説明

ドレーン構造およびドレーン構造の施工方法

【課題】法面の傾斜の大小を問わず施工を容易に行うことができ確実な排水が可能なドレーン構造を提供する。
【解決手段】堤体10の裏法面12の内部に埋設されたドレーン構造は、金網からなる3つの籠31,32,33からなる。これらの籠31,32,33の中には割栗石23,23,…が充填されている。このドレーン構造は裏法面12と略平行な傾斜上面35を備えており、施工が容易で種々の傾斜に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレーン構造およびドレーン構造の施工方法に関し、特に斜面である地盤の内部に埋設され、該地盤内部に浸透した浸透水を斜面の下方に設置された排水路に排出するドレーン構造およびドレーン構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山腹や堤防、海浜などの傾斜地では降雨などにより浸透した水のため土砂崩れが発生する場合がある。例えば、河川の堤防では、図13に示すように、洪水時などに降雨や河川14から浸透する水によって堤体内浸潤面16が堤防10の裏法12側(河川側とは反対側の斜面)の法尻(斜面の下端)よりも高くなって漏水したり、浸透浸食されて崩落が生じたりする。このような漏水・浸透浸食対策の一つにドレーン工がある。ドレーン工は、例えば堤防の裏法尻に砂利などによる排水層を作って、堤体内浸潤面16を裏法尻よりも低くして、排水層から浸透水を排水する構造物である。
【0003】
特許文献1には、ネットパイプなどの透水パイプを縦横格子状に連通させて構成した格子状透水配水管を堤防の裏法側などの内部に、法面に沿って傾斜状に配設してその下端を排水管によって外部に導き、該格子状透水排水管を構成する横メンバーである各段の横方向透水パイプに適宜間隔をおいて絡合繊維の透水マットをそれぞれ巻装し、かつその各巻き余端を堤体内方に向かって横に長く延ばして誘水マット帯部をそれぞれ形成してなるドレーン構造が記載されている。
【0004】
特許文献2には、堤体の川裏側の基礎地盤の上に設けられ、浸透水を通す粗粒のフィルター材が鋼製組立網に充填された充填篭によって形成されていて、堤体の浸透水を流入させる篭製ドレーン部と、堤体の裏法尻に設けられた堤脚水路と、浸透水を通す粗粒のフィルター材によって構成され、篭製ドレーン部の下部と堤脚水路との間を結び、上記篭製ドレーン部に流入した浸透水を堤脚水路に導くドレーン層とを備え、ドレーン層は篭製ドレーン部の高さよりも低い厚さになっており、ドレーン層が堤体土によって覆われている堤防のドレーン構造が記載されている。
【0005】
また、河川の堤防のドレーン構造ではないが、特許文献3には海浜に遡上する波を効率よく排水して地下水位を下げることで海浜を安定化させるドレーン構造が記載されている。
【特許文献1】実開昭57−60917号公報
【特許文献2】特開2002−121720号公報
【特許文献3】特開平7−207639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているドレーン構造は、浸透水が流れる部分がパイプであるため、浸透水の量が多くなったときに全てを排出できず、漏水や浸透浸食が生じてしまう。また、パイプは詰まりやすいため、度々パイプ交換をする必要があり、工事費用が大きなものとなってしまう。
【0007】
一方、特許文献2に記載されているドレーン構造は、篭製ドレーン部と堤脚水路とを結ぶドレーン層が必要なため、長いなだらかな法面でないと施工することが難しく、適用できる法面が限られるとともに、堤脚水路から河川側への掘削距離を長くする必要があり、工事が大がかりなものになってしまう。