説明

ナノバブル燃料及び燃焼システム

【課題】優れた特性を備え得る燃料をシンプルな装置で、低コストに製造する。
【解決手段】高圧で液体を噴射することにより、超微細気泡等のナノバブルを含む水であるナノバブル水を、石油系液体燃料に混合して、機能性の高い燃料を提供する。このようにして製造されたナノバブル水を混合・分散させた燃料は、極めて燃焼効率が高く、単に石油系液体燃料だけを燃焼させた場合と同じくらい高温に燃焼炉を維持することが可能である。このようなナノバブル水を含む燃料を製造する方法及びその製造装置、並びに、ナノバブル水を含む燃料を効率よく燃焼させるナノバブル燃焼システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超微細気泡等を含む水若しくは水溶液(以下総称して「ナノバブル水」という)を含有する燃料及びその燃料を製造する方法並びに製造装置、更に、そのような燃料を効率良く燃焼させるナノバブル燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油系液体燃料に水を添加し、これらを微粒子化して油中水滴型エマルションにしたエマルション燃料は燃焼排気ガス中の窒素酸化物やばいじんを低減し得ることは知られている。従来、このようなエマルション燃料を製造するためには石油系液体燃料油と水と界面活性剤等の乳化剤との混合液をスクリュー型の回転子を用いたミキサーや、高圧により狭い隙間を通すホモジナイザー、又は2枚の回転板の隙間を通すコロイドミル等の攪拌機で攪拌するか、或いは超音波攪拌機で攪拌する等の方法が用いられている。このような油中水滴型エマルション燃料は、燃焼の際、ミクロ爆発が油滴を細かくして油の表面積を広げ、これにより油と空気との接触面積を増大させクリーンな燃焼をさせる利点を有すると考えられている。
【0003】
従来の燃料油エマルション化技術では、ミキサー等の攪拌機構を組み込む必要性から装置が大型になる、消費電力が大きい、或いは価格が高くなる等の欠点がある。エマルション燃料を調整後、バーナに供給して燃焼させるまでにある程度の時間を要する。それ故、最適の燃料油/水の割合を維持しつつ、エマルション燃料の粒子径の維持、即ち、安定性、或いは防錆面等への配慮が要求されるため、界面活性剤の添加が必要になる(例えば、特許文献1)。
【0004】
界面活性剤を用いない例としては、電子水及び高調波還元水からなる機能水と燃料油とを撹拌混合してエマルション燃料を得る方法が開示されている(例えば、特許文献2)。しかしこのような機能水を製造するためには、特殊な装置が必要である。例えば、電子水は、水に高調波電圧を印加し、次いで炭素光を照射したものであり、高調波還元水は、水に高調波を付加し、炭素光照射し、更に炭素電極放電によるエネルギー印加されて炭素を溶け込ませたものである(例えば、特許文献2)。
【0005】
一方、水にナノバブルを分散させたいわゆるナノバブル水が、機能を持った水として注目されている(例えば、特許文献3)。また、ナノバブル化された燃料が、好ましい燃焼特性を備えることも知られている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特許第3776188号公報
【特許文献2】特開2008−45022号公報
【特許文献3】特開2008−105327号公報
【特許文献4】特許第4274327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述するように、エマルション燃料は、優れた特性を備え得る燃料ではあるが、その製造には、界面活性剤の添加が必要であったり、高調波電圧の印加をする装置が必要であったりするため、コストがかかる等の問題点がある。また、機能水と呼ばれる水のうち、ナノバブル水の燃焼に与える効果は検討もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者らは、上述のような課題に鑑みて、ナノバブル水の可能性について鋭意研究をすることにより、所定の条件で製造されたナノバブル水は、容易に石油系液体燃料に混合されることを見出した。また、ナノバブル水を混合・分散させた燃料は、極めて燃焼効率が良いことを見出した。そこで、このようなナノバブル水を含む燃料を製造する方法及びその製造装置を提供する。また、ナノバブル水を含む燃料を効率よく燃焼させるナノバブル燃焼システムを提供する。
【0008】
より具体的には、以下のようなものを提供することができる。
(1)5重量%から70重量%のナノバブル水を含む石油系燃料からなるナノバブル燃料を提供することができる。
【0009】
ここで、ナノバブル水とは、水若しくは水溶液をナノバブル化手段で処理したものを意味することができる。水は例えば水道水、井戸水、河川等から得られる天然の水を含んでよい。ナノバブルは超微細気泡等を意味してよく、このようなナノバブルを生成するものとして、ナノバブル化手段が挙げられる。超微細気泡等は、空気、酸素、窒素、水素等の少なくとも1種を含む気体を含む気体の泡を含んでよい。また、マトリックスとなる水とは異なる種類の物質(いわゆる標準状態で、気体、液体、又は固体の物質を含むことができる)を含んでいてもよい。従って、ナノバブルは単なる気泡や気体の泡だけでなく、マトリックスとなる分散媒又は溶媒とは異なる種類の材料からなる粒子(小さな粒を含んでよい)を含んでよい。このようなナノバブルは、例えば、特許文献4に記載されるようなナノバブル化手段を用いて生成することができる。例えば、ナノバブル化手段は、ノズルと加圧手段を含んでよい。該ノズルの噴出口径は0.1mmから1mmが好ましく、0.2mmから0.5mmがより好ましい。このノズルの噴出口から吐出圧力が1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上である処理を含んでよい。また、ナノバブル発生メカニズムにおいて、特に圧力の上限はないが、製造装置の入手の容易さを考えると、40MPa以下が好ましい。また、ナノバブル化手段は、ノズルから噴射されたもの(例えば、水等の流体)が衝突する壁を備えることが好ましい。ノズル先端からこの壁までの距離は、例えば、ノズルの噴出口径の5倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましいと考えられる。距離が長すぎると十分な衝突生じさせることが難しいので、同距離は、例えば、ノズルの噴出口径の100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましいと考えられる。例えば、同距離を10倍〜100倍の間に仮設定し、微調整により圧力等の他の条件に応じた距離とすることもできる。
【0010】
ここで、「ナノバブル燃料」とは、ナノバブル水を含む燃料を意味してよい。特に、ナノバブル水と石油系燃料又は炭化水素系燃料を混合及び/又は分散させたものをいう。ナノバブル燃料に含まれるナノバブル水は、少なくとも5重量%以上が好ましく、より好ましくは、10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上である。しかしながら、ナノバブル水が多すぎると燃焼を継続することが困難となるため、95重量%以下が好ましく、より好ましくは、90重量%以下であり、更に好ましくは85重量%以下である。石油系燃料は、重油(A重油、B重油、C重油)、軽油、揮発油、その他の炭化水素等を含む油を含んでよい。特に、重油が価格上好ましい。
【0011】
(2)前記ナノバブル水の少なくとも一部を平均粒径が0.4μm〜2μmの微粒子として含むことを特徴とする上記(1)に記載のナノバブル燃料を提供することができる。
【0012】
ナノバブル水と石油系燃料とを混合してナノバブル燃料が形成されるが、好ましくは、ナノバブル水は、燃料マトリックス中に微粒子として存在する。このナノバブル燃料からなる液滴は、例えば、ボイラーにおいては燃焼炉内の高温ガスによって加熱され、高温ガスと石油皮膜、石油皮膜と内部水粒子との間で急速な熱移動が起こり、その速度が十分大きな場合には、水粒子は燃料液滴の内部で沸点以上になって過熱状態になる。このようにして形成された過熱水は非常に不安定であるとともに、燃料との間に沸点差があるので、この過熱水が先に気化し一挙に膨張する。この際に燃料液滴は爆発的に破壊され、より微細な液滴となって燃焼室内の空気とよく混合されるため、燃焼が促進されるものと思われる。
