説明

ナノ粒子を組み込んだ濾過装置

【課題】従来、疎水性または親水性フィルタに関連してバクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られたナノ粒子を使用することが活用されていない。
【解決手段】
バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られているナノ粒子(1)を組み込んだ濾過装置。第1の面(11)と第2の面(13)とある細孔サイズとを有するフィルタ(2)と、前記フィルタ(2)の少なくとも第1の面(11)に被膜として塗布されたバクテリア、カビ、ウィルス、あるいは毒素を駆除できると知られたナノ粒子(1)の粉末(12)とを含む、ナノ粒子を組み込んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性流体からバクテリア、カビ、ウィルスおよび毒素といった生物学的汚染物質を除去するための濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性および親水性フィルタ両者を使用した装置に関して多数の特許が存在する。米国特許第6,375,854号と、2002年4月22日に出願された同時係属中の特許出願通番第10/128,367号は顕著な例である。
【0003】
更に2002年3月21日に公開された米国特許出願第20020035032号は、バクテリア、カビ、ウィルスおよび毒素を駆除するための粉末またはペレットの形で使用できる金属酸化物と金属水酸化物のナノ結晶(「ナノ粒子」とも呼ばれる)を開示している。この特許出願によれば、好適な金属酸化物および水酸化物は、MgO、CeO、AgO、SrO、BaO、CaO、TiO、ZrO、FeO、V、V、Mn、Fe、NiO、CuO、Al、SiO、ZnO、AgO、Mg(OH)、Ca(OH)、Al(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、Fe(OH)、Cu(OH)、Ni(OH)、Co(OH)、Zn(OH)、Ag(OH)、およびこれらの混合物を含む。
【0004】
この出願は、これらのナノ粒子が単独で使用できること、あるいはこれらのナノ粒子が(a)第1の金属酸化物とは異なる、Ti、V、Fe、Cu、Ni、Co、Mn、Zn、Al、Ce、Sr、Ba、およびこれらの混合物からなるグループから選択される金属の酸化物から選択される第2の金属酸化物、または(b)Cu(NO、Ce(NO、AgNO、およびこれらの混合物からなるグループから選択されるものといった金属硝酸塩のいずれかで被覆されたナノ粒子の表面の少なくとも一部分を持つことができることを示している。好適な実施形態ではTiOは、硝酸セリウムと硝酸銅の混合物で被覆されて[Ce(NO-Cu(NO]TiOを形成する。
【0005】
この出願のもう一つの実施形態は、粒子状金属酸化物の表面に安定化された反応性原子を有する。このような反応性原子は金属酸化物を形成する原子とは異なる。再びこれらの酸化物は、MgO、CeO、AgO、SrO、BaO、CaO、TiO、ZrO、FeO、V、V、Mn、Fe、NiO、CuO、Al、SiO、ZnO、AgO、およびこれらの混合物からなるグループから選択される。好適にはこれらの反応性原子は、ハロゲンとI族の金属とからなるグループから選択される。ハロゲンが粒子の表面における安定化された反応性原子であるときは、これらの原子は同じハロゲンの原子、例えば塩素原子だけ、または異なるハロゲン原子の混合物、例えば塩素・臭素原子であり得る。
【0006】
またこの出願の最後の実施形態は、金属酸化物の表面に吸着される金属酸化物とは異なる化学種を有する粒子状金属酸化物を有する。もう一度、これらの酸化物はMgO、CeO、AgO、SrO、BaO、CaO、TiO、ZrO、FeO、V、V、Mn、Fe、NiO、CuO、Al、SiO、ZnO、AgO、およびこれらの混合物からなるグループから選択される。好適にはこれら吸着される化学種は、V族元素の酸化物とVI族元素の酸化物とオゾンとからなるグループから選択される。V族とVI族元素の好適な酸化物は、それぞれNOとSOである。
【0007】
2002年6月13日に公開された米国特許出願20020070172は、流体が流れる装置内の汚染物質を除去するために微粒子またはナノ粒子の酸化鉄および/または酸水酸化鉄の粒子、ペレット、および粒剤の使用を開示している。水質浄化においてこの材料は、水平流れフィルタまたは垂直流れフィルタまたは吸着塔で使用され、あるいは水に添加される。ガス精製においてこの材料は、硫化水素、メルカプタン、シアン化水素、ならびに他の燐、砒素、アンチモン、硫黄、セレン、テルル、シアン、および重金属化合物といった有害な化合物を排気ガスに結合するための吸着剤に使用される。HF、HCl、HS、SOおよびNOといったガスも吸着できる。
【0008】
最後に、2002年6月に「米国科学技術審議会の技術委員会のナノスケール科学工学技術小委員会」(the Subcommittee on Nanoscale Science, Engineering and Technology of the Committee on Technology for the National Science and Technology Council)は、「大統領の2003年会計年度予算への補足報告」(Supplement Report to the President’s FY 2003 Budget)に関連する詳細技術報告として、「米国ナノテクノロジー構想:構想とその実施計画」(National Nanotechnology Initiative: the Initiative and Its Implemetation Plan)を公表した。この報告は66〜67ページで下記のように明言している:
