説明

ナノファイバーの合糸方法及び装置

【課題】電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して製造する。
【解決手段】小穴10から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバー2を生成し、小穴10に対して所定距離をあけて配置されるとともに小穴10に対向する部位に少なくとも1つの突起部23を有する環状の電極22を接地又は原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加してその中心回りに回転させ、生成されたナノファイバー2を回転する電極22に向けて旋回流動させるとともに、電極22の突起部23にて生成されたイオン風にてナノファイバー2の帯電電荷を中和させつつ集束して撚り、撚られたナノファイバー2から成る糸条7を回収手段8にて回収するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質から成るナノファイバーを製造してこれを糸条にするナノファイバーの合糸方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子物質から成るサブミクロンスケールの直径を有するナノファイバーを製造する方法として、電荷誘導紡糸法(エレクトロスピニング法とも称される)が知られている。従来の電荷誘導紡糸法は、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給し、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷を帯電させることで、この電荷を帯電された線状の高分子溶液中の溶媒が蒸発するのに伴って帯電電荷間の距離が小さくなり、帯電電荷間に作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、この静電爆発と称する現象が、一次、二次、場合によっては三次等と繰り返されることで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造されるものである。
【0003】
また、高多孔性の高分子ウエブを製造する方法として、バレルに貯蔵された高分子溶液をポンプにて帯電された多数のニードル状のノズルに供給して吐出させることで多量のナノファイバーを作り出し、これをノズルと異なる極性に帯電されたコレクタにて回収し積層しながら搬送することで、ナノファイバーが3次元のネットワーク構造に積層した空隙率が非常に高い高多孔性の高分子ウエブを製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上記のように電荷誘導紡糸法にて製造されたナノファイバーの高分子ウエブは、人造皮革、フィルター、おむつ、生理用ナプキン、癒着紡糸剤、ワイピングクロス、人造血管、骨固定器具など多様に活用されているが、10MPa以上の力学物性を得るのが困難で広範囲な用途への利用に限界があること、このように製造されたナノファイバーのウエブを連続した糸条にして力学物性を高めようとすると、ウエブを一定長さに切断して短繊維を製造し、この短繊維から紡績糸を製造する別途の紡績工程を経なければならない問題があることを指摘した上で、電荷誘導紡糸法にて製造されたナノファイバーのウエブを用いて連続的に糸条を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、列をなして帯電されたノズルからノズルと逆極性に帯電されたコレクタ内の水または有機溶媒の静的な表面上にナノファイバーを紡糸してウエブをなすように堆積させ、この堆積するウエブを、ノズルの列方向で見た一方の末端側より1cm以上離れた地点から一定の線速度で回転する回転ローラによって引き上げて連続した糸条とし、圧搾、延伸、乾燥および巻取りを行って連続した糸条を得ている。また、連続した糸条は撚糸することもできるとしている。
【0005】
さらに、電荷誘導紡糸法にてノズルから紡糸したナノファイバーをコレタタ上に堆積させてリボン形態のナノファイバーウェブを生成し、このリボン形態のウェブをエア撚り糸装置に通して撚り糸を製造する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【特許文献2】特表2006−507428号公報
