説明

ナノ粒子分散液の製造方法、ナノ粒子分散液、ナノコンポジット材の製造方法、ナノコンポジット材及び透明容器又は透明フィルム

【課題】ポリマーの前駆体である反応性溶媒を分散媒としナノ粒子が均一分散したナノ粒子分散液の製造方法、ナノ粒子分散液、ナノ粒子分散液を使用したナノコンポジット材の製造方法、ナノコンポジット材及び機能性のあるナノコンポジット材を使用した透明容器又は透明フィルムを提供する。
【解決手段】ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用いて、該ビーズに超微小ビーズを使用し、ナノ粒子を、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶剤中に均一分散させる第一工程と、第一工程で得た分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、光学関連材料あるいは新規な材料の提供に不可欠なナノ粒子分散液の製造方法、ナノ粒子分散液、ナノ粒子分散液を使用したナノコンポジット材の製造方法、ナノコンポジット材及びナノコンポジット材を使用した透明容器又は透明フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子材料の応用などにおいて、大きさが数十ナノメートル以下まで分散されたナノ粒子材料の要求が強くなっている。ナノ粒子の製造には、種々の方法が開発されているがこれら方法は、塊を壊すことで微粒化を進めるブレークダウン方式と気相法や液相法によりナノ粒子を合成するビルドアップ方式とに大別することができる。ブレークダウン方式、ビルドアップ方式によるナノ粒子の製造方法は、各々長所、短所を有しており、現在も開発が進められている。
【0003】
ブレークダウン方式及びビルドアップ方式によるナノ粒子の製造方法とも、粒子径が小さくなるに従って粒子の凝集が起こりやすくなり、分散した状態の単一の微細粒子を製造することは容易ではない。このため現在では、湿式下で分散機を使用して粒子の分散を行いつつ、分散媒中にナノ粒子を分散させる方法が多く用いられている。ここで使用される分散機は、容器内で凝集粒子、分散媒、撹拌粒子(メディア)である微小のビーズを撹拌することで、撹拌粒子を通じて凝集粒子に衝突、せん断エネルギを与え、凝集粒子を分散させるもので、ビーズミルなどの名称で呼ばれている。本出願人らは、ビーズミルに関する開発研究を行っており、特許を取得するとともに製品を製造販売している(例えば非特許文献1、特許文献1参照)。
【0004】
ビーズミルを含め撹拌粒子を使用した従来の湿式粉砕法では、撹拌粒子が磨耗し不純物が混入する、ナノ粒子の分散媒への分散が不十分であるとし、これを解決するために、撹拌粒子の大きさとして、凝集粒子の一次粒子径の200〜10000倍のものを使用し湿式分散する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。このほかナノ粒子に関する発明としては、ナノ粒子をポリマーに分散させたコンポジット材の製造方法に関する技術も開示されている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3703148号公報
【特許文献2】特開2005−87972号公報
【特許文献3】特開2006−15259号公報
【非特許文献1】院去貢,田原隆志,J.Soc.Powder Technol.,Japan,41,578−585(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノコンポジット材の製造方法は、特許文献3に記載の技術の他、多くの技術が開示されているが、ナノ粒子をモノマー中に均一分散させた後、これを重合させナノコンポジット材を得る方法は、ナノ粒子の均一分散性などの点から優れた方法と言える。しかしながら、ナノ粒子は一般的に表面エネルギが高いため凝集しやく、モノマー中に分散させたナノ粒子が凝集していると、重合反応後も凝集粒子のままでポリマーマトリックス中に存在するため、良好な特性を示すナノコンポジット材が得られない。ビーズミルは、特許文献1、2及び非特許文献1にも記載されているように優れた湿式分散機であり、これを利用してモノマー中にナノ粒子を分散させることが期待されているが、検討、解決すべき事項も多い。機能性のあるナノコンポジット材を合成するためには、モノマー中でナノ粒子を均一に分散させる技術が必要となるが、解決すべき課題も多く、現在のところモノマー中にナノ粒子を均一に分散させる技術は確立されていない。
【0006】
本発明の目的は、ポリマーの前駆体である反応性溶媒を分散媒としナノ粒子が均一分散したナノ粒子分散液の製造方法、ナノ粒子分散液、ナノ粒子分散液を使用したナノコンポジット材の製造方法、ナノコンポジット材及び機能性のあるナノコンポジット材を使用した透明容器又は透明フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用いて、該ビーズに超微小ビーズを使用し、ナノ粒子を、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶剤中に均一分散させる第一工程と、第一工程で得た分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、を含むことを特徴とするナノ粒子分散液の製造方法である。
【0008】
また本発明は、前記ナノ粒子分散液の製造方法において、さらに前記ナノ粒子と親和性を有する基と前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと親和性を有しかつ反応する基とを有する分散剤を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記ナノ粒子分散液の製造方法において、さらに請求項2に記載のナノ粒子分散液の製造方法で得られたナノ粒子分散液から前記溶剤を除去する第三工程を含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、請求項1から3のいずれか1の方法で製造されたナノ粒子分散液である。
【0011】
また本発明は、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液から溶剤を除去しつつ重合させ、又は請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、溶剤を除去しつつ重合させナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法である。
【0012】
また本発明は、請求項3で得られたナノ粒子分散液を重合させ、又は請求項3で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、重合させナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法である。