核的、生物学的、化学的(NBC)用途で使用されるガスマスクフィルタは、本質的にWWII技術として存続するプロセスによって有毒化学物質を除去する。化学的蒸気/ガスの除去の責任をになう材料は、カーボン(炭素)のより大きな細孔内に銅、亜鉛、モリブデン、銀といった金属の酸化物を含浸するWhetlerite方式を使用して含浸された活性炭である。極めて本当の意味で活性炭は、約0.5nmから500nmに及ぶナノ細孔で一杯である。ナノサイエンス(ナノ科学)は、大きな表面積の吸着剤に新しい機会を与え、更に結合力を増大させ得る新しい分子テンプレート化技術を提供できる。もう一つの仕方で最適化されると、ナノポーラス(ナノ多孔質)材料は、膜の使用を通じて薬剤の移行を幾何学的に妨げるために必要な分離技術を支援することができる。
【0009】
集団防護システムと防護服は、薬剤を除去するために繊維状のフィルタをしばしば利用する。高効率微粒子捕捉(HEPA)フィルタは、微粒子に対して有効であり、エーロゾルとして飛散する可能性のある生物学的毒素でもHEPAによって濾過除去できるであろう。ナノチューブ、ナノフィラメントおよびナノポーラス(ナノ多孔質)膜の使用は、これらのフィルタを更に有効にし、また更に触媒減成剤も含む可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上述のものはどれも、疎水性または親水性フィルタに関連してバクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られたナノ粒子を使用することを示唆していない。またこの論文はフィルタを創生するためにナノ粒子自身を使用することを示唆しているように見え、またカーボンにナノ粒子を含浸することを示しているかもしれないが、上述のものは、如何なるタイプのフィルタもナノ粒子で被覆し、如何なるタイプのフィルタにも隣接してナノ粒子ペレットを配置するか、あるいはカーボン以外の如何なるフィルタ材料もナノ粒子で含浸することを示唆しているように見えない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は第1の実施形態で、バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られた任意のタイプのナノ粒子を一つ以上の疎水性または親水性フィルタと組み合わせる。
【0012】
これらのナノ粒子は、粉末またはペレットいずれかの形でもあり得る。
【0013】
粉末が使用されるときには疎水性または親水性フィルタは、本技術で知られた任意の技術を使用してこの粉末で被覆または含浸される。
【0014】
好適には被覆する場合、疎水性または親水性フィルタは、所定の極性の静電荷を保持し、またナノ粒子は本技術でよく知られた任意の技術を使用して、ナノ粒子の創生時に、または電気誘導を介して反対極性の電荷を与えられる。
【0015】
「米国化学会」(The American Chemical Society;Langmuir 2002, 18,6679−6686)が著作権を持つ「殺菌剤としての金属酸化物ナノ粒子」(Metal Oxide Nanoparticles as Bactericidal Agents)と題する論文でPeter K.Stoimenov、Rosalyn L.Klinger、George L.Marchin、Kenneth J.Klabundeは例えば、「・・・すべてのAP-MgO/X調合物は、正に帯電される(0.01イオン強度NaClで27.0mV(AP-MgO/Br)、33.0mV(AP-MgO/Cl)、35.2mV(AP-MgO))」であることを説明している。(この論文によれば「AP」はナノ粒子がエーロゲル(多孔質集合体)製造プロセスを通して用意されていることを示す。)
ペレットが利用されるときにはこのようなペレットは、疎水性または親水性フィルタに隣接して配置され、また入口と出口とを有する容器にこのフィルタと共に入れられる。
【0016】
好適には一つ以上に疎水性フィルタは、一つ以上の親水性フィルタと流体的に連通して使用される。ナノ粒子被覆またはナノ粒子のペレットは、任意の一つ以上の疎水性または親水性フィルタの上流側または下流側どちらにも配置できる。これらのフィルタは、一つ以上のフィルタが被覆されているか、このようなフィルタに隣接したペレットを有するかにかかわらず、入口と出口とを有する容器に収容される。
【0017】
もしあるフィルタに向き合う他のフィルタがないフィルタの一つの面にペレットが配置されるならば、ペレットを収容するための何らかの手段が必要である。フィルタを被覆する(フィルタに含浸されるよりむしろ)ために使用される粉末の場合、収容手段は単に好ましいだけである。
【0018】
ペレットに関しては、ペレットの最小寸法より小さい最大寸法を有する一つ以上の開口からなる、容器の入口または出口(どちらがナノ粒子に近いかに依存して)を持つことが好ましい。
【0019】
粉末被覆に関しては、粉末粒子よりは小さいが実質的にガスの流れを妨げないために十分に大きい細孔サイズ、好ましくは最小の細孔サイズを有する疎水性または親水性フィルタの細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜が入口または出口(どちらがナノ粒子に近いかに依存して)全面に置かれることが好ましい。