また、特許文献3に記載されているドレーン構造は、海から浜に上がった海水を地下を通して再び海に戻すものであり、河川の堤防には応用が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、法面の傾斜の大小を問わず施工を容易に行うことができ確実な排水が可能なドレーン構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のドレーン構造は、斜面である地盤の内部に埋設され、該地盤内部に浸透した浸透水を斜面の下方に設置された排水路に排出するドレーン構造であって、前記浸透水を通す粗粒のフィルター材が充填されている金網からなる籠により形成されていて、前記浸透水を前記排水路に導く籠製ドレーン部を備えており、前記籠製ドレーン部は、前記籠が複数積み上げられて構成されているとともに土砂に覆われており、前記籠は、斜面の下端から斜面に向かって手前側に正面金網を備えており、積み上げられた前記複数の籠の前記正面金網のそれぞれは、下側に置かれた籠ほど斜面の下端から斜面に向かって手前側に配置されており、前記複数の籠の各前記正面金網の上辺と連結されているとともに上記斜面とほぼ平行である傾斜上面が、前記籠製ドレーン部の上面に金網により形成されている構成とした。このような構成を有していることにより、金網からなる籠の中に充填された粗粒のフィルター材を大量の浸透水が確実に流れていく。また、傾斜上面と地盤の斜面とが略平行であって、斜面の土砂の保持が確実に行われる。
【0010】
本発明のドレーン構造の施工方法は、斜面である地盤の内部に埋設され、該地盤内部に浸透した浸透水を斜面の下方に設置された排水路に排出するドレーン構造の施工方法であって、前記ドレーン構造は、金網からなる少なくとも2つの籠を有しており、当該籠は斜面の下端から斜面に向かって手前側に配置される溶接金網からなる正面金網を備えており、前記斜面下方の略水平である基礎地盤の上に第1の前記籠を設置する工程と、前記第1の籠に粗粒のフィルター材を充填する工程と、前記第1の籠の上に第2の前記籠を、第2の籠の正面金網が第1の籠の正面金網と略平行かつ第1の籠の正面金網よりも斜面の下端から斜面に向かって奥側に位置するように設置する工程と、 前記第2の籠に粗粒のフィルター材を充填するとともに、前記第1の籠の上方であって第2の籠の正面金網の手前の位置に粗粒のフィルター材を載せる工程と、前記第1の籠の上方であって第2の籠の正面金網の手前の位置に載せた粗粒のフィルター材の上に菱形金網を載せて、前記第1および第2の籠の正面金網の上辺に前記菱形金網を固定する工程と、前記ドレーン構造の上に土砂を被せる工程とを含む。
【0011】
ここで、粗粒のフィルター材は、斜面である地盤を構成している土砂よりも粒径が大きいものであって、例えば礫、石、岩石の破砕物、コンクリートの破砕物などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドレーン構造は、金網からなる籠が複数積み重ねられて構成されている籠製ドレーン部を有し、前記籠には粗粒のフィルター材が充填されているので、浸透水を確実に排水することができ、また、籠製ドレーン部の上面に、金網からなり複数の籠の各正面金網の上辺と連結されて斜面とほぼ平行となっている傾斜上面を形成しているので、斜面の傾斜に応じて重ねられた籠の正面金網間の距離を調整すれば要求される様々な傾斜角度に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について説明をする前に、金網籠を用いた別のドレーン構造について本願発明者らは考察したのでこの考察について説明を行う。なお、ドレーン構造において重要なポイントは、堤体長手方向に垂直な断面における断面積の大きさ(以下、容量の大小という)と、排水路とほぼ同じレベルのドレーン構造の最も河川に近い側(以下、かかと部という)がどれだけ河川に近いかという点であるので、これらについても説明する。
【0014】
