説明

ドラム缶カバー

【課題】パレット上に立置き状に野積みしたドラム缶の上面を風等に飛ばされない状態で覆い、ドラム缶の上面を風雨から保護できるドラム缶カバーを提供する。
【解決手段】本願カバー1は、パレット2上に外周が接するように集束して立置きしたドラム缶3の上面を同時に覆うことのできるカバー体4を設け、該カバー体4のエッジ部の対向的部位に、前記パレット2に両端フック金具F、F′を係止させた伸縮部材5を通す凹溝6を設けたものであり、前記カバー体4は4本のドラム缶の上面に対応する4つの丸面部7と、該4つのドラム缶の中央域に対応できる四角面部8と、隣接する2つのドラム缶の外側の隙間に対応する4つのデルタ部9とを備えてなり、前記各丸面部7を四角面部8及びデルタ部9を底にして立ち上げ、該立ち上げ部10の周囲に凹凸部11を連続して形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガソリン、薬液その他の液状又は半流動体等の内容物を入れたドラム缶をその出荷前にパレット上に立置きした状態で、野積みしておく場合に有効なドラム缶カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガソリン、薬液その他液状又は半流動体等の内容物を入れたドラム缶は、いつでも出荷できるように、その上面(蓋面)に内容物の種類や品質を表す貼票や責任者を表す貼票などが貼られる。また、上面のキャップ部には未開封を示す封緘紙などが貼られている。このような出荷準備が整ったドラム缶は、通常、ドラム缶クリッカーと称する運搬器具を使って持ち上げ、パレット上に立置き状にセットされ、ホークリフトにより野積み場所まで運ばれ、出荷を待つが、出荷までの間は野積みされているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ドラム缶は野積み時間が短ければ問題ないが、野積みが長時間に亘と、ドラム缶の多くは鉄板製であるため、風雨に晒される上面縁部に錆びが出たり、上面が空中に飛散している埃などにより汚されたり、内容物の種類や品質を表す貼票や封緘紙などが剥がれたり、文字が消えたりすることがあり、したがって、出荷日が決まると、汚れた上面を拭き取るか、上面縁部の錆びをペンキ等を塗って隠すか、貼票類は貼り替える等の面倒な作業が必要になっていた。
【0004】
本発明は上記の問題を解消するためのもので、その目的とするところは、パレット上に立置き状に野積みしたドラム缶の上面を風等に飛ばされない状態で覆い、ドラム缶の上面を風雨から保護し、各種貼票類や封緘紙などの面倒な貼り替え作業を不要にして、即時にドラム缶の出荷が可能なようにしたドラム缶カバーを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るドラム缶カバーは、パレット上に外周が接するように集束して立置きしたドラム缶の上面を同時に覆うことのできるカバー体を設け、該カバー体のエッジ部の対向的部位に、前記パレットに両端フック金具を係止させた伸縮部材を通す凹溝を設けたことを特徴とし、野積み時にドラム缶の上面を風等に飛ばされない状態で長期に亙って保護できるように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載に係るドラム缶カバーは、前記カバー体が、4本のドラム缶の上面に対応する4つの丸面部と、該4つのドラム缶の中央域に対応できる四角面部と、隣接する2つのドラム缶の外側の隙間に対応する4つのデルタ部とを備えてなり、前記各丸面部を四角面部及びデルタ部を底にして立ち上げ、該立ち上げ部の周囲に凹凸部を連続して形成し、かつ、前記四角面部の中央部に透孔を設けたことを特徴とし、4つ並べたドラム缶の上面にすっぽり被せることができ、また、被せたり外したりする作業が容易なように構成した。
【0007】
さらに、請求項3に記載に係るドラム缶カバーは、前記各丸面部が、周縁を残して中央部に凹面を設け、該凹面の中央域に周縁より高くならない凸部を設けたことを特徴とし、広い面積を持つ各丸面部の上面に多くの凹凸を作って強度を高めるとともに、中央部に凸部を出荷会社又は内容物製造者等の社票や品質マーク等に利用できるように構成した。
【0008】
