説明

ナノスケール規則性耐熱セラミックスのセラミック前駆体としての無機ブロックコポリマーその他の類似材料

【課題】 収率及びガス発生の問題のないナノスケール規則性耐熱セラミックスの製造方法の提供。
【解決手段】 本発明は、広義には、無機系ブロックコポリマー、無機/有機系ハイブリッドブロックコポリマーその他の類似材料のような前駆体材料の自己集合によるナノスケール/マイクロスケール構造を有するセラミックスの製造方法、並びにかかる方法で製造される構造体に関する。かかる前駆体材料自体が新規であるものについては、本発明はそれらの材料及びその合成にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義にはセラミック材料、具体的には無機ブロックコポリマーその他の類似材料の自己集合によって製造されるナノスケール及びマイクロスケールセラミック構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離規則性を有する複合材料は自然界に存在している。貝殻のような天然の複合材は、こうした材料の独特な階層的規則構造に由来する驚くべき機械的性質を示す。こうした認識を契機として、長距離規則構造をナノスケールレベルで構築することによって自然を模倣しようと検討さている。ナノスケールの規則性は、次いでミクロンスケール及びミリメートルスケールの階層的規則構造の創生に使用できる。
【0003】
ナノスケールの無機規則構造の製造技術には、逐次堆積法及びナノリソグラフィー法のような「トップダウン」型方法、及びイオン性及び非イオン性界面活性剤とブロックコポリマーとに基づく自己集合のような「ボトムアップ」型方法がある。ナノスケールの規則性をもつシリカ及び酸化物のような無機セラミック材料は、有機化学種を構造規定剤(SDA; structure−directing agent)として用いる自己集合によって得られてきた。ポリマー前駆体は、窒化ホウ素、炭化ホウ素及び炭化ケイ素のナノチューブ及びナノファイバーの開発、並びにミクロン乃至サブミリメートル域の次元の耐熱MEMS(micro−electromechanical system)の製造に用いられている。ブロックコポリマーは、炭素のナノ構造配列の製造に用いられている。
【0004】
ブロックコポリマー又は界面活性剤による無機前駆体の自己集合は、セラミック材料にナノスケール構造を構築するための有力な方法であることが明らかにになりつつある。ブロックコポリマーは分子量の分散度の制御性に優れるので、それから構築される構造には長距離規則性をもつものがある。この線に沿った現行の技術では、有機ブロックコポリマーを用いる。ある種のセラミック前駆添加剤は、ブロックコポリマーのあるブロックと混和性であり、そのためブロックコポリマーとの共存下では、前駆添加剤はその特定のブロックを選択的にターゲットとする(相ターゲティング)。ブロックコポリマーは様々な構造に自己集合するできるるが、その形態と大きさのスケールは、分子量とその多分散度、ブロック間の体積分率及び処理条件によって決まる。セラミック前駆添加剤のこのような自己集合及び相ターゲティングによって、前駆添加剤を含む構造を得ることができる。ブロックコポリマーと前駆添加剤との自己集合混合物を高温に加熱すると、ブロックコポリマーが分解して、前駆添加剤はブロックコポリマー/前駆添加剤ハイブリッドから受け継いだナノスケール構造(ナノ構造)を有するセラミックへと転換される(米国特許第7056849号参照)。
【特許文献1】米国特許第7056849号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0036931号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第00/55218号パンフレット
【非特許文献1】Choi, et al., “Controlled Living Ring−Opening−Metathesis Polymerization by a Fast−Initiating Ruthenium Catalyst,” Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, pp.1743−1746.
【非特許文献2】Wan, et al., “Nanostructured Non−oxide Ceramics Templated via Block Copolymer Self−Assembly,” Chem. Mater., 2005, 17(23), pp.5613−5617.
【非特許文献3】Garcia, et al., “Synthesis and Characterization of Block Copolymer/Ceramic Precursor Nanocomposites Based on a Polysilazane,” Journal of Polymer Science: Part B: Polymer Physics, 2003, Vol.41, pp.3346−3350.
【非特許文献4】Kamperman, et al., “Ordered Mesoporous Ceramics Stable Up to 1500 °C from Diblock Copolymer Mesophases,” J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, pp.14708−14709
【非特許文献5】Wei, et al., “New Routes to Organodecaborane Polymers via Ruthenium−Catalyzed Ring−Opening Metathesis Polymerization,” Organometallics, 2004, 23, pp.163−165.
