説明

ドライミスト噴射ノズル

【課題】液体を微細な霧の状態に噴霧する際、ノズルから噴出される水分が霧状に微粒化されることによって、人肌に触れても濡れることがないドライミスト状に微粒化するようにしたドライミスト噴射ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル本体の第1気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材の円錐凹面に向けて噴射させる一方、第2気体流路を経て送給された圧縮空気を第1と第2混合部材の各外周の深溝部を経て各横穴から各円錐凹面に沿って噴出させることにより、第1混合部材の円錐凹面と第2混合部材の円錐凹面の面上に乱気流を生じさせ、またノズル本体の第2気体流路を経て送給された圧縮空気を第1と第2混合部材の各外周の浅溝部を経て第3混合部材の円錐凹面に向けて噴射させることにより、第3混合部材の円錐凹面の面上に乱気流を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を微細な霧の状態に噴霧する際、人肌に触れても濡れることがないほど微細なドライミスト状に微粒化するようにしたドライミスト噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を微細な霧の状態に噴霧する微粒化ノズルの構造は、次の二種の形態に分類することが可能である。即ち、液体を微細な孔から噴出する一流体微粒化ノズルと、空気や蒸気等の気体の流れにより液体を微粒化する二流体微粒化ノズルとに分類することが可能である。
【0003】
ところで、近年においては、液体の微粒化性能に関して、二流体微粒化ノズルのほうが一流体微粒化ノズルよりも優れていることが周知である。
【0004】
そこで、従来の二流体微粒化ノズルに関する技術として、下記の特許文献1を参照する。この文献に記載されている二流体微粒化ノズルは、外筒の内部に、液体供給器、液膜形成器、気体供給器、気流旋回器及び外筒を構成してなるものである。このうち、外筒内に送り込まれた気流は、その一部が第1の気流旋回器を経て旋回流とされる第1の流路と、第2の気流旋回器を経て旋回流とされる第2の流路とによって、第1及び第2の旋回流を形成する構成とされている。
【0005】
また、液体は液体供給器の内部に配設された液体溜まりに連通する液体噴出孔から噴射されて第1の円形筒から円筒状液膜となり、その円筒状液膜の内周を第1の流路の気流に挟まれると共に、円筒状液膜の外周を第2の流路の気流に挟まれて流出することにより微粒化するようにしている。
【0006】
ところが、上記の特許文献1の構造においては、第1及び第2の気流旋回器のように、ノズル内で気流を旋回する構造を有し、そのための流路は非常に複雑に構成されている。また、液体の微粒化の性能は、第1及び第2の気流旋回器に形成された複数の流路の精度によるものであり、精密な加工精度が要求されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4266239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような微粒化ノズルは、化粧用噴霧器や加湿器等の家庭用或は工業用噴霧装置に使用されるほか、ジェットエンジン等の燃料噴射ノズル等にも応用が可能である。
【0009】
また、水分を蒸発させる際の気化熱の吸収を利用した冷却効果を適用することによって、エアコン等に使用することも可能である。
【0010】
さらに、上記の微粒化ノズルを使用するに際しては、ノズルから噴射された微粒化水分が人肌に触れても濡れることがない、所謂ドライミスト状に微粒化することが好ましい。そのためには、ノズルから噴出される霧状水分が10μm以下に微粒化されることが望ましい。