説明

ドライパウダー薬剤

本発明はドライパウダー薬剤に関する。特に、改良された微粒子フラクションを提供する薬剤に関する。前記の吸入可能なドライパウダー薬剤を調製する方法は、(i)空気力学的粒径に基づいて粒子状有効成分を分画するステップ、(ii)粒子状有効成分の少なくとも一つのフラクションを回収するステップ、および(iii)吸入可能なドライパウダー薬剤を得るために、回収されたフラクションとキャリアを混合するステップを含む。ドライパウダー薬剤それ自体も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライパウダー薬剤、特に改良された吸入特性を有する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入可能な薬剤はしばしばドライパウダーとして処方され、ドライパウダー吸入器(DPI)を使用して送達される。それらは口を通じて肺の中に吸入される。薬物は吸入器内にあらかじめ装填されるか、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル、またはブリスター・パック)内に充填される。DPIの例は、「"Pharmaceutics - The science of
dose form design" Second Edition, Ed. M. E. Aulton, Churchill Livingston,
2002, chapter 31.」に見受けられる。
【0003】
前記薬剤は、典型的に喘息やCOPDなどの呼吸器疾患を治療するために使用されるものである。適切な薬剤の例には、抗アレルギー薬(例えば、クロモグリク酸、ケトチフェンおよびネドクロミル)、抗炎症ステロイド類(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、シクレソリド、トリアムシノロンアセトニドおよびモメタゾンフロエート);β2-刺激薬(例えば、フェノテロール、ホルモテロール、ピルブテロール、レプロテロール、サルブタモール、サルメテロールおよびテルブタリン)、非選択的なβ-刺激薬(例えば、イソプレナリン)、およびキサンチン気管支拡張薬(例えば、テオフィリン、アミノフィリンおよびコリンテオフィリネート)などの気管支拡張薬、および抗コリン薬(例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウムおよびチオトロピウム)が含まれる。
【0004】
前記薬剤は吸入に適切な粒径(一般的に直径で5μm以下の範囲内)とするために、既存の技術(例えば、ジェットミル)を使用して微粒子化(微粉化)される。微粒子化により産生された高エネルギー粒子は、その静的、凝集的および付着的な性質のために流動特性が劣る傾向にある。流動特性を改善するために、前記薬剤は、不活性な賦形剤(通常、ラクトース)のより大きなキャリア粒子とブレンドされる。粗キャリアは通常微粒子化された薬剤より一桁大きい粒径、典型的におよそ直径20〜100μmの粒径を有する。好適なキャリアは粗いラクトース(望ましくは直径で63〜90μmの粒径を有する)である。
【0005】
吸入により、吸入器内で発生した乱気流は、キャリア粒子と薬物粒子の脱凝集(deaggregation)を引き起こす。ある割合のより小さな薬物粒子が気道内に取り込まれるのに対して、より大きなキャリア粒子は咽頭に衝突する。しかしながら、バランスは、吸入に際し適切な流動特性およびそれに続くキャリアからの薬物の脱離をもたらすために、薬物粒子のキャリアへの付着を壊さなければならない。考案者は、薬物およびキャリアの両方の化学的および物理的(粒径、形状、密度、表面粗度、硬度、含水量、容積密度等)性質を含むファクターの全てを考慮しなければならない。薬物とキャリア間の相互作用は、薬物が2以上の異なる有効成分を含む併用製品として存在する場合、さらに複雑である。加えて、吸入可能な薬剤は、薬物とキャリアの脱凝集を助けるために、しばしば微細な不活性粒子(微細ラクトースなど)を利用する。微細なキャリアは、キャリアの表面上の結合部位を塞ぎ、その結果、薬物と粗キャリア間のより弱い相互作用(脱凝集を促進する)をもたらすと考えられている。
【0006】
複数のアプローチが、薬剤の送達を改良するために提案されてきた。例えば、薬剤の脱集塊(deagglomeration)を助けるために、吸入器の改善が提案されてきた。例として、米国特許6,871,646号公報、米国特許6,748,947号公報および米国特許5,503,144号公報が挙げられる。また、粒子自身が、例えば形状や表面の平滑さを改良するために改変されてもよい。用量の均一性、信頼性および分散を改善するために、ドライパウダー製剤の正確な混合方法も提案されてきた(国際公開2004/017918号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許6,871,646号公報
【特許文献2】米国特許6,748,947号公報