【非特許文献6】Castle, et al., “Synthesis of Block Copolymers by Changing Living Anionic Polymerization into Living Ring Opening Methathesis Polymerization,” Macromolecules, 2004, 37, pp.2035−2040.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

しかし、上述のプロセスには、相ターゲティングの有効性のように改善の余地のある分野がある。相選択性を達成するには、セラミック前駆添加剤の官能化が必要である。ほとんどの場合、官能化した後でも、ブロック中での前駆添加剤の溶解性は限られている。さらに、上述のプロセスでは、有機ブロックコポリマーは構造規定鋳型として働き、セラミゼーションの際に除去する必要のある犠牲成分である。ブロックコポリマー鋳型の除去によって、熱分解プロセス中の体積収縮及びガス発生の問題に加えて、セラミックの全体的収率が下がる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の点から、かかるナノスケール規則性耐熱セラミックスの代替製造方法があれば、特にそうした代替法で上述の収率及びガス発生の問題を解決することができれば、望ましい。
【0007】
本発明は、広義には、無機系ブロックコポリマー、無機/有機系ハイブリッドブロックコポリマーその他の類似材料のような前駆体材料の自己集合によるナノスケール/マイクロスケール構造を有するセラミックスの製造方法、並びにかかる方法で製造される構造体に関する。かかる前駆体材料自体が新規であるものについては、本発明はそれらの材料及びその合成にも関する。
【0008】
本発明のある実施形態では、ナノスケール/マイクロスケールセラミック構造体の製造方法を開示する。一般に、かかる構造体は、(a)2以上の相に分離する能力に差のある2以上のセグメントを含む分子であるセラミック前駆種(例えば、無機系ブロックコポリマー)であって、その2以上のセグメントの少なくとも1つが無機系であるセラミック前駆種を調製する段階、(b)前駆種を約1nm〜約100μmの次元属性を有する一次構造に自己集合させる段階、及び(c)自己集合した一次構造を熱分解して二次セラミック構造体を形成する段階によって製造される。
【0009】
上述の実施形態の幾つかでは、セラミック前駆種は、1以上のブロックが無機系である2以上のブロックを含むブロックコポリマーを含んでなるものであり、本明細書では、かかるブロックコポリマーを「無機系ブロックコポリマー」と呼ぶ。従って、かかるセラミック前駆種が、ポリマーナノ/マイクロ構造体である一次ナノ/マイクロ構造へと自己集合する無機系ブロックコポリマーである場合、かかるポリマー構造体は次いで熱分解によって同様のナノ/マイクロ構造をもつセラミックスへと転換させることができる。かかる方法のユニークな特徴は、無機成分がブロックコポリマーの分子構造に組込まれているため、上述の有機ブロックコポリマーの自己集合に伴う問題がなくなることである。無機成分を組込むことによって、無機ブロックコポリマーの自己集合は一成分/一段階操作となり、プロセスの複雑さが大幅に減る。一次構造の熱分解は犠牲鋳型の分解を伴わないので、セラミック収率が増大するとともに、体積収縮及びガス発生が低減して、材料の健全性が向上し、緻密な生成物が得られるという利点が得られる。
【0010】
上述のセラミック前駆種自体が新規である場合には、本発明の実施形態はかかる新規な前駆種及びその製造方法にも関する。かかる実施形態の幾つかでは、新規前駆種は新規無機系ブロックコポリマーである。かかる新規無機系前駆種は典型的には2以上の逐次反応、例えば、特に限定されないが、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合、開環メタセシス重合(ROMP)、開環重合、縮合重合及びこれらの組合せなどによって製造される。
【0011】
以上、本発明に関する以下の詳細な説明が理解し易くなるように、本発明の特徴を概説してきた。本発明のその他の特徴及び利点については以下で説明するが、これらは特許請求の範囲に記載された発明の主題をなす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明及びその利点についての理解を深めるべく、以下の説明では添付の図面を併せて参照する。
【0013】
図1(スキーム1)は、本発明の実施形態に基づくROMPによるハイブリッドブロックコポリマーの合成を示す。
【0014】
図2A及び2Bは、本発明の実施形態に基づくROMPで合成したハイブリッドブロックコポリマー(2A)並びにブロックコポリマーと共に一次/二次構造体の製造に使用できる好適なセラミック前駆添加剤(2B)を示す。
【0015】
図3(スキーム2)は、本発明の実施形態に基づくハイブリッドブロックコポリマーの合成(R=Hの場合)及び完全に無機系である無機系ブロックコポリマーの合成(R=デカボランの場合)を示す。
【0016】
図4A〜4Cは、本発明の実施形態に基づく、有機系ブロックコポリマー(4A)とセラミック前駆添加剤(4B)とハイブリッドブロックコポリマー(4C)とを含むセラミック前駆体系を示す。
【0017】
図5A及び5Bは、実施例6に記載のCeraset(登録商標)含有セラミック前駆体系に使用するための有機系ブロックコポリマー(A)を示す。
【0018】
図6(スキーム3)は、本発明の実施形態に基づくリビングラジカル重合及びROMPによるハイブリッドブロックコポリマーの合成を示す。
【0019】
図7(スキーム4)は、本発明の実施形態に基づくハイブリッドブロックコポリマーのインサイチュトリブロック合成を示す。
【0020】
図8は、PEOの13C NMRスペクトル(トレースA)及びCeraset(登録商標)との反応後のPEOの13C NMRスペクトル(トレースB)を示す。
【0021】
図9(スキーム5)は、本発明の実施形態に基づくROMPによるポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成を示す。
【0022】
図10は、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量15モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのTEM画像であり、領域100は優勢なラメラ形態を示し、領域200は有孔ラメラ形態を示す。
【0023】
図11は、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量15モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のラメラ構造が有孔ラメラ構造と混じり合ったSEM画像である。
