説明

ドレンパン

【課題】車両用空気調和装置に搭載されるドレンパンにおいて、中央部に配置された排出口の片側から一気に凝縮水が流れ込むことに起因する異音の発生を抑制する。
【解決手段】空気を冷却する冷却手段の下方に配置され、当該冷却手段から落下する凝縮水を受けると共に外部に導出する車両用空気調和装置のドレンパンであって、上記凝縮水Xを受ける受水領域Rの底部3の中央部に配置される排出口4と、該排出口4を通過して上記受水領域Rを分割する分割線B上に上記底部3から立設されるリブ5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレンパンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空気調和装置は、周知のようにエバポレータ等の冷却装置にて冷風を生成している。このような冷風の生成にあたり、空気中に含まれる水分が凝縮し、いわゆる凝縮水が発生する。凝縮水は、冷却装置に付着するように発生し、いずれ冷却装置の下方に落下する。そして、車両用空気調和装置は、上述のような凝縮水を受けて外部に排出するためのドレンパンを備えている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−291701号公報
【特許文献2】特開平8−258556号公報
【特許文献3】特開平10−109522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用空気調和装置では、製造時の型抜き等の制約からドレンパンに設置される排出口をドレンパンの中央部に配置する必要がある場合がある。
【0005】
このようなドレンパンの中央部に配置される排出口は、両側から凝縮水が流れ込む。このため、排出口の形状や排出口とドレンポートとの接続関係が、排出口の両側から凝縮水が流れ込むことを前提として設計されている。具体的には、排出口の形状やドレンポートとの接続関係は、例えば排水に起因する異音が発生しないように設計されている。
しかしながら、車両は移動するものであるため、車両の移動状況においては、凝縮水がドレンパンの片側に集まり、その後、片側から排出口に流れ込む場合がある。このような場合には、凝縮水が排出口の片側から一気に流れ込むこととなり、排水に起因する異音が発生する場合があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、車両用空気調和装置に搭載されるドレンパンにおいて、中央部に配置された排出口の片側から一気に凝縮水が流れ込むことに起因する異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、空気を冷却する冷却手段の下方に配置され、当該冷却手段から落下する凝縮水を受けると共に外部に導出する車両用空気調和装置のドレンパンであって、上記凝縮水を受ける受水領域の底部の中央部に配置される排出口と、該排出口を通過して上記受水領域を分割する分割線上に上記底部から立設されるリブとを備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記リブが、少なくとも上記排出口の送風方向下流側に設けられているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記リブが上記凝縮水の流れ方向に対して傾斜して設けられているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、ドレンポートが上記排出口に対して傾斜して接続される場合に、上記リブが、上記ドレンポートの内壁面が上記底部に対して鋭角に接続される領域に相対的に遠く、上記ドレンポートの内壁面が上記底部に対して鈍角に接続される領域に相対的に近く設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排出口を通過して受水領域を分割する分割線上に立設されるリブによって、凝縮水が受水領域において最初に落下した領域から他の領域に流れ込むことが抑止される。
つまり、本発明によれば、凝縮水が受水領域の片側に集まることを抑制することができ、結果として、排出口の片側から一気に凝縮水が流れ込むことを抑制することができる。
したがって、本発明によれば、中央部に配置された排出口の片側から一気に凝縮水が流れ込むことに起因する異音の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態のドレンパンを備える車両用空気調和装置の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のドレンパンを備える車両用空気調和装置の水平断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態のドレンパンの斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態のドレンパンを模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態のドレンパンを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係るドレンパンの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のドレンパン1を備える車両用空気調和装置S1(HVAC:Heating Ventilation Air Conditioning)のドレンパン1を含む縦断面図である。また、図2は、車両用空気調和装置S1の水平断面図であり、ドレンパン1が含まれる領域のみを抽出した図である。