【0013】
また本発明は、前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液から溶剤及びを反応性モノマー除去しつつ重合させ、又は前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、溶剤及びを反応性モノマーを除去しつつ重合させ、分散剤をマトリックスとするナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法である。
【0014】
また本発明は、前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、さらに前記第二工程で得られたナノ粒子分散液に前記第二工程で添加混合した反応性モノマーとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液から溶剤及び前記第二工程で添加した反応性モノマーを除去しつつ重合させ、又は前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、さらに前記第二工程で得られたナノ粒子分散液に前記第二工程で添加混合した反応性モノマーとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、溶剤及び前記第二工程で添加した反応性モノマーを除去しつつ重合させ、分散剤及び後に添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマをマトリックスとするナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法である。
【0015】
また本発明は、請求項5から8のいずれか1の方法で製造されたナノコンポジット材である。
【0016】
また本発明は、難燃性、耐熱性、耐溶剤性、ガスバリア性、紫外線遮断性のうちいずれか1以上の特性を有する請求項5から8のいずれか1の方法で得られるナノコンポジット材を含み形成された透明容器又は透明フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法を用いることにより、ポリマーの前駆体である反応性溶媒を分散媒とし、この分散媒中にナノ粒子が均一に分散したナノ粒子分散液を製造することができる。またナノコンポジット材、ナノコンポジット材の特性を活かした透明容器又は透明フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法は、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマなどポリマーの前駆体である反応性溶媒を分散媒としナノ粒子の分散スラリーを、ビーズミルを用いて製造する際、この分散過程において、ナノ粒子が反応性モノマーなどポリマーの前駆体である反応性溶媒を包含した状態で凝集し、ナノ粒子を十分に分散させることができないことを見出した。この現象を解決するためにローター、ステータ、及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを使用して、ナノ粒子分散液の製造方法を検討した結果、ビーズに超微小ビーズを使用し、ナノ粒子を、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶剤中に均一分散させる第一工程と、第一工程で得たナノ粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程を経ることで均一に分散したナノ粒子分散液を得ることができることが分かった。
【0019】
第一工程は、ナノ粒子を溶剤に均一分散させる工程であり、ここでは、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが存在しないため、ナノ粒子が反応性モノマーなどポリマーの前駆体である反応性溶媒を包含した状態で凝集することがなく、ナノ粒子が均一分散した分散液を得ることができる。ナノ粒子と溶剤との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。第一工程で得たナノ粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合すると、第一工程でナノ粒子は溶剤に十分に分散しており、かつこの溶剤と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有するので、第一工程で得たナノ粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合することで、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマにナノ粒子が均一分散したナノ粒子分散液を得ることができる。第二工程の撹拌混合は、第一工程でナノ粒子は溶剤に十分に分散しているので、必ずしもビーズミルを用いて行う必要はない。さらに溶剤と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有するので、液の粘度に適した汎用撹拌機を使用することで簡単に混合させることができる。汎用撹拌機に使用可能な撹拌翼としては、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、ヘリカルリボン翼などが例示される。第二工程の撹拌混合操作で、必要以上にナノ粒子にせん断エネルギ等を加えると、再凝集するため、注意が必要である。
【0020】
上記第一工程及び第二工程を経て得られた反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを含む溶媒に均一に分散したナノ粒子分散液を、より安定的なナノ粒子分散液とするためには、分散剤を添加混合することが好ましい。この分散剤は、ナノ粒子と親和性を有する基と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと親和性を有しかつ反応する基とを有する分散剤である。ナノ粒子分散液に分散剤を添加混合すると、分散剤がナノ粒子表面を修飾するため、ナノ粒子の再凝集等が起こりにくくなる。分散剤の添加時期は特に限定されないので、第一工程、第二工程、又は第二工程終了後に添加混合してもよい。好ましくは、ナノ粒子と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとが接触することがない第一工程である。なお、分散剤を含まない第二工程後のナノ粒子分散液を保存する場合は、ナノ粒子の再凝集等の点から、出来るだけ低温で保存することが好ましく、保存期間も短い方が好ましい。
【0021】