【特許文献3】特表2007−518891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、各ノズルから真下にナノファイバーを生成してコレクタ上のノズルに対応した位置へ静的に堆積させながら、その堆積域の広がりにより各ノズルから生成されたナノファイバー同士を絡み合わせて細帯状のウエブを形成し、このウエブの一端からナノファイバー群を引出すことでウエブの他端側に連続しているナノファイバー群を順次引き出し、連続した糸条に集束させるものであり、そのため各ノズルから紡糸されたナノファイバーの堆積が静的でほぼ同等であるのに対し、引き出し作用が引き出し側に近い堆積域に集中しやすくなる関係から、引き出し側に近い堆積域と遠い堆積域とでナノファイバーの引出し量に差が生じる恐れがあり、その場合引出し量の差が堆積量の差を来たし、堆積量に差を生じた状態で引き出されることで連続した糸条の太さや力学物性を適正に制御するのは困難で安定しないという問題がある。さらに、引出し作用が引き出し側から遠い側の堆積域にも均等に及ぶようにするのに引出し速度を抑える必要があり大量に製造するのも困難であるという問題がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術は、エアにより撚りをかけて撚り糸を製造する点で特許文献2と異なっているが、特許文献2と基本的構成を共有していて同様の問題があり、形態や力学的物性の均一な糸を製造することができないという問題がある。また、エア撚り糸装置を通過させて撚り糸を製造するので、エア撚り糸装置における作用の安定性も問題になる。
【0008】
そこで、このような問題を解決するため、本出願人は先に、小穴を有する回転容器内に高分子溶液を供給するとともに回転容器を回転し、かつ回転容器と後述の収集電極との間に高電圧を印加して電界を発生させ、小穴から電荷を帯電させた高分子溶液を遠心力の作用で流出させ、さらに一次〜三次等に至る静電爆発にて爆発的に延伸させることでナノファイバーを効率的に生成し、回転容器に対して同軸状に間隔をあけて配設され、中心部に貫通穴を有する収集電極を回転させることで、生成されたナノファイバーを収集電極に向けて偏向流動させるとともに旋回させながら集束することでナノファイバーを撚り、撚られたナノファイバーの糸条を収集電極の貫通穴を通して回収し、また必要に応じて回転容器及び収集電極の軸心部を貫通して芯糸を供給することでナノファイバーを芯糸に絡ませて撚り、芯糸にナノファイバーを絡ませて撚られた糸条を回収するようにしたナノファイバーの合糸方法及び装置を提案している(特願2007−141907号や特願2007−234762号を参照。)。
【0009】
ところが、上記本出願人の先願に係るナノファイバーの合糸方法及び装置においては、生成されたすべてのナノファイバーが完全に集束されて糸条に撚られるとは限らず、一部のナノファイバーが収集電極の表面に付着して徐々に堆積し、その結果収集電極に向けて旋回しながら流動してきたナノファイバーを、最後に集束させて撚り、糸条にする作用に悪影響を与え、糸条の製造効率を低下させたり、糸条の製造自体を不安定にする恐れのあることが判明した。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電荷誘導紡糸法により製造したナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を安定して製造することができるナノファイバーの合糸方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のナノファイバーの合糸方法は、小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、小穴に対して所定距離をあけて配置されるとともに小穴に対向する部位に少なくとも1つの突起部を有する環状の電極を接地又は原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加してその中心回りに回転させ、生成されたナノファイバーを回転する電極に向けて旋回流動させるとともに、電極の突起部にて生成されたイオン風にてナノファイバーの帯電電荷を中和させつつ集束して撚る撚り工程と、撚られたナノファイバーを回収する回収工程とを有するものである。
【0012】
なお、ナノファイバーの原料溶液としては、各種の合成樹脂材料や核酸や蛋白質などの生体高分子などの高分子物質(本発明では、分子量が10000以上の一般的な高分子物質に限らず、分子量が1000〜10000の準高分子物質も含める)を溶媒に溶解したものが好適に適用される。また、上記高分子物質は単体物に限らず、各種高分子物質の混合物であっても良い。また、原料溶液に電荷を帯電させるには、小穴と電極間に電位差を与えるように何れか一方又は両方に高電圧発生手段を接続してそれらの間に電界を発生させれば良く、そのため電極は上記のように接地又は原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧が印加される。また、原料溶液に対して静電気発生装置などの電荷発生手段で発生させた電荷を印加するようにしても良い。
【0013】
上記構成によれば、小穴から原料溶液が帯電して流出することで電荷誘導紡糸法にてナノファイバーが生成され、かつこの生成されたナノファイバーは、環状の電極が回転していることで電極に向けて旋回しつつ流動して来て、電極の手前位置で集束されるため、ナノファイバーが撚りをかけられて糸条となる。その際に、電極の突起部からイオン風が発生することで、電極に向けて旋回流動して来て集束されるナノファイバーの帯電電荷がイオン風によって中和されるため電極表面に付着することなく、電極の手前位置で集束されて撚られることになる。これにより、長期にわたって電極にナノファイバーが付着することがなく、そのため上記作用が安定して得られて高強度で均質な糸条が形成され、その糸条を回収することで、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よくかつ安定して製造することができる。