さらにまた、請求項4に記載に係るドラム缶カバーは、前記カバー体が、プラスチック材料により形成してなることを特徴とし、全体の軽量化が実現できるように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パレット上に外周が接するように集束して立置きしたドラム缶の上面を同時に覆うことのできるカバー体を設け、該カバー体のエッジ部の対向的部位に、前記パレットに両端フック金具を係止させた伸縮部材を通す凹溝を設けたことを特徴としているから、野積み時にドラム缶の上面を長期に亙って保護でき、しかも、野積み中にカバー体が両端フック金具をパレットに係止させた状態で伸縮部材により確り固定されるため、風に飛ばされることがない等各種の優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記カバー体が、4本のドラム缶の上面に対応する4つの丸面部と、該4つのドラム缶の中央域に対応できる四角面部と、隣接する2つのドラム缶の外側の隙間に対応する4つのデルタ部とを備えてなり、前記各丸面部を四角面部及びデルタ部を底にして立ち上げ、該立ち上げ部の周囲に凹凸部を連続して形成し、かつ、前記四角面部の中央部に透孔を設けたことを特徴としているから、4つ並べたドラム缶の上面を、立ち上げた4つの丸面部がすっぽり被ることができ、しかも、丸面部の立ち上げ部の周囲に凹凸部を連続して設け丸面部の形態安定と強度を高める。また、底になっている四角面部には中央部に透孔があるので、雨水が溜まってしまうことがない。さらに、該透孔にはカバー体のエッジ部を脇に抱えるように腕を伸ばして手指が掛けられるので、カバー体の全体を簡単に持ち上げることができ、ドラム缶へ被せたり外したりする作業が容易にできる等の各種の優れた効果を奏するものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記各丸面部が周縁を残して中央部に凹面を設け、該凹面の中央域に周縁より高くならない凸部を設けたことを特徴としているから、広い面積を持つ各丸面部の上面に多くの凹凸が作られているので、ドラム缶の上面を覆うためにカバー体の全体を持ち上げるに際し、充分な強度が得られる。また、各丸面部の中央部に設けた強度増強のための凸部を利用して出荷会社又は内容物製造者等の社票や品質マーク等が表示できるので、副次的に宣伝効果も得られる等の各種の優れた効果を奏するものである。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、前記カバー体が、プラスチック材料により形成してなることを特徴とし、全体の軽量化が実現できるので、取扱性が向上するし、低価格性も実現できる等の優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願カバーの使用状態を示す斜視図、図2は本願カバーの平面図、図3は図2におけるA−A線切断部端面図、図4は図2におけるB−B線切断部端面図である。
【0014】
本願カバー1は、図1の如く、パレット2上に、外周が接するように立置きした4つのドラム缶3の上面を一括して覆うことができるカバー体4とそのエッジ部の対向的部位に伸縮部材5を通す凹溝6を設けてなる。この伸縮部材5は、両端に前記パレット2に引っ掛けフック金具F、F′を備えている。また、凹溝6はフック金具F、F′をパレット2に引っ掛けた伸縮部材5を係止するためのものである。
【0015】
前記カバー体4は、図2の如く、4本のドラム缶の上面に対応する4つの丸面部7と、その4本のドラム缶が接する中央域に対応できる四角面部8と、隣接する2つのドラム缶の外側の隙間に対応する4つのデルタ部9とを備えてなり、前記各丸面部7は前記四角面部8及びデルタ部9を底にして立ち上げ部(スカート状部)10を形成し、該立ち上げ部10の周囲に襞状の凹凸部11を連続形成し、かつ、前記四角面部8の中央部に透孔12を設けている。
【0016】
前記各丸面部7は、その立ち上げ部10が作られているため、4つのドラム缶の上面にキャップのようにすっぽり被すことができるようになっているが、パレット2上に立置された4つのドラム缶は、ドラムクリッカー(搬送機械)にて2本づつ把持して載せられることから、常に、4つのドラム缶が正確に位置決める訳でないため、前記各丸面部7は立ち上げ部10を含めてドラム缶のズレを吸収できるように多少大き目に作られている。