【特許文献3】米国特許5,503,144号公報
【特許文献4】国際公開2004/017918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、当技術分野では、さらにドライパウダー薬剤の物理的性質を改良する、および、特にFPFを改良する技術に対する要求が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、(i)空気力学的粒径に基づき粒子状有効成分を分画するステップ、(ii)前記粒子状有効成分の少なくとも一つのフラクションを回収するステップ、および(iii)吸入可能なドライパウダー薬剤を得るために、回収されたフラクションとキャリアを混合するステップを含む、吸入可能なドライパウダー薬剤を調製する方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、上記方法によって得ることができる吸入可能なドライパウダー薬剤;および、粒子状有効成分およびキャリアを含む吸入可能なドライパウダー薬剤であって、前記粒子状有効成分が空気力学的粒径に基づいて事前に分画(プレ分画)されている(pre-fractionated)薬剤も提供する。
【0011】
上に述べたように本出願人は、改善された薬剤が製剤前に薬剤を分画することによって製造され得ることを見出した。分画は、これまでは分析の目的のためにのみ考慮される技術であった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、表4〜15に示されるサンプルの調製の模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、添付の図面を参照して以下に記述される。図1は、表4〜15に示されるサンプルの調製の模式図を表す。
本発明の方法は、標準的な技術を使用して一般的に微粒子化された粒子状有効成分の供給を伴う。前記薬剤はその後、空気力学的な粒径に基づいて分画され、収集されたフラクションのうち限られた数がドライパウダー薬剤を形成するために使用される。
【0014】
分画は、好適な装置内で気流中に粒子状薬剤を混入させることによって達成される。エアロゾルは微細なジェットおよび捕集板を連続的に通過する。粒子は捕集板に衝突し、収集されてもよい。医療用エアロゾルのフラクションは周知の技術であるが、今まで当該技術は粒子サイズの分析のためにのみ使用されてきた。
【0015】
複数の方法が粒径分析のために開発されてきた。インビボの粒子の分布は、放射標識などの技術を使用して測定することができる。しかしながら、より一般的には、患者への効果を予測することを目的に、インビトロの方法が粒径を測定するために利用されている。その技術の一つは、カスケード・インパクターおよびインピンジャーを使用する分画を伴う。
【0016】
カスケード・インパクターは、一連の連続的に小さくなるノズルと捕集板を含み、これらは、既知の流速で粒子がインパクターを通して吸引される際、それらの空気力学的中央粒子径(MMAD)に従ってエアロゾルの分画を可能にする。前記捕集板は粒子を保持するために接着剤で処理される。多段式の液体インピンジャーは同様の原理で作用するが、濡れたガラス捕集板を含む傾向にある。両方とも医療用エアロゾル中の粒径(粒子サイズ)の分析のために、米国薬局方および欧州薬局方に記載されている。
【0017】
本発明で使用される分画は、好ましくは次世代の医薬インピンジャー(NGI:Next Generation Pharmaceutical Impinger)を使用して実施される。さらなる詳細は、「V.A. Marple et al "Next Generation Pharmaceutical Impactor.
Part 1 : Design" J. Aerosol Med. 2003; 16:283-299」および「V.A. Marple et al "Next Generation Pharmaceutical Impactor.
Part 2: Archival calibration" J. Aerosol Med. 2003; 16:301-324」を参照のこと。流速60L/分でのNGIステージカットオフ直径(NGI stage cut-off diameters)は、表1に示されるように、欧州薬局方に記載されている。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明のドライパウダー薬剤で使用されるフラクションは、有効成分の性質によって決まるであろう。しかしながら、所望の一または複数のフラクションが回収されてもよく、粒子状有効成分の少なくとも一つのフラクションがドライパウダーとして利用される。回収された一または複数のフラクションは、好ましくは、流速60±5L/分での測定で7.0〜9.0μmのカットオフ上限および2.5〜3.0μmのカットオフ下限を有する一または複数のステージから得られる。より好ましいカットオフ下限は流速60±5L/分での測定で4.0〜6.0である。流速60±5L/分での測定で、より好ましいカットオフ上限は8.0μmでありカットオフ下限は2.8μmであり、さらに好ましいカットオフ下限は4.4μmである。