【0012】
車両用空気調和装置S1は、室内に対して調和空気を供給するものであり、図1及び図2に示すように、ケースCと、エバポレータEと、ドレンパン1とを備えている。
ケースCは、車両用空気調和装置S1の外形を形作ると共に内部に空気の流路やエバポレータE(冷却装置)等を収容する。
エバポレータEは、空気を冷却するものであり、図2に示す送風方向に流れる空気中に晒されるように配置されている。なお、本実施形態においては、図2に示す送風方向は車両の後ろから前に向かう方向と略一致されている。
これらのケースC及びエバポレータEは、周知の車両用空気調和装置が備えるものと同様であるため、これ以上の説明は省略する。
また、本実施形態の車両用空気調和装置S1は、従来の車両用空気調和装置と同様に、空気を加熱するヒータコア、調和空気を排出する吹出口、この吹出口の開閉を行うダンパ、調和空気の温度を調節するエアミックスダンパ等を備えているが、これらの構成部材は周知の構成と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0013】
本実施形態のドレンパン1は、図1及び図2に示すように、エバポレータEの下方に配置され、エバポレータEから落下する凝縮水を受けると共に外部に導出するものである。このドレンパン1は、例えば振動を吸収する発砲ゴム等によって形成されており、ケースCとエバポレータEとの間に配置されてインシュレータとして機能するように構成されている。
【0014】
図3は、本実施形態のドレンパン1の斜視図である。また、図4は、本実施形態のドレンパン1を模式的に示した平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態のドレンパン1は、側壁2と、底部3と、排出口4と、リブ5とを備えている。
【0015】
側壁2は、受水領域Rを囲んで形成される壁部である。つまり、本実施形態のドレンパン1は、側壁2で囲まれた領域を受水領域Rとし、当該受水領域RにおいてエバポレータEから落下する水滴を受ける。
【0016】
底部3は、受水領域Rの中央部に配置されており、受水領域Rで受けた凝縮水が集まる領域であり、受水領域Rの中で最も低位な位置に形成されている。
【0017】
排出口4は、底部3に集まった凝縮水を外部に排出するためのものであり、底部3の中央部に配置され、結果として受水領域Rの中央部に配置されている。なお、本実施形態(本発明)における中央部とは、その領域の中心のみを指すものではなく、その領域の端部を除いた領域を指す。
そして、本実施形態のドレンパン1においては、排出口4は、図4に示すように、送風方向に直交する方向に長い矩形状に形状設定されている。
なお、図1に示すように、上記排出口4には、下方からドレンポート10が傾斜して接続されている。より具体的には、ドレンポート10は、助手席側から延びて排出口4と接続されており、排出口4の助手席側の端部4aにおいて内壁面10aが底部3に対して鋭角に接続されており、排出口4の運転席側の端部4bにおいて内壁面10aが底部3に対して鈍角に接続されている。
【0018】
リブ5は、排出口4を通過して受水領域Rを分割する分割線B上に底部3から立設されている。なお、分割線Bは、仮想的に設けられるものであり、排出口4を通過する条件さえ満たせば任意に設定することができ、また直線である必要はない。
リブ5は、上記送風方向において、排出口4の下流側に設けられる下流側リブ5aと、排出口4の上流側に設けられる上流側リブ5bとによって構成されている。そして、これらのリブ5bは、図4に示すように、凝縮水Xの流れ方向に対して傾斜して設けられている。
【0019】
また、リブ5は、図4に示すように、ドレンポート10の内壁面10aが底部3に対して鈍角に接続される排出口4の端部4b寄りに設けられている。つまり、本実施形態のドレンパン1においては、リブ5は、ドレンポート10の内壁面10aが底部3に対して鋭角に接続される領域である排出口4の端部4aに相対的に遠く、ドレンポート10の内壁面10aが底部3に対して鈍角に接続される領域である排出口4の端部4bに相対的に近く設けられている。
【0020】
上述のような車両用空気調和装置S1が作動すると、供給される空気がエバポレータEによって冷却される。この結果、エバポレータEに凝縮水が付着し、その後凝縮水は、エバポレータEから落下する。そして、落下した凝縮水は、本実施形態のドレンパン1の受水領域Rに受け止められ、底部3に集まってから排出口4を介して外部に排出される。
【0021】
ここで、本実施形態のドレンパン1においては、リブ5が排出口4を通過して受水領域Rを分割する分割線B上に立設されることによって、受水領域Rが助手席側と運転席側とに分断されている。このため、リブ5で堰き止められることによって、受水領域Rの助手席側に落下した凝縮水Xが運転席側に流れ込むことが抑止され、受水領域Rの運転席側に落下した凝縮水Xが助手席側に流れ込むことが抑止される。
このように、本実施形態のドレンパン1によれば、凝縮水Xが受水領域Rの片側に集まることを抑制することができ、結果として、排出口4の片側から一気に凝縮水Xが流れ込むことを抑制することができる。
したがって、本実施形態のドレンパン1によれば、中央部に配置された排出口4の片側から一気に凝縮水Xが流れ込むことに起因する異音の発生を抑制することが可能となる。
【0022】
また、本実施形態のドレンパン1においては、リブ5(下流側リブ5a)が排出口4の送風方向下流側に設けられている。