図14は、堤体10の裏法面12の傾斜角度が約25度の場合に想定したドレーン構造である。このドレーン構造を比較例1とする。菱形金網からなる金網籠40,40に割栗石を充填して浸透水を流す籠製ドレーン部とする。籠製ドレーン部は直方体の金網籠40,40を裏法面12と略同じ傾斜にして裏法面12内に設置し、その下側には石41を置いてかかと部を河川14に近づけるとともに容量を大きくし、籠製ドレーン部の上面に土砂を被せている。また、裏法尻に設置された排水路20と籠製ドレーン部とを結ぶためのドレーン層42を設けている。ドレーン層42は水平に設置した金網籠である。ドレーン層42を設ける理由は、傾斜して設置されている籠製ドレーン部に直接排水路20を当接させると、排水路20に籠製ドレーン部から圧力がかかって排水路20が図の右側に倒れてしまうからである。
【0015】
図15も、堤体10の裏法面12’の傾斜角度が約25度の場合に想定した別のドレーン構造である。このドレーン構造を比較例2とする。菱形金網からなる3つの金網籠44,44,44を階段状に積み上げた籠製ドレーン部が浸透水の通路を高い位置に持っていっている。この金網籠44,44,44を多数並べることで容量を大きくすることができる。また、籠製ドレーン部は裏法尻の付近に設置されている。この場合も金網籠44,44,44の上面の上と正面(籠の裏法尻側に向いた面)の前に土砂を被せている。
【0016】
上記の2つのドレーン構造は、金網籠に割栗石を充填しているので、大量の浸透水を確実に排水できる。また、菱形金網からなる金網籠40,44は、治水工事や土留め工事などに多量の使われており、安価であるので、ここでのドレーン構造にも用いている。
【0017】
金網籠40,44に被せる土砂のことを考えると、比較例1のドレーン構造の方が好ましい。なぜならば、金網籠40の上面にほぼ均一な厚みで土砂が被せられているからで、比較例2のような被せ方の土砂では、土砂を圧して固める際に固めむらができ、土砂が崩落してしまい金網籠44が剥き出しになってしまいやすいため好ましくない。しかしながら、比較例1のドレーン構造は、金網籠40自体を傾斜させて設置しているため、傾斜角度が大きくなると金網籠40の傾斜方向への滑り落ちの虞があり施工が難しくなり、緩斜面の堤体10にしか適用できないうえ、緩斜面での施工も困難である。さらに、水平部分であるドレーン層42が必要なため、設置のために裏法尻から水平地盤の方へ余分な領域が必要である。
【0018】
また、施工することを考えると、図14,図15に示す比較例1,2の両方のドレーン構造ともに、斜面を掘削した地盤に金網籠40,44を置いて潰れないように支えながら(菱形金網からなる籠は自立せず潰れてしまうから)石を詰め込む、という作業を行う必要がある。従って、大がかりで面倒な作業となり、時間とコストがかかる。特に比較例2のドレーン構造は、斜面と略平行な上面部分がないため、排水容量を確保するために籠の断面積を大きくする必要があり、掘削量が増え、時間とコストが余分にかかってしまう。さらに、菱形金網からなる籠は、石を積めた後の石の圧力や、上に被せた土砂の圧力で水平方向にふくらむため、排水路20に力がかかって排水路20が破損してしまう虞がある。
【0019】
このような考察と、特許文献1乃至3に記載されているドレーン構造の問題点を鑑みて本願発明者らは、本発明を想到するに至った。
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0021】
(実施形態1)
実施形態1に係るドレーン構造の模式的な断面を図1に示す。なお、図を見やすくするために断面を表すハッチングの多くを省略している。本実施形態に係るドレーン構造は、堤体10の裏法面(斜面)12の地盤内部に埋設されており、河川14の水面から連続している堤体内浸潤面16を裏法面12側で下げて浸透水を裏法尻に設置された排水路20に導いている。このドレーン構造は、金網からなる3つの籠31,32,33から構成されており、籠31,32,33の中には粗粒のフィルター材である割栗石23,23,…が充填されている。割栗石23,23,…は数cmから数十cmの径を有しているので、これらの隙間を通って浸透水が流れていく。なお、不図示であるが、籠31,32,33の上面、背面(河川24側)および側面には、土砂がフィルター材同士の隙間に入らないように不織布などの透水性シートが掛けられている。