説明

ナノファイバ製造装置、不織布製造装置、および、ナノファイバ製造方法

【課題】高い品質のナノファイバを安全に製造できる装置の提供。
【解決手段】ナノファイバ製造用の原料液を噴射する噴射孔112を有する噴射手段110と、前記噴射孔112から噴射され製造されたナノファイバを収集する収集電極120とを備えるナノファイバ製造装置であって、前記収集電極120と前記噴射手段110との間に10KV以上、200KV以下の範囲から選定される電圧を印加する第1電源150と、前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を重畳的に印加する交流電源190とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質からなるナノファイバの製造装置、及び、製造方法に関する。また、ナノファイバで構成される不織布の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質から成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状物質(以下、「ナノファイバ」と記す。)を製造する方法として、エレクトロスピニング法が知られている。
【0003】
このエレクトロスピニング法とは、コレクタ(収集電極)に対し高電圧を印加した針状のノズルから溶媒中に高分子物質を分散させた高分子溶液をコレクタに向かって噴射(流出)させることにより、ナノファイバを得る方法である。
【0004】
より具体的には、噴射ノズルを高電圧にすることにより帯電した高分子溶液が空間中に噴射され、溶媒が蒸発するに伴い空間中を飛翔中の高分子溶液の電荷密度が上昇する。そして、高分子溶液中に発生する反発方向のクーロン力が高分子溶液の表面張力より勝った時点で高分子溶液が爆発的に線状に延伸される現象(静電爆発)が生じる。この静電爆発が、空間において次々と発生することで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバが製造される。
【0005】
また、前述の方法で製造されたナノファイバを基板上に堆積させることで、立体的な網目を持つ3次元構造の薄膜を得ることができ、さらに厚く形成することでサブミクロンの網目を持つ高多孔性ウェブ(不織布)を製造することができる。
【0006】
このようにエレクトロスピニング法を採用して製造されたウェブは、ナノオーダーの孔からなる高多孔性であり、ウェブ全体としての表面積が広いため、フィルタや電池のセパレータや燃料電池の高分子電解質膜や電極等に適用され、高い効果を得ることが期待されている。
【0007】
従来、ナノファイバを多量に製造してナノファイバからなる実用的なウェブを製造する方法として、複数のノズルを並列に配置し、多量のナノファイバを堆積させてウェブを製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
当該装置は、前記ノズルとコレクタとの間に5KV以上の高電圧を付与し、コレクタを接地するか、ノズルと反対の極性の電圧を付与してナノファイバを製造している。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従前のナノファイバ製造装置は、特許文献1にも記載されているように、ノズルには直流の高電圧(例えば5KV以上)が印加されている。一方、ノズルには、ナノファイバの原料を供給するためのパイプや、原料を蓄えておくためのタンクや、原料をノズルに圧送するためのポンプなど種々の装置や部材が取り付けられている。
【0010】
従って、ノズルを高電圧で維持するためには、ノズル周辺に存在する部材や装置との間に高耐圧の絶縁を施し、さらに、安全上の問題から、高電圧になるノズル全体を囲いで覆うなどの対策が施されている。
【0011】
ところが、これら絶縁された種々の部材が高電圧に帯電して、これらの部材からコロナ放電など異常放電が発生したり、イオン風が発生したりして、人体に影響を及ぼしたり、ナノファイバの製造に悪影響を及ぼすなどの問題が発生している。
【0012】
例えば、前記イオン風により発生した高電圧に帯電した埃やゴミは、周辺機器に付着し、周辺機器に使用されている部品や半導体素子等を破壊して、装置そのものを使用できない状態にしてしまう場合もある。さらに、ノズルの先に高電圧を印加している場合には、電気力線がそのノズルからナノファイバの製造装置を覆うブース等に向けて、発生しており、前記発生した帯電した埃やゴミ等は、猛烈な勢いで、前記電気力線に沿って、ブース等に移動し付着する。このように、周辺機器や付帯設備に付着した帯電した埃やゴミ等は、高電圧を保持しており、ノズルから発生する同極性に帯電したナノファイバ自身にも、大きな影響を与え、正常な回収への妨げや、回収率の低下等につながって行く。
【0013】
