説明

ナノダイヤモンド含有中間転写部材

【課題】本発明の目的は、良好な導電性または抵抗率を有する中間転写部材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ナノダイヤモンドからなる中間転写部材であり、前記ナノダイヤモンドが、約30〜約100ナノメートルの直径を有し、前記ナノダイヤモンドが、ダイヤモンドコアとその上のグラファイトシェルとからなり、前記ダイヤモンドコアが約20〜約99.9重量パーセントの量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示されているのは、中間転写部材、より詳しくは、静電写真(electrostatographic)、たとえば電子写真(xerographic)、たとえばデジタル、イメージ・オン・イメージなどの機械または装置およびプリンタにおける、現像された画像を転写するのに有用な中間転写部材である。実施態様においては、市販されている、たとえば、不活性なダイヤモンドコアと導電性グラファイトシェルを有するコアシェル構造で構成される、ナノダイヤモンドからなる中間転写部材が選択される。その実施態様においては、ナノダイヤモンドが、適切なポリマー、たとえばポリイミドまたはポリカーボネートの中に分散されるか、またはそれらと混合される。
【背景技術】
【0002】
中間転写部材、たとえば本発明の開示のベルト(ITB)にはいくつもの利点があるが、たとえば、主として、表面(この表面は容易に変性することが可能である)上の炭素構造に直接結合している炭素、酸素、および窒素のような一連の官能性化学基の観点から、水および有機溶媒のいずれにも容易に分散させることが可能なナノダイヤモンドを使用すること、長期間にわたって優れた導電性が維持されること、寸法安定性があること、長期間にわたってITBが湿度の影響を受けにくいこと、ポリマー溶液中での分散性に優れていること、耐摩耗性(wear and abrastion resistance)があること、および表面摩擦特性が低く許容されることなどが挙げられる。
【0003】
画像形成部材と中間転写部材との間の電位差によってトナー画像が静電的に転写される静電写真印刷機械においては、トナー粒子の中間転写部材への転写およびその保持が実質的に完全であって、それにより最終的にその受像基材に転写された画像が高い解像度を有するようにしなければならない。画像を構成するトナー粒子の大部分または全部が転写されて、その画像が転写された後の表面には残存トナーがほとんど残っていない場合には、実質的に約100パーセントのトナー転写が起きたことになる。
【0004】
中間転写部材はいくつもの利点を有していてよいが、そのような利点としてはたとえば、適度な処理速度で高い処理能力が得られること、1種または複数の構成色の同期現像(synchronous development)を使用し、一つまたは複数の転写ステーションを使用した着色系において最終的なカラートナー画像の位置合わせが改良されること、および選択しうる基材の数が増やせることなどが挙げられる。しかしながら、中間転写部材を使用することの欠点は、トナー粒子と転写部材との間で起きる電荷交換の可能性を許容するには通常複数の転写操作が必要であり、そのために結局は、トナー転写が完全とはいかなくなり、受像基材の上で低解像度の画像が得られ、画像の劣化につながるということである。カラー画像の場合においては、その画像がさらに色ずれや退色を起こす可能性がある。
【0005】
たとえば、外側層に導電性フィラーたとえばイオン系添加剤および/またはカーボンブラックを添加することによって中間転写部材の抵抗率を調節しようとする試みが、特許文献1に開示されており、そこでは、ポリイミド中間転写部材層の中でフッ素化炭素フィラーを使用している。しかしながら、そのようなフィラーを使用することに伴って、溶解されていない粒子がフルオロ化ポリマーの表面にブルームしたり移行したりすることが多く、それがポリマーの欠陥の原因となり、それにより抵抗率が不均質となって、そのために耐電防止性が低下し、機械的強度特性が低下するという問題が起こりうる。さらに、ITB表面上のイオン系添加剤が、トナーの放出を妨害する可能性もある。さらに、ポリマーの中に気泡が出現する可能性もあり、それらの内のあるものは、顕微鏡を使用した場合にのみ観察できるし、他のものは裸眼でも観察可能であるほど大きく、それらの気泡によって、電気的な性質が低下するかまたは不均質になり、機械的性質も低下する。
【0006】
さらに、イオン系添加剤自体が、温度、湿度および操作時間における変化の影響を受けやすい。そのような感受性の高さが、抵抗率の範囲を制限することが多い。たとえば、湿度が約20パーセントから80パーセント相対湿度へと高くなると、抵抗率が通常2桁までまたはそれ以上低下する。これの影響で、操作上またはプロセスのラティチュードが制限される。