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、液体を微細な霧の状態に噴霧する際、ノズルから噴出される水分が霧状に微粒化されることによって、人肌に触れても濡れることがないドライミスト状に微粒化するようにしたドライミスト噴射ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1のドライミスト噴射ノズルは、ノズル本体の先頭部の中央に該ノズル本体の軸方向に向けて液体流路を開口すると共に、該液体流路の近傍に並設した圧縮空気を流通する第1気体流路と液体流路の周囲に設けた複数の第2気体流路とを形成し、これらの第1気体流路と第2気体流路とをノズル本体の先頭部に開口する一方、中空形状のノズルキャップにおける閉塞した先端部の中央に噴射孔を形成すると共に、ノズルキャップの中空部に、ノズル本体側に配した第1混合部材と、噴射孔側に配した第2混合部材とを重ねた状態で収納することによって、各混合部材の中心に形成された液体流通孔をノズル本体の軸方向に揃えた状態にして該ノズルキャップの中空部をノズル本体の先頭部に結合し、ノズルキャップの先端内部を第3混合部材として、これらの第1混合部材と第2混合部材と第3混合部材のいずれの混合部材にもノズル本体に対向する側に円錐形に凹んだ円錐凹面を形成すると共に、第1混合部材と第2混合部材の外周に複数の深溝部と、該深溝部よりも溝深さが浅い浅溝部とを交互に設け、第1混合部材の外周の深溝部の各底部に形成した横穴を該第1混合部材の円錐凹面上に開口し、第2混合部材の外周の深溝部の各底部に形成した横穴を該第2混合部材の円錐凹面上に開口すると共に、該第2混合部材の円錐凹面の開口からノズルキャップの円錐凹面に向けて貫通することにより、ノズル本体の第1気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材の円錐凹面に向けて噴射させる一方、ノズル本体の第2気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材と第2混合部材の各外周の深溝部を経て各横穴から各円錐凹面に沿って噴出させることにより、第1混合部材の円錐凹面と第2混合部材の円錐凹面の面上に乱気流を生じさせ、またノズル本体の第2気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材と第2混合部材の各外周の浅溝部を経て第3混合部材の円錐凹面に向けて噴射させることにより、該第3混合部材の円錐凹面の面上に乱気流を生じさせ、ノズル本体の液体流路を経て供給された液体が第1混合部材と第2混合部材と第3混合部材の各円錐凹面の面上に生じた乱気流を経る毎に微粒化されてノズルキャップの噴射孔から霧状に噴出されるようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明における請求項2のドライミスト噴射ノズルは、請求項1において、ノズルキャップの中空部に単一の混合部材が収納され、該混合部材は、その中心に形成された液体流通孔と、該混合部材をノズルキャップの中空内に収納した状態で該ノズル本体に対向する側に円錐形に凹ませてなる円錐凹面と、該混合部材の外周に交互に形成された複数の深溝部と浅溝部と、各深溝部の各底部に設けられた段差部と、該段差部に貫通形成されたエアー孔とを備え、ノズル本体の第1気体流路を経て送給された圧縮空気がノズルキャップの中空内に収納された混合部材の円錐凹面の上面で乱気流を生じさせると共に、ノズル本体の第2気体流路を経て混合部材の各エアー孔を通過した圧縮空気が各段差部の上部空間で乱気流を生じさせる一方、ノズル本体の第2気体流路を経て混合部材の外周の浅溝部を通過する圧縮空気がノズルキャップの円錐凹面に衝突して乱気流を生じさせることにより、ノズル本体の中央の液体流路を経て供給された液体が混合部材の内部空間とノズルキャップの内部空間を経る毎に微粒化されてノズルキャップの噴射孔から霧状に噴出されるようにしたことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明における請求項3のドライミスト噴射ノズルは、請求項1又は2において、液体を収容したボトルの蓋部に結合してボトル内部と連通するボトル側分岐バルブの液体吸い上げ側管路を液量調整バルブを介してノズル本体の液体流路に接続する一方、コンプレッサーから供給される圧縮空気の送給管をノズル側分岐バルブに接続し、該ノズル側分岐バルブの一方の分岐管をノズル本体の第1気体流路と第2気体流路に連通するように接続すると共に、ノズル側分岐バルブの他方の分岐管をボトル側分岐バルブのエアー送給流路に接続したことによって、ノズル本体の第1気体流路と第2気体流路にコンプレッサーから供給される圧縮空気を送給し、ノズル本体の液体流路にボトル内の液体を送給するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドライミスト噴射ノズルは、上記のように構成されているため、ノズル本体に形成された第2気体流路の開口から噴射された圧縮空気を第1混合部材の円錐凹面に向けて衝突させることによって、該第1混合部材の円錐凹面の上部空間において乱気流が生じる。