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るドレーン構造は横断面において、長方形の一つの角を切り欠いて斜辺とした五角形の形状を有しており、斜辺の部分に当たる傾斜上面35の上には土砂22が被せられており、傾斜上面35と裏法面12とは略平行になっている。傾斜上面35が水平面となす角度は、27°である。ドレーン構造の最下段を構成する第1の籠31は、裏法面12の下方の基礎地盤21の上に設置されており、その上に第2の籠32が積まれ、さらにその上に第3の籠33が積み上げられている。基礎地盤12は略水平に掘削されている。
【0023】
図2はドレーン構造を構成している籠31,32,33の積み重ね構造物を側方から見た図である。籠31,32,33を構成する金網同士および籠31,32,33同士は、コイル51,51,…によって連結されて固定されている。
【0024】
図3は、最下段の第1の籠31を構成する金網をばらばらにした斜視図である。第1の籠31は、正面金網53と底面金網の一部とが一体となった側面視L字型の正面側L型金網57と、背面金網52と底面金網の一部とが一体となった側面視L字型の背面側L型金網56と、底面中間金網54と、2つの側面金網55,55とから構成されている。いずれの金網も棒鋼や金属線材を溶接して繋いだ長方形の溶接金網からなっている。正面側L型金網57と背面側L型金網56とは、矩形である平面の溶接金網を折り曲げて作られており、同形状であって互いに交換可能である。また、正面側L型金網57と背面側L型金網56とは、それぞれ正面、背面に垂直な面においてL字型となっている。これらの金網は隣接する金網とコイル51(一つだけ示し他は省略している)によって辺同士が連結されて固定され、籠の形状に組み立てられる。また、本実施形態においては、これらの金網は防錆加工(例えば溶融亜鉛めっき、亜鉛アルミ合金めっきなど)された鉄線を材料としている。
【0025】
図4は、第1の籠31の上に載せられる第2の籠32を構成する金網をばらばらにした斜視図である。第2の籠32は第1の籠31とほぼ同じであり、一部が異なっているだけなので、異なっている部分を説明する。
【0026】
第2の籠32は正面金網53の側辺から前方(背面から正面に向かう向き、以下前後の向きはこの定義に従う)に延びる2つの三角金網部58,58を側面金網65,65が備えており、側面金網65,65は台形である。底面中間金網64は、第1の籠31のものよりも三角金網部58,58の下辺の長さ分だけ前後方向の長さが小さい。側面金網65,65も同様に長さが小さくなっている。なお、不図示であるが、正面金網53の上辺および三角金網部58,58の斜辺には菱形金網が連結されて傾斜上面35を形成する。また、2つの三角金網部58,58に挟まれた部分には底面金網を配置していないが、この部分は第1の籠31に詰められた割栗石23,23,…が底面となるので、底面金網が無くてもよいのであるが、底面金網を配置しても構わない。なお、この部分の底面金網がない方がこの部分に割栗石23,23,…を載せやすい。正面金網53と背面金網52との間に底面金網を配置しているのは、正面金網53と背面金網52と側面金網65,65とを倒れないように支えるためである。
【0027】
図5は、第2の籠32の上に載せられる第3の籠33を構成する金網をばらばらにした斜視図である。第3の籠33は第2の籠32とほぼ同じであり、一部が異なっているだけなので、異なっている部分を説明する。
【0028】
第3の籠33は底面中間金網を有しておらず、その分側面金網75,75の長さが小さくなっている。2つの三角金網部58,58に挟まれた部分には底面金網を配置していないことおよび傾斜上面35を構成する菱形金網については第2の籠32と同様である。
【0029】
図2から5に示されているように、3つの籠31,32,33の直方体部分は、正面金網53および背面金網52の大きさおよび形状が同じであるが、底面および側面の前後方向の長さが異なっている。底面においては、底面中間金網54,64を入れることによってこの長さの違いを調節している。側面金網55,65,75は長さ自体を変えることによって対応している。