【0013】
特に、ベース燃料の動粘度が低い、水の混合比率が高い、水粒子径が大きい等の場合は、液滴の加熱によって内部の水がエマルション状態から分離して合体が進行し、この合体速度が十分速い場合は、気化が遅れて過熱状態に達し、その結果破裂音をともなって爆発し、蒸発を完了するという、いわゆるミクロ爆発が発生する。即ち、動粘度が低い軽油、動粘度がより高くなるA重油、B重油、C重油をベース燃料とした場合、水の混合比率は、動粘度が高いものほど高くなり、軽油の場合よりもC重油の場合の方が水の混合比率は高い方が、ミクロ爆発の発生という観点から好ましい。また、水粒子径も同様に、ベース燃料の動粘度が高くなるほど、大きい方が好ましい。しかしながら、水の混合比率が高すぎると、燃焼による熱量が十分でなくなるため、継続的に燃焼させることが難しくなる。そして、水粒子径が大き過ぎると、燃料マトリックス中に粒子として存在することが難しくなる。そのため、水の混合比率や水粒子径にも自ずと上限が存在する。
【0014】
例えば、ベース燃料の動粘度(標準状態:50℃、1気圧の大気中での値。以下同じ。)は、重油(A重油、B重油、C重油)により異なるが、10〜350mm/s(cSt,センチストークス)が好ましい。例えば、動粘度が、2mm/sから20mm/sのA重油をベース燃料にする場合、球近似された水微粒子の粒径(図22A及び22BにおけるDに相当)については、平均粒径として、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。また、水微粒子の平均粒径は、0・01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.4μm以上が更に好ましい。
【0015】
(3)前記ナノバブル水は、バブル径が40〜200nmのバブルを約1.5×10個/mL以上含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のナノバブル燃料を提供することができる。
【0016】
ここで、ナノバブル水中のバブル平均径は、ベックマン・コールター株式会社製の精密粒度分布測定装置コールターMultisizer3を用いることにより計測可能である。この計測原理は、同社のホームページhttp://www.beckmancoulter.co.jp/product/product03/CoulterPrinciple.htmlに記載されている。測定の際の電解液には、ISOTON IIを用い、アパチャー径は20μmのものを用いることができる。そして、粒度分布を個数基準又は体積基準で測定し、平均粒子径を求めることができる。ここで、平均粒子径とは、以下のように定義される。粒子径の分布を粒度(粒径)分布といい、粒径分布において、ある粒子径より大きい個数又は体積の総和が、全体の50%を占める場合の粒子径が、個数平均粒径又は体積平均粒径D50として定義できる。尚、本明細書では、ナノバブルの粒径を表すのに個数平均粒径(若しくは粒子径)を用いている。
【0017】
また、一般に次のような粒子径の測定方法が知られている。散乱強度の揺らぎを利用した動的光散乱法では、測定可能な粒子径範囲が、0.0014〜7μmであり、サブミクロン以下の粒子径の測定が可能であり、溶媒の屈折率・粘度のみで測定でき、試料の影響因子がないという利点があるが、散乱強度に依存しやすく、ダストの影響がでやすいという欠点がある。回折散乱パターンを利用したレーザー回折法では、0.015〜3000μmの範囲の粒子径を測定可能であり、簡便で広い範囲の粒子径測定が可能という利点がある一方、粒子の屈折率が必要であり、サブミクロン粒子では測定精度が低く、測定する機種により粒子径計算方法が異なるという欠点を備えている。透過光量を利用した遠心沈降法では、>0.01〜300μmの範囲の粒子径が測定可能であり、安価で簡便という利点がある一方、分散媒に対して異なる粒子の密度、屈折率が必要であり、特に、サブミクロン粒子の測定時間が長くなり、また、吸光係数補正が必要という欠点を備える。同じく、透過光量を利用するFFF法では、0.01〜1μmの範囲の粒子径が測定可能であり、サブミクロン以下の粒子径の測定が可能であり、高い分解能を備えるという利点を有するが、粒子の密度及び屈折率が必要である。また、電流(電圧)値を利用する電気的検知体法は、0.1〜1000μmの範囲の粒子径が測定可能であり、粒子体積の測定が可能であるが、ダイナミックスレンジが狭い。ナノバブルの径の測定方法は、上述したものが使用できる。一方、以下の水粒子又は水微粒子の測定には、例えばレーザー回折法を用いることができる。その場合の平均粒子径の求め方は、前パラグラフと同様にして行うことができる。尚、本明細書において、水粒子又は水微粒子の粒子径については、レーザー回折法による体積平均粒径(若しくは粒子径)を用いている。
【0018】
上述のナノバブル水からなる水粒子は、その径が、0.5μm以上が好ましく、10μm以下が好ましい。従って、ナノバブル水中のバブルの径(図22A及び22Bにおけるdに相当)は、水粒子の径よりも小さいことは当然であるが、そのバブルの安定性、ミクロ爆発の発生に及ぼす効果を考慮すると、バブルの径は、平均径として、例えば、水粒子の径の1/5以下が好ましく、1/10以下が更に好ましく、1/20以下が好ましい。より具体的に説明すれば、ナノバブル水中のバブルの径を平均径として測定し(<d>)、エマルション燃料中の水微粒子の平均径を測定して(<D>)、これらの比Rを求めることにより規定することができる。例えば、ナノバブル水中のバブルの平均径が、0.05μmであったとし、水微粒子の平均径が、1μmであったとすると、その比R=<d>/<D>=0.05/1=1/20となる。バブル径の下限は、0μmより大きいことは明らかであるが、技術的に可能な限り小さいのが好ましいと考えらる。ナノバブルの個数又は量は、ナノバブルが維持できる限り特に上限は無いと考えられる。つまり、技術的に可能な限りナノバブルが存在することが好ましい。例えば、バブル径が20〜600nmのバブルを1.0×10個/mL以上含むのが好ましく、1.0×10個/mL以上含むのがより好ましい。
【0019】
(4)前記ナノバブル水のバブル中に水素が含まれることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載のナノバブル燃料を提供することができる。
【0020】
ナノバブル水のバブルは、溶存酸素のような溶存気体を含んでいると考えられる。このような気体を直接観測することは極めて難しいが、例えば、ナノバブル水製造工程において、特定の種類の気体を原水にバブリングさせることにより、バブルに含まれ得る気体の種類を特定することができる。後述する実施例では、水素をバブリングしており、バブルが水素を含んでいることは明らかと考えられる。例えば、水素を含むバブルの場合は、ナノバブル水からしていわゆる水素爆発を起こし、ミクロ爆発の威力をより強力にする機能を果たすものと考えられている。ここでバブリングとは、バブリングの材料である気体をバブリングの対象となる液体と接触させる方法の1つと考えることができる。例えば、対象の液体が存在するときに、その液体の下の方から若しくは液体中において、材料となる気体(例えば、酸素、水素等)を放出することであってよい。これにより、気体はある大きさの泡となり、当該液体中を浮力等により上昇等する。
【0021】