【0020】
このような膜は、疎水性または親水性フィルタがナノ粒子で含浸されるときにも同様に使用できるが、これは一般には行われない。
【0021】
更なる実施形態で本発明は、疎水性または親水性フィルタの代わりに、ナノ粒子の含浸の場合にカーボン以外の任意のタイプの既知のフィルタ材料のフィルタを使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
前述のように多数のタイプのナノ粒子がバクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている。本発明は、任意のタイプのこのようなナノ粒子(1)を一つ以上のフィルタ(2)と組み合わせる。
【0023】
図1に示す第1の主要な実施形態では、バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている任意のタイプのナノ粒子ペレット(1)は、入口(4)と出口(5)とを有する容器(3)内のフィルタ(2)に隣接している。もしナノ粒子ペレット(1)が入口(4)とフィルタ(2)との間に存在すれば、ナノ粒子ペレット(1)を収容するための何らかの手段が存在しなければならないことは無論である。本技術で知られたこのような如何なる手段も使用できる。しかしながら好ましくは、入口(4)を構成する一つ以上の開口(6)は各々、ナノ粒子ペレット(1)の最小寸法(8)より小さい最大横断面寸法(7)を持っている。同様にナノ粒子ペレット(1)が出口(5)とフィルタ(2)との間に存在するとき、好適には出口(5)を構成する一つ以上の開口(9)にナノ粒子ペレット(1)の最小寸法(8)より小さい最大寸法(10)を持たせることを含む収容手段が存在しなくてはならない。好適にはナノ粒子ペレット(1)は、入口(4)とフィルタ(2)との間に存在する。
【0024】
好適にはフィルタ(2)は、少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を有する。ここで使用される用語「目標粒子」は、バクテリアといったフィルタ(2)が除去しようと意図する任意の実体の基本単位を意味する。
【0025】
任意選択的にフィルタ(2)は疎水性である。もう一つの任意選択の実施形態ではフィルタ(2)は親水性である。
【0026】
図2に描かれた第2の主要な実施形態は、少なくとも第1の面(11)にバクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られた任意のタイプのナノ粒子(1)の粉末(12)を被覆されたフィルタ(2)を含む。
【0027】
好適には被覆は、粉末(12)のナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対である電荷をフィルタ(2)に保持させることによって遂行される。また好適にはフィルタ(2)は少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を有する。
【0028】
最も好ましくはフィルタ(2)上の電荷は、粉末(12)のナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対であって少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである。例えばナノ粒子(1)は、すべてが前述のように正に帯電されたAP-MgO/Br、AP-MgO/Cl、またはAP-MgOであり得る。それからフィルタ(2)は、正に帯電したナノ粒子(1)を引き寄せる負の電荷を持つように選択される。上記に引用されたLangmuir論文の6681〜6682ページによれば、「生物学的pH値におけるバクテリアと胞子細胞の全体的電荷が、解離時に細胞表面を負にするカルボキシル基、その他の基の過剰な数のために、負であるということは、文献[「生物学的界面の物理化学」(Busscher,H.J.;Bos,R.;van der Mei,H.C.;Physical Chemistry of Biological Interfaces)におけるHandley,P.S.;Baszkin,A.,Norde,W.,Eds.;Marcel Dekker:New York,2000を引用する]においてよく確立された事実である。」したがって、この最も好ましい状況では、フィルタ(2)の電荷はバクテリアを反発する傾向にあるが、被覆ナノ粒子粉末(12)に到達した如何なるバクテリアも正に帯電したナノ粒子(1)に引き寄せられて駆除される傾向にある。
【0029】
再び、任意選択的にフィルタ(2)は疎水性であり得るが、また任意選択的にそれは親水性であり得る。商業的に入手可能な疎水性フィルタの例は、ミネソタ州、セントポールの3M社による登録商標名FILTRETEで販売されているフィルタである。商業的に入手可能な親水性フィルタの例は、ミネソタ州、セントポールの3M社によるHeat and Moisture Exchange Mediaという名前で販売されているフィルタである。
【0030】
