説明

ドームスクリーン用ビデオ投映機

【課題】 投映画像の解像度を低下させることなく、単眼の魚眼レンズによりドーム面全域を投映可能とする。
【解決手段】 画像表示素子からの光束をドーム面に投映する単眼の魚眼レンズ7と、上記投映レンズを共用する複数の画像表示素子11、21と、上記各画像表示素子からの光束を合成して魚眼レンズに入光する手段5を有し、各画像表示素子に表示される画像の投映範囲をドーム面Dの一部の領域A1、A2とすると共に、各領域に投映される投映画像の合成によりドーム面全域に連続する投映画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は例えばプラネタリウム施設やその他の球面スクリーン映像施設等のドームスクリーン用のビデオ投映機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)等の画像表示素子の画像を光学系を介してスクリーンに投映するビデオ投映機が公知である。これらは、従来の映写機に代わるものとして、プラネタリウム施設や球面スクリーン映像施設等のドームスクリーン用の投映機として使用されている。
【0003】
この場合、これらのドームスクリーンへの投映は通常のスクリーンの場合に比し画角が広くなるので、従来次の2つの投映方法が採用されていた。
【0004】
その一は、分割された複数の投映画像の合成によりドーム面全域に渡る投映画像を得る方法である。この場合は、複数台のビデオ投映機からの画像の投映範囲をドーム面の一部の領域とすると共に、各領域に投映される投映画像の合成によりドーム面全域に連続する投映画像を得ることとなる。
【0005】
その二は、魚眼レンズを用いた一台のビデオ投映機によりドーム面全域を投映する方法である。
【特許文献1】特開平9−149351号公報
【特許文献2】特開2001−309275公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は前記の従来技術中の前者のものの構成を示す図である。ここでは、2台のビデオ投映機により投映画像を分割する場合を例示している。図中符合P1、P2はそれぞれのビデオ投映機であり、図においてビデオ投映機PIは対面するドーム面の右半分に投映画像A1を、同じくビデオ投映機P2は対面するドーム面の左半分に投映画像A2を投映するように配置されている。上記の投映画像A1及び投映画像A2の合成によりドーム面全域に連続する投映画像が得られるが、分割された各投映画像同士のつながりが自然になるように、画像分割線Cを挟んで互いにオーバーラップする投映部分であるエッジブレンドエリアBが設けられる。
【0007】
前記の場合においては、ドーム面に投映した場合の歪みのために各映像を合成して一つの映像を構成することが不可能となるので、歪みの少ない投映像を得るために各ビデオ投映機から投映すべき画像に変形を加えて補正したり、つながりが自然になるようにエッジブレンドエリアにおけるボカシ処理等を行っていた。しかしながら、各ビデオ投映機は映像施設内に個別に設置されるものであり、必ずしも理想的な設置位置が得られるとは限らず、又、相互の施行位置の精度やドーム面自体の精度から前記の歪み補正やエッジブレンドエリアにおける処理は施行現場において困難を極め、勢いそれぞれの誤差を平均化せざるを得ず、それにより投映画像の劣化を招くという問題が生じた。
【0008】
一方、前記の従来技術中の後者のものにおいては、単眼の投映レンズによりドーム面全域を投映するので、少なくとも前記の問題は解消される。しかしながら、一つの画像表示素子の画像を超広画角で投映するので、通常の解像度のものでは投映画像の解像度が低下し、本来超広画角で投映された画像により得られる筈の観客の没入感が損なわれおそれがあった。そこで、画像表示素子は高解像度のものが要求され、コスト的に高価なビデオ投映機が必要となるという問題があった。又、この場合、ドーム面全域に投映することから、図4に示すように画像表示素子Gに表示される画像G1は矩形の画像表示素子に対して円形状の領域を使用するが、その結果、画像表示素子には大きな面積を占める不使用領域G2が残ることとなり非効率的であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は以上の従来技術の問題点を解消したドームスクリーン用のビデオ投映機を提供することを目的として創作されたものであり、画像表示素子からの光束をドーム面に投映する単眼の投映レンズと、上記投映レンズを共用する複数の画像表示素子と、上記各画像表示素子からの光束を合成して投映レンズに入光する手段を有し、各画像表示素子に表示される画像の投映範囲をドーム面の一部の領域とすると共に、各領域に投映される投映画像の合成によりドーム面全域に連続する投映画像を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
よって、この発明によれば、各画像表示素子に表示される画像の投映範囲はドーム面の一部の領域に止まるので、画角が広くならずドーム面の投映画像の解像度が低下することが無く、通常の解像度の画像表示素子を用いても投映画像は充分な解像度を得ることができる。
【0011】
一方、各領域に投映される投映画像の合成によりドーム面全域に連続する投映画像を得るにもかかわらず、各画像表示素子からの画像同士の歪み補正の調整やエッジブレンドエリアにおける処理は映像施設の施行現場でなく、投映機内部で完結するので非常に精度が高い調整を容易に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図3はこの発明のビデオ投映機の構成図である。ここでは、2分割した投映画像の合成により連続する投映画像をドーム面全域に得る例を示しているが、分割数はこれに限定されないことは勿論である。図中符合1はビデオ投映機を示し、このビデオ投映機は画像表示素子からの光束をドーム面Dに投映する単眼の投映レンズ7と、上記投映レンズを共用する2つの画像表示素子11、21と、上記各画像表示素子からの光束を合成して投映レンズに入光する手段を有する。画像表示素子はここでは透過型のものを例示しているが、反射型のものでもよいことは勿論である。