【0007】
さらに、それらの系においてはイオン輸送も起こりうる。イオンの輸送によって、電荷の交換が起きたり転写が不十分となったりして、そのために画像解像度が低下し、画像が劣化し、それによって複写品質に悪影響が出る。カラー系においては、色ずれおよび退色を含めて、さらなる悪影響が生じる。イオン輸送はさらに、繰り返して使用した後のポリマー部材の抵抗率を上げる。このことが、プロセスおよび操作上のラティチュードを狭め、結局のところ、イオン充填ポリマー部材は使用不可能となるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,397,034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、優れた転写能力を有し、導電性であり、より詳しくは、たとえばナノダイヤモンドが存在しない中間転写部材に比較して、改良された導電性または抵抗率を有し、そして優れた湿度不感受特性を有していて、解像度の問題が最小の現像画像を得ることが可能な高い複写品質が得られるような、中間転写部材が提供されることが望まれている。さらに、融着可能な中間転写ベルトを提供して、パズルカット(puzzle cut)継ぎ目を有していなくてもよいが、それを有していてもよく、代わりに融着可能な継ぎ目を有していて、それにより、大きな労働力を必要とする工程、たとえば人間が指を使ってパズルカット継ぎ目をつなぎ合わせるような工程を用いず、また長時間の高温高湿なコンディショニング工程を用いずに製造すること可能なベルトが提供されることも望まれている。さらには、優れた耐摩耗性を有する、より詳しくは、たとえばナノダイヤモンドが存在しない中間転写部材に比較して、改良された機械的性質を有する中間転写部材が提供されることもまた望まれている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記要求のうち少なくとも一つ満足する中間転写部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ナノダイヤモンドからなる中間転写部材である。また、前記ナノダイヤモンドが、約30〜約100ナノメートルの直径を有し、前記ナノダイヤモンドが、ダイヤモンドコアとその上のグラファイトシェルとからなり、前記ダイヤモンドコアが約20〜約99.9重量パーセントの量で存在することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施態様において開示されているのは、ナノダイヤモンドを含む基材からなる中間転写部材、ナノダイヤモンドを含む基材からなる中間体ベルトのような中間転写部材、その抵抗率が、約10〜約1013ohm/square、約10〜約1012ohm/square、より好ましくは約10〜約1011ohm/squareである中間転写部材である。
【0013】
実施態様において開示されているのは、長期間にわたって優れた抵抗率を維持できるナノダイヤモンドを含む基材からなる中間転写部材である。より詳しくは、たとえば、ナノダイヤモンドを含む基材からなる中間転写部材を用いると、その中間転写部材の表面抵抗率がほとんど変化しない。
【0014】
実施態様において開示されているのは、ナノダイヤモンドを含む基材からなる中間転写部材であって、その部材が優れた耐摩耗性を有するものである。
【0015】
実施態様において開示されているのは、ナノダイヤモンドを含む基材からなる中間転写部材であって、その部材が、低い摩擦係数を有していて、それにより所望の滑りやすい表面が可能となるものである。
【0016】
さらに本発明の開示は、実施態様において、記録媒体上に画像を形成させるための装置を提供するが、それに含まれるのは、その上に静電潜像を受像するための電荷保持性表面、トナーをその電荷保持性表面に適用して静電潜像を現像し、電荷保持性表面の上に現像された画像を形成させる現像要素、その現像された画像を電荷保持性表面から基材へ転写させるための融着可能な中間転写ベルト、および定着要素である。
【0017】
本発明の開示が関連する態様は、ナノダイヤモンドからなる中間転写部材、ナノダイヤモンドからなる転写媒体(そのナノダイヤモンドは、ダイヤモンドコアとグラファイトシェルとからなっている)、および記録媒体の上に画像を形成するための装置であって、それに含まれるのが、その上に静電潜像を受像するための電荷保持性表面、トナーをその電荷保持性表面に適用して静電潜像を現像し、電荷保持性表面の上に現像された画像を形成させる現像要素、ならびにナノダイヤモンドまたはナノダイヤモンドの混合物を含む基材からなる中間転写部材である。
【0018】