【0014】
また、小穴を、電極の回転軸心を延長した軸心回りに電極の回転方向と逆方向に回転させると、小穴から流出して生成されるナノファイバーが電極の回転方向と逆方向に旋回しながら電極に向けて流動してくるので、ナノファイバーがより強く旋回し、その旋回して流動してきたナノファイバーを電極にて収束させることでより強い撚りをかけることができて、さらに高強度の糸条を製造することができる。
【0015】
また、原料溶液を、電極の回転軸心を延長した軸心回りに回転する回転容器の外周に形成された複数の小穴から回転容器の回転に伴う遠心力の作用で流出させると、複数の小穴から原料溶液が流出して遠心力で延伸されるとともに静電爆発にて延伸されてナノファイバーが生成されることで、効率的に大量のナノファイバーを生成することができて糸条の生産性を格段に向上することができる。なお、この場合、回転容器の小穴から放射状に流出して生成過程にあるナノファイバーを気体流を送風する送風手段や反射電極等の偏向流動手段にて回転容器の径方向から軸心方向一側の電極に向けて強制的に偏向流動させるのが好ましい。しかし、必ずしもそうする必要はなく、回転容器と電極間の電界によっても偏向させて流動させることは可能である。
【0016】
また、電極の回転軸心を通る直線経路を通して芯糸を供給する芯糸供給工程を有し、撚り工程は、集束するナノファイバーを芯糸に絡ませて撚りをかけ、回収工程は芯糸に絡まったナノファイバーを芯糸とともに回収すると、ナノファイバーが芯糸に絡むことでより効果的に撚ることができ、確実にかつ安定して糸条を製造できるとともに、芯糸とナノファイバーの複合糸を得ることができる。
【0017】
また、芯糸は、小穴側から供給し、電極の中心部を通して回収するようにすればよいが、逆に電極の中心部を通して供給し、小穴側で回収するようにすることもできる。前者の場合、広い範囲の製造条件でも安定して糸条を製造でき、後者の場合ナノファイバーが電極に付着するのをさらに確実に防止することができる。
【0018】
また、電極が、小穴側の端部に拡大頭部を有する軸状電極からなり、かつその拡大頭部の形状が、軸心部に貫通孔を有する断面ハート形の回転体であると、電極の軸心部の周囲に均等に安定した電気力線が形成され、上記作用がより確実にかつ安定して得られる。
【0019】
また、電極が、外周部に小穴側に向けて立ち上がる筒状壁を有するとともに、その内部空間の底部に突起部を有すると、電極の筒状壁の内部で安定して発生したイオン風が内部に充満した状態から周辺部に流出するので、ナノファイバーが電極に近寄って付着するのをより効果的に防止することができる。
【0020】
また、本発明のナノファイバーの合糸装置は、小穴から原料溶液を流出させる紡糸ヘッドと、小穴に対して所定距離をあけて配置されるとともに小穴に対向する部位に少なくとも1つの突起部を有する環状の電極と、紡糸ヘッドの小穴と電極の間に電位差を発生させて紡糸ヘッドから流出する原料溶液に電荷を帯電させ、帯電して流出した原料溶液を静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するとともに生成されたナノファイバーを電極に向けて流動させる電界発生手段と、電極をその中心回りに回転させる電極回転手段と、回転する電極にて集束されて撚りをかけられたナノファイバーを回収する回収手段とを備えたものである。
【0021】
この構成によれば、上記ナノファイバーの合糸方法を実施してその作用効果を奏し、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よくかつ安定して製造することができる。
【0022】
また、紡糸ヘッドが、小穴を有する回転容器と、回転容器を電極とは逆方向に回転させる容器回転手段とを備えると、小穴から流出して生成されるナノファイバーが電極の回転方向と逆方向に旋回しながら電極に向けて流動してくるので、ナノファイバーがより強く旋回し、その旋回して流動してきたナノファイバーを電極にて収束させることで強い撚りをかけることができて、より高強度の糸条を製造することができる。
【0023】
また、紡糸ヘッドが、外周に複数の小穴が形成された回転容器と、回転に伴う遠心力の作用で原料溶液を小穴から流出させるように回転容器を回転させる容器回転手段とを備えると、複数の小穴から原料溶液が流出して遠心力で延伸されるとともに静電爆発にて延伸されてナノファイバーが生成されることで、効率的に大量のナノファイバーを生成することができて糸条の生産性を格段に向上することができる。
【0024】
