説明

ドリルマシン

【課題】 過度に速い送り操作により引き起こされるドリルユニットの過負荷状態が比較的単純な手段で避けられ得るようにする。
【解決手段】 ドリルマシン、とくにコアドリルマシンが、スタンド(12)を含み、そこに往復台(14)がガイドされていて、これは駆動部(30)を用いてガイド(28)に沿って作業方向に移動可能であり、往復台(14)にモータ(18)により駆動されるスピンドルを有するドリルユニット(16)が受容されていてドリル工具(20)を駆動し、駆動部(30)がステッパモータ(32)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンドに往復台がガイドされていて、往復台は駆動部を用いてガイドに沿って作業方向に移動可能であり、ドリルユニットが往復台に支持されていてモータにより駆動されるスピンドルを含んでドリル工具を駆動するドリルマシン、とくにコアドリルマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
DE−A−4 019 515から磁気スタンドドリルユニットが公知であり、これはフレームと、工作物に磁気的に装着する磁気スタンドを含み、更にドリルモータとフレームに載置されたDCモータとして構成されて工作物に向けてドリルを送るとともにそこから戻す送りモータを有する電動ドリルマシンを含み、制御部が設けられて工作物への穴ドリル操作の完了を検知するための検知手段を含み、更に送りモータの動作方向を逆転するための送り逆転モータ手段を含み、更に過負荷状態を検知したときにドリルモータと送りモータを非作動状態にする安全スイッチング手段を含む。
【0003】
このような制御部を使用することにより、過負荷状態が避けられ得るが、その構成は比較的高価であり複雑である。
【0004】
DE−A−3 708 038から公知のドリルマシンにおいて、ドリルヘッドが設けられていて、駆動モータが駆動操作のためにドリルヘッドと連結され、出力供給手段が駆動モータに出力を供給し、及び送りモータが直巻電動機として構成されて工作物に対してドリルヘッドを移動している。
【0005】
また、過負荷状態を避けるため、制御手段が設けられていて、駆動モータに供給される電流を検知するための検知手段と、ドリルヘッドが工作物に係合していないときに検知された電流レベルを蓄積するための蓄積手段を有し、更に実際の電流レベルと蓄積された電流レベルに応じてドリル操作が完了されたか否かを決定するための検知手段を含む。
【0006】
このドリルマシンの構成もまた、比較的高価であり複雑である。
【特許文献1】DE−A−4 019 515
【特許文献2】DE−A−3 708 038
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、最初に述べられたドリルマシンを改良し、過度に速い送り操作により引き起こされるドリルユニットの過負荷状態が比較的単純な手段で避けられ得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は請求項1に記載されたドリルマシンで達成される。
【0009】
こうして本発明の目的は十分に達成される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ステッパモータを使用することにより、過度に速い送り動作による過負荷が驚くべき単純な方式で避けられる。直巻モータと対照的に、送りモータの過負荷状態は、その構成ゆえに起こり得ない。対照的に、ステッパモータの送り動作は、一定の抵抗に達したときに制限され、この結果としてドリルユニットの駆動も過度に速い送り動作により過負荷され得ない。
【0011】
本発明の有利な発展によれば、駆動部が、送り動作を周期的に中断するように構成されている。
【0012】
加えて、この構成は、駆動部が、往復台を作業方向と反対に周期的に戻すように構成されているという点で更に改良されて良い。
【0013】
これらの手段により、金属ドリル加工の間に生成されたチップがときどき破壊されコアドリル穴から放出されることが達成され得る。このようにしてドリル操作は改良され、鋭いチップにより引き起こされる問題と危険が避けられる。
【0014】
本発明の別の発展によれば、駆動部が、中間シャフトと連結されることが可能であり、これを用いて駆動部が駆動され得る。
【0015】
好ましくは、この目的でウォームギアペアが設けられ、これを用いてステッパモータが中間シャフトと連結され得る。
【0016】
これらの構成により、送り操作の適当な減少が保証され、単純な構成が可能とされる。
【0017】
この構成の追加的な発展によれば、ウォームギアペアが、中間シャフトを介して、スタンドに設けられた歯ロッドと係合するピニオンと連結され得る。
【0018】
このようにして、ステッパモータの送り動作が、適当な方式で、スタンドに沿った往復台の送り操作に伝達される。
【0019】
本発明のもうひとつの改良によれば、中間シャフトにプランジャが設けられていて、これが、駆動部の駆動動作がプランジャを用いて中間シャフトに伝達される第1位置と、駆動部から中間シャフトへの回転動作の伝達が無い第2位置との間で、軸心方向に移動可能である。