エバポレータEから落下する凝縮水Xは、エバポレータEを通過する空気の流れに流されることによって排出口4の下流側に溜まり易くなる。このため、本実施形態のドレンパン1のように、排出口4の下流側にリブ5を設けることによって、効率的に凝縮水Xを堰き止めることが可能となる。
【0023】
また、本実施形態のドレンパン1においては、リブ5が凝縮水Xの流れ方向に対して傾斜して設けられている。
このため、リブ5に堰き止められた凝縮水Xをスムーズに排出口4へ案内することができる。
【0024】
また、本実施形態のドレンパン1では、排出口4にドレンポート10が傾斜して接続されている。このように排出口4にドレンポート10が傾斜して接続されていると、ドレンポート10の内壁面10aが底部3に対して鋭角に接続される領域である排出口4の端部4aから排出口4に流れ込んだ凝縮水Xによってドレンポート10内に水膜が形成されやすくなる。このような水膜は、ドレンポート10内の差圧によって破裂し、異音の原因となる。
これに対して、本実施形態のドレンパン1においては、リブ5が、ドレンポート10の内壁面10aが底部3に対して鋭角に接続される領域である排出口4の端部4aに相対的に遠く、ドレンポート10の内壁面10aが底部3に対して鈍角に接続される領域である排出口4の端部4bに相対的に近く設けられている。このため、リブ5によって堰き止められた凝縮水Xは、リブ5に案内されて端部4b寄りに流れ込みやすくなる。このため、ドレンポート10内における水膜の発生を抑制することができ、さらに異音の発生を抑制することが可能となる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0026】
図5は、本実施形態のドレンパン20を模式的に示す平面図である。この図に示すように、本実施形態のドレンパン20は、送風方向に沿った分割線Bが設定されており、リブ30が凝縮水Xの流れ方向に対して直交して設けられている。
【0027】
このような構成を有する本実施形態のドレンパン20においても、上記第1実施形態のドレンパン1と同様に、リブ30で堰き止められることによって、受水領域Rの助手席側に落下した凝縮水Xが運転席側に流れ込むことが抑止され、受水領域Rの運転席側に落下した凝縮水Xが助手席側に流れ込むことが抑止される。このため、本実施形態のドレンパン20も第1実施形態のドレンパン1と同様に、中央部に配置された排出口4の片側から一気に凝縮水Xが流れ込むことに起因する異音の発生を抑制することが可能となる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態においては、本実施形態のドレンパン1がインシュレータとして機能する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ケースCの下部を成型することによって本発明のドレンパンとすることも可能である。
【0030】
また、上記実施形態においては、送風方向における排出口4の下流側に設けられたリブ5,30と、排出口4の上流側に設けられたリブ5,30とが、離間している構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、送風方向における排出口4の下流側に設けられたリブ5,30と、排出口4の上流側に設けられたリブ5,30とが、排出口4上で繋がっている構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1,20……ドレンパン、3……底部、4……排出口、4a……端部(ドレンポートの内壁面が底部に対して鋭角に接続される領域)、4b……端部(ドレンポートの内壁面が底部に対して鈍角に接続される領域)、5,30……リブ、5a……下流側リブ、5b……上流側リブ、B……分割線、R……受水領域、X……凝縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を冷却する冷却手段の下方に配置され、当該冷却手段から落下する凝縮水を受けると共に外部に導出する車両用空気調和装置のドレンパンであって、
前記凝縮水を受ける受水領域の底部の中央部に配置される排出口と、
該排出口を通過して前記受水領域を分割する分割線上に前記底部から立設されるリブと
を備えることを特徴とするドレンパン。
【請求項2】
前記リブは、少なくとも前記排出口の送風方向下流側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のドレンパン。
【請求項3】
前記リブが前記凝縮水の流れ方向に対して傾斜して設けられていることを特徴する請求項1または2記載のドレンパン。
【請求項4】
ドレンポートが前記排出口に対して傾斜して接続される場合に、前記リブは、前記ドレンポートの内壁面が前記底部に対して鋭角に接続される領域に相対的に遠く、前記ドレンポートの内壁面が前記底部に対して鈍角に接続される領域に相対的に近く設けられていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のドレンパン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−20520(P2011−20520A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165950(P2009−165950)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】