また、電極の回転軸心を通る直線経路に沿って、紡糸ヘッドと電極を通して回収手段に向けて芯糸を供給する芯糸供給手段を設けると、ナノファイバーが芯糸に絡むことでより効果的に集束させて撚ることができ、確実にかつ安定して糸条を製造できるとともに、芯糸とナノファイバーの複合糸を得ることができる。
【0025】
また、芯糸供給手段が、芯糸を紡糸ヘッド側からその中心を通り、電極の中心を通して、電極に対して紡糸ヘッドとは反対側に配設された回収手段に向けて供給するものであると、広い範囲の製造条件でも安定して糸条を製造できる。
【0026】
また、芯糸供給手段が、芯糸を電極側からその中心を通り、紡糸ヘッドの中心を通して、紡糸ヘッドに対して電極とは反対側に配設されて回収手段に向けて供給するものであると、ナノファイバーが電極に付着するのをさらに確実に防止することができる。
【0027】
また、電極が、小穴側の端部に拡大頭部を有する軸状電極からなり、かつその拡大頭部の形状が、軸心部に貫通孔を有する断面ハート形の回転体であると、電極の軸心部の周囲に均等に安定した電気力線が形成され、上記作用がより確実にかつ安定して得られる。
【0028】
また、電極が、外周部に小穴側に向けて立ち上がる筒状壁を有するとともに、その内部空間の底部に突起部を有すると、電極の筒状壁の内部で安定して発生したイオン風が内部に充満した状態から周辺部に旋回しながら流出するので、ナノファイバーが電極に近寄るのをより効果的に防止することができるとともに、ナノファイバーの集束効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のナノファイバーの合糸方法と装置によれば、電荷誘導紡糸法にて生成されたナノファイバーを回転する環状の電極に向けて旋回しつつ流動させて集束し、ナノファイバーに撚りをかけて糸条を製造するとともに、その際に電極の突起部から発生したイオン風にてナノファイバーの帯電電荷を中和させることで、電極にナノファイバーが付着するのを防止できるため、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よくかつ安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のナノファイバーの合糸方法と装置の各実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
まず、本発明のナノファイバー合糸装置の第1の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0032】
図1、図2において、1はナノファイバー合糸装置であって、ナノファイバー2を生成する紡糸ヘッド3と、回転電極部4と、芯糸5を供給する芯糸供給手段6と、製造された糸条7を回収する回収手段8とを備えている。
【0033】
ナノファイバー生成手段としての紡糸ヘッド3は、鉛直な軸心周りに回転自在に支持された円筒容器状の回転容器9の下面に、先端に小穴10を有する1又は複数のノズル部材11を装着して構成されている。回転容器9の上壁には、電気絶縁性を有する上部回転筒体12の下端部が一体的に固定され、その上部回転筒体12の中間部が上部支持フレーム13にて軸受14を介して回転自在に支持されるとともに、上部回転筒体12の上部は容器回転手段15に接続されている。回転容器9又は少なくともノズル部材11は導電性を有し、上部回転筒体12に設けた導電部材12aと軸受14を介してノズル部材11が電気的に接地されている。なお、ノズル部材11にて小穴10を構成する代わりに、回転容器9に直接小穴10を形成しても良い。小穴10の直径は、0.01mmから2mm程度が好適である。容器回転手段15は、上部回転筒体12の外周に固定された従動プーリ15aと、上部支持フレーム13に設置されたモータ15dと、モータ15dの出力軸に固定された駆動プーリ15cと、プーリ15aと15c間に巻き掛けれたベルト15bにて構成され、モータ15dにて回転容器9をR方向に回転させるように構成されている。回転容器9(及びその小穴10)の回転速度は、数100〜10000rpm程度に設定される。
【0034】
回転容器9の中心部の貫通開口を形成する内側筒壁16は、その上部が全周にわたって開口され、回転容器9の外周壁と内側筒壁16との間の環状収容空間17に原料溶液供給手段18にて供給された原料溶液20を収容し、ノズル部材11を通して小穴10から流出させるように構成されている。原料溶液供給手段18は、貯留容器18a内の原料溶液20を供給ポンプ19にて取り出し、上部回転筒体12を貫通させて回転容器9内に挿入配置された溶液供給管21の先端のL字屈曲部21aから環状収容空間17内に原料溶液20を供給するように構成されている。図示例では、原料溶液20に作用する重力と回転容器9の回転による遠心力と小穴10と回転電極部4の間の電界の作用で、小穴10から原料溶液20を流出させるようにしているが、環状収容空間17内を加圧可能な構成として、原料溶液20を圧力で押し出して流出させるようにしても良い。さらには、紡糸ヘッド3を容器形態とせずに、回転体に小穴10を有するノズル部材11を配置し、そのノズル部材11に対して原料溶液20を供給するようにしても良い。