【0024】
図12A〜12Cは、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量30モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのラメラ構造のTEM画像(12A)を、ホウ素(12B)及び炭素(12C)のケミカルマップと共に示す。
【0025】
図13は、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のラメラ構造を示すSEM画像である。
【0026】
図14A〜14Cは、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量30モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのシリンダ構造のTEM画像(14A)を、ホウ素(14B)及び炭素(14C)のケミカルマップと共に示す。
【0027】
図15は、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のシリンダ構造を示すSEM画像であり、挿入図に材料のBCN組成を示す。
【0028】
図16は、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のSEM画像であり、左側の挿入図にシリンダ構造を示し、右側挿入図に材料のBCN組成を示す。
【0029】
図17は、本発明の実施形態に基づくノルボルネンデカボラン含有量30モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来のBNメソ多孔質セラミックのBET吸・脱着等温曲線である。
【0030】
図18(スキーム6)は、本発明の実施形態に基づくROMPによるポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成を示す。
【0031】
図19A〜19Cは、本発明の実施形態に基づく自己集合ポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのラメラ構造のTEM画像(19A)を、ホウ素(19B)及びケイ素(19C)のケミカルマップと共に示す。
【0032】
図20は、本発明の実施形態に基づくポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のラメラ構造を示すSEM画像である。
【0033】
本発明は、広義には、無機系ブロックコポリマー、無機/有機系ハイブリッドブロックコポリマーその他の類似材料のような前駆体材料の自己集合によるナノスケール/マイクロスケール構造を有するセラミックスの製造方法、並びにかかる方法で製造される構造体に関する。かかる前駆体材料自体が新規であるものについては、本発明はそれらの材料及びその合成にも関する。
【0034】
本明細書で用いる用語の殆どは当業者には明らかであろうが、本発明の理解をは図るべく以下に幾つか定義を挙げる。ただし、明確に定義していない用語は、現在当業者に受け入れられている意味をもつものと解すべきである。
【0035】
「ブロックコポリマー」という用語は、従来もっぱら有機構造体に用いられてきたが、本明細書で用いる「ブロックコポリマー」という用語は、それらのブロックが有機系であるか無機系であるかを問わず、2以上のブロックを含む構造を包含するものとして広義に用いられる。一般に、かかるブロックはポリマーであり、かかるコポリマーは自己集合し得るものである。実施形態によっては、かかるブロックは同一の「マー」からなるポリマーセグメントであるが、他の実施形態では、かかるブロックは異なる「マー」のランダム又は交互配列を含むものであり、例えば、あるブロックは2種以上の異なるモノマーの混合物であってもよい。一般に、ブロックはそれらの相分離能力によって識別される。
【0036】
本明細書で用いる「ナノスケール」は約1nm〜約500nmのサイズ領域をいう。ノスケール次元(2次元以上でのナノスケール)を含むものは「ナノ構造化」されている。
【0037】
本明細書で用いる「マイクロスケール」は、約500nm〜約100μmのサイズ領域をいう。マイクロスケール次元(2次元以上でのマイクロスケール)を含むものは「マイクロ構造化」されている。
【0038】
本明細書に記載した構造体の多くは「階層的」であり、ナノスケール、マイクロスケール及び/又はメソスケールの構造要素を含むことができる。
【0039】
本明細書で用いる「無機系」は、熱分解時にセラミック構造を形成するのに適した元素成分からなる分子(例えばポリマー)セグメントをいう。かかる元素成分としては、特に限定されないが、Si、C、N、B、O、Hf、Ti、Alなど及びこれらの組合せが挙げられる。
【0040】
本明細書で用いる「有機系」は、炭素を主成分とし、熱分解時にセラミック構造体を形成するには概して不十分な元素組成を有する分子(例えばポリマー)セグメントをいう。
【0041】
本明細書で用いる「ポリマー」とは、典型的には約4以上の量の「マー」(「モノマー構成ブロック」とも呼ばれる。)を含む分子種の1次元連結をいいう。
【0042】
本明細書で用いる「多分散度」は所定のポリマーにおける分子量分布をいい、一般に重量平均分子量/数平均分子量の比として定義される「多分散度」によって定量化される。
【0043】
本明細書で用いる「自己集合」は、組織化配列に自己組織化(自己集合)する性向いう。
【0044】
本明細書で用いる「熱分解」は、自己集合一次構造をセラミック化て二次セラミック構造を形成するための不活性環境下又は反応性環境下での自己集合一次構造の加熱である。
【0045】
本発明のある実施形態では、セラミックナノ構造体及び/又はマイクロ構造体の製造方法を開示する。一般に、かかる構造体は、(a)2以上の相に分離する能力に差のある2以上のセグメントを含む分子であるセラミック前駆種(例えば、無機系ブロックコポリマー)であって、その2以上のセグメントの少なくとも1つが無機系であるセラミック前駆種を調製する段階、(b)前駆種を約1nm〜約100μmの次元属性を有する一次構造に自己集合させる段階、及び(c)自己集合した一次構造を熱分解して二次セラミック構造体を形成する段階によって製造される。
【0046】
一般に、かかる自己集合一次構造体及び対応する二次構造体は、特に限定されないが、スフェア、シリンダ、ラメラ、ジャイロイド(gyroid)、有孔ラメラ(perforated lamellar)、共連続(bicontinuous)などを始めとする形態を含む。かかる構造体は規則的及び/又は不規則的でもよく、ナノスケール乃至マクロスケールの次元属性を含むより大きな階層的構造の一部であってもよい。
【0047】