さらにナノ粒子分散液として、溶剤を含まず、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とするナノ粒子を製造することもできる。このナノ粒子分散液は、溶剤、分散剤及び反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを含むナノ粒子分散液から、溶剤を除去することで得ることができる。溶剤の除去方法は特に限定されないけれども、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが重合しないように、比較的低い温度で溶剤を蒸留、蒸発させればよい。減圧蒸留法が例示される。このようにして製造されたナノ粒子分散液は、分散剤を含むものの反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とするナノ粒子分散液となる。
【0022】
本発明のナノ粒子分散液の第一工程で使用可能なビーズミルは、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルであって、撹拌粒子であるビーズも超微小ビーズであることが必要である。超微小ビーズとしては、3〜50μmの大きさの超微小ビーズが好ましく、10〜30μmの超微小ビーズがより好ましい。粒子径が3μmよりも小さいと、原料粉に対する衝撃力が小さく、分散に時間を要する。一方、撹拌粒子の粒子径が50μmを超えると原料粉に対する衝撃力が大きくなりすぎ、分散された粒子の表面エネルギが増大し再凝集が発生しやすい。さらに撹拌粒子は、十分に研磨したものを使用することが望ましい。研磨不十分な撹拌粒子を使用すると、粒子の解粒、分散に与える影響は殆どないものの、分散液の光透過度を低下させる。本発明に適応可能な撹拌粒子としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ガラス、炭化珪素、窒化珪素が例示される。さらにビーズミルは、セパレータの径をd、ステータの内径をDとしたとき、d/Dが0.5〜0.9であればより好ましい。このような形状を有するビーズミルであれば、短時間でより効率的にナノ粒子分散液を製造することできる。
【0023】
原料粉を溶剤に分散させるには,ビーズミルのローターの周速を3〜17m/sの速度で撹拌することが好ましく、より好ましくは、6〜12m/sの速度である。ビーズミルのローターの周速が3m/sよりも小さいと、原料粉に対する衝撃力が小さく、分散に時間を要する。一方、ビーズミルのローターの周速が17m/sを超えると、原料粉に対する衝撃力が大きくなりすぎ、分散された粒子の表面エネルギが増大し再凝集が発生しやすい。
【0024】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法に使用可能な原料粉は、一次粒子径が100nm以下のナノ粒子が凝集した凝集粒子であればよく、特定の原料粉に限定されるものではない。本発明に適用可能な原料粉としては、以下のものが例示される。金属酸化物として、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、二酸化マンガン、酸化鉄、マグネタイト、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ニオビウム、酸化インジウムスズが例示される。その他チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化インジウム−酸化スズ、窒化ボロン、窒化珪素、炭化珪素、硫化亜鉛、硫化カドミウム、カドミウムセレナイド、酸化アンチモンー酸化スズ、(LaAlO)0.3−(SrAlTaO)0.7、LaAlO、SrTiO3、SrLaAlO4、YVO、MgAlOが例示される。
【0025】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法の第一工程で使用する溶剤は、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶剤である。これに該当する溶剤であれば特定の溶剤に限定されるものでなく、以下のものが例示される。またこれら溶剤は、混合物であってもよい。
【0026】
脂肪族炭化水素系溶剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n―ヘプタン、オクタン、デカン、アイソパーなど。
脂肪族アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、アミルアルコールなど、ケトン系溶剤としてはアセトン、MEKなど、エーテル系溶剤としてはジメチルエーテルなど、その他、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、ジクロルメタン、テトラクロルエチル、1.4−ジオキサンなど。
【0027】
グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど、プロピレンオキシド系用溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルなど、その他、3.5.5ートリメチルー2−シクロヘキセンー1−オン、トリアセチン、1.3−ブチレングリコール、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブタノール、など。
【0028】
エステル系溶剤としてはメチルアセテート、エチルアセテート、nープロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、nーアミルアセテート、イソアミルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1.3−プロピレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテートなど。
芳香族溶剤として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロルベンゼンなど。
【0029】
本発明のナノ粒子分散液の製造方法に使用可能な反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマは、特定の物質に限定されるものではなく、また反応性モノマー、又は反応性オリゴマ単一成分であってもよく、複数の反応性モノマーの混合物、複数の反応性オリゴマの混合物、又はこれらが混合したものであってもよい。これにより本発明のナノ粒子分散液を使用して簡単にポリマーを分散媒とするナノコンポジット材を製造することができる。
【0030】
本発明に使用可能な反応性モノマー及び反応性オリゴマとしては、以下のものが例示される。ビニル系のモノマーには、アクリル酸エステル、(メタ)メタクリレート系、アクリルアミド誘導体、その他の不飽和化合物が含まれ、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチレンカーボネートが例示される。
【0031】