【0035】
原料溶液としては、高分子物質を溶媒に溶解したものが好適である。その高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が好適なものとして例示でき、さらには核酸や蛋白質などの生体高分子なども例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
また、使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、原料溶液中の溶媒の占める割合は、60%位から98%位が好適で、使用する高分子物質の種類、溶媒の種類、生成するファイバーの径等に応じて適切に決定する。
【0037】
回転電極部4は、導電性の環状の電極22の上面の適所1箇所、又は複数箇所に先端が鋭く尖った突起部23が設けられ、この電極22が電気絶縁性を有する下部回転筒体24の上端に一体固定され、下部回転筒体24の中間部が軸受26を介して下部支持フレーム25にて回転自在に支持され、下部回転筒体24の下部が電極回転手段27に接続されている。電極22は、下部回転筒体24に設けられた導電部材24aと軸受26を介して電界発生手段である高電圧発生手段28に接続され、1kV〜100kV、好適には10kV〜100kVの正又は負(図示例では負)の高電圧が印加され、回転容器9と電極22の間に電界を発生させている。電極回転手段27は、下部回転筒体24の外周に固定された従動プーリ27aと、下部支持フレーム25に設置されたモータ27dと、モータ27dの出力軸に固定された駆動プーリ27cと、プーリ27aと27c間に巻き掛けれたベルト27bにて構成され、モータ27dにて環状の電極22を上記R方向とは逆方向のS方向に回転駆動するように構成されている。電極22の回転速度は、数100〜10000rpm程度に設定される。
【0038】
芯糸供給手段6は、上部支持フレーム13に配設され、芯糸5を所定の速度で供給する芯糸供給リール29と、芯糸5の供給位置を回転容器9及び電極22の回転軸心を通る直線経路31の上端に位置決めするガイドローラ30にて構成されている。回収手段8は、下部支持フレーム25に配設され、芯糸5にナノファイバー2を撚って製造された糸条7を巻き取って回収する糸条巻取リール32と、直線経路31の下端を位置決めし、製造された糸条7を直線経路31から側方に取り出すためのガイドローラ33にて構成されている。かくして、ガイドローラ30、33にて、それらの間に直線経路31が設定され、この直線経路31に対して回転容器9、電極22が同一軸芯状態となるように配設されている。
【0039】
芯糸5としては、繊維の種類は限定されるものではなく、木綿のような天然繊維や、ナイロンなどの合成繊維などを例示することができる。線径が1μm以下のモノフィラメントを用いるのが好適であるが、複数の繊維が束となったマルチフィラメントを採用することができる。その際の繊維の径は特に限定するものではないが、500nm以下の繊維から成る撚糸を用いることができる。また、芯糸5の送り速度は、生成するナノファイバーの量や生成する糸条7の径等にも依存するが、1mm/secから100mm/sec程度が好適である。
【0040】
直線経路31と回転容器9の小穴10と電極22の突起部23との配置関係を説明すると、回転容器9の小穴10と電極22の間の距離は、それらの間でナノファイバーを生成するのに必要な距離(例えば100〜1000mm程度)に設定され、直線経路31と小穴10の径方向の距離は特に限定されず、直線経路31と突起部23の径方向の距離は、電極22に向けて吸引されて流動してくるナノファイバー2を突起部23から出る旋回するイオン風34(図3参照)にて芯糸5に確実に絡ませるために、50mm以下、より好適には25mm以下に設定するのが好ましい。
【0041】
以上の構成の本実施形態によれば、芯糸5を直線経路31に沿って紡糸ヘッド3側から回転電極部4を貫通して回収手段8に向けて移動させつつ、R方向に回転する回転容器9の小穴10から原料溶液20を流出させると、電荷誘導紡糸法にてナノファイバー2が生成されるとともに、生成されたナノファイバー2は、R方向とは逆方向のS方向に回転する電極22に向けて流動し、生成されたナノファイバー2が回転容器9と電極22の間の電界の作用及び回転容器9と電極22の逆方向の回転によって電極22に向かって旋回しながら流動して集束することで、この旋回しながら流動してきたナノファイバー2が芯糸5に絡み、芯糸5に巻き付いて糸条7が製造される。
【0042】
その際に、電極22に設けられた先端が尖った突起部23からイオン風が発生するとともに、その突起部23が電極22の中心回りに回転しているために、図3に示すように、旋回するイオン風34が形成されているため、逆極性に帯電したナノファイバー2はそのイオンの流れに引き寄せられるとともにイオンと接触して帯電電荷が中和されることで、電極22に付着することなく、電極22の手前位置で集束されることになる。これにより、電極22にナノファイバー2が付着することがないため、上記作用が安定して得られるとともに均質な糸条7が形成される。この糸条7を回収手段8にて回収することで、ナノファイバー2から成る高強度でかつ形態や力学的物性の均質な糸条7を安定して生産性よく製造することができる。