【0013】
各画像表示素子からの光束を合成して投映レンズに入光する手段としてここでは合成プリズム5を用いており、左右に振り分けられた画像表示素子11、21はそれぞれ光源12、22により照明され、光束はリレーレンズ13、23を介して上記合成プリズムにより合成される。合成された光束は縮小レンズ6を介して魚眼レンズからなる投映レンズ7に入光され、ドーム面の右半分に画像表示素子11による投映画像A1を、同じくドーム面の左半分に画像表示素子21による投映画像A2が投映される。上記の投映画像A1及び投映画像A2の合成によりドーム面全域に連続する投映画像が得られるが、分割された各投映画像同士のつながりが自然になるように、画像分割線Cを挟んで互いにオーバーラップする投映部分であるエッジブレンドエリアBが設けられる。図中符合8は前記の光学系における画像表示素子11、21からの合成画像の結像面を指す。又、図3は結像した合成画像の図である。
【0014】
図2は前記の画像表示素子11に表示される画像を示す図である。図中符合F1は表示される画像を指し、11Cは合成されるもう一方の画像表示素子21の表示画像との画像分割線、11Bはエッジブレンドエリアを指す。この図からも明らかなように、この発明においては画像表示素子11における不使用領域F2の割合が小さく、魚眼レンズを用いた一台のビデオ投映機により一つの画像表示素子に表示された画像をドーム面全域に投映する従来技術に比べ(図4参照)画像表示素子の使用比率が向上していることがわかる。尚、この実施例においては1024×768画素の画像表示素子を2つ使用することにより、1024×1024画素の投映画像を得ている。
【0015】
次にこの発明のビデオ投映機のより具体的な実施例を図5に示す。ここでは、既存のビデオ投映機を流用してこの発明のビデオ投映機を得る例を示しており、前記の実施例同様2分割した投映画像の合成により連続する投映画像をドーム面全域に得ることしている。図中符合31はこの発明のビデオ投映機の筐体を示し、内部にはビデオ投映ユニット41及び51が投映側を対向して設けられると共に、筐体の上下方向には投映鏡筒34が貫挿される。各ビデオ投映ユニット41及び51は液晶プロジェクターやDLP−デジタル光プロセシング−(「DLP」は米国テキサスインスツルメンツインコーポレーテツドの登録商標)プロジェクター等の既存のビデオプロジェクターを流用したものであり、内部に光源及び画像表示素子を含む光学系を有する。これらの各ビデオ投映ユニット41及び51からの光束はリレーレンズ43、43を介して合成プリズム35により合成され、合成された光束は縮小レンズ36を介して魚眼レンズを含む投映レンズ系37に入光されて投映される。図中符合38は前記の光学系における各ビデオ投映ユニット41及び51の画像表示素子からの合成画像の結像面を指す。
【0016】
以上のビデオ投映機30においては各ビデオ投映ユニット41及び51はそれぞれの光軸調整手段44、54を有し、又、合成プリズム35、縮小レンズ36、投映レンズ系37を収容した投映鏡筒34は調整用ネジ39により筐体31に対して高さ及び傾きが調整可能に取り付けられる取り付けベース板に支持される。よって、これらの調整手段により各投映画像の合成画像同士の合成時の調整を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明のビデオ投映機の構成図。
【図2】同上、画像表示素子の平面図
【図3】同上、結像した合成画像の図。
【図4】従来技術の画像表示素子の平面図
【図5】この発明のビデオ投映機の異なる実施例の一部切り欠き正面図。
【図6】従来技術のビデオ投映方法の構成図。
【符号の説明】
【0018】
D ドーム面
B エッジブレンドエリア
A1 (画像表示素子11)の投映領域
A2 (画像表示素子21)の投映領域
1 ビデオ投映機
5 合成プリズム
7 投映レンズ
11 画像表示素子
21 画像表示素子
30 ビデオ投映機
41 ビデオ投映ユニット
51 ビデオ投映ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子からの光束をドーム面に投映する単眼の投映レンズと、上記投映レンズを共用する複数の画像表示素子と、上記各画像表示素子からの光束を合成して投映レンズに入光する手段を有し、各画像表示素子に表示される画像の投映範囲をドーム面の一部の領域とすると共に、各領域に投映される投映画像の合成によりドーム面全域に連続する投映画像を得ることを特徴とするドームスクリーン用ビデオ投映機。
【請求項2】
画像表示素子は液晶パネルである請求項1記載のドームスクリーン用ビデオ投映機。
学系
【請求項3】
画像表示素子はデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)である請求項2記載のドームスクリーン用ビデオ投映機。
【請求項4】
各画像表示素子からの光束を合成して投映レンズに入光する合成プリズムに投映側を向けて複数台のビデオ投映ユニットをビデオ投映機内に収容し、各ビデオ投映ユニットには個別に光軸を調整する手段を設けた請求項1から3の何れかに記載のドームスクリーン用ビデオ投映機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−189509(P2006−189509A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382019(P2004−382019)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000142894)株式会社五藤光学研究所 (9)
【Fターム(参考)】