(メタ)メタクリレート系のビニルモノマーとしては、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターチャリーブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸エチルアクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エチル樹脂、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベルジル、メタクリル酸2−フェノキシメチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸イソボニル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサアクリレート、トリプロピレングリコールジアクレリート、ポリエチレングリコールジアクリレートが例示される。
【0032】
アクリルアミド誘導体のビニルモノマーとしては、メタクリアミド、アクロイルモホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N―ジメリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが例示される。
【0033】
その他の不飽和化合物としてのビニルモノマーとしては、イソプレンスルホン酸ソーダ、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、(ポリ)アリルアミン、(ポリ)p−ビニルフェニルが例示される。
【0034】
非ビニル系のモノマーには、多価カルボン酸、多価アルコール、多価アミン含まれ、多価カルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンカルボン酸、CIC酸/Bis−CIC酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ジメチル)が例示される。多価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4´−ジホドロキシビフェニル、ジメチロールブタン酸、水素化ビスフェノールA、ネオペンチグリコール、1,3−プロパジオールが例示される。多価アミンとしては、m−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ノルボルナンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへサンが例示される。その他の非ビニル系のモノマーには、2,2−ビス(p−シアナトフェニル)プロパンが例示される。
【0035】
カップリング剤も反応性モノマー及び反応性オリゴマとして好適に使用することが可能であり、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0036】
またシリコーン樹脂としての反応性モノマーやオリゴマに反応性シリコーンオイルがあり、ストレートシリコーンとしてジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、変性シリコーンオイルとして側鎖型のアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性(エポキシ基、ポリエーテル基やアミノ基、ポリエーテル基などの反応性官能基をもつ)シリコーンオイルなど、両末端型としてポリシロキサンの両末端に反応性のアミノ基、エポキシ変性、カルボキシル基、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性基を有するもの、片末端型としてポリシロキサンのどちらか片方の末端に反応性のカルビノール変性、エポキシ変性、メタクリル変性、アルコール性ジオールへ変性官能基をもつもの、側鎖両末端型としてポリシロキサンの側鎖の一部と両方の末端にアミノ基やアルコキシ基などをもつ反応性シリコーンオイル、その他、メタクリル変性基をもつ反応性シリコーンオイルがある。
【0037】
分散剤は、ナノ粒子と親和性を有する基と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと親和性を有しかつ反応する基とを有する分散剤であれば、特に限定されるものではない。例えば付与するべき官能基を有するシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤及び有機クロム系カップリング剤を挙げることができる。例えばナノ粒子の分散剤として粒子表面処理のためにカップリング剤を用いるが、カップリング剤に付与すべき官能基がアミノ基の場合、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、n(ジメトキシメチルシリルプロピル)−エチレンジアミンなどのアミノ基を有するシランカップリング剤、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのアミノ基を有するチタネート系カップリング剤、クロミッククロリド系化合物などのアミノ基を有する有機クロム系カップリング剤を用いることができる。
【0038】
その他ビニル系のシランカップリング剤としては、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランが例示される。
【0039】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、ジエトキシ(グリシディルオキシプロピル)メチルシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−ブリシドキシプロピルトリエトキシシランが例示される。スチレン系のシランカップリング剤としては、p−スチリルトリメトキシシランが例示される。
【0040】
メタクリロキシ系のシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが例示される。アクリロキシ系のシランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
【0041】
アミノ系のシランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが例示される。
【0042】
ウレイド系のシランカップリング剤としては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが例示される。クロロプロピル系のシランカップリング剤としては、3−クロロプロピルトリメトキシシランが例示される。メルカプト系のシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキンシランが例示される。スルフィド系のシランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイドが例示される。イソシアネート系のシランカップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが例示される。アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示される。