特に、ナノファイバの原料として引火性の物質を用いている場合、前記部材からの異常放電による引火や爆発の危険性もある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルなど噴射手段近傍に存在する部材の帯電を防止しうるナノファイバ製造装置等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本願発明にかかるナノファイバ製造装置は、ナノファイバ製造用の原料液を噴射する噴射孔を有する噴射手段と、前記噴射孔から噴射され製造されたナノファイバを収集する収集電極とを備えるナノファイバ製造装置であって、前記収集電極と前記噴射手段との間に10KV以上、200KV以下の範囲から選定される電圧を印加する第1電源と、前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を重畳的に印加する交流電源とを備える。また、前記第1電源は、前記収集電極に−200KV以上、−10KV以下、または、+10KV以上、+200KV以下の範囲から選定される電位を印加し、前記交流電源は、前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を印加することが好ましい。
【0016】
これにより、噴射手段に前記交流電圧が印加されるため、噴射手段近傍に存在する部材の帯電を抑止することができ、これらの部材から発生する異常放電やイオン風などを防止し、高品質なナノファイバを安全に製造することが可能となる。
【0017】
また、前記ナノファイバ製造装置を備えた不織布製造装置であれば、前記作用、効果を享受しつつ、高品質なナノファイバからなる不織布を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ナノファイバの生産性の安定化を図れると共に、高い安全性を確保したナノファイバの製造装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明にかかるナノファイバ製造装置を備える不織布製造装置の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明にかかる不織布製造装置を概略的に示す斜視図である。
同図に示すように不織布製造装置100は、噴射手段110と、収集電極120とで構成されるナノファイバ製造装置180と、被堆積手段としてのシート160とを備えている。なお、噴射される原料液と、製造されつつあるナノファイバとは明確に区別できないため、いずれにも200の符号を付し、製造された不織布には210を付している。
【0021】
噴射手段110は、ナノファイバを製造するための原料液を噴射(流出)する噴射孔を備えた装置であり、接地手段102を介してアース101と接続されるか、第2電源151を介してアース101と接続される。さらに、前記いずれの場合においても交流電源190が接続され、交流電圧が重畳される。
【0022】
なお、同図では第2電源151と接続するか接地するかが選択可能に記載されているが特にこれに限定されるものではない。また、原料液を貯蔵するタンク(図示せず)と接続されるパイプ111が噴射手段110に接続されており、所定の圧力で原料液が供給されるようになっている。
【0023】
収集電極120は、噴射手段110に対し所定の電圧が印加されるように第1電源としての電源150に接続され、製造されたナノファイバ200を収集するための装置である。
【0024】
なお、電源150は、アース101と収集電極120との間に電圧を発生させるものであり、噴射手段110がアース101と直接接続されている場合は、噴射手段110との間で所定の電圧を印加することとなる。
【0025】
シート160は、空間中で製造されたナノファイバ200が堆積する対象となる部材であり、堆積したナノファイバ200と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシートである。シート160は、ロール状に巻き付けられた状態で供給され、ナノファイバ200が堆積する部分をゆっくりと移動手段170により図中矢印方向に移動するものとなっている。そして、シート160上で製造された不織布210とともに再びロール状に巻き付けられるようになっている。
【0026】
移動手段170は、シート160を所定の張力を維持しつつ一方方向に送ることができる装置であり、モータ(図示せず)などの駆動により図に示されるローラーを回転させてシート160を移動させるものである。
【0027】
交流電源190は、アース101と噴射手段110との間に接続され、接地電位を中心として5V以上1000V以下の範囲から選定される振幅の交流電圧を印加することのできる電源である。
【0028】
図2は、噴射手段および収集電極の具体例を示す図である。
図3は、ロータリーシリンダを示す断面図である。
【0029】
なお、図2は、噴射手段110と、収集電極120との関係を示すため、噴射手段110を大きく示しているが、実際は、収集電極120の径が数メートルの大きさであるのに対し、ロータリーシリンダ116の径は数センチメートルから数十センチメートル程度である。
【0030】