【0030】
図6は、排水路20の斜視図である。背面27は第1の籠31の正面金網53に当接し、第1の籠31内を流れてきた水が背面27に設けられた穴28,28,…を通って排水路20の溝部に流れ込み、排出される。
【0031】
次に、本実施形態のドレーン構造の施工方法について説明する。
【0032】
まず、図1において堤体10の裏法面12側を掘削して略水平な基礎地盤21を形成する。そして、裏法尻となる部分に排水路20を設置する。排水路20の位置は予め厳密に決められており、金網籠に石を入れて厳密な位置に設置することは非常に困難であるため、まず排水路20を設置するのである。
【0033】
次に、基礎地盤21の上に、図3に示す金網群を載せてコイル51で金網同士を連結して第1の籠31を組み立てて設置する。正面金網53は排水路20の背面27に当接させて設置する。この時、正面側L型金網57と背面側L型金網56とは自立し、側面金網55,55もこれらの正面側L型金網57と背面側L型金網56とに立てかけられるので、金網を支えておく必要がなく、少人数で容易に且つ短時間で設置することができる。
【0034】
それから、第1の籠31の中に割栗石23,23,…を充填する。
【0035】
割栗石23,23,…を充填した第1の籠31の上に図4に示す金網群を載せて、コイル51で金網同士を連結して第2の籠32を組み立てて設置する。この場合も第1の籠31の組立と同様に少人数で容易に且つ短時間で設置することができる。この時、2つの籠31,32の背面金網52,52が面一になるように配置をして、上下の籠31,32間の連結もコイル51を用いて行う。第2の籠32を設置した状態では、第1の籠31の一部を第2の籠32の底面が蓋をして、蓋をされていない部分は三角金網部58,58に挟まれた状態となっている。また、第2の籠32の正面金網53は第1の籠31の正面金網53よりも後方に位置し、2つの正面金網53,53は略平行となっている。
【0036】
この後、第2の籠32に割栗石23,23,…を充填する。それから第1の籠31の上方であって三角金網部58,58に挟まれた部分(第2の籠32の正面金網53の手前側)にも割栗石23,23,…を載せる。この部分の割栗石23,23,…は、2つの三角金網部58,58の斜辺同士を結ぶ面に達するぐらいにまで載せる。このように割栗石23,23,…を充填し載せると、図7に示す状態となる。なお、図7では見やすさのためコイル51を省略している。
【0037】
次に、割栗石23,23,…を充填した第2の籠32の上に図5に示す金網群を載せて、コイル51で金網同士を連結して第3の籠33を組み立てて設置する。この場合も第1の籠31の組立と同様に少人数で容易に且つ短時間で設置することができる。この時、第2の籠32を設置するときと同様に、3つの籠31,32,33の背面金網52,52,52が面一になるように配置をして、上下の籠32,33間の連結もコイル51を用いて行う。第3の籠33を設置した状態では、第2の籠32を設置したときのように、第2の籠32の一部を第3の籠33の底面が蓋をして、蓋をされていない部分は三角金網部58,58に挟まれた状態となっている。また、第3の籠33の正面金網53は第2の籠32の正面金網53よりも後方に位置し、2つの正面金網53,53は略平行となっている。
【0038】
それから、第3の籠33に割栗石23,23,…を充填する。その後第2の籠32の上方であって三角金網部58,58に挟まれた部分(第3の籠33の正面金網53の手前側)にも割栗石23,23,…を載せる。この部分の割栗石23,23,…は、2つの三角金網部58,58の斜辺同士を結ぶ面に達するぐらいにまで載せる。
【0039】