二次構造体の組成はセラミック前駆種の組成によって大きく左右されるが、概してあらゆるセラミック組成物が含まれる。典型的な組成物としては、特に限定されないが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭窒化ケイ素ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭窒化ホウ素、酸炭化ケイ素などが挙げられる。二次構造の多孔度はセラミック前駆種の組成によって制御することもでき、例えば有機系セグメントの割合が高い種は、熱分解時に多孔度の高い生成物を生じる可能性が高い。かかる熱分解は、不活性雰囲気又は反応性(例えば、還元性又は酸化性)雰囲気のいずれかでも実施でき、一般に約800℃〜約2000℃の温度での加熱を含む。例えば、前駆体材料としてデカボランを有するセラミック前駆体は、アルゴン中で熱分解すると炭化ホウ素を生成し、窒素中で熱分解すると炭窒化ホウ素を生成し、アンモニア中で熱分解すると窒化ホウ素を生成する(なお、アンモニアの使用は窒化ホウ素セラミック中の炭素の存在を妨げるものではない)。なお、実施形態によっては、所望に応じて二次セラミック構造を例えばアニーリングプロセスで緻密化してもよい。製造した二次セラミック構造体が一定の多孔度をもつ場合、かかる緻密化によって多孔度を大幅に下げることができる。
【0048】
上述の実施形態の幾つかでは、セラミック前駆種は2以上のブロックを含むブロックコポリマーからなり、その1以上のブロックは無機系である。従って、かかるセラミック前駆種が無機系ブロックコポリマーであって、組成上ポリマー構造体である一次構造体へと(典型的にはミクロ相分離によって)自己集合する場合、かかるポリマー構造体は同様の構造のセラミックスへと転換することができ、かかる構造はナノ及び/又はマイクロ構造を含む。
【0049】
上述の無機系ブロックコポリマーのあるものはすべてのブロックが無機系である。別の実施形態では、無機系ブロックコポリマーは1以上の有機系ブロックを含んでおり、かかるハイブリッドブロックコポリマーは「無機/有機系ハイブリッドブロックコポリマー」或いは単に「ハイブリッドブロックコポリマー」とも呼ばれる。これらのブロックコポリマーに用いられる好適な無機系ブロックとしては、特に限定されないが、ポリシラザン、ポリカルボラン、ポリウレアシラザン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリボラジン、ポリボラジレン、ポリシロキサンなどが挙げられる。その他の好適な無機系ブロックは、無機ペンダント基を有する有機系ポリマー骨格から得られ、ペンダント基は自己集合及び熱分解時にセラミック構造を与える。ハイブリッドブロックコポリマー用の好適な有機系ブロックとしては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ポリシクロオクタジエン、ポリノルボルネン、ポリイソプレン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。実施形態及び所望の生成物に応じて、ブロックコポリマーの構成は、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、樹脂状線状ハイブリッドコポリマー、星形コポリマー及びこれらの組合せからなる群から選択できる。一般に、ブロックコポリマーは、約1000〜約250000、典型的には約1000〜約100000、さらに典型的には約1000〜約50000の平均分子量を有する。一般に、1以上の無機系ブロックの少なくとも一部は耐熱セラミック前駆体である。
【0050】
ある実施形態では、ブロックコポリマーは約1.0〜約3.0の多分散度を有する。ある実施形態、特にハイブリッドブロックコポリマーを用いる場合には、多分散度は高度に制御できる。合成時に分子量の単分散性が優勢である実施形態では、自己集合した一次構造は規則性が高い。通例、多分散度が高いほど、自己集合した一次構造にみられる規則性は低下する。
【0051】
ある実施形態では、無機系ブロックコポリマーと共にセラミック前駆添加剤が一次及び二次構造体の形成に用いられ、これらを総称して前駆体系という。かかる実施形態の幾つかでは、従来の有機系ブロックコポリマーも添加される。
【0052】
かかる方法のユニークな点は、無機成分がブロックコポリマーの分子構造に組込まれているため、上述の有機ブロックコポリマー自己集合をセラミック前駆添加剤と併用する際の問題の少なくとも一部が解消することである。無機成分を組込むことによって、無機ブロックコポリマーの自己集合は一成分/一段階操作となり、プロセスの複雑さが大幅に減少る。一次構造の熱分解は犠牲鋳型の分解を伴わないので、セラミック収率が増大するとともに、体積収縮及びガス発生が低減して、材料の健全性が向上し、緻密な生成物が得られるという利点が得られる。
【0053】
上述の通り、上述のセラミック前駆種自体が新規である場合には、本発明の実施形態は、かかる新規な前駆種及びその製造方法にも関する。かかる実施形態の幾つかでは、新規前駆種は新規無機系ブロックコポリマーである。かかる前駆種については既に説明した。ただし、広義には、かかる新規前駆種は、組成物における分子であって、2以上の相への分離によって自己集合する能力に差のある2以上のセグメントを含み、その2以上のセグメントの少なくとも1つが無機系であるセラミック前駆種であればどのようなものでもよい。
【0054】
上述の新規無機系前駆種が無機系ブロックコポリマーである場合、かかる無機系前駆種は典型的には2以上の逐次反応、例えば、特に限定されないが、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合、開環メタセシス重合、開環重合、縮合重合及びこれらの組合せなどによって製造される
ある実施形態では、上述の無機系ブロックコポリマーは、(a)第一のポリマーセグメントを合成する段階、(b)第二のポリマーセグメントを合成する段階、及び(c)第二のポリマーセグメントを第一のポリマーセグメントに結合して、1以上の無機系ブロックを含む無機系ブロックコポリマーを形成する段階であって、該結合が共有結合を含み、かつ第一のポリマーセグメントから第二のポリマーセグメントを成長させることによる第二のポリマーセグメント合成の際のその場での(インサイチュ)結合、第二のポリマーセグメントの合成後の結合、及びこれらの組合せからなる群から選択される方法で実施される段階を含んでなる方法によって製造される。
【0055】
本発明の特定の実施形態を例証するために以下の実施例を挙げる。以下の実施例に開示した方法は本発明の例示的な実施形態にすぎないことは当業者には明らかであろう。本明細書の開示内容に照らして当業者には自明であろうが、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、同様の結果を得ることができる。
【0056】
実施例1