【0020】
粒子状有効成分の回収されたフラクション中の粒子は、好ましくは1.0〜5.0μm、より好ましくは1.5〜4.5μm、最も好ましくは2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する。空気力学的粒径は、60±5L/分の流速で、欧州薬局方の方法にしたがって測定すればよい。粒子は分画されているので、実質的に全ての粒子が上述の範囲に含まれる空気力学的粒径を有する。「実質的に全て」とは、使用された分画方法に固有の限界内で、粒子がこの範囲内に入るように分画されることを意味する。一般的に、粒子の90%、より好ましくは95%がこの範囲に入るであろう。
【0021】
回収されたフラクションはその後吸入可能なドライパウダー薬剤を提供するために、キャリア(例えば、粗ラクトースなど)と混合(コンバイン)される。
【0022】
前記方法はさらに、空気力学的な粒径に基づき一以上のさらなる粒子状成分を分画するステップ、前記一以上のさらなる粒子状成分の少なくとも一つのフラクションを回収するステップ、および、当該回収されたフラクション(複数でもよい)を前記の吸入可能なドライパウダー薬剤と混合するステップを含んでもよい。前記一以上のさらなる粒子状成分は、さらなる粒子状有効成分および粒子状微細キャリア(例えば微細ラクトースなど)から選択される。前記一以上のさらなる粒子状成分は好ましくは、1.0〜5.0μm、より好ましくは1.5〜4.5μm、最も好ましくは2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する。
【0023】
前記粒子状有効成分は上述した成分のいずれかであってもよい。
【0024】
本発明はまた、ここに記載された薬剤を含有するカプセル、およびここに記載されたカプセルもしくは薬剤を含むドライパウダー吸入器も提供する。
【0025】
一例として、本発明は以下に、有効成分キシナホ酸サルメテロール(SX)およびプロピオン酸フルチカゾン(FP)を参照して記載される。インドのマハラシュトラにあるVamsi Labs社から入手したキシナホ酸サルメテロール(SX)の微粉化(微粒子化)されたサンプル:インドのニュー・デリーにあるCoral Drugs社から入手したプロピオン酸フルチカゾン(FP);およびオランダのズウォレにあるFriesland Foods Domo社から入手した微細ラクトース(FL)は、ドライパウダー・フィーダー(英国、ウースターシャー、Malvern Instruments社製)によってNGI(米国、ミネソタ州、ショアビューにあるMSP社製)内へエアロゾル化された(流速50L/分にて、および遅いパウダー供給速度が選択された[マーク2])。
【0026】
前記フィーダー(供給機)は、粒子を分離し、集塊物を壊すために2つの対向するエアジェットを利用する。前記NGIは真空ポンプに連結され、流速は60L/分に設定された。ドライパウダー・フィーダーの粉末排出ポートは、USPで調整され、NGIのスロート(throat)は粉末がインパクター内へ直接流れるのを可能とする。
【0027】
プレ-セパレーターは粗い粒子および集塊物を分離するために使用されたが、稼働(ラン)後の固体粒子の回収を可能にするため、プレ-セパレーター内に液体は配置されなかった。同様に、堆積した粉末の回収および再利用を可能にするため、NGIの収集カップにコーティングは適用されなかった。
【0028】
実験は1分間実施され、粉末の供給はその後中断され、真空ポンプはスイッチを切られた。堆積物はその後各NGIステージから回収され、NGIステージのノズルはそれらが封鎖していないことを保証するためにチェックされた。実験はその後、十分な量の粉末が回収されるまで、さらに1分間再開された。
【0029】
回収された粉末はその後ガラス製のバイアル内に移され、必要となるまでシリカゲルの入ったデシケーター内で保管された。
【0030】
60L/分でのNGIステージカットオフ直径は、欧州薬局方に記載の通り計算され、上記表1に示される。
【0031】
このようにして得られたキシナホ酸サルメテロール(SX)およびプロピオン酸フルチカゾン(FP)の粒径(粒子サイズ)は、表2および3に記載されている。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
直径の正確な値(D0.1,D0.5およびD0.9)は、異なる密度が異なる空気力学的粒径を導くため、2つの有効成分で異なる。ステージ2および4は、これらのフラクションが後述の実施例で使用されるため、強調されている。
【0035】
DPI製剤で典型的に使用される63〜90μm間のフラクションを得るために、粗ラクトース(coarse lactose)を入手し、乾燥状態で篩過した。サンプルは、要求範囲外の粒子の数を最小限にするために3回篩過された。