たとえばナノブロックス・インコーポレーテッド(NANOBLOX,Inc.)から入手可能な、ナノダイヤモンドは、たとえば、硬くて不活性なダイヤモンドコアと導電性グラファイトシェルとを有するコア−シェル構造を含み、ここでそのグラファイトシェル表面には、たとえば、炭素が約76パーセント、酸素が約6パーセント、窒素が約10パーセントのような一連の官能性化学基が、グラファイト炭素に直接結合されて、それによって、ナノダイヤモンドに導電性を付与している。より詳しくは、ナノダイヤモンドは、合成および/または天然のダイヤモンドのダイヤモンドブレンド物をデトネーションさせ、次いで化学的に精製することによって調製することが可能であって、そのダイヤモンド結晶の直径が、たとえば約1〜約10ナノメートル、特には平均直径が約5ナノメートルであり、B.E.T.表面積が約270〜約380平方メートル/グラム以上で、平均粒度が約20〜約50ナノメートルであり、そしてユニークな丸い形状を有していて、それによって、ダイヤモンドの硬度および耐摩耗性に加えて優れた減摩特性を与えている。
【0019】
ナノダイヤモンドは、ナノブロックス・インコーポレーテッド(NANOBLOX,Inc.)から、粉体または分散体いずれかの形態で市販されている。たとえば、市販されているナノダイヤモンドブラック(NB50)は、50パーセントのsp炭素と50パーセントのsp炭素を有し(spはダイヤモンドコア、spはグラファイトエンベロープ、B.E.T.表面積=約460m/g)、ナノダイヤモンド(NB90)は90パーセントのsp炭素と10パーセントのsp炭素を有し(spはダイヤモンドコア、spはグラファイトエンベロープ、B.E.T.表面積=約460m/g)、そしてナノダイヤモンド(NB98)は98パーセントのsp炭素と2パーセントのsp炭素を有する(spはダイヤモンドコア、spはグラファイトエンベロープ)。表面変性ナノダイヤモンドもまたナノブロックス・インコーポレーテッド(NANOBLOX,Inc.)から入手可能であるが、それらは、−OH、−COOH、−NHまたは四級化アミン、および−CHを用いて変性されていて、それらに相当するナノダイヤモンドは、NB90−OH、NB90−COOH、NB90−NHまたはNB90−四級化アミン、およびNB90−CHと呼ばれている。金属で変性されたナノダイヤモンドもまたナノブロックス・インコーポレーテッド(NANOBLOX,Inc.)から入手可能であるが、それらはCu、Fe、Ag、Au、およびAlで変性されていて、それらに相当するナノダイヤモンドは、NB90−Cu、NB90−Fe、NB90−Ag、NB90−Au、およびNB90−Alと呼ばれている。これらのナノダイヤモンドは、水性分散体または溶媒分散体のいずれかの中に容易に分散される。
【0020】
それとは対照的に、カーボンブラック表面は、そのエッジにいくぶんかの酸素および水素を有するグラファイト面からなっているが、それに対して、実施態様におけるナノダイヤモンドの表面は、炭素構造に直接結合された一連の官能性化学基(C;約76パーセント、O;約6パーセント、N;約10パーセント)を有するグラファイト面からなっていて、そのために、ナノダイヤモンドの方がカーボンブラックよりも容易に分散される。さらに、ナノダイヤモンドは、そのダイヤモンドコアが硬いために、中間転写部材(ITB)に改良された機械的性質を与える筈だと考えられている。
【0021】
そのコア−シェルナノダイヤモンドには、ダイヤモンドコアが、たとえば、約40〜約99.9重量パーセント、約50〜約98重量パーセント、または約70〜約95重量パーセントの量で存在している。そのコア−シェルナノダイヤモンドにはさらに、たとえば、グラファイトならびにたとえば−OH、−COOH、−NH、または四級化アミン、−CH、C、Cu、Fe、Ag、Au、およびAlを用いて変性された変性グラファイトからなる導電性シェルが含まれ、その量はたとえば、約0.1〜約60重量パーセント、約2〜約50重量パーセント、または約5〜約30重量パーセントである。
【0022】
ナノダイヤモンドは、中間転写部材を基準にして、約3〜約30重量パーセント、約1〜約30重量パーセント、約5〜約20重量パーセント、または約10〜約15重量パーセントの量で存在させる。
【0023】
中間転写部材の中に存在するさらなる成分の例は、各種の公知のポリマーおよび導電性成分である。
【0024】
ナノダイヤモンドを分散させるために選択されるポリマーバインダの例としては、たとえば、ポリイミド(熱硬化性または熱可塑性)、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリエチレン−コ−ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0025】