上述するように、ナノバブル燃料は、ナノバブル水を水粒子として含むので、バーナー等から噴射されるナノバブル燃料の液滴(ノズルの形状や、噴射初速度等により所定の大きさになると考えられる)は、通常の石油系燃料(比重は、およそ0.8くらい)に比べると比重の大きい水(比重は、1)を含むので、このような所定の大きさの液滴の重量は、石油系燃料だけの場合よりも大きく(重く)なる。従って、噴射初速度が同じであれば、運動量は増加する重量分だけ大きくなり、液滴の周囲の空気に対する速度はより維持され易い。そのため、飛行する液滴の後方に回り込む空気の量(空気の巻き込み量とも言える)が大きくなり、液滴はより多くの空気(又は、それに含まれる酸素)と接触することになり、いわゆる空気取り込み量が多くなるとも言える。特に、ナノバブル燃料では、液滴あたりの石油系燃料の割合が低く、結果として、石油系燃料当たりの空気取り込み量が増大することになる。これにより、液滴に含まれる石油系燃料は、より効率的に空気(含まれる酸素)と接触することができ、より効率的な燃焼が実現できると考えられる。
【0022】
ナノバブル燃料を用いると、火炎と液滴表面との間の燃料過度な領域において水蒸気濃度が増加すること、及び燃焼温度が低下すること、さらにミクロ爆発によって液滴が微細化され混合が促進される。そのため、排気吐煙の生成が減少させられる。燃焼器中のナノバブル燃料の火炎帯を支配している高温度(500〜2000℃)においては、燃料或いは生成カーボン粒子との直接的な反応による吐煙低減の可能性がある。このような高温時における炭素や炭化水素と水の反応は、次の3つの式(数1〜3)によって表すことができる。
【0023】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【0024】
このような反応の結果、吐煙の低減が得られたものと推察される。上記数1〜3の化学式は、何れも吸熱反応であり、高温で周りの熱エネルギーを利用して、右側に平衡が移動する。一方、数4及び数5の化学式は、発熱反応であり、燃焼を表しているが、燃焼温度の上昇に寄与する。これらの吸熱反応は、燃焼温度を低下して、ボイラー効率を上げる効果があると考えられる。また、一般に、遊離カーボンは完全に燃焼することが難しいが、[数1]の反応で炭素が燃焼し易くなり、[数3]の水性ガス反応が生じることにより、より完全な燃焼や、ボイラーの効率の向上に寄与するものと考えられる。
【0025】
(5)水をナノバブル処理してナノバブル水を製造するナノバブル工程と、該ナノバブル水及び石油系燃料を混合するミキシング工程と、を含むナノバブル燃料の製造方法を提供することができる。
【0026】
(6)前記ナノバブル工程は、原水に水素のバブリングを行う添加工程を含むことを特徴とする上記(5)に記載のナノバブル燃料の製造方法を提供することができる。
【0027】
(7)前記ナノバブル工程は、5〜20MPaの圧力の液体を実質的に静的な原水中に噴射し、該噴射流を壁に衝突させる噴射・衝突工程を含むことを特徴とする上記(5)又は(6)に記載のナノバブル燃料の製造方法を提供することができる。
【0028】
(8)ナノバブル水製造手段及び配水手段からなるナノバブル水供給装置と、石油系燃料の供給装置と、前記ナノバブル水及び前記石油系燃料を混合する混合装置と、を含むナノバブル燃料の製造装置を提供することができる。
【0029】
(9)ナノバブル水供給手段と、石油系燃料の供給手段と、前記ナノバブル水及び前記石油系燃料を混合する混合手段と、混合されたナノバブル燃料を燃焼させる燃焼手段と、を含むナノバブル燃焼システムを提供することができる。
【0030】
(10)前記燃焼手段から、前記混合手段へと、前記燃焼手段に送られた燃料のうち余剰燃料を還流させる還流配管を更に備え、前記ナノバブル水供給手段は、バブル平均径が20〜600nmのバブルを約1.5×10個/mL以上含むナノバブル水を供給し、前記燃焼手段は、前記混合手段から直接混合された燃料が圧送されるノズルであって、別途供給される酸素を含む気体に接触させ、燃焼させるノズルを含むことを特徴とする上記(9)に記載のナノバブル燃焼システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明のナノバブル燃料は、優れた燃焼特性を備え、燃焼効率に優れる。また、このようなナノバブル燃料を製造する方法は、大掛かりな設備を必要としない。また、そのようなナノバブル燃料を製造する装置は、比較的シンプルである。更に、そのような燃料を効率良く燃焼させるナノバブル燃焼システムにおいては、排気がクリーンであり、環境にやさしい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に関するナノバブル燃焼システムのブロック図である。
【図2】ナノバブル燃焼噴射システムの機能を説明するブロック図である。
【図3】別のナノバブル燃焼システムの機能を説明するブロック図である。
【図4】ナノバブル発生装置の一例を示す模式図である。
【図5】ナノバブル発生手段の別の一例を示す模式図である。
【図6】ナノバブル燃焼システムの燃焼用のノズル例を説明する断面図である。
【図7】ナノバブル燃焼システムの別の燃焼用のノズル例を説明する断面図である。
【図8】ナノバブル燃焼システムの更に別の燃焼用のノズル例を説明する断面図である。
【図9】ナノバブル燃焼システムの機能図及び運転タイムチャートである。
【図10】燃焼熱量を実際に測定した別のナノバブル燃焼システムを説明するブロック図である。
【図11】ナノバブル燃焼システムで燃焼させた試料の温度の経時変化を示すグラフである。
【図12】本発明について、燃料試料をナノバブル燃焼システムで燃焼させた結果をまとめる表を図示する。
【図13】ナノバブル燃料の実施例や比較例の構成及びそれらの削減率をまとめたものを示す。
【図14】ナノバブル燃料の実施例や比較例の構成及びそれらの燃費をまとめたものを示す。
【図15】実施例4及び比較例におけるNOx濃度、SOx濃度、CO濃度をまとめ、比較例からの変化率を示す。
【図16】実験例11−14のそれぞれの条件、及び、燃焼結果をまとめた表である。
【図17】図16の蒸発倍数及びボイラ効率の計算方法を示す図である。
【図18】ボイラーの排ガス中の酸素濃度(二酸化炭素濃度)と空気過剰率との関係を示したグラフである。
【図19】ボイラーの空気過剰率と平均燃焼温度との関係を示したグラフである。
【図20】ボイラーの理論熱効率に与える空気過剰率と排気ガス温度の影響を示したグラフである。
【図21】本実施例で用いたナノバブル水と同じ条件で準備したナノバブル水のバブル粒径分布を示す図である。
【図22A】本実施例のナノバブル燃料の構造を模式的に図解する図である。
【図22B】本実施例のナノバブル燃料を噴射したときの構造を模式的に図解する図である。
【図23】本実施例において、燃焼時に生じたと考えられるミクロ爆発の様子を模式的に示す図である。
【図24】本実施例において、燃焼時に生じたと考えられる空気巻き込み条件の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の実施例について、図面に基づいてより詳しく説明するが、実施例は説明のための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0034】
図1は、本発明に関するナノバブル燃焼システムを図解する。このナノバブル燃焼システム10は、ナノバブル発生手段12を含むナノバブル部と、燃料を混合する混合手段14を含む混合部と、この混合したナノバブル燃料を噴射して燃焼させる燃料噴射手段16を含む燃焼部とから構成される。ナノバブル部においては、ナノバブル発生手段に原料となる水若しくは油等の液状の有機物を供給する原料供給手段18と、この原料に添加される添加材料を供給する添加材料供給手段20とを更に含む。この添加材料としては、例えば、グリセリン、アルコール等があり、発生したナノバブル中に含まれ、好ましい機能を発揮すると期待される。
【0035】
混合部には、更に、例えば、重油、軽油、揮発油、その他の炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン等を含む油成分を基油として供給する基油供給手段22を含む。そして、燃焼部は、更に、燃焼に用いられる酸素や空気を供給する気体供給手段24と、いわゆる空燃比を調整するAFC手段26とを含む。
【0036】