【0043】
以上の説明では、紡糸ヘッド3として、下面に複数の小穴10(ノズル部材11)が配設された回転容器9をR方向(電極22の回転方向Sと逆方向)に回転させるようにした例を示したが、電極22のみを回転させて、紡糸ヘッド3は小穴10を固定状態で配置した構成することもできる。また、小穴10の配置状態も周方向に複数等配した構成でなくても良く、単一の小穴10を配置した構成とすることもできる。さらに、直線経路31に沿って芯糸5を供給し、その芯糸5にナノファイバー2を絡ませて糸条7を製造する例を示したが、芯糸5は供給せず、旋回流動してきたナノファイバー2を集束させて互いに撚り合わせることで芯糸5の無い糸条7を製造して回収手段8にて回収するようにすることも可能である。
【0044】
本実施形態の具体実施例を示すと、高分子物質としてPVA(ポリビニルアルコール)を用い、溶媒としての水の占める割合を90%とした原料溶液を用い、直径が0.1mmの小穴10を有する回転容器9を3000rpmの回転速度で回転させ、電極22に50kVの高電圧を印加するとともに、電極22を4000rpmの回転速度で回転させ、芯糸5を10mm/secの送り速度で送給して糸条を製造した。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明では、先行する実施形態の構成要素と同一の構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
【0046】
上記第1の実施形態では、芯糸5を紡糸ヘッド3の上方に配設された芯糸供給手段6にて直線経路31の上端に供給し、製造された糸条7を回転電極部4の直線経路31の下端から回収手段8にて回収するようにした例を示したが、本実施形態では、図4に示すように、回転電極部4の下方に芯糸供給手段6を配設し、そのガイドローラ30を直線経路31の下端に配置し、回収手段8を紡糸ヘッド3の上方に配設し、そのガイドローラ33を直線経路31の上端に配置し、芯糸供給手段6にて芯糸5を直線経路31の下端から回転電極部4を貫通して上方に供給し、電極22の上部位置で突起部23からの旋回するイオン風34にてナノファイバー2を芯糸5に絡ませて糸条7を製造し、その糸条7を紡糸ヘッド3を貫通させて直線経路31の上端のガイドローラ33を介して回収手段8にて回収するように構成している。
【0047】
本実施形態においては、電極22側からその中心を通して芯糸5を供給して電極22の上部で旋回するイオン風34にて紡糸ヘッド3から電極22に向けて流動してきたナノファイバー2を集束させて芯糸5に絡ませ、こうして製造された糸条7を紡糸ヘッド3の中心を通して回収手段8にて回収するので、紡糸ヘッド3から電極22に向けて流動してきたナノファイバー2が電極22に付着するのをより確実に防止することができて、一層安定して製造することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明のナノファイバー合糸装置の第3の実施形態について、図5を参照して説明する。
【0049】
上記第2の実施形態では、紡糸ヘッド3として、回転容器9の下面に小穴10を配設した構成のものを例示したが、本実施形態では、図5に示すように、周面に複数の小穴10(ノズル部材11)を有する回転容器9を用い、容器回転手段15にて回転容器9を高速回転させて遠心力で原料溶液20を放射状に流出させるようにしている。このように構成すると、回転容器9内の原料溶液20が遠心力によって各小穴10から線状に流出するとともに遠心力の作用で延伸され、その細く線状に延伸された原料溶液20中の溶媒が蒸発することで一次静電爆発、二次静電爆発、さらに三次静電爆発等が生じて延伸されることで、サブミクロンの直径を有する高分子物質から成るナノファイバー2が大量に効率的に生成される。
【0050】
生成されたナノファイバー2は回転容器9と電極22間の電界の作用によって、電極22に向けて旋回しつつ流動するが、放射線状に流出した原料溶液20をより確実にかつ効果的に電極22に向けて偏向流動させつつナノファイバー2を生成させるために、回転容器9の電極22とは反対側の背部に、矢印で示すように、生成されたナノファイバー2を電極22側に向けて強制的に偏向流動させる偏向流動手段35を配設するのが好適である。偏向流動手段35は、具体的には、生成されたナノファイバー2を電極22側に向けて強制的に流動させる気体流を送風する送風手段や、ナノファイバー2の帯電極性と同極性の高電圧を印加した反射電極等にて構成することができる。特に、気体流を適用すると、蒸発した溶媒が速やかに排出されるので、ナノファイバー2の生成効果が促進され、さらに温風を適用すると、溶媒の蒸発を促進するので、ナノファイバー2の生成を促進できて好ましい。
【0051】