本例では、本発明のある実施形態に基づくROMOによるハイブリッドブロックコポリマーの合成を例示する。
【0057】
図1を参照すると、スキーム1に示す合成では、デカボランを官能基として有するノルボルネン誘導体の重合を行う。このモノマーは、Choi et al., Angew. Chem. Int Ed. 2003, 42, pp.1743−1746及びWei et al., Organometallics, 2004, 23, pp.163−165に記載のROMP触媒のような慣用ROMP触媒を用いて重合できる。Wei他の報文に記載されている通り、デカボラン官能化ノルボルネンの重合は、第一世代又は第二世代Grubbs触媒を用いて達成できる。Choi他によれば、デカボラン官能化モノマーが消費された時点で反応混合物に第二のモノマー(本例ではノルボルネン)を単に添加することによって最初のブロックから第二のブロックを調製することができる。この反応は単一容器内で実施することができ、モノマーの順序を逆にしてもよく、続く反応終了及び分離は当業者に周知の慣用技術で行うことができ、セラミゼーションで炭化ホウ素を形成し得る無機系ブロックコポリマーが得られる。この実施例の変形としては、段階2におけるノルボルネンを、官能化ノルボルネン、シクロオクテン誘導体その他ROMPで重合し得る官能化モノマーで置き換えることが挙げられる。
【0058】
実施例2
本例では、本発明のある実施形態に基づくROMPで合成したハイブリッドブロックコポリマー、並びに該ブロックコポリマーと共に一次/二次構造の調製に使用できる好適なセラミック前駆添加剤を例示する。
【0059】
上記ハイブリッドブロックコポリマーを図2Aに示すが、このハイブリッドブロックコポリマーは実施例1に記載の通り調製した。これを、炭化ケイ素(SiC)前駆体である修飾Starfireポリマー(MSFP)と組合せると、ハイブリッドブロックコポリマーが鋳型として用いられ、ポリノルボルネン(有機系ブロック)がMSFPで膨潤されるドメインとして働く相分離構造が得られると予想される。熱分解によって得られるセラミック材料は、炭化ホウ素と炭化ケイ素を含むナノスケールドメインを有すると予想される。
【0060】
上記セラミック前駆添加剤を図2Bに示す。このセラミック前駆体MSFPは、2−ペンタデシル−フェノールとポリカルボシランとのルイス酸触媒反応で得られる。このカルボシランはStarfire Systems社(米国ニューヨーク州)製の市販材料である。
【0061】
実施例3
本例では、本発明のある実施形態に基づくハイブリッドブロックコポリマーの合成を示す。
【0062】
図3を参照すると、スキーム2に、カルボシラン前駆体にグラフトしたポリマーの合成を示すが、ここではR=Hである。ROMP触媒は、ROMP活性を保つように、カルボシランに付加しなければならない。これは、別のオレフィン系部分を介して又はカルボシラン骨格(図示せず)に結合したアリルシラン官能基(図示している)を介して、触媒を直接付加することによって達成できる。次いでノルボルネンのような好適なモノマーの導入によって、カルボシランコアとポリノルボルネンアームとを有する星形ポリマーを形成できる。こうして、ポリノルボルネン、ポリシクロオクタジエン又はポリブタジエンのような炭素リッチ有機ブロックをターゲットとするように設計された修飾カルボシランが得られる。
【0063】
実施例4
本例では、本発明のある実施形態に基づく完全に無機系である無機系ブロックコポリマーの合成を示す。
【0064】
図3を参照すると、スキーム2に、カルボシラン前駆体にグラフトしたポリマーの合成を示すが、ここではR=デカボランである。ROMP触媒は、ROMP活性を保つように、カルボシランに付加しなければならない。これは、別のオレフィン系部分を介して又はカルボシラン骨格(図示せず)に結合したアリルシラン官能基(図示している)を介して、触媒を直接付加させることによって達成できる。次いでノルボルネンのような好適なモノマーを導入すると、カルボシランコアとポリノルボルネンアームとを有する星形ポリマーを形成できる。こうして星状構造を有する無機系ブロックコポリマーが形成され、これを不活性雰囲気中で熱分解するとSiCドメインと炭化ホウ素ドメインとを有するナノ構造体が得られる。
【0065】
実施例5
本例では、本発明のある実施形態に基づく有機系ブロックコポリマーとハイブリッドブロックコポリマーとセラミック前駆添加剤とを含む前駆体系について例示する。ROMPは、Castle et al., Macromolecules, 2004, 37(6), pp.2035−2040に記載の通り、PEOのような既存ポリマーの鎖末端から開始できる。この実施例では、PEOはROMPのマクロ開始剤として用いる。修正条件下では、PEOセグメントを連鎖移動剤として機能させることによってブロックコポリマー構造に組込むこともできる。
【0066】
図4を参照すると、この系では、構造Aは有機系ブロックコポリマーであり、R=Hである。構造Bは、PEOドメインをターゲットとする相であり、他方、構造C(R=H)に示すハイブリッドブロックコポリマーは、構造Aにみられるポリノルボルネンドメインをターゲットとする予想される。得られる材料はナノ構造SiC−SiCNである。R=デカボランの場合、得られるナノ構造生成物はSiCN−SiCBである。
【0067】
実施例6
本例では、本発明のある実施形態に基づくハイブリッドブロックコポリマーとセラミック前駆添加剤とを含む前駆体系について例示する。
【0068】
Ceraset(登録商標)を、図5に示す構造に添加する。この系では、構造Aは有機系ブロックコポリマーであり、R=Hである。構造Bは、PEOドメインをターゲットとする相である。、R=デカボランで処理雰囲気が不活性である場合、得られる材料はナノ構造BC−SiCNである。R=デカボランで処理雰囲気がアンモニアである場合、得られるナノ構造生成物はSiCN−BNである。
【0069】
実施例7
本例では、本発明のある実施形態に基づくリビングラジカル重合及びROMPによるハイブリッドブロックコポリマーの合成を示す。
【0070】
この実施例では、好適な開始剤は、原子移動ラジカル重合(ATRP)によるリビングラジカル重合及びROMPを共に開始できる能力に基づいて選択される。スキーム3(図6)に、ROMPで合成したリビングポリマーをどのように4−ブロモメチルベンズアルデヒドで鎖末端官能化して臭化ベンジル鎖末端を有するポリマーを得るかを示す。この臭化ベンジル鎖末端部分は、次いで好適なビニルモノマーを用いた第二のブロックの合成に用いることができる。R=デカボランである場合、ハイブリッドブロックコポリマーが得られる。R′は、ATRPで合成されたブロックが別のセラミック前駆体に適合できるように選択できる。例えば、R′=PEO又はポリジメチルアミノエチルメタクリレートである場合、Ceraset(登録商標)のようなセラミック前駆体を組込むことができる。