【0020】
ここで好ましくはレバーが中間シャフトと連結されていて中間シャフトの手動回転を可能にする。
【0021】
これにより、ステッパモータにより生成された駆動動作に加えて、穴あけ位置に向けた往復台の素早い手動の送り動作が可能にされる。その後、レバーを用いて、ステッパモータにより生成された手動と自動の送り動作間のスイッチングが、プランジャを軸心方向に移動させることにより作用され得る。
【0022】
この目的のため、レバーが、互いに関して120°ずらされた3つの関節式のグリッピング部分を有するスターハンドルとして構成されていて、その複数の端部が、グリッピング部分を傾斜させることにより、プランジャの端部と係合し、これにより第1位置と第2位置との間でプランジャの軸心方向のシフトを可能にして良い。
【0023】
ここで、好ましくはウォームギアペアが、ステッパモータにより駆動されてウォームギアホイールと係合するウォームギアネジを含み、これが中間シャフトと連結されて後者を複数のローラボディを用いて回転し得る。
【0024】
ここで好ましくは、プランジャと中間シャフトの間に圧力ピースが保持されていて、これを用いて複数のローラボディがバイアスされてウォームギアホイールに設けられた複数の受容凹所と係合する。
【0025】
これらの手段により、レバーを介して手動で生成された送り動作の間とステッパモータにより生成された自動的な送り動作の間で、単純なスイッチングが可能にされる。スイッチングのために、レバー又はレバーの複数のグリッピング部分のうちの一部が傾斜されるだけでよい。
【0026】
この構成の更なる発展によれば、プランジャがカラーを含み、これを用いて、中間シャフトを受容するための第1位置の間と中間シャフトが駆動部によりずっと支持されない第2位置の間で、複数のローラボディが移動可能である。
【0027】
ここで、カラーと中間シャフトの停止表面の間にバネエレメントが保持されていて、プランジャを第2位置にバイアスしても良い。
【0028】
本発明のもう一つの好ましい発展によれば、ドリルユニットが、ドリル工具を駆動するための3速ギアを含む。
【0029】
これによりドリル工具速度を種々の操作状況に改良して適応させること可能となる。
【0030】
本発明の上記された構成及び以下に説明される構成は、与えられた組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又はそれら自身でも本発明の範囲から逸脱することなく使用され得る。
【0031】
本発明の更なる構成及び利点は、図面を参照した、以下の好ましい典型的な実施例の説明から明らかとなる。
【実施例】
【0032】
図1において、本発明によるドリルマシンは、全体的に符号10で描かれている。
【0033】
本発明によるドリルマシン10は、コアドリルマシンとして構成されていてスタンド12を含み、ドリルユニット16が、ガイド28に沿って駆動部30を用いて移動され得る往復台14に受容されている。
【0034】
ドリルユニット16は、ユニバーサルモータとして構成されたモータ18を含み、これはスピンドル22を駆動して3速ギア24を用いてドリル工具20を駆動する。異なるギア比を調節するために、選択レバー26がドリルユニット16のハウジングに回転可能に受容されている。
【0035】
ドリルユニット16又は往復台14をそれぞれ送るために、往復台14に歯ロッド34が受容されていて、これは、後により詳細に説明されるように、スタンド12に回転可能に受容されるピニオン36を用いて駆動され得る。
【0036】
ピニオン36は、ステッパモータ32を含む駆動部30により自動的に駆動されることが可能であり、又はスターハンドル46を用いて手動で駆動されることも可能である。ステッパモータ32による自動送り操作の間とスターハンドル46を用いた手動送り操作の間のスイッチングを可能にするため、軸心方向に移動可能なプランジャ62が中間シャフト38と連結されている。スターハンドル46は、互いに関して120°ずれて配置され、及びピボット可能に配置された3つのグリッピング部分48を含み、その共通の回転のため中間シャフト38と連結されている。図2から見ることができるのは、グリッピング部分48、52が、それぞれその端部49及び53において複数のピン56を用いて関連付けられた複数の支持部54にピボット可能に保持されることである。グリッピング部分48及び52のそれぞれの端部49及び53は、プランジャ62の軸端70とそれぞれ協働する。グリッピング部48、50、52のうちの1つを傾斜させることにより、プランジャ62は図2において二重矢印で示されるような第1位置の間及び第2位置の間で、軸心方向にシフトされ得る。両方の位置において、スターハンドル46の又は個々のグリッピング部分48、50、52のそれぞれの回転動作は、中間シャフト38に伝達され、こうしてドリルユニット16の移動に伝達される。ステッパモータ32が作動されるとき、図2に示されるプランジャ62の第2位置においては、ステッパモータ32により生成される送り動作が中間シャフト38に伝達されないが、対照的に第1位置においては、中間シャフト38はずっと支持される。