【0016】
また、ノズル本体に形成された第2気体流路の開口から噴射された圧縮空気を第1混合部材と第2混合部材の各外周の深溝部又は浅溝部を経て各深溝部の横穴から各円錐凹面に沿って噴出させることより、第1混合部材の円錐凹面と第2混合部材の円錐凹面と第3混合部材の円錐凹面の各面上の内部空間に乱気流が生じる。
【0017】
さらに、第1混合部材と第2混合部材の外周に形成されている浅溝部は深溝部よりも溝深さが浅く形成され、各深溝部のように横穴が形成されていない。このため、ノズル本体内の第1混合部材と第2混合部材の外周に形成されている浅溝部を通過する空気流は深溝部を通過する空気流よりも少量となるが、速い空気流となって第3混合部材であるノズルキャップの円錐凹面に向けて噴出されることによって、該ノズルキャップの円錐凹面の上面の空間に乱気流を生じさせる。
【0018】
従って、本発明のドライミスト噴射ノズルによれば、ノズル本体の液体流路を経て供給された液体が第1混合部材と第2混合部材と第3混合部材の内部空間を経る毎に微粒化されてノズルキャップの噴射孔から噴出されることが可能となる。
【0019】
また、本発明のドライミスト噴射ノズルは、ノズルキャップの中空部に単一の混合部材が収納された簡易化した構成としても、微粒化された霧状の液体をノズルキャップの噴射孔から噴出することが可能となる。
【0020】
このような本発明のドライミスト噴射ノズルによれば、最終的にノズルキャップの噴射孔から噴射される微粒化された霧状の液体は、人肌に触れても濡れることがない、所謂ドライミスト状に微粒化された噴霧状態となる。
【0021】
また、本発明のドライミスト噴射ノズルは、化粧用噴霧器や加湿器等の家庭用或は工業用噴霧装置等に使用されるほか、ジェットエンジン等の燃料噴射ノズル等にも応用が可能である。
【0022】
さらに、本発明のドライミスト噴射ノズルをエアコン等に使用すると、気化熱を吸収する際の冷却効果が得られることにより、エアコンの冷房効果を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの外観図である。
【図2】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの分解図である。
【図3】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの内部構造を示す分解状態の断面図である。
【図4】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの内部構造を示す組立て後の断面図である。
【図5】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの各部材の背面図である。ただし、ノズル本体は横断面の状態を示す。
【図6】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの各部材の前面図である。
【図7】(a)は本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルにおけるノズル本体の先頭部に第1混合部材を当てた状況を示すノズル本体の前面図であり、(b)は本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルにおけるノズル本体の先頭部に第2混合部材を当てた状況を示すノズル本体の前面図である。
【図8】本発明による実施例1のドライミスト噴射ノズルの要部拡大断面図である。
【図9】本発明による実施例2によるドライミスト噴射ノズルを適用したドライミスト噴射装置のケース内の側面図である。
【図10】本発明による実施例2によるドライミスト噴射ノズルの他の実施例を示す部分側面図である。
【図11】本発明による実施例3のドライミスト噴射ノズルの図であり、(a)は分解状態を示す側面図、(b)は結合状態を示す側面図である。
【図12】本発明による実施例3のドライミスト噴射ノズルにおけるノズルキャップを示す図であり、(a)は前面図、(b)は側面図である。
【図13】本発明による実施例3のドライミスト噴射ノズルにおけるノズル本体を示す図であり、(a)は前面図、(b)は側面図である。
【図14】(a)、(b)は、本発明による実施例3のドライミスト噴射ノズルにおけるノズルキャップとノズル本体を異方向から見た斜視図である。