【0071】
実施例8
本例では、本発明のある実施形態に基づくハイブリッドブロックコポリマーのインサイチュトリブロック形成について例示する。
【0072】
図7を参照すると、スキーム4に、1つのブロックがセラミック前駆体であるトリブロックコポリマーを合成出来ることを実証する。この実施例では、Ceraset(登録商標)がPEOブロックのヒドロキシル鎖末端と反応してCeraset(登録商標)とブロックコポリマーとの間にSi−O結合を生じるが、これはエンタルピー的に好ましい。これはCeraset(登録商標)存在下でのブロックコポリマーの集合時にその場で起こる。図8を参照すると、ヒドロキシル末端PEO(トレースA)とCeraset(登録商標)(ポリウレアシラザン)との反応で得られた生成物(トレースB)の13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルに反応の証拠をみることができる。図8から、官能化によって末端エチレン基のピークシフトが変化することが分かる。さらに、末端ヒドロキシル基の封鎖によってCeraset(登録商標)との反応が抑制されるが、本願出願人は、これによってPEOドメインへのCeraset(登録商標)の組込みが厳しく妨げられるだけでなく、規則構造の形成が阻害される可能性があることを観察した。
【0073】
実施例9
本例では、本発明のある実施形態に基づくROMPによるポリノルボルネンデカボラン含有量15モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成、次いでラメラ構造と有孔ラメラ構造を含む規則構造へのブロックコポリマーの自己集合、さらにラメラ構造と有孔ラメラ構造を含むナノ規則性セラミックへの自己集合ブロックコポリマーの熱分解について例示する。
【0074】
ノルボルネン溶液(50mLのCHClすなわち「DCM]中1.0g)を、ドライアイスアセトン浴を用いて−30℃に15分間冷却した。この溶液に80mgの第三世代Grubbs(GG3)触媒(Choi et al., Angew. Chem. Int Ed. 2003, 42, pp.1743−1746参照)を含有する5mL溶液を添加し、溶液を−30℃で30分間撹拌した。次いで反応混合物にノルボルネンデカボラン溶液(10mLのDCM中0.85g)を添加した。反応浴温度は−20℃に15分間維持した。5分間撹拌しながら2mLのエチルビニルエーテルで反応を奪活した。反応溶液を40mLのペンタンに滴下した。ペンタンの大部分はデカントし、ポリマーをDCMに再溶解した。ポリマーを溶出剤としてDCMを用いてシリカを通して濾過した。回収したポリマーを真空乾燥し、テトラヒドロフラン(THF)に再溶解し、600mLのペンタン中で沈殿させた。乾燥後の全収率は1.40gである。合成反応をスキーム5(図9)に示す。ブロックコポリマーのデカボランのモル%含量はプロトン核磁気共鳴(H NMR)によって求めた。
【0075】
ブロックコポリマーをクロロホルム(CHCL)に溶解し、溶媒を不活性雰囲気中で蒸発させた。得られた膜を、次いで窒素雰囲気中100℃で24時間熱アニーリングに付した。図10は自己集合ポリマーの透過型電子顕微鏡(TEM)明視野画像であり、ラメラ形態が大勢をなすナノスケール規則構造(例えば領域100)がみられる。ある部位では、ラメラの孔が観察できる(例えば領域200)。
【0076】
サンプルを次いでチューブ炉に移して窒素雰囲気中で加熱した。熱分解プロセスでは、サンプルを室温から5℃/minで400℃まで加熱した後、400℃で1時間保持した。次いで昇温サイクルを用いてサンプルを1000℃(1℃/min)にした。サンプルは1000℃で4時間保持した。熱分解セラミックスの構造を図11の走査型電子顕微鏡(SEM)画像に示す。図から、熱分解セラミックスが自己集合ポリマーの形態を継承し、有孔ラメラ構造の領域をもつラメラ構造であることが分かる。
【0077】
実施例10
本例では、本発明のある実施形態に基づくROMPによるポリノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成、次いで溶媒蒸発によるラメラ規則構造へのブロックコポリマーの自己集合、さらにラメラナノ規則性セラミックへの自己集合ブロックコポリマーの熱分解について例示する。
【0078】
ノルボルネン溶液(75mLのDCM中0.5g)を3回凍結融解した。この溶液に、既に2回凍結融解した40mgのGG3触媒を含有する3mLの溶液を添加した。これらの溶液を−20℃に冷却してから混合した。得られた混合物を−30℃で30分間撹拌した。ノルボルネンデカボラン溶液(10mLのDCM中0.5g)を3回凍結融解し、反応混合物に添加した。25分後に、10滴のエチルビニルエーテルで反応を奪活した。反応物をペンタン中で直接沈殿させ、白色沈殿を濾紙を設けたブフナー漏斗で濾過した。ポリマーを室温で一晩乾燥させて、0.81gの生成物を得た。ブロックコポリマーのデカボランモル%含量はプロトン核磁気共鳴によって求めた。
【0079】
ブロックコポリマーをクロロホルムに溶解し、溶媒を不活性雰囲気中で蒸発させた。溶媒蒸発中に自己集合が起こる。図12A〜図14Cは自己集合ポリマー(図12A)のTEM明視野画像並びにホウ素(図12Bの明領域)及び炭素(図12Cの明領域)組成マップであり、ポリノルボルネン層とポリノルボルネンデカボラン層が交互に並んだ純ラメラ状ナノスケール規則構造形態がみられる。
【0080】
乾燥膜を、次いで窒素雰囲気中100℃で24時間熱アニーリングに付した。サンプルを次いでチューブ炉に移して窒素雰囲気中で加熱した。熱分解プロセスでは、サンプルを室温から5℃/minで400℃まで加熱した後、400℃で1時間保持した。次いで昇温サイクルを用いてサンプルを1000℃(1℃/min)にした。サンプルは1000℃で4時間保持した。熱分解セラミックスの構造を図13のSEM画像に示す。熱分解セラミックスは自己集合ポリマーのラメラ形態を継承していた。
【0081】
実施例11
本例では、本発明のある実施形態に基づくROMPによるポリノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成、次いで溶媒蒸発によるシリンダ規則構造へのブロックコポリマーの自己集合、さらにシリンダ規則性メソ多孔質BCNセラミックへの自己集合ブロックコポリマーの熱分解について例示する。
【0082】
ノルボルネン溶液(100mLのDCM中1.5g)を、ドライアイスアセトン浴を用いて−30℃に15分間冷却した。この溶液に115mgのGG3触媒を含有する5mLの溶液を添加した。得られた混合物を−30℃で30分間撹拌した。反応混合物に、シリンジでノルボルネンデカボラン溶液(10mLのDCM中1.54g)を速やかに添加した。反応浴温度は−20℃に15分間維持し、放置して0℃まで暖め(15分)、30分間放置し続けて10℃まで暖めた。3mLのエチルビニルエーテルで反応を奪活した。15分後に反応溶液を濃縮し、DCMを添加して最終的に約50mL溶液にした。600mLのペンタンにポリマー溶液を滴下した。ペンタンの大部分をフィルター上にデカントし、溶液の残りは遠心分離管に入れて冷凍庫で一晩貯蔵した。ポリマーを室温(RT)で一晩乾燥させて、遠心分離管から2.62gの生成物を得た。全収率は、2.90gであった。