バインダにおいて選択される急速硬化性ポリイミドポリマーの例としては、たとえば、ブイテック(VTEC)(商標)PI1388、080−051、851、302、203、201およびPETI−5が挙げられるが、これらはすべて、ペンシルバニア州レディング(Reading,PA)のリチャード・ブレイン・インターナショナル・インコーポレーテッド(Richard Blaine International,Incorporated)から入手可能である。それらの熱硬化性ポリイミドは、適切な温度、さらに詳しくは約180℃〜約260℃で、短時間たとえば、約10〜約120分間、および約20〜約60分間かけて硬化させ、たとえば約5,000〜約500,000、または約10,000〜約100,000の数平均分子量と、約50,000〜約5,000,000、または約100,000〜約1,000,000の重量平均分子量とを有している。さらに、バインダとして、ブイテック(VTEC)(商標)PIポリイミド前駆体よりも高い温度(300℃を超える)で通常硬化される熱硬化性ポリイミド前駆体を選択することもできるが、そのような高温硬化前駆体としては、たとえば、パイア−M.L(PYRE−M.L)(登録商標)RC−5019、RC−5057、RC−5069、RC−5097、RC−5053、およびRK−692(いずれも、ニュージャージー州パーリン(Parlin,NJ)のインダストリアル・サミット・テクノロジー・コーポレーション(Industial Summit Technology Corporation)から市販);RP−46およびRP−50(両方とも、バージニア州ハンプトン(Hampton,VA)のユニテック・LLC(Unitech LLC)から市販);デュリミド(DURIMIDE)(登録商標)100(ロードアイランド州ノース・キングズタウン(North Kingstown,RI)のフジフィルム・エレクトロニック・マテリアルズ・U.S.A.(FUJIFILM Electronic Materials U.S.A.)から市販);ならびにカプトン(KAPTON)(登録商標)HN、VNおよびFN(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイー・アイ・デュポン(E.I.Dupont)から市販)が挙げられ、それらを中間転写部材成分の、たとえば、約70〜約97重量パーセント、または約80〜約95重量パーセントの量で存在させる。
【0026】
特に選択される熱可塑性ポリイミドバインダの例は、次式で表されるデラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイー・アイ・デュポン(E.I.Dupont)から市販されているカプトン(KAPTON)(登録商標)KJ、
【化1】

[式中、xは2に等しく;yは2に等しく;mおよびnは約10〜約300である];および次式で表されるウェスト・レイク・プラツチック・カンパニー(West Lake Plastic Company)から市販されているイミデックス(IMIDEX)(登録商標)である。
【化2】

[式中、zは1に等しく、qは約10〜約300である]
【0027】
選択されるポリカーボネートバインダの例としては、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(これは、ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリジンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(これは、ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)などが挙げられる。実施態様においては、中間転写部材のバインダが、マクロロン(MAKROLON)(登録商標)として市販されている、たとえば約50,000〜約500,000の重量平均分子量を有するビスフェノール−A−ポリカーボネート樹脂からなる。
【0028】
中間転写部材の中に存在するさらなる成分の例は、約3〜約20重量パーセントの量で存在する各種の公知の導電性成分であるが、そのようなものとしてはたとえば第一および第二のポリアニリンおよびカーボンブラックが挙げられる。実施態様においては、そのポリアニリン成分は、たとえば約0.5〜約5、約1.1〜約2.3、約1.2〜約2、約1.5〜約1.9、または約1.7ミクロンの比較的小さな粒径を有する。
【0029】
たとえばITBのような転写部材のために選択されるポリアニリンの具体例は、フィンランド(Finland)のパニポール・オイ(Panipol Oy)から市販されているパニポール(PANIPOL)(商標)F、およびリグノスルホン酸グラフト化ポリアニリンである。
【0030】