【図15】本発明による実施例3のドライミスト噴射ノズルにおける混合部材を示す図であり、(a)は前面図、(b)は後面図、(c)は側面図、(d)は(b)のA−A矢示線断面図、(e)は(b)のB−B矢示線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0025】
図1又は図2は、本実施例のドライミスト噴射ノズル1の外観を示す図であり、ノズル本体2の側部に液体用の送液管(不図示)を接続する接続口4が設けられ、該接続口4は後述するノズル本体2の内部に設けられた液体流路5(図3参照)に接続されている。
【0026】
また、図2に示すように、ノズル本体2の先端には、外周にネジ溝6aを形成した先頭部6が前方に向けて突出形成され、このネジ溝6aをノズルキャップ7の中空部8の内周の雌ネジに捩じ込んで固定することが可能である。
【0027】
さらに、図2に示すように、ノズル本体2の先端には後部ネジ溝2aが形成され、この後部ネジ溝2aにエアー管9のナット部9aを捩じ込んで固定することが可能とされている。
【0028】
図3又は図4は、上記のドライミスト噴射ノズル1の内部構造を示す断面図である。これらの図に示すように、ノズル本体2の先頭部6の中央においてノズル本体2の軸方向に液体流路5が開口されている。
【0029】
この液体流路5は、ノズル本体2の側部から垂直に形成された接続口4に連通されたものであり、ノズル本体2の内部で直角に折曲された状態でノズル本体2の先頭部6の中央に向けて形成されている。
【0030】
また、図3又は図4に示すように、ノズル本体2の内部においては、先頭部6に開口5aを設けた液体流路5の近傍に圧縮空気を流通する第1気体流路10を並設すると共に、第1気体流路10の外周側に複数の第2気体流路11、11…が形成され、第1気体流路10と第2気体流路11、11…の何れもノズル本体2の先頭部6の端部に開口した構成とされている。
【0031】
このような構成において、図5又は図6に示すように、第1気体流路10は、ノズル本体2の中央に向かう液体流路5の近傍にあって、少なくとも1個の液体の流通路を形成している。
【0032】
一方、第2気体流路11は、液体流路5がノズル本体2の側部から垂直に形成された部分5bを避けるために、ノズル本体2の片側に偏った状態で複数の流路を形成するようにしている。なお、スペース的に可能ならば、複数の第2気体流路11、11…は、液体流路5の全周に形成してもよい。
【0033】
さらに、図3〜図6に示すドライミスト噴射ノズル1の構成において、中空形状のノズルキャップ7の閉塞した先端部7bの中央に噴射孔7aが形成されると共に、ノズルキャップ7の中空部8には、ノズル本体2側に配した第1混合部材12と噴射孔7a側に配した第2混合部材13とが重ね合わされた状態で収納されている(図7参照)。
【0034】
このような構成により、各混合部材12、13の中心に形成された各液体流通孔12a、13aを軸方向に直状に揃えた状態にしてノズルキャップ7の中空部8をノズル本体2の先頭部6に結合することができる。この結合の際には、ノズルキャップ7の中空部8の内周に形成されたネジ溝7dをノズル本体2の先頭部6の外周に形成されたネジ溝6aにねじ込んで結合する。
【0035】
また、上記の構成により、図7(a)、(b)又は図8に示すように、ノズル本体2の液体流路5の開口5aと第1混合部材12の液体流通孔12aと第2混合部材13の液体流通孔13aとノズルキャップ7の先端部7bの噴出孔7aとが略一直線に揃い、ノズル本体2の液体流路5を経て供給される液体を第1混合部材12の液体流通孔12aと、第2混合部材13の液体流通孔13aと、ノズルキャップ7の先端部7bの噴出孔7aを経て外方へ噴出することが可能となる。
【0036】
このような本実施例のドライミスト噴射ノズル1の構成において、ノズルキャップ7の先端内部を第3混合部材14(図7参照)とすれば、第1混合部材12と第2混合部材13と第3混合部材14のいずれの混合部材にもノズル本体2側に対向する側に円錐形に凹んだ円錐凹面12c、13c、7cが形成されていることになる。
【0037】
ここで、本実施例における第1混合部材12と第2混合部材13と第3混合部材14の夫々の構造について、図5、図6を参照しながら説明する。
【0038】