【0083】
ブロックコポリマーをテトラヒドロフランに溶解し、溶媒を不活性雰囲気中で蒸発させた。溶媒蒸発中に自己集合が起こる。図14A〜図14Cは、自己集合ポリマー(図14A)のTEM明視野画像並びにホウ素(図14B)及び炭素(図14C)組成マップであり、シリンダ状のポリノルボルネンとマトリックスとしてのポリノルボルネンデカボランを有するシリンダ状ナノスケール規則性形態がみられる。
【0084】
乾燥膜を、次いで窒素雰囲気中100℃で24時間熱アニーリングに付した。サンプルを次いでチューブ炉に移して窒素雰囲気中で加熱した。熱分解プロセスでは、サンプルを室温から5℃/minで400℃まで加熱した後、400℃で1時間保持した。次いで昇温サイクルを用いてサンプルを1000℃(1℃/min)にした。サンプルは1000℃で4時間保持した。熱分解セラミックスの構造を図15のSEM画像に示す。熱分解セラミックは、自己集合ポリマーのシリンダ形態を継承していた。ポリノルボルネンデカボランブロックはBCNセラミックマトリックスへとセラミック化するが、ポリノルボルネンブロックは分解してナノサイズの円筒形の孔が残る。
【0085】
実施例12
本例では、本発明のある実施形態に基づくROMPによるポリノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成、次いで溶媒蒸発によるシリンダ規則構造へのブロックコポリマーの自己集合、さらにシリンダ状規則性メソ多孔質BNセラミックへの自己集合ブロックコポリマーの熱分解について例示する。
【0086】
ノルボルネン溶液(50mLのDCM中2.5g)を、ドライアイス/アセトン浴を用いて−40℃に冷却した。この溶液を、191mgのGG3溶媒を含有する10mLの溶液に添加した。モノマーを漏斗から速やかに添加し、漏斗を約5〜10mLのDCMで濯いだ。混合後、反応を約−30℃で30分間継続した。次いで、反応混合物にシリンジでノルボルネンデカボラン溶液(20mLのDCM中2.5g)を速やかに添加した。反応浴温度は−20℃〜−10℃に30〜40分間維持した。2.5mLのエチルビニルエーテルで反応を奪活し、0℃で15分間撹拌した。反応溶液は、溶出剤としてDCMを用いてシリカを通して濾過した。全量を約100mLまで減らし、300mLのペンタンと150mLの石油エーテルの混液に滴下した。ペンタン/石油エーテルの大部分をデカントし、残りの溶媒をロータリエバポレータで除去した。ポリマーを室温で真空乾燥した。全収率は4.76gであった。
【0087】
ブロックコポリマーをテトラヒドロフランに溶解し、溶媒を不活性雰囲気中で蒸発させた。溶媒蒸発中に自己集合が起こる。乾燥膜を、次いで窒素雰囲気中100℃で24時間熱アニーリングに付した。サンプルを次いでチューブ炉に移して、アンモニア雰囲気中で加熱した。熱分解プロセスでは、サンプルを室温から5℃/minで400℃まで加熱した後、400℃で1時間保持した。次いで昇温サイクルを用いてサンプルを1000℃(1℃/min)にした。サンプルは1000℃で4時間保持した。熱分解セラミックスの構造を図16に示す。熱分解セラミックスはシリンダ形態を示し、組成は主にBNである。BET試験によって、図17に例示するように規則性セラミックが高い表面積をもつメソ多孔質材料であることを確認した。
【0088】
実施例13
本例では、ROMPによるポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成について例示するが、これらのブロックはポリノルボルネン骨格とシラザン基とデカボランペンダント基からなる。次いでブロックコポリマーの自己集合によって、ポリノルボルネンシラザンとポリノルボルネンデカボランとを明瞭に異なるドメインとして有する規則構造を生成する。さらに自己集合ブロックコポリマーの熱分解によって、本発明のある実施形態に係るラメラ構造を有する規則性セラミックスを生成した。
【0089】
ノルボルネンヘキサメチルシラザン溶液(36mLのDCM中2.00g)を、ドライアイスアセトン浴を用いて−40℃に冷却した。この溶液を、43mgのGG3触媒を含有する3mLの溶液に添加した。約−30℃の浴中で30分間保持した後、反応混合物にノルボルネンデカボラン溶液(10mLのDCM中1.27g)を添加した。反応浴温度は−20℃〜−10℃に15分間維持した。2.5mLのエチルビニルエーテルで反応を奪活し、0℃で15分間撹拌した。合成反応をスキーム6(図18)に示す。溶液を不活性雰囲気中で蒸発させた。蒸発中に規則構造体が形成された。TEMマイクロ構造を図19Aにホウ素(図19B)及びケイ素(図19C)マップと共に示す。Si含有ポリノルボルネンシラザンブロックとB含有ポリノルボルネンデカボランはラメラ構造内で交互に層をなす。
【0090】
乾燥膜を、次いで窒素雰囲気中100℃で24時間熱アニーリングに付した。サンプルを次いでチューブ炉に移して、アンモニア雰囲気中で加熱した。熱分解プロセスでは、サンプルを室温から5℃/minで400℃まで加熱した後、400℃で1時間保持した。次いで昇温サイクルを用いてサンプルを1000℃(1℃/min)にした。サンプルは1000℃で4時間保持した。熱分解セラミックスの構造を図20に示す。熱分解セラミックスはラメラ形態のナノ規則構造を示し、自己集合ポリマーの形態的特徴が保たれている。
【0091】
以上説明してきた実施形態の構造、機能及び操作のあるものは、本発明の実施には必ずしも必要ではなく、例示的な実施形態を十分に説明するために記載したものにすぎない。また、本明細書で引用した特許及び刊行物に記載された特定の構造、機能及び操作を、本発明で実施することもできるが、本発明の実施に必須のものではない。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想及び技術的範囲から何ら逸脱することなく、具体的に記載したもの以外の方法で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】ROMPによるハイブリッドブロックコポリマーの合成スキーム。
【図2】例示的なROMPで合成したハイブリッドブロックコポリマー(A)、並びにブロックコポリマーと共に一次/二次構造体の製造に使用できる好適なセラミック前駆添加剤(B)を示す図。
【図3】ハイブリッドブロックコポリマーの合成(R=Hの場合)及び完全に無機系である無機系ブロックコポリマーの合成(R=デカボランの場合)を示す図。