【0043】
本発明のナノ粒子分散液を用いたナノコンポジット材の製造は、以下の要領で行うことができる。分散剤を含み、第二工程を経た溶剤を含むナノ粒子分散液にあっては、このナノ粒子分散液に含まれる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが重合する条件とすればよい。一例を示せば、重合開始剤を添加した後、これら溶液を加温することで重合反応が進行する。ナノ粒子分散液に含まれる溶剤は、重合反応の初期段階で、蒸発することが多いため、必ずしも重合開始前に除去しておく必要はない。溶剤を含まないナノ粒子分散液も、ナノ粒子分散液に含まれる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが重合する条件とすることで、簡単にナノコンポジット材を得ることができる。但し、気泡、クラックが含まれないナノコンポジット材とするためには、重合操作条件を適切に設定することが必要なことは、通常の重合反応と換わるところはない。第二工程後のナノ粒子分散液であって、分散剤を含まないナノ粒子分散液の場合、重合操作に先立ち、ナノ粒子分散液に分散剤を添加混合する必要がある。分散剤を含まないナノ粒子分散液を重合させると、ナノ粒子が再凝集しやすく、ナノ粒子が均一に分散したナノコンポジト材を得ることが難しい。
【0044】
さらに本発明のナノ粒子分散液を用い、他の方法でナノコンポジット材を製造することもできる。分散剤を含み、第二工程において反応性モノマーを添加した、溶剤を含むナノ粒子分散液にあっては、このナノ粒子分散液に含まれる分散剤をナノコンポジット材のマトリックス(分散媒)とすることもできる。このナノ粒子分散液に必要に応じて重合開始剤を添加した後、分散剤が重合する条件とすればよい。一例を示せば、重合開始剤を添加した後、これら溶液を加温することで重合反応が進行する。このとき、ナノ粒子分散液に含まれる溶剤及び反応性モノマーは、蒸発する。これにより、分散剤が重合してポリマーとなり、分散剤をマトリックスとしたナノコンポジット材を得ることができる。この方法は、重合工程で反応性モノマーが蒸発して除去される必要があるから、分散剤と反応性モノマーの蒸気圧差、沸点差が大きい方がよい。これらのことから、第二工程で反応性モノマーに換え、反応性オリゴマを添加することもできるが、一般的に反応性オリゴマは、蒸気圧が低く、沸点も高いため、注意が必要である。但し、このナノコンポジット材の製造方法においては、反応性モノマーは溶剤と類似の作用をするに過ぎず、最終的にポリマーとなるわけではないため、蒸気圧の高い反応性オリゴマであれば十分に使用することができる。
【0045】
さらに本発明のナノ粒子分散液を用い、他の方法でナノコンポジット材を製造することもできる。分散剤を含み、第二工程において反応性モノマーを添加した、溶剤を含むナノ粒子分散液にあっては、さらにこのナノ粒子分散液に、第二工程で添加混合した反応性モノマーとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合したナノ粒子分散液を製造する。このナノ粒子分散液に必要に応じて重合開始剤を添加した後、分散剤及び後から添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが重合する条件とすればよい。一例を示せば、重合開始剤を添加した後、これら溶液を加温することで重合反応が進行する。このとき、ナノ粒子分散液に含まれる溶剤及び第二工程で添加した反応性モノマーは蒸発し、分散剤及び後から添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマをマトリックスとしたナノコンポジット材を得ることができる。
【0046】
この方法は、重合工程で溶剤の他、第二工程で添加した反応性モノマーが蒸発して除去される必要があるから、第二工程で添加する反応性モノマーの蒸気圧は高い方が好ましい。また、分散剤及び後から添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが反応してポリマーとなり、マトリックスとなるため、分散剤と後から添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとが反応する物質であることが望ましい。
【0047】
ナノ粒子が均一分散したナノコンポジット材は、ナノ粒子を含まないポリマーに比較して、優れた特性を示すことが多い。例えばポリメタクリル酸メチルに酸化チタンを均一分散させたナノコンポジット材は、透明であり、紫外線吸収力を有することから、これで容器を製造すれば、従来アルミ箔又はアルミ蒸着により紫外線をカットしていた容器に換わり、内容物を視認することが可能でかつ紫外線をカットした容器とすることができる。もちろん、ナノ粒子分散液を透明な容器にコーティングし、その後重合させることで、ナノコンポジット材をコーティングした容器とすることもできる。さらに、ナノコンポジット材で透明フィルムを製造し、これを利用することもできる。この他、後述の実施例に記載するように難燃性、耐熱性が上昇する。このほか耐溶剤性、ガスバリア性に優れた材料として本発明のナノコンポジット材を使用することができる。
【実施例】
【0048】
実施例1
実験は次の要領で行った。分散機には、弊社開発の内容積が0.05Lのビーズミル(寿工業株式会社製αPMill−005)を使用した。ナノ粒子分散液製造装置1の基本的構成を図1に示す。ナノ粒子分散液製造装置1は、分散機であるビーズミル2と、ビーズミル2に原料スラリーを供給する原料スラリー供給ポンプ3、原料スラリーを調整する原料スラリータンク4を主に構成される。
【0049】
ビーズミル2は、冷却用のジャケット11を取付けたステータ12と、上部に遠心分離方式のビーズセパレータ13を有し、その下部にビーズを撹拌するためのローターピン14を同軸上に有するローター15、ローター15を駆動するモータ7を含み構成される。ローター15とステータ12とは軸封16によりシールされ、機内が密閉化されている。原料スラリータンク4は、撹拌機18を備え、原料スラリー供給ポンプ3は、原料スラリー(分散液)を定量的にビーズミル2へ供給する。ビーズミル2に供給された原料スラリーは、ステータ12内で撹拌粒子と衝突し、凝集した原料粉は分散される。ビーズセパレータ13により撹拌粒子が分離された原料スラリーは、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4へ戻る。原料スラリータンク4は、冷却のためのジャケット(図示を省略)を備える。撹拌粒子には、粒子径0.03mmの球形のジルコニア粒子を使用し、撹拌粒子の投入量は0.13kg(約0.035L)とした。またローターの周速は8m/sとした。