中間転写部材のカーボンブラックの例としては、キャボット・コーポレーション(Cabot Corporation)から入手可能な、バルカン(VULCAN)(登録商標)カーボンブラック、リーガル(REGAL)(登録商標)カーボンブラック、およびブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)カーボンブラックが挙げられる。導電性カーボンブラックの具体例としては、ブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)1000(B.E.T.表面積=343m/g、DBP吸収量=105mL/g)、ブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)880(B.E.T.表面積=240m/g、DBP吸収量=106mL/g)、ブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)800(B.E.T.表面積=230m/g、DBP吸収量=68mL/g)、ブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)L(B.E.T.表面積=138m/g、DBP吸収量=61mL/g)、ブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)570(B.E.T.表面積=110m/g、DBP吸収量=114mL/g)、ブラック・パールス(BLACK PEARLS)(登録商標)170(B.E.T.表面積=35m/g、DBP吸収量=122mL/g)、バルカン(VULCAN)(登録商標)XC72(B.E.T.表面積=254m/g、DBP吸収量=176mL/g)、バルカン(VULCAN)(登録商標)XC72R(綿毛状のバルカン(VULCAN)(登録商標)XC72)、バルカン(VULCAN)(登録商標)XC605、バルカン(VULCAN)(登録商標)XC305、リーガル(REGAL)(登録商標)660(B.E.T.表面積=112m/g、DBP吸収量=59mL/g)、リーガル(REGAL)(登録商標)400(B.E.T.表面積=96m/g、DBP吸収量=69mL/g)、およびリーガル(REGAL)(登録商標)330(B.E.T.表面積=94m/g、DBP吸収量=71mL/g)が挙げられる。カーボンブラックの中の空孔によるフタル酸ジブチル(DBP)吸収量を、カーボンブラックの構造の目安として使用している。構造が高いほど、ボイドが多い程、DBP吸収量が多くなる。
【0031】
たとえば、ナノダイヤモンドは急速硬化性の熱硬化性ポリイミド/N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の溶液の中に分散させることが可能で、次いでその分散体を、公知のドローバーコーティング法を使用してガラスプレートに塗布またはコーティングすることができる。得られる1種または複数のフィルムは、ガラスプレートの上に残したままで、高温たとえば約100℃〜約400℃、約150℃〜約300℃、または約175℃〜約200℃で、十分な時間たとえば、約20〜約180分間、または約75〜約100分間かけて乾燥させることができる。乾燥し、冷却して室温とした後に、ガラスプレートまたは複数ガラスプレートの上のその1種または複数のフィルムを水の中に一夜、約18〜23時間浸漬させ、次いで、形成されたフィルムの約50〜約150ミクロンの厚みのフィルムをガラスから剥離させると、本明細書に記載のような1種または複数の官能性中間転写部材が得られる。
【0032】
実施態様においては、ナノダイヤモンドを、ビスフェノール−A−ポリカーボネート/塩化メチレン(CHCl)溶液の中に分散させることが可能であり、次いで、その分散体を、公知のドローバーコーティング法を用いて、公知の厚みたとえば、約3.5ミルの二軸配向させたポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材(カレデックス(KALEDEX)(商標)2000)に塗布またはコーティングすることができる。得られる1種または複数のフィルムは、PEN基材の上に維持したままで、高温たとえば、約100℃〜約200℃、または約120℃〜約160℃で、十分な時間たとえば、約1〜約30分間、または約5〜約15分間かけて乾燥させることができる。乾燥し、冷却して室温、約23℃〜約25℃とした後に、PEN基材または複数のPEN基材の上の1種または複数のフィルムを、自動的にその基材から剥離させると、本明細書に記載のような1種または複数の官能性中間転写部材が得られる。
【0033】
開示された中間転写部材は、実施態様においては、融着可能であるが、これはすなわち、その部材たとえばベルトの継ぎ目が、融着可能である。より詳しくは、超音波で融着させて、継ぎ目を作ることができる。開示された中間転写部材の表面抵抗率は、たとえば、約10〜約1013ohm/square、または約1010〜約1012ohm/squareである。その中間転写融着性部材のシート抵抗率は、たとえば、約10〜約1013ohm/sq、または約1010〜約1012ohm/squareである。