【0017】
前記四角面部8とデルタ部9は、前記丸面部7の立ち上げ部11の裾部と同レベルに沈んでいるため、特に、立ち上げ部11で4面が囲まれている四角面部8には雨水が溜まり易い。この雨水の溜まりを防止するために、その中央部に透孔12を設けて水(雨水)抜きができるようになっている。なお、各デルタ部9は外縁側が開放されているため、雨水が溜まることがない。勿論、各デルタ部9を外に向けて若干傾斜させてより排水し易くするようにしてもよい。
【0018】
前記透孔12は、前述の如く水抜き機能のほか、カバー体4の全体を持ち上げるときの手指を係止するための穴としての機能も有する。すなわち、カバー体4のエッジ部を脇に抱えつつ伸ばした手指を前記透孔12に掛けると、カバー体4の全体を容易に持ち上げることができ、該カバー体4をパレット2上の4つのドラム缶へ被せたり、ドラム缶から外したりする作業が容易にできるようになる。また、前記各デルタ部9の外縁には、前記伸縮部材5を係止するための凹溝6が設けられているが、該凹溝6は各デルタ部9の外縁に複数設けている。勿論、1個であってもよい。
【0019】
前記各丸面部7の上面は、その周縁部7aを残して中央部位を凹まして凹面7bとし、該凹面7bの中央域に周縁部7aより高くならない凸部7cを設けている。これら周縁部7aの凸と、凹面7bの凹と、凸部7cの凸とは、広い面積の各丸面部7に必要な強度を確保するために有効である。また、前記凹面7bの中央域に設けた各凸部7cは、その凸部7cの上面にさらに4つの凹み7c′を設けて補強している。この補強用の凹み7c′を設けたため、凸部7cは丸に十字の紋様に見える。この紋様をドラム缶の内容物の出荷会社又は当該内容物の製造者等の社票や品質マーク等に替えると、その出荷会社等の宣伝効果にも副次的に機能する。
【0020】
前記カバー体4は、プラスチック材料、たとえば、ポリプロピレン製のソリッドシート(たとえば3mm厚)をバキューム成形装置(図示せず)を用いて形成している。また、成形方法は前述の成形に限らず、インジェクション成形装置を用いて形成しても良い。このように、プラスチック材料にて形成することとしたのは全体の軽量化と、取扱性の向上及びその他の機能(たとえば安価等)のためである。勿論、ソリッドシートと発泡シートを貼り合わせたものを材料とすることもある。
【0021】
次に、本願カバー1の作用について説明する。まず、内容物が詰められたドラム缶の上面に内容物の種類、品質等や内容物責任者などを表示した貼票類が貼られ、キャップを封緘紙などで封緘するなどの出荷準備を整えたドラム缶3を、ドラムクリッカーにて2つづつ把持してパレット2上に立置きし、都合4つのドラム缶3がパレット2の上面の中央部に集中してセットする。同様にしてパレット2上に4つのドラム缶3のセットが次々と行われる。
【0022】
次いで、カバー体4のエッジ部を脇に抱えるようにして腕を伸ばし、四角面部8の中央部に設けられている透孔12に手指を係止させてカバー体4の全体を持ち上げてパレット2上の4つのドラム缶3の上面にキャップのようにすっぽり被せる。この場合、カバー体4は、プラスチック材料(たとえば、ポリプロピレン製のソリッドシート)を用いて形成してなるため、全体が軽量であり作業し易い。また、カバー体4を被せるに際し、パレット2上に立置きした4つのドラム缶が、正確に位置決めされていなくても、前記各丸面部7は立ち上がり部10を含めて多少大き目に作られているので確実にカバーできる。
【0023】
次いで、カバー体4によりカバーされた4つのドラム缶が乗っているパレットをホークリフトにより配送準備地(出荷までの期間を保管しておく平らな場所)まで運んで静置させる。同様にしてホークリフトにより運んで、パレットごと2段目、3段目の如く重ねて行くようにする。しかして、最上段のパレット2上の4つのドラム缶をカバーしたカバー体4に伸縮部材5が掛けられる。
【0024】
該伸縮部材5を掛けるに際し、全部の丸面部に掛けずとも、図1の如く、一つの丸面部7と、これに対向する二つ目の丸面部7に掛ければよい。その掛け作業は、まず、片方のフック金具Fを最上段のパレット2に引っ掛け、伸縮部材5を伸ばしつつ一つのデルタ部9の外縁に設けた凹溝6を通し、当該丸面部の上面の中心を通して対向するデルタ部9の凹溝6に係合させ、他方のフック金具F′をパレット2に引っ掛けるようにするとよい。次いで、伸縮部材5が掛けられた一つ目の丸面部に対向する二つ目の丸面部に同様に掛けるようにする。なお、1段目、2段目のカバー体4については、上段のパレットにより押えられるために伸縮部材5は掛ける必要がない。