また任意選択的にフィルタ(2)は、入口(4)と出口(5)とを有する容器(3)に入れられる。好適にはフィルタ(2)の第1の面(11)は入口(4)に向けられ、フィルタ(2)の第2の面(13)は出口(5)に向けられる。また好適にはもしフィルタ(2)の被覆された面(11)、(13)が入口(4)に向けられれば、このような入口(4)は、ナノ粒子(1)よりは小さいが実質的にガスの流れを妨げないために十分に大きい細孔サイズ、好ましくは少なくともフィルタ(2)の細孔サイズほど大きい細孔サイズを有する膜(14)によってカバーされる。同様に好適にはもしフィルタ(2)の被覆された面(11)、(13)が出口(5)に向けられれば、このような出口(5)は、ナノ粒子(1)よりは小さいが実質的にガスの流れを妨げないために十分に大きい細孔サイズ、好ましくは少なくともフィルタ(2)の細孔サイズほど大きい細孔サイズを有する膜(14)によってカバーされる。
【0031】
適当な膜は、「ウェビング」と呼ばれ、例えばミネソタ州セントポールの3M社またはカリフォルニア州ロサンゼルスのVersal社のどちらからでも商業的に入手可能である。
【0032】
この主要な実施形態は、疎水性フィルタ(2)の上に置かれたときにバクテリアを駆除する際のナノ粒子(1)の有効性をテストするために使用された。
【実施例】
【0033】
6個の水平に向けられた負に帯電した疎水性FILTRETEフィルタの各々の上面の一部分は、正に帯電したAP-MgO/Clで被覆された。またフィルタの上面に、しかし必ずしもちょうどナノ粒子の場所ではないところに、バクテリア・チューリンゲンシス(bacterium thuringiensis)の平均226,000個のコロニー形成ユニットが配置された。フィルタを通る空気流は存在しなかった。
【0034】
対照標準として6個の被覆されていない水平に向けられた負に帯電した疎水性FILTRETEフィルタの各々の上面の一部分の上に、バクテリア・チューリンジエンシスの平均226,000個のコロニー形成ユニットが配置された。
【0035】
24時間後に、被覆されないフィルタの上のコロニー形成ユニットの数は、平均6507パーセント超だけ増加したが、被覆されたフィルタの上のコロニー形成ユニットの数は、平均21.7パーセントだけ減少した。
【0036】
図3に示す第3の主要な実施形態に関して、フィルタ(2)は、本技術で知られた任意の技術を使用して、バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている任意のタイプのナノ粒子(1)を含浸される。
【0037】
好適にはフィルタ(2)は、ナノ粒子(1)によって保持された電荷とは反対である電荷を保持する。また好適にはフィルタ(2)は、少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じ電荷である電荷を有する。
【0038】
最も好ましくはフィルタ(2)上の電荷は、ナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対であって、少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである。
【0039】
再び、任意選択的にフィルタ(2)は疎水性であり得るが、また任意選択的にそれは親水性であり得る。
【0040】
また任意選択的にフィルタ(2)は、入口(4)と出口(5)とを有する容器(3)に入れられる。
【0041】
最後の4個の主要な実施形態はすべて、入り口(4)と出口(5)とを有し、互いに流体的に連通する2個以上のフィルタ(2)を収容する容器(3)を使用する。任意選択的にフィルタ(2)の少なくとも一つは疎水性であり、また任意選択的にフィルタ(2)の少なくとも一つは親水性である。更に、好適にはフィルタ(2)の少なくとも一つは、少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を有し、また好適には入口(4)に最も近いフィルタ(2)は疎水性である。
【0042】
図4に示す第4の主要な実施形態は、バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている任意のタイプのナノ粒子ペレット(1)を、少なくとも2個の連続するフィルタ(2)に隣接してまたは、これらのフィルタ(2)の間に有する。
【0043】
図5に見られる第5の主要な実施形態では、バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている任意のタイプのナノ粒子ペレット(1)は、フィルタ(2)と外部通路(4)、(5)との間に他のフィルタ(2)を持たないこのようなフィルタ(2)に少なくとも隣接している。ここで使用されるように用語「外部通路」は入口(4)と出口(5)の両者を含み、単数形で使用されるときには入口(4)または出口(5)のどちらかを意味する。ナノ粒子ペレットは、このようなフィルタ(2)とこのフィルタ(2)により近い外部通路(4)、(5)との間に在る。好適にはこのような外部通路(4)、(5)は容器(3)の入口(4)である。
【0044】
第1の主要な実施形態によるように第5の主要な実施形態では、ナノ粒子ペレット(1)を収容するための何らかの手段が存在しなければならない。本技術で知られたこのような如何なる手段でも使用できる。しかしながら好適にはナノ粒子ペレット(1)がフィルタ(2)と入口(4)との間にあるとき、入口(4)を構成する一つ以上の開口(6)は各々、ナノ粒子ペレット(1)の最小寸法(8)より小さい最大寸法(7)を有する。同様にナノ粒子ペレット(1)が出口(5)とフィルタ(2)との間にあるとき、収容手段は好適には、出口(5)を構成する一つ以上の開口(9)各々にナノ粒子ペレット(1)の最小寸法(8)より小さい最大寸法(10)を持たせることを含む。
【0045】