以上の各実施形態では、回転電極部4の電極として、環状板から電極22に突起部22を突設した例のみを例示したが、電極の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、紡糸ヘッド3側の一端部に拡大頭部42を有する軸状電極41にて構成し、その拡大頭部42の紡糸ヘッド3に対向する頂部に突起部43を設けた構成のものが好適に適用される。拡大頭部42の形状は、図示の如く、軸芯部に貫通孔42aを有する断面ハート形の回転体から成るものが好適である。なお、軸状電極41は、その拡大頭部42と突起部43の外表面が導電性を有するものであれば良く、他の部分は必ずしも導電性を有する必要はない。
【0052】
このような軸状電極41を適用すると、紡糸ヘッド3と軸状電極41の拡大頭部42の間の電界によって発生する電気力線が、回転容器9の小穴10が配設されている面から出て拡大頭部42の貫通孔42aの周囲の環状に突出した部分に収束するように形成される。そのため、生成されたナノファイバー2がその電気力線に沿って拡大頭部42に向けて吸引され、かつその頂部の突起部43から発生するイオン風34にて確実に捕捉されて芯糸5に絡められるので、より効率的にかつより強く撚られた糸条7を製造することができる。
【0053】
また、図7に示すように、環状板から成る電極22の外周部に紡糸ヘッド3側に向けて立ち上がる筒状壁45を設け、その内部空間46の底部に突起部47を配設した構成の電極44を適用することもできる。このような電極44によれば、電極44の筒状壁45の内部で突起部47から安定して発生したイオン風が内部空間46に充満した状態から周辺部に流出するので、ナノファイバー2が電極44に近寄るのをより効果的に防止することができ、より安定して糸条7を製造することができる。
【0054】
なお、以上の実施形態においては、紡糸ヘッド3の回転方向と環状の電極22の回転方向を互いに逆方向にした例を示しが、これに限定されるものではなく、同方向に回転させる場合でも同様の効果が得られる。また、環状の電極22の形状も、突起部23を除いた断面形状が中心軸に対して対称形である必要はなく、電極の中心部に生成されたナノファイバーが導かれ、集束されて撚られた糸条が通過する穴を有するものであれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のナノファイバーの合糸方法と装置によれば、電荷誘導紡糸法にて生成されたナノファイバーを回転する環状の電極に向けて旋回しつつ流動させて集束し、ナノファイバーに撚りをかけて糸条を製造するとともに、その際に電極の突起部から発生したイオン風にてナノファイバーの帯電電荷を中和させることで、電極にナノファイバーが付着するのを防止できるため、ナノファイバーから成る高強度で均質な糸条を生産性よくかつ安定して製造することができ、ナノファイバーから成る高強度の糸条の生産に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のナノファイバー合糸装置における第1の実施形態の全体概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態の縦断正面図。
【図3】同実施形態における回転電極部の拡大縦断面図。
【図4】本発明のナノファイバー合糸装置における第2の実施形態の全体概略構成を示す斜視図。
【図5】本発明のナノファイバー合糸装置における第3の実施形態の全体概略構成を示す斜視図。
【図6】各実施形態における電極の他の構成例を示す斜視図。
【図7】各実施形態における電極のさらに別の構成例を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 ナノファイバー合糸装置
2 ナノファイバー
3 紡糸ヘッド
4 回転電極部
5 芯糸
6 芯糸供給手段
7 糸条
8 回収手段
9 回転容器
10 小穴
15 容器回転手段
20 原料溶液
22 環状の電極
23 突起部
27 電極回転手段
28 高電圧発生手段(電界発生手段)
31 直線経路
34 旋回するイオン風
41 軸状電極
42 拡大頭部
42a 貫通孔
43 突起部
44 電極
45 筒状壁
46 内部空間
47 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小穴から原料溶液を流出させるとともに流出する原料溶液に電荷を帯電させ、静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するナノファイバー生成工程と、小穴に対して所定距離をあけて配置されるとともに小穴に対向する部位に少なくとも1つの突起部を有する環状の電極を接地又は原料溶液の帯電電荷とは逆極性の電圧を印加してその中心回りに回転させ、生成されたナノファイバーを回転する電極に向けて旋回流動させるとともに、電極の突起部にて生成されたイオン風にてナノファイバーの帯電電荷を中和させつつ集束して撚る撚り工程と、撚られたナノファイバーを回収する回収工程とを有することを特徴とするナノファイバーの合糸方法。
【請求項2】