【0037】
ステッパモータ32は、ウォームギアペア40を用いて中間シャフト38と連結され得る。この目的のために、ステッパモータ32によりウォームギアネジ42が駆動され、これは中間シャフト38に回転可能に保持されたウォームギアホイール44と係合する。ウォームギアホイール44の回転動作を中間シャフト38に伝達するため、ウォームギアホイール44は、複数のボールとして構成された複数のローラボディ66により係合される複数の受容凹所76を含み、ウォームギアホイール44と中間シャフト38の間の積極的な接続を提供する。図2の第2位置における複数のローラボディ66が単にプランジャ62の周辺の溝で公転する間、プランジャ62の第1位置において、複数のローラボディ66は、バネバイアスされた圧力ピース78を用いて、それらが中間シャフト38との積極的な係合のためにウォームギアホイール44の受容凹所78によりずっと支持されるまで、放射方向外側に押圧され得る。こうして、もしプランジャ62が第1位置にあるとき、ステッパモータ32により出力されてウォームギアホイール44に伝達される回転動作は、中間シャフトの回転動作に伝達される。
【0038】
対照的に、プランジャ62がその第2位置にあるときに、中間シャフト38はスターハンドル46を用いて手動で回転されることだけが可能であり、これがドリルユニット16の手動調節、そしてそれゆえ、とくに穴あけされるべき工作物に向けた手動の送り動作を可能にする。その後、複数のローラボディ66が圧力ピース78を用いて受容凹所76に向けてバイアスされて、そこと係合して中間シャフト38とこうしてピニオン36をずっと支持し得るまで、グリッピング部分48、50、52のうちの1つをピボットさせることによりプランジャ62は第1位置に移動される。
【0039】
ドリルユニット16を自動的に送るためのステッパモータ32として構成される駆動部は、起こり得る過負荷状態無く、ドリルユニット16の自動的な送り動作を可能にする。
【0040】
またプランジャ62が、どのようにして2つのベアリング58、60を用いて、中間部分72を介して、スタンド12に装着されかつステッパモータ32に接続されるハウジング部分74に、回転可能に保持されるかが、図2から理解できる。
【0041】
図3及び4において、ドリルマシンの修正された態様が部分的に描かれていて、全体として10aで示されている。ここで、対応する部分には同様な参照符号が使用されている。
【0042】
ウォームギアペアの回転動作が中間シャフト38の回転動作に伝達される同調位置の間と同調の無い位置の間でのスイッチングの原理が、不変のままである。図1及び2による態様と対照的に、今や中間シャフト38をウォームギアペア40の別の側に向けてバイアスするスプリングエレメント68が、ピニオン36から離れた方に向いた中間シャフト38の停止表面82の間及び中間シャフト38のカラー80の間に保持される。バネエレメント68は、プランジャ62を図4に示された位置にバイアスする。この位置において、スターハンドルの複数のグリッピング部分48が傾斜され、複数のローラボディ66がウォームギアホイール44に設けられた複数の凹所76に係合し、こうしてウォームギアホイール44と中間シャフト38の間の同調を可能にしている。
【0043】
対照的に、図3に描かれたように、プランジャ62の外表面にある複数のローラボディ66は、カラー80で休止し、ウォームギアホイール44と中間シャフト38の間の同調が無いようになっている。この位置において、スターハンドルの複数のグリッピング部分48はほぼ垂直である。各グリッピング部分48の端部において、受容凹所82が設けられていて、これは受容操作ためにプランジャ62の端部においてカラー70と協働する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明によるドリルマシンの斜視図であり、理解の容易化のため、送り駆動部の回転動作を往復台に伝達するための中間シャフトの領域で外側部分が切除されている。
【図2】ウォームギアペアの領域に示される中間シャフトを、手動駆動操作のための関連付けられたレバーの複数のグリッピング部分とともに示す拡大部分断面図である。
【図3】図2の構成に関して修正された構成において、ウォームギアペアの領域で示された中間シャフトの拡大断面図であり、ウォームギアペアと中間シャフトの間に同調が無い位置で示されている。
【図4】図3による実施例の修正された位置であり、そこではウォームギアペアと中間シャフトの間の同調が無い。
【符号の説明】
【0045】
10 ドリルマシン
12 スタンド
16 ドリルユニット
18 モータ
20 ドリル工具
22 スピンドル
24 3速ギア
26 選択レバー
28 ガイド
30 駆動部
32 ステッパモータ
34 歯ロッド
36 ピニオン
38 中間シャフト
40 ウォームギアペア
42 ウォームギアネジ
44 ウォームギアホイール
46 スターハンドル
48、50、52 グリッピング部分
54 支持部
58、60 ベアリング
