)のそれぞれ20cm×20cmの大きさのもの各1枚、ウール100%の紳士用スーツ(表地ウール100%、裏地ナイロン100%)1着、アクリル100%の婦人用セーター(表地、裏地共にアクリル100%)1着、並びに、負荷布としてのウール100%の紳士用スーツ13kgを、ドライクリーニング用の洗浄溶剤であるノルマルデカンに浸したのち、絞り率20質量%に脱液し、石油系溶剤回収乾燥機[三洋電機テクノクリエイト(株)、SCD−4161、16kg機]に入れた。被洗物の合計質量は、16kgであった。さらに石油系溶剤回収乾燥機の中に、ドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mL(約48g)をノルマルデカンで500mLに希釈した希釈液を綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に含ませた(1枚あたりの含浸量250mL)ものを入れて、55℃で20分間同時に乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが3+、ウールサージが4、アクリルメリヤスが4+、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウールが4、裏地ナイロンが3、婦人用セーターの表地アクリルが5、裏地アクリルが4であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
【0014】
実施例2
ドライクリーニング用柔軟剤の希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、アクリルメリヤス(目付230g/m2、50cm×50cm)2枚を使用した(1枚あたりの含浸量250mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが4、アクリルメリヤスが4+、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に4、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例3
ドライクリーニング用柔軟剤の希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステルジャージ(目付200g/m2、50cm×50cm)2枚を使用した(1枚あたりの含浸量250mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが4+、アクリルメリヤスが5、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に4、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例4
ドライクリーニング用柔軟剤の希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ウールサージ(目付270g/m2、50cm×50cm)4枚を使用した(1枚あたりの含浸量125mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが4、アクリルメリヤスが5、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に4、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
【0015】
実施例5
ドライクリーニング用柔軟剤の希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ウールサージ(目付270g/m2、90cm×90cm)2枚を使用した(1枚あたりの含浸量250mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが3+、ウールサージが4、アクリルメリヤスが4+、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に4、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例6
ドライクリーニング用柔軟剤の希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステル製ネット[(株)中村商店、Pコックネット大(商品名)、72cm×80cm、約90g]4枚を使用した(1枚あたりの含浸量125mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが4+、アクリルメリヤスが5、ポリエステルジャージが4+、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に5、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例7
ドライクリーニング用柔軟剤の希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステル製ネット[(株)中村商店、テトロンネット大(商品名)、73cm×86cm、約280g]4枚を使用した(1枚あたりの含浸量125mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが4+、アクリルメリヤスが4+、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に5、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
【0016】
実施例8
ドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mLをノルマルデカンで260mLに希釈した希釈液を用い、希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステル製ネット[(株)中村商店、Pコックネット大(商品名)、72cm×80cm、約90g]2枚を使用した(1枚あたりの含浸量130mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが3+、ウールサージが4、アクリルメリヤスが4+、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に4、婦人用セーターの表地アクリルが5、裏地アクリルが4であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例9
ドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mLをノルマルデカンで1,000mLに希釈した希釈液を用い、希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステル製ネット[(株)中村商店、Pコックネット大(商品名)、72cm×80cm、約90g]8枚を使用した(1枚あたりの含浸量125mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが4+、アクリルメリヤスが5、ポリエステルジャージが4+、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に5、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
【0017】
実施例10
ドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mLをノルマルデカンで2,000mLに希釈した希釈液を用い、希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステル製ネット[(株)中村商店、Pコックネット大(商品名)、72cm×80cm、約90g]16枚を使用した(1枚あたりの含浸量125mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが5、アクリルメリヤスが5、ポリエステルジャージが4+、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に5、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例11
ドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mLをノルマルデカンで3,900mLに希釈した希釈液を用い、希釈液を含ませる生地を、綿メリヤス(目付250g/m2、50cm×50cm)2枚に換えて、ポリエステル製ネット[(株)中村商店、Pコックネット大(商品名)、72cm×80cm、約90g]30枚を使用した(1枚あたりの含浸量130mL)以外は、実施例1と同様にして、乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが4、ウールサージが5、アクリルメリヤスが5、ポリエステルジャージが5、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に5、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に5であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかったが、わずかに爽快感に欠ける感じがあった。
【0018】
比較例1
実施例1と同じ評価試験布及び負荷布をドライクリーニング用の洗浄溶剤であるノルマルデカンに浸したのち、絞り率20質量%に脱液し、石油系溶剤回収乾燥機[三洋電機テクノクリエイト(株)、SCD−4161、16kg機]に入れた中に、ドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mLをノルマルデカンで2,000mLに希釈した希釈液を、乾燥機に取り付けたスプレー機[(株)ムロヅミ、ニッカオート(商品名)S−1]で噴霧処理したのち、55℃で20分間乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが3+、ウールサージが4、アクリルメリヤスが4+、ポリエステルジャージが4、紳士用スーツの表地ウールが4、裏地ナイロンが3、婦人用セーターの表地アクリルが5、裏地アクリルが3であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
比較例2
実施例1と同じ評価試験布及び負荷布を石油系ドライクリーニング機[(株)山本製作所、DO1−16LD]に入れた中に、ドライクリーニング用の洗浄溶剤ノルマルデカン60Lとドライクリーニング用柔軟剤[日華化学(株)、ドライファミトン(商品名)、有効成分60質量%]50mLとを加えて5分間洗浄したのち、脱液して絞り率20質量%としたものを、石油系溶剤回収乾燥機[三洋電機テクノクリエイト(株)、SCD−4161、16kg機]に入れて、55℃で20分間乾燥させた。
柔軟性は、綿メリヤスが2、ウールサージが3-、アクリルメリヤスが3+、ポリエステルジャージが3、紳士用スーツの表地ウール、裏地ナイロンが共に3、婦人用セーターの表地アクリル、裏地アクリルが共に3であった。乾燥性の評価において、紳士用スーツ、婦人用セーター共に、湿潤は感じられなかった。
実施例1〜11及び比較例1〜2の結果を、第1表に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
第1表に見られるように、柔軟剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥した実施例1〜11のドライクリーニング品の仕上げ加工方法によれば、従来のドライクリーニング品の仕上げ加工方法である柔軟剤希釈液を被洗物に噴霧処理して乾燥した比較例1、及び、柔軟剤を洗浄溶剤に添加した比較例2に比べて、柔軟性で優れた結果が得られ、また、乾燥性にも問題のないことが分かる。
【0022】
実施例12