図6に描かれた第6の主要な実施形態に関して、少なくとも一つのフィルタ(2)の第1の面(11)はバクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている任意のタイプのナノ粒子ペレット(1)の粉末(12)で被覆される。
【0046】
好適には被覆は、粉末(12)のナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対である電荷をフィルタ(2)に持たせることによって遂行される。最も好ましくはフィルタ(2)上の電荷はナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対であって、少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである。
【0047】
また好適には少なくとも一つのこのような被覆されたフィルタ(2)は、このようなフィルタ(2)と容器(3)の入口(4)との間に他のフィルタ(2)を持たない。また最も好ましくは、このようなフィルタ(2)の第1の面(11)は入口(4)に向けられている。
【0048】
フィルタ(2)の被覆された面(11)、(13)が外部通路(4)、(5)に向けられていて、このような被覆されたフィルタ(2)と外部通路(4)、(5)との間に他のフィルタ(2)が存在しないとき、好適にはこのような外部通路はナノ粒子(1)よりは小さいがガスの流れを実質的に妨げないために十分に大きい細孔サイズを有する、好ましくは少なくとも最小の細孔サイズを有するフィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)によってカバーされる。
【0049】
図7に描かれた第7の実施形態では、好適には容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタ(2)である少なくとも一つのフィルタ(2)は、本技術で知られた任意の技術を使用して、バクテリア、カビ、ウィルスまたは毒素を駆除できると知られている任意のタイプのナノ粒子(1)を含浸される。
【0050】
好適にはこの含浸されたフィルタ(2)は、ナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対である電荷を保持する。最も好ましくは含浸されたフィルタ(2)上の電荷はナノ粒子(1)によって保持された電荷と反対であって、少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである。
【0051】
ここで使用されるように用語「好適な」または「好適に」は、指定された要素または技術が他のものより良好であることを意味するが、このような指定された要素または技術が必要であることを意味しない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
ナノ粒子を組み込んだ濾過装置が産業において利用可能である方法とナノ粒子を組み込んだ濾過装置が製造され使用され得る方法は、ナノ粒子を組み込んだ濾過装置の説明と性質とから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】例示目的のためにナノ粒子のサイズと数が変えられている、フィルタに隣接するナノ粒子を切断図で描く図である。
【図2】例示目的のために被覆の厚さが誇張されている、ナノ粒子で被覆されたフィルタを切断図で図示する図である。
【図3】例示目的のためにナノ粒子のサイズと数が変えられている、ナノ粒子を含浸されたフィルタを切断図で示す図である。
【図4】例示目的のためにナノ粒子のサイズと数が変えられている、二つのフィルタに隣接してそれらのフィルタの間に在るナノ粒子を有する容器を切断図で描く図である。
【図5】例示目的のためにナノ粒子のサイズと数が変えられている、フィルタに隣接し、このフィルタと容器の入口との間に在るナノ粒子を有する容器の切断図である。
【図6】例示目的のために被覆の厚さが誇張されている、他の如何なるフィルタの他の如何なる面よりも容器の入口に近いフィルタの面を被覆したナノ粒子を有する容器を切断図で表す図である。
【図7】例示目的のためにナノ粒子のサイズと数が変えられている、ナノ粒子を含浸されたフィルタを有する容器の切断図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面(11)と第2の面(13)とある細孔サイズとを有するフィルタ(2)と、
前記フィルタ(2)の少なくとも第1の面(11)に被膜として塗布されたバクテリア、カビ、ウィルス、あるいは毒素を駆除できると知られたナノ粒子(1)の粉末(12)とを含む、ナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項2】
前記フィルタ(2)は疎水性である、請求項1に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項3】
前記フィルタ(2)は親水性である、請求項1に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項4】
前記粉末(12)のナノ粒子(1)は電荷を保持し、
前記フィルタ(2)は前記粉末(12)のナノ粒子(1)によって保持された電荷とは反対である電荷を保持する、請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項5】