【0034】
本明細書で説明している中間転写部材、たとえば中間転写ベルトは、電子写真(xerographic)印刷を含めて、各種の印刷および複写システムのために選択することができる。たとえば、開示された中間転写部材は、多重画像形成システムの中に組み込むことが可能であって、そこでは、転写されたそれぞれの画像が、画像形成ステーションの画像形成ドラムまたは光導電性ドラムの上に形成され、次いでこれらの画像のそれぞれが、現像ステーションで現像され、中間転写部材に転写される。複数の画像が光導電体の上に形成され、次いで現像され、そして次いで中間転写部材に転写されてもよい。また別な方法においては、それぞれの画像が、光導電体ドラムまたは感光体ドラムの上に形成され、現像され、そして位置合わせしながら中間転写部材に転写されてもよい。一つの実施態様においては、その多重画像システムがカラー複写システムであって、そこで、複写するべき画像のそれぞれの色を感光体ドラムの上に形成させ、現像し、中間転写部材に転写する。
【0035】
トナー潜像が感光体ドラムから中間転写部材へ転写された後に、その中間転写部材を加熱加圧下に受像基材たとえば紙に接触させてもよい。次いで、その中間転写部材の上のトナー画像が、基材たとえば紙に画像の形態で転写、定着される。
【0036】
本明細書に説明された画像形成システム、およびその他公知の画像形成システムおよび印刷システム中に存在する中間転写部材は、シート、ウェブ、ベルト(エンドレスベルトおよびエンドレス継ぎ目ありフレキシブルベルトを含む)、ローラー、フィルム、フォイル、ストリップ、コイル、シリンダー、ドラム、エンドレスストリップ、および円板の形状であってよい。中間転写部材は、単一層からなっていても、あるいは複数の層たとえば約2〜約5層でなっていてもよい。中間転写部材の円周は、特にフィルムまたはベルト形状に適用するならば、たとえば、約250〜約2,500ミリメートル、約1,500〜約2,500ミリメートル、または約2,000〜約2,200ミリメートルで、対応する幅が、たとえば、約100〜約1,000ミリメートル、約200〜約500ミリメートル、または約300〜約400ミリメートルである。
【実施例】
【0037】
<比較例1:カーボンブラックからなる中間転写部材の調製>
キャボット・コーポレーション(Cabot Corporation)から入手したバルカン(VULCAN)(登録商標)XC72R(B.E.T.表面積=約254m/g)カーボンブラック(CB)を、ポリアミド酸溶液の、ブイテック(VTEC)(商標)PI1388(PI、NMP中固形分20重量パーセント、リチャード・ブレイン・インターナショナル・インコーポレーテッド(Richard Blaine International,Inc.)から入手)と、重量比を変化させながら、混合した(比較例1(A)においてはCB/PI=5/95、比較例1(B)においてはCB/PI=6/94、比較例1(C)においてはCB/PI=7/93)。2ミリメートルのステンレス鋼ショットを用い160rpmで一夜、約23時間かけてボールミル摩砕をすると、均一な分散体が得られたので、次いでドローバーコーティング法を使用してガラスプレートの上にコーティングした。得られたそれぞれのフィルムを、ガラスプレートの上に残したままで、100℃で20分間、次いで204℃でさらに20分間かけて乾燥させた。乾燥し、室温、約23℃〜25℃に冷却してから、それぞれのガラスプレートの上の個別のフィルムを、一夜、約23時間、水中に浸漬させ、そうして得られた個々の50ミクロン厚みの自立性フィルムを、個々のガラスプレートから剥離させた。
【0038】
<実施例I:ナノダイヤモンド/ポリイミドからなる中間転写部材の調製>
ナノブロックス・インコーポレーテッド(NANOBLOX Inc.)から入手したナノダイヤモンドNB90(ND)を、ポリアミド酸の溶液の、ブイテック(VTEC)(商標)PI1388(PI、NMP中固形分20重量パーセント、リチャード・ブレイン・インターナショナル・インコーポレーテッド(Richard Blaine International,Inc.)から入手)と、重量比を変化させながら、混合した(実施例I(A)においてはND/PI=5/95、実施例I(B)においてはND/PI=10/90)。2ミリメートルのステンレス鋼ショットを用い160rpmで一夜、約23時間かけてボールミル摩砕をすると、均一な分散体が得られたので、次いでドローバーコーティング法を使用してガラスプレートの上にコーティングした。それぞれのフィルムを、ガラスプレートの上に残したままで、100℃で20分間、次いで204℃でさらに20分間かけて乾燥させた。乾燥し、室温、約23℃〜25℃に冷却してから、それぞれのガラスプレートの上の個別のフィルムを、一夜、約23時間、水中に浸漬させ、そうして得られた個々の50ミクロン厚みの自立性フィルムを、個々のガラスプレートから剥離させた。