なお、図5は、ノズル本体2の断面状況と、第1混合部材12と第2混合部材13とノズルキャップ7とを背面側から見た外観図である。また、図6はノズル本体2と第1混合部材12と第2混合部材13とノズルキャップ7とを前方から見た外観図である。
【0039】
まず、第1混合部材12は、ノズルキャップ7の中空部8の内周に略接触する程度の外径を有して収納され、その外周に例えば3箇所の略コ字形を有する深溝部12b、12b…が形成されると共に、各深溝部12b、12b…の間の外周にアール形状を有する浅溝部12r、12r…が形成されている。
【0040】
夫々の深溝部12bと浅溝部12rとの関係は、深溝部12bが浅溝部12rよりも深い溝形状に形成されたことによって、深溝部12bが浅溝部12rよりも大なるエアー流量を可能としたものである。なお、これらの深溝部12bと浅溝部12rの形状は、夫々の溝のエアー流量に差を生じさせるため、断面開口が広いか狭いかの違いを有するものであり、断面コ字形や断面アール形の溝形状に限定されるものではない。
【0041】
さらに、図5又は図7(b)に示すように、第1混合部材12においては、各浅溝部12rよりもエアー流量が大なる各深溝部12bの底部に横穴12dを形成し、各横穴12dは第1混合部材12の中心を向くと共に円錐凹面12cの湾曲面上に開口する構成とされている。
【0042】
一方、図5〜図7において、第2混合部材13は、上記の第1混合部材12と同様に、ノズルキャップ7の中空部8の内周に略接触する程度の外径を有して収納され、その外周に例えば3箇所の深溝部13b、13b…が形成されると共に、各深溝部13b、13b…の間に浅溝部13r、13r…が形成されている。これらの深溝部13bと浅溝部13rとの関係は、上記の第1混合部材12と同様に、深溝部13bが浅溝部13rよりも深い溝形状に形成され、深溝部13bが浅溝部13rよりも大なるエアー流量を可能としたものである。
【0043】
さらに、第3混合部材13においては、各深溝部13bの底部に横穴13dを形成する。また、各横穴13dは円錐凹面13cの湾曲面上に開口され、さらに各円錐凹面13cの湾曲面上の横穴13dの開口部から前方、即ちノズルキャップ7の円錐凹面7cに向けて液体流通孔13eで貫通した構成とされている。
【0044】
なお、図6に示すように、第2混合部材13の各液体流通孔13eは第2混合部材13の前面側に形成された凹溝13f内に形成されている。
【0045】
このような構成において、図8に示すように、ノズルキャップ7の中空部8内に第1混合部材12と第2混合部材13を重ね合わせて収納したとき、図8に示すように、ノズル本体2の液体流路5の開口5aと第1混合部材12の液体流通孔12aと第2混合部材13の液体流通孔13aとノズルキャップ7の噴出孔7aとが略一直線に揃う。
【0046】
また、図7(a)、(b)に示すように、ノズル本体2の複数の第2気体流路11、11…の何れかが、第1混合部材12の何れかの深溝部12bと浅溝部12rに相対することによって、ノズル本体2の複数の第2気体流路11を経て送給される圧縮空気を深溝部12bと浅溝部12rに送ることが可能となる。
【0047】
さらに、図7(b)又は図8に示すように、第1混合部材12の深溝部12bと浅溝部12rが、第2混合部材13の深溝部13bと浅溝部13rに相対することによって、ノズル本体2の複数の第2気体流路11を経て送給される圧縮空気を深溝部13bと浅溝部13rに送ることが可能となる。
【0048】
上記の構成により、ノズル本体2の液体流路5の近傍の第1気体流路10から噴出される圧縮空気は第1混合部材12の円錐凹面12cの面上に当たってその円錐凹面12cの面上の空間内に乱気流を生じさせ、液体流路5の開口5aから液体流通孔12aに噴射する液体を破砕し微粒化する。
【0049】
さらに、この第1混合部材12において、ノズル本体2の第2気体流路11の開口から噴射された圧縮空気は、第1混合部材12の各深溝部12bを経て各横穴12dから円錐凹面12cの中心部へ噴出させることとなり、円錐凹面12cの空間内の乱気流をさらに複雑にして、液体流路5の開口5aから液体流通孔12aに噴射する液体をより微粒化する。
【0050】
また、第2混合部材13において、第1混合部材12の液体流通孔12aから噴出された微粒化された液体は、第2混合部材13の液体流通孔13aに向けて噴出される。このとき、第1混合部材12の各深溝部12bを経て第2混合部材13の各深溝部13bに至った圧縮空気が第2混合部材13の横穴13dを通過して円錐凹面13cに沿って入り、その上面の空間内で乱気流を生じ、第1混合部材12の液体流通孔12aから第2混合部材13の液体流通孔13aに向かう微粒化された液体をより一層微粒化する。