【0036】
NGIのステージ2および4から回収された微細な薬物およびラクトースのサンプルは、それらが両方1〜5μm間のMMAD値を持つよう、さらなる実験のために選択され、それゆえそれらは深部の肺沈着に好適と考えられる。それらは広く市販のDPI製剤において使用される範囲内でもある。
【0037】
混合順序は、図1に模式的に示される。各サンプルは、一次混合物を調製するために、1:15(w/w)の比にて粗ラクトースと幾何的(geometrically)に混合された。前記混合プロセスは、20mLのガラスバイアル内で当量の薬物と粗ラクトースを秤量することを含む。サンプルはその後ホワーリミキサー(Whirlimixer)(イギリス、レスターのFisons Scientific
Equipment社製)を使用して1分間混合された。当量の粗ラクトースがその後バイアルの内容物に添加され、サンプルは上述のように1分間混合された(合計で4ステージ)。必要量の粗ラクトースが添加された時点で、内容物はターブラー・ミキサー(Turbula mixer)(スイス、バーゼルのMessrs Bachofen AG社製)内で30分間回転混合された。
【0038】
混合の均一性は、各々2〜3mgを含有する10個のサンプルを正確に秤量すること、およびボリュメトリクス(volumetrics)を使用して10mL中にそれらを溶解することによって検証された。内容物はその後検証HPLC法を使用して数量化された。全ての混合のRSDは2%未満だった。
【0039】
検証HPLC法で使用されたHPLC機器は、ポンプ(P1000)、オート-サンプラー(AS1000)およびUV検出器(UV1000)を含むSpectraPHYSICS(登録商標)システム(米国、カリフォルニアのThermoseparation
Products社製)である。使用したカラムは、ThermoQuest社(英国、チェシャー)のハイパーシル・カラム(hypersil column;C18, 4.6mm, 5μm, 25cm)である。移動相はそれぞれ75:25の比におけるメタノールとpH4(±0.01)の0.2%酢酸アンモニウム緩衝剤の混合物とした。流速は1.00mL/分であり、温度は40℃とした。検出は228nmの波長にセットされたUV検出器を使用して行われた。
【0040】
一次混合物は、同等性を確実にするため、混合の次のステージにおいて全てのサンプルを得るために使用された。
【0041】
各製剤に添加される微粒子のトータル・パーセンテージは、薬物とキャリアの比の変化からもたらされる変動を避けるため、3%で一定に保たれた。それゆえ、サンプルは、0.5%Aと2.5%B、各1.5%、あるいは2.5%Aと0.5%Bのいずれかを含有する(AとBは、SX-S2,SX-S4,FP-S2,FP-S4,FL-S2もしくはFL-S4のいずれかである)。製剤における微粒子の作用(それらの性質にかかわらず)を研究するために、Bが粗ラクトースであるサンプルも作製された。
【0042】
その後、適切な量(比に応じて)が一次混合物から得られ、ホワーリミキサーを使用して1分間混合された。その後、粗ラクトースが、上記のように幾何的に添加された。混合の検証が上記のように実行され、全ての混合物についてのRSD値は2%未満であった。
【0043】
最終混合物(薬物を0.5,1.5もしくは2.5%含有している)のそれぞれに対し、20個の硬ゼラチンカプセル(サイズ3;イギリス、エセックス、ロンフォードのMeadow Laboratories社製)が、それぞれ30mg(±1mg)を含有するよう準備され、デポジション調査(deposition studies)のために使用された。
【0044】
デポジション調査において使用した装置はエアロライザー(Aerolizer)(スイス、バーゼルのNovartis Pharma社製)であり、使用したインパクターは流速60L/分のNGIであった。収集カップは被覆され、サンプルは上記HPLC法を使用して回収された。
【0045】
各カプセルはエアロライザー内に配置され、指示通りに穴が開けられた。装置はその後、密閉を提供する好適なゴム製アダプターにより、NGIのUSPスロートに取り付けられた。NGIに取り付けられた真空ポンプは、その後4秒間起動され、4Lが装置を通過した。1ラン(run:稼働)当たり合計5カプセル(150mg)が作動した。空気動力学的中央粒子径(MMAD)、幾何標準偏差(GSD)、および3並びに5μm未満の微粒子フラクション(FPF)が測定された。MMADおよびGSDは、中心傾向とスプレッドをそれぞれ提供し、薬剤のFPFは、吸入器によって放出される全質量と比較した所定の粒径に満たない粒子の比率の基準である。大きなFPFを達成するために、当技術分野において複数の技術が利用できるが、主に薬物の微粒子化が利用される。
【0046】
結果を以下の表4〜18に示す。
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
【表9】