収集電極120は、円筒形状となされており、シート160の移動に伴い、または同期して回転しうるものとなされている。また、収集電極120は、収集電極120の端面に向かって徐々に縮径するように、円筒形状のエッジ部分にアール面取りが施されている。
【0031】
このように、噴射手段110から望む収集電極120の周縁部を噴射手段110から遠ざかるような曲面とすることで、収集電極120のエッジによる電場の乱れを抑止し、ナノファイバ200の堆積状態を良好とすることができる。
【0032】
図2に示すように、噴射手段110は、遠心力により原料液を噴射(流出)する装置であり、ロータリーシリンダ116と、原料液200を供給するためのパイプ111と兼用される回転軸となるシャフト117と、モータ118と、基体119と、ベルト115と、プーリー114とを備えている。
【0033】
ロータリーシリンダ116は、一端が封止された円筒の周壁に噴射孔112を備えたノズル113を複数個放射状に備えている。ロータリーシリンダ116の他端中央部分にはシャフト117が取り付けられている。ロータリーシリンダ116は、シャフト117を介して基体119に回転自在に取り付けられている。
【0034】
また、モータ118とシャフト117に固着されているプーリー114とはベルト115で接続されており、モータ118は、基体119に取り付けられている。モータ118を回転させることにより、ロータリーシリンダ116を基体119に対して回転させることができる構造となっている。
【0035】
また、図3に示すように、シャフト117とロータリーシリンダ116の他端とは液体を挿通可能に接続されている。また、シャフト117とロータリーシリンダ116とはいずれも導体で構成されている。
【0036】
ロータリーシリンダ116と交流電源190とは、ブラシ203を用いシャフト117を介して接続されている。ブラシ203を用いているため、ロータリーシリンダ116が回転状態であっても交流電圧を印加することが可能となっている。
【0037】
ロータリーシリンダ116は、シャフト117を介して原料液200が貯蔵されているタンク202と接続されている。また、原料液200の流通経路上にはポンプ201が取り付けられており、原料液200をロータリーシリンダ116に向かって圧送することができるようになっている。
【0038】
次に、噴射手段110と収集電極120とで構成されるナノファイバ製造装置180によるナノファイバ200の製造方法と、製造されたナノファイバ200を堆積させて不織布を製造する不織布の製造方法を説明する。
【0039】
まず、原料液200のタンク202からロータリーシリンダ116に向かって原料液200が圧送される。本実施の形態の場合、当該圧力により原料液200を噴射するものではないため、圧送の圧力は比較的低い。
【0040】
原料液200は、シャフト117(パイプ111)を通過してロータリーシリンダ116の内部に注入される。ロータリーシリンダ116は、モータ118により回転しており、注入された原料液200にも回転による遠心力が発生する。そしてロータリーシリンダ116の周壁に穿設される孔を介して原料液200が遠心力によりロータリーシリンダ116外部に放射状に噴射される。
【0041】
原料液200は、回転する噴射孔112から噴射されるので、各噴射孔112の形状に多少のばらつきがあったとしても全空間を総合すると均等な量で原料液200が噴射される。以上のような噴射手段110を採用すれば、比較的大量のナノファイバ200を一度に、かつ、均質に製造することができ、製造されたナノファイバが均等に分布した不織布210を製造することが可能となる。
【0042】
一方、収集電極120には、+10KV以上、+200KV以下、または、−10KV以下、−200KV以上の範囲内から選定される電圧が電源150により印加されている。そして、収集電極120に対峙して配置されるロータリーシリンダ116には、交流電圧に重畳するように収集電極の電圧に対応した誘導電荷が生じると共に、ロータリーシリンダ116と収集電極120との間に電界(電気力線)が発生する。
【0043】
以上の状態で、ロータリーシリンダ116から原料液200が噴射されるため、原料液200に対しては静電爆発に必要な電荷が付与されると共に、前記電界(電気力線)に沿って原料液200が飛翔し、静電爆発を繰り返してナノファイバ200が製造される。
【0044】
製造されたナノファイバ200は、シート160上に堆積しつつシート160は徐々に移動するため、シート160上に長尺の不織布が製造されていく。
【0045】
以上のように、モータ118や基体119、原料液200を供給する経路を構成するパイプ111、原料液のタンク202、ポンプ201などは、接地電位を中心に5V以上1000V以下の振幅の交流電圧が付与されているため、噴射手段110の近傍に配置される部材が帯電するのを抑止することが可能となる。従って、これらの部材から発生する異常放電などを可及的に抑止することができ、安全性が高く、製造されるナノファイバの品質を安定させることが可能となる。
【0046】