小穴を、電極の回転軸心を延長した軸心回りに電極の回転方向と逆方向に回転させることを特徴とする請求項1記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項3】
原料溶液を、電極の回転軸心を延長した軸心回りに回転する回転容器の外周に形成された複数の小穴から回転容器の回転に伴う遠心力の作用で流出させることを特徴とする請求項1又は2記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項4】
電極の回転軸心を通る直線経路を通して芯糸を供給する芯糸供給工程を有し、撚り工程は、集束するナノファイバーを芯糸に絡ませて撚りをかけ、回収工程は芯糸に絡まったナノファイバーを芯糸とともに回収することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項5】
芯糸は、小穴側から供給し、電極の中心部を通して回収することを特徴とする請求項4記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項6】
芯糸は、電極の中心部を通して供給し、小穴側で回収することを特徴とする請求項4記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項7】
電極は、小穴側の端部に拡大頭部を有する軸状電極からなり、かつその拡大頭部の形状が、軸芯部に貫通孔を有する断面ハート形の回転体であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項8】
電極は、外周部に小穴側に向けて立ち上がる筒状壁を有するとともに、その内部空間の底部に突起部を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸方法。
【請求項9】
小穴から原料溶液を流出させる紡糸ヘッドと、小穴に対して所定距離をあけて配置されるとともに小穴に対向する部位に少なくとも1つの突起部を有する環状の電極と、紡糸ヘッドの小穴と電極の間に電位差を発生させて紡糸ヘッドから流出する原料溶液に電荷を帯電させ、帯電して流出した原料溶液を静電爆発にて延伸させてナノファイバーを生成するとともに生成されたナノファイバーを電極に向けて流動させる電界発生手段と、電極をその中心回りに回転させる電極回転手段と、回転する電極にて集束されて撚りをかけられたナノファイバーを回収する回収手段とを備えたことを特徴とするナノファイバーの合糸装置。
【請求項10】
紡糸ヘッドは、小穴を有する回転容器と、回転容器を電極とは逆方向に回転させる容器回転手段とを備えていることを特徴とする請求項9記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項11】
紡糸ヘッドは、外周に複数の小穴が形成された回転容器と、回転に伴う遠心力の作用で原料溶液を小穴から流出させるように回転容器を回転させる容器回転手段とを備えていることを特徴とする請求項9又は10記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項12】
電極の回転軸心を通る直線経路に沿って、紡糸ヘッドと電極を通して回収手段に向けて芯糸を供給する芯糸供給手段を設けたことを特徴とする請求項9又は11の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項13】
芯糸供給手段は、芯糸を紡糸ヘッド側からその中心を通り、電極の中心を通して、電極に対して紡糸ヘッドとは反対側に配設された回収手段に向けて供給することを特徴とする請求項12記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項14】
芯糸供給手段は、芯糸を電極側からその中心を通り、紡糸ヘッドの中心を通して、紡糸ヘッドに対して電極とは反対側に配設されて回収手段に向けて供給することを特徴とする請求項12記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項15】
電極は、小穴側の端部に拡大頭部を有する軸状電極からなり、かつその拡大頭部の形状が、軸芯部に貫通孔を有する断面ハート形の回転体であることを特徴とする請求項9〜14の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。
【請求項16】
電極は、外周部に小穴側に向けて立ち上がる筒状壁を有するとともに、その内部空間の底部に突起部を有することを特徴とする請求項9〜14の何れか1つに記載のナノファイバーの合糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−185393(P2009−185393A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22941(P2008−22941)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】