【0051】
さらに、第2混合部材13の各深溝部13bを通過する圧縮空気が第2混合部材13の液体流通孔13eに流入すると、その圧縮空気はノズルキャップ7の先端内部を第3混合部材14とする円錐凹面7cに当たって、その上面の空間内に乱気流を生じさせる。
【0052】
そして、第2混合部材13の液体流通孔13aからノズルキャップ7の噴射孔7aに向けて噴出される微粒化された液体をさらに微粒化した状態で、噴射孔7aから外方へ噴射することが可能となる。
【0053】
なお、第2混合部材13の各液体流通孔13eの前面側に形成された凹溝13fに入った圧縮空気は、ノズルキャップ7の円錐凹面7c内の空間に中心方向へ整流させる効果を有する。
【実施例2】
【0054】
本実施例において、上記のように構成されたドライミスト噴射ノズル1は、図9に示すドライミスト噴射装置15に適用することが可能である。
【0055】
即ち、図9に示すドライミスト噴射装置15は、所定形状のケース16の内部に組み込まれ、液体を収容したボトル17の蓋部18に結合し、ボトル内部と連通するボトル側分岐バルブ19の液体吸い上げ側管路20を液量調整バルブ21を介して接続口4に連結し、ノズル本体2の内部の液体流路5に接続する構成を有している。
【0056】
さらに、ケース16の外部に設けられたコンプレッサー(不図示)を接続口27に連結すると共に、圧縮空気の送液管22をノズル側分岐バルブ23に接続し、該ノズル側分岐バルブ23の一方の分岐管24をエアー管9に接続することによって、ノズル本体2の第1気体流路10と第2気体流路11に連通する。
【0057】
また、ノズル側分岐バルブ23の他方の分岐管25をボトル側分岐バルブ19のエアー送給管26に接続する。
【0058】
このような構成により、ノズル本体2の第1気体流路10と第2気体流路11にコンプレッサーから供給される圧縮空気を送給する一方、ノズル本体2の液体流路5にボトル17内の液体を送給することが可能となる。
【0059】
なお、実施例2のドライミスト噴射ノズル1の他の実施例として、図10に示すように、ノズル本体2の後部に接続口4とエアー管9を並設した構成として、ノズル本体2内の液体流路や第1気体流路及び第2気体流路を形成することも可能である。
【0060】
この場合、ノズル本体2の外方に突出部がなくなることによって、本発明のドライミスト噴射ノズル1を適用した装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【実施例3】
【0061】
上記の実施例1は、ノズルキャップ7の中空部に、第1混合部材12と第2混合部材13とからなる2枚の混合部材を収納したものであるが、この実施例3においては、ノズルキャップ7の中空部8に単一の混合部材27を収納することによって、より簡易な構成としたものである。
【0062】
本実施例のその他の構成は、図11〜図13に示すように、本質的には、実施例1と同様である。従って、図11〜図13において、実施例1と同様の構成部には、実施例1で用いた符号と同様の符号を用いることとし、そのような構成部の説明は、実施例1の内容と同様であるため省略することとする。
【0063】
そこで、本実施例の単一の混合部材27の構成について説明すると、図14及び図15に示すように、混合部材27の中心には液体流通孔27aが形成されている。この液体流通孔27aは、図11(a)、(b)に示すように、ノズルキャップ7の中空部8内に混合部材27を収納した状態で、ノズルキャップ7をノズル本体2のネジ溝6aに捩じ込んで結合することにより、混合部材27の中心の液体流通孔27aがノズル本体2の中央の液体流路5の開口5aとノズルキャップ7の噴射孔7aと直線状に連通した状態となる。
【0064】
また、混合部材27には、図11(b)に示すように該混合部材27をノズルキャップ7の中空部8に収納した状態でノズル本体2に対向する側に円錐形に凹んだ円錐凹面27cが形成されている。この円錐凹面27cは、図15(d)に示すように、円錐凹面27cの凹形状が直線状の傾斜面となるように形成されているほか、湾曲状の傾斜面となるように形成してもよい。
【0065】
また、本実施例の混合部材27の外周には、交互に複数(本実施例においては3個ずつ)の深溝部27bと浅溝部27rとが形成され、また各深溝部27bの各底部には段差部27dが形成されると共に、該段差部27dにエアー孔27eが形成されている。