さらに、図8に示すように、ロール状に巻いた菱形金網37を第3の籠33の正面金網53の上辺部分に載せて、それから菱形金網37をロール状から広げていって、三角金網部58,58,…に挟まれて割栗石23,23,…が載せてある傾斜の上に被せる。こうして、図9に示すように、菱形金網37により傾斜上面35が形成される。なお、図8,9では見やすさのためコイル51を省略している。それから、菱形金網37と各正面金網53,53,53の上辺および三角金網部58,58,…の斜辺とをコイルにより連結し固定する。
【0040】
次に、各籠31,32,33の背面と第3の籠33の上面と傾斜上面35とに透水性シートを被せる。そして、この透水性シートの上から土砂22を被せて図1に示すドレーン構造が完成する。
【0041】
本実施形態に係るドレーン構造は、上に説明した構造を有しており、以下の効果を奏する。
【0042】
本実施形態に係るドレーン構造は、複数の金網からなる3つの籠31,32,33を積み重ねて形成されているが、これらの籠31,32,33の構成部材である正面側L型金網57と背面側L型金網56とは全ての籠31,32,33に共通に用いることができるので、籠31,32,33の製造コストは小さくなる。籠31,32,33の中には割栗石23,23,…が充填されているので、大量の浸透水を確実に排水できる。また、裏法面12の傾斜角度は施工場所によって様々であるが、底面中間金網54,64の前後方向の長さを調整すればどのような傾斜角度にも対応でき、この点でも製造コストは小さくなる。さらに傾斜上面35は裏法面12と略平行なので、ドレーン構造の上に被せられた土砂は均一な厚みであって、崩落の虞が小さい。そして、籠31,32,33の本体部分(正面、背面、側面、底面)は溶接金網からなっているので、高い強度と剛性を有しており、その一方傾斜上面35にはフレキシブルな菱形金網37を用いることで蓋がし易くなっており、工事を容易に行える。また、3つの籠31,32,33はいずれも水平面状に積んでおり水平方向の力に対して構造的に十分な強度を有しているので、排水路20に水平方向の力がかかることがなく、従って図14に示すような水平なドレーン層42を設ける必要が無く、その分水平方向の設置面積を小さくすることができる。このため民地や堤防下の道路を広く確保することができる。
【0043】
本実施形態に係るドレーン構造の施工方法は、上に説明した工程を有しており、以下の効果を奏する。
【0044】
本実施形態のドレーン構造の施工方法では、傾斜上面35を構成している金網を割栗石23,23,…を充填・載置した後に載せているので、割栗石23,23,…の充填前に傾斜上面35を金網で形成しておく場合に比べて傾斜部分への割栗石23,23,…の充填を容易に行える。特に傾斜上面の傾斜角度(水平面に対する)が34°以下になると、割栗石23,23,…の充填前に傾斜上面35を金網で形成しておくと傾斜部分の先端部に割栗石23,23,…を隙間無く詰め込むのは非常に手間がかかり、工事コストが増加してしまうため、本実施形態のドレーン構造の施工方法は、傾斜上面35が水平面となす角度が34°以下の時に有用である。なお、傾斜角度が18°未満の場合は、ドレーン構造の上に被せた土砂の上を機械で圧して固める際に、傾斜上面35を形成する菱形金網がなくても割栗石23,23,…が崩れる心配がなく、傾斜上面35が必ずしも必要ではない。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2に係るドレーン構造の模式的な側面を図10に示す。本実施形態に係るドレーン構造は、実施形態1と同様に金網からなる3つの籠61,62,63が積み重ねられて形成されているが、各籠の背面金網が面一ではない点が実施形態1と異なっていて他の点は実施形態1と同じであるので、実施形態1との相違点のみを説明する。
【0046】
本実施形態のドレーン構造では、第1の籠61の背面金網よりも第2の籠62の背面金網の方が後方に配置されており、第2の籠62の背面金網よりも第3の籠63の背面金網の方が後方に配置されている。従って、実施形態1のドレーン構造に比較して掘削量を減らすことができるが、かかと部が河川14から遠くなって排水が不十分となりやすく、容量が小さいため最大排水量が少なくなり、また沈下する虞がある。それ以外の効果は実施形態1と同じである。