62 プランジャ
66 ローラボディ
70 軸端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンド(12)に往復台(14)がガイドされていて、往復台(14)は駆動部(30)を用いてガイド(28)に沿って作業方向に移動可能であり、ドリルユニット(16)が往復台(14)に支持されていてモータ(18)により駆動されるスピンドルを含んでドリル工具(20)を駆動するドリルマシン、とくにコアドリルマシンにおいて、駆動部(30)がステッパモータ(32)を含むことを特徴とするドリルマシン。
【請求項2】
駆動部(30)が、送り動作を周期的に中断するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドリルマシン。
【請求項3】
駆動部(30)が、往復台を作業方向と反対に周期的に戻すように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリルマシン。
【請求項4】
駆動部(30)が、中間シャフト(38)と連結されることが可能であり、これを用いて往復台(28)が駆動され得ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のドリルマシン。
【請求項5】
ステッパモータ(32)が、ウォームギアペア(40)を用いて中間シャフト(38)と連結され得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドリルマシン。
【請求項6】
ウォームギアペア(40)が、中間シャフト(38)を介して、往復台(14)に設けられた歯ロッド(34)と係合するピニオン(36)と連結され得ることを特徴とする請求項4及び5のいずれかに記載のドリルマシン。
【請求項7】
駆動部(30)の駆動動作がプランジャ(62)を介して中間シャフト(38)に伝達される第1位置と、駆動部(30)から中間シャフト(38)への回転動作の伝達が無い第2位置との間で、中間シャフト(38)に支持されているプランジャ(62)が軸心方向に移動可能であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のドリルマシン。
【請求項8】
手動回転を可能にするレバー(46)が、中間シャフト(38)と連結されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のドリルマシン。
【請求項9】
レバー(46)が、3つの関節式のグリッピング部分(48、50、52)を有するスターハンドルとして構成されていて、その複数の端部(49、53)が、グリッピング部分(48、50、52)を傾斜させることにより、プランジャ(62)の端部(70)と係合し、これにより第1位置と第2位置の間でプランジャ(62)の軸心方向のシフトを可能にすることを特徴とする請求項8に記載のドリルマシン。
【請求項10】
ウォームギアペア(40)が、ステッパモータ(32)により駆動されてウォームギアホイール(44)と係合するウォームギアネジ(42)を含み、これが中間シャフト(38)と連結されて後者を複数のローラボディ(66)を用いて回転し得ることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のドリルマシン。
【請求項11】
プランジャ(62)と中間シャフト(38)の間にバネエレメント(68)が保持されていて、これを用いて、第1位置にあるときに、複数のローラボディ(66)がバイアスされて中間シャフト(38)を積極的に受容するウォームギアホイール(44)に設けられた複数の受容凹所(76)に係合することを特徴とする請求項10に記載のドリルマシン。
【請求項12】
プランジャ(38)がカラー(80)を含み、これを用いて、中間シャフト(38)を受容するための第1位置の間と中間シャフト(38)が駆動部によりずっと支持されない第2位置の間で、複数のローラボディ(66)が移動可能であることを特徴とする請求項10又は11に記載のドリルマシン。
【請求項13】
カラー(80)と中間シャフト(38)の停止表面(82)の間にバネエレメント(68)が保持されていて、プランジャ(62)を第2位置にバイアスすることを特徴とする請求項12に記載のドリルマシン。
【請求項14】
ドリルユニット(16)が、ドリル工具(20)を駆動するための3速ギア(24)を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のドリルマシン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15479(P2006−15479A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−179243(P2005−179243)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(594106092)ツェー ウント イー フェイン ゲーエムベーハー (11)
【Fターム(参考)】