前記フィルタ(2)は少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を保持する、請求項4に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項6】
各入口(4)と各出口(5)とが外部通路を構成する入口(4)と出口(5)とを有し、前記フィルタ(2)を収容する容器(3)を更に含む、請求項5に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項7】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項6に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項8】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項5に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項9】
各入口(4)と各出口(5)とが外部通路を構成する入口(4)と出口(5)とを有し、前記フィルタ(2)を収容する容器(3)を更に含む、請求項4に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項10】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項9に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項11】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項4に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項12】
前記フィルタ(2)は少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を保持する、請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項13】
各入口(4)と各出口(5)とが外部通路を構成する入口(4)と出口(5)とを有し、前記フィルタ(2)を収容する容器(3)を更に含む、請求項12に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項14】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項13に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項15】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項12に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項16】
各入口(4)と各出口(5)とが外部通路を構成する入口(4)と出口(5)とを有し、前記フィルタ(2)を収容する容器(3)を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項17】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(2)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項16に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項18】
前記ナノ粒子(1)で被覆された前記フィルタ(9)の一面が向けられる各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)内のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも前記フィルタ(2)の細孔サイズほどの大きさの細孔サイズを有する膜(14)を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項19】
互いに連通する一つ以上のフィルタ(2)であって、各フィルタ(2)は第1の面(11)と第2の面(13)とある細孔サイズとを有する請求項1に記載のフィルタ(2)と、
前記フィルタ(2)の少なくとも第1の面(11)に被膜として塗布されたバクテリア、カビ、ウィルス、あるいは毒素を駆除できると知られたナノ粒子(1)の粉末(12)と、
各入口(4)と各出口(5)とが外部通路を構成する入口(4)と出口(5)とを有し、前記フィルタ(2)を収容する容器(3)とを含む、請求項1乃至18のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項20】
前記フィルタ(2)の少なくとも一つは疎水性である、請求項19に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項21】
前記フィルタ(2)の少なくとも一つは親水性である、請求項19に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項22】
前記粉末(12)のナノ粒子(1)は電荷を保持し、
前記フィルタ(2)は前記粉末(12)のナノ粒子(1)によって保持された電荷とは反対である電荷を保持する、請求項19乃至21のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項23】