【0050】
実験は次の要領で行った。原料粉にシリカ粉末(日本エアロジル製RX300)、溶剤にメタノールを使用した。10.0gの原料粉、165gの溶剤と分散剤としてKBM−5103(信越化学工業製シランカップリング剤)20gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め55gの溶剤を張込み、原料スラリー供給ポンプ3で10kg/hの割合で原料スラリーをビーズミル2に供給し、ビーズミル2内で原料粉の分散を行い、ビーズミルを通過したスラリー溶液は、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4に戻した。この循環運転を480分間行った。固形分濃度(分散媒中の原料粉濃度)は4.0重量%である。途中、経時的に分散液をサンプリングし、分散粒子の粒度分布を測定した。日本エアロジル製RX300は、一次粒子径が7nmで、ヘキサメチルジシラザン表面処理済である。また粒度分布測定装置には、大塚電子株式会社製FPAR−1000を使用した。
【0051】
実験の結果、分散液中の分散粒子の平均粒子径は、分散時間とともに減少し、分散操作終了後の平均粒子径(メディアン径)は、12.2nm、90%通過粒子径は49.3nmであった。分散液を目視観察したところ、時間経過とともに透明性は増加し、120分で完全に透明化した。分散時間120分以降の分散液は、一日静置後も透明で、かつ粒子の沈殿は見られなかった。この分散液中のシリカナノ粒子の粒子径分布を図2に示した。また、紫外可視スペクトルを図3に示した。この分散液をナノスラリーAとする。ナノスラリーAは、ナノ粒子、溶剤、分散剤からなり、溶剤及び分散剤が分散媒である。
【0052】
このナノスラリーA11gにMMA(メタクリル酸メチル)9gを添加して混合し、メタノール、分散剤及びMMAの混合溶媒中にシリカナノ粒子が分散した透明な2.2wt%のシリカナノ粒子混合溶媒分散液を得た。この分散液をナノスラリーBとする。
【0053】
このナノスラリーBからロータリーエバポレータを用いて減圧蒸留によりメタノールを蒸発させて、MMA及び分散剤を分散媒とするシリカ濃度4.3重量%のシリカナノ粒子分散液を作成した。この分散液をナノスラリーCとする。このナノスラリーCは、ナノスラリーAと同様に、透明で安定なスラリー性状を示した。このナノスラリーCの粒度分布を図4に示した。またナノスラリーCの紫外可視光領域での分光スペクトルを図5に示した。
【0054】
さらに、このナノスラリーCに0.1%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させた。その結果、透明性を維持したシリカナノ粒子含有PMMA(ポリメタクリル酸メチル)からなるナノコンポジットが得られた。この作製したナノコンポジットの薄片の断面をTEMで観察すると図6に示されるように、シリカナノ粒子がPMMA中の均一に分散していることが示された。なお、固形分とMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0055】
実施例2
シリカナノ粒子分散液であるナノスラリーA、及びナノスラリーBの製造方法は実施例1と同じである。相違点は、実施例1では、ナノスラリーBからメタノールを分離しナノスラリーCを製造した後に、重合反応を行ったけれども、実施例2では、ナノスラリーBから直接重合反応を行った点である。ナノスラリーBに、直接0.1%AIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させた。その結果、メタノールは60℃加熱でのMMAの重合過程の間に揮発して分離され、透明性を維持したシリカナノ粒子含有PMMAからなるナノコンポジットが得られた。なお、固形分とMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0056】
実施例3
実験装置、基本的な実験手順、実験条件は、実施例1と同一条件であるが、分散剤の添加量が異なる。分散剤KBM−5103の添加量を5gとし、原料粉に対する重量比は、0.5である。
【0057】
実験の結果、ナノスラリーAの平均粒子径(メディアン径)は、12.8nm、90%通過粒子径は41.5nmであった。また粒度分布もシャープであった。分散液を目視観察したところ、時間経過とともに透明性は増し、120分では完全に透明化した。分散時間60分以降の分散液は、一日静置後も透明で、かつ粒子の沈殿は見られなかった。
【0058】
実施例1と同様の手順でナノスラリーCを得た。このナノスラリーCは、ナノスラリーAと同様、安定なスラリー溶液であった。このナノスラリーCを実施例1と同様の手順で重合させた。その結果、透明性を維持したシリカナノ粒子含有PMMAからなるナノコンポジットが作成された。なお、固形分とMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0059】
実施例4
実施例3と同様の条件でナノスラリーBを製造した後、実施例2と同様に、メタノールを分離させないで直接0.1%AIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させた。その結果、メタノールは60℃加熱でのMMAの重合過程の間に揮発して分離され、透明性を維持したシリカナノ粒子含有PMMAからなるナノコンポジットが作製された。なお、固形分とMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0060】
実施例5
実験装置、基本的な実験手順、実験条件は、実施例1と同一条件であるが、分散剤であるKBM−5103を添加しないで、メタノール中にシリカナノ粒子を240分まで分散実験を行った点が異なる。このナノ粒子分散液は、ナノ粒子と溶剤からなり、分散媒が溶剤のみである。この分散液をナノスラリーDとする。
【0061】
実験の結果、ナノスラリーD中の分散粒子の平均粒子径は、分散時間とともに減少し、分散操作終了後の平均粒子径(メディアン径)は、12.6nm、90%通過粒子径は88.7nmであった。分散液を目視観察したところ、時間経過とともに透明性は増加し、120分で透明化した。分散時間120分以降の分散液は、一日静置後も透明で、かつ粒子の沈殿は見られなかった。このナノスラリーDの紫外可視分光スペクトルを図7に示した。
【0062】
このナノスラリーD1.25gに分散剤(KBM−5103)及び、MMAモノマー4.95gを添加し、ナノスラリーBを得た後、このナノスラリーBからメタノールのみ全てを蒸発させて、固形分濃度1wt%のナノスラリーCを得た。このナノスラリーCは、ナノスラリーDと同様に安定なスラリー性状を示した。
【0063】
このナノスラリーCに0.1%AIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させた。その結果、透明性を維持したシリカナノ粒子含有PMMAからなるナノコンポジットが作成された。なお、固形分とMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0064】