【0052】
【表10】

【0053】
【表11】

【0054】
【表12】

【0055】
【表13】

【0056】
【表14】

【0057】
【表15】

【0058】
【表16】

【0059】
【表17】

【0060】
【表18】

【0061】
表19は、表4〜18に記載の実験中で使用された成分および平均FPF<5μm(丸括弧内に表示)をまとめたものである。
【表19】

【0062】
表4は、キシナホ酸サルメテロール(SX-S2)を単独でテストした(すなわち粗ラクトースの存在のみで、他の微粒子はなし)対照実験を提示する。平均FPF<5μmは25.60である。表5は、SX-S2と微細ラクトース(FL-S2)の併用がより高い30.90のFPF<5μmをもたらすことを示す。FPF<3μmにおいても同様の増加が見られる。微細ラクトースを併用することが、薬物それ自体のFPFを増加させることは当技術分野で既知であることから、この結果は予期される。理論に縛られることは望まないが、微細ラクトースが、粗ラクトースの表面に付着して薬物の接着を減少させ、それによって薬物のより多くが吸入時にキャリアから解放されるようになると理解される。
【0063】
人はそれゆえ、ラクトースのより微細なグレード(より低いMMAD)が、FPFのさらなる改善をもたらすと予想するであろう。しかしながら、表6は、同じグレードのキシナホ酸サルメテロール(SX-S2)と、より微細なラクトース(FL-S4)−インピンジャーのフラクションが高いほど粒径は小さい−の併用が、24.57といった減少したFPF<5μmをもたらすことを示す。それゆえ、本出願人は予想外のことに、粒径の最小値および最大値を限定することがFPFを改善することを見出した。
【0064】
同じことは、微細ラクトースの粒径を減じること(FL-S2→FL-S4)が、プロピオン酸フルチカゾンのFPF<5μmを減少させること(12.74から8.02へ)を示す表14および15を比較することによって、プロピオン酸フルチカゾン(FP-S4)についても観測される。
【0065】
この効果は、微粒子化されたが未分画のキシナホ酸サルメテロール(SX-UF)および微粒子化されたが未分画のプロピオン酸フルチカゾン(FP-UF)と、分画されたキシナホ酸サルメテロール(SX-S2)および分画されたプロピオン酸フルチカゾン(FP-S2)を比較することによって、より顕著に見られるかもしれない。表16は、SX-UFのFPF<5μmは9.24であることを示し、一方、表4はSX-S2のFPF<5μmは25.60であることを示す。同様に、表17と表18を比較すると、FP-UFのFPF<5μmは4.40であり、一方、FP-S2のFPF<5μmは7.03であることが分かる。
【0066】
加えて、併用で使用される際の薬物の性質もFPFに影響を与え得る。表4と表7の比較は、SX-S2のデポジション(付着)がFP-S2の有無にかかわらず基本的に同じであることを示す(FPF<5μmは26.60と比較して25.60)。
【0067】
しかしながら、これら2つの薬物を併用する時は、SX-S4よりむしろSX-S2を使用することが望ましい。この関連で、表7と表9の比較は、FP-S2の存在下においてSX-S2のFPF<5μmは26.60であるが、SX-S4が同じFP-S2の存在下で使用される際、14.97に下がることを示す。同様に、表8と表10の比較は、SX-S2が、FP-S4の存在下でSX-S4より望ましいことを示す。人はより小さな粒子サイズ(S4はS2より小さい)がより高いFPFをもたらすと予測するであろうから、これらは驚くべき結果である。同じ傾向は、微細ラクトースの存在下におけるキシナホ酸サルメテロールでも見られる(FL-S2およびFL-S4それぞれの存在下においてSX-S2とSX-S4を比較できる、表5と表11および表6と表12を参照)。
【0068】
同様に、前記トレンドはプロピオン酸フルチカゾンについても見られる。表13と表14の比較は、NGIの異なるステージから得られたフラクションS2とS4が異なることを示す。この場合もやはり、FP-S2に対するFPF<5μmは、同じグレードの微細ラクトース(FL-S4)の存在下において、より小さい粒径グレードであるFP-S4に対するより高い。
【0069】
表5と表7および表6と表8のサンプルの比較は、共薬物(co-drug)/微粒子の物理化学的特性も重要であることを示す。SX-S2とSX-S4に関するFPF<5μmは、プロピオン酸フルチカゾンが微細ラクトースの代わりに使用される時、減少する。加えて、表7と表8、および表9と表10の比較は、プロピオン酸フルチカゾンの粒径がキシナホ酸サルメテロールのデポジションに与える影響が非常に小さいことを示す。
【0070】