図2は、図1のナノバブル燃焼システムの作用動作を説明する。ナノバブル燃焼システム10は、制御部30を備え、ナノバブル発生部、混合部、及び燃焼部を統括的に制御する。所定の発生速度でナノバブルが発生させられた水を含む液体を製造するために所定の供給速度で原料となる水等を原料供給手段18から、原料となる水等の容量を計測可能な容量計18aの測定値を利用して、ポンプ32へ原料を供給する。ポンプ32は、所定の圧力にこの原料を加圧し、ナノバブル装置12aへと原料を供給する。この所定の圧力は、少なくとも1MPaであり、より好ましくは、5MPaであり、さらに好ましくは、7MPa以上である。但し、通常の装置の耐圧性、ポンプの性能を考慮すれば、40MPa以下が好ましい。この所定の圧力も、制御部30からの制御信号で制御可能となっている。また、添加材料供給手段20には、添加材料の容量を計測可能な計測装置20aが備えられ、やはり、ポンプ34への供給量が制御部30からの制御信号によりコントロールされる。ポンプ34は、この添加材料を所定の圧力(例えば、0.1MPa以上から5MPa以下等)に加圧し、ナノバブル装置12aに供給される。このときの圧力も制御部30からの制御信号によりコントロール可能となっている。
【0037】
混合部は、ナノバブル装置12aから供給されるナノバブル液体と、基油供給手段22の容量計22aの測定値に従って所定の量を供給されるポンプ36により所定の圧力で供給される基油と、を合流点38となる混合容器内で合流させ、ミキサー14aにより混合燃料とする。このミキサー14aとしては、例えば、日本フローコントロール株式会社スタティックミキサー型式070−327を用いることができる。このようにして生産された混合燃料は、そのまま(直接)燃焼手段16bのノズル16aへと供給する。このとき、混合燃料貯留手段40に一旦溜め均質化を図る等して、容量計40aの測定値に従い適量を燃焼手段16bのノズル16aへと供給することもできる。尚、ミキサー14aへの供給量や混合燃料の燃焼手段16bへの供給量は、制御部30によりコントロールされる。燃焼部において、気体供給手段24は、容量計24aの測定値によって気体(主に酸素又は空気)の流量をコントロールして、AFC装置26aにおいて、空燃比を制御する。制御部30は、容量計40a及び容量計24aのそれぞれの測定値を比較して、それぞれの流量を適宜制御することができる。このようにして、ノズル16aから噴射された燃料及び空気等は火炎42を上げて燃焼する。
【0038】
図3に別のタイプのナノバブル燃焼システムを図解する。基本的には、上述するナノバブル燃焼噴射システムと共通するので、ここでは相違点のみ述べる。このユニット型ナノバブル燃焼噴射システム10は、主にナノバブル機能水製造ユニット10A及び燃料噴射ユニット10Bとから構成される。ナノバブル機能水製造ユニット10Aは、制御部31aと、原料となる水等の原料を供給する原料供給手段18と、添加材料供給手段20と、それらが送り込まれるナノバブル装置12aと、送り込むためのそれぞれのポンプ32、34からなり、更に、均一に混合するための混合層35を備える。制御部31aは、後述する燃料噴射ユニット10Bの制御を行う制御部31bをも制御する。ナノバブル装置12aでは、この制御に基づいて、上述したような手順でナノバブル水が製造され、混合層35に送られ撹拌混合される。この混合層35は、ナノバブル水の量を計測可能な計測装置35aを備え、そこから燃料噴射ユニット10Bへとナノバブル機能水を送る。
【0039】
より具体的には、容量を計測可能な計測装置35dを備えたナノバブル機能水の供給手段35cに圧送される。燃料噴射ユニット10Bは、主に制御部31b、ナノバブル機能水の供給手段35c、基油供給手段22、ミキサー14a、燃焼手段16b、気体供給手段24、AFC装置26aから構成される。この基本的な構成及び機能は、基本的に図2のシステムと同様であるので、ここでは説明を省略する。特に、図2のナノバブル燃焼システムとの違いは、燃焼手段16bに(混合)燃料を送り込む配管41aだけでなく、燃焼手段16bから一種のオーバーフローとなる燃料を戻す還流配管41bを燃焼手段16bから合流点38へと接続していることである。従って、ノズル16aからの噴射燃料量を一定にするようにコントロールすることが可能な構成となっており、余分な燃料については合流点まで戻す機構を設けている。このような還流配管は、図2のナノバブル燃焼システムに適用できることは言うまでもない。
【0040】
図4は、ナノバブル発生手段12を図解する。特許第4274327号公報の図14とほぼ同じ構成をしており、詳細は同公報を参照されたい。ナノバブル発生手段12は、ナノバブル発生部120と、ポンプ110と、添加材料供給部220とから主に構成される。ナノバブル発生部120は、容器130、この容器130に蓄えられる水200中に浸漬される中空部を備える円筒部122、その中に挿通されるロッド124、及び円筒部122に螺旋固定される複数のノズル126aから126dによって構成される。それぞれのノズル126aから126cは、ポンプ110からの配管128aから128cに接続され、加圧された水の供給を受ける。一方、ノズル126dは、配管142を介して、ポンプ221から供給される気体や液体等を噴射する。このように処理された水の一部は、ポンプ132により配管133を介して、リザーバー槽136へ循環される。このリザーバー槽136からは、バルブ138を介して配管116を通ってポンプ110に水が供給される。生産されたナノバブル水は配管134を介して混合手段へと圧送される。
【0041】
添加材料供給部220には、水素ガス、酸素ガス、空気等の気体や、アルコール、グリセリン等の有機化合物からなる液体を供給する供給装置222、及び、電気分解により酸素、水素、及びそれらの混合物を湿潤状態で提供可能な電気分解ガス供給装置226が、三方バルブ224により接続されている。このバルブ224により、以下に述べる電気分解ガス供給装置226から供給されるガス、又は供給装置222の気体若しくは液体のいずれかが、ポンプ221へと供給される。
【0042】
電気分解ガス供給装置226は、電気分解槽228はアノード側タンク230のあるアノード室及びカソード側タンク232のあるカソード室に分離され、これらの2つのタンクをつなぐ塩橋234を除いて、それぞれ密閉されている。アノード側タンク230には約4重量%の水酸化カリウム水溶液が入れられ、アノード236が浸漬される。カソード側タンク232には、同様に約4重量%の水酸化カリウム水溶液が入れられ、カソード238が浸漬される。アノード236及びカソード238は、それぞれリード240及び242で電源244に接続されている。電気分解槽228は上述するように2つの室に密閉されているので、アノード236で発生する酸素ガス及びカソード238で発生する水素は、それぞれ、ストップバルブ246d及び246cを有するパイプ246b及び246aを通りマスフローコントローラ246eに送られ、そこで両ガスの配合が所定の割合に調整されて、パイプ246へと送られる。このとき、オーバーフローするガスは、図示しない排気パイプにより系外に排気される。所定の割合に配合された混合ガスは、パイプ246により、水槽248内の多孔質体249に供給され、水槽246内の水(例えば純水)にバブリングされる。このようにして、混合ガスは水蒸気等により湿潤化される。水槽248は、密封されているので、パイプ250に三方バルブ224へと供給される。
【0043】
図5は、図4のナノバブル発生部120とは別のタイプの実施例である。ナノバブル発生部370の模式断面図及び正面図から分かるように、より小型になっている。ナノバブル発生部370は、処理される原流体である水が通過する流路374を形成する透光性の円柱形状のブロック371と、該流路374内に開いた開口378を備えるノズル376と、このノズル376に対向する位置に、開口378から噴射された噴射流378aが衝突する凸部380を先端に備える衝突部材379と、から主に構成される。流路374は、ブロック371内に設けられた断面ドーム状の円環部373により形成される。ブロック371の背面には、ノズル376を固定し上記円環部373を閉じるバックアップ部材372が備えられる。ノズル376は、ブロック371及びバックアップ部材372に対して、Oリング383及び384によりシールされる。ノズル376の背後には供給管377が備えられ、噴射する水等の液体377aを供給する。これらのノズル376のうち少なくとも1つを、口径がより大きいものとし、別の加圧手段であるポンプから噴射用の水を供給するようにしてもよい。