【0039】
<実施例II:ナノダイヤモンド/ポリカーボネートからなる中間転写部材の調製>
1グラムのナノダイヤモンドNB90(ナノブロックス・インコーポレーテッド(NANOBLOX Inc.)から入手(ND))を、9グラムのビスフェノール−A−ポリカーボネート、マクロロン(MAKROLON)(登録商標)5705(PC)および100グラムの塩化メチレンと混合した。2ミリメートルのステンレス鋼ショットを用い、一夜、23時間かけてこの混合物をボールミル摩砕すると、均一な分散体が得られた。次いで、その分散体を、公知のドローバーコーティング法を使用して、厚み3.5ミルの二軸配向させたポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材(カレデックス(KALEDEX)(商標)2000)の上にコーティングした。得られたフィルムを、PEN基材の上に残したままで、約120℃で1分かけて乾燥させた。乾燥し、冷却して室温とした後に、PEN基材の上のフィルムを、基材から自動的に剥離すると、ナノダイヤモンド/ポリカーボネート(ND/PC)でその重量比が10/90の、20ミクロンの厚みの中間転写部材が得られた。
【0040】
<表面抵抗率測定>
比較例1(A)、1(B)、および1(C)、ならびに実施例I(A)およびI(B)のITB機器について、ハイ・レジスティビティ・メーター(High Resistivity Meter)(ハイレスタ(Hiresta)−Up−MCP−HT450、三菱化学(株)(Mitsubishi Chemical Corp.)製)を用いて表面抵抗率(500V、場所を変えての4個の測定値の平均値、72゜F/室内湿度65パーセント)を測定したが、その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
一般的には、10〜1013ohm/squareの表面抵抗率が、多くの場合適切なITB範囲である。カーボンブラックを用いた比較例のITB機器では、CBの担持パーセントにおけるわずかな、たとえば1重量パーセントの違いでも、導電性が高くなりすぎるか、または導電性が不十分かのいずれかの面で表面抵抗率に悪影響が出るが、その理由は主として、必要とされるCBの担持量がパーコレーション曲線の急峻な部分に位置しているからであって、このことは製造における安定性を達成するには問題となる。比較として判るように、開示されたコア−シェルナノダイヤモンド(ND)を含む実施例Iおよび実施例IIの中間転写ベルトは、NDの担持率が約5〜約10重量パーセントで変化しても、より適切な範囲の約1010〜約1013ohm/squareの中に表面抵抗率がある。
【0043】
さらに、実施例IおよびIIのベルトは、ポリアニリンベルトに比較すると融着された継ぎ目における抵抗率の変化がより少ないであろうと考えられる。さらに、ナノダイヤモンドは、ペンシルバニア州レディング(Reading,PA)のリチャード・ブレイン・インターナショナル・インコーポレーテッド(Richard Blaine International,Inc.)から入手可能なブイテック(VTEC)(商標)PI1388の硬化物中に分散させると、その物質は、イー・アイ・デュポン(E.I.Dupont)のカプトン(KAPTON)(登録商標)HNフィルムよりも、湿度に対する感度が低く、表面の摩擦特性も低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノダイヤモンドからなる中間転写部材。
【請求項2】
前記ナノダイヤモンドが、30〜100ナノメートルの直径を有し、前記ナノダイヤモンドが、ダイヤモンドコアとその上のグラファイトシェルとからなり、前記ダイヤモンドコアが20〜99.9重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項3】
前記部材がベルトの形状であり、前記ナノダイヤモンドが、50パーセントのsp炭素と50パーセントのsp炭素とを有する、請求項1に記載の中間転写部材。
【請求項4】
前記ナノダイヤモンドが、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリフッ化ビニリデン、またはポリエチレン−コ−ポリテトラフルオロエチレンの中に分散されて、1〜75パーセントの量で存在している、請求項1に記載の中間転写部材。

【公開番号】特開2010−176127(P2010−176127A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13221(P2010−13221)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】