キシナホ酸サルメテロールのサイズがプロピオン酸フルチカゾンのFPFに影響を与えるが、その逆はないことの理由は、キシナホ酸サルメテロールが凝集性のより小さい薬物であることに起因すると考えられる。キシナホ酸サルメテロールは、この場合は、よりわずかに凝集し、より凝集性の高いプロピオン酸フルチカゾン集塊物から利益を得ることは期待されない。他方では、薬物間の何らかの相互作用は、キシナホ酸サルメテロールが、プロピオン酸フルチカゾン・クラスターを生じる、より小さな、よりオープンパックの(open-packed)集塊物に侵入することを可能にする。
【0071】
従って、本発明はまた、ここに規定された粒子サイズを有するキシナホ酸サルメテロールおよびプロピオン酸フルチカゾンを含有する薬剤を提供する。より好ましくは、前記キシナホ酸サルメテロールおよびプロピオン酸フルチカゾンは、1.0〜5.0μm、最も好ましくは2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する。
【0072】
特許請求の範囲内に含まれる、上述した実施例のバリエーションは、当業者にとって明らかであり、本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能なドライパウダー薬剤を調製するための方法であって、
(i)空気力学的粒径に基づいて粒子状有効成分を分画するステップ
(ii)前記粒子状有効成分の少なくとも一つのフラクションを回収するステップ、および
(iii)吸入可能なドライパウダー薬剤を提供するために、前記回収されたフラクションとキャリアを混合するステップ
を含む方法。
【請求項2】
空気力学的粒径に基づいて一以上のさらなる粒子状成分を分画するステップ、
前記一以上のさらなる粒子状成分の少なくとも一つのフラクションを回収するステップ、および
前記回収されたフラクションと前記の吸入可能なドライパウダー薬剤を混合するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一以上のさらなる粒子状成分が、さらなる粒子状の有効成分および粒子状の微細キャリアから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分画がNGIを使用して実施される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記回収されたフラクションが、流速60±5L/分での測定で、7.0〜9.0μmのカットオフ上限および2.5〜3.0μmのカットオフ下限を有する単一もしくは複数のステージから得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリアが粗ラクトースである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子状有効成分の回収されたフラクション中の粒子が、1.0〜5.0μmの空気力学的粒径を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子状有効成分の回収されたフラクション中の粒子が、1.5〜4.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状有効成分の回収されたフラクション中の粒子が、2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一以上のさらなる粒子状成分が存在し、且つ、前記一以上のさらなる粒子状成分の粒子が1.0〜5.0μmの空気力学的粒径を有する、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記一以上のさらなる粒子状成分の粒子が、1.5〜4.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記一以上のさらなる粒子状成分の粒子が、2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子状の微細キャリアが存在し、且つそれが微細ラクトースである、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子状有効成分およびさらなる粒子状の有効成分が、抗アレルギー薬(例えば、クロモグリク酸、ケトチフェンおよびネドクロミル)、抗炎症ステロイド類(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、シクレソリド、トリアムシノロンアセトニドおよびモメタゾンフロエート);および、β2-刺激薬(例えば、フェノテロール、ホルモテロール、ピルブテロール、レプロテロール、サルブタモール、サルメテロールおよびテルブタリン)、非選択的β-刺激薬(例えば、イソプレナリン)、キサンチン気管支拡張薬(例えば、テオフィリン、アミノフィリンおよびコリンテオフィリネート)、および抗コリン薬(例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウムおよび臭化チオトロピウム)などの気管支拡張薬から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって得られる吸入可能なドライパウダー薬剤。