【0047】
(実施形態3)
実施形態3に係るドレーン構造の模式的な側面を図11に示す。本実施形態に係るドレーン構造は、実施形態1と同様に金網からなる3つの籠71,72,73が積み重ねられて形成されているが、各籠の背面金網が面一ではない点が実施形態1と異なっていて他の点は実施形態1と同じであるので、実施形態1との相違点のみを説明する。
【0048】
本実施形態のドレーン構造では、第1の籠71の背面金網よりも第2の籠72の背面金網の方が前方に配置されており、第2の籠72の背面金網よりも第3の籠73の背面金網の方が前方に配置されている。従って、実施形態1のドレーン構造に比較して設置のために掘削量を大きくする必要があり、コストが大きくなる。しかし、容量は大きくかかと部も河川14に近いため、排水能力は大きい。それ以外の効果は実施形態1と同じである。
【0049】
(その他の実施形態)
これまで説明した実施形態は本発明の例示であり、本発明はこれらの例に限定されない。例えば、第3の籠33の上面に金網を被せても構わない。また、各籠の側面を構成する金網は、一枚物である必要はなく、複数の金網を繋げてもよい。あるいは、各籠の内部に補強のための中枠を入れても構わない。
【0050】
正面金網および背面金網を河川の流れる方向に沿って複数並べて長尺のドレーン構造としてもよいし、正面金網および背面金網の幅を大きくして長尺のドレーン構造としてもよい。
【0051】
粗粒のフィルター材は割栗石に限定されず、礫や破砕コンクリート(コンクリート構造物を破砕したもの)、岩石破砕物等、籠に充填できて水が流れるものであればどのようなものでも構わない。
【0052】
排水路の設置は、籠を積み上げる前でなくてもよい。また、排水路と籠製ドレーン部との間に図14に示すようなドレーン層42を設けても構わない。
【0053】
傾斜斜面35を形成する菱形金網は、ロール状ではなくても構わない。平面であるパネル状にしてそのまま割栗石23,23,…を載せた金網籠の上に載せてもよい。
【0054】
各籠には、図12に示すように、背面金網52が充填されたフィルター材の圧力で倒れないように補強部材59で底面部の金網と連結しておくことが好ましい。この補強部材59は、正面金網53および側面金網55,65,75にも設置することが好ましい。
【0055】
上記実施形態の施工においては、堤体を掘削して基礎地盤を形成しているが、平面の地盤の上にドレーン構造を設置してその上に土砂を被せて斜面を形成しても構わない。また、ドレーン構造を設置するのは堤体に限定されず、山腹など斜面であればどのような場所でも構わない。例えば、山腹に設置すれば、大量の降雨によって土砂崩れが起きることを防止できる。なお、施工方法は、上記の実施形態で説明した方法と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明に係るドレーン構造は、低コストで様々な傾斜の斜面に簡単に設置できて確実に排水できるので、堤防のドレーン構造等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態1に係るドレーン構造の模式的な断面図である。
【図2】実施形態1に係るドレーン構造を構成する金網籠の模式的な側面図である。
【図3】第1の籠を構成する金網群の図である。
【図4】第2の籠を構成する金網群の図である。
【図5】第3の籠を構成する金網群の図である。
【図6】排水路の斜視図である。
【図7】実施形態1に係るドレーン構造の施工途中を示す模式的な斜視図である。
【図8】実施形態1に係るドレーン構造の施工途中を示す模式的な別の斜視図である。
【図9】実施形態1に係るドレーン構造の施工途中を示す模式的なさらに別の斜視図である。
【図10】実施形態2に係るドレーン構造を構成する金網籠の模式的な側面図である。
【図11】実施形態3に係るドレーン構造を構成する金網籠の模式的な側面図である。
【図12】背面金網の補強部材を示す斜視図である。
【図13】堤防の断面を示す図である。