【0066】
なお、この混合部材27においても、夫々の深溝部12bと浅溝部12rとの関係は、深溝部12bが浅溝部12rよりも深い溝形状に形成されたものであり、深溝部12bが浅溝部12rよりも大なるエアー流量を可能としたものである。
【0067】
また、本実施例においても、これらの深溝部12bと浅溝部12rの形状は、夫々の溝のエアー流量に差を生じさせるため、断面開口が広いか狭いかの違いを有するものであり、断面コ字形や断面アール形の溝形状に限定されるものではない。
【0068】
このような構成により、ノズル本体2の第1気体流路10を経て送給された圧縮空気がノズルキャップ7の中空内に収納された混合部材27の円錐凹面27cの上面の空間で乱気流を生じさせると共に、段差部27dの上部空間で乱気流を生じさせる。さらに、ノズル本体2の第1気体流路10を経て送給された圧縮空気が混合部材27の円錐凹面27cに衝突して乱気流を生じさせる。
【0069】
一方、ノズル本体2の第2気体流路11を経て混合部材27の外周の浅溝部27rを通過する圧縮空気がノズルキャップ7の円錐凹面7cに衝突して乱気流を生じさせることとなる。このように、本実施例においては、予め設計の段階で、浅溝部27rと深溝部27bの溝開口の大きさを調整することによって最適するエアー流量を調整することが可能となる。
【0070】
上記の構成により、本実施例のドライミスト噴射ノズルによれば、ノズル本体2の中央の液体流路5を経て供給された液体が混合部材27の内部空間とノズルキャップ7の内部空間を経る毎に微粒化されてノズルキャップ7の噴射孔7aからドライミストとして霧状に噴出することが可能となる。
【0071】
なお、実施例3のドライミスト噴射ノズルにおいても、図10に示すように、ノズル本体2の後部に接続口4とエアー管9を並設した構成として、ノズル本体2内の液体流路や第1気体流路及び第2気体流路を形成することにより、コンパクトな構造に構成することが可能となる。また、実施例3のドライミスト噴射ノズルの構造を実施例2のケース16に収容し、ケース16にボトル17を結合した構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のドライミスト噴射ノズルは、液体を微細な霧の状態に噴霧する際、ノズルから噴出される水分が霧状に微粒化されることによって、人肌に触れても濡れることがないドライミスト状に微粒化されることにより、化粧用噴霧器や加湿器、エアコン等の家庭用或は工業用噴霧装置に利用するほか、ジェットエンジン等の燃料噴射ノズル等にも利用可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1 ドライミスト噴射ノズル
2 ノズル本体
2a 後部ネジ溝
3 送給管
4 接続口
5 液体流路
5a 開口
5b 垂直に形成された部分
6 先頭部
6a ネジ溝
6b 突出部
7 ノズルキャップ
7a 噴射孔
7b 先端部
7c 円錐凹面
7d ネジ溝
8 中空部
9 エアー管
9a ナット
10 第1気体流路
11 第2気体流路
12 第1混合部材
12a 液体流通孔
12b 第1混合部材の深溝部
12c 円錐凹面
12d 横穴
12r 第1混合部材の浅溝部
13 第2混合部材
13a 液体流通孔
13b 第2混合部材の深溝部
13c 円錐凹面
13d 横穴
13e 液体流通孔
13f 凹溝
13r 第2混合部材の浅溝部
14 第3混合部材
15 ドライミスト噴射装置
16 ケース
17 ボトル
18 蓋部
19 ボトル側分岐バルブ
20 液体吸い上げ側管路
21 液量調整バルブ
22 送液管
23 ノズル側分岐バルブ
24 一方の分岐管
25 他方の分岐管
26 エアー送給管
27 混合部材
27a 液体流通孔
27b 深溝部
27c 円錐凹面
27d 段差部
27e エアー孔
27r 浅溝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体の先頭部の中央に該ノズル本体の軸方向に向けて液体流路を開口すると共に、該液体流路の近傍に並設した圧縮空気を流通する第1気体流路と液体流路の周囲に設けた複数の第2気体流路とを形成し、これらの第1気体流路と第2気体流路とをノズル本体の先頭部に開口する一方、