また、噴射手段110自体を高電圧に維持するための高度な絶縁を施す必要が無い。従って、本実施の形態のように、噴射手段110は、原料液200を回転により噴射させる機構を簡単に備えることができる。また、原料液200のタンク等に接続されるモータ118やセンサも絶縁状態で取り付ける必要が無くなる。従って、噴射手段110全体の構成を簡単にすることができる。引いては、構造が簡単な噴射手段110は、高い耐久性や信頼性を容易に獲得でき、また、高い設計の自由度を有する。また、製造コストやメンテナンスコストの低減に寄与することができる。
【0047】
ナノファイバ製造用の高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。また、ナノファイバ製造に用いられる高分子物質は1種類に限定されるわけではなく、前記例示の高分子物質などから任意の複数種類を選定して用いても構わない。
【0048】
また、原料液を製造するために用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示することができる。また、ナノファイバ製造に用いられる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示の溶媒などから任意の複数種類を選定し、混合して用いても構わない。
【0049】
また、原料液に無機質固体材料を混入しても構わない。これら無機質固体材料は、製造されるナノファイバの骨材として機能したり、ナノファイバに担持させる触媒等として機能するものである。当該無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができる。また、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。
【0050】
当該酸化物としては、Al23、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B23、P25、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb23、As23、CeO2、V25、Cr23、MnO、Fe23、CoO、NiO、Y23、Lu23、Yb23、HfO2、Nb25 等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0051】
また、ナノファイバを形成する樹脂材料としては、前記高分子物質ばかりでなく、低分子物質でも構わない。低分子物質でも原料液の内容は高分子物質と変わるわけではなく、低分子物質を溶媒に溶解すればよい。この場合、ナノファイバが長く連なる状態になるのでなく、微粒子の状態のナノファイバが製造される。このような微粒子状のナノファイバの応用例としては、有機ELや液晶用のカラーフィルタの顔料を溶媒に溶解して、顔料そのものを微細化するような場合が考えられる。
【0052】
なお、本実施の形態では、噴射手段110に接地電位を基準とする交流電圧を付与したが、特に接地電位を基準にする必要はない。例えば、噴射手段110と収集電極120との間に10KV以上、200KV以下の範囲から選定される電圧を印加すると共に、噴射手段110に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を重畳的に印加するものでも構わない。例えば、噴射手段110に第2電源151を接続し−1KV〜+1KVの範囲で電圧を印加し、これに重畳して5V以上1000V以下の交流電圧を印加しても構わない。接地電位との関係は特に限定されないが、比較的低電圧を噴射手段110に印加しておくことで、交流電圧を付与する効果を安定的に発揮させることが可能となる。
【0053】
なお、噴射手段110は、上記実施の形態に記載した構造に限定されるわけではない。例えば図4(a)、(b)に示すように、収集電極120に対して平行な軸で回転するロータリーシリンダを備えるものであっても良い。同図に示すロータリーシリンダ116には、第2電源151と交流電源190とが接続されており、−1KV〜+1KVの範囲で電圧が印加されるとともに5V以上1000V以下の交流電圧が重畳的に印加される。また、第2電源151の設定を0Vとし、ロータリーシリンダ116を接地電位を基準とする交流電圧のみ印加しても構わない。
【0054】
また、図5に示すように、ノズル113を収集電極120に対して固定的に配置するものであっても構わない。この場合、シート160の移動方向に対して複数個のノズル113を斜めに配置することで、各ノズル113の間隔を広くすることができ、シート160に対してナノファイバ200を均等に堆積することが可能となる。
【0055】
また、収集電極120は、上記実施の形態に記載した構造に限定されるわけではない。収集電極120は、図4に示す単なる平板であってもよく、図5に示すように、エッジにアールが施された形状の部材であっても構わない。
【0056】
また、図1、図2においては、噴射手段110は、固定にしているが、移動手段を設けて、シート160の移動方向に対して略直角方向に、周期的にもしくは、所定の動作パターンで移動させてもよい。そのようにすることで、シート160の幅が広くなっても、ナノファイバ200をシート160上の幅全体に堆積させることができる。