【0044】
上記衝突部材379は、先端に凸部380を備え、後端に回転のためのヘッド部381を備える。この衝突部材379は、上記ブロック371に固定されたナットのように雌ネジを備える移動機構382に、螺合する雄ネジを備え、ヘッド部381の回転により、ノズル376の開口378との間の距離を調整することができる。円錐形状(又はコーン形状)の凸部380の先端は、尖っていてもよく、平坦でもよく、凹部を備えてもよい。噴射流378aに高速せん断を生じさせるためには、尖っている方が好ましい。平坦では噴射流が広がり、凹部では噴射流の一部逆流が生じると考えられる。また、中心からずれた場合は、これらの効果が非対称となり易い。また、凸部380の円錐角(Cone angle)αは、所定の範囲内であることが好ましい。例えば、直円錐の場合、円錐角αは、60度以上が好ましい。また、円錐角αは、90度以下が好ましい。開口378と凸部380との間の距離を小さくすると、衝撃が強くなり、逆に、大きくすると、衝撃が弱くなる。従って、簡易的にはノズル376から気泡(白濁)が出ている場合は、ナノレベルになっておらず、逆に気泡が見えない(透明)状態になる場合はナノレベルであると目視で確認でき、処理後に液体の物性を計測した結果(例えばORP)によってその距離を調整することが好ましい。
【0045】
流路374には、原流体としての水386aを供給する供給管386と、処理された原流体としての水を系外385aに取出すための排出管385が接続される。流路374は、正面図において破線で表されているが、一周することなく原流体は、これら供給管386及び排出管385から流入し排出される。図4のナノバブル発生部120に比べ、流路を円環状とすることにより、小型化することができる。また、透光性の材料(例えば、透明ガラスやポリカーボネート)で構成されているので、開口378と凸部380との間の距離を視認しながら調整することができる。噴射流378aは圧力差で加速されるため、凸部380に衝突させる方がこの圧力差をより活用し易い。ここで、ノズル376が4個の例が示されているが、1個以上でもよく、6個でもよい。並べることが可能である限りは、数は限られるものではない。
【0046】
図6は、燃焼手段16bとして備えられるノズル16aを主に断面で図解する。図6(a)は、全体断面図であり、図6(b)から図6(d)は各部材の部分断面図であり、図6(e)は、一部透過的に内部構造を示す部分側面図である。ノズル16aは、中心に空洞51を備える円柱形状をした本体部50と、この本体部50の先頭に取り付けられるヘッド部52と、前記空洞51内に挿通されて混合燃料を通す燃料管54と、この燃料管54と接続され前記ヘッド部52内に配置される噴射管56とから主に構成される。本体部50には、軸方向に2箇所、空気若しくは酸素ガス等を噴射するノズル16aを円筒の周方向に均等に4箇所取り付けるノズル位置があり、それぞれ、ノズル58aから58d及び62aから62dが螺合される。これらのノズル58aから58d及び62aから62dには、軸中心に空気等が通過する空洞59aから59d及び63aから63dが設けられ(図6(b)参照)、それぞれAFC装置26aから供給される空気等を通過させ、ノズル先端の開口より、前記空洞51内であって、前記燃料管54の外側に噴射する。図6(c)は、これらノズルのうち右手のノズル58dのみを例として示した拡大断面図である。ノズル58dの先端は内径がdの円形に開口し、径方向の深さがDである空洞51に空気等を噴射する。この燃料管54は、後方が通路55に通ずる空孔64aを軸方向に開放して中心軸にそって備える保持部材64により前記空洞51内に固定され、前方をやはり管路に通ずる空孔66aを軸方向に開放して中心軸にそって備える保持部材66により前記空洞51内に固定される。これらの保持部材64及び66は、外周面に雄螺旋を備えて前記空洞51内にねじ込まれて固定される。保持部材64は、前記空洞51に対応する空洞を備えないため、前記本体部50の後端へは、この空洞51は開放されていない。従って、吹き込まれた空気等は、前方へ移動する。一方、前方の保持部材66には、対応する4つの空洞68aから68dが軸方向に通じるように備えられる(図6(d)参照)。これらの空洞68aから68dは、周方向に等間隔に設けられるが、軸方向にはやや傾斜して設けられる。このため、この空洞68aから68dを通過する空気等は、円筒軸に対して回転しつつヘッド部52に備えられる円筒形の空洞53へと移動する。
【0047】
本体部50内に備えられる燃料管54には、通路55が備えられ、ノズル16aの後端から混合燃料貯留手段40よって供給される混合燃料を、保持部材64のノズル16aの空孔64a及び66aを介して先端へと通過させる。ヘッド部52は、テーパ状に縮径する先端部分を備え、内側に通路55に通じる通路57を軸心に沿って備える噴射管56を備える。噴射管56の外周には、軸心に対して回転してノズル16a先端へと移動する空気等を通過させる空洞53が備えられる。前記テーパ状に縮径する先端部分に対応するように内部の通路57及び空洞53もその径方向の大きさを小さくしながら先端に円形の開口を備える。
【0048】
図7は、ノズル16aの改良された実施例を部分断面図で示す。ヘッド部52は、噴射管56を備え、その通路57は、同径部57a、縮径部57b、細孔部57c、そして先端部57dを備える。細孔部57cには、セラミックリング70が中央に両端が開放されて細孔部57cと通じる空孔70aを備えて、圧入される。このようなセラミックリングとしては、例えば、アルミナリングが好適に用いられる。
【0049】
図8は、更に別のノズル80の部分断面模式図である。中空な円筒82の中に、中空の円筒84が入った二重構造となっており、中円筒の軸方向孔は、ナノバブル燃料等の油を通すことができる。一方、外円筒82と内円筒84との間には、空気が通ることのできる殻空孔88が設けられ、外円筒82の側壁に開けられた空気穴90を通してエアが圧送される。このようにして燃料及び空気が混ざった混合物がノズル開口92から噴射され、その噴霧に火をつけることにより、燃焼をさせることができる。
【0050】
図9は、図1及び図2若しくは図3に示されるナノバブル燃焼噴射システム10の機能図及び運転タイムチャートを示す。制御部30に相当するコントローラ30aは、基油を供給する基油供給手段22の給油機能22b、空気等を供給する気体供給手段24の給気機能24b、原料供給手段18の給水機能18b、及び、添加材料供給手段20の補給機能20bを制御するだけでなく、燃料噴射手段16に付属する燃焼手段の着火/洗浄機能42aをも制御する。具体的には、下の運転タイムチャートにおいて、スイッチを入れた起動時に、給油機能22b及び給気機能24bが起動する。そして、着火機能42aがONになり燃焼が始まるこのとき、補充機能20bが機能を開始し、ナノバブル装置12aへ添加材料等の供給を開始する。着火機能42aをONにした後、t1秒後、給水機能18bがONとなり、ナノバブル水が製造される。このナノバブル水は、混合手段14により混合されて、燃料噴射手段16に供給される。この状態で、燃料噴射手段16における燃焼が定常状態となり、必要な熱量や温度を系外に提供する。そして、このナノバブル燃焼システムを停止するために、停止ボタンが押されると、給水機能18b及び補充機能20bがしばらくしてOFFにされ、洗浄機能がONとなってノズル16aの洗浄が行われ、洗浄終了後にOFFにされる。そして、停止ボタンが押されてから、t2秒後に、給油機能22b及び給気機能24bがOFFにされる。これにより、ナノバブル燃焼システムの運転が終了する。
【0051】
(実施例)
図1から図9及び図10に示すような装置により、ナノバブル水の製造、ナノバブル燃料(ナノバブル水と油の混合物)、及び、このような燃料の燃焼実験を行った。
【0052】