中空形状のノズルキャップにおける閉塞した先端部の中央に噴射孔を形成すると共に、ノズルキャップの中空部に、ノズル本体側に配した第1混合部材と、噴射孔側に配した第2混合部材とを重ねた状態で収納することによって、各混合部材の中心に形成された液体流通孔をノズル本体の軸方向に揃えた状態にして該ノズルキャップの中空部をノズル本体の先頭部に結合し、
ノズルキャップの先端内部を第3混合部材として、これらの第1混合部材と第2混合部材と第3混合部材のいずれの混合部材にもノズル本体に対向する側に円錐形に凹んだ円錐凹面を形成すると共に、第1混合部材と第2混合部材の外周に複数の深溝部と、該深溝部よりも溝深さが浅い浅溝部とを交互に設け、
第1混合部材の外周の深溝部の各底部に形成した横穴を該第1混合部材の円錐凹面上に開口し、第2混合部材の外周の深溝部の各底部に形成した横穴を該第2混合部材の円錐凹面上に開口すると共に、該第2混合部材の円錐凹面の開口からノズルキャップの円錐凹面に向けて貫通することにより、
ノズル本体の第1気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材の円錐凹面に向けて噴射させる一方、ノズル本体の第2気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材と第2混合部材の各外周の深溝部を経て各横穴から各円錐凹面に沿って噴出させることにより、第1混合部材の円錐凹面と第2混合部材の円錐凹面の面上に乱気流を生じさせ、
またノズル本体の第2気体流路を経て送給された圧縮空気を第1混合部材と第2混合部材の各外周の浅溝部を経て第3混合部材の円錐凹面に向けて噴射させることにより、該第3混合部材の円錐凹面の面上に乱気流を生じさせ、
ノズル本体の液体流路を経て供給された液体が第1混合部材と第2混合部材と第3混合部材の各円錐凹面の面上に生じた乱気流を経る毎に微粒化されてノズルキャップの噴射孔から霧状に噴出されるようにしたことを特徴とするドライミスト噴射ノズル。
【請求項2】
ノズルキャップの中空部に単一の混合部材が収納され、該混合部材は、その中心に形成された液体流通孔と、該混合部材をノズルキャップの中空内に収納した状態で該ノズル本体に対向する側に円錐形に凹ませてなる円錐凹面と、該混合部材の外周に交互に形成された複数の深溝部と浅溝部と、各深溝部の各底部に設けられた段差部と、該段差部に貫通形成されたエアー孔とを備え、
ノズル本体の第1気体流路を経て送給された圧縮空気がノズルキャップの中空内に収納された混合部材の円錐凹面の上面で乱気流を生じさせると共に、
ノズル本体の第2気体流路を経て混合部材の各エアー孔を通過した圧縮空気が各段差部の上部空間で乱気流を生じさせる一方、
ノズル本体の第2気体流路を経て混合部材の外周の浅溝部を通過する圧縮空気がノズルキャップの円錐凹面に衝突して乱気流を生じさせることにより、ノズル本体の中央の液体流路を経て供給された液体が混合部材の内部空間とノズルキャップの内部空間を経る毎に微粒化されてノズルキャップの噴射孔から霧状に噴出されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のドライミスト噴射ノズル。
【請求項3】
液体を収容したボトルの蓋部に結合してボトル内部と連通するボトル側分岐バルブの液体吸い上げ側管路を液量調整バルブを介してノズル本体の液体流路に接続する一方、
コンプレッサーから供給される圧縮空気の送給管をノズル側分岐バルブに接続し、該ノズル側分岐バルブの一方の分岐管をノズル本体の第1気体流路と第2気体流路に連通するように接続すると共に、ノズル側分岐バルブの他方の分岐管をボトル側分岐バルブのエアー送給流路に接続したことによって、
ノズル本体の第1気体流路と第2気体流路にコンプレッサーから供給される圧縮空気を送給し、ノズル本体の液体流路にボトル内の液体を送給するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のドライミスト噴射ノズル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−179518(P2012−179518A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42824(P2011−42824)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(393010581)株式会社北斗製作所 (2)
【出願人】(511053540)
【Fターム(参考)】