【0057】
また、上記のように、モータ等を使って、噴射手段110を移動させるような場合にも、これらの移動機構やこれを制御するための電子部品などに高度な絶縁を施す必要が無く、モータ等に使用している電子部品や半導体等の破壊を回避することが可能となる。
【0058】
また、図1、2においては、噴射手段110は、一つのみを記載しているが、複数個並べて配置すれば、シート160の幅が広くなった場合や、堆積させたい厚みを増やす場合には、有効な手段である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ナノファイバの製造に利用可能であり、特に、ナノファイバを用いた紡糸や不織布の製造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明にかかる不織布製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】噴射手段および収集電極の具体例を示す図である。
【図3】ロータリーシリンダを示す断面図である。
【図4】噴射手段及び収集電極の他の態様を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図5】噴射手段及び収集電極の他の態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
100 不織布製造装置
101 アース
102 接地手段
110 噴射手段
111 パイプ
112 噴射孔
113 ノズル
114 プーリー
115 ベルト
116 ロータリーシリンダ
117 シャフト
118 モータ
119 基体
120 収集電極
150 電源
151 第2電源
160 シート
170 移動手段
180 ナノファイバ製造装置
190 交流電源
200 ナノファイバ、原料液
201 ポンプ
202 タンク
203 ブラシ
210 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバ製造用の原料液を噴射する噴射孔を有する噴射手段と、前記噴射孔から噴射され製造されたナノファイバを収集する収集電極とを備えるナノファイバ製造装置であって、
前記収集電極と前記噴射手段との間に10KV以上、200KV以下の範囲から選定される電圧を印加する第1電源と、
前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を重畳的に印加する交流電源とを備える
ナノファイバ製造装置。
【請求項2】
前記第1電源は、前記収集電極に−200KV以上、−10KV以下、または、+10KV以上、+200KV以下の範囲から選定される電位を印加し、
前記交流電源は、前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を印加する
請求項1に記載のナノファイバ製造装置。
【請求項3】
ナノファイバ製造用の原料液を噴射する噴射孔を有する噴射手段と、前記噴射孔から噴射され製造されたナノファイバを収集する収集電極とを備える不織布製造装置であって、
前記収集電極の前記噴射孔側に配置され、製造されたナノファイバを堆積状に保持する被堆積手段と、
前記被堆積手段を所定方向に移動させる移動手段と、
前記収集電極と前記噴射手段との間に10KV以上、200KV以下の範囲から選定される電圧を印加する第1電源と、
前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を重畳的に印加する交流電源とを備える
不織布製造装置。
【請求項4】
前記第1電源は、前記収集電極に−200KV以上、−10KV以下、または、+10KV以上、+200KV以下の範囲から選定される電位を印加し
前記交流電源は、前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を印加する
請求項3に記載の不織布製造装置。
【請求項5】
ナノファイバ製造用の原料液を噴射する噴射孔を有する噴射手段と、前記噴射孔から噴射され製造されたナノファイバを収集する収集電極とを備えるナノファイバ製造装置に適用するナノファイバ製造方法であって、
前記収集電極と前記噴射手段との間に10KV以上、200KV以下の範囲から選定される電圧を印加し、
前記噴射手段に5V以上1000V以下の範囲から選定される交流電圧を重畳的に印加し、
前記電位状態により発生する電界中で前記原料液を飛翔させてナノファイバを得る
ナノファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−303495(P2008−303495A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151623(P2007−151623)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】