(ナノバブル水の製造)
通常の水道水を用い、以下のような条件でナノバブル水を製造した。
ノズル径: 0.3mm
ノズル長さ: 3.0mm
ノズル先端と壁との距離: 6.0mm (距離/径=6/0.3=20)
噴射液体の圧力: 8MPa
添加された材料: 水素ガス(約0.1MPa)
処理時間: 水1Lにつき1分間の処理
ナノバブルの平均径: 約80nm
バブルの総数量: 約1.5×10個/mL
【0053】
(混合燃料の製造)
図1等に示すナノバブル発生手段12、水/油の原料供給手段18、添加材料供給手段20、基油供給手段22、混合手段14により、ナノバブル水を含む混合燃料(ナノバブル燃料)を製造した。具体的には、A重油、ナノバブル水、及び、その他の添加物(例:グリセリン)を加圧手段によりミキサーへ供給し、図13に示すような燃料を準備した。これらの混合燃料は、貯留されることなく直接燃焼手段16bに圧送され、燃焼実験に用いられた。具体的には、(比較例1)A重油のみ、(比較例2)A重油に水道水を等量加えたもの、(実施例1)A重油にナノバブル水を等量加えたもの、(実施例2〜5)A重油にナノバブル水及びグリセリンを図13に示すような量だけ加えたものである。この図13において、実施例2〜5及び比較例1については、各種燃料を燃焼させたときの発生熱量を計測したが、その実験装置のより具体的な例を図10において示す。この実験燃焼システム510は、油(主に重油)に混合添加する水系又は有機系成分を製造する混合添加物製造ユニット(又は混合水ユニット)501及び燃焼熱量計測系503からなる。混合添加物製造ユニット501は、ナノバブル発生装置512、ナノバブル水タンク513、撹拌タンク538、そして、混合水タンク525から主に構成される。まず、工業用水の源の水源518から、循環方式のナノバブル水タンク513に原料水を送り、ナノバブル水タンク513からナノバブル発生装置512に原料水を送って、そこでナノバブルが発生させられる。ここからナノバブルを比較的多く含む水がナノバブル水タンク513に戻され、その水が混合された原料水が更にナノバブル発生装置512に送られて、これを数回循環させることによりナノバブルが濃縮された水(以下、「ナノバブル水」)がナノバブル水タンク513に貯められる。このナノバブル水は、撹拌タンク538に送られ、また、グリセリンタンク520からポンプ521によりグリセリンが同様に撹拌タンク538に送られて、混合水を構成する。この混合水は、ポンプ521により、混合水タンク525に送られる。
【0054】
燃焼熱量計測系503は、ミキサー514及びサブタンク540からなる燃料装置ユニットと、吸収式冷温水機パッケージ545とから主に構成される。混合添加物製造ユニット501で製造されたナノバブル混合水は、流量計543を介して、ミキサー514に送られ、A重油も同様にA重油サービスタンク522から流量計541を介して、ミキサー514に送られ、それぞれが混合される。この混合燃料は、サブタンク540に貯められ、電磁弁547に従って、ノズルに送られて燃焼される。比較例1として、A重油のみを燃焼する場合は、A重油サービスタンク522から流量計541を介して、電磁弁545の開閉に従って、燃焼器に送られ燃焼される。この実験で用いられた燃焼熱量計測ユニット(吸収式冷温水機パッケージ)549は、フタバ産業株式会社製の670RT吸収式冷温水機である。
【0055】
図11及び図12では、実施例1(A重油及びナノバブル水を50対50に混合:丸)並びに比較例1(A重油のみ:菱形)及び2(A重油及び水道水を50対50に混合:正方形)を燃焼させた結果をグラフ及び表で表現する。この燃焼実験は、初期の予熱時には、ナノバブル水等の供給を停止し、A重油のみを供給して燃焼させ、900℃にして、火炎を安定させた。900℃をスタート温度とし、1分ごとの温度変化を記録した。15分まで記録を取った。図12にある表の温度をプロットしたものが図11である。図11から分かるように何れの試料においても、温度は時間と共に上昇する。しかしながら、比較例1(菱形)は急激に温度が高くなり、約5分後にほぼ一定の温度(およそ990℃)になる。実施例1(丸)においては、5分後にほぼ一定の温度(およそ940℃)になるが、比較例1(正方形)については、15分間温度が少しずつ上昇し、920℃に達した。いずれの時間帯でも、温度は、比較例1>実施例1>比較例2であった。実施例1及び比較例2の場合は、重油とほぼ等量の水や機能水が混合されており、水の蒸発潜熱による温度低下が考えられるところ、実施例1では、約5分まで最も高い温度近くになり、極めて効率のよい燃焼が行われたことがわかる。比較例2では、なかなか温度が上昇しなかった。すなわち、ナノバブル処理を行った水を混合した燃料の優位性が明らかとなった。
【0056】
図13には、実施例1から5及び比較例1及び2の構成をまとめる。また、実施例2から4及び比較例1について、比較例1に比べA重油の削減率を求めた結果を示す。また、図14においては、実施例2から4及び比較例1について、上記削減率を求めるにあたって行った測定結果の詳細を示す。吸収式冷温水機(図10)では、単位時間あたり所定流量で送られるナノバブル燃料等を燃焼させ、その結果生じた熱量で上昇した水温差を計測して吸収された単位時間あたりの熱量を計測した。例えば、比較例1では、冷却水の入口温度と出口温度の温度差の平均値が1.77℃であり、その流量は9000L/分であったので、吸収された熱量は、次のように求めることができる。
【0057】
2.78×10-4(h/s)×4.186(J/cal)×1(cal/g/℃)×1.77(℃)×9×106(g/min)×60(min)
=1.112×103kWh
【0058】
各実施例において、温度差は、大体2℃であった。各実施例において、燃費は、A重油の消費量によって求めた。例えば、実施例2のA重油50重量%、ナノバブル水28重量%、グリセリン7重量%のものでは、82L/h×0.85(比重)÷1.202×10=0.058kg/kwhであった。また、実施例3のA重油65重量%、ナノバブル水21重量%、グリセリン14重量%のものでは、87L/h×0.85(比重)÷1.2917×10=0.057kg/kwhであった。そして、実施例4のA重油50重量%、ナノバブル水37.5重量%、グリセリン12.5重量%のものでは、77L/h×0.85(比重)÷1.211×10=0.054kg/kwhであった。また、比較例1のA重油100重量%のもので98L/h×0.85(比重)÷1.112×10=0.075kg/kwhであった。そして、実施例2から4の燃費から計算したA重油の削減率は、それぞれ、23.0%、24.5%、28.5%、33.3%であった(図13)。このように、ナノバブル水を組合せたナノバブル燃料では、発熱効率が極めてよいことが分かった。
【0059】
また、実施例4において、燃焼実験時のNOxやSOxや二酸化炭素の濃度を測定し、燃焼の環境性評価も行った。その結果を図15に示す。この図から明らかなように、ナノバブル燃料は、NOxやSOxや二酸化炭素の濃度が、A重油のみからなる燃焼に比べ、大きく低下しており、環境性に優れる。
【0060】
図16には、実験例11から14の燃料構成をまとめる。実験例11は、図13の比較例1に対応し、A重油が100%のものである。実験例12、13、14は、それぞれ、14.6/(14.6+3.9)=79%、14.5/(14.5+3.7)=80%、14.0/(14.0+4.6)=75%、の割合でA重油にナノバブル水が混合された実施例である。これらを、上述と同じように燃焼し、更に詳細にその効果を調べた。ボイラーから出る吹出口温度及び蒸気温度は、A重油100%の実験例11が139℃及び165℃と一番高く、他の実験例よりも高温の蒸気が排出されたことがわかる。これは、実際に燃えるのがA重油であり、その絶対量が他の実験例12−14よりも多いので当然であるが、これらのナノバブル燃料は、ボイラーの燃焼実験で、A重油単独よりも最高温度は低いものの(例えば、図11のA重油:NB機能水等を参照)、取り出し得るエネルギーがそれ程低くなく、効率のよいボイラー燃焼が達成できたことを表している。このことは、排気温度及びCOやNOxの量、過剰の酸素量からも読み取ることができる。即ち、実験例11では、過剰酸素の量が6.85%と他の実験例12−14よりもかなり多く、COやNOxも多い。COが多いということは、不完全燃焼の割合が高かったことを窺がわせ、それは過剰酸素量が多いにもかかわらず、ナノバブル燃料に比較して、燃焼が悪化していることが確認できる。