実施例6
ロータ周速が12m/sである点を除き、他の条件は、実施例1と同一である。
【0065】
実験の結果、ナノスラリーAの平均粒子径(メディアン径)は、26.6nm、90%通過粒子径は47.5nmであった。また粒度分布もシャープであった。分散液を目視観察したところ、時間経過とともに透明性は増し、120分では完全に透明化した。分散時間60分以降の分散液は、一日静置後も透明で、かつ粒子の沈殿は見られなかった。
【0066】
実施例7
原料粉には、テイカ製の酸化チタン(MT150A、表面処理なし)を使用した。また溶媒にMMAを使用し、分散剤の添加量は原料粉に対する重量比で2.0とした。最終的な分散時間を240分とした。ここでは、分散液の光透過度も併せて測定した。光透過度は、株式会社日立テクノロジーズ製U―2810を使用して行った。この分散液をナノスラリーEとする。
【0067】
実験の結果、分散時間経過とともに粒子径は減少し、分散操作終了後のナノスラリーEの平均粒子径(メディアン径)は、12.5nm、90重量%通過時の粒子径は20.1nmであった。分散液を目視観察したところ、時間経過とともに透明性は増し、120分以降透明化した。また分散時間120分以降の分散液は、一日静置後も透明で、かつ粒子の沈殿は見られなかった。図8に粒子径分布、図9に光透過度の測定結果を示した。光透過度は、紫外線領域(〜380nm)を吸収し、分散時間の経過と共に可視光領域(380nm〜)が透過するようになった。つまり透明性が増し紫外線を選択的に吸収することができた。なお、固形分とMMAとの割合は、ロータリーエバポレータを用いて減圧蒸留によりMMAを蒸発させることで分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0068】
実施例8
撹拌粒子には、粒子径0.030mmの球形のジルコニア粒子を使用し、撹拌粒子の投入量は0.4kg(約0.108L)とした。またローターの周速は8m/sとした。原料粉にシリカ粉末(日本エアロジル製RX300)、溶剤にシリコーン樹脂と相溶性の高いイソプロピルアルコールを使用した。20.0gの原料粉、185gの溶剤と分散剤としてKBM−5103を40g、原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め155gの溶剤を張込み、原料スラリー供給ポンプ3で10kg/hの割合で原料スラリーをビーズミル2に供給し、ビーズミル2内で原料粉の分散を行い、ビーズミルを通過したスラリー溶液は、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4に戻した。この循環運転を240分間行った。
【0069】
実験の結果、ナノスラリーA中の分散粒子の平均粒子径は、分散時間とともに減少し、分散操作終了後の平均粒子径(メディアン径)は、14.2nm、90%通過粒子径は50.7nmであった。このナノスラリーA10gにシリーン樹脂として、メチル系ストレートシリコーンレジン(KR242A)を1gを添加して混合し、イソプロピルアルコールとシリコーン樹脂の混合溶媒中にシリカナノ粒子が分散した透明な4.5wt%のナノスラリーBを得た。
【0070】
このナノスラリーBの重合は、次ぎの要領で行った。RTVゴム(KE109)でコーティングされた基板上にナノ粒子分散液を滴下した。その後減圧(−0.09MPa)し、気泡が発生した場合は、イソプロピルアルコールで消泡を行った。次ぎに55℃で30分から1時間加温した。この時、変形が懸念される場合は、RTVゴムコーティング基板でシリコーンレジンを挟んだ。さらに100℃で1時間、150℃で1時間と温度を上昇させ、最終的に200℃で20分間熱硬化を行った。その結果、ひび割れないのない透明なナノコンポジット材を得ることができた。図10は、このナノコンポジット材の光透過性の測定結果である。透過性が高く、透明性が維持出来ていることが分かる。なお、固形分とシリコーン樹脂との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0071】
実施例9
原料粉に酸化チタンを用いて実施例7と同様の方法でナノスラリーEを製造した。その後、メチル系ストレートシリコーンレジン(KR242A)を添加混合し、分散液中の固形分重量とシリコーン樹脂の重量とが1:1の混合液、ナノスラリーFを得た。このナノスラリーFを実施例8と同様の方法で重合させた。なおナノスラリーF中に含まれるMMAは、重合過程の初期に蒸発した。その結果、ひび割れないのない透明なナノコンポジット材を得ることができた。図11は、このナノコンポジット材の光透過性の測定結果である。透過性が高く、透明性が維持出来ていることが分かる。なお、固形分とシリコーン樹脂との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0072】
実施例10
実施例7と同じ要領で、ナノスラリーEを製造し、次ぎの要領で重合を行った。ポリプロピレン基板上にナノスラリーEを滴下した。その後減圧(−0.09MPa)下で70℃まで加温した。この時、メタノール及びMMAは蒸発した。またこの時、変形が懸念される場合は、ポリプロピレン基板でメタノール及びMMAが蒸発したナノスラリーBを挟んだ。その後、減圧下で温度を上昇させ、100℃で1時間完全硬化させた。その結果、ひび割れないのない透明なナノコンポジット材を得ることができた。このナノコンポジット材は、分散剤が、マトリックスとなったナノコンポジット材である。なお、予備検討の結果、基板材質としてはポリプロピレンが分散剤であるシランカップリング剤と最も剥離性がよく、硬化時収縮による変形を抑えることができた。なお、固形分とシランカップリング剤との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0073】
実施例11
分散剤に、シランカップリング剤であるメタクリロキシ系カップリング剤(KBM−503)を使用した以外、他の条件は、実施例10と全く同一である。得られたナノコンポジット材は、ひび割れもなく透明であった。なお、固形分とシランカップリング剤との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0074】