【請求項16】
粒子状有効成分およびキャリアを含む吸入可能なドライパウダー薬剤であって、前記粒子状有効成分が、空気力学的粒径に基づいてプレ分画されている、ドライパウダー薬剤。
【請求項17】
空気力学的粒径に基づいてプレ分画された一以上のさらなる粒子状成分をさらに含む、請求項16に記載の薬剤。
【請求項18】
前記一以上のさらなる粒子状成分が、さらなる粒子状の有効成分および粒子状の微細キャリアから選択される、請求項17に記載の薬剤。
【請求項19】
前記キャリアが粗ラクトースである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項20】
前記粒子状有効成分の粒子が、1.0〜5.0μmの空気力学的粒径を有する、請求項16〜19のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項21】
前記粒子状有効成分の粒子が、1.5〜4.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項20に記載の薬剤。
【請求項22】
前記粒子状有効成分の粒子が、2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項21に記載の薬剤。
【請求項23】
一以上のさらなる粒子状成分が存在し、且つ、前記一以上のさらなる粒子状成分の粒子が1.0〜5.0μmの空気力学的粒径を有する、請求項17〜22のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項24】
前記一以上のさらなる粒子状成分の粒子が、1.5〜4.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
前記一以上のさらなる粒子状成分の粒子が、2.0〜3.5μmの空気力学的粒径を有する、請求項24に記載の薬剤。
【請求項26】
前記粒子状の微細キャリアが存在し、且つそれが微細ラクトースである、請求項18〜25のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項27】
前記の粒子状有効成分およびさらなる粒子状の有効成分が、抗アレルギー薬(例えば、クロモグリク酸、ケトチフェンおよびネドクロミル)、抗炎症ステロイド類(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、シクレソリド、トリアムシノロンアセトニドおよびモメタゾンフロエート);および、β2-刺激薬(例えば、フェノテロール、ホルモテロール、ピルブテロール、レプロテロール、サルブタモール、サルメテロールおよびテルブタリン)、非選択的β-刺激薬(例えば、イソプレナリン)、キサンチン気管支拡張薬(例えば、テオフィリン、アミノフィリンおよびコリンテオフィリネート)、および抗コリン薬(例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウムおよび臭化チオトロピウム)などの気管支拡張薬から選択される、請求項15〜26のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項28】
キシナホ酸サルメテロールおよびプロピオン酸フルチカゾンを含む、請求項15〜27のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項29】
請求項15〜27のいずれか1項に記載の薬剤を含有するカプセル。
【請求項30】
請求項29に記載のカプセル、または請求項15〜27のいずれか1項に記載の薬剤を含む、ドライパウダー吸入器。

【図1】
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【公表番号】特表2010−533697(P2010−533697A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516585(P2010−516585)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002473
【国際公開番号】WO2009/010770
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508008555)ノートン・ヘルスケアー リミテッド (10)
【Fターム(参考)】