【0061】
排気温度は、実験例11が突出して高く、空気過剰率の高い燃焼が行われたと考えられる。A重油の燃焼はエマルション燃焼に比べ局所的な高温燃焼が発生しやすいので、NOx濃度が実験例12−14よりもかなり高くなったと考えられる。逆に実験例12−14では、空気過剰率が小さい(燃焼温度は高い)にも関わらず排気温度が低くなり、効率よく熱エネルギーを取り出すことができたと考えられる。これらをあわせて考えれば、少なくともこのボイラーにより、燃焼を行う限りは、ナノバブル燃料を使用した方が、より効率よく熱エネルギーを取り出せたことが分かる。このことは、ボイラー効率及び蒸発倍数のデータからも分かり、実験例12−14では、効率が殆ど限界に近く、また、上限値が16となる蒸発倍数もほぼ上限値近傍となっており、極めて効率がよいことがわかる。図17には、これらのボイラー効率及び蒸発倍数の求め方を示すので、参照にされたい。
【0062】
この実験で用いたボイラーの作動状況は、排ガス中の酸素濃度(又は、二酸化炭素濃度)を測定することにより、判断することができる。図18は、A重油に対する排ガス中の酸素濃度(二酸化炭素濃度)と空気過剰率との関係を示すグラフである。この図から分るように空気過乗率は、排気ガス中の酸素か二酸化炭素の濃度を測定すれば必然的に定まる。ボイラーの空気過剰率が判明すれば、このボイラーの作動状況が推定できる。空気過剰率を下げることによってボイラー効率を向上することが可能である。
【0063】
図19は、A重油に対する空気過剰率と平均燃焼温度との関係を示したグラフである。空気過剰率を1に近づける事によって燃焼温度(断熱火炎温度)が高くなる事が分かる。即ち、空気過剰率を望ましくは、1.1以下に、更に好ましくは1.05以下に、最も好ましくは1.0にすると効率は最大化する。尚、1より小さな空気過剰率は、不完全燃焼を意味し、ここでは考慮しない。一方、熱機関の理論熱効率は、熱機関が作動する最高温度(燃焼温度)と最低温度(排気温度)によって決まる。これを数式で表すと次のようになる。
理論熱効率 η=(T2−T1)/T2
(但し、T2:最高温度、 T1:最低温度である)
【0064】
図20は、A重油を燃料としたときボイラーの理論熱効率に与える空気過剰率と排気ガス温度の影響を示すグラフである。この図から分かるように空気過剰率を小さくすると理論熱効率は向上し、排気ガス温度を下げると理論熱効率は、更に上昇する。更に図19から、燃料の供給量を減少しても空気過剰率が同じであれば炉内の燃焼温度は同じになることが分かる。炉内の温度が同じであればボイラーの仕事量もほぼ同じになる。しかし、ボイラーの仕事量(Q3)と排気ガスが持ち去る熱量(Q1)の和が投入熱量(Q2)を上回ることは出来ない(つまり、Q2>Q1+Q3でなければならない)ので、燃料供給量を無限に絞ることは出来ない。また、燃料の供給量を絞ることにより炉内のガス流速が低下し炉内のある断面を通過する熱エネルギーの時間当たりの流量は低下するので、燃焼ガスからボイラーの電熱面へ伝わる熱量が同じと仮定すれば、燃料を少なくした方が排気温度が低下することになる。図20には、排気ガス温度の変化によって理論熱効率がどのように変化するかを示している。つまりある程度燃料を絞って空気過剰率を小さくしてボイラーを運転するのが、燃料経済的に有利になる。また、ナノバブル燃料の特質である低空気過剰率運転を利用することで、更なる燃費の低減が可能となる。
【0065】
即ち、燃焼炉内の空気過剰率は、炉内の平均空気過剰率は投入燃料量と投入空気量の平均値で決まるが、燃焼領域での空気過剰率は燃料噴霧束内に巻き込まれる空気量と噴霧燃料量によって決まることになる。燃料噴霧束内に巻き込まれる空気の量は噴霧される燃料の運動量に比例して増加する。ナノバブル燃料の場合、噴霧燃料量は「燃料+水」となるので単位燃料量当たりの空気巻き込み量は増加する。例えば、水を20%添加したナノバブル燃料では、単位燃料当たりの空気増加量は1/0.8=1.25、つまり25%となる。これにより燃焼領域の空気過剰率は大幅に増加し燃焼が改善され、NOx、CO、スモークなどの排出量が低減できる。ナノバブル燃料では、このようなメカニズムで炉内の平均空気過剰率を低減してもクリーンな燃焼を実現できる。
【0066】
これを別様に説明すれば以下の通りである。燃焼炉内の平均的な空気過剰率は、投入燃料量及び投入空気量により決定されるが、局所的な燃焼領域での空気過剰率は燃料噴霧束内の燃料微粒子に巻き込まれる相対的な空気量により決定される。各燃料微粒子に巻き込まれる相対的な空気量は、各燃料微粒子の運動量に比例して増加する。逆に言えば、その燃料微粒子が同じ運動量を持つのであれば、燃料微粒子内の成分にかかわらず、同じ空気量を巻き込むと考えられる。ナノバブル燃料の場合、各燃料微粒子中には可燃性の燃料だけでなく燃焼しない水も含まれるので、単位燃料(可燃性の燃料)当たりの空気巻き込み量は増加する(例えば、ナノバブル水を20%添加したナノバブル燃料では、巻き込まれる空気量が同じで、燃料微粒子内の可燃性の燃料が80%に減少するので、1/0.8=1.25となり、25%増加)。これにより、燃焼領域の空気過剰率は大幅に増加し燃焼が改善される。例えば、ナノバブル燃料では、局所的な最高温度が低下するので、NOxの発生が抑制され、完全な燃焼が得られやすくなるので、COやスモーク(炭素の微粒子等)が減少する。一般に、燃焼炉内の空気過剰率を低減すると、酸素不足で不完全燃焼が生じ易いとも考えられるが、ナノバブル燃料では、このようなメカニズムで平均的な空気過剰率が低くても、局所的な燃焼領域での巻き込み空気量を増加させているので、燃焼領域の空気過剰率が高まり、図19の燃焼温度と空気過剰率のグラフの関係から局所的な最高温度を制御しつつ、クリーンな燃焼をより完全に近く実現できる。
【0067】
具体的には、ボイラー効率を向上させる為に燃料を絞ったり、空気過剰率を小さくして、一方で使用環境に応じてNOx、COやスモークを調整して運転する必要がある。例えば、必要とされるボイラー運転の環境条件(例えば、ボイラーの設置場所に基づく環境基準に基づいて、NOxは100pp以下、COは40ppm以下等)に合わせて空気過剰率を設定する。また、同様に、スモークは、ボッシュ式スモークメータで10%以下となるように設定を行う。上述したように空気過剰率については、ボイラー運転の炉内の平均空気過剰率と燃焼領域における空気過剰率とを分けて考える必要がある。燃焼領域における空気過剰率とNOx等との関係は、空気過剰率が大きくなると、NOx等は低くなる。逆に空気過剰率が小さくなると、NOx等は高くなる。例えば、NOxについては、燃料種による窒素の含有量と燃焼時の火炎温度が高温になるほど高くなることが知られている。ここで、100%のA重油を使用したボイラーの運転条件と比較するとナノバブル燃料の特徴としてナノバブル水を含んでいる分だけ、燃焼領域における空気過剰率を低くすることなく、ボイラー運転の炉内の平均過剰率を低く抑え、かつ排気温度を下げる運転ができるのである。100%のA重油を使用した場合、例えば、使用環境条件に合わせるためには、空気過剰率は1.4〜1.5の範囲で調整されており、そのためにボイラー効率も一般的には80%台で運転されている。その理由は、上述したようなメカニズムが有効でない為に低空気過剰率運転を行うことができないものと考えられる。
このことは、図16の実験例11と実験例12〜14とを比較するとCOの測定結果と図18の空気過剰率λと排ガス中のCO濃度のグラフから、実験例11の空気過剰率は約1.4であり、実験例12〜14の空気過剰率は約1.2であることが求まり、そのことを実証していることが分かる。
【0068】