【図14】比較例1に係るドレーン構造の模式的な断面図である。
【図15】比較例2に係るドレーン構造の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 堤体
12 裏法面(斜面である地盤)
20 排水路
21 基礎地盤
22 土砂
23 割栗石(粗粒のフィルター材)
31,61,71 第1の籠
32,62,72 第2の籠
33,63,73 第3の籠
35 傾斜上面
52背面金網
53正面金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面である地盤の内部に埋設され、該地盤内部に浸透した浸透水を斜面の下方に設置された排水路に排出するドレーン構造であって、
前記浸透水を通す粗粒のフィルター材が充填されている金網からなる籠により形成されていて、前記浸透水を前記排水路に導く籠製ドレーン部を備えており、
前記籠製ドレーン部は、前記籠が複数積み上げられて構成されているとともに土砂に覆われており、
前記籠は、斜面の下端から斜面に向かって手前側に正面金網を備えており、
積み上げられた前記複数の籠の前記正面金網のそれぞれは、下側に置かれた籠ほど斜面の下端から斜面に向かって手前側に配置されており、
前記複数の籠の各前記正面金網の上辺と連結されているとともに上記斜面とほぼ平行である傾斜上面が、前記籠製ドレーン部の上面に金網により形成されている、ドレーン構造。
【請求項2】
前記正面金網は溶接金網であり、前記傾斜上面を形成している金網は菱形金網である、請求項1に記載のドレーン構造。
【請求項3】
前記傾斜上面と水平面とがなす角は、18°以上34°以下である、請求項1または2に記載のドレーン構造。
【請求項4】
前記排水路は、前記斜面の下端に設置されている、請求項1から3のいずれか一つに記載のドレーン構造。
【請求項5】
前記籠は、斜面の下端から斜面に向かって奥側に溶接金網からなる背面金網を備えていて、それぞれの当該背面金網が略面一に配置されている、請求項1から4のいずれか一つに記載のドレーン構造。
【請求項6】
前記籠は、さらに溶接金網からなる底面金網を備えており、
前記底面金網の一部と前記正面金網、および前記底面金網の別の一部と前記背面金網とは一体に形成されている、請求項1から5のいずれか一つに記載のドレーン構造。
【請求項7】
斜面である地盤の内部に埋設され、該地盤内部に浸透した浸透水を斜面の下方に設置された排水路に排出するドレーン構造の施工方法であって、
前記ドレーン構造は、金網からなる少なくとも2つの籠を有しており、当該籠は斜面の下端から斜面に向かって手前側に配置される溶接金網からなる正面金網を備えており、
前記斜面下方の略水平である基礎地盤の上に第1の前記籠を設置する工程と、
前記第1の籠に粗粒のフィルター材を充填する工程と、
前記第1の籠の上に第2の前記籠を、第2の籠の正面金網が第1の籠の正面金網と略平行かつ第1の籠の正面金網よりも斜面の下端から斜面に向かって奥側に位置するように設置する工程と、
前記第2の籠に粗粒のフィルター材を充填するとともに、前記第1の籠の上方であって第2の籠の正面金網の手前の位置に粗粒のフィルター材を載せる工程と、
前記第1の籠の上方であって第2の籠の正面金網の手前の位置に載せた粗粒のフィルター材の上に菱形金網を載せて、前記第1および第2の籠の正面金網の上辺に前記菱形金網を固定する工程と、
前記ドレーン構造の上に土砂を被せる工程と
を含む、ドレーン構造の施工方法。
【請求項8】
さらに、前記第1の籠の正面金網を排水路に当接させる工程を含む、請求項7に記載のドレーン構造の施工方法。
【請求項9】
前記正面金網の上辺に固定された部分の前記菱形金網が構成する面と水平面とがなす角は、18°以上34°以下である、請求項7または8に記載のドレーン構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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