次ぎの要領で、本発明のナノコンポジット材の耐熱性を調べた。ナノコンポジットサンプルの大気中での分析を行い、耐熱性を評価した。サンプルの重量は3.3〜4.6mgを用い、理学電機(株)製TG8120熱分析装置を用い、昇温速度は毎分5℃で行った。雰囲気は大気中でその空気の流量は800ml/分である。その結果を図12に示した。サンプル1は、比較例であって、PMMAのみで180℃を超えると急激は重量減少が始まり、340℃で96重量%の減量となった。サンプル2は、本願発明の方法で製造したナノコンポジット材であって、4重量%のシリカナノ粒子をメタノール中で分散したナノスラリーDを作製後に、分散剤KBM−5103及びMMAを加え、その後、重合開始剤を加えて重合させた。このナノコンポジット材は、260℃から急激に重量減少し、396℃で81重量%の重量減となった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例で使用したナノ粒子分散液製造装置1の概略的構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1のナノスラリーAの粒度分布測定結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例1のナノスラリーAの紫外可視スペクトル測定結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例1のナノスラリーCの粒度分布測定結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例1のナノスラリーCの可視光領域での分光スペクトル測定結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例1のナノコンポジット材の断面のTEM写真である。
【図7】本発明の実施例5のナノスラリーDの紫外可視分光スペクトル測定結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例7のナノスラリーEの粒子径分布の測定結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例7のナノスラリーEの光透過度の測定結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例8のナノコンポジット材の光透過度の測定結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例9のナノコンポジット材の光透過度の測定結果を示す図である。
【図12】本発明のナノコンポジット材の耐熱性評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ナノ粒子分散液製造装置
2 ビーズミル
3 原料スラリー供給ポンプ
4 原料スラリータンク
7 駆動モータ
12 ステータ
13 ビーズセパレータ
14 ローターピン
15 ローター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用いて、該ビーズに超微小ビーズを使用し、ナノ粒子を、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶剤中に均一分散させる第一工程と、
第一工程で得た分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、
を含むことを特徴とするナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
さらに前記ナノ粒子と親和性を有する基と前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと親和性を有しかつ反応する基とを有する分散剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
さらに請求項2に記載のナノ粒子分散液の製造方法で得られたナノ粒子分散液から前記溶剤を除去する第三工程を含むことを特徴とするナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1の方法で製造されたナノ粒子分散液。
【請求項5】
請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液から溶剤を除去しつつ重合させ、又は請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、溶剤を除去しつつ重合させナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法。
【請求項6】
請求項3で得られたナノ粒子分散液を重合させ、又は請求項3で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、重合させナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法。
【請求項7】
前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液から溶剤及びを反応性モノマー除去しつつ重合させ、又は前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、溶剤及びを反応性モノマーを除去しつつ重合させ、分散剤をマトリックスとするナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法。
【請求項8】
前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、さらに前記第二工程で得られたナノ粒子分散液に前記第二工程で添加混合した反応性モノマーとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液から溶剤及び前記第二工程で添加した反応性モノマーを除去しつつ重合させ、又は前記第二工程で反応性モノマーを添加混合し、さらに前記第二工程で得られたナノ粒子分散液に前記第二工程で添加混合した反応性モノマーとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、請求項2の方法で得られたナノ粒子分散液に重合開始剤を添加した後、溶剤及び前記第二工程で添加した反応性モノマーを除去しつつ重合させ、分散剤及び後に添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマをマトリックスとするナノコンポジット材を製造することを特徴とするナノコンポジット材の製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1の方法で製造されたナノコンポジット材。
【請求項10】
難燃性、耐熱性、耐溶剤性、ガスバリア性、紫外線遮断性のうちいずれか1以上の特性を有する請求項5から8のいずれか1の方法で得られるナノコンポジット材を含み形成された透明容器又は透明フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−169233(P2008−169233A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−889(P2007−889)
【出願日】平成19年1月8日(2007.1.8)
【出願人】(505279215)寿工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】