図21は、上記実施例と同じ方法で製造したナノバブル水の中のナノバブルの粒径分布を表すグラフである。横軸は、ナノバブルの粒子径を取り、縦軸はその粒子径を持つナノバブルの個数を表す。この図からわかるように、粒子径がより小さい0.4μmあたりに高いピークを備え、これらがナノバブル燃料の中の水粒子中に含まれるナノバブルの径であろうと考えられるこのようなナノバブルは、以下に述べるようなメカニズムで、ボイラーの全体の低空気過剰率運転を行うことが可能となり、ボイラー効率を押し上げたものと考えられる。
【0069】
図22Aは、ナノバブル水と石油系燃料を混合して形成したナノバブル燃料の模式図を示す。全体マトリックスMは、A重油からなる石油系燃料マトリックスMであり、その中にNB水粒子Wが多く存在する。上述するように、NB水粒子(水微粒子)Wにおいて、その個数平均径Dは、上述([0014])した範囲が好ましい。また、NB水粒子(水微粒子)W内のナノバブルBの個数平均径dは、上述([0017])した範囲が好ましい。通常は、このようなエマルション状態を形成するには、特殊な混合手段や分散手段を必要とすると考えられるが、ナノバブル水を用いた場合は、通常の撹拌で、容易にこのようなエマルション状態を達成できる。これは、NB水粒子の中に存在するナノバブルBが、NB水粒子Wを容易に分散させる効果(例えば、界面活性剤的な効果)があり、混合は、通常の撹拌、又は、静的な撹拌として知られるインラインミキサーを用いて行うことができる。尚、通常の水道水を同様な通常の撹拌機やインラインミキサーで混合したところ、安定的なエマルション燃料を得ることはできなかった。
【0070】
図22Bは、図22Aで示すエマルション燃料を実際に燃焼システムで噴射したときの状態を模式的に示す。エマルション燃料は、微粒子となり、太線矢印のようにノズルから噴射される。エマルション燃料粒子は、上述するように、初期速度をより維持し易い。速度が、速いと周りの空気がその粒子周囲を回るときの速度も当然速くなり、エマルション燃料粒子が接する単位時間当たりの空気の量は大きくなる。即ち、過剰な空気とより接触しやすくなる。エマルション燃料粒子の中には、NB水粒子Wがあり、上述したようにミクロ爆発をより容易に引き起こすことができると考えられる。
【0071】
このようにして、ナノバブル水であるから簡単に得られたエマルション状態のナノバブル燃料は、図23に示すようなメカニズムで燃焼していると考えられる。即ち、ナノバブル水は、燃料マトリックス中に微粒子として存在し、例えば、ボイラーにおいては燃焼用の炉内の高温ガスによって加熱され、高温ガスと石油皮膜、石油皮膜と内部水粒子との間で急速な熱移動が起こり、沸点以上になって過熱状態になる。このようにして形成された過熱水は非常に不安定であるとともに、燃料との間に沸点差があるので、この過熱水が先に気化し一挙に膨張する(図23の左側及び中央の模式図を参照)。この際に燃料液滴は爆発的に破壊され、より微細な液滴となって燃焼室内の空気とよく混合されるため、燃焼が促進されるものと思われる(図23の右側の模式図を参照)。
【0072】
また、バーナー等から噴射されるナノバブル燃料の液滴は、通常の石油系燃料に比べると比重の大きい水を含むので、所定の大きさの液滴の重量は大きくなり、噴射初速度が同じであれば、運動量は増加する重量分だけ大きくなる。液滴は周囲の空気を押し分けて進むので、高速度で移動すると、後方に回り込む空気の量がより大きくなる。そのため、燃料近辺の局所的な(燃焼領域における)過剰空気(酸素)の量が多くなり、比較的容易に燃焼できると考えられる。以上述べてきたことは、実験データに基づく推論に過ぎず、実際に生じている現象を保証するものではなく、また、そのようなメカニズム自体が本願の発明の対象という訳ではない。本願の発明は、実験に基づいて、ナノバブル水中には、微小な溶存水素(又は酸素等)を含んでいると推定し、それを利用して、いわば三階層構造となるナノバブル燃料を提供しようとするものである。このような三階層構造は、これまで開示も示唆もされておらず、正しく、新規であり、容易に想到することもできないナノバブル燃料といえる。しかしながら、このナノバブル燃料は、必ずしも図22Aの模式図のような構造を取らなければならないわけではなく、上述するような条件で、ナノバブル水を製造し、それをA重油等の石油系燃料に所定量だけ混合することにより、得られるものであればよい。但し、模式図通りの構造であり、その解析の通りに機能を発揮してもよいことは言うまでもない。このような模式図による構造は明確であり、この構造自体を発明として把握できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10 ナノバブル燃焼システム、 12 ナノバブル発生手段、
12a ナノバブル装置、 14 混合手段、 14a ミキサー、
16 燃料噴射手段、 16a ノズル、 18 原料供給手段、
20 添加材料供給手段、 22 基油供給手段、 24 気体供給手段、
30 制御部、 32、34、36、132、221 ポンプ、
40 混合燃料貯留手段、 50 本体部、 51、53、 空洞、
54 燃料管、 56 噴射管、 120 ナノバブル発生部、
130 容器、 136 リザーバー槽、 220 添加材料供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5重量%から70重量%のナノバブル水を含む石油系燃料からなるナノバブル燃料。
【請求項2】
前記ナノバブル水の少なくとも一部を平均粒径が0.4μm〜2μmの微粒子として含むことを特徴とする請求項1に記載のナノバブル燃料。
【請求項3】
前記ナノバブル水は、バブル平均径が40〜200nmのバブルを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノバブル燃料。
【請求項4】
前記ナノバブル水のバブル中に水素が含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のナノバブル燃料。
【請求項5】
水をナノバブル処理してナノバブル水を製造するナノバブル工程と、
該ナノバブル水及び石油系燃料を混合するミキシング工程と、を含むナノバブル燃料の製造方法。
【請求項6】
前記ナノバブル工程は、原水に水素のバブリングを行う添加工程を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノバブル燃料の製造方法。
【請求項7】
前記ナノバブル工程は、
5〜20MPaの圧力の液体を実質的に静的な原水中に噴射し、該噴射流を壁に衝突させる噴射・衝突工程を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のナノバブル燃料の製造方法。
【請求項8】
ナノバブル水製造手段及び配水手段からなるナノバブル水供給装置と、
石油系燃料の供給装置と、
前記ナノバブル水及び前記石油系燃料を混合する混合装置と、を含むナノバブル燃料の製造装置。
【請求項9】
ナノバブル水供給手段と、
石油系燃料の供給手段と、
前記ナノバブル水及び前記石油系燃料を混合する混合手段と、
混合されたナノバブル燃料を燃焼させる燃焼手段と、を含むナノバブル燃焼システム。
【請求項10】
前記燃焼手段から、前記混合手段へと、前記燃焼手段に送られた燃料のうち余剰燃料を還流させる還流配管を更に備え、
前記ナノバブル水供給手段は、バブル平均径が20〜600nmのバブルを約1.5×10個/mL以上含むナノバブル水を供給し、
前記燃焼手段は、前記混合手段から直接混合された燃料が圧送されるノズルであって、別途供給される酸素を含む気体に接触させ、燃焼させるノズルを含むことを特徴とする請求項9に記載のナノバブル燃焼システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−52094(P2012−52094A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116404(P2011−116404)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(505350651)株式会社オプトクリエーション (9)
【Fターム(参考)】