【図4】有機系ブロックコポリマー(4A)とセラミック前駆添加剤(4B)とハイブリッドブロックコポリマー(4C)とを含むセラミック前駆体系を示す図。
【図5】実施例6に記載のCeraset(登録商標)含有セラミック前駆体系に使用するための有機系ブロックコポリマー(A)を示す図。
【図6】リビングラジカル重合及びROMPによるハイブリッドブロックコポリマーの合成スキーム。
【図7】ハイブリッドブロックコポリマーのインサイチュトリブロック合成スキーム。
【図8】PEOの13C NMRスペクトル(トレースA)及びCeraset(登録商標)との反応後のPEOの13C NMRスペクトル(トレースB)。
【図9】ROMPによるポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成スキーム。
【図10】ノルボルネンデカボラン含有量15モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのTEM画像。
【図11】ノルボルネンデカボラン含有量15モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のラメラ構造と有孔ラメラ構造との混成を示すSEM画像。
【図12A】ノルボルネンデカボラン含有量30モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのラメラ構造のTEM画像。
【図12B】図12AのTEM画像のホウ素のケミカルマップ。
【図12C】図12AのTEM画像の炭素のケミカルマップ。
【図13】ノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のラメラ構造を示すSEM画像。
【図14】ノルボルネンデカボラン含有量30モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのシリンダ構造のTEM画像(14A)並びにホウ素(14B)及び炭素(14C)のケミカルマップ。
【図15】ノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のシリンダ構造を示すSEM画像。
【図16】ノルボルネンデカボラン含有量30モル%のポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のSEM画像。左側の挿入図にシリンダ構造を示し、右側挿入図に材料のBCN組成を示す。
【図17】ノルボルネンデカボラン含有量30モル%の自己集合ポリノルボルネン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーからのBNメソ多孔質セラミックのBET吸・脱着等温曲線。
【図18】ROMPによるポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーの合成スキーム。
【図19】自己集合ポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマーのラメラ構造のTEM画像(19A)、並びにホウ素(19B)及びケイ素(19C)のケミカルマップ。
【図20】ポリノルボルネンシラザン−ブロック−ポリノルボルネンデカボランコポリマー由来の熱分解セラミック構造体のラメラ構造を示すSEM画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のブロックを含むブロックコポリマーであって、少なくとも1つのブロックが無機系である、ブロックコポリマー。
【請求項2】
無機系ブロックコポリマーの製造方法であって、
a)第一のポリマーセグメントを合成する段階、
b)第二のポリマーセグメントを合成する段階、及び
c)第二のポリマーセグメントを第一のポリマーセグメントに結合して、1以上の無機系ブロックを含む無機系ブロックコポリマーを形成する段階であって、該結合が共有結合を含み、かつ第一のポリマーセグメントから第二のポリマーセグメントを成長させることによる第二のポリマーセグメント合成の際のその場での結合、第二のポリマーセグメント合成後の結合、及びこれらの組合せからなる群から選択される方法で実施される段階
を含んでなる方法。
【請求項3】
(a)2以上の相に分離する能力に差のある2以上のセグメントを含む分子であるセラミック前駆種であって、2以上のセグメントの少なくとも1つが無機系であるセラミック前駆種を調製する段階、及び
(b)前駆種を約1nm〜約100μmの次元属性を有する一次構造に自己集合させる段階、
を含む方法。
【請求項4】
前記セラミック前駆種が無機系ブロックコポリマーを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記無機系ブロックコポリマーがハイブリッドブロックコポリマーである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記一次構造を熱分解して二次セラミック構造を形成する段階をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項7】
セラミック前駆添加剤を添加する段階をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック前駆添加剤が、ポリシラザン、ポリカルボラン、ポリウレアシラザン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリボラジン、ポリボラジレン、ポリシロキサン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記熱分解段階が、多孔質セラミック構造体、緻密化セラミック構造体及びこれらの組合せからなる群から選択されるセラミック生成物の形成をもたらす、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック生成物が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭窒化ケイ素ホウ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭窒化ホウ素、酸炭化ケイ素及びこれらの組合せからなる群から選択される組成物を含む、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図18】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−126664(P2007−126664A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−298859(P2006−298859)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】