前記フィルタ(2)は少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を保持する、請求項22に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項24】
前記ナノ粒子(1)で被覆され、前記フィルタ(2)の一つと外部通路との間に前記フィルタ(2)の他のフィルタを持たない前記フィルタ(2)の前記一つにフィルタの一面が向けられた各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも最小の細孔サイズを有する前記フィルタ(2)の細孔サイズほど大きい細孔サイズを持つ膜(14)を更に含む、請求項23に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項25】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項24に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項26】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項23に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項27】
前記ナノ粒子(1)で被覆され、前記フィルタ(2)の一つと外部通路との間に前記フィルタ(2)の他のフィルタを持たない前記フィルタ(2)の前記一つにフィルタの一面が向けられた各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも最小の細孔サイズを有する前記フィルタ(2)の細孔サイズほど大きい細孔サイズを持つ膜(14)を更に含む、請求項22に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項28】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項27に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項29】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項22に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項30】
前記フィルタ(2)は少なくとも一つの目標粒子の電荷と同じである電荷を保持する、請求項19乃至21のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項31】
前記ナノ粒子(1)で被覆され、前記フィルタ(2)の一つと外部通路との間に前記フィルタ(2)の他のフィルタを持たない前記フィルタ(2)の前記一つにフィルタの一面が向けられた各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも最小の細孔サイズを有する前記フィルタ(2)の細孔サイズほど大きい細孔サイズを持つ膜(14)を更に含む、請求項30に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項32】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項31に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項33】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項30に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項34】
前記ナノ粒子(1)で被覆され、前記フィルタ(2)の一つと外部通路との間に前記フィルタ(2)の他のフィルタを持たない前記フィルタ(2)の前記一つにフィルタの一面が向けられた各外部通路をカバーする膜(14)であって、前記粉末(12)のナノ粒子(1)よりは小さいが少なくとも最小の細孔サイズを有する前記フィルタ(2)の細孔サイズほど大きい細孔サイズを持つ膜(14)を更に含む、請求項19乃至21のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項35】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項34に記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。
【請求項36】
前記フィルタ(2)のうちの前記容器(3)の入口(4)に最も近いフィルタは疎水性である、請求項19乃至21のいずれかに記載のナノ粒子を組み込んだ濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209769(P2007−209769A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58806(P2007−58806)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【分割の表示】特願2006−507188(P2006−507188)の分割
【原出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【出願人】(505345071)
【氏名又は名称原語表記】DOUGLAS K. BEPLATE
【Fターム(参考)】