評価試験布としての綿ブロード(目付130g/m2)、ポリエステルツィール(目付115g/m2)のそれぞれ20cm×20cmの大きさのもの各1枚、紳士用コート(表地カシミヤ100%、裏地ナイロン100%)1着、及び、負荷布としてのウール100%の紳士用スーツ10kgを、洗浄機能付き乾燥機[三菱重工業(株)、三菱ドライクリーナーΣシリーズ(商品名)、MS12V]に入れた。被洗物の合計質量は、12kgであった。洗浄機能付き乾燥機の中に、ドライクリーニング用の洗浄溶剤であるテトラクロロエチレンを入れて浸漬したのち、絞り率20質量%に脱液した。次に、ドライクリーニング用撥水剤[日華化学(株)、セルティガード(商品名)P、有効成分3質量%]100mL(約134g)をテトラクロロエチレンで2,000mLに希釈した希釈液をポリエステル製ネット[(株)中村商店、Pコックネット大(商品名)、72cm×80cm、約90g]16枚に含ませて(1枚あたりの含浸量125mL)、乾燥機内に加えて、55℃で15分間乾燥させた。
撥水性の評価において、綿ブロードは、表面に小さな個々の水滴状の湿潤が認められた。ポリエステルツィールは、表面に湿潤しないが、小さな水滴状の付着が認められた。紳士用コートは、表地カシミヤ、裏地ナイロン共に、表面に小さな個々の水滴状の湿潤が認められた。
【0023】
実施例13
ドライクリーニング用撥水剤の希釈液として、ドライクリーニング用撥水剤[日華化学(株)、セルティガード(商品名)P、有効成分3質量%]200mL(約268g)をテトラクロロエチレンで2,000mLに希釈した希釈液を用いた以外は、実施例12と同様にして、乾燥させた。
撥水性の評価において、綿ブロードは、表面に湿潤しないが、小さな水滴状の付着が認められた。ポリエステルツィールは、表面に湿潤や水滴の付着が認められなかった。紳士用コートは、表地カシミヤ、裏地ナイロン共に、表面に湿潤しないが、小さな水滴状の付着が認められた。
実施例14
ドライクリーニング用撥水剤の希釈液として、ドライクリーニング用撥水剤[日華化学(株)、セルティガード(商品名)P、有効成分3質量%]400mL(約536g)をテトラクロロエチレンで2,000mLに希釈した希釈液を用いた以外は、実施例12と同様にして、乾燥させた。
撥水性の評価において、綿ブロードは、表面に湿潤しないが、小さな水滴状の付着がわずかに認められた。ポリエステルツィールは、表面に湿潤や水滴の付着が認められなかった。紳士用コートは、表地カシミヤ、裏地ナイロン共に、表面に湿潤や水滴の付着が認められなかった。
【0024】
比較例3
実施例12と同じ評価試験布及び負荷布を洗浄機能付き乾燥機[三菱重工業(株)、三菱ドライクリーナーΣシリーズ(商品名)、MS12V]に入れた中に、ドライクリーニング用の洗浄溶剤であるテトラクロロエチレンを入れて浸漬したのち、絞り率20質量%に脱液した。次に、ドライクリーニング用撥水剤[日華化学(株)、セルティガード(商品名)P、有効成分3質量%]200mL(約134g)をテトラクロロエチレンで2,000mLに希釈した希釈液を、乾燥機に付属しているスプレー機で噴霧処理したのち、55℃で15分間乾燥させた。
撥水性の評価において、綿ブロードは、表面に小さな個々の水滴状の湿潤が認められた。ポリエステルツィールは、表面に湿潤しないが、小さな水滴状の付着が認められた。紳士用コートの表地カシミヤは、表面に小さな個々の水滴状の湿潤が多く認められた。紳士用コートの裏地ナイロンは、表面の半分に湿潤が認められ、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態であった。
比較例4
実施例12同じ評価試験布及び負荷布を洗浄機能付き乾燥機[三菱重工業(株)、三菱ドライクリーナーΣシリーズ(商品名)、MS12V]に入れた中に、ドライクリーニング用の洗浄溶剤テトラクロロエチレン40Lとドライクリーニング用撥水剤[日華化学(株)、セルティガード(商品名)P、有効成分3質量%]200mL(約134g)とを加えて洗浄操作を行ったところ、洗浄槽内の泡立ちが多くなりすぎたので加工を中断した。
実施例12〜14及び比較例3〜4の結果を、第2表に示す。
【0025】
【表3】

【0026】
第2表に見られるように、撥水剤を含ませたネットと共に被洗物を乾燥した実施例12〜14のドライクリーニング品の仕上げ加工方法によれば、従来のドライクリーニング品の仕上げ加工方法である撥水剤希釈液を被洗物に噴霧処理して乾燥した比較例3に比べて、撥水性で優れた結果が得られている。また、洗浄溶剤に撥水剤を添加した比較例4では、洗浄槽内の泡立ちが多くなり、洗浄操作を継続することができない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のドライクリーニング品の仕上げ加工方法によれば、特に新たな設備を必要とすることもなく、ドライクリーニング用仕上げ剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥することによって、被洗物に容易に且つ斑なく仕上げ効果を付与することができるために、経済的に安定した品質を有するドライクリーニング品を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライクリーニングの乾燥工程において、仕上げ剤を含ませた生地と共に被洗物を乾燥することを特徴とするドライクリーニング品の仕上げ加工方法。
【請求項2】
生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量を、被洗物100質量部に対して0.01〜3質量部とする請求項1に記載のドライクリーニング品の仕上げ加工方法。
【請求項3】
生地に含ませる仕上げ剤の有効成分量が、生地100質量部に対して0.1〜30質量部である請求項1又は請求項2に記載のドライクリーニング品の仕上げ加工方法。
【請求項4】
生地がポリエステル製のネットである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のドライクリーニング品の仕上げ加工方法。

【公開番号】特開2008−81856(P2008−81856A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260501(P2006−260501)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】