【0025】
このようにして、幾つものドラム缶が野積みされる。この野積みされたドラム缶は風雨に晒されながら出荷を待つことになるが、伸縮部材5が掛けられた最上段のカバー体4は風などの影響により飛んだりズレ動いたりすることがないから,野積みが長時間に亘る場合でもドラム缶の上面額縁が錆びたり、内容物の種類や品質を表す貼票類や封緘紙などが剥がれたり文字が消えたりすることがない。したがって、出荷に際して汚れた上面を拭き取ったり錆びをペンキ等を塗って隠したり貼票類を貼り替えたりする面倒な作業が一切不要となる。
【0026】
また、野積み中に、前記丸面部7の立ち上げ部11の裾部と同レベルに沈んでいる四角面部8には透孔12を設けられているため、ここより水(雨水)が抜かれ、溜まることがない。勿論、ドラム缶の出荷には本願カバー1は取り外されるが、該本願カバー1は繰り返し利用されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願カバー1は、ガソリン、薬液その他の液状又は半流動体等の内容物を入れたドラム缶を、その出荷前にパレット上に立置きした状態で、野積みしておく場合において特に有効であり、出荷時の汚れ取り作業等が省けることから、産業上の利用可能性は極めて大きい上に、繰り返し利用が可能であってエコロジー(環境破壊防止)にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願カバーの使用状態を示す斜視図である。
【図2】本願カバーの平面図である。
【図3】図2におけるA−A線切断部端面図である。
【図4】図2におけるB−B線切断部端面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 本願カバー
2 パレット
3 ドラム缶
4 カバー体
5 伸縮部材
6 凹溝
7 丸面部
7a 周縁部
7b 凹面
7c 凸部
7c′ 凹み
8 四角面部
9 デルタ部
10 立ち上げ部
11 丸面部周囲の凹凸部
12 透孔
F、F′ フック金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット上に外周が接するように集束して立置きしたドラム缶の上面を同時に覆うことのできるカバー体を設け、該カバー体のエッジ部の対向的部位に、前記パレットに両端フック金具を係止させた伸縮部材を通す凹溝を設けたことを特徴とするドラム缶カバー。
【請求項2】
前記カバー体が、4本のドラム缶の上面に対応する4つの丸面部と、該4つのドラム缶の中央域に対応できる四角面部と、隣接する2つのドラム缶の外側の隙間に対応する4つのデルタ部とを備えてなり、前記各丸面部を四角面部及びデルタ部を底にして立ち上げ、該立ち上げ部の周囲に凹凸部を連続して形成し、かつ、前記四角面部の中央部に透孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のドラム缶カバー。
【請求項3】
前記各丸面部が、周縁を残して中央部に凹面を設け、該凹面の中央域に周縁より高くならない凸部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のドラム缶カバー。
【請求項4】
前記カバー体が、プラスチック材料により形成してなることを特徴とする請求項1〜3のうちの1に記載のドラム缶カバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−132330(P2010−132330A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311639(P2008−311639)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(593099001)高久産業株式会社 (2)
【出願人】(508360202)日精プラステック株式会社 (3)
【出願人】(593140255)サンビック株式会社 